(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】物体を着脱可能に取り付けるための締結デバイス及び物体を着脱可能に取り付けるための方法
(51)【国際特許分類】
A44B 99/00 20100101AFI20241028BHJP
【FI】
A44B99/00 611A
A44B99/00 611Z
(21)【出願番号】P 2021559498
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 SE2020050291
(87)【国際公開番号】W WO2020197470
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521438179
【氏名又は名称】ルメオ・テクノロジー・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ホーン
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-011515(JP,U)
【文献】特開平11-318516(JP,A)
【文献】特開昭62-066804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/32
A44B 1/40
A44B 1/42
A44B 1/44
A44B 9/12
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を材料の表面へ着脱可能に取り付けるための締結デバイス(1)であって、当該締結デバイス(1)は、
- 回転軸(7)周りに少なくとも1つの方向に回転可能な基部(3)と、
- 前記基部(3)を機械的に支持するように配設された支持フレーム(2)であって、前記基部(3)は当該支持フレーム(2)に対して回転するように構成され、前記基部(3)の前記回転軸(7)は当該支持フレーム(2)の基準平面(16)に対し横断方向である、支持フレーム
(2)と、
- 前記基部(3)へ取り付けられた固定端(12)と、刺通端(13)と、を備える少なくとも1つの開放リング形状刺通部材(5)であって、前記基部(3)が回転されたときに当該刺通部材(5)の前記刺通端(13)が第1の曲線軌道をたどるように構成されている刺通部材(5)と、
- 前記支持フレーム(2)上に配設されていて、前記刺通部材(5)と接触させられたときに前記刺通部材(5)の前記刺通端(13)に第2の曲線軌道をたどらせるように構成されている第1の当接部(4a)と、を備え、
第2の
曲線軌道
が画定する平面(20)が第1の
曲線軌道
が画定する平面(18)から偏差角だけオフセットされるようにしている、締結デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の締結デバイスにおいて、
前記基部が初期位置から第1の刺通位置へ回転されたときに、前記刺通部材の前記刺通端は第1の刺通点(220a)にて前記表面を刺通し及び前記表面と係合するように仕向けられ、
前記基部が最終回転位置へ回転されたときに、前記刺通部材は、前記第2の軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達するように構成されている、締結デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の締結デバイスにおいて、
前記締結デバイスは、更に、
- 第2の当接部(4b)であって、前記支持フレーム上に配設されていて、前記刺通部材と接触したときに、当該第2の当接部と接触した前記刺通部材の部分(22)が前記支持フレームの前記基準平面に対して垂直方向の並進運動を妨げられるように前記刺通部材を機械的応力下に引き留めるように構成されている第2の当接部、を備えている、締結デバイス。
【請求項4】
請求項2に記載の締結デバイスにおいて、
前記締結デバイスは、更に、
- 前記支持フレーム及び(単数又は複数の)前記当接部を備えていて、前記基部及び前記刺通部材を包んでいるハウジング(110)であって、当該ハウジングは前記表面と接面するように配設された連結面(14)を有し、前記連結面はその面に配置された第1の開口部(112)を備え、前記基部が前記初期位置から第1の回転位置へ回転されたときに前記刺通部材の前記自由刺通端は前記第1の開口部から外へ突き出るように仕向けられ、前記基部が前記第1の回転位置から第2の回転位置へ回転されたときに前記刺通部材の前記自由刺通端は前記支持フレームの前記基準平面に対して高さのピークに到達するように仕向けられ、前記基部が前記第2の回転位置から第3の回転位置へ更に回転されたときに前記刺通部材の前記自由刺通端は、前記連結面上に配設され前記第1の開口部から距離を隔てて配置された第2の開口部(112’)の中へ進入可能になる、ハウジングを備え、
前記刺通部材は、前記刺通部材の前記自由刺通端が前記第2の開口部の中へ挿入されたときに前記解放可能ロック位置に到達するように構成されている、締結デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記偏差角が、前記支持フレームの前記基準平面に対する前記第1の当接部の垂直方向
高度によって決定される、締結デバイス。
【請求項6】
請求項3に記載の締結デバイスにおいて、
前記偏差角は、前記基準平面に対して同じ高さに配設された前記第1の当接部と前記第2の当接部の間の距離によって決定される、締結デバイス。
【請求項7】
請求項2に記載の締結デバイスにおいて、
前記基部が前記第1の刺通位置から第2の刺通位置へ更に回転されたときに、前記刺通部材の前記刺通端は、更に、前記解放可能ロック位置に到達する前に第2の刺通点(220b)にて前記表面を刺通し及び前記表面と係合するように仕向けられる、締結デバイス。
【請求項8】
請求項2に記載の締結デバイスにおいて、
前記基部が前記第1の刺通位置から前記初期位置へ回転されたときに、前記刺通部材の前記刺通端は引き込まれ、前記表面の前記第1の刺通点から係合解除される、締結デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記開放リング形状刺通部材は開放部分を有する円形の形状を有している、締結デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記デバイスは、更に、
- 前記基部と機械的に接続されていて、アクチュエータデバイスへ接続可能であるパワー伝達デバイス(520)であって、前記アクチュエータからのパワーを前記基部へ伝達することによって前記基部を回転させるように構成されているパワー伝達デバイス、を備えている、締結デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の締結デバイスにおいて、
前記パワー伝達デバイスは、回転式プレート、ドライブギヤ、コグ付きラック(710)、ベルトドライブ、チェーンドライブ、及び、ワイヤ(610)とカム(620)、のうちの少なくとも1つを備えている、締結デバイス。
【請求項12】
請求項10に記載の締結デバイスにおいて、
前記アクチュエータデバイスは、レバー(720;810)、引張ばね(820)、電気サーボモータ、ステッパモータ(830)、ドリル機械、及びガソリン機関、のうちの少なくとも1つを備えている、締結デバイス。
【請求項13】
物体を材料の表面へ着脱可能に取り付ける方法であって、当該方法は、
- 回転軸(7)周りに少なくとも1つの方向に回転可能な基部(3)を提供する工程と、
- 前記回転可能な基部(3)を機械的に支持する支持フレーム(2)であって、前記基部(3)の前記回転軸(7)は当該支持フレーム(2)の基準平面(16)に対し横断方向である、支持フレーム(2)を提供する工程と、
- 前記基部(3)へ取り付けられた固定端と、刺通端と、を備える少なくとも1つの開放リング形状刺通部材(5)であって、前記基部(3)が回転されたときに当該刺通部材(5)の前記刺通端(13)が第1の曲線軌道をたどるように構成されている刺通部材(5)を提供する工程と、
- 前記支持フレーム(2)上に配設されていて、前記刺通部材(5)と接触させられたときに前記刺通部材(5)の前記刺通端(13)に第2の曲線軌道をたどらせるように構成されている第1の当接部(4a)を提供する工程と、を備え、
前記第2の
曲線軌道
が画定する平面
(20)が前記第1の
曲線軌道
が画定する平面
(18)から偏差角だけオフセットされるようにしている、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記方法は、更に、前記基部が初期位置から第1の回転位置へ回転されたときに前記刺通部材の前記刺通端に第1の刺通点(220a)にて前記表面を刺通し及び前記表面に係合するよう仕向ける工程と、前記基部が最終回転位置へ回転されたときに前記刺通部材に前記第2の
曲線軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達するよう仕向ける工程と、を備えている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を表面へ着脱可能に取り付けるための締結デバイス及び物体の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料のシートの表面、メッシュ布地の表面、各種材料のグリッド及びファイバの表面の様な表面へ外部物体を締結するために、ピン、ボタン、クランプ、バッジホルダクリップなどの様な様々なシステムが発案されている。一方で、ブローチやカードプレートの様な小さい装飾的物体の締結は、目標表面からの頻繁な取り外し又は取り付けを必要としないのが普通である。したがって、締結手法が材料に永久的に損傷を与えない限り、取り外し/再取り付けのプロセスが便利で速くて単純であるかどうかは関心事ではない。
【0003】
他方で、単純で便利なユーザーエクスペリエンスを円滑にしながら目標表面への物体の多用的再使用可能取り付け/取り外しシステムを提供することは極めて望ましい。その様な頻回取り付け/取り外しシステムの1つの例は、個人用装身具、携帯電話、個人用財布、鍵などの様な外部物体を材料の表面例えば当人の衣類の一部へ取り付けるのに使用されるデバイスであって、しても盗難や偶発的紛失を防ぐためにこれらの物体をその場にしっかりと把持するデバイスである。これらの盗難防止、落下防止、又は紛失防止のデバイスは、それゆえ、例えば単純なクリップカードプレートホルダに比べ、はるかに強い力に耐えなくてはならず、また同時に必要時にはユーザーがそれらを取り外すこと及びそれらにアクセスすることを許容する単純な機構を提供しなくてはならない。1つの商業的に入手可能な製品、つまり本出願人であるスウェーデンのルメオ・テクノロジーAB(Lumeo Technology AB)社からのC-Safe(登録商標)PocketLockでは、クランプデバイスが上述の日用品を布地及びユーザーの衣類へ容易に取り付けることを可能にしている。小型磁石リンクが物体へ取り付けられ、2つの分離可能な部分を備えるクランプセット又はロックセットが、2つの部分が開放されているときにそれらの間に布地を受け入れ、2つの部分がクランプ状態に閉じられたときにそれらの間に布地を締結する。こうして、小型磁石リンクを、クランプロックに組み入れられたもう一方の磁気構成要素へ取り付けることで、衣類への物体の容易取り付け及び容易取り外しを可能にしている。
【0004】
このデバイスは、他の既知の諸解決策、例えば、一例として送り手と受け手の間のBLUETOOTH(登録商標)信号又はGPS信号の追跡を頼みとする所在地特定に基づいて動作する高価な又は複雑なエレクトロニクスを使用する解決策に比べて、盗難又は偶発的落下を回避するという問題を効果的に解消する。しかしながら、上記の解決策が好都合であるのは、クランプされる布地が薄く柔軟である限りにおいて、クランプの作用によって容易に損傷を被らない限りにおいて、及びユーザーが例えば衣類を洗濯するとかデバイスを複数の衣料品で使用するとかの理由で頻繁にクランプロックを取り外したり再設置したりする必要に迫られない限りにおいてである。
【0005】
ゆえに、物体を目標表面へ頻繁に且つ簡単に締結/締結解除するための、多用性、費用効果、及び効率のより高い解決策を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、技術の現状を改善し、上述の短所の少なくとも幾つかを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これら及び他の目的は、付随の特許請求の範囲に定義されている、物体を材料の表面へ着脱可能に取り付けるための締結デバイス及び物体を表面へ着脱可能に取り付ける方法を提供することによって実現される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、物体を材料の表面へ着脱可能に取り付けるための締結デバイスが提供されており、締結デバイスは、
- 回転軸周りに少なくとも1つの方向に回転可能な基部と、
- 基部を機械的に支持するように配設された支持フレームであって、基部は支持フレームに対して回転するように構成され、基部の回転軸は支持フレームの基準平面に対し横断方向である、支持フレームと、
- 基部へ取り付けられた固定端と、刺通端と、を備える少なくとも1つの開放リング形状刺通部材であって、基部が回転されたときに刺通部材の刺通端が第1の曲線軌道をたどるように構成されている刺通部材と、
- 支持フレーム上に配設されていて、刺通部材と接触させられたときに刺通部材の刺通端に第2の曲線軌道をたどらせるように構成されている第1の当接部と、を備え、
第2の軌道の平面が第1の軌道の平面から偏差角だけオフセットされるようにしている。
【0009】
材料の表面は、この開示の残り部分では「目標表面」又は「表面」とも呼ばれることがあり、理解しておくべきこととして、それは材料の特定の表面又は面に限定されるものではなく、締結デバイスは、材料の異なる表面及び異なる面の位置又は向きに関係なく同様に取り付け可能であるだろう。
【0010】
本文脈での「着脱可能に取り付ける」とは、2つの物体又は要素又は構成部品、例えば外部物体と目標表面が、繰り返し互いへ取り付けられ及び互いから取り外されることができることを意味する。ただし、2つの物体が一体に取り付けられ、取り付けられた状態に永久的に又は比較的長時間に亘って保たれる場合を除外しないことは明白である。また、目標表面への物体の取り付け及び取り外しは、手動的に例えばユーザーを関与させることによって遂行されてもよいし、又はそれは何らのユーザー関与もなしに遠隔的又は自動的に、例えば所望方向に回転しデバイスを意図される目標表面へ締結する及び/又は目標表面から締結解除することのできる電動式基部へ作動コマンドを送ることによって遂行されてもよい。
【0011】
発明は、回転可能ディスク形状基部の様な回転可能な基部へ取り付けられた針の様な曲線状又はリング形状の刺通部材を提供し、基部をその回転軸周りに回転させることによって、制御された曲線軌道が刺通部材のために実現され得る、という気づきに少なくとも部分的に基づいている。言い換えれば、基部を回転させる回転力が刺通部材に及ぼされ、安定的且つ効果的に刺通部材を駆動して、穿通させたい材料の目標表面に係合させることができるということだ。発明によるこの望ましい原理及びシステムによって、及び、更には例えば締結デバイスの支持フレーム上に配設された第1の当接部を活用することによって、刺通部材の刺通端(針の先端)の軌道はカスタマイズ可能に制御され得る。針の先端をその第1の曲線軌道から第2の曲線軌道へ逸らせることによって、目標表面での針の対応する穿通深さ又は穿通角度を制御することができる。したがって、ネームプレート、バッジ、携帯電話、モーションセンサ、光センサ、音声センサなどの外部物体を、一枚の布地又は衣類のメッシュ表面の様な材料の目標表面へ、繰り返し取り付け及び/又は取り外すための意外で好都合な効果を有する安全で安定した効率的な手段が実現され得る。外部物体は、締結デバイスの、目標表面へ締結される面以外のどちらかの面へ、例えば磁気リンク又は他の取り付け機構を使用することによって取り付けられてもよい。
【0012】
基部は、様々な材料、例えば硬質プラスチック、金属、圧縮ボール紙、緻密スタイロフォーム(登録商標)、木材など、で作られた構成要素であってもよい。また、例えばディスク形状基部、円錐形状基部、円柱形状基部など、様々な形状及び幾何学が基部として着想される。基部は、例えば、平坦な円形のディスクであってもよいし、又は1つの面又は複数の面に凸状又は凹状の表面プロファイルを有するディスクであってもよいし、又は平坦表面プロファイル及び/又は凸状表面プロファイル及び/又は凹状表面プロファイルの組合せを有するディスクであってもよい。
【0013】
例えば、基部は、円錐、ディスク、又は円柱の3D形状と、円形の上面及び/又は下面の2D断面を有していてもよい。
【0014】
本発明の文脈での支持フレームは、回転可能な基部を機械的に支持する能力のある物理的構造であると理解しておきたい。
【0015】
基部の回転軸は、この説明では「基準平面」と呼ばれることのある支持フレームの平面に対し横断方向とすることができる。例えば、基準平面が水平方向の平面である場合、基部の回転軸は、水平方向の平面に対し部分的に横断方向であるか又は部分的に直角であるとしてもよく、例えば回転軸は垂直方向に延びていてもよい。様々な実施形態では、支持フレームの基準平面は異なる向きを有していることもあり、ゆえに基部は回転軸が支持フレームの平面に対しなおも横断方向になるように然るべく向きつけられることになるだろう。
【0016】
開放リング形状刺通部材は、開放部分又は切り取り部分を有し、即ちリングの一部又は一部分が不存在であるか又は除去されていて、それゆえリングは完全に閉じていない、というものであってもよい。別の言い方をすれば、開放部分は、刺通部材の固定端と刺通端の間のギャップであるとしてもよい。開放部分は、例えば実質的に円形のリングの場合なら、1度~180度の範囲の対応する中心角を有するリングの弧であり、例えば10度~90度、又は例えば5度~10度、又は例えば1度~5度の範囲の中心角を有する弧であってもよい。楕円形リングの場合、開放部分は同様に楕円の特定の弧長に対応しているだろう。代替的又は追加的に、刺通部材の刺通端と固定端は重なり合っていてもよく、即ち、リングはなおも開いてはいるが一端が他端より高い垂直方向高度を有していて部分的に他端に被さって延びていてもよいということだ。
【0017】
本発明の文脈での第1の曲線軌道とは、基部が、例えば、均一(一定した回転角速度)の平面内回転か又は非均一(変化する回転速度)の平面内回転を経験したときに、刺通部材の刺通端が、基部と同じ運動平面内に同じく位置する曲線経路をたどることを意味する。曲線軌道は、代替的には、基部の運動平面に平行な平面に位置していてもよい。第1の曲線軌道上の刺通端の円運動又は回転運動は、それが当接部によって中断されるまで続くだろう。
【0018】
第2の曲線軌道とは、刺通部材の刺通端の初期運動平面から実質的に外れ得る軌道を意味する。言い換えるなら、当接部が刺通部材に接触時に力を及ぼし、刺通部材を案内して、その運動平面(その第1の軌道)から離れて、第1の又は初期の運動平面から或る特定の角度、即ち、偏差角(angle of deviation又はdeviation angle)だけオフセットされ得る第2の運動平面(その第2の軌道)へ逸らせるのである。
【0019】
発明によれば、基部のその回転軸周りの回転は、継続的であってもよいし、又は基部がその回転運動中に一連の準定常位置に到達する毎の段階的であってもよい。準定常位置とは、基部の回転位置、又は基部の初期回転位置と最終回転位置を含めたその間の基部の中間回転位置を意味する。
【0020】
追加的に、準定常位置は、刺通部材又は刺通部材の刺通端の異なる位置に対応していてもよい。言い換えるなら、基部の各準定常位置又は回転位置は、更に、刺通部材又は刺通端の準定常位置に対応し得るということだ。例えば、刺通部材が刺通点にて目標表面を穿通するときにこの点での刺通端の準定常位置は基部の或る特定の回転位置に対応し得る。
【0021】
本発明の締結デバイスには、商品及び様々な装身具、活動追跡装置の様な運動、光、及び/又は音声を計測するためのセンサ、録音機などを、織物製家具、カーテン、寝具、衣類、及びバッグへ取り付けるという実例を含め、広範に様々な適用分野が存在する。貴重品を落下防止及び盗難防止の目的で衣料品へ固定するためにロックを衣類へ取り付ける。アクションカメラ及びウェアラブルカメラについては、カメラホルダを織物へ取り付けるためのボディマウントとする。名札の取り付け及び取り外しをよりユーザーフレンドリーにするために単純な針ピンの代わりとして名札へ一体化させる。織物を巧みに操るための手段として工業ロボットへ適用できる。映画やスタジオのセット又は現場インタビューでウェアラブル録音デバイスを取り付ける。品物を衣類へ取り付けるために眼鏡用のホルダへ一体化させる。店舗内のファッションアイテムを盗難防止のために固定するための新たな方途として、小売店内の衣料品のための一体化アラームとする。GPSデバイスの布地への取り付けを可能にさせるためにGPSデバイスと一体化させる。衣類やバッグ内のより多くの場所に銃及び工具を確実に取り付けるために銃及び工具のホルスターに一体化させる。外科用器具、例えば傷を縫って閉じるための組織縫合デバイスに適用する。更に、それを布地用裁縫デバイスに使用すれば、布地の両面にアクセスする必要なしに裁縫性能を可能にさせる。この様に、ポータブル型裁縫デバイスとの一体化又は工業用縫製機械との一体化はほんの数例にすぎない。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、基部が初期位置から第1の刺通位置へ回転されたときに、刺通部材の刺通端は第1の刺通点にて表面を刺通し及び表面に係合するように仕向けられ、
基部が最終回転位置へ回転されたときに、刺通部材は第2の軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達するように構成され得る。
【0023】
基部の「刺通位置」とは、基部の回転位置であって、当該位置では刺通部材が少なくとも1つの刺通点にて標的表面に係合し及び標的表面を刺通する位置を意味する。本開示での「解放可能ロック位置」とは、曲線状刺通部材が曲線ループ形状を作成し、その最終準定常位置に到達したときの、基部の終点回転位置を意味する。幾つかの実施形態では、刺通端は、解放可能ロック位置に到達する前に、基部が更に回転すると更なる軌道の変化を被り、例えば第3又は第4又は第5などの曲線軌道を経験するようになっていてもよい。刺通端は、第2の軌道の終点にて、又は、第3又は第4又は第5の軌道の様な第2の軌道以外の何れかの他の軌道の終点にて、解放可能ロック位置に到達することができる。解放可能ロック位置では、刺通端はユーザー又はアクチュエータが引き込みプロセスをトリガするまでロック状態下に引き留められ、引き込みプロセスがトリガされた結果、刺通端はロック位置から解放され、刺通部材は例えば初期準定常位置へ引き込まれることになる。ただし、理解しておくべきこととして、刺通部材については、例えば基部の回転を途中で止める又は刺通端が目標表面に穿通する前又は後に止めるのが好都合である場合の、他の中間的な解放可能ロック位置も着想され得る。
【0024】
本発明の更に別の実施形態では、締結デバイスは、更に、
- 第2の当接部であって、支持フレーム上に配設されていて、刺通部材と接触したときに、第2の当接部と接触した刺通部材の部分が支持フレームの基準平面に対して垂直方向の並進運動を妨げられるように、刺通部材を機械的応力下に引き留めるように構成されている第2の当接部、を備え得る。
【0025】
第2の当接部は、刺通部材に機械的安定性を提供するように配設され、且つ、基部の回転中の刺通部材の均一運動と第1の当接部によって課される回転軌道の変化を確約するように配設され得る。本発明者は、第2の当接部を刺通部材の経路内に提供することによって、刺通部材の運動に対する実質的な制御が実現できることに気づいた。刺通部材の刺通端は、第1の当接部によってその軌道を変化させた後、刺通部材の一部分が第2の当接部と接触する準定常位置に刺通部材が到達するまでその軌道を継続することができる。刺通部材に加えられる機械的応力の量は、装置の動作中は一定に保たれてもよいし、又は刺通部材の異なる準定常位置にて又は基部の異なる回転位置にて変化してもよい。刺通部材は、係合状態即ち機械的有応力を経験し、又は刺通部材の自由端の第2の軌道の終点の例えば解放可能ロック位置到達時点での弛緩状態即ち機械的無応力を経験し得る。
【0026】
第1の当接部は刺通部材に上向きの垂直/横断方向の力成分を作用させ、第2の当接部は、第1の当接部によって及ぼされる力成分とは反対の方向の機械的力、例えば下向きの垂直/横断方向の力成分を作用させるようになっていてもよい。こうして、刺通部材へ加えられる2つの互いに反対の垂直/横断方向の力成分は、第1の当接部と第2の当接部の間に位置付けられた刺通部材を或る特定の量の機械的応力下に引き留めることができる。
【0027】
着目すべきこととして、刺通部材の回転経路に沿って第2の当接部が空間的に第1の当接部の手前に位置付けられていたとしても、刺通部材は第2の当接部と接触した状態になるより前に第1の当接部との接触に至ることになる。簡単に解説すると、第1の当接部とは、刺通部材と最初に接触する当接部であると理解され、第2の当接部とは、第1の当接部の後に刺通部材と接触する当接部であると理解されるべきである。
【0028】
本発明の更に別の例示としての実施形態によれば、締結デバイスは、更に、
- 支持フレーム及び(単数又は複数の)当接部を備えていて、基部及び刺通部材を包んでいるハウジングであって、ハウジングは表面と接面するように配設された連結面を有し、連結面はその面に配置された第1の開口部を備え、基部が初期位置から第1の回転位置へ回転されたときに刺通部材の自由刺通端は第1の開口部から外へ突き出るように仕向けられ、基部が第1の回転位置から第2の回転位置へ回転されたときに刺通部材の自由刺通端は支持フレームの基準平面に対して高さのピークに到達するように仕向けられ、基部が第2の回転位置から第3の回転位置へ更に回転されたときに刺通部材の自由刺通端は、連結面上に配設され第1の開口部から距離を隔てて配置された第2の開口部の中へ進入可能になる、ハウジングを備え、
刺通部材は、刺通部材の自由刺通端が第2の開口部の中へ挿入されたときに解放可能ロック位置に到達するように構成され得る。
【0029】
本発明者は、ハウジングに包まれた基部及び刺通部材を配設することによって、更なる利点が実現され得ることに気づいた。ハウジングは、基部、刺通部材などの様な締結デバイスの動作構成要素のための保護覆いを提供し、更に、様々な目標表面及び材料へ楽に装着できるという利点を締結デバイスにもたらすことができる。ハウジングは、目標表面上に安定して位置付けられることができ、又は、例えば一枚の布地又は衣類の柔軟な表面の場合には、目標表面に堅く押し付けられることができる。この性能は、ユーザーに、デバイスの取り扱い及び操作時の快適さと支援を提供する。したがって、基部の回転、支持フレーム上の当接部の配設、基部のその運転手段例えばパワー伝達デバイス及びアクチュエータなどへの接続もまた、より単純でより明快なやり方で実現され得る。
【0030】
基部の回転位置及びひいては刺通端の準定常位置は、以上に解説された第1、第2、又は第3の位置に何ら限定されない。したがって、以上に論じられた第1、第2、及び第3の各状態の間に同じ数だけの中間的回転位置又は中間的準定常状態があってもよいということになる。例えば、第1の刺通位置及び/又は第2の刺通位置は、基部の第1の回転位置及び第2の回転位置のそれぞれに対応していてもよいし、又は代替的には、基部の第1の回転位置と第2の回転位置の間の刺通端の更なる中間的準定常位置に対応していてもよい。
【0031】
この実施形態では、ハウジングは、支持フレームがハウジングの一体化部分となるように又はハウジングによって包囲されるように配設され得る。当接部は、支持フレーム上に配設されてもよいし、又はハウジングの残部と共に1つの全体部片に作製されてもよい。例えば、当接部は、刺通部材の曲線軌道を変化させるという機能性を提供するように及び締結デバイスの動作中の機械的支持を提供するように配設された、ハウジングの本体の一部、ハウジングの本体からの突出部、ハウジングのテーパしている内側表面などであってもよい。ハウジングは、更に、刺通部材の鋭利な刺通端を開口部に受け入れることによってユーザーの安全性を高め、刺通部材が例えばユーザーにトリガされるか又は自動的にトリガされる解放機構によって引き込まれるまで刺通端を解放可能ロック位置に引き留めるように配設され得る。
【0032】
追加的に、ハウジングは、他の外部装置又はロボットアームの様な工業的機械及び機材への接続可能性を締結デバイスに提供する。
【0033】
本発明の更なる実施形態によれば、偏差角は、支持フレームの基準平面に対する第1の当接部の垂直方向延長によって決定され得る。
【0034】
本発明の更に別の実施形態によれば、偏差角は、第1の当接部と第2の当接部の間の距離によって決定され得る。
【0035】
発明者らは、基準平面に対する第1の当接部の垂直方向高度を調節することによって、刺通端の偏差角を有効に制御できることに気づいた。
【0036】
また、2つの当接部を設けることによって、第1の曲線軌道と第2の曲線軌道の間の偏差角が決定できるように当接部の高さ及び/又は当接部間の距離を調節することが実施可能である。例えば、第1の当接部を第2の当接部より高い垂直方向高度に配設する、又は第1の当接部を第2の当接部により近い/遠い距離に配設することができる。この実施形態の意外な効果及び利点は、回転可能な基部に作用させる力の量又は回転速度を変更しなくても、単に高さ及び/又は距離即ち第1の当接部と第2の当接部の間の空きを調節することによって、刺通部材のために様々な穿通深さ及び穿通角度をカスタマイズできるということである。
【0037】
発明の更に別の実施形態によれば、基部が第1の刺通位置から第2の刺通位置へ更に回転されたときに刺通部材の刺通端は、更に、解放可能ロック位置に到達する前に第2の刺通点にて表面を刺通し及び表面と係合するように仕向けられ得る。
【0038】
刺通端のための第2の刺通点を提供することによって、刺通端が定着する前、即ち刺通端が解放可能ロック位置に到達する前に、目標表面への確実で安定した接続を確立させることが確約され得る。追加的又は代替的に、目標表面への締結デバイスの接続強度をいっそう高めるために、複数の刺通部材を同じ基部上に配設して複数の刺通点にて表面を穿通させるようにしてもよい。代替的には、各刺通部材には、カスタマイズされた刺通端が設けられていてもよく、例えば、複数の尖叉、プロング、フックなどを持つフォーク様の端を設けて各刺通点にて表面の数か所を貫通させてもよい。
【0039】
本発明の更に別の実施形態によれば、基部が第1の刺通位置から初期位置へ回転されたときに、刺通部材の刺通端は引き込まれ、表面の第1の刺通点から係合解除され得る。
【0040】
解放機構を例えばユーザーがトリガすることにより、刺通部材を目標表面上の刺通点から引き込ませることによって、締結デバイスを目標表面から取り外すことができる。例えば基部を締結方向とは逆の方向に回転させることによって、刺通部材は一杯まで引き込まれるようになっていてもよい。こうして、刺通部材は解放可能ロック位置から初期位置へ、例えばハウジングの中へ、完全に引き込まれることができる。
【0041】
刺通部材はまた、幾つかの準定常位置の間で部分的に引き込まれてもよく、例えば刺通部材を第2の刺通位置から第1の刺通位置へ引き込み、刺通端を第2の刺通点から退避させ係合解除させることもできる。引き込まれるとは、基部をその初期回転方向つまり刺通端に目標表面を刺通させるときの方向に比べて反転方向に回転させることによって、刺通端が逆の軌道、例えば反転された第2又は第1の軌道をたどることを意味する。
【0042】
本発明の更に別の実施形態によれば、締結デバイスは、更に、
- 基部と機械的に接続されていてアクチュエータデバイスへ接続可能であるパワー伝達デバイスであって、アクチュエータからのパワーを基部へ伝達することによって基部を回転させるように構成されているパワー伝達デバイス、を備え得る。
【0043】
締結デバイスを動作させるために、様々な駆動機構が回転可能な基部を駆動するのに適用できることに本発明者は気づいた。パワー伝達デバイスは、駆動パワーを基部へ伝え、ひいては基部を回転させるために採用され得る。機械的接続とは、概して、伝達デバイスが機械的パワーを基部へ伝え、結果として基部の回転運動が生じることになる、という意味である。パワー伝達デバイスは、幾つかの実施形態では別個の構成要素(中間的構成要素)であってもよいし、又は幾つかの実施形態では、それは回転可能な基部と一体化され/1個の部片に製造されてもよく、即ち、基部の一部又は一部分が突起、歯、コグ(cog)などの様な手段を設けられ、アクチュエータからの回転運動を回転式基部へ伝えるのに使用されることもできる。
【0044】
パワー伝達デバイスは、回転式プレート、ドライブギヤ、コグ付きラック、ベルトドライブ、チェーンドライブ、及び、ワイヤとカム、のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
【0045】
本発明の更に別の実施形態によれば、アクチュエータデバイスは、レバー、引張ばね、電気サーボモータ、ステッパモータ、ドリル機械、及びガソリン機関、のうちの少なくとも1つを備え得る。
【0046】
パワー伝達デバイスは、概して、パワー源、即ち基部を動かすための回転パワーを提供する機械的、電気的、又は類似の適切なパワー源へ、機械的及び動作的に接続可能である。パワー伝達デバイスは、ユーザーによって操作される手動式パワー源又はアクチュエータデバイスへ接続されていてもよい。幾つかの実施形態では、アクチュエータデバイスは、ユーザーによって手動式に、例えば引く、押す、押圧する、又は引きずる行為によって作動され又はトリガされるバー又はレバー又は引張ばねであって、ユーザーによって印加される機械的パワーを、伝達デバイスを介して基部へ伝達し、基部を所望方向に回転させることができるものであってもよい。他の実施形態では、アクチュエータデバイスはモータ又は機関であってもよい。例えば、アクチュエータデバイスは、ステッパモータか、又はコントローラエレクトロニクスという手段によって自動的に制御可能であり自動的にトリガされるサーボモータであってもよい。コントローラエレクロトニクスは、締結デバイス内に実施されていてもよく、例えばユーザーによるスイッチの押圧によって起動されるようになっていてもよい。アクチュエータデバイスを起動するコントローラエレクトロニクスは、アクチュエータデバイスを遠隔的に、例えばウェブアプリケーションを介して、スマートフォンアプリケーションを介して、又はアクチュエータデバイスを作動させ、ひいては基部を回転させることのできる何れかの他の形式のネットワークベースのトリガ信号を介して、制御できるようにするためのネットワーク接続インターフェースを備えていてもよい。この配設の1つの利点は、締結デバイスを目標表面に取り付ける場合の直接的なユーザー関与が実施可能でないか又は必ずしも要求されないという場合の環境で締結デバイスを使用できるようになるということだ。例えば、衣料品を一方の製造ラインからもう一方の例えば梱包ラインへ移動させるのにロボットアームが設置されているという衣類を取り扱うための産業的環境では、アームには、ロボットアームのオペレーションソフトウェアによって自動的に制御されるか又はロボットアームの動作を監視しているユーザーによって遠隔的に制御されることのできるアクチュエータデバイスへ接続された複数の締結デバイスが設けられてもよい。他の実施形態では、ドリル機械、ハイブリッドステッパモータ、ブッシュレスDCモータ、小型ガソリン機関が、所望の速さ及び回転数で、基部を回転させ、ひいては締結デバイスを締結及び締結解除させるように構成されていてもよい。
【0047】
本発明の第2の態様によれば、物体を材料の表面へ着脱可能に取り付ける方法が提供されており、方法は、
- 回転軸周りに少なくとも1つの方向に回転可能な基部を提供する工程と、
- 回転可能な基部を機械的に支持する支持フレームであって、基部の回転軸は支持フレームの基準平面に対し横断方向である、支持フレームを提供する工程と、
- 基部へ取り付けられた固定端と、刺通端と、を備える少なくとも1つの開放リング形状刺通部材であって、基部が回転されたときに刺通部材の刺通端が第1の曲線軌道をたどるように構成されている刺通部材を提供する工程と、
- 支持フレーム上に配設されていて、刺通部材と接触させられたときに刺通部材の刺通端に第2の曲線軌道をたどらせるように構成されている第1の当接部を提供する工程と、を備え、
第2の軌道の平面が第1の軌道の平面から偏差角だけオフセットされるようにしている。
【0048】
本発明の更に別の実施形態によれば、方法は、更に、基部が初期位置から第1の回転位置へ回転されたときに刺通部材の刺通端に第1の刺通点にて表面を刺通し及び表面に係合するよう仕向ける工程と、基部が最終回転位置へ回転されたときに刺通部材に第2の軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達するよう仕向ける工程と、を備え得る。
【0049】
発明のこの態様に関し、発明の好ましい特徴及び利点は、先に論じられた発明の態様でも同様に容易に利用可能であり、逆もまた然りである。
【0050】
本発明のこれら及び他の特徴は、次の詳細説明の中で、以下に記述される実施形態を参照しながら更に明らかにされてゆく。
【0051】
以上に開示されている主たる発明概念に加え、本開示は、更に、主たる発明概念と共に用いるか又は非可撓性刺通部材を有する締結デバイスでの別個の技術的解決策として用いることのできる少なくとも第2の発明概念を含んでいる。ここに開示される第2の発明概念は、機械的応力印加時に著しい可逆的変形を被る可撓性/弾性の刺通部材を有することが望ましくない場合に使用されるのに適切であり得る剛性の刺通部材の使用に関する。ゆえに、その様な意図された用途にとっては頑丈で機械的に剛性のある刺通部材が好適である。第2の発明概念によれば、回転可能な基部及び刺通部材は、支持フレームの基準平面に対して傾斜角を持たせて配設されることができる。したがって、基部の回転軸もまたそれぞれ傾けられている。第2の発明概念によれば、刺通部材の刺通端の軌道に変化をもたらすのに当接部はもはや必須とはなり得ない。代わりに、刺通部材及び基部が基準平面に対して傾いているせいで、刺通部材の軌道の平面は初期設定によって支持フレームの平面に対して偏差角だけオフセットされる。したがって、刺通部材は、外部当接部によって課される軌道の変化を経験することなく、回転可能な基部と相互に同じ回転軸周りに回転できる。更に回転式基部の大きさは傾け構成に合わせて改変されてもよく、例えば剛性針を有する回転可能な基部の大きさは可撓性針を有する回転可能な基部の大きさより小さくなり得る。
【0052】
更なる発明概念は、1つ又はそれ以上の分割出願の主題となり得る。以上に説明されている第1の発明概念に関連してなされている、材料、使用分野、設計、組立などに関する記載は、更なる(第2の)発明概念でも同じく関連部分に適用される。
【0053】
本発明の上記目的並びに追加の目的、特徴、及び利点は、本発明の実施形態についての以下の例示的で非限定的な詳細説明を添付図面と併せて参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1a】本発明の少なくとも1つの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図1b】本発明の少なくとも1つの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図1c】本発明の幾つかの実施形態による、
図1aの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図1d】本発明の幾つかの実施形態による、
図1aの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図1e】本発明の幾つかの実施形態による、
図1aの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図1f】本発明の幾つかの実施形態による、
図1aの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図1g】本発明の幾つかの実施形態による、
図1bの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図1h】本発明の幾つかの実施形態による、
図1bの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図1i】本発明の幾つかの実施形態による、
図1bの締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図2a】本発明の少なくとも1つの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図2b】本発明の少なくとも1つの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図2c】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図2d】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図3a】本発明の少なくとも1つの他の実施形態による、締結デバイスの回転可能な基部の異なる回転位置での締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図3b】本発明の少なくとも1つの他の実施形態による、締結デバイスの回転可能な基部の異なる回転位置での締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図3c】本発明の少なくとも1つの他の実施形態による、締結デバイスの回転可能な基部の異なる回転位置での締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図3d】本発明の少なくとも1つの実施形態による、回転可能な基部の異なる回転位置での締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図3e】本発明の少なくとも1つの実施形態による、回転可能な基部の異なる回転位置での締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図3f】本発明の少なくとも1つの実施形態による、回転可能な基部の異なる回転位置での締結デバイスの概略的側面図を示す。
【
図4a】本発明の1つの実施形態による、使用時の締結デバイスの概略図を示す。
【
図4b】本発明の1つの実施形態による、使用時の締結デバイスの側面図を示す。
【
図5a】本発明の別の実施形態による、使用時の締結デバイスの概略図を示す。
【
図5b】本発明の別の実施形態による、使用時の締結デバイスの側面図を示す。
【
図6a】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図6b】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図6c】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図を示す。
【
図7a】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略図を示す。
【
図7b】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略図を示す。
【
図7c】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略図を示す。
【
図7d】本発明の幾つかの実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略図を示す。
【
図8a】本発明の更に別の実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略的斜視図を示す。
【
図8b】本発明の更に別の実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略的斜視図を示す。
【
図9a】本発明の更なる実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略的下面図を示す。
【
図9b】本発明の更なる実施形態による締結デバイス及びパワー伝達機構の概略的上面図を示す。
【
図10a】本発明の幾つかの実施形態による作動機構の概略図を示す。
【
図10b】本発明の幾つかの実施形態による作動機構の概略図を示す。
【
図10c】本発明の幾つかの実施形態による作動機構の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図に描かれている様に、幾つかの特徴(刺通部材、当接部などを含む)は、例示目的で誇張されており又は誇張されることもあり、かくして本発明の実施形態の全般的な構造を描くために提供されている。全体を通して同様の参照符号は同様の要素を指す。
【0056】
本詳細説明では、本発明の諸実施形態が添付図と共に論じられる。指摘しておくべきこととして、これは発明の範囲を何ら限定するものではなく、発明は他の環境でも適用可能であり、例えば、添付図面に示されている実施形態以外の、他の型式又は変型の回転可能な基部及び回転可能な基部の回転機構と共に又は様々な型式の刺通部材を有する変型の締結デバイスと共に適用されてもよい。
【0057】
以下の説明では、「上」、「下」、「内」、「外」、「面」、「縁」、「周囲」などの様な用語が使用されるだろう。これらの用語は、概して、図面に示されている視点及び向きを指す。用語は読み手の便宜を図って使用されているだけであり、制限を課すものではない。
【0058】
本発明の文脈では、垂直方向、長手方向、横方向の様な方向及び向きは、広範に解釈される必要があり、概して、3次元デカルト座標系又は円柱座標系又は球面座標系の様な座標系での物体の幾何学的延長を指す。したがって、物体の空間的延長及び空間的位置、例えば基部及び刺通部材の刺通端の準定常位置は、座標系の少なくとも1つの平面内に、例えばx、y、z座標を用いることによって定義され得る。追加的又は代替的に、刺通部材の刺通端又は基部の空間的延長及び空間的位置は、座標系の原点からの半径方向距離(r)及び球面座標系の極角及び方位角によって定義することもできる。
【0059】
基本的に、垂直方向又はz方向は、支持フレームの基準平面に直交又は直角である。長手方向又はy方向は回転可能な基部の周囲から回転可能な基部の中心に向かって延びる仮想線に部分的に平行であるとしてもよい。ただし、y方向は回転可能な基部の周囲から中心へ延びる仮想線に対し横断方向であることもある。円形基部の或る実施例では、仮想線は基部の周囲から中心に向かって半径方向に延びていてもよい。仮想線は、例えば円形基部の半径であってもよいし、又は、例えば方形又は矩形の回転可能な基部の対角線又は辺であってもよい。横方向又はx方向はy方向とz方向の両方に直交する。x方向は、回転可能な基部の周囲から中心へ延びる半径方向仮想線に対し部分的に横断方向であるとしてもよいが、それはまた仮想線に平行な方向であることもある。
【0060】
図1aは、1つの実施形態による締結デバイス1の斜視図を描いており、締結デバイスは、支持フレーム2、回転可能な基部3、少なくとも1つの第1の当接部4a、及び少なくとも1つの刺通部材5を備えている。この実施形態での支持フレーム2は、射出成形や3Dプリンティングなどの様な技術的に既知の様々なテクノロジーを用いて、例えばプラスチック、金属、木材などで作られたフレーム、つまり剛性又は半剛性の構造体であってもよい。支持フレームは、回転可能な基部、例えば回転可能な基部の一方の面のみ、例えば下面15か又は上面14を、支持及び担持/支承する構造を提供する。支持フレーム2は、代替的又は追加的に、回転可能な基部3の1つより多い面、例えば回転可能な基部3の2つの面又は3つの面又は4つの面又は全ての面に支持を提供していてもよい。追加的又は代替的に、支持フレームは、回転可能な基部3を全体的に取り囲んでいてもよく、つまり、例えばハウジング、ケーシング、又は類似物として回転可能な基部3を完全に包み込んでいてもよい。
【0061】
この実施形態では、基部3は円形又はディスク形状の基部であって、その中心部6の中心アクセル(axel)6’へ、発案された要素の周りを基部が安定して回転できるようにするコネクタ要素、例えばピン、ロッド、スタッドなどを介して接続されていてもよい。コネクタ要素は、挿入可能な外部構成要素であってもよいし、又は基部の一部である押出部であってもよい。言い換えれば、基部は、雄型のコネクタ要素を受け入れる雌型の開口部(受口)を有していてもよいということだ。ここに、雄型要素と雌型要素は相補的な断面形状を有する。追加的又は代替的に、基部3は、例えば支持フレーム2上の雌型フィッティングの中へ又は随意的にはハウジング又はケーシングが存在する場合にはその受口部分の中へ差し込まれることになる雄型押出部を有していてもよい。雄型要素と雌型要素の嵌め合いは、係合させ又はねじ込んで一体に締結させるねじ部又はコグ付き部分を含んでいてもよいし、又はスナップ作用を用いて嵌め合うようになっていてもよい。基部3は、例えば支持フレーム2又はハウジングによって少なくとも2つの面、3つの面、又は全ての面を支持及び懸架させ基部を自由に回転させられるようにすることによって、外部要素の必要性なしに配設され回転可能にされてもよい。追加的又は代替的に、基部3は、支持フレーム2によって、又は支持フレーム2の一部分によって、又は随意的にはハウジングの一部分によって包囲され、かくして自由に回転できるようにされていてもよい。基部3は、基部の回転軸7周りに回転でき、回転軸7はその向きを変えず、よって基部はその回転中にぐらつき、すりこぎ運動、又は並進面外運動を経験することはないだろう。基部は、時計回り8及び/又は反時計回り9の方向に回転できるようにされている。この実施形態では、第1の当接部4aは、y方向に延びており、即ち支持フレーム2の周辺又は周囲10から又は随意的には基部3の周辺又は周囲11から基部の中心部6に向かって半径方向に延びている。言い方を変えれば、当接部4aは支持フレーム2の遠位部分10に配設されていて、基部の中心6に向かって延びていてもよいということだ。この実施形態では、当接部はその最長の延長を実質的にy方向に有しているが、発明者らはまた、(単数又は複数の)当接部4aを支持フレーム2の周辺に配設させ、その最長の延長をx方向に持たせること、即ち(単数又は複数の)当接部4aの横方向延長を(単数又は複数の)当接部4aの長手方向延長より大きくすることもできる、ということを見出した。(単数又は複数の)当接部の長手方向延長は、(単数又は複数の)当接部4aの横方向延長の例えば1倍~10倍の範囲にあってもよい。代替的に、(単数又は複数の)当接部4aの横方向延長は、(単数又は複数の)当接部4aの長手方向延長の例えば1倍~10倍の範囲にあってもよい。当接部4aは、更に、この実施形態に示されている向き以外の何れかの他の向きに延びていてもよく、例えばx-y平面内の様々な方位角で延びていてもよい。この実施形態での当接部4aは、円形の(
図1c-
図1iに示す)断面を有する円柱ロッドの形態をしている。ただし、理解しておくべきこととして、当接部4aは締結デバイスの設計態様に適する何れの適切な形状及び幾何学的延長を有していてもよく、例えば、それは円形、楕円形、又は矩形の断面を有する円錐形状ロッド又は角柱であってもよい。この実施形態での刺通部材5は、制御された変形を被り、曲がる、捩じれる、カールするなどの変形後にはその元の形状を取り戻すことのできる弾性、可撓性、又は半可撓性の針とすることができる。可撓性刺通部材5は、機械的応力、引張り、及び歪に対する様々な量の許容度を有していてもよく、そうすると機械的応力下に置かれたときには異なる度合いの可逆的変形を被ることになるだろう。刺通部材は弾性ワイヤ又は条片材料で作られる。刺通部材5は、回転可能な基部3へ取り付けられているのが好適とされる固定端12を有している。
【0062】
刺通部材5は、基部3の何れの所望の部、部分、又は面にて基部3へ取り付けられていてもよい。刺通部材5は、基部3に成形する/埋め込むことによって永久的に基部3へ取り付けられていてもよいし、又は基部3と共に単一の全体部片に製造されてもよい。刺通部材5は、更に、基部3へ取り付け可能であるか又は基部3へ着脱可能に取り付けられていてもよい。取り付け可能である又は着脱可能に取り付けられるとは、ここでは、刺通部材5の固定端12が、例えばスナップ嵌め機能という手段によって繰り返し基部3へ取り付けられたり取り外されたりできることであると理解されたい。刺通部材5は、更に、基部3へねじ込まれるか又は任意の繰り返し取り外し可能な様式で基部3へ接続されていてもよい。刺通部材5を別個の構成要素として有することは、締結デバイスの容易カスタマイズを可能にし、例えば、同じ基部が、様々な大きさ、形状、長さ、湾曲、引張、又は機械的応力耐久性を有する異なる種類の針と共に使用されるようにカスタマイズされ得る。こうすれば更に、損傷した又は破損した針の補償又は交換がいっそう容易になり、その行為はユーザー自身によって遂行されることすらでき、更にはユーザーエンドの費用が軽減され、しかも既存の機能的構成要素を再使用することによってデバイス生産の環境的フットプリント及び材料使用量を低く維持することができる。
【0063】
刺通部材の固定端12はまた、ヒンジ又はピボット点(図示せず)を介して基部3へ取り付けられ、刺通部材5が制御されたやり方でピボット点周りに枢動できるようになっていてもよい。これは、針5への機械的応力を解放するのが望ましい場合に好都合であり、例えば針5がロック位置に到達したとき又は針5が比較的硬質の表面を穿通するときであって、追加の機械的応力が刺通部材5にかかり、その結果、非制御の不可逆的変形又は損傷が針5及びデバイス1に生じかねない場合がそうである。刺通部材5は、刺通部材5の係合相手の個々の材料の表面を穿通する刺通先端を有するフック又は針であってもよい。
【0064】
針5は、目標表面を穿通し及び目標表面と係合する(
図4a-
図4b参照)ことのできる先端又は刺通端13を備えている。
【0065】
或る異なる実施形態では、
図1bに示される締結デバイス1は第2の当接部4bを備えている。第2の当接部4bは、形状及び幾何学が第1の当接部4aと似ていてもよいし、又は代替的に、第1の当接部4aと比べて異なる形状、大きさ、向きなどであってもよい。刺通端13は、第2の当接部4bより前に第1の当接部4aと接触する。言い方を変えれば、第2の当接部4bは、空間的には、x方向に又は刺通部材5の経路の一部に沿って第1の当接部4aの手前又は後ろに配設されており(
図1g-
図1i参照)、基部3が回転されたときに刺通端13と接触するのは実際には第1の当接部4aである。更に、指摘しておくべきこととして、第1の当接部4a及び第2の当接部4bはどちらも、支持フレーム2の基準平面16を外れて又は基準平面16に対し横断方向に突き出ているか又は支持フレーム2の側面又は遠位部分10から突き出ていて、少なくとも部分的には支持フレーム2の平面16に内包されているか又は平面16に平行である単一の突出点、例えば、バンプ、バー、ロッド、ピンなどであってもよい。
【0066】
締結デバイスが外部物体をユーザーの一着の衣服へ取り付けるのに使用される実施例では、基部3は、例えば1mm~20mmの範囲の高さ又は厚さを有していてもよい。
【0067】
基部3は、例えば1mm~200mmの範囲の直径を有していてもよい。
【0068】
組立後の締結デバイス1は、例えば1mm~30mmの範囲の高さ又は厚さを有していてもよい。
【0069】
組立後の締結デバイス1は、例えば1mm~200mmの範囲の直径を有していてもよい。
【0070】
刺通部材5は、例えば0.05mm~5mmの範囲又は好ましくは0.2mm~1.5mmの範囲の厚さを有していてもよい。
【0071】
刺通部材5は、例えば1mm~200mmの範囲の直径を有していてもよい。
【0072】
ただし、理解しておくべきこととして、刺通部材5の基部3及び締結デバイス1の様な上述の構成要素は、上記の範囲外の寸法を有していてもよく、当業者は単にそれらの寸法を締結デバイス1の意図される設計及び他の用途に基づいて検討すればよい。
【0073】
図1aに戻って、締結デバイス1は、目標表面と接面するように配設され得る連結表面又は連結面14を有している。本開示の文脈では、「~と接面する」は、使用時に基部3を回転させると締結デバイス1の刺通部材5が目標表面を穿通及び刺通できるように、目標表面に物理的に接触する、目標表面に当てて置かれる、目標表面に押し付けられる、目標表面へ適合する、又は目標表面に適応されると解釈されるものとする。言い換えれば、連結面14は、締結デバイス1の、目標表面に当てて置かれる面及び目標表面に面した面である。連結面14は、例えば締結デバイス1の上面14であってもよいし、又は締結デバイス1の下面15であってもよい。締結デバイス1の「上」面及び「下」面とは、上面14は下面15よりもz方向により高い垂直方向高度を有する面であることを意味する。締結デバイス1の上面14及び下面15は、代わりに支持フレーム2の上面及び下面と呼ばれることもある。締結デバイス1の下面15は、回転可能な基部3を、基部3を回転させるように配設されたパワー伝達デバイスへ、連結するのに使用され得る(
図2c及び
図7c)を参照。
【0074】
図1c-
図1fは、第1の当接部4aを備える
図1aの締結デバイス1の側面図を描いている。
図1cでは、基部3は初期位置にあり、したがって刺通部材5は引き込み位置又は静止位置にある。静止位置では、刺通部材5の本体の一部分又は例えば刺通端13は、支持フレーム2の基準平面16に対して角度17を形成していてもよい。刺通部材5の刺通端13は、静止位置では垂直方向高度(高さ)例えばzn1を有する。上昇高さzn1は、支持フレームの基準平面16に対して例えば0mm~30mmの範囲にあってもよい。第1の当接部4aは、基準平面16に対して例えば0mm~30mmの範囲にある垂直方向高度zaを有していてもよい。静止位置では、刺通端13は、x軸方向に例えばx0の延長を有していてもよい。
図1dに示されている様に、基部3が回転されたときに刺通部材5の刺通端13は静止位置x0から第1の曲線軌道をたどり、例えば横方向延長xaを有して当接部4aに至る。刺通部材の位置及び延長は、更に、刺通端13の、基部の中心部6からの半径方向距離によって定義され、例えばx0でのr0とxaでのra(図示せず)及び対応する方位角例えばx0でのΦ0とxaでのΦa(図示せず)によって定義することもできる。第1の軌道は、概して、基準平面16に部分的/実質的に平行であり得る平面18を有する。刺通端13がx0からxaへ移り/動き、第1の当接部4aと接触すると、基準平面16に対する刺通部材5の初期角度17が増加する。刺通端13が第1の当接部4aに接触したときの刺通部材5と基準平面16の間の角度、つまり接触時角度19と呼ばれる角度は、初期角度17に比較して、少なくとも10度、又は少なくとも20度、又は少なくとも30度、又は少なくとも50度、又は少なくとも80度だけ増加する。代替的又は追加的に、接触時角度19は、多くとも10度、又は多くとも20度、又は多くとも30度、又は多くとも50度、又は多くとも80度だけ増加するようになっていてもよい。
【0075】
接触時角度19は、刺通端13の第2の軌道の平面20の、基準平面16に対する角度として定義することもできる。着目すべきこととして、刺通部材5の刺通端13は、第1の当接部4aと接触したときに、第1の軌道の平面18から偏差角だけオフセットされた平面20を有する第2の軌道をたどる。したがって、偏差角は接触時角度19と初期角度17の間の差として定義でき、初期角度17が実質的に無視できるほど小さいときに偏差角は接触時角度19と大凡同じということになる。
【0076】
基部3が引き続き回転してゆくと、接触時角度19は、弾性と刺通部材5が被ることになる変形の量とに基づいて、一定のままであるか又はなおいっそう増加することになる。刺通端13は、更に、基部3の回転中、例えば当接部4aとの接触後に、初期高さzn1から例えば第2の高度zn2への垂直方向の上昇を被る。例えば、zn2は、刺通端13の、連結面14の平面21から突き出たときの高さ、又は刺通端13の基準平面16に対する高さのピークであるとしてもよい。その様な上昇の量はまた、第1の軌道と第2の軌道の偏差角及び刺通部材の剛性/弾性に依存する。刺通端13が高さのピークに達した後、基部3を更に回転させることによって、刺通端13は垂直方向に下降し、その軌道をたどることによって下向きに動き、終にはその最終的な軌道例えば第2の軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達する。こうして、例えば目標表面上の第1の刺通点から第2の刺通点へ延び得る開放リング形状又はループ形状のフックが作成できるのである(
図4a-
図4b参照)。
【0077】
図1eは、必ずしも第1の当接部が規定の高さを有する或る特定の位置に固定されておらず、むしろ第1の当接部がz方向に少なくとも2つの異なる高さの高度の間で動けるようになっている1つの実施形態を描いている。例えば、刺通部材5の静止位置では、第1の当接部4aは、高さza’に配置されていて、基部3の回転又は刺通端13との接触時に上向きに第2の高さzaへ動くようになっていてもよい。
【0078】
第1の当接部4aは、手動的に又は自動的に、第1の当接部4aの垂直方向高さを調節するダイヤル、レバー、スライド、ギヤなどによって動かされるようになっていてもよい。
【0079】
図1fに示されている別の実施形態では、刺通部材5の刺通端13は、刺通端13が簡単に当接部4aに係合し軌道の変化を被ることができるようにわずかに上向きに曲げられていてもよい。これは、例えば、刺通部材5が変形及び軌道の変化を被る前に当接部4aとしっかり係合しておくことが要求されるより剛性の刺通部材5と共に使用するのに好都合である。
【0080】
図1g-
図1iは、第1の当接部4aに加えて第2の当接部4bを備えている
図1bの締結デバイス1の幾つかの実施形態の使用時の側面図を描いている。本発明者は、刺通部材5の経路内に第2の当接部4bを提供することによって、刺通部材5の運動に対する実質的な制御が実現され得ることに気づいた。刺通端13の軌道が第1の当接部4aによって変えられた後、刺通端13はその一部分22が第2の当接部4bに接触する準定常位置に到達する。この段階で、刺通部材5は、一方の端即ち固定端12での回転する基部3によって及ぼされる回転力及び第1の当接部4aと第2の当接部4bの間に位置する部分23へ及ぼされる力のせいで、制御可能な量の機械的応力下に引き留められる。機械的応力の量は、及ぼされる力の量によって、又は垂直方向延長、横方向又は長手方向延長、及び/又は垂直方向又は横方向の当接部間距離を変更することによって、制御することができる。第2の当接部4bは、例えば横方向延長xbに配設されている。xaにて第1の当接部4aに至り、刺通端13の軌道及び刺通部材5の垂直方向高度が変えられた後、刺通部材5の部分22は第2の当接部4bに接触する。刺通部材5を制御された機械的応力下に引き留めること及び基部3の回転運動中の刺通部材5の滑らかな運動を確約することに加え、第2の当接部4bは、更に、刺通部材5の部分22の垂直方向高度が或る特定の高さ、例えば第2の当接部4bが配設されている高さzbを超えるのを防止するように構成されている。この実施形態では、第1の当接部4aは第2の当接部4bより高い垂直方向高度に配設されている(za>zb)。第1の当接部4aと第2の当接部4bの間の高さの差Δzabを特注仕様化することによって刺通端13の軌道及びひいては偏差角を単純に制御できるようになるので、これは好都合である。言い換えれば、Δzabを増加させることによって、より急な又はより大きい偏差角及びひいては目標表面に対するより鋭利な穿通角度が実現できるということである。追加的又は代替的に、第1の当接部4aと第2の当接部4bの間の距離又は横方向延長差Δxabを変える及び制御することによっても同じく偏差角を修正することができる。例えば、距離Δxabを増加させることによって、より急な偏差角及びひいては目標表面に対するより急な穿通角度を実現してもよい。偏差角をカスタマイズするのに高さと横方向距離の諸変型の組合せを使用することができる。
【0081】
図1hは、第1の当接部4aが少なくとも2つの高さ位置za’とzaの間で垂直方向に動くことを許容されている或る実施形態を描いている。この実施形態は、第1の当接部4aに追加して第2の当接部4bが配設されている点で、
図1eの実施形態とは異なる。
【0082】
図1iは、刺通部材5が第1の当接部4aとしっかり係合されることを確約するために刺通部材5の刺通端13がわずかに上向きに曲げられている実施形態を描いている。この実施形態は、第1の当接部4aに追加して第2の当接部4bが配設されている点で、
図1fの実施形態とは異なる。
図1e及び
図1fの実施形態で実現されるすべての利点は、
図1h及び
図1iの実施形態でも同様に、第2の当接部4bによって提供される利点と併せて実現される。
【0083】
図2a及び
図2bは、本発明の更に別の実施形態での、支持フレーム2が2つの相互接続された部を備える締結デバイス100の概略的斜視図を描いている。例えば、内側部24aと、内側部24aを少なくとも部分的に包囲する外側部24bと、である。
図2a-
図2bに示されている円形基部3の場合には、回転可能な基部3は支持フレームの内側部24aによって囲まれており、ゆえに支持フレーム24a、24bもまた、少なくとも部分的には回転可能な基部3の周囲に沿って延びる円形又はリング形状の幾何学を有し得る。支持フレームの内側部24aと外側部24bは互いに対して及び基部3に対して回転できるようになっている。この配設の或る利点は、第1の当接部4aと第2の当接部4bを支持フレーム2の内側部24aか又は外側部24bの一方に配設し、内側部24aと外側部24bを互いに対して回転させることによって、第1の当接部4aと第2の当接部4bの間の距離が好都合にも調節できることである。例えば、締結デバイス100のユーザーは、デバイスの動作中に距離を調節することができる。これは、ユーザーが異なる偏差角を実現すること、ひいては目標表面に対する異なる穿通角度を実現することを可能にさせる。
【0084】
図2c及び
図2dに示されているこの実施形態では、第1の当接部4aは支持フレーム2の内側部24aに配設され、第2の当接部4bは外側部24bに配設されている。第1の当接部4aは、その最上高度にバンプ形状の突起4a’’を形成している立ち上がり勾配付き部分4a’を有している。勾配付き部分4a’は、単純に、刺通部材5の刺通端13を、刺通端13の軌道を変えるように配設されている第1の当接部4aのバンプ突起4a’’に向けて案内することができる。静止位置では、更に刺通部材5は部分的に勾配付き部分4a’に載っている。第2の当接部4bは、基部3の中心部6に向かって半径方向に延びる部分4b’を持つバンプ状突起4b’’を有していてもよい。基部3の中心部6は外部アクセル(axel)6’へ接続されるように配設されていてもよい。基部3は代替的に中心アクセル6’の必要性なしに回転するように配設されることもできる。支持フレーム2の内側部24aは、基部3の下部25を突き出させてパワー伝達デバイス(
図7b-
図7d参照)へ連結できるようにするための開口部を有していてもよい。基部3の下部25は、パワー伝達デバイスへ連結されるコグ又は歯26を備えていてもよい。
【0085】
図2cでは、第1の当接部4a及び第2の当接部4bは、距離Δxabに配設されていて、偏差角19はこの距離によって決まる。この実施例では、当接部4a、4bは同じ高さに配設されており、初期角度17は無視できるほどである。
図2dに示される様に、内側部24a及び外側部24bを回転させることによって、第1の当接部4aと第2の当接部4bは互いに近づき、その結果、当接部4aと4bの間の距離がΔx’abまで減少する(Δx’ab<Δxab)。これにより、今度は偏差角19’が増加し、より鋭くなる。内側部24a及び外側部24bは、コグ又は歯という手段によって一体に連結され、各部に作られたそれぞれの溝内で互いに対して回転式に滑動するようになっていてもよい。外側部24bに複数の歯/コグ27を設け、支持フレームの外側部24bを、外側部24bを駆動し回転させるパワー伝達デバイス(図示せず)に連結するのを容易にすることもできる。理解されるべきこととして、上述の内側部及び外側部は、どれもが可動部品であってもよいし、一部のみが可動部品であってもよく、第1の当接部4aと第2の当接部4bの間の距離を調節するにあたり、例えば内側部24aは静止構成要素であり、外側部24bだけが回転するようになっていてもよく、逆もまた然りである。
【0086】
図3a-
図3fは、発明の別の実施形態を描いている。
図3a-
図3cは、締結デバイス200の斜視図を示し、
図3d-
図3fは、
図3a-
図3cの締結デバイス200の対応する側面図を示す。この実施形態では、締結デバイス200は、刺通部材120、回転式基部130、及び支持フレーム140を包囲するハウジング110を備えており、ハウジング110は代わりにケーシング又はエンクロージャと呼ばれることもある。この実施形態は、支持フレーム140がハウジング110の一部として一体化されている点で先に説明された実施形態とは異なる。ただし、読み手には容易に理解できるように、ハウジングは一体型支持フレーム140を設ける必要があるというわけではなく、代わりに締結デバイスが先に説明されている独立型支持フレームと共にハウジング110内に入れられていてもよい。ハウジングは、基部130の回転運動中の刺通部材120の軌道変更を容易にする働きをする部分、例えば勾配付き部分111及び111’を備えている。この実施形態では、第1の当接部141aは、ハウジング110の一体型支持フレーム140の勾配付き部分111によって提供され、第2の当接部141bは勾配付き部分111’によって提供されている。この様に、支持フレーム140の幾何学から利点が得られ、したがってバンプ、ロッド、ピンなどの様な突出要素を配設する必要性は軽減される。2つの当接部を有する先の実施形態に解説されている様に、この実施形態でも同様に刺通部材には制御された機械的応力が印加される。
【0087】
引き込み位置(
図3a及び
図3d)では、刺通端122及び刺通部材120の本体ほぼ全体がハウジング110の内部に座している。この位置での刺通端122は、したがって、締結デバイス200の連結面14の平面21から外に突き出されてはいない。随意的に、刺通部材120の本体の少なくとも一部、例えば刺通端122が、引き込み位置では勾配付き部分111に載っていてもよい。
【0088】
中間位置(
図3b及び
図3e)では、回転式基部130がその回転軸7周りに第1の方向9に回転され、刺通部材120が当接部141a、141bに接触してゆくと、刺通部材120の刺通端122はハウジング110の連結面14に配設されている第1の開口部112から外に押し出される。
【0089】
回転式基部130が第1の方向9に更に回転されると、刺通端122は支持フレームの基準平面16に対する垂直方向高度zn3を有する高さのピークに到達する。高さのピークzn3は、代わりに、刺通部材5の本体の、基準平面16に対する垂直方向高度として定義されてもよい。引き続き第2の曲線軌道を進むと、刺通端122は第2の開口部112’の中へ潜り、解放可能ロック位置に至ることができ、ここに刺通部材5は、例えば第1の開口部112を出る出現点50aから第2の開口部112’へ入る潜入点50bへ延びる開放リング形状のフックを形成する。
【0090】
図4a-
図4bは、幾つかの実施形態による締結デバイスの概略的斜視図及び側面図を示す。
図4aは、材料のシート210例えば衣類へ係合されロックされた締結デバイス200を実例的に示す(この図では、第1の刺通点220aから第2の刺通点220bへ延び、ループ形状のフックを形成している刺通部材5のみが視認できる)。
図4b(側面図)は、刺通部材5が材料のシート210を穿通し、刺通端(視認できず)が規定の解放可能ロック位置に座している状態の締結デバイス200を示す。したがって、引き込みプロセス(基部を締結機能のために用いられる一次回転方向とは逆の方向に回転させることによる締結デバイスの取り外し)が例えばユーザーによってトリガされ、その結果、刺通部材が第1の刺通点220a及び第2の刺通点220bから引き込まれない限り、締結デバイス200は材料のシート210へ取り付けられたままである。
【0091】
材料のシートは、更に、金属、木材、植物や動物皮の様な有機材料などの他の材料のグリッド又はメッシュであってもよい。
【0092】
図5a-
図5bは、金属フェンス230へ係合されロックされた締結デバイス200を上面斜視図(
図5a)及び側面図(
図5b)に描いている。
図5aでは、刺通部材5が、ハウジング110の第1の規定の開口部112から突き出され、金属フェンス230と係合され、第2の規定の開口部112’に潜らされることが実例的に示されている。
【0093】
図6a-
図6cは、少なくとも回転可能な基部3、130と刺通部材5とを備える2つ以上の個別の締結デバイス1、100、200(一部の実施形態では、個別のデバイス1、100、200は、随意的に、独立型支持フレーム及び/又は独立型ハウジングを備え得る)を共通ハウジング240内に設置できるように配設されたハウジング110を有する本発明の他の実施形態を実例的に示す。こうして、複数の個別の締結デバイスを有するスケール可能な各種締結デバイス300が実現され得る。また、この様に、ユーザーが例えばスナップ作用などによって、スケールされた締結デバイス300の共通ハウジング240へ追加する及び/又は共通ハウジング240から除去することできる個別の締結デバイス(モジュール)を有する締結デバイス300を提供することによって、モジュール型デバイスを生産することの利点が実現され得る。共通ハウジング240の大きさ及び幾何学は、個別の締結デバイスの大きさ、幾何学、及び数に対して修正されることができる。例えば、スケール可能な締結デバイス300(共通ハウジング240)は、2つ、又は3つ、又は4つ、又は6つ、又はそれより多い個別の締結デバイスを備えるディスク形状(例えば6a及び6b)又は例えば四角形状(
図6c)を有していてもよい。
【0094】
図7a-
図7dは、回転可能な基部130へのパワー伝達デバイス520の連結を概略的に描いている。上面図(7a)は共通ハウジング240の内部を示し、斜視図(
図7b-
図7d)は、この実施形態では、締結デバイス300が、回転可能な基部130の一部としてコグホイール510に配設された連結歯(コグ)531をそれぞれ設けられた個別の締結デバイス200を3つ備えていることを示す。3つの個別デバイス200は、共通ハウジング240内に配設されていて、パワー伝達デバイス520として動作する中央コグホイール520のコグ532へ連結されるように構成されている。パワー伝達デバイス520もまた共通ハウジング240内に配設されている。この実施形態では、パワー伝達デバイス520は、中央コグホイール520の中心部530にてアクチュエータデバイス(
図10c参照)へ接続されている。追加的又は代替的に、アクチュエータデバイスは個別デバイス200のコグホイール510の少なくとも1つへ接続され、中央コグホイール520を介して他の個別デバイス200へ駆動パワーを伝えるようになっていてもよい。
【0095】
図8a-
図8bは、本発明の別の実施形態を、締結デバイス400の斜視図(
図8a)及び拡大斜視図(
図8b)に描いている。この実施形態では、回転式基部の回転は、ワイヤ610/カム620又はタイミングベルト機構が主カム620の往復式及び/又は可変式(異なる方向、速度、rpmなど)の回転運動をワイヤ610との滑動接触を介して個別デバイス200へ付与することを通じて、刺通部材5へ伝えられる。
図8aは、共通ハウジング240内に包囲された4つの個別デバイス200を有する締結デバイス400を示す。この実施形態では、デバイス200は第1の開口部112及び第2の開口部112’を有する独立型ハウジング100を含んでいる。ハウジング110の周囲を少なくとも部分的に周って延び且つ回転式基部130の周囲を少なくとも部分的に周って延びる溝630を介して、ワイヤ610が回転式基部130へ連結されるように、ハウジング110はわずかに修正されている。ハウジング110はその周辺に、ワイヤ610へ連結するために回転式基部の周辺の溝630へのアクセスを提供する開口部(図示せず)を設けられていてもよい。
【0096】
ハウジング110が存在していない他の変型では、溝630は単に回転式基部の周囲に配設されていてもよい。共通ハウジング240は、更に、刺通部材5の出現と潜入を容易にするために、個別のデバイスの刺通部材5の位置に対応する開口部(図示せず)を設けられていてもよい。アクチュエータデバイスへ接続された主カム620が回転されたとき、回転運動はワイヤ610を介して個別デバイス200それぞれへ伝えられる。個別デバイスは、ワイヤのどちらの側にそれらが配設されているか、例えばワイヤの内側650に配設されているか又は外側660に配設されているかに依存して、時計回りか又は反時計回りの方向にデバイスを回転させることのできるカスタマイズ可能な様式で、配置され、ワイヤ/カム装置へ連結されることができる。例えば、
図8aでは、主カム620が時計回りの回転を被ったときにデバイス200aは時計回りの方向に回転するが、デバイス200bは反時計回りの方向に回転する。上述の実施例にかかわらず、ワイヤ/カム機構の大きさ、幾何学、又は回転方向に関し、個別デバイスの大きさ、数、回転方向の他の変型が当業者には容易に着想できるだろう。また、
図7a-
図7dの実施形態と同様に、個別デバイス200の何れか1つが主カム620の代わりにアクチュエータデバイスへ連結されるのは随意である。
【0097】
図9a-
図9bは本発明の別の実施形態を示す。この実施形態の締結デバイス500では、回転式基部(図示せず)の回転はコグ付きラック710の遷移運動によって実現される。ラック710の歯740が、回転式基部へ連結されたコグホイール730の切られた又は差し込まれた歯731と係合する。この機構を通じて、コグホイール730は回転し、基部の回転を先導し、ひいては刺通部材の運動を先導する。直線状のラック710を前後に動かすのにレバー720が使用されている。ラック710の終点のばねと組み合わされれば、この実施形態は品物を取り付ける/取り外すためのより高速に機能するデバイスを可能にするだろう。
【0098】
図10a-
図10cは、以上に説明されている発明概念の実施形態による回転可能な基部へ回転運動を提供するための様々なパワー源又はアクチュエータデバイスを実例的に示す。ここに描かれている3つの異なるアクチュエータデバイスは、中央コグホイール520を有する
図7a-
図7cの実施形態について例示されているが、同様のアクチュエータデバイスは発明の他の実施形態の締結デバイスへ容易に連結できる。
図10aでは、締結デバイス300はレバー810によって駆動される。レバー810は、例えば手動的又は自動的に回転され、中央コグホイール520を回転させることができる。中央コグホイール520が回転されると、回転運動が個別の締結デバイス200のより小さいコグホイール510へ伝えられる。
【0099】
図10bは、アクチュエータデバイスが、中央コグホイール520を駆動し及び対応して個別デバイス200の個別コグホイール510を駆動するために利用される引張ばね820である実施例を実例的に示す。
【0100】
図10cに示される異なる実施例では、個別の締結デバイス200へ回転運動を提供するために、電気ステッパモータ830が中央コグホイール520の中心部530へ連結されている。
【0101】
以上、発明を特定の実施形態に関連付けて説明した。指摘しておくべきこととして、上述の実施形態は発明を限定するものではなく発明を例示するものであり、当業者は付随の特許請求の範囲による範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することがでるだろう。特許請求の範囲では、括弧の間に入れられた何れかの参照符号は特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。「備えている」という語は、特許請求の範囲に記載されているもの以外の他の要素又は工程の存在を排除しない。要素に先行する原文の冠詞「a」又は「an」の対訳語である「或る」又は「一」という語は、複数のその様な要素の存在を排除しない。また、回転可能な基部、刺通部材、支持フレーム、又はハウジングの様な、締結デバイスの他の構成要素は、例えば、添付図に従って示され解説されているもの以外の何れかの他の大きさ、湾曲、又は向きであってもよい。
〔態様1〕
物体を材料の表面へ着脱可能に取り付けるための締結デバイス(1)であって、当該締結デバイス(1)は、
-回転軸(7)周りに少なくとも1つの方向に回転可能な基部(3)と、
-前記基部(3)を機械的に支持するように配設された支持フレーム(2)であって、前記基部(3)は当該支持フレーム(2)に対して回転するように構成され、前記基部(3)の前記回転軸(7)は当該支持フレーム(2)の基準平面(16)に対し横断方向である、支持フレームと、
-前記基部(3)へ取り付けられた固定端(12)と、刺通端(13)と、を備える少なくとも1つの開放リング形状刺通部材(5)であって、前記基部(3)が回転されたときに当該刺通部材(5)の前記刺通端(13)が第1の曲線軌道をたどるように構成されている刺通部材(5)と、
-前記支持フレーム(2)上に配設されていて、前記刺通部材(5)と接触させられたときに前記刺通部材(5)の前記刺通端(13)に第2の曲線軌道をたどらせるように構成されている第1の当接部(4a)と、を備え、
前記第2の軌道の平面が前記第1の軌道の平面から偏差角だけオフセットされるようにしている、締結デバイス。
〔態様2〕
態様1に記載の締結デバイスにおいて、
前記基部が初期位置から第1の刺通位置へ回転されたときに、前記刺通部材の前記刺通端は第1の刺通点にて前記表面を刺通し及び前記表面と係合するように仕向けられ、
前記基部が最終回転位置へ回転されたときに、前記刺通部材は、前記第2の軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達するように構成されている、締結デバイス。
〔態様3〕
態様1に記載の締結デバイスにおいて、
前記締結デバイスは、更に、
-第2の当接部であって、前記支持フレーム上に配設されていて、前記刺通部材と接触したときに、当該第2の当接部と接触した前記刺通部材の部分が前記支持フレームの前記基準平面に対して垂直方向の並進運動を妨げられるように前記刺通部材を機械的応力下に引き留めるように構成されている第2の当接部、を備えている、締結デバイス。
〔態様4〕
態様1乃至3のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記締結デバイスは、更に、
-前記支持フレーム及び(単数又は複数の)前記当接部を備えていて、前記基部及び前記刺通部材を包んでいるハウジングであって、当該ハウジングは前記表面と接面するように配設された連結面を有し、前記連結面はその面に配置された第1の開口部を備え、前記基部が前記初期位置から第1の回転位置へ回転されたときに前記刺通部材の前記自由刺通端は前記第1の開口部から外へ突き出るように仕向けられ、前記基部が前記第1の回転位置から第2の回転位置へ回転されたときに前記刺通部材の前記自由刺通端は前記支持フレームの前記基準平面に対して高さのピークに到達するように仕向けられ、前記基部が前記第2の回転位置から第3の回転位置へ更に回転されたときに前記刺通部材の前記自由刺通端は、前記連結面上に配設され前記第1の開口部から距離を隔てて配置された第2の開口部の中へ進入可能になる、ハウジングを備え、
前記刺通部材は、前記刺通部材の前記自由刺通端が前記第2の開口部の中へ挿入されたときに前記解放可能ロック位置に到達するように構成されている、締結デバイス。
〔態様5〕
態様1乃至4のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記偏差角は、前記支持フレームの前記基準平面に対する前記第1の当接部の垂直方向延長によって決定される、締結デバイス。
〔態様6〕
態様3に記載の締結デバイスにおいて、
前記偏差角は、前記第1の当接部と前記第2の当接部の間の距離によって決定される、締結デバイス。
〔態様7〕
態様2に記載の締結デバイスにおいて、
前記基部が前記第1の刺通位置から第2の刺通位置へ更に回転されたときに、前記刺通部材の前記刺通端は、更に、前記解放可能ロック位置に到達する前に第2の刺通点にて前記表面を刺通し及び前記表面と係合するように仕向けられる、締結デバイス。
〔態様8〕
態様2に記載の締結デバイスにおいて、
前記基部が前記第1の刺通位置から前記初期位置へ回転されたときに、前記刺通部材の前記刺通端は引き込まれ、前記表面の前記第1の刺通点から係合解除される、締結デバイス。
〔態様9〕
態様1乃至8のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記開放リング形状刺通部材は開放部分を有する円形の形状を有している、締結デバイス。
〔態様10〕
態様1乃至9のいずれか一項に記載の締結デバイスにおいて、
前記デバイスは、更に、
-前記基部と機械的に接続されていて、アクチュエータデバイスへ接続可能であるパワー伝達デバイスであって、前記アクチュエータからのパワーを前記基部へ伝達することによって前記基部を回転させるように構成されているパワー伝達デバイス、を備えている、締結デバイス。
〔態様11〕
態様10に記載の締結デバイスにおいて、
前記パワー伝達デバイスは、回転式プレート、ドライブギヤ、コグ付きラック、ベルトドライブ、チェーンドライブ、及び、ワイヤとカム、のうちの少なくとも1つを備えている、締結デバイス。
〔態様12〕
態様10に記載の締結デバイスにおいて、
前記アクチュエータデバイスは、レバー、引張ばね、電気サーボモータ、ステッパモータ、ドリル機械、及びガソリン機関、のうちの少なくとも1つを備えている、締結デバイス。
〔態様13〕
物体を材料の表面へ着脱可能に取り付ける方法であって、当該方法は、
-回転軸(7)周りに少なくとも1つの方向に回転可能な基部(3)を提供する工程と、
-前記回転可能な基部(3)を機械的に支持する支持フレーム(2)であって、前記基部(3)の前記回転軸(7)は当該支持フレーム(2)の基準平面(16)に対し横断方向である、支持フレーム(2)を提供する工程と、
-前記基部(3)へ取り付けられた固定端と、刺通端と、を備える少なくとも1つの開放リング形状刺通部材(5)であって、前記基部(3)が回転されたときに当該刺通部材(5)の前記刺通端(13)が第1の曲線軌道をたどるように構成されている刺通部材(5)を提供する工程と、
-前記支持フレーム(2)上に配設されていて、前記刺通部材(5)と接触させられたときに前記刺通部材(5)の前記刺通端(13)に第2の曲線軌道をたどらせるように構成されている第1の当接部(4a)を提供する工程と、を備え、
前記第2の軌道の平面が前記第1の軌道の平面から偏差角だけオフセットされるようにしている、方法。
〔態様14〕
態様13に記載の方法において、
前記方法は、更に、前記基部が初期位置から第1の回転位置へ回転されたときに前記刺通部材の前記刺通端に第1の刺通点にて前記表面を刺通し及び前記表面に係合するよう仕向ける工程と、前記基部が最終回転位置へ回転されたときに前記刺通部材に前記第2の軌道の終点にて解放可能ロック位置に到達するよう仕向ける工程と、を備えている、方法。
【符号の説明】
【0102】
1 締結デバイス
2 支持フレーム
3 回転可能な基部
4a 第1の当接部
4a’ 立ち上がり勾配付き部分
4a’’ 突起
4b 第2の当接部
4b’ 基部の中心部に向かって半径方向に延びる部分
4b’’ バンプ状突起
5 刺通部材、針
6 基部の中心部
6’ アクセル(axel)
7 基部の回転軸
8 時計回り
9 反時計回り
10 フレームの周辺又は周囲
11 基部の周辺又は周囲
12 刺通部材の固定端
13 刺通部材の刺通端
14 基部の上面、連結面
15 基部の下面
16 支持フレームの基準平面
17 初期角度
18 第1の軌道の平面
19 接触時角度
19’ 偏差角
20 第2の軌道の平面
21 連結面の平面
22 刺通部材の一部分
23 刺通部材の当接部間に位置する部分
24a 支持フレームの内側部
24b 支持フレームの外側部
25 基部の下部
26、27 コグ又は歯
50a 出現点
50b 潜入点
100 締結デバイス
110 ハウジング
111、111’ 勾配付き部分
112 第1の開口部
112’ 第2の開口部
120 刺通部材
122 刺通端
130 回転式基部
140 支持フレーム
141a 第1の当接部
141b 第2の当接部
200、200a、200b 締結デバイス
210 材料のシート
220a 第1の刺通点
220b 第2の刺通点
230 金属フェンス
240 共通ハウジング
300 締結デバイス
400 締結デバイス
500 締結デバイス
510 コグホイール
520 パワー伝達デバイス
530 中央コグホイール
531 連結歯(コグ)
532 コグ
610 ワイヤ
620 カム
630 溝
650 ワイヤの内側
660 ワイヤの外側
710 コグ付きラック
720 レバー
730 コグホイール
731 歯
740 歯
810 レバー
830 ステッパモータ
zn 刺通端の垂直方向高度(高さ)
za、za’ 第1の当接部の垂直方向高度(高さ)
zb 第2の当接部の垂直方向高度
Δzab 当接部の高さの差
Δxab 当接部の横方向延長の差、当接部間距離