(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】TNFα関連疾患の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241028BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241028BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241028BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241028BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241028BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241028BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/635 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/4706 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20241028BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20241028BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20241028BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P29/00 101
A61P43/00 111
A61P1/04 ZNA
A61P17/06
A61P19/02
A61P19/08
A61P43/00 121
A61K31/573
A61K31/519
A61K31/42
A61K31/635
A61K31/4706
A61K31/52
A61K38/13
A61K31/706
A61K31/365
A61K31/7056
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/12
(21)【出願番号】P 2021550084
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2020002886
(87)【国際公開番号】W WO2020175954
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0023769
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511237689
【氏名又は名称】セルトリオン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン チョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、セラ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、チ ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソ ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チン ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン ヒ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502596(JP,A)
【文献】特表2005-517629(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第03028238(CA,A1)
【文献】The Journal of Rheumatology,2006年,Vol.33, No.5,pp.847-853
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 31/00-31/80
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフリキシマブを含む
、TNFα関連疾患を処置するための医薬組成物
であって、
インフリキシマブが、
120mgの用量及び
2週間の間隔で
TNFα関連疾患を有する患者に皮下投与
され、
前記TNFα関連疾患が、関節リウマチであり、
前記患者が、皮下投与の前に、インフリキシマブを1回の投与につき3mg/kgの用量で静脈内投与された患者であり、
最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われる、
前記医薬組成物。
【請求項2】
インフリキシマブを含む、TNFα関連疾患を処置するための医薬組成物であって、
インフリキシマブが、120mg又は240mgの用量及び2週間の間隔でTNFα関連疾患を有する患者に皮下投与され、
前記TNFα関連疾患が、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、又は関節症性乾癬であり、
前記患者が、皮下投与の前に、インフリキシマブを1回の投与につき5mg/kgの用量で静脈内投与された患者であり、
最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われる、
前記医薬組成物。
【請求項3】
インフリキシマブが、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、ステロイド、及び免疫抑制剤からなる群から選択される1又は複数と組み合わせて投与される、請求項1
又は請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、及びヒドロキシクロロキンからなる群から選択され、
前記ステロイドが、コルチコステロイド、グルココルチコイド、コルチゾール、ミネラルコルチコイド、及びアルドステロンからなる群から選択され、
前記免疫抑制剤が、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、シクロスポリンA、タクロリムス、ミコフェノール酸、ブレディニン、mTOR阻害剤、及び抗リンパ球抗体からなる群から選択される、
請求項
3に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記患者が、皮下投与の前に
インフリキシマブを2回又は3回静脈内投与された患者である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記患者が、皮下投与の前に
インフリキシマブを2回静脈内投与された患者であ
る、
請求項
5に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記患者が、皮下投与の前にインフリキシマブを2回又は3回静脈内投与された患者である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記患者が、皮下投与の前にインフリキシマブを3回静脈内投与された患者である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記患者が、皮下投与の前に、
インフリキシマブを0週目及び2週目に2回静脈内投与された患者であるか、又は
インフリキシマブを0週目、2週目、及び6週目に3回静脈内投与された患者である、請求項
1又は請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
インフリキシマブの最低血清濃度(C
トラフ)が前記患者への皮下投与後に0.01μg/ml以上に維持される、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
インフリキシマブの最低血清濃度(C
トラフ)が
前記患者への皮下投与後に1μg/ml以上に維持され
る、
請求項
10に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
インフリキシマブの最低血清濃度(C
トラフ
)が前記患者への皮下投与後に0.01μg/ml以上に維持される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項13】
インフリキシマブの最低血清濃度(C
トラフ
)が前記患者への皮下投与後に5μg/ml以上に維持される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
皮下投与後の前記患者
が、DAS28(28箇所の関節における疾患活動性スコア)の少なくとも2.0の
減少という特徴を有する、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
皮下投与後の前記患者が、CDAI(クローン病活動性指数)の少なくとも70の減少という特徴を有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項16】
皮下投与前の前記患者が、
(a)メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に対する反応が不十分であること、
(b)メトトレキサート及びその他のDMARDで以前に処置されていないこと、
(c)一般的な治療に対する十分な反応を示さない、重度の軸性症状及び炎症に関連している血清学的指標の上昇を示すこと、又は
(d)メトトレキサート
に対して反応しないか、禁忌であるか、又は不耐性であること
のうちの1又は複数の特徴を有する、
請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
皮下投与前の前記患者が、
(a)メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に対する反応が不十分であること、
(b)メトトレキサート及びその他のDMARDで以前に処置されていないこと、
(c)一般的な治療に対する十分な反応を示さない、重度の軸性症状及び炎症に関連している血清学的指標の上昇を示すこと、又は
(d)メトトレキサート、シクロスポリンA、又は皮膚光化学療法(ソラレン紫外線A波療法:PUVA)を含む全身治療に対して反応しないか、禁忌であるか、又は不耐性であること
のうちの1又は複数の特徴を有する、
請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項18】
皮下投与前の前記患者が、
(a)コルチコステロイド、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、又は免疫抑制剤による処置に対して十分な反応がないこと、不耐性であること、若しくは禁忌であること、又は
(b)抗生物質療法、排出療法(excretion therapy)、又は免疫抑制療法を含む一般的な治療に対して反応しないこと
のうちの1又は複数の特徴を有する、
請求項1
又は請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
インフリキシマブを含む前記
医薬組成物が、(A)90~180mg/mlの
インフリキシマブ、(B)0.02~0.1%(w/v)のポリソルベート、(C)1~10%(w/v)のソルビトール、及び(D)酢酸塩を含む1~50mMの緩衝剤を含む、請求項1
又は請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項20】
インフリキシマブを含む前記
医薬組成物が、前記患者への投与前に充填済注射器又は自己注射器中に充填され
ている、請求項1
又は請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
(a)
請求項1に記載の医薬組成物、及び
(b)
関節リウマチを有する患者を処置するために
インフリキシマブを
120mgの用量及び
2週間の間隔で皮下投与するよう指示する説明書
を含む
キットであって、
前記患者が、皮下投与の前に、インフリキシマブを1回の投与につき3mg/kgの用量で静脈内投与された患者であり、
前記医薬組成物が、最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われるように前記患者に投与される、
前記キット。
【請求項22】
(a)請求項2に記載の医薬組成物、及び
(b)強直性脊椎炎 、クローン病、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、又は関節症性乾癬を有する患者を処置するためにインフリキシマブを120mg又は240mgの用量及び2週間の間隔で皮下投与するよう指示する説明書
を含むキットであって、
前記患者が、皮下投与の前に、インフリキシマブを1回の投与につき5mg/kgの用量で静脈内投与された患者であり、
前記医薬組成物が、最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われるように前記患者に投与される、
前記キット。
【請求項23】
TNFα関連疾患を処置するために患者に投与される
請求項1に記載の医薬組成物の調製における
インフリキシマブの使用
であって、
前記TNFα関連疾患が、関節リウマチであり、
インフリキシマブが120mgの用量及び2週間の間隔で皮下投与され、
前記患者が、皮下投与の前に、インフリキシマブを1回の投与につき3mg/kgの用量で静脈内投与された患者であり、
前記医薬組成物が、最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われるように前記患者に投与される、
前記使用。
【請求項24】
TNFα関連疾患を処置するために患者に投与される請求項2に記載の医薬組成物の調製におけるインフリキシマブの使用であって、
前記TNFα関連疾患が、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、又は関節症性乾癬であり、
インフリキシマブが120mg又は240mgの用量及び2週間の間隔で皮下投与され、
前記患者が、皮下投与の前に、インフリキシマブを1回の投与につき5mg/kgの用量で静脈内投与された患者であり、
前記医薬組成物が、最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われるように前記患者に投与される、
前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、TNFαに結合する抗体(抗TNFα抗体)を皮下投与することによりTNFα関連疾患を処置する方法に関する。
【0002】
本願は、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれる、2019年2月28日に出願された韓国特許出願第10-2019-0023769号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、全身性炎症に関与する細胞シグナル伝達タンパク質(サイトカイン)であり、急性期反応を形成するサイトカインの一つである。TNFαは、敗血症、感染症、自己免疫疾患、及び移植片拒絶を含む種々の疾患及び障害に関連している。TNFαは免疫応答を刺激し、関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、乾癬、関節症性乾癬などの自己免疫異常に関連している多くの臨床的問題を引き起こす。そのような異常はTNFα阻害剤を用いて処置され得る。
【0004】
インフリキシマブはTNFα阻害剤として機能することができるキメラモノクローナル抗体の一種であり、現在の市販のインフリキシマブ製品としては、Remsima、Remicade、Renflexisなどが挙げられる。しかしながら、これらの製品はすべて凍結乾燥された粉末として調製されており、各疾患について選択される投与計画及び用量に従って静脈内注射用に再構成及び希釈される。
【0005】
しかしながら、上記のような静脈内投与方法は、患者が処置のために受診することを必要とし、待ち時間を含めて2~4時間の時間を要するため、このような方法が日常生活において相当の負担及び不便をもたらすものであることを示している。さらに、薬剤を投与する人が、医学教育を受けた人に限られているという問題がある。
【0006】
したがって、皮下(SC)投与が代替投与経路として提案されている。そのような投与により、訓練後に患者が自己注射を行うことが可能となり得、先行技術では静脈内投与は30~90分を要していたが、必要とされる時間が2~5分に短縮され得る。
【0007】
市販の製剤製品は、静脈内投与用だけではなく、皮下投与用にも開発されており、リツキサン(リツキシマブ)、シンポニー(ゴリムマブ)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、アクテムラ(トシリズマブ)、ゾレア(オマリズマブ)などが挙げられるが、インフリキシマブの皮下投与用製剤は未だ報告されていない。
【0008】
皮下投与のためには、高濃度の抗体を含む安定な液体製剤が必要とされ、その臨床的有効性及び安全性が実証されなければならない。
【0009】
本出願人らは、皮下投与のためのCT-P13製剤が、静脈内投与のための従来の製剤と同程度の有効性及び安定性を有することを実証し、それにより、患者に役立ち、より投与の利便性があり、患者の生活の質を改善する皮下投与療法を完成させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、TNFα関連疾患を処置するために、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に皮下投与することを含む処置方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、抗TNFα抗体で処置可能な疾患を処置するための医薬組成物を提供することであり、前記医薬組成物は抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含み、対象に皮下投与される。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、及び前記医薬組成物を抗TNFα抗体で処置可能な疾患を処置するために対象に皮下投与するよう指示する説明書を含むキットを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、抗TNFα抗体で処置可能な疾患を処置するために対象に皮下投与される薬剤の調製における抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に皮下投与するステップを含む、抗TNFα抗体で処置可能な疾患を抗TNFα抗体で処置する方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含み、対象に皮下投与される、抗TNFα抗体で処置可能な疾患を処置するための医薬組成物を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、(a)抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、及び薬学的に許容可能な担体、並びに(b)前記医薬組成物を抗TNFα抗体で処置可能な疾患を処置するために対象に皮下投与するよう指示する説明書を含むキットを提供する。
【0017】
また、本発明は、抗TNFα抗体で処置可能な疾患を処置するために対象に皮下投与される薬剤の調製における抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の使用を提供する。
【0018】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらの後発生物製剤からなる群から選択される1又は複数を含んでいてもよい。
【0019】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体はインフリキシマブであってもよい。
【0020】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体はキメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含んでいてもよい。
【0021】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0022】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0023】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでいてもよい。
【0024】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、界面活性剤、糖又はその誘導体、及び酢酸塩又はヒスチジンを含む緩衝剤を含んでいてもよい。
【0025】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、界面活性剤として、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0026】
本発明のある実施形態では、前記組成物中の界面活性剤の濃度は0.02~0.1%(w/v)であってもよい。
【0027】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、糖又はその誘導体として、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロース、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0028】
本発明のある実施形態では、前記組成物中の糖又はその誘導体の濃度は1~10%(w/v)であってもよい
【0029】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、緩衝剤として酢酸塩を含んでいてもよい。
【0030】
本発明のある実施形態では、前記組成物中の緩衝剤の濃度は1~50mMであってもよい。
【0031】
本発明のある実施形態では、前記組成物のpHは4.0~5.5であってもよい。
【0032】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、(A)90~180mg/mlの抗TNFα抗体、(B)0.02~0.1%(w/v)のポリソルベート、(C)1~10%(w/v)のソルビトール、及び(D)酢酸塩又はヒスチジンを含む1~50mMの緩衝剤を含んでいてもよい。
【0033】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、又はこれらの混合物を含んでいなくてもよい。
【0034】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、K2SO4、又はこれらの混合物を含んでいなくてもよい。
【0035】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、キレート化剤を含んでいなくてもよい。
【0036】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、40±2℃の温度で1カ月保存後に0.5~10.0cpの粘度、又は5±3℃の温度で6カ月保存後に0.5~5.0cpの粘度を有していてもよい。
【0037】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、使用前に、再構成ステップ、希釈ステップ、又はこれらの両方を受けなくてもよい。
【0038】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、対象への投与前に充填済注射器又は自己注射器中に充填されてもよい。
【0039】
本発明のある実施形態では、対象は哺乳類を含んでいてもよい。
【0040】
本発明のある実施形態では、対象はヒトを含んでいてもよい。
【0041】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原断片は60~300mgの用量で投与されてもよい。
【0042】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体で処置可能な疾患は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎を含んでいてもよい。
【0043】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、又は300mgの用量で投与されてもよい。
【0044】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は90~300mgの用量で投与されてもよい。
【0045】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は90~180mgの用量で投与されてもよい。
【0046】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は120~240mgの用量で投与されてもよい。本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、80~100mg、110~130mg、170~190mg、又は230~250mgの用量で投与されてもよい。
【0047】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、90mg、120mg、180mg、又は240mgの用量で投与されてもよい。
【0048】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、TNFα関連疾患が関節リウマチである場合は、90~180mgの用量で対象に投与されてもよい。
【0049】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、TNFα関連疾患が関節リウマチである場合は、90mg、120mg、又は180mgの用量で対象に投与されてもよい。
【0050】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、TNFα関連疾患が潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数である場合は、120~240mgの用量で対象に投与されてもよい。
【0051】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、TNFα関連疾患が潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数である場合は、120mg、150mg、180mg、又は240mgの用量で対象に投与されてもよい。本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、対象の症状に依存して、用量を増やして投与されてもよい。
【0052】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、対象の体重が80kg未満である場合は90~180mgの用量で投与されてもよく、対象の体重が80kg以上である場合は190~270mgの用量で投与されてもよい。
【0053】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は1~8週間の間隔で投与されてもよい。
【0054】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、又は8週間の間隔で投与されてもよい。
【0055】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、2週間又は4週間の間隔で投与されてもよい。
【0056】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される患者は、
(a)メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に対する反応が不十分である患者、
(b)メトトレキサート及びその他のDMARDで以前に処置されていない患者、
(c)一般的な治療に対する適切(proper)な反応を示さない重度の軸性症状及び炎症に関連している血清学的指標の上昇を示す患者、又は
(d)メトトレキサート、シクロスポリン、又は皮膚光化学療法(ソラレン紫外線A波療法:PUVA)を含む全身治療に対して反応しないか、禁忌であるか、又は不耐性である患者
(e)コルチコステロイド、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、又は免疫抑制剤による治療に対して十分な反応がない患者、そのような治療に対して不耐性である患者、又はそのような治療方法が禁忌である患者、又は
(f)抗生物質療法、排出療法(excretion therapy)、又は免疫抑制療法を含む一般的な治療に対して反応しない患者
から選択される1又は複数の特徴を示し得る。
【0057】
本発明のある実施形態では、患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を少なくとも1回静脈内投与された患者であってもよい。
【0058】
本発明のある実施形態では、患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を少なくとも2回又は3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0059】
本発明のある実施形態では、(a)関節リウマチ疾患を有する患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を2回静脈内投与された患者であってもよく、(b)潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を2回又は3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0060】
本発明のある実施形態では、患者は、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目及び2週目に2回静脈内投与された患者であるか、又は抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目、2週目、及び6週目に3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0061】
本発明のある実施形態では、患者は、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を少なくとも1回静脈内投与された患者であってもよい。
【0062】
本発明のある実施形態では、患者は、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回の投与につき1~10mg/kgの用量で静脈内投与された患者であってもよい。
【0063】
本発明のある実施形態では、患者は、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回の投与につき3~5mg/kgの用量で静脈内投与された患者であってもよい。
【0064】
本発明のある実施形態では、(a)関節リウマチ疾患を有する患者は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回の投与につき3mg/kgの用量で静脈内投与された患者であってもよく、(b)潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回の投与につき5mg/kgの用量で静脈内投与された患者であってもよい。
【0065】
本発明のある実施形態では、最初の皮下投与が最後の静脈内投与の2~8週間後に行われてもよい。
【0066】
本発明のある実施形態では、最初の皮下投与が最後の静脈内投与の4週間後に行われてもよい。
【0067】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらの後発生物製剤からなる群から選択される1又は複数の投与と同時に、投与の前に、又は投与の後に投与されてもよい。
【0068】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、抗リウマチ薬(DMARD)、ステロイド、及び免疫抑制剤からなる群から選択される1又は複数の投与と同時に、投与の前に、又は投与の後に投与されてもよい。具体的には、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、及びヒドロキシクロロキンからなる群から選択されてもよく、ステロイドは、コルチコステロイド、グルココルチコイド、コルチゾール、ミネラルコルチコイド、及びアルドステロンからなる群から選択されてもよく、免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、シクロスポリンA、タクロリムス、ミコフェノール酸、ブレディニン、mTOR阻害剤、及び抗リンパ球抗体からなる群から選択されてもよい。
【0069】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ:次回適用直前の最低濃度)が患者への皮下投与後に0.01μg/ml以上に維持される投与方法が提供されてもよい。
【0070】
本発明のある実施形態では、(a)関節リウマチ疾患を有する患者について、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ)が1μg/ml以上に維持され、(b)潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者について、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ)が5μg/ml以上に維持される投与方法が提供されてもよい。
【0071】
本発明のある実施形態では、皮下投与後の患者は、
(a)DAS28(28箇所の関節における疾患活動性スコア)の少なくとも2.0の減少、又は
(b)CDAI(クローン病活動性指数)の少なくとも70の減少
のうちの1又は複数の特徴を示し得る。
【発明の効果】
【0072】
本発明の処置方法、組成物、キット、又は使用は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を皮下投与することによりTNFα関連疾患の処置を可能にする。さらに、本発明の処置方法、組成物、キット、又は使用は、利便性及び生活の質を改善することにより、すなわち、静脈内投与と比較して、投与に要する時間を短縮し、患者の入院期間を短縮することにより、患者の満足度を改善するという利点を提供する。
【0073】
さらに、本発明の処置方法、組成物、キット、又は使用は、インフリキシマブの新たな処置選択肢として追加され、結果として、医療従事者だけではなく、従来の静脈内投与によりインフリキシマブが投与されてきた患者から薬剤変更に起因する負担及び拒絶を除去するという利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】試験1.6パート1におけるCD患者(A:120mgのSCが投与されたコホート、B:180mgのSCが投与されたコホート、及びC:240mgのSCが投与されたコホート)にインフリキシマブ(IV又はSC)が投与された場合の経時的な血中インフリキシマブ濃度の平均(±SD)を示すシミュレーショングラフである。
【
図2】試験1.6パート2における炎症性腸疾患(IBD)患者に120mgのインフリキシマブSC又はインフリキシマブIVが投与された場合の定常状態での経時的な血中インフリキシマブ濃度の中央値を示すシミュレーショングラフである。
【
図3】インフリキシマブのSC投与形態とIV投与形態との間の54週間の薬物動態プロファイルを示すグラフである(〇:SC投与形態、及び△:IV投与形態)。
【
図4】インフリキシマブIVの投与なしで、0週間目から2週間ごとにインフリキシマブSCを投与する方法に関する、時間ごとの中央値を示すシミュレーショングラフである(A:各実験的コホートに関するインフリキシマブの時間ごとの血漿濃度のシミュレーショングラフ(実線:3mg/kgのIVの2回の投与後に120mgのSCが投与されたコホート、及び点線:120mgのSCが投与されたコホート)、及びB:各実験的コホートに関する時間ごとのDAS28のシミュレーションコホート)。
【
図5】各実験群に関する、2週目、6週目、及び14週目の(A)最低血清濃度(C
トラフ)の箱ひげ図、及び(B)DAS28スコアの箱ひげ図を示すグラフである(灰色の箱:2回のIV投与後に120mgのSCが投与された群、及び赤い箱:120mgのSCが投与された群)。
【
図6】インフリキシマブのIV投与形態とSC投与形態との間の54週間の薬物動態プロファイルを示すグラフである(●:SC投与形態、及び△:IV投与形態)。
【
図7】最終的なPK-PDモデルから得られたVPCの結果としての、観察されたCDAIスコア(〇で示される)とモデル予測されたCDAIスコア(黒の実線)とを互いに比較するグラフである。
【
図8】0週目、2週目、及び6週目にCD患者に5mg/kgのIVを投与した後の10週目からの各投与療法に関する、時間ごとの平均血漿濃度についてのシミュレーションデータを示すグラフである。
【
図9】0週目、2週目、及び6週目に5mg/kgのIVを投与した後の10週目からの各投与療法に関する、時間ごとのCDAIスコアについてのCD患者に関するシミュレーションデータを示すグラフである。
【
図10】0週目、2週目、及び6週目に5mg/kgのIVを投与した後の10週目からの各投与療法に関する、時間ごとの平均血漿濃度についてのUC患者に関するシミュレーションデータを示すグラフである。
【
図11】0週目、2週目、及び6週目に5mg/kgのIVを投与した後の10週目からの各投与療法に関する、時間ごとのMayoスコアについてのUC患者に関するシミュレーションデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に皮下投与するステップを含む、抗TNFα抗体で処置可能な疾患を抗TNFα抗体で処置する方法に関する。
【0076】
本発明の理解を容易にするために、本発明において使用される用語を以下のように定義する。
【0077】
「TNFα」は、17kDの分泌型及び26kDの膜結合型として存在するヒトサイトカインを指すことを意図しており、TNFαの生物学的活性型は非共有結合で17kDの分子に結合している三量体からなる。TNFαの構造は、例えば、文献(Pennica,D.,et al.(1984)Nature 312:724-729;Davis,J.M.,et al.(1987)Biochemistry 26:1322-1326;及びJones,E.Y.,et al.(1989)Nature 338:225-228参照)にさらに記載されている。
【0078】
「抗体」という用語は、2本の重鎖及び2本の軽鎖がジスルフィド結合により相互結合されている4本のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を指す。改変された構造を有するその他の天然の抗体、例えば、ラクダ化抗体もこの定義に含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分割され得る。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端へFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順番で並ぶ3つのCDR及び4つのFRからなる。
【0079】
「抗原結合断片」という用語は、完全な抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1又は複数の断片を指す。例示的な抗原結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvが挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
「後発生物製剤」という用語は、FDAに認可された生物学的製剤(対象薬剤)と非常に類似しており、薬物動態、安全性、及び有効性の点において対象薬剤と臨床的に有意義な違いがない生物学的製剤を意味する。
【0081】
「生物学的剤形」又は「生物学的製剤」という用語は、ヒト又はその他の生物に由来する原材料又は物質を用いて調製され、公衆衛生について特別な留意を必要とする医薬製品を指し、生物製剤、組換えDNA製品、細胞培養物由来製品、細胞療法製品、遺伝子療法製品、及び食品医薬品安全処に承認されたその他の製剤が挙げられる。
【0082】
「投与」という用語は、治療目的(例えば、TNFα関連疾患)を達成するための物質(例えば、抗TNFα抗体)の投与を指す。
【0083】
「TNFα関連疾患」という用語は、TNFαが疾患の症状をもたらす主要なメディエーターである局所性/全身性の生理的疾患を指す。本明細書では、「TNFα関連疾患」、「TNFαで処置可能な疾患」、及び「TNFαの活性が有害である疾患」という用語は互換的に使用される。
【0084】
「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物の全てを含む。「非ヒト動物」という用語には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、及びフェレットなどの脊椎動物、マウス、ラット、及びモルモットなどの齧歯類、ニワトリなどの鳥類、両生類、並びに爬虫類が含まれるがこれらに限定されない。好ましい実施形態の態様では、対照は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、又は齧歯類などの哺乳動物である。より好ましい実施形態の態様では、対象はヒトである。本明細書では、「対照」、「患者」、及び「個人」という用語は互換的に使用される。
【0085】
「IC50」という用語は、目的の生物学的結果を阻害するため、例えば、細胞毒性活性を中和するために必要とされる阻害剤の濃度を指すことを意図している。
【0086】
「最低血清濃度(Cトラフ)」という用語は、モデル予測されたトラフ血清濃度の略語であり、集団薬物動態モデルを用いて予測された、血液中の薬剤の最低濃度を意味する。
【0087】
「DAS28(28箇所の関節における疾患活動性スコア)」という用語は、28箇所の関節を用いて関節リウマチ(RA)の疾患活動性を評価する方法を指す。
【0088】
「CDAI(クローン病活動性指数)」という用語は、クローン病を有する患者の症状を定量化するために使用される試験ツールを指す。
【0089】
「抗リウマチ薬(疾患修飾性抗リウマチ薬、DMARD)」という用語は、関節炎の症状軽減及び疾患進行の遅延に有効である経口薬剤の組み合わせを指す。DMARDは、関節を攻撃し、且つ、骨、腱、靭帯、又は軟骨に損傷を与える化学物質を放出する効果を免疫系が有することを妨げる。DMARDに基づく薬剤の具体的な種類は、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、及びレフルノミドを含む。
【0090】
「キット」という用語は、TNFα関連疾患を処置するために本発明のTNFα抗体を投与するための構成要素を含む包装された商品を指す。キットは、好ましくは、キットの構成要素を保持するための容器又は箱を含む。箱又は容器は、食品医薬品局に承認されたラベル又はプロトコルが貼り付けられている。箱又は容器は、プラスチック容器、ポリエチレン容器、ポリプロピレン容器、エチレン容器、又はプロピレン容器中に含まれている本発明の構成要素を保持する。容器は蓋付きのチューブ又はボトルであってもよい。キットはまた、本発明のTNFα抗体を投与するための説明書を含んでいる。
【0091】
本発明の種々の態様をさらに詳細に説明する。
【0092】
本発明の抗TNFα抗体又はその抗原結合断片
本発明のある実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、単鎖抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はこれらの断片を含んでいてもよい。「キメラ抗体」という用語は、ある種に由来する重鎖変領域配列及び軽鎖可変領域配列と、他の種に由来する定常領域配列とを含む抗体を意味する。本発明のある実施形態では、抗体は、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含んでいてもよい。キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体は、マウスの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と、それに結合したヒトの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域とからなっている。キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体は当業者に周知の方法で調製されてもよい。例えば、インフリキシマブは、米国特許第6,284,471号に記載される方法で調製されてもよい。
【0093】
本発明のある実施形態では、抗体はTNFα又はTNFαのエピトープに結合する抗体を含んでいてもよい。TNFα又はTNFαのエピトープに結合する抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらの後発生物製剤からなる群から選択される1又は複数を含んでいてもよい。本発明のある実施形態では、抗体はインフリキシマブを含んでいてもよい。
【0094】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0095】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0096】
本発明のある実施形態では、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでいてもよい。
【0097】
本発明の抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物
本明細書で使用される場合、「本発明の抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物」という用語は、「安定液体医薬製剤」と互換的に使用される。
【0098】
本発明の組成物は、(A)抗体又はその抗原結合断片、(B)界面活性剤、(C)糖又はその誘導体、及び(D)緩衝剤を含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「~を含んでいない(free of)」という用語は、当該構成要素が全く含まれていないことを意味する。さらに、当該用語は、当該構成要素が実質的に全く含まれていないこと、すなわち、抗体の活性、並びに液体医薬製剤の安定性及び粘度に影響を及ぼさない範囲内で含まれることを意味する。例えば、この用語は、当該構成要素が、液体医薬製剤の全重量に対して、0~1%(w/v)、0~1ppm(w/v)、又は0~1ppb(w/v)の量で含まれていることを意味する。
【0100】
(A)抗体又はその抗原結合断片
ある実施形態では、本発明の組成物は、上記に詳細に記載されるような本発明の抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含んでいてもよい。
【0101】
抗体又はその抗原結合断片の濃度は、本発明の組成物の安定性及び粘度に実質的に悪影響を及ぼさない範囲内で自由に調節されてもよい。本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、10~200mg/mlであってもよい。本発明の別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、50~200mg/mlであってもよい。本発明のさらに別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、80~200mg/mlであってもよい。本発明のさらに別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、90~180mg/mlであってもよい。本発明のさらに別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、90~145mg/mlであってもよい。本発明のさらに別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、110~130mg/mlであってもよい。抗体又はその抗原結合断片の濃度が上記範囲内である場合、高濃度の抗体又はその抗原結合断片に従って投与用量及び投与サイクルの自由度が増大することがあり、優れた長期安定性及び低粘度が示され得る。
【0102】
(B)界面活性剤
界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(例えば、トリトンX)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体(例えば、ポロクサマー、プルロニック)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
本発明のある実施形態では、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)を含んでいてもよい。ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はこれらの2種類以上の混合物を含んでいてもよい。本発明のある実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。本発明の別の実施形態では、ポリソルベートはポリソルベート80を含んでいてもよい。
【0104】
本発明のある実施形態では、界面活性剤の濃度は、本発明の安定液体医薬製剤の安定性及び粘度に悪影響を及ぼさない範囲内で自由に調節されてもよい。例えば、界面活性剤の濃度は、0.001~5%(w/v)、0.01~1%(w/v)、又は0.02~0.1%(w/v)であってもよい。界面活性剤の濃度が上記範囲内である場合、優れた長期安定性及び低粘度が示され得る。
【0105】
(C)糖又はその誘導体
糖は、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、又はこれらの2種類以上の混合物を含んでいてもよい。単糖の例には、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどが含まれるが、これらに限定されない。二糖の例には、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースなどが含まれるが、これらに限定されない。オリゴ糖の例には、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などが含まれるが、これらに限定されない。多糖の例には、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、ペクチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
糖の誘導体は、糖アルコール、糖酸、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。糖アルコールの例には、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトールなどが含まれるが、これらに限定されない。糖酸の例には、アルドン酸(グリセリン酸など)、ウロソン酸(ノイラミン酸など)、ウロン酸(グルクロン酸)、アルダル酸(酒石酸など)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
本発明のある実施形態では、糖又はその誘導体は、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロース、又はこれらの2種類以上の混合物を含んでいてもよい。
【0108】
本発明のある実施形態では、糖又はその誘導体の濃度は、本発明の液体医薬製剤の安定性及び粘度に実質的に悪影響を及ぼさない範囲内で自由に調節されてもよい。例えば、糖又はその誘導体の濃度は、0.1~30%(w/v)、1~20%(w/v)、又は1~10%(w/v)であってもよい。糖又はその誘導体の濃度が上記範囲内である場合、優れた長期安定性及び低粘度が示され得る。
【0109】
(D)緩衝剤
緩衝剤は、酸又はアルカリに起因するpHの変化を最小化する中和物質である。緩衝剤の例には、リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジンなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明のある実施形態では、緩衝剤は酢酸塩又はヒスチジンを含んでいてもよい。緩衝剤が酢酸塩とヒスチジンの両方を含む場合、安定性が低下することがある。
【0110】
本発明のある実施形態では、緩衝剤は酢酸塩を含んでいてもよい。酢酸塩の例には、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。pHの調節のためには、緩衝剤は、酸、例えば、酢酸をさらに含んでいてもよい。緩衝剤として酢酸を含むことは、pH調節及び安定性の点において最も好ましいことがある。
【0111】
本発明のある実施形態では、緩衝剤はヒスチジンを含んでいてもよい。ヒスチジンが緩衝剤として用いられる場合、ヒスチジンは、ヒスチジン塩、例えば、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン酢酸塩、ヒスチジンリン酸塩、ヒスチジン硫酸塩などを含んでいてもよい。pHの調節のためには、緩衝剤は、酸、例えば、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などを含んでいてもよい。
【0112】
本発明のある実施形態では、安定液体医薬製剤は、クエン酸、リン酸塩、又はこれらの混合物を含んでいなくてもよい。
【0113】
本発明のある実施形態では、緩衝剤(又は緩衝剤のアニオン)の含有量は、本発明の液体医薬製剤の安定性及び粘度に実質的に悪影響を及ぼさない範囲内で自由に調節されてもよい。例えば、緩衝剤又はそのアニオンの含有量は、1~50mM、5~30mM、又は10~25mMであってもよい。緩衝剤又はそのアニオンの含有量が上記範囲内である場合、優れた長期安定性及び低粘度が示され得る。
【0114】
(E)pH
本発明のある実施形態では、安定液体医薬組成物のpHは、4.0~5.5、又は4.7~5.3であってもよい。pHが上記範囲内である場合、優れた長期安定性及び低粘度が示され得る。pHは緩衝剤を用いて調節してもよい。つまり、緩衝剤が所定の含有量で含まれている場合、別個のpH調整剤を必要とせずに、pHは上記範囲を示し得る。クエン酸、リン酸塩、又はこれらの混合物が緩衝剤として使用される場合、上記範囲のpHを示すことは困難であり得る。別個のpH調整剤として酸(例えば、塩酸)又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム)がさらに含まれている場合、抗体の安定性が低下し得る。
【0115】
(F)その他の構成要素
本発明のある実施形態では、安定液体医薬製剤は、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、又はこれらの混合物を含んでいなくてもよい。これらのアミノ酸を含んでいる場合、そのような製剤は固体状態になる。本発明のある実施形態では、安定液体医薬製剤は、上記3種類のアミノ酸を除く1種類又は複数種類のアミノ酸を含んでいてもよい。この場合、アミノ酸は、5%(w/v)以下の範囲、例えば、0.001~5%(w/v)の範囲、0.001~1%(w/v)の範囲、0.01~5%(w/v)の範囲、0.01~1%(w/v)の範囲、0.1~5%(w/v)の範囲、又は0.1~1%(w/v)の範囲で含まれていてもよい。
【0116】
本発明の別の実施形態では、安定液体医薬製剤はタウリンを含んでいてもよい。この場合、タウリンは、5%(w/v)以下の範囲、例えば、0.001~5%(w/v)の範囲、0.001~1%(w/v)の範囲、0.01~5%(w/v)の範囲、0.01~1%(w/v)の範囲、0.1~5%(w/v)の範囲、又は0.1~1%(w/v)の範囲で含まれていてもよい。
【0117】
本発明の別の実施形態では、安定液体医薬製剤は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、K2SO4などの金属塩を含んでいなくてもよい。これらの金属塩を含有する場合、製剤に沈殿現象が起こることがあり、製剤がゼラチンの形状を有し安定性に劣ることがある。
【0118】
本発明のある実施形態では、安定液体医薬製剤はキレート化剤(例えば、EDTA)を含んでいなくてもよい。キレート化剤を含有する場合、酸化率が上昇することがある。
【0119】
本発明のある実施形態では、安定液体医薬製剤は保存剤を含んでいなくてもよい。保存剤の例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、m-クレゾールなどが含まれる。保存剤を含有する場合、保存剤は医薬製剤の安定性の改善に役立たないことがある。
【0120】
本発明のある実施形態では、本発明の安定液体医薬製剤は、抗体の活性、並びに製剤の安定性及び低粘度に実質的に悪影響を及ぼさない範囲内で、当該技術分野で周知の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば、そのような医薬製剤は、水性担体、抗酸化剤、又はこれらの2種類以上の混合物をさらに含んでいてもよい。水性担体は、薬学的に許容可能(ヒトに投与された場合、安全且つ無毒)であり、液体医薬製剤の調製に有用な担体である。水性担体の例には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、滅菌生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖などが含まれるが、これらに限定されない。抗酸化剤の例にはアスコルビン酸などが含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
(G)「安定」液体医薬製剤
本発明の「安定」液体医薬製剤において、「安定」という用語は、本発明の抗体が、産生過程の間、及び/又は貯蔵/保存の間、その物理的安定性、及び/又は化学的安定性、及び/又は生物学的活性を実質的に保持していることを意味する。抗体の安定性を測定する種々の分析技術は、当該技術分野で容易に利用され得る。
【0122】
物理的安定性は、試料の見かけの光減衰(吸光度又は光学濃度)を含む、当該技術分野で公知の方法により評価され得る。そのような光減衰の測定は、製剤の濁度に関連している。さらに、物理的安定性について、高分子量構成要素の含有量、低分子量構成要素の含有量、無傷のタンパク質の量、サブビジブル粒子(sub-visible particle)の数などが測定され得る。
【0123】
化学的安定性は、例えば、抗体の化学的に変化した形態を検出及び定量化することによって評価され得る。化学的安定性は、例えば電荷の変化(例えば、脱アミド又は酸化の結果として起こる)を含み、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより評価され得る。化学的安定性について、電荷バリアント(酸性ピーク又は塩基性ピーク)などが測定され得る。
【0124】
生物学的活性は、当該技術分野で公知の方法により評価され得る。例えば、抗原結合親和性がELISAにより測定され得る。
【0125】
本発明のある実施形態では、液体医薬製剤は長期間安定であり得る。
【0126】
本発明のある実施形態では、「安定な」液体医薬製剤という用語は、以下のうちの1又は複数を満たす液体医薬製剤を意味する。
【0127】
濁度
・40±2℃の温度で4週間保存後に分光光度計で測定される吸光度(A600)が0~0.0300又は0~0.0700である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後に分光光度計で測定される吸光度(A600)が0~0.0300又は0~0.0700である液体医薬製剤
【0128】
主要構成要素の含有量(主要ピーク)
・40±2℃の温度で4週間保存後にSE-HPLCで測定される主要構成要素の含有量が98~100%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にSE-HPLCで測定される主要構成要素の含有量が98~100%である液体医薬製剤
【0129】
高分子量構成要素の含有量(その保持時間のピークは主要ピーク(無傷のIgG)の保持時間のピークよりも早い)
・5±3℃の温度で12か月保存後にSE-HPLCで測定される高分子量構成要素の含有量が0~1.00%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、5±3℃の温度で12カ月保存後にSE-HPLCで測定される高分子量構成要素の含有量が0~1.00%である液体医薬製剤
【0130】
低分子量構成要素の含有量(その保持時間のピークは主要ピーク(無傷のIgG)の保持時間のピークよりも遅い)
・5±3℃の温度で12カ月保存後にSE-HPLCで測定される低分子量構成要素の含有量が0~0.40%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、5±3℃の温度で12カ月保存後にSE-HPLCで測定される低分子量構成要素の含有量が0~0.40%である液体医薬製剤
【0131】
無傷の免疫グロブリンGの含有量
・5±3℃の温度で12カ月保存後に非還元CE-SDSで測定される無傷の免疫グロブリンGの含有量(無傷のIgG%)が94.0~100%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、5±3℃の温度で12カ月保存後に非還元CE-SDSで測定される無傷の免疫グロブリンGの含有量(無傷のIgG%)が94.0~100%である液体医薬製剤
・40±2℃の温度で4週間保存後に非還元CE-SDSで測定される無傷の免疫グロブリンGの含有量(無傷のIgG%)が94.0~100%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後に非還元CE-SDSで測定される無傷の免疫グロブリンGの含有量(無傷のIgG%)が94.0~100%である液体医薬製剤
【0132】
無傷の重鎖及び軽鎖の含有量
・5±3℃の温度で12カ月保存後に還元CE-SDSで測定される無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(無傷のHC+LC%)が99.0~100%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、5±3℃の温度で12カ月保存後に還元CE-SDSで測定される無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(無傷のHC+LC%)が99.0~100%である液体医薬製剤
・40±2℃の温度で4週間保存後に還元CE-SDSで測定される無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(無傷のHC+LC%)が98.0~100%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にに還元CE-SDSで測定される無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(無傷のHC+LC%)が98.0~100%である液体医薬製剤
【0133】
サブビジブル粒子の数
・5±3℃の温度で12カ月保存後にHIACで測定されるサブビジブル粒子(10.00μ以上、400.00μm未満)の数が0~1,000である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、5±3℃の温度で12カ月保存後にHIACで測定されるサブビジブル粒子(10.00μ以上、400.00μm未満)の数が0~1,000である液体医薬製剤
・40±2℃の温度で4週間保存後にMFIで測定されるサブビジブル粒子(1.00μ以上、100.00μm未満)の数が0~30,000である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にMFIで測定されるサブビジブル粒子(1.00μ以上、100.00μm未満)の数が0~30,000である液体医薬製剤
・40±2℃の温度で4週間保存後にMFIで測定されるサブビジブル粒子(10.00μ以上、100.00μm未満)の数が0~200である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にMFIで測定されるサブビジブル粒子(10.00μ以上、100.00μm未満)の数が0~200である液体医薬製剤
・40±2℃の温度で6週間保存後にMFIで測定されるサブビジブル粒子(10.00μ以上、100.00μm未満)の数が0~500である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で6週間保存後にMFIで測定されるサブビジブル粒子(10.00μ以上、100.00μm未満)の数が0~500である液体医薬製剤
【0134】
酸化率
・40±2℃の温度で4週間保存後にLC-MSで測定される重鎖Met255の酸化率が0~2.5%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にLC-MSで測定される重鎖Met255の酸化率が0~2.5%である液体医薬製剤
【0135】
電荷バリアント
・40±2℃の温度で4週間保存後にIEC-HPLCで測定される酸性ピークが20~35%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にIEC-HPLCで測定される酸性ピークが20~35%である液体医薬製剤
・40±2℃の温度で4週間保存後にIEC-HPLCで測定される塩基性ピークが33~40%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、40±2℃の温度及び75±5%の相対湿度で4週間保存後にIEC-HPLCで測定される塩基性ピークが33~40%である液体医薬製剤
【0136】
TNFα結合親和性
・5±3℃の温度で12カ月保存後にELISAで測定されるTNFα結合親和性が80~120%である液体医薬製剤
・閉鎖条件下、5±3℃の温度で12カ月保存後にELISAで測定されるTNFα結合親和性が80~120%である液体医薬製剤
【0137】
本発明のある実施形態では、医薬製剤は、40±2℃の温度で1カ月保存後に測定される粘度が0.5~10.0cpであってもよい。本発明の別の実施形態では、医薬製剤は、5±3℃の温度で6カ月保存後に測定される粘度が0.5~5.0cpであってもよい。
【0138】
(H)安定液体医薬製剤の調製方法
本発明の安定液体医薬製剤は、特定の方法に限定されない周知の方法を使用して調製してもよい。例えば、液体医薬製剤は、界面活性剤及び糖又はその誘導体を含む溶液に、該溶液のpHを調節しながら緩衝剤を添加した後、得られた混合溶液に抗体を添加することにより調製され得る。さらに、液体医薬製剤は、精製過程の最終ステップにおいて何らかの非薬効成分(excipient)を含む溶液を調製した後、該溶液に残りの構成要素を添加することによって調製され得る。例えば、液体医薬製剤は、抗体、緩衝剤、及び糖又はその誘導体を含む溶液を精製過程の最終ステップにおいて調製した後、該溶液に界面活性剤を添加することによって調製され得る。
【0139】
さらに、製剤の調製方法は、凍結乾燥過程を含んでいてもよく、凍結乾燥過程を含んでいなくてもよい。
【0140】
そのような調製方法が凍結乾燥過程を含んでいない場合、例えば、本発明の液体医薬製剤は、調製され、次に滅菌法などにより処理されて、密封された容器にすぐに入れられてもよい。
【0141】
そのような調製方法が凍結乾燥過程を含む場合、例えば、本発明の液体医薬製剤は調製及び凍結乾燥されるか、あるいは本発明の液体医薬製剤は調製され、次に凍結乾燥され、貯蔵/保存され、その後、そのような凍結乾燥及び/又は貯蔵/保存により除去又は改変された構成要素を補充又は置き換えてもよく、それにより本発明の液体医薬製剤を調製してもよい。あるいは、本発明の液体医薬製剤のうち、凍結乾燥及び/又は貯蔵/保存により除去又は改変され得る構成要素を除く構成要素を凍結乾燥してもよく、又は、そのような構成要素を凍結乾燥及び貯蔵/保存し、次に上記で除かれた構成要素をそこに添加してもよく、それにより本発明の液体医薬製剤を調製してもよい。
【0142】
本出願人らにより以前に出願された韓国特許出願番号第10-2017-0081814号及び韓国特許出願番号第10-2018-0102233号は参照により本明細書に取り込まれる。
【0143】
本発明の抗TNFα抗体で処置可能な疾患の処置方法
本発明は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に皮下投与するステップを含む、抗TNFαで処置可能な疾患の処置方法を提供する。
【0144】
本発明のある実施形態では、抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらの後発生物製剤からなる群から選択される1又は複数を含んでいてもよい。
【0145】
本発明のある実施形態では、抗体はインフリキシマブを含んでいてもよい。
【0146】
本発明のある実施形態では、抗体はキメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含んでいてもよい。
【0147】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0148】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0149】
本発明のある実施形態では、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでいてもよい。
【0150】
本発明のある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の濃度は10~200mg/mlであってもよい。
【0151】
本発明はまた、(A)抗TNFα抗体又はその抗原結合断片、(B)界面活性剤、(C)糖又はその誘導体、及び(D)緩衝剤を含む組成物を対象に皮下投与するステップを含む、抗TNFαで処置可能な疾患の処置方法を提供する。
【0152】
本発明のある実施形態では、(B)界面活性剤は、ポリソルベート、ポロクサマー、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0153】
本発明のある実施形態では、(B)界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はこれらの2種類以上の混合物を含んでいてもよい。
【0154】
本発明のある実施形態では、(B)界面活性剤は、ポリソルベート80を含んでいてもよい。
【0155】
本発明のある実施形態では、(B)界面活性剤の濃度は0.02~0.1%(w/v)であってもよい。
【0156】
本発明のある実施形態では、(C)糖は、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、又はこれらの2種類以上の混合物を含んでいてもよく、(C)糖の誘導体は、糖アルコール、糖酸、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0157】
本発明のある実施形態では、(C)糖又はその誘導体は、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロース、又はこれらの2種類上の混合物を含んでいてもよい。
【0158】
本発明のある実施形態では、(C)糖又はその誘導体の濃度は1~10%(w/v)であってもよい。
【0159】
本発明のある実施形態では、(D)緩衝剤は酢酸塩又はヒスチジンを含んでいてもよい。
【0160】
本発明のある実施形態では、(D)緩衝剤の含有量は1~50mMであってもよい。
【0161】
本発明のある実施形態では、前記組成物のpHは4.0~5.5であってもよい。
【0162】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、又はこれらの混合物を含んでいなくてもよい。
【0163】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、K2SO4、又はこれらの混合物を含んでいなくてもよい。
【0164】
本発明のある実施形態では、前記組成物はキレート化剤を含んでいなくてもよい。
【0165】
本発明のある実施形態では、前記組成物は保存剤を含んでいなくてもよい。
【0166】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、水性担体、抗酸化剤、又はこれらの2種類以上の混合物をさらに含んでいてもよい。
【0167】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、40±2℃の温度で1カ月保存後に測定される粘度が0.5~10.0cpであってもよく、又は、5±3℃の温度で6カ月保存後に測定される粘度が0.5~5.0cpであってもよい。
【0168】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体又はその抗原結合断片、(B)界面活性剤、(C)糖又はその誘導体、及び(D)酢酸塩又はヒスチジンを含む緩衝剤を含んでいてもよい。
【0169】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、90~180mg/mlの抗体又はその抗原結合断片、(B)0.02~0.1%(w/v)の界面活性剤、(C)1~10%(w/v)の糖又はその誘導体、及び(D)酢酸塩又はヒスチジンを含む1~50mMの緩衝剤を含んでいてもよい。
【0170】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、90~180mg/mlの抗体又はその抗原結合断片、(B)0.02~0.1%(w/v)のポリソルベート、(C)1~10%(w/v)のソルビトール、及び(D)酢酸塩を含む1~50mMの緩衝剤を含んでいてもよい。
【0171】
本発明のある実施形態では、前記組成物は皮下投与されてもよい。
【0172】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、使用前に、再構成ステップ、希釈ステップ、又はこれらの両方を受けなくてもよい。
【0173】
本発明のある実施形態では、安定性組成物は、使用前に充填済注射器中に充填されてもよい。
【0174】
本発明のある実施形態では、前記組成物は、使用前に自己注射器中に含まれていてもよい。
【0175】
抗TNFα抗体で処置可能な疾患
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体で処置可能な疾患は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、強直性脊椎炎、若年性突発性関節炎、新生児溶血性疾患、炎症性腸疾患、多発性硬化症、臓器移植拒絶反応の予防、非ホジキンリンパ腫、転移性がん、未熟児網膜症、卵巣がん、胃がん、頭頚部がん、骨粗鬆症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、侵襲性カンジダ症、乳がん、黒色腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腎細胞癌、直腸結腸がん、喘息、上咽頭がん、出血性ショック、黄色ブドウ球菌感染、及び濾胞性リンパ腫からなる群から選択される。
【0176】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体で処置可能な疾患は、インフリキシマブの静脈内投与により処置可能な疾患であってもよい。
【0177】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体で処置可能な疾患は、インフリキシマブの静脈内投与により処置可能な関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、又は強直性脊椎炎であってもよい。
【0178】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される対象は、メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に対する反応が不十分である患者である。
【0179】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される対象は、メトトレキサート及びその他のDMARDで以前に処置されていない患者である。
【0180】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される対象は、一般的な治療に対する適切(proper)な反応を示さない重度の軸性症状及び炎症に関連している血清学的指標の上昇を示す患者である。
【0181】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される対象は、メトトレキサート、シクロスポリン、又は皮膚光化学療法(ソラレン紫外線A波療法:PUVA)を含む全身治療に対して反応しないか、禁忌であるか、又は不耐性である患者である。
【0182】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される対象は、コルチコステロイド、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、又は免疫抑制剤による処置に対して十分な反応がないか、そのような治療に対して不耐性であるか、又はそのような治療方法が禁忌である患者である。
【0183】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体が投与される対象は、抗生物質療法、排出療法(excretion therapy)、又は免疫抑制療法を含む一般的な治療に対して反応しない患者である。
【0184】
本発明のある実施形態では、皮下投与後の患者は、
(a)DAS28(28箇所の関節における疾患活動性スコア)の少なくとも2.0の減少、又は
(b)CDAI(クローン病活動性指数)の少なくとも70の減少
から選択される1又は複数の特徴を示し得る。
【0185】
投与用量及び投与間隔
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は60~300mgの用量で投与されてもよい。具体的には、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、又は300mgの用量で投与されてもよい。
【0186】
本発明の別の実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は90~180mgの用量で投与されてもよい。本発明の別の実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は90~300mgの用量で投与されてもよい。本発明の別の実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は120~240mgの用量で投与されてもよい。
【0187】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、80~100mg、110~130mg、170~190mg、又は230~250mgの用量で投与されてもよい。
【0188】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、80~190mg、90~180mg、110~130mg、90mg、120mg、又は180mgの用量で関節リウマチを有する患者に投与されてもよい。
【0189】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、80~250mg、110~250mg、110~130mg、120~240mg、140~160mg、170~190mg、230~250mg、120mg、150mg、180mg、又は240mgの用量で潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、又は強直性脊椎炎を有する患者に投与されてもよい。
【0190】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、患者の体重が80kg未満である場合は90~180mgの用量で投与されてもよく、患者の体重が80kg以上である場合は190~270mgの用量で投与されてもよい。
【0191】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、患者の症状が改善しない場合、又は治療反応が失われた場合、用量を増やして投与されてもよい。より具体的には、投与量は、1.1~3倍、1.1~2.5倍、1.1~2.1倍、1.5~2.1倍、1.7~2.1倍、及び2倍増加させてもよい。
【0192】
クローン病について、治療反応が失われたことを決定するための判断基準は、患者のCDAIスコアが70ポイント以上増加し、且つ、患者のCDAIの合計スコアが220ポイント以上である場合に基づき得る。潰瘍性大腸炎について、そのような基準は、患者が以下の条件(a)を満たし、且つ、(b)又は(c)の少なくとも1つを満たす場合に基づき得る。
(a)直腸出血サブスコアが最小スコアから1ポイント以上増加し、実測値が1ポイント以上である、且つ
(b)部分Mayoスコアが最小スコアから2ポイント以上増加し、実測値が4ポイント以上である、又は
(c)内視鏡サブスコアが最小スコアから1ポイント以上増加し、実測値が1ポイントを超える。
【0193】
本発明のある実施形態では、患者の症状が改善されず、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の用量を240mgまで増やした場合、用量をさらに増やさないことが好ましいことがある。240mgの用量が投与された患者がそのような用量からさらに増量された場合、高濃度の薬剤により肝臓損傷などが引き起こされることがある。
【0194】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、5週目、10週目、15週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、25週目、26週目、27週目、28週目、29週目、30週目、31週目、32週目、33週目、32週目、及び35週目以降に、用量を増やして投与されてもよい。より好ましくは、そのような用量の増加は30週目以降に行われ得る。そのような用量の増加が30週目以前に行われる場合、既存の用量の医学的効果を確認するための十分な時間がないことがある。そのような用量の増加が30週目以降に行われる場合、患者の症状を悪化させる副作用が生じることがある。
【0195】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は1~8週間の間隔で投与されてもよい。具体的には、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は、1週間、1.5週間、2週間、2.5週間、3週間、3.5週間、4週間、4.5週間、5週間、5.5週間、6週間、6.5週間、7週間、7.5週間、又は8週間の間隔で投与されてもよい。
【0196】
本発明の別の実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片は2~4週間の間隔で投与されてもよい。
【0197】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ:次回適用直前の最低濃度)が、患者への皮下投与後に0.01μg/ml以上に維持される投与方法が提供されてもよい。より具体的には、最低血清濃度が、0.01~50μg/ml、0.01~45μg/ml、0.01~40μg/ml、0.01~35μg/ml、0.01~30μg/ml、0.01~25μg/ml、0.01~20μg/ml、0.01~15μg/ml、0.01~10μg/ml、0.01~6μg/ml、0.1~6μg/ml、5μg/ml、又は1μg/mlに維持される投与方法が提供されてもよい。
【0198】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ)が、関節リウマチ疾患を有する患者への皮下投与後に0.01μg/ml以上、0.01~50μg/ml、0.01~40μg/ml、0.01~30μg/ml、1~40μg/ml、又は1μg/ml以上に維持される投与方法が提供されてもよい。好ましくは、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ)は、関節リウマチを有する患者については、1μg/mlであってもよい。
【0199】
本発明のある実施形態では、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ)が、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者への皮下投与後に0.01μg/ml以上、0.01~60μg/ml、0.01~50μg/ml、0.01~45μg/ml、5~50μg/ml、又は5μg/ml以上に維持される投与方法が提供されてもよい。
【0200】
IBD患者について、好ましくは、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血清濃度(Cトラフ)は5μg/mlであってもよい。
【0201】
前投与
抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を皮下投与するステップの前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与するステップが含まれていてもよい。
【0202】
本発明のある実施形態では、皮下投与ステップの前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与するステップを少なくとも1回行ってもよく、2回又は3回行ってもよい。
【0203】
本発明のある実施形態では、(a)関節リウマチ疾患を有する患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を2回静脈内投与された患者であってもよく、(b)潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を2回又は3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0204】
本発明のある実施形態では、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目及び2週目に2回静脈内投与された患者であるか、又は抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目、2週目、及び6週目に3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0205】
本発明のある実施形態では、(a)関節リウマチ疾患を有する患者は、皮下投与の前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目及び2週目に2回静脈内投与された患者であってもよく、(b)潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者は、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目及び2週目に2回静脈内投与された患者であるか、又は抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目、2週目、及び6週目に3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0206】
本発明のある実施形態では、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1~10mg/kgの用量で静脈内投与するステップが含まれていてもよい。具体的には、皮下投与の前に、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、又は10mg/kgの用量で静脈内投与するステップが含まれていてもよい。
【0207】
本発明の別の実施形態では、皮下投与ステップの前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を2~8mg/kgの用量で静脈内投与するステップが含まれていてもよい。本発明の別の実施形態では、皮下投与ステップの前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を3~5mg/kgの用量で静脈内投与するステップが含まれていてもよい。
【0208】
本発明のある実施形態では、(a)関節リウマチ疾患を有する患者は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回の投与につき3mg/kgの用量で静脈内投与された患者であってもよく、(b)潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、関節症性乾癬、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される1又は複数の疾患を有する患者は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回の投与につき5mg/kgの用量で静脈内投与された患者であってもよい。
【0209】
本発明のある実施形態では、皮下投与ステップの前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与するステップが含まれていてもよく、このステップの前に、最後の静脈内投与と最初の皮下投与との間隔が1~8週間であるステップが含まれていてもよい。具体的には、1週間、1.5週間、2週間、2.5週間、3週間、3.5週間、4週間、4.5週間、5週間、5.5週間、6週間、6.5週間、7週間、7.5週間、又は8週間の間隔で投与するステップが含まれていてもよい。
【0210】
本発明の別の実施形態では、皮下投与ステップの前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与するステップが含まれていてもよく、このステップの前に、最後の静脈内投与と最初の皮下投与との間隔が2~8週間、2~4週間、又は4週間であるステップが含まれていてもよい。
【0211】
本発明のある実施形態では、皮下投与ステップの前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与するステップが含まれていてもよく、最後の静脈内投与と最初の皮下投与との時間間隔が1~8週間であってもよい。具体的には、1週間、1.5週間、2週間、2.5週間、3週間、3.5週間、4週間、4.5週間、5週間、5.5週間、6週間、6.5週間、7週間、7.5週間、又は8週間の間隔で投与するステップが含まれていてもよい。
【0212】
本発明の別の実施形態では、皮下投与ステップの前に抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与するステップが含まれていてもよく、最後の静脈内投与と最初の皮下投与との時間間隔が2~4週間であってもよい。
【0213】
本発明の別の実施形態では、最初の皮下投与の時間は、前投与濃度のレベルが皮下投与期の間の定常状態での血中濃度と近くなるような方法で、血中の低濃度のインフリキシマブにより引き起こされ得るADAが起こる可能性を最小限にするように設定される。上記条件を考慮して、最後の静脈内投与と最初の皮下投与との最適な間隔は、開発された母集団PKモデルに基づいて行われたシミュレーションによって決定された。シミュレーションの結果、最後の静脈内投与の2~4週間後において、より好ましくは、最後の静脈内投与の4週間後(すなわち、10週目)において、皮下投与の維持期の間の定常状態での前投与濃度の期待されるレベルと平均血中濃度が最も類似しており、血中濃度の変化も小さかった。したがって、最初の皮下投与の時間を10週目に設定することにより、試験期間中に期待される、定常状態での前投与濃度の平均レベルに最も速く到達すると期待される。
【0214】
最初の皮下投与が最後の静脈内投与後の2週間以内に行われる場合、皮下投与の維持期の間の定常状態での前投与濃度の期待されるレベルよりも血中濃度が高くなることがある。最初の皮下投与が最後の静脈内投与の6週間後の時点で行われる場合、皮下投与の維持期の間の定常状態での前投与濃度の期待されるレベルよりも血中濃度が低くなることがあり、皮下投与が4週間の時点(10週目)で行われる場合と比較して、試験期間中に期待される、血中濃度が定常状態での前投与濃度の平均レベルに比較的遅く到達することがある。本発明の別の実施形態では、患者は、皮下投与の前に、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目及び2週目に2回静脈内投与された患者であるか、又は抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を0週目、2週目、及び6週目に3回静脈内投与された患者であってもよい。
【0215】
同時投与
その他の生物学的製剤又は化学療法剤を本発明の抗TNFα抗体又はその抗原結合断片と共に投与してもよい。
【0216】
投与は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片の投与と同時に、投与の前に、又は投与の後に行われる。
【0217】
本発明のある実施形態では、同時投与される生物学的製剤は、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0218】
本発明のある実施形態では、同時投与される化学療法剤は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、ステロイド、又は免疫抑制剤を含んでいてもよい。
【0219】
本発明のある実施形態では、同時投与される疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0220】
本発明のある実施形態では、同時投与されるステロイドは、コルチコステロイド、グルココルチコイド、コルチゾール、ミネラルコルチコイド、アルドステロン、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0221】
本発明のある実施形態では、同時投与される免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、シクロスポリンA、タクロリムス、ミコフェノール酸、ブレディニン、mTOR阻害剤、抗リンパ球抗体、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0222】
製品
本発明はまた、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物、及び前記組成物を密閉状態で入れる容器を含む製品を提供する。
【0223】
抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は上記に記載の通りである。
【0224】
本発明のある実施形態では、容器は、これらに限定されないが、ガラス、ポリマー(プラスチック)、金属などの材料で作られていてもよい。本発明のある実施形態では、容器は、これらに限定されないが、ボトル、バイアル、カートリッジ、注射器(充填済注射器又は自己注射器)、又はチューブであってもよい。本発明のある実施形態では、容器は、ガラスバイアル若しくはポリマーバイアル、又はガラス充填済注射器若しくはポリマー充填済注射器であってもよい。
【0225】
上記バイアル、カートリッジ、充填済注射器、自己注射器などの具体的な製品形態、及び安定液体医薬製剤を前記バイアル、カートリッジ、充填済注射器、自己注射器などに充填する方法は、本発明が属する技術分野の当業者によって容易に利用又は実施され得る。例えば、米国特許第4,861,335号及び米国特許第6,331,174号などは、充填済注射器の具体的な製品形態及びその充填方法を開示する。例えば、米国特許第5,085,642号及び米国特許第5,681,291号などは、自己注射器の具体的な製品形態及びその組み立て方法を開示する。本発明において使用される上記バイアル、カートリッジ、充填済注射器、自己注射器などは、それ自体が市販の製品であってもよく、又は抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物の物理的特性、投与される領域、その投与用量などを考慮して別個に製造した製品であってもよい。
【0226】
本発明のある実施形態では、容器の内側はシリコンオイルでコーティングされていなくてもよい。容器がシリコンオイルでコーティングされている場合、その安定性が損なわれることがある。容器は単回投与容器又は複数回投与容器であってもよい。
【0227】
本発明のある実施形態では、前記製品は、抗TNFα抗体又はその抗原結合断片を含む組成物の使用方法、前記組成物の保存方法、又はこれらの両方を提供する説明書をさらに含んでいてもよい。前記組成物の使用方法は、TNFαの活性が有害である疾患の処置方法を含んでいてもよく、投与経路、投与用量、及び投与タイミングを含んでいてもよい。
【0228】
本発明のある実施形態では、前記製品は、市販の観点及び使用者の観点から、その他の必要な手段、例えば、針、注射器などを含んでいてもよい。
【実施例】
【0229】
実施例を参照にして以下に本発明を説明する。しかしながら、これらの実施例は、単に例示的な目的のためであって、本発明をの範囲を限定することを意図していないことをが理解されるであろう。
【0230】
実施例1.クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)を有する患者へのインフリキシマブの皮下投与の安全性及び治療有効性の評価(試験1.6)
実施例1-1.試験プロトコル
インフリキシマブ(CT-P13)の試験は、皮下投与のためのインフリキシマブ(以下、インフリキシマブSC)と静脈内投与のためのインフリキシマブ(以下、インフリキシマブIV)の間の活動性CD又は活動性UCを有する患者における54週目までの薬物動態、有効性、及び安全性を評価することを目的とする非盲検無作為化多施設並行群第I相試験であり、この試験は2つのパートから構成された。
【0231】
パート1は、CD患者におけるインフリキシマブSCの最適用量を特定することを目的とするものであり、最初の30週間にわたる5mg/kgのインフリキシマブIVに相当するインフリキシマブSCの最適用量が、22週目から30週目の間の定常状態での濃度時間曲線下面積(AUCτ)により特定された。パート1の場合、試験期間は、スクリーニング(最大3週間)から試験終了受診までの期間を含む最大65週間続いた。
【0232】
パート2は、CD患者又はUC患者においてインフリキシマブSCが薬物動態的にインフリキシマブIVに劣っていないことを確認することを目的とするものであり、22週目での前投与血清濃度(Cトラフ)によって実証された。パート2において、5mg/kgのインフリキシマブIVに相当するインフリキシマブSCの最適投与用量及び投与間隔は、パート1の最初の30週にわたる薬物動態、有効性、及び安全性データに基づいた独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)により、以下のように決定された。
*患者の体重が80kg未満である患者:120mgのインフリキシマブSCを2週間ごとに投与、及び
*患者の体重が80kg以上である患者:240mgのインフリキシマブSCを2週間ごとに投与。
【0233】
パート1
この試験に参加するためには、患者は以下の適格基準の全てを満たす必要があった。
*クローン病活動性指数(CDAI)のスコアが220~450ポイントである活動性疾患を患っていた患者、
*治験薬の最初の投与の少なくとも3カ月前にCDと診断されていた患者、及び
*活動性CDの処置を受けてきたが、コルチコステロイド及び/又は免疫抑制剤による十分且つ適切な治療過程にもかかわらず反応がなかった患者、又はそのような治療に対して不耐性であったか、若しくは医学的禁忌であった患者。
【0234】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、この試験から除外された。
*CDの処置のための生物学的製剤及び/又はその他の疾患の処置のためのTNFα阻害剤を以前に投与された患者、
*インフリキシマブの任意の非薬効成分、又は任意の他のマウス及び/又はヒトタンパク質に対するアレルギーを有していた患者、又は免疫グロブリン製品に対する過敏症を有していた患者、
*治験薬の最初の投与(0日目)前6カ月以内に活動性の腸膀胱瘻、腸後腹膜瘻、腸管皮膚瘻、及び腸腟瘻を有していた患者(治験責任医師の見解による臨床的に重篤な症状を伴わない腸膀胱瘻、及び排出問題を伴わない痔瘻は許容された)、
*治験薬の最初の投与(0日目)前に3回以上の小腸切除術を受けていた患者、
*現在又は過去のC型肝炎慢性感染歴、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)、又は現在のB型肝炎感染を有していた患者、及び
*妊娠中の女性患者。
【0235】
この試験は、スクリーニング、処置期間(投与負荷期及び維持期)、及び試験終了の3つの試験期間から構成された。スクリーニングは治験薬の最初の投与の21日前から1日前の間に行われ、試験に対する患者の適格性が決定された。B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)の感染状態、出産可能な女性に対する尿及び血清の妊娠試験、大腸内視鏡検査、CRP、12誘導心電図、臨床検査などを含む全ての評価が行われた。また、活動性結核(TB)を有する患者を除外するためにインターフェロンγ遊離試験(IGRA)及び胸部X線検査が行われた。
【0236】
0日目(0週目)に、適格基準の全てを満たし、除外基準をいずれも満たさなかった患者が試験に参加し、0週目及び2週目にインフリキシマブIVが全ての参加患者に投与された。患者は、治験薬の投与開始の30~60分前に前投与されることがあり、治験責任医師の判断により、これらに限定されないが、(2~4mgのクロルフェニラミンと等価用量で)抗ヒスタミン薬、ヒドロコルチゾン、パラセタモール、及び/又は(10mgのセチリジンと等価用量で)非鎮静型抗ヒスタミン薬などが前投与されることがあった。
【0237】
2回の十分用量が投与され、治験責任医師の判断に基づく安全性の懸念のない患者は、42日目(6週目)の処置の前にインフリキシマブSC又はインフリキシマブIVのいずれかに無作為に割り当てられた。処置の割り当ての無作為化は、地域(欧州又は非欧州)、アザチオプリン若しくは6-メルカプトプリン又はMTX処置の現在の使用(使用又は未使用)、6週目でのCDAI-70による臨床反応の存在、及び6週目での体重(70kg未満、又は70kg以上)によって層別化した。活動性CDを有する合計45人の患者が参加し、その中から44人の患者が6週目に1:1:1:1の比で4つの試験コホートに無作為に割り当てられ、治験薬が54週目まで投与された(表1)。
【0238】
【0239】
コホート1に割り当てられた患者は、6週目及びその後の8週間ごと(14週目、22週目、30週目、38週目、46週目、及び54週目)に7回用量のインフリキシマブIVが追加投与された。コホート2、3、及び4に割り当てられた患者は、インフリキシマブSCが6週目に最初に投与され、次に54週目まで2週間ごとにインフリキシマブSCが追加投与された。患者が最初に反応したが受診ごとに反応を失った場合、30週目からコホート1の患者において10mg/kgまでの用量漸増が認められた。コホート2、3、及び4のすべての患者に割り当てられた最初の用量は、最適用量が用量設定により確認された後にその最適用量に調節された。その後、最適用量を用いた追加のSC注射が54週目まで行われた。各治験施設で医療提供者により患者にインフリキシマブSCが注射された(6週目、8週目、10週目、14週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、38週目、46週目、及び54週目)。注射技術に関する適切な訓練の後に治験責任医師が適切であると判断した場合は、患者は残りの全ての週(12週目、16週目、18週目、20週目、32週目、34週目、36週目、40週目、42週目、44週目、48週目、50週目、及び52週目)においてインフリキシマブSCを自己注射することができた。
【0240】
患者は、臨床的評価及び採決のために所定の時間間隔で治験施設に戻った。受診ごとに、患者は、有事事象(AE)及び併用薬について質問され、結核(TB)の臨床的な兆候及び症状についてモニタリングされた。22週目から30週目の間に定常状態で主要薬物動態評価項目の評価を行い、54週目までの処置中に副次的薬物動態評価項目の評価を行った後、事象の予定において指定されている時点で、分析のための採血、並びに有効性、PD、及び安全性の評価をそれぞれ行った。
【0241】
試験終了受診は、維持期の終了の8週間後に行われた。しかしながら、患者が試験を中止した場合は、受診は最後の投与を受けた8週間後に行われた。いずれかの理由で脱落した患者については、中止した日(又は中止した翌日)に全ての手順を行い、最後の投与を受けた8週間後に全ての試験終了評価を完了させるようにした。
【0242】
パート2
パート2は、パート1の最初の30週間にわたって確認されたPK、有効性、PD、及び安全性のデータを含むPKモデル化報告データに関する、独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)による審査に基づいて開始された。
【0243】
この試験に参加するためには、患者は以下の基準の全てを満たす必要があった。
【0244】
活動性クローン病の適格基準
*クローン病活動性指数(CDAI)のスコアが220~450ポイントである活動性疾患を患っていた患者、
*治験薬の最初の投与の少なくとも3カ月前にCDと診断されていた患者、及び
*活動性CDの処置を受けてきたが、コルチコステロイド及び/又は免疫抑制剤による十分且つ適切な治療過程にもかかわらず反応がなかった患者、又はそのような治療に対して不耐性であったか、若しくは医学的禁忌であった患者。
*以下の事項のうちの少なくとも1つを満たしていた患者:
・C反応性タンパク質(CRP)の血清濃度が0.5mg/dL以上であった、
・糞便カルプロテクチンの濃度が100μg/g以上であった、及び
・クローン病(CD)の簡易内視鏡的活動性スコア(SES-CD)が、回腸-結腸CDについて6ポイント以上、回腸CD又は結腸CDについて、少なくとも1つのセグメントについて潰瘍スコアを含む4ポイント以上である。
【0245】
活動性潰瘍性大腸炎の適格基準
*6~12ポイントの総Mayoスコアにより定義され、スクリーニング時に2以上の内視鏡的サブスコアにより示されるような活動性潰瘍の内視鏡的証拠を示す活動性UCを有していた患者。
*治験薬の最初の投与(0日目)前のUCの罹患期間が少なくとも3カ月であった患者。
*活動性UCの処置を受けてきたが、コルチコステロイド単独又はコルチコステロイドと6-MP若しくはAZAとの併用、及び5-ASA含有薬剤を含む従来の治療にもかかわらず反応しなかった患者、又はそのような治療に対して不耐性であったか、若しくは禁忌であった患者。
【0246】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、この試験のパート2から除外された。
*CD又はUCの処置のための生物学的製剤及び/又はその他の疾患の処置のためのTNFα阻害剤を以前に投与された患者、
*インフリキシマブの任意の非薬効成分、又は任意の他のマウス及び/又はヒトタンパク質に対するアレルギーを有していた患者、又は免疫グロブリン製品に対する過敏症を有していた患者、
*治験薬の最初の投与(0日目)前6カ月以内に活動性の腸膀胱瘻、腸後腹膜瘻、腸管皮膚瘻、及び腸腟瘻を有していた患者(治験責任医師の見解による臨床的に重篤な症状を伴わない腸膀胱瘻、及び排出問題を伴わない痔瘻は許容された)、
*治験薬の最初の投与(0日目)の前に3回以上の小腸切除術を受けていた患者、
*スクリーニングの2週間前にUCの処置のためにコルチコステロイド又は5-アミノサリチル酸を含む薬剤を直腸投与されていたUC患者、
*UCの罹患期間が8年間以上であった患者は、治験薬の最初の投与(0日目)前1年以内に行われた全大腸内視鏡検査による結腸直腸のがん又は異形成の非存在についての文書根拠が必要があった、
*B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)に感染した患者、及び
*妊娠中の女性患者。
【0247】
パート2は、スクリーニング、処置期間、及び試験終了の3つの試験期間から構成された。スクリーニングは治験薬の最初の投与の42日前から0日目の間に行われ、試験に対する患者の適格性が評価された。B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)の感染、出産可能な女性に対する尿及び血清の妊娠試験、大腸内視鏡検査(CDを有する患者)、直腸S状結腸鏡検査(UCを有する患者)、CRP、12誘導心電図、臨床検査などを含む全ての検査が行われた。また、結核(TB)患者を除外するためにインターフェロンγ遊離試験(IGRA)及び胸部X線検査が行われた。
【0248】
0日目(0週目)に、適格基準の全てを満たし、除外基準をいずれも満たさなかった患者が試験に参加し、インフリキシマブIVを全ての参加患者に0週目及び2週目に2回、それぞれ単一用量で投与した。患者は、治験薬に対する過敏性を予防できるように、治験薬の投与開始の30~60分前の時点で、治験責任医師の判断により、以下の前投薬(これらに限定されない)を受ける適格があった(例えば、「2~4mgのクロルフェニラミンと等価用量で」抗ヒスタミン薬、ヒドロコルチゾン、パラセタモール、及び/又は「10mgのセチリジンと等価用量で」非鎮静型抗ヒスタミン薬)。
【0249】
2回の十分用量の治験薬が投与され、治験責任医師の判断に基づく安全性の懸念のない患者は、42日目(6週目)の投与の前にインフリキシマブSCが投与される処置群又はインフリキシマブIVが投与される処置群に無作為に割り当てられた。治験薬の投与に関するこのような割り当ての無作為化は、アザチオプリン若しくは6-メルカプトプリン又はMTX処置の現在の使用(使用又は未使用)、疾患の存在(CD又はUC)、CDAI-70によるCD臨床反応の存在若しくは6週目での部分MayoスコアによるUC臨床反応の存在、及び6週目での体重(80kg未満又は80kg以上)によって層別化した。活動性CD又は活動性UCを有する合計131人の患者が6週目に1:1の比で2つの試験処置群に無作為に割り当てられ、治験薬の投与が54週目まで行われた(表2)。
【0250】
【0251】
処置群1に割り当てられた患者は、6週目及び続いて22週目まで8週間ごとに(14週目及び22週目)インフリキシマブIVをさらに投与され、次にそのような5mg/kgのIVは30週目に120mg又は240mgのSCに変更され、SC用量は30週目の体重に基づいて決定された。その後、54週目まで2週間ごとに上記の用量でインフリキシマブSCが投与された。処置群2に割り当てられた患者は、6週目の体重に基づいてインフリキシマブSCの用量が決定され、6週目から54週目まで2週間ごとにその用量でインフリキシマブSCが投与された。治験責任医師の決定により30週目から用量の増加が容認された。治験施設受診ごと(6週目、14週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、38週目、46週目、及び54週目)に医療提供者により患者にインフリキシマブSCが注射された。しかしながら、適切な注射技術について患者を訓練した後に治験責任医師が適切であると判断した場合は、残りの全ての週において、患者はインフリキシマブSCを自己注射することが可能であった。
【0252】
22週目に主要薬物動態評価項目の評価を行い、次に22週目から30週目の間の定常状態の間、及び54週目までの処置期間中に、副次的薬物動態評価項目の評価を行った。事象の予定において指定されている時点で、分析のための採血、並びに有効性、PD、及び安全性の評価を行った。
【0253】
試験終了受診は、維持期の終了の2週間後に行われた。しかしながら、患者がSC投与後に途中で試験を中止した場合は、受診は最後の投与の2週間後に行われた。しかしながら、患者がIV投与後に途中で試験を中止した場合は、そのような受診は最後の投与の8週間後に行われた。脱落した患者の場合は、脱落した日又は脱落した翌日に全ての試験手順を行い、患者への最後の投与後の所定の時点で全ての試験終了評価を完了させるようにした。
【0254】
パート2の場合、それぞれの種類についての臨床的評価、採血、及び試験受診は、事象の予定において指定されている時点でパート1に示された方法と同じ方法で行われた。
【0255】
実施例1-2.PK-PDモデル化による有効性評価
PK-PDモデルの開発
CT-P13の皮下(SC)投与についての母集団薬物動態・薬力学(PK-PD)モデルは、将来の投与用量及び投与計画のPKをシミュレーションするためだけでなく、CT-P13 SCの有効性をシミュレーションするためにも確立された。母集団PK-PDモデルは、健康なボランティア(HV)、硬直性脊椎炎(AS)を有する患者、関節リウマチ(RA)を有する患者、及びクローン病(CD)を有する患者のCT-P13 IV投与データ、並びにCDを有する患者、UCを有する患者、RAを有する患者、及びHVを有する患者のインフリキシマブSC投与データ(Clinicaltrials.govの識別コード NCT01220518(試験1.1)、NCT01217086(試験3.1)、NCT02096861(試験3.4)、及びNCT02883452(試験1.6))に基づいた。
【0256】
上記データに基づいて開発されたPK-PDモデルを使用して、インフリキシマブの適応症を有する患者(RA、CD、又はUC)についてSC投与結果のシミュレーションを行った。試験1.6のパート1のPK-PDモデル化の結果として、
図1は、パート1のCD患者におけるインフリキシマブSC注射の最適用量を見出すことを目的とした。試験1.6のパート2の最適用量は、試験1.6のパート1のPK-PDモデル化の結果、及び試験1.6のパート1の薬物動態、有効性、及び安全性の結果に基づいて決定された。
図2は、30週目までの試験1.6のパート2の結果を加えた、試験1.6のパート2のPK-PDモデル化の結果としてもたらされた。試験1.6のパート1のPK-PDモデル化により炎症性腸疾患(IBD)を有する患者についてのインフリキシマブSCの最適用量が標的薬効血清濃度(5μg/ml)を達成するかどうかが確認された。IBD患者についての標的薬効血清濃度は包括的な文献検索により決定された。
【0257】
PK-PDモデル化分析は、非線形混合効果モデル化アプローチにより行われた。インフリキシマブの母集団PK分析の開始点は、比例誤差モデルを伴う線形消失を用いた1コンパートメントの点滴モデルであり、最終モデルは中心コンパートメントからの線形消失を示す2コンパートメントモデルにより行われた。全てのモデルは、クリアランス(CL)及び容積(V)に関してパラメーター化されていた。
【0258】
パート1及びパート2の最終PKモデルに関して、CT-P13試験における濃度時間曲線下面積(AUCτ)及び最低血清濃度(Cトラフ:次回適用直前の最低濃度)などのパラメーターについての予測値のそれぞれが、実際の用量、投与計画、及び投与経路のそれぞれに適用されるようにプロファイルが予測された。また、体重ごとの固定された用量、投与計画、及び投与経路を評価するために追加のシミュレーションが行われた。試験1.6のパート1の皮下用量のPK-PDモデル化及びシミュレーションはNONMEM v7.2により行い、パート2のPK-PDモデル化及びシミュレーションはNONMEM v7.3.0により行った。
【0259】
図1並びに表3及び表4(試験1.6のパート1のPK-PDモデル化)に示されるように、6週目から120mg、180mg、及び240mgを投与されたインフリキシマブSCにおいて、対照コホート(導入+5mg/kg IV Q8W)と比較して、有効な標的薬効血清濃度(5μg/ml)が達成されたことが実証された。さらに、PKパラメーター値のそれぞれが、定常状態で用量に比例して増加することが実証された。インフリキシマブSCにおいて、IV対象コホートに比べてC
トラフが高く、且つC
maxが低いことも実証された。この傾向は、SC製剤の特徴に起因して薬剤が皮下から全身循環にゆっくりと吸収されるために起こることが実証され、120mgのインフリキシマブSCとIV対象コホートの間でAUCτが同様であることが予測された。
【0260】
【0261】
【0262】
図2に示されるように(試験1.6のパート2のPK-PDモデル化)、120mgのインフリキシマブSCが体重にかかわらずCD患者及びUC患者に投与される場合、5mg/kgのインフリキシマブIVが投与されたコホートと比較して、インフリキシマブの血清濃度が定常状態を通して一定に維持され、標的薬効濃度を上回ることが実証された。120mgのインフリキシマブSCのC
トラフ及びCmaxが、試験1.6のパート1におけるPK-PDモデル化の結果(
図1)に示されるものと同様の傾向を示すことも実証された。試験1.6のパート2におけるPK-PDモデル化の結果に基づいて、2週間ごとの120mgのSCの投与により体重にかかわらずIBD患者に有効な治療効果が示され得ることが予測された。結果として、PK-PDモデル化の最終結果に基づいて、2週間ごとの120mgのSC投与がIBD患者に対する最適な用量であることが確認された。
【0263】
実施例1-3.実際の臨床結果(試験1.6のパート2)
安全性評価
実施例1-3-1.有害事象の概要
安全性評価(パート2の副次的評価項目)は、免疫原性、過敏症モニタリング(遅延過敏症モニタリングを含む)、バイタルサインの測定(血圧、心拍数、呼吸数、及び体温を含む)、体重、インターフェロンγ放出アッセイ(IGRA)、胸部X線、B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV1及びHIV-2)の感染状態、身体診察所見、12誘導心電図、有事事象(重篤有事事象(以下、SAE)を含む)、特に関心がある有事事象(点滴関連反応/過敏症/アナフィラキシー反応(投与関連反応)、遅延過敏反応、注射部位反応、感染症、及び悪性病変)、結核(TB)の兆候及び症状、臨床検査分析、妊娠試験、自前投薬及び同時投薬、並びに100mm視覚的アナログスケール(VAS)を用いた局所的な痛みについて行われた。
【0264】
この試験の累計安全性データは、54週目までに報告された有事事象を含んでおり、維持期(6週目~54週目)の間に処置中に発生した有事事象(TEAE)の全体の概要が表5に示された。概して、363個のTEAEが87人(66.4%)の患者、すなわち、それぞれ5mg/kgのIV処置群からの38人(58.5%)の患者及び120/240mgのSC処置群からの49人(74.2%)の患者で報告され、2つの処置群間で同様の割合を示していた。大多数のTEAEはグレード1又は2の強度であった。
【0265】
処置中に発生した重篤有事事象(TESAE)は11人(8.4%)の患者、すなわち、それぞれ5mg/kgのIV処置群からの6人(9.2%)の患者及び120/240mgのSC処置群からの5人(7.6%)の患者で報告された。全てのTESAEのうち、3人の患者(2.3%)が、治験責任医師により治験薬に関連するとみなされた。
【0266】
投与関連反応に分類されたTAEAは、5mg/kgのIV処置群からの2人(3.1%)の患者、及び120/240mgのSC処置群からの3人(4.5%)の患者で生じた。TEAEのうち、120/240mgの処置群における2人(3.0%)の患者のみで遅延過敏反応が生じた。
【0267】
局所的な注射部位反応に分類されたTAEAは、5mg/kgのIV処置群からの3人(4.6%)の患者、及び120/240mgのSC処置群からの15人(22.7%)の患者で生じた。注射部位反応として分類された高い割合の有事事象が120/240mgのSC処置群から生じた。高い割合の有事事象は投与経路による差異に起因し、その強度は全てグレード1又は2として示され、大部分の患者が別途の処置なしで回復した。
【0268】
感染症に分類されたTAEAは、5mg/kgのIV処置群からの19人(29.2%)の患者、及び120/240mgのSC処置群からの21人(31.8%)の患者で生じた。
【0269】
治験薬の中断の原因となるTEAEは、5mg/kgのIV処置群からの3人(4.6%)の患者、及び120/240mgのSC処置群からの1人(1.5%)の患者で報告された。
【0270】
【0271】
各集約において、患者が2つ以上の事象を報告した場合、患者は1回数えられた。最も重篤な事象のみが数えられた。関連性が「可能性がある」、「可能性が高い」、又は「疑う余地がない」と定義された場合にのみ、治験責任医師により各事象が治験薬に関連していると考えられた。
【0272】
実施例1-3-2.免疫原性評価
以下の表6に示されるように、30週目までは120/240mgのSC処置群におけるADA陽性患者の割合は5mg/kgのIV処置群のADA陽性患者の割合よりも高くはなく、30週目から120/240mgのSC処置群に切り替えた後でさえ5mg/kgのIV処置群のADA陽性の結果を有する患者の割合は増加しなかった。ADA陽性の結果を有する患者の割合は、54週目まではSC処置群とIV処置群の間で概ね同様である、0週目の薬剤投与以降、ADA陽性であると一度も特定されなかった患者の割合は処置群間で同様であった。
【0273】
【0274】
*略語:ADA:抗薬物抗体、NAb:中和抗体
*分子:0週目で治験薬を投与した後に一度でもADA又はNAbが陽性であると特定されたことがあった患者の数、分母:0週目で治験薬を投与した後に一度でも免疫原性の結果を示したことがあり、且つ、0週目での治験薬の投与前にADA又はNAbが陽性であると特定されたことがなかった患者の数;試験終了受診は数えなかった。
【0275】
実施例1-3-3.視覚的アナログスケール(VAS)を用いた局所部位の痛みの評価
視覚的アナログスケール(VAS)の範囲は0~100mmであり、スコアが高いほど痛みがより強いこと示した。以下の表7に示されるように、120/240mgのSC処置群において、6週目、すなわち、インフリキシマブSCの最初の投与時に、やや高いレベルのVASが観察された。しかしながら、2週間ごとにSC投与が繰り返されるので、そのような痛みは38週目まで減少する傾向があることが確認された。30週目に120mgのSCに切り替えられた5mg/kgのIV処置群の場合は、30週目にやや高いレベルの局所部位の痛みが観察された。しかしながら、2週間ごとのその後のSC投与に起因して、局所部位の痛みは38週目に減少した。局所部位の痛みは両方の処置群において46週目にやや増大し、その後、54週目に減少した。
【0276】
【0277】
治療有効性の評価
実施例1-3-4.CDAIにより測定される疾患活動性指数(クローン病を有する患者)
以下の表8に示されるように、6週目でのCD活動性指数(CDAI)の中央値は、2回用量の5mg/kgのIVからなるIV負荷投与計画の後、120/240mgのSC処置群において、5mg/kgのIV処置群よりも高い傾向があった。しかしながら、CDAIスコアは、両方の処置群において継続的に減少したので、CDAIスコアの平均及びCDAIスコアの基準値からの平均変化は、30週目まで両方の処置群間で同様であった。CDAIスコアの基準値からの平均変化は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後の46週目を除き、54週目まで2つの処置群間で同様であった。
【0278】
【0279】
実施例1-3-5.CDAI-70反応基準及びCDAI-100反応基準による臨床反応の評価
以下の表9に示されるように、CDAI-70による臨床反応を達成する患者の割合は、30週目まで5mg/kgのIV処置群及び120/240mgのSC処置群において広範囲に同等であった。CDAI-70による臨床反応を達成する患者の割合は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後の46週目を除き、54週目までIV処置群とSC処置群の間で広範囲に同様であった。5mg/kgのIV処置群の3人の患者は、46週目でCDAIスコアの一次的な増加が見られ、且つ、CDAI-70反応は示さなかったが、54週目でCDAI-70反応が回復した。CDAI-100反応基準による反応評価はCDAI-70の反応評価と同様の結果を示した。
【0280】
【0281】
実施例1-3-6.CDAIによる臨床的寛解の評価
以下の表10に示されるように、CDAIスコアによる臨床的寛解を達成する患者の割合は、30週目まで5mg/kgのIV処置群と120/240mgのSC処置群との間で概して同等であった。臨床的寛解率は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目まで2つの処置群の間で概ね同様であり、46週目に120/240mgのSC処置群においてやや高い臨床的寛解率が示された。この結果は、46週目にCDAIスコアの一時的増加が見られた5mg/kgのIV処置群の3人の患者の臨床反応の結果と一致していたが、その後に、これらの患者は46週目に臨床的寛解を達成しなかった。そのような患者は54週目にCDAIスコアによる臨床的寛解が回復した。
【0282】
【0283】
実施例1-3-7.Mayoスコアリングシステムにより測定される疾患活動性指数(潰瘍性大腸炎を有する患者)
以下の表11に示されるように、総Mayoスコア及び部分Mayoスコアの平均は、5mg/kgのIV処置群と120/240mgのSC処置群との間の基準値が同様であるという傾向があった。さらに、22週目に120/240mgのSC処置群からの総Mayoスコア及び部分Mayoスコアにおいてやや高い改善があった。しかしながら、総Mayoスコア及び部分Mayoスコアの平均及び基準値からの変化は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目に2つの処置群の間で同様の値になることが確認された。
【0284】
【0285】
実施例1-3-8.Mayoスコアリングシステムによる臨床反応の評価
以下の表12に示されるように、総Mayoスコアによる臨床反応を達成する患者の割合は、22週目に5mg/kgのIV処置群よりも120/240mgのSC処置群において高かった。22週目より前に試験を中断した患者、又は22週目に内視鏡検査を受けなかった患者は、120/240mgのSC処置群において4人(10.5%)であり、5mg/kgのIV処置群において11人(28.2%)であった。IV処置群において欠測率が高かったので、22週目に総Mayoスコアに基づく臨床反応率が比較的低かった。総Mayoスコアに基づく臨床反応率は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目に2つの処置群の間で同様であった。
【0286】
部分Mayoスコアによる臨床反応を達成する患者の割合は、22週目まで2つの処置群の間で広範囲に同様であったが、30週目にSC処置群においてやや高い反応率が観察された。部分Mayoスコアに基づく臨床反応率は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目まで2つの処置群の間で広範囲に同程度に類似しているという傾向があった。
【0287】
【0288】
実施例1-3-9.Mayoスコアによる臨床的寛解の評価(潰瘍性大腸炎を有する患者)
以下の表13に示されるように、総Mayoスコアによる臨床的寛解を達成する患者の割合は、22週目に5mg/kgのIV処置群よりも120/240mgのSC処置群で高かった。22週目より前に試験を中断した患者、又は22週目に内視鏡検査を受けなかった患者は、120/240mgのSC処置群において4人(10.5%)であり、5mg/kgのIVにおいて11人(28.2%)であった。IV処置群において欠測率が高かったので、22週目に総Mayoスコアに基づく臨床的寛解率が比較的低かった。総Mayoスコアに基づく臨床的寛解率は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目に2つの処置群の間で同様であった。
【0289】
部分Mayoスコアによる臨床的寛解率を達成する患者の割合は、30週目まで2つの処置群の間で広範囲に同様であり、22週目に5mg/kgのIV処置群よりも120/240mgのSC処置群においてやや高い臨床的寛解率が観察されるという傾向があった。部分Mayoスコアに基づく臨床的寛解率は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目まで2つの処置群の間で同様であるという傾向があった。
【0290】
【0291】
実施例1-3-10.粘膜治癒による有効性の評価(潰瘍性大腸炎を有する患者)
以下の表14に示されるように、粘膜治癒を達成する患者の割合は、22週目に5mg/kgのIV処置群よりも120/240mgのSC処置群で高かった。22週目より前に試験を中断した患者、又は22週目に内視鏡検査を受けなかった患者は、120/240mgのSC処置群において4人(10.5%)であり、5mg/kgのIVにおいて11人(28.2%)であった。IV処置群において欠測率が高かったので、22週目に粘膜治癒率が比較的低かった。粘膜治癒を達成する患者の割合は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、54週目に2つの処置群の間で同様であり、120/240mgのSCによる処置もまた5mg/kgのIV処置群において有効であることが示された。
【0292】
【0293】
薬物動態評価
実施例1-3-11.薬物動態パラメーター
図3及び以下の表15に示されるように、インフリキシマブの平均事前投与血清濃度は、0週目及び2週目に5mg/kgのインフリキシマブIVを投与した後、0週目から6週目の2つの処置群の間で同様であった。維持期から、120/240mgのSC処置群における平均事前投与血清濃度は、6週目から14週目に次第に増加し、インフリキシマブSCの2週間間隔の投与の結果、14週目から22週目にレベルが一定に維持された。5mg/kgのインフリキシマブIV処置群における平均事前投与血清濃度は、6週目から14週目に次第に減少し、インフリキシマブIVの8週間間隔の投与の結果、14週目から30週目にレベルが概して一定に維持された。この期間の平均事前投与血清濃度レベルは、5mg/kgのIV処置群と比較して、120/240mgのSC処置群において常に高かった。
【0294】
インフリキシマブの平均事前投与血清濃度は、5mg/kgのIVが30週目に120/240mgのSCに切り替えられた後、増加し続けた。38週目に、そのような平均は標的薬効血清濃度(5μg/ml)を上回り、120/240mgのSC処置群のインフリキシマブ血清濃度と同様のインフリキシマブ血清濃度に到達し、54週目まで一定のレベルに維持された。
【0295】
【0296】
*略語:AUCτ:定常状態でのモデル予測された濃度時間曲線下面積(22週目から30週目)、Cmax:モデル予測された最大血清濃度、Cトラフ:モデル予測されたトラフ血清濃度、及びCV%:変動係数(%)。
**5mg/kgのIV処置群からの患者は8週間ごとにインフリキシマブが投与され、120/240mgのSC処置群からの患者は2週間ごとにインフリキシマブが投与された。したがって、5mg/kgのIV処置群のPKパラメーターは22週目に得られ、120/240mgのSC処置群のPKパラメーターは22週目、24週目、26週目、及び28週目に得られた。
【0297】
実施例2.関節リウマチ(RA)を有する患者へのインフリキシマブの皮下投与の安全性及び治療有効性の評価(試験3.5)
実施例2-1.試験プロトコル
インフリキシマブ(CT-P13)の試験は、3カ月以上にわたってメトトレキサート(MTX)単独での治療に対して適当な反応を示さなかった活動性関節リウマチを有する患者における、MTX及び葉酸と組み合わせた、皮下投与のためのインフリキシマブ(以下、インフリキシマブSC)と静脈内投与のためのインフリキシマブ(以下、インフリキシマブIV)の間の、薬物動態、有効性、及び安全性を評価することを目的とする無作為化多施設並行群第I/III相試験であり、この試験は2つのパートから構成された。
【0298】
パート1は、インフリキシマブSCの最適用量を特定することを目的とするものであり、最初の30週間にわたる3mg/kgのインフリキシマブIVに相当するインフリキシマブSCの最適用量が、22週目から30週目の間の定常状態での濃度時間曲線下面積(AUCτ)により特定された。パート1の場合、スクリーニング(最大3週間)から試験終了受診の期間を含み、試験期間は最大65週間続いた。
【0299】
パート2は、インフリキシマブSCとインフリキシマブIVの間の有効性の非劣性を実証することを目的とするものであった。したがって、22週目に28箇所の関節を用いて、DAS28(28箇所の関節における疾患活動性スコア)(C反応性タンパク質、CRP)の基準値からの平均変化による臨床反応により決定された有効性の点において、インフリキシマブSCがインフリキシマブIVに劣っていないことが実証され得た。パート2の場合、インフリキシマブSCの投与用量及び投与間隔は、2週間ごとに120mgの投与に設定された。
【0300】
パート1
この試験に参加するためには、患者は以下の適格基準の全てを満たす必要があった。
*28箇所の関節のうち、少なくとも6箇所以上の関節膨張及び圧痛のある関節の存在により定義される活動性疾患を患い、C反応性タンパク質(CRP)の血清濃度が0.6mg/dL以上であった患者、及び
*治験薬の投与(0週目)前の少なくとも3カ月間、1週間当たり12.5~25mg(又は、韓国の患者については1週間当たり10~25mg)の用量のメトトレキサートで処置されており、治験薬の最初の投与前の最後の4週間に同じ用量で処置されていた患者。
【0301】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、この試験から除外された。
*RAの処置のための生物学的製剤及び/又はその他の疾患の処置のためのTNFα阻害剤を以前に投与された患者、
*インフリキシマブの任意の非薬効成分、又は任意の他のマウス及び/又はヒトタンパク質に対するアレルギーを有していた患者、又は免疫グロブリン製品に対する過敏症を有していた患者。
【0302】
この試験は、スクリーニング、処置期間、及び試験終了の3つの試験期間から構成された。スクリーニングは治験薬の最初の投与の21日前から1日前の間に行われ、試験に対する患者の適格性が評価された。B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)の感染状態、出産可能な女性に対する尿及び血清の妊娠試験、リウマチ因子、抗環状シトルリン化ペプチド、12誘導心電図、臨床検査などを含む全ての評価が行われた。また、TBを有する患者を除外するためにインターフェロンγ遊離試験(IGRA)及び胸部X線検査が行われた。
【0303】
試験に参加したすべての患者は、それぞれ0週目及び2週目にインフリキシマブIVの単回用量の投与を受けた。さらに、MTXの副作用に関連するAEを最小化又は防止するために葉酸と共にメトトレキサートが同時投与され、ここで、患者は、試験の開始から終了まで維持用量のMTXを受けることを指摘された。また、治験薬の投与開始前の30~60分前に前投与を受けることも可能であり、これらに限定されないが、(2~4mgのクロルフェニラミンと等価用量で)抗ヒスタミン薬、ヒドロコルチゾン、パラセタモール、及び/又は(10mgのセチリジンと等価用量で)非鎮静型抗ヒスタミン薬などの前投与を治験責任医師の判断により与えることも可能であった。
【0304】
2回の十分用量の治験薬が投与され、治験責任医師の判断に基づく安全性の懸念のない患者は、42日目(6週目)の処置の前に120mgのSC処置群又は3mg/kgのIV処置群のいずれかに無作為に割り当てられた。無作為の割り当ての無作為化は、国、2週間の血清CRP濃度(0.6mg/dl以下、又は0.6mg/dl超)、及び6週目での体重(70kg以下、又は70kg超)によって層別化した。活動性RAを有する合計50人の患者が参加し、その中から48人の患者が6週目に1:1:1:1の比で4つの試験コホートに無作為に割り当てられ、治験薬が54週目まで投与された(表16)。
【0305】
【0306】
コホート1に割り当てられた患者は、6週目及び続いて8週間ごとに(14週目、22週目、30週目、38週目、46週目、及び54週目)インフリキシマブIVを7回追加投与された。コホート2、3、及び4に割り当てられた患者は、6週目にインフリキシマブSCが最初に投与され、次に、54週目まで2週間ごとにインフリキシマブSCが追加投与された。コホート2、3、及び4の全ての患者に割り当てられた最初の用量は、最適用量が用量設定によって確認された後にその最適用量に調整された。その後、最適用量を使用する追加のSC注射が54週目まで行われた。治験施設受診ごと(6週目、8週目、10週目、14週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、38週目、46週目、及び54週目)に、医療提供者により患者にインフリキシマブSCが注射された。注射技術についての適切な訓練の後に治験責任医師が適切であると判断した場合は、残りの全ての週(12週目、16週目、18週目、20週目、32週目、34週目、36週目、40週目、42週目、44週目、48週目、50週目、及び52週目)において、患者はインフリキシマブSCを自己注射することが可能であった。
【0307】
患者は、臨床的評価及び採血のために所定の時間間隔で治験施設に戻った。受診ごとに、患者は、有事事象(AE)及び併用薬について質問され、結核(TB)の臨床的な兆候及び症状についてモニタリングされた。22週目から30週目の間の定常状態で主要薬物動態評価項目の評価を行い、54週目までの処置中に副次的薬物動態評価項目の評価を行った後、評価の予定において指定されている時点で、分析のための採血、並びに有効性、PD、及び安全性の評価をそれぞれ行った。
【0308】
試験終了受診は、維持期の終了時、又は患者が脱落した場合は投与の最終日の8週間後に行われた。患者への最後の投与の8週間後の時点で全ての試験終了評価を完了させるようにした。
【0309】
パート2
パート2は、パート1の最初の30週間にわたって確認されたPK、有効性、PD、及び安全性のデータを含むPKモデル化報告データに関する独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)による審査に基づいて開始された。
【0310】
パート2は、スクリーニング、30週目までの二重盲検期間及び続く24週間の非盲検期間を有する処置期間、並びに試験終了の3つの試験期間から構成された。スクリーニングは治験薬の最初の投与の42日前から0日目の間に行われ、試験に対する患者の適格性が評価された。B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)の感染、出産可能な女性に対する尿及び血清の妊娠試験、リウマチ因子、抗環状シトルリン化ペプチド、12誘導心電図、臨床検査などを含む全ての検査が行われた。また、TBを有する患者を除外するためにインターフェロンγ遊離試験(IGRA)及び胸部X線検査が行われた。
【0311】
試験に参加したすべての患者は、それぞれ0週目及び2週目にインフリキシマブIVの最初の投与を受けた。さらに、MTXの副作用に関連するAEを最小化又は防止するために葉酸と共にメトトレキサートが同時投与され、ここで、患者は、試験の開始から終了まで維持用量のMTXを受けることを指摘された。また、治験薬の投与開始前の30~60分前に前投与を受けることも可能であり、これらに限定されないが、(2~4mgのクロルフェニラミンと等価用量で)抗ヒスタミン薬、ヒドロコルチゾン、パラセタモール、及び/又は(10mgのセチリジンと等価用量で)非鎮静型抗ヒスタミン薬などの前投与を治験責任医師の判断により与えることも可能であった。
【0312】
2回の十分用量の治験薬が投与され、治験責任医師の判断に基づく安全性の懸念のない患者は、6週目(42日目)の処置の前に、充填済み注射器(PFS)によるインフリキシマブSCとプラセボIV、又はインフリキシマブIVとプラセボSC(PFS)のいずれかの投与に無作為に割り当てられた。無作為化は、国、2週間の血清CRP濃度(0.6mg/dl以下、又は0.6mg/dl超)、及び6週目での体重(100kg以下、又は100kg超)によって層別化した。活動性RAを有する合計357人の患者が参加し、その中から343人の患者が1:1の比で2つの試験処置群に無作為に割り当てられ、治験薬の投与が54週目まで行われた。さらに、二重プラセボデザインを用いて30週目まで盲検性が維持された(表17)。
【0313】
【0314】
処置群1に割り当てられた患者は、6週目及び続いて22週目まで8週間ごとに(14週目及び22週目)インフリキシマブIVが3回追加投与され、プラセボSCが6週目及び続いて28週目まで2週間ごとに投与された。その後、3mg/kgのIVが30週目に120mgのSC(PFS)に切り替えられた。次に、インフリキシマブSC(PFS)が54週目まで投与された。処置群2に割り当てられた患者は、インフリキシマブSC(PFS)が6週目に最初に投与され、次に2週間ごとに投与され、これは54週目まで継続された、プラセボIVが6週目、14週目、及び22週目に投与された。
【0315】
インフリキシマブSC(二重盲検期間の間のプラセボSC)は、治験施設受診ごと(6週目、14週目、22週目、24~28週目(PK評価のために受診した患者)、30週目、38週目、46週目、及び54週目)に医療提供者により患者に注射された。しかしながら、適切な注射技術について患者を訓練した後に治験責任医師が適切であると判断した場合は、残りの全ての週(8週目、10週目、12週目、16週目、18週目、20週目、24~28週目(PK評価のために受診しなかった患者)、32週目、34週目、36週目、40週目、42週目、44週目、48週目、50週目、及び52週目)において、患者はインフリキシマブSC(二重盲検期間の間のプラセボSC)を自己注射することが可能であった。
【0316】
特定の国においては、インフリキシマブSCは、46週目から54週目まで自己注射器(AI)により2週間ごとに自己注射され、次に56週目から64週目までインフリキシマブSC(PFS)の自己注射に切り替えられた。インフリキシマブSC(AI)の有用性が評価され得るように、前後の自己注射評価質問事項、自己注射評価チェックリスト、及び潜在的危険性チェックリストによる評価が行われた。
【0317】
パート2の場合、それぞれの種類についての臨床的評価、採血、及び試験受診は、評価の予定において指定されている時点で、パート1に示された方法と同じ方法で行われた。
【0318】
実施例2-2.PK-PDモデル化による有効性評価
シミュレーションは、インフリキシマブIV投与を行わずに導入期(0週目~2週目)に2週間間隔で120mgのインフリキシマブ(CT-P13)が皮下投与された場合のRA患者のコホートにおける薬物動態及び有効性(DAS28)を評価するために行われた。薬物動態及び有効性(DAS28)のプロファイルを、0週目及び2週目にインフリキシマブIVが投与された3mg/kgのIVコホート、及び0週目から2週間ごとにSC120mgが投与されたSC120mg実験コホートと比較した。最後に、定常状態でのCトラフ及び有効性(DAS28)を2つの処置コホート間で比較した。
【0319】
以前に実施されたRA患者についてのCT-P13 SCの試験データに基づいて今回のCT-P13に対するPK-PDモデル化が行われた。具体的には、PK及びPK-PDの分析モデル化に使用されるデータは、異なるコホートにおける7つの臨床試験から得らえたデータに基づいて開発された。今回のPK-PDモデル化は、体重、及び時間依存的に発生する免疫応答の効果を反映する、2コンパートメントPKモデルにより行われた。最終的なPDモデルは、DAS28反応の抑制に対するインフリキシマSCの効果を特定するための間接的応答モデルである。RA患者から得られたPK-PDモデル化シミュレーションは、CT-P13の試験3.1とCT-P13の試験3.5(n=992)のデータを使用する母集団PK-PD分析を含む。
【0320】
したがって、
図4及び
図5に示されるように、今回のPK-PDモデル化の結果は、定常状態でのC
トラフ及び有効性(DAS28)の点において2つの処置コホート間で有意な差がないことを示した。0週目から2週間ごとに120mgのインフリキシマブSCが投与されたコホートにおいて、中間値のC
トラフが標的薬効血清濃度、すなわち、1μg/mlよりも高い値であった。2つの投与計画間で有効性(DAS28)は同様であり、標的血清濃度が達成されることがモデル化により特定されることが実証され、2週間ごとの120mgのインフリキシマブSCがRA患者に対する最適用量であることも確認された。
【0321】
実施例2-3.実際の臨床結果(試験3.5のパート2)
安全性評価
実施例2-3-1.有害事象の概要
安全性評価は、副次的評価項目であり、免疫原性、過敏症モニタリング(遅延過敏症モニタリングを含む)、バイタルサインの測定(血圧、心拍数、呼吸数、及び体温を含む)、体重、インターフェロンガンマ放出アッセイ、胸部X線、B型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV1及びHIV-2)の感染状態、身体診察所見、12誘導心電図、有事事象(重篤有事事象を含む)、特に関心がある有事事象(点滴関連反応/過敏反応/アナフィラキシー反応(投与関連反応)、遅延過敏反応、注射部位反応、感染症、及び悪性病変)、結核の兆候及び症状、臨床検査分析、妊娠試験、自前投薬及び同時投薬、並びに100mm視覚的アナログスケール(VAS)を用いた局所的な痛みについて行われた
【0322】
累計安全性データは、試験終了受診までの治験薬との関連性にかかわらず処置中に発生した有事事象(TEAE)(及び重篤有事事象)を含んでおり、維持期(6週目~64週目)の間のTEAEの全体の概要が表18に示された。概して、622個のTEAEが209人(60.9%)の患者、すなわち、それぞれ3mg/kgのIV処置群からの117人(66.9%)の患者及び120mgのSC処置群からの92人(54.8%)の患者で発生し、2つの処置群間で同様の割合を示していた。また、大多数のTEAEはグレード1又は2の強度であった。全ての有事事象のうち、合計145人の患者(42.3%)において報告されたTEAEが、治験責任医師により治験薬に関連するとみなされた。
【0323】
処置中に発生した重篤有事事象(TESAE)は19人(5.5%)の患者、すなわち、それぞれ3mg/kgのIV処置群からの13人(7.4%)の患者及び120mgのSC処置群からの6人(3.6%)の患者で報告された。大多数のTESAEの強度はグレード3以下であることが示され、そのうち、治験責任医師により治験薬に関連するとみなされたTESAEが、3mg/kgのIV処置群からの4人(2.3%)の患者及び120mgのSC処置群からの3人(1.8%)の患者で報告された。また、全てのTESAEのうち、治験責任医師の決断に従った恒久的な治験薬の中断が、合計20人(5.8%)の患者(3mg/kgのIV処置群からの14人(8.0%)の患者;120mgのSC処置群からの6人(3.6%)の患者)で報告された。
【0324】
点滴関連反応(IRR)及び全身注射反応(SIR)を含む投与関連反応に分類されたTAEAのうち、合計15人(4.4%)の患者、すなわち、3mg/kgのIV処置群からの10人(5.7%)の患者及び120mgのSC処置群からの5人(3.0%)の患者において過敏症又はアナフィラキシー反応が報告された。IRRとして報告された患者(3mg/kgのIVからの10人;120mgのSCからの2人)のうち、抗薬物抗体(ADA)に対して陽性の結果を有していた患者は合計6人に達し、そのうち5人の患者がNAbについて陽性の結果が報告された。投与関連反応であると報告された15人の患者のうち、6人の患者が前投与を受けた。
【0325】
感染症に分類されたTEAEは、3mg/kgのIV処置群からの60人(34.3%)の患者及び120mgのSC処置群の49人(29.2%)の患者で報告された。
【0326】
【0327】
*各レベルで、患者が2つ以上の事象を報告した場合、患者は1回数えられた。最も重篤な事象のみが数えられた。関連性が「可能性がある」、「可能性が高い」、又は「疑う余地がない」と定義された場合にのみ、各事象が関連していると考えられた。
【0328】
実施例2-3-2.免疫原性評価
以下の表19に示されるように、120mgのSC処置群におけるADA陽性の結果を有する患者の割合は、3mg/kgのIV処置群のADA陽性の結果を有する患者の割合と同様であるか、又はやや低かった。
【0329】
【0330】
*略語:*ADA:抗薬物抗体;NAb:中和抗体
**分子:最初の投与の後の試験終了受診までADA及びNAbが陽性であると一度も特定されなかった患者が計数に使用された(しかしながら、投与(基礎受診)前のADA又はNAbの結果は計数について考慮されなかった)。
【0331】
実施例2-3-3.視覚的アナログスケール(VAS)を用いた局所部位の痛みの評価
視覚的アナログスケール(VAS)の範囲は0~100mmであり、スコアが高いほど痛みが強いことを示した。以下の表20に示されるように、120mgのSC処置群において、インフリキシマブSCの最初の投与時(6週目)に、やや高いレベルのVASが観察された。しかしながら、SC投与が繰り返し行われるので、局所的な痛みは次第に減少し、両方の処置群において同様のレベルの痛みが報告された。120mgのSC処置群における局所的な痛みは46週目まで減少した。3mg/kgのIV処置群の全ての患者は30週目にインフリキシマブSCに切り替えられ、120mgのSC処置群におけるものより高いレベルの局所部位の痛みが30週目から観察されたが、局所的な痛みのレベルは46週目までは次第に減少するという傾向があった。
【0332】
【0333】
治療有効性の評価
実施例2-3-4.DAS28により測定される疾患活動性指数
主要有効性評価項目として、22週目のDAS28(C反応性タンパク質;CRP)の基準値からの変化による臨床反応をANCOVA(共分散分析)を用いて計数し、120mgのSCが3mg/kgのIVに劣っていないことが実証された。DAS28により測定される疾患活動性指数の最小二乗は表21に要約されており、実際の値及び基準値からの変化は表22に要約されている。
【0334】
【0335】
【0336】
実施例2-3-5.ACR20、50、70反応評価
ACR20(米国リウマチ学会)反応評価に従う臨床反応を示した患者の割合は、3mg/kgのIV処置群と120mgのSC処置群との間で22週目まで同様であった(表23)。しかしながら、30週目に120mgのSC処置群においてやや高い反応率が示された(3mg/kgのIV処置群から133人(76.4%)の患者;120mgのSC処置群から142人(86.1%)の患者)。反応率は、3mg/kgのIV処置群が30週目に120mgに切り替えられた後にやや高かったが、反応率が全体的に次第に増加する傾向があることが確認された。同様の傾向がACR50及びACR70においても確認された。
【0337】
【0338】
実施例2-3-6.EULAR反応評価
DAS28(CRP)に基づいて分類された欧州リウマチ学会(EULAR)反応評価において良好な反応又は中程度から重篤な反応を示した患者の割合は、22週目までそれぞれの処置群の間で同様であったが、30週目に120mgのSC処置群においてやや高かった。しかしながら、54週目のEULAR反応率は、3mg/kgのIV処置群が30週目に120mgに切り替えられた後、それぞれの処置群の間で同様であった(表24)。
【0339】
【0340】
薬物動態評価
実施例2-3-7.薬物動態パラメーター
0週目及び2週目に3mg/kgでインフリキシマブIVを投与した後、インフリキシマブ投与前の平均血清濃度は、6週目まで処置群の間で同様であった。維持期から、インフリキシマブの平均事前投与血清濃度は、2週間ごとの120mgのSC処置群において14週目まで次第に増加し、次に、14週目から54週目まで一定濃度が維持された。インフリキシマブの平均事前投与血清濃度は、8週間間隔の3mg/kgのIV処置群において14週目まで次第に減少し、次に、14週目から30週目に一定濃度が維持された。3mg/kgのインフリキシマブIVと120mgのインフリキシマブSCの間の剤形及び投与間隔の違いに起因して薬物動態プロファイルは30週目まで違いを示した。しかしながら、3mg/kgのIV処置群が30週目に120mgに切り替えられた後に平均血清濃度は増加し(30週目から46週目)、54週目での濃度はそれぞれの処置群間で同様であった(
図6)。
【0341】
母集団PKモデルを用いてCT-P13についての試験3-5のパート2の薬物動態評価パラメーター(AUCτ、Cmax、及びCトラフ)を予測した。Cmax及びCトラフは、22週目~30週目に120mgのSC投与群において3mg/kgのIV処置群におけるものよりも平坦なプロファイルを示し、120mgのSC投与群の予測されたCトラフは標的薬効血清濃度、すなわち、1μg/mlよりも高い値であった(表25)。
【0342】
【0343】
*略語:AUCτ:定常状態でのモデル予測された濃度時間曲線下面積(22週目から30週目)、Cmax:モデル予測された最大血清濃度、Cトラフ:モデル予測されたトラフ血清濃度、及びCV%:変動係数(%)。
**3mg/kgのIV処置群からの患者は8週間ごとにインフリキシマブが投与され、120mgのSC処置群からの患者は2週間ごとにインフリキシマブが投与された。したがって、3mg/kgのIV処置群のPKパラメーターは22週目に得られ、120mgのSC処置群のPKパラメーターは22週目、24週目、26週目、及び28週目に得られた。したがって、3mg/kgのIV処置群の薬物動態パラメーターは22週目に評価され、120mgのSC処置群の薬物動態パラメーターは22週目、24週目、26週目、及び28週目に評価された。
【0344】
実施例3.クローン病(CD)患者の維持療法としてのインフリキシマブの皮下注射の有効性及び安全性の評価(試験3.8)
実施例3-1.試験プロトコル
この試験は、インフリキシマブ(CT-P13)SCの有効性、PK、PD、有用性、及び安全性を評価することを目的とする無作為化プラセボ対照二重盲検多施設並行群第III相治験であった。
【0345】
この試験は、スクリーニング、処置期間(導入期、維持期、及び延長期)、及び試験終了受診の3つの試験期間から構成された。
【0346】
スクリーニング期:
スクリーニングは、導入期に投与されるインフリキシマブIVの最初の投与の42日前目から0日目(最大6週間)の間に行われた。
【0347】
この試験に参加するためには、患者は以下の適格基準の全てを満たす必要があった。
*18歳から75歳の男性又は女性であった患者、
*CDAIスコアが220~450ポイントである中程度から重篤な活動性CDを有していた患者、
*CDについての簡易内視鏡的活動性スコアが6ポイント以上である回腸-結腸CDを有していた患者、又は簡易内視鏡的活動性スコアが4ポイント以上であり、少なくとも1つのセグメントについて潰瘍スコアを有する回腸CD若しくは結腸CDを有していた患者、
*治験薬の投与の最初の日の少なくとも3カ月前にX線検査、生検、又は内視鏡によりCDと診断された患者、
*コルチコステロイド及び/又は免疫抑制剤により活動性CDに対する適切な処置を受けていたが応答しなかった患者、又はそのような治療に対して薬物耐性がなかったか、若しくは医学的禁忌であった患者。
【0348】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、この試験から除外された。
*2種類以上の生物学的製剤、2種類以上のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、又は生物学的製剤とJAK阻害剤の両方の2種類以上を以前に投与されていた患者、
*治験薬の最初の投与(0日目)に基づいた5半減期以内にTNFα阻害剤又は生物学的製剤を使用した患者、
*CDの処置に使用されたTNFα阻害剤に対して以前に応答しなかった患者、又はTNFα阻害剤に対して薬物耐性がなかった患者、並びに
*CD又はその他の疾患の処置のためにインフリキシマブを以前に使用した患者。
【0349】
処置期間
*非盲検導入期(0週目、2週目、及び6週目に投与)
*二重盲検維持期(10週目から54週目に投与)
*非盲検延長期(56週目から102週目に投与)
【0350】
非盲検導入期では、0日目(0週目)に基づいて、選択基準の全てを満たし、且つ、いずれの除外基準にも該当しなかった患者のみがこの試験に参加した。参加したすべての患者は、導入処置のために0週目、2週目、及び6週目に受診し、インフリキシマブIV(5mg/kg)を2時間投与された。IV注入により十分用量のインフリキシマブを3回投与された患者のうち、CDAI-100により10週目に応答した患者に分類され、且つ、治験責任医師の判断により安全性の懸念のない患者は、70日目(10週目)の処置の前にインフリキシマブSC群又はプラセボSCに無作為に割り当てられた。
【0351】
治験薬の投与に関するこのようなランダムな割り当ては、以下の基準に従って層別化された。
*生物学的製剤及び/又はJAK阻害剤の以前の使用(使用又は未使用)、
*0週目での経口コルチコステロイドによる処置の使用(使用又は未使用)、及び
*10週目での臨床的寛解の到達(CDAIスコアによる寛解の達成又は未達成)。
【0352】
二重盲検維持期は、追加用量のインフリキシマブSC又はプラセボSCからなっており、最後の用量が54週目に投与された。
*試験群1)2週間ごとの120mgのインフリキシマブSC:10週目から54週目までPFSにより2週間ごとに120mgのインフリキシマブSCが投与された。
*試験群2)2週間ごとのプラセボSC:10週目から54週目までPFSにより2週間ごとにプラセボSCが投与された。
【0353】
非盲検延長期では、維持期が54週目までに完了され、治験責任医師の見解に従い持続的な処置から利益が得られるとみなされた患者は、PFS又はAIにより120mgのインフリキシマブSCが投与された。維持期に240mgのインフリキシマブSCが投与された患者は、延長期においても同じ用量のインフリキシマブSCが投与された。延長期は102週目まで継続された。
【0354】
患者が割り当てられた群にかかわらず薬剤に最初に反応したがそれ以降に反応を失った場合、その患者は22週目から開始して2週間ごとに240mgのインフリキシマブSC(120mgのインフリキシマブSCの二重注射(2倍))の投与に調整された用量を受けることが許可された。反応の消失は、合計CDAIスコアが220以上であり、10週目のCDAIスコアから200ポイント以上のCDAIの増加として定義された。
【0355】
患者はインフリキシマブIVの投与の30~60分前に前投与を受けてもよく、これらに限定されないが、(2~4mgのクロルフェニラミンと等価用量で)抗ヒスタミン薬、ヒドロコルチゾン、パラセタモール、及び/又は(10mgのセチリジンと等価用量で)非鎮静型抗ヒスタミン薬が治験責任医師の判断により処置期に投与されてもよい。患者はインフリキシマブSCの投与中であっても治験責任医師の判断により前投与を受けてもよい。
【0356】
試験終了受診
最後の投与の4週間後、試験を終了するための最後の受診が行われた。10週目にインフリキシマブSC又はプラセボSCに切り替えられるより前の早い段階に試験処置を中断した患者については、試験終了受診は最後のインフリキシマブIVが投与された8週間後に行われた。
【0357】
実施例3-2.CD患者についてのPKデータ及びPK-PDモデル化
試験3.8で使用されるCT-P13の投与の用量及び間隔は、CT-P13についての試験1.6のパート1の結果及び母集団PK分析の結果に基づいて決定された。PK-PDモデルは健康なボランティア、ASを有する患者、RAを有する患者、及びCDを有する患者のCT-P13 IV投与データ、並びにCDを有する患者、RAを有する患者、及び健康なボランティアのインフリキシマブSC投与データ(Clinicaltrials.govの識別コード NCT01220518(試験1.1)、NCT01217086(試験3.1)、NCT02096861(試験3.4)、NCT03147248(試験3.5)、及びNCT02883452(試験1.6)に基づいた。
【0358】
上記データに基づいて開発されたPK-PDモデルを使用して、インフリキシマブの適応症を有する患者(RA、UC、CD、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、又はAS)についてSC投与結果のシミュレーションを行った。
【0359】
CD患者についての母集団PK及びPK-PDモデル化の場合、適応症(CD、RA,及びAS)に対する安全性だけでなく、CDAIスコアの合計についても分析に含めた。最終的なPKモデルは、インフリキシマブの注入が起こる中央コンパートメントからの線形消失、及び中央コンパートメントに向かう一次吸収速度を示すデポーコンパートメントを有する2コンパートメントモデルにより行われた。疾患継続時間と基準CDAIスコアとの間の共分散関係がこのモデルに適用された。PK-PDモデル化の検証は視覚的事後予測性能評価(VPC)により行われた。
【0360】
図7は、最終的なPK-PDモデルから得られたVPCの結果としての、観察されたCDAIスコア(〇で示される)とモデル予測されたCDAIスコア(黒の実線)とを互いに比較するグラフである。CT-P13についての試験1.6のパート1のデータは限定、されていたが、
図7の結果に示されるように、観察されたデータとシミュレーションされたデータの間にかなりの程度の一致があることがVPCから確認された。
【0361】
実施例3-3.CD患者からの有効性についての暴露反応評価
図8に示されるように、様々な用量(120mg、150mg、及び240mg)のインフリキシマブSCに関して時間経過に伴う平均血清濃度のシミュレーションを行った。シミュレーションされたすべてのインフリキシマブSCの用量は、10週目から30週目にIV参照薬剤のC
トラフよりも継続的に高いレベルのC
トラフを維持しており、インフリキシマブについての試験1.6のパート1の結果と一致していた。
【0362】
さらに、
図9から、異なる用量でのインフリキシマブSCの投与後の予測CDAIスコア間に特別な違いは予測されないことが確認された。
【0363】
シミュレーションの結果に基づくと、120mg、150mg、及び240mgの3種類のSCの用量はすべて、10週目から30週目に継続的に高いレベルのCトラフを維持しており、したがって全ての用量が最適用量として決定される。これらの用量のうち、最後の薬剤暴露で所望のレベルの有効性を達成するために最も効率的な用量は120mgであることが実証された。さらに、インフリキシマブについての試験1.6のパート1において、120mgのインフリキシマブSCのコホートから安全性の問題は観察されておらず、抗薬物抗体(ADA)又は中和抗体(NAb)に対して陽性の結果を有する患者の数は、120mgのインフリキシマブSCのコホートで最も小さかった。したがって、本願出願人らは、10週目からインフリキシマブについての試験3.8の追跡試験の間、120mgのインフリキシマブを2週間ごとに投与する方法を提案する。
【0364】
実施例3-4.最初の皮下投与(10週目)の時点についての基礎
提案された投与方法において、IV導入期の間の投与方法はインフリキシマブに従来適用される方法と同じであった。IV投与は、0週目、2週目、及び6週目に5mg/kgの用量で2時間程度をかけて行われた。その後、10週目、すなわち、6週目の最後のIV導入用量の投与の4週間後に、SC投与を開始した。最初のSC投与が始まった時点で、CトラフのレベルはSC投与療法を通じた定常状態での血漿濃度付近に維持された。
【0365】
PKモデル化データに基づいて、最初のSC投与を行うために最適な時点を見つけるためのシミュレーションを行った。インフリキシマブの血漿濃度(±SD)のプロファイルをシミュレーションした結果にしたがって、10週目、すなわち、6週目の最後のIV導入の4週間後の血漿濃度は、0週目、2週目、及び6週目の3回のIV導入投与後の平均血漿濃度付近に設定された。10週目、及び続いて2週間の間隔でSCが投与された場合、定常状態でのC
トラフがインフリキシマブSCの維持期の間に予測され、PK濃度の変動は少ないことを確認することができた(
図8)。したがって、予測された平均C
トラフが試験を通して良好に維持され、SC投与が10週目に開始されると定常状態に素早く到達することが実証された。
【0366】
結果として、PK-PDモデル化及びシミュレーションの結果から、CT-P13 SCの全ての投与療法が、予期せぬ安全性シグナルを伴わずにCD患者からの十分な有効性を達成することが確認された。SC患者に今後投与され得るインフリキシマブSCの最適投与療法を特定するために、シミュレーションを使用することに成功した。
【0367】
CD患者の追跡シミュレーション研究から、120mgのインフリキシマブSCを2週間ごとに投与する方法は最も適切であるようだ。したがって、本発明者らは、0週目、2週目、及び6週目の5mg/kgのIV導入用量を提案し、次に10週目のSC投与開始後の2週間ごとの120mgのインフリキシマブSC維持療法を提案する。
【0368】
実施例4.潰瘍性大腸炎(UC)患者の維持療法としてのインフリキシマブの皮下注射の有効性及び安全性の評価(試験3.7)
実施例4-1.試験プロトコル
この試験は、インフリキシマブSCの有効性、PK、PD、及び安全性を評価することを目的とする無作為化プラセボ対照二重盲検多施設並行群第III相治験であった。
【0369】
この試験は、スクリーニング、処置期間(導入期、維持期、及び延長期)、及び試験終了受診の3つの試験期間から構成された。
【0370】
スクリーニング期:
スクリーニングは、導入期に投与されるインフリキシマブIVの最初の投与の42日前から0日目(最大6週間)の間に行われた。
【0371】
この試験に参加するためには、患者は以下の適格基準の全てを満たす必要があった。
*18歳~75歳の男性又は女性であった患者、
*修正Mayoスコアが5~9ポイントである中程度から重篤な活動性UCを有していた患者、
*内視鏡又はX線検査及び生検によりUCと診断された患者、及び
*活動性UCに対する処置を受けていたが、コルチコステロイド、及び/又は6-メルカプトプリン、アザチオプリンなどの普遍的な治療剤に応答しなかった患者、又はそのような治療に対して薬剤耐性がなかったか若しくは医学的禁忌であった患者。
【0372】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、この試験から除外された。
*2種類以上の生物学的製剤、2種類以上のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を以前に使用していた患者、又は生物学的製剤とJAK阻害剤の両方の2種類以上を以前に使用していた患者、
*TNFα阻害剤又は生物学的製剤が、血清中で検出され得るか又は治験薬の最初の投与(0日目)の5半減期以内であり得る患者、
*UC処置のためのTNFα阻害剤の投与を受けたが、そのような治療に対して応答しなかったか若しくは耐性がなかった患者、又は
*UC又はその他の疾患の処置のためにインフリキシマブを以前に使用した患者。
【0373】
処置期間
*非盲検導入期(0週目、2週目、及び6週目に投与)
*二重盲検維持期(10週目から54週目に投与)
*非盲検延長期(56週目から102週目に投与)
【0374】
非盲検導入期では、0日目(0週目)に基づいて、選択基準の全てを満たし、且つ、いずれの除外基準にも該当しなかった患者のみがこの試験に参加した。参加したすべての患者は、導入処置のために0週目、2週目、及び6週目に受診し、インフリキシマブIV(5mg/kg)を2時間投与された。IV注入により十分用量のインフリキシマブを3回投与された患者のうち、Mayoスコアにより10週目に応答者に分類され、且つ、治験責任医師の判断により安全性の懸念のない患者は、70日目(10週目)の処置の前にインフリキシマブSC又はプラセボSCの投与に無作為に割り当てられた。
【0375】
治験薬の投与に関するこのようなランダムな割り当ては、以下の基準に従って層別化した。
*生物学的製剤及び/又はJAK阻害剤の以前の使用(使用又は未使用)、
*0週目での経口コルチコステロイドによる処置の使用(使用又は未使用)、及び
*10週目での臨床的寛解の到達(修正Mayoスコアによる寛解の達成又は未達成)。
【0376】
二重盲検維持期は、追加用量のインフリキシマブSC又はプラセボSCからなっており、最後の用量が54週目より前に投与された。
*試験群1. 2週間ごとの120mgのインフリキシマブSC:10週目から54週目まで2週間ごとに120mgのインフリキシマブSCがPFSにより投与された。
*試験群2. 2週間ごとのプラセボSC:10週目から54週目まで2週間ごとにプラセボSCがPFSにより投与された。
【0377】
非盲検延長期では、維持期が54週目までに完了され、治験責任医師の見解に従い持続的な処置から利益を得るとみなされた患者は、非盲検延長期まで試験が延長された。延長期の投与は56週目に開始され、102週目まで継続された。120mgのインフリキシマブSC又はプラセボSCが投与された患者は、54週目においても120mgのインフリキシマブSCが投与された。54週目に240mgのインフリキシマブSCが投与された患者は、延長期においても同じ用量のインフリキシマブSCが投与された。
【0378】
患者が割り当てられた群にかかわらず薬剤に最初に反応したがそれ以降に反応を失った場合、その患者は22週目から開始して2週間ごとに240mgのインフリキシマブSC(120mgのインフリキシマブSCの二重注射(2倍))の投与に用量を増加させることが許可された。反応の消失は、10週目と比較した修正Mayoスコアの2ポイント以上又は30%以上の増加、5ポイント以上の合計スコア、及び2ポイント以上の内視鏡スコアのいずれか1つとして定義された。
【0379】
患者はインフリキシマブIVの投与が開始する30~60分前に前投与を受けてもよく、これらに限定されないが、(2~4mgのクロルフェニラミンと等価用量で)抗ヒスタミン薬、ヒドロコルチゾン、パラセタモール、及び/又は(10mgのセチリジンと等価用量で)非鎮静型抗ヒスタミン薬を治験責任医師の判断により処置期に投与されてもよい。患者は皮下注射の投与中であっても治験責任医師の判断により前投与を受けてもよい。
【0380】
試験終了受診
最後の投与の4週間後、試験を終了するための最後の受診が行われた。インフリキシマブSC又はプラセボSCに切り替えられるより前の早い段階に試験処置を中断した患者については、試験終了受診は最後のインフリキシマブIVが投与された8週間後に行われた。
【0381】
実施例4-2.CD患者についてのPKデータ及びPK-PDモデル化
試験3.7で使用されるCT-P13の投与の用量及び間隔は、CT-P13についての試験1.6のパート1の結果に基づいて決定された。PK-PDモデルは健康なボランティア、ASを有する患者、RAを有する患者、及びCDを有する患者のCT-P13 IV投与データ、並びにCDを有する患者、RAを有する患者、及び健康なボランティアのインフリキシマブSC投与データ(Clinicaltrials.govの識別コード NCT01220518(試験1.1)、NCT01217086(試験3.1)、及びNCT02096861(試験3.4)に基づいた。
【0382】
上記データに基づいて開発されたPK-PDモデルを使用して、インフリキシマブの適応症を有する患者(RA、UC、CD、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、又はAS)についてSC投与結果のシミュレーションを行ってもよい。
【0383】
UC患者についての母集団PK及びPK-PDモデル化の場合、適応症(CD、RA,及びAS)に対する安全性だけでなく、Mayoスコアについても分析に含めた。最終的なPKモデルは、インフリキシマブの注入が起こる中央コンパートメントからの線形消失、及び中央コンパートメントに向かう一次吸収速度を示すデポーコンパートメントを有する2コンパートメントモデルにより行われた。最終的なPDモデルにおいては、疾患継続時間と基準Mayoスコアとの間の共分散関係がモデルに適用された。
【0384】
実施例4-3.UC患者データからの有効性についての暴露反応評価
図10に示されるように、様々な用量(120mg及び240mg)のCY-P13 SCに関して時間経過に伴う平均血清濃度のシミュレーションを行った。シミュレーションされたすべてのインフリキシマブSCの用量は、10週目から30週目にIV参照薬剤のレベルよりも継続的に高いレベルのC
トラフを維持しており、インフリキシマブについての試験1.6のパート1及び2の結果と一致していた。
【0385】
さらに、
図11から、異なる用量でのインフリキシマブSCの投与後に予測されるMayoスコア間に特別な違いはないことが予測され、120mg及び240mgの全てにおいて同様の効果があったことが確認され得た。
【0386】
シミュレーションの結果に基づくと、120mg及び240mgのSC投与は全て、10週目から54週目の定常状態を含み継続的に高いレベルのCトラフを維持したので、いずれの用量も最適用量として決定される。これらの用量のうち、最後の薬剤暴露で所望のレベルの有効性を達成するために最も効率的な用量は120mgであることが特定された。さらに、インフリキシマブについての試験1.6のパート1において、120mgのインフリキシマブSCのコホートから安全性の問題は観察されておらず、抗薬物抗体(ADA)又は中和抗体(NAb)に対して陽性の結果を有する患者の数は、120mgのインフリキシマブSCのコホートで最も小さかった。したがって、本願出願人らは、追跡CT-P13の試験3.7について、10週目から120mgのインフリキシマブを2週間ごとに投与する方法を提案する。
【配列表】