(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ダロルタミドの医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4155 20060101AFI20241028BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241028BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241028BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20241028BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A61K31/4155
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61P13/08
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021577289
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 FI2020050478
(87)【国際公開番号】W WO2021001603
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-06
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】300046083
【氏名又は名称】オリオン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イルモネン、スサンナ
(72)【発明者】
【氏名】リンツネン、ユハ
(72)【発明者】
【氏名】リュッチネン、ペッテリ
(72)【発明者】
【氏名】サーラスチ、マルコ
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/120530(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/162793(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/032840(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0064688(US,A1)
【文献】国際公開第2014/128107(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/166385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組成物の重量に対して少なくと
も40%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;
(b)組成物の重量に対して5~
20%の
リン酸水素カルシウム;
(c)
組成物の重量に対して10~40%のラクトース;
(d)組成物の重量に対して0.5~10%の崩壊剤;
(
e)組成物の重量に対して0.5~10%の結合剤;および
(
f)組成物の重量に対して0.2~5%の潤滑剤
を含む
、錠剤の形態の医薬組成物。
【請求項2】
組成物の重量に対して40~85
%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物の重量に対して45~80%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
組成物の重量に対して0.5~8
%の崩壊剤を含む請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項5】
組成物の重量に対して3~7%の崩壊剤を含む請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムである請求項
5記載の医薬組成物。
【請求項7】
組成物の重量に対して0.5~8
%の結合剤を含む請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物の重量に対して3~7%の結合剤を含む請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
結合剤がポリビニルピロリドンである請求項
8記載の医薬組成物。
【請求項10】
組成物の重量に対して0.2~3
%の潤滑剤を含む請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物の重量に対して0.3~2%の潤滑剤を含む請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである請求項
11記載の医薬組成物。
【請求項13】
錠剤が粒内部と粒外部とを含む請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項14】
粒内部がダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩、
リン酸水素カルシウムおよびラクトースを含む充填剤、結合剤、および崩壊剤の一部を含み、粒外部が潤滑剤、および崩壊剤の残部を含む請求項
13記載の医薬組成物。
【請求項15】
(a)組成物の重量に対して45~80%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;
(b)組成物の重量に対して5~20%のリン酸水素カルシウム;
(c)組成物の重量に対して10~40%のラクトース;
(d)組成物の重量に対して0.5~10%のクロスカルメロースナトリウム;
(e)組成物の重量に対して0.5~10%のポリビニルピロリドン;および
(f)組成物の重量に対して0.2~5%のステアリン酸マグネシウム
を含む請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項16】
組成物が、パドル速度75rpm、室温で、パドル装置(USP装置2)を用いて1.0%のラウリル硫酸ナトリウムを含む0.01M塩酸において60分後にダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩少なくとも80%の溶解を提供する請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1記載の医薬組成物を製造するための方法であって、
(a)ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩、リン酸水素カルシウムおよびラクトースを含む充填剤、結合剤、および崩壊剤の一部を混合する工程;
(b)造粒液として水を用いて混合物を造粒する工程;
(c)湿った顆粒を乾燥する工程;
(d)潤滑剤および崩壊剤の残部を顆粒と混合する工程;
(e)得られた塊を錠剤に圧縮する工程;ならびに
任意には、一つ以上の薬学的に許容され得るフィルムコーティング剤で錠剤をコーティングする工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む経口投与用の、特に錠剤の形態の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ダロルタミド、N-((S)-1-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)-プロパン-2-イル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(I)およびその化学的合成が特許文献1および特許文献2に開示されている。ダロルタミドは、がん、特に前立腺がんなどのAR依存性がん、およびAR拮抗作用が望まれている他の疾患の治療において有用な強力なアンドロゲン受容体(AR)モジュレーターである。ダロルタミドは、構造:
【化1】
により表される。
【0003】
ピラゾール環の水素原子が1-位および2-位の間に互変異性平行において存在する場合、それは、当業者により、本明細書において引用されているように、上記構造および化学名「N-((S)-1-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)-プロパン-2-イル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(I)」は、化合物(I)の互変異生体、すなわちN-((S)-1-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)-プロパン-2-イル)-3-(1-ヒドロキシエチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミドを含む。
【0004】
特許文献3には、ダロルタミドの多形結晶形Iが開示されている。特許文献4には、8~16m2/gの範囲の比表面積(SSA)を有するダロルタミドの結晶粒子が開示されている。
【0005】
ダロルタミドは、水に溶解しにくい。難溶性の活性成分の経口投与はしばしば問題となる。錠剤などの経口投与の剤形は、活性成分の実質的にすべての放出を提供すべきであり、かつ十分な溶解特性を提供すべきである。活性成分の適切な放出および溶解を提供すると同時に、製剤は工業規模でのその剤形の製造を可能にする性質も有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/051540号
【文献】国際公開第2016/162604号
【文献】国際公開第2016/120530号
【文献】国際公開第2018/162793号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、活性成分としてダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む経口投与用の、特に錠剤の形態の医薬組成物を提供する。その組成物は、ダロルタミドの効果的な放出、および効果的かつ再現性のあるインビボ血漿濃度を生み出す一定の溶解性を提供する。同時に、その組成物は、大きな工業規模での錠剤の製造を可能とする、打錠塊(tableting mass)の優れた錠剤化能、良好な破砕耐性および低い脆性を提供する。その組成物は、組成物の性質が影響を受けないように、オペレーションおよび技術的な移動のあいだの製造プロセスの変動に対して安定(robust)である。さらに、その組成物は、患者のコンプライアンスの点から望まれる高い薬物負荷を可能とする。したがって、本発明の組成物は、前立腺がんなどのアンドロゲン受容体依存性疾患を患う患者の治療のための剤形として特に好適である。
【0008】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、(a)組成物の重量に対して少なくとも35%、好ましくは40%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;(b)組成物の重量に対して5~60%のフィラー;(c)組成物の重量に対して0.5~10%の崩壊剤;(d)組成物の重量に対して0.5~10%の結合剤;および(e)組成物の重量に対して0.2~5%の潤滑剤を含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】低速圧縮または高速圧縮を用い、「A-ダロルタミド」組成物の平均打錠圧対引張強度曲線を「パラセタモール」組成物の曲線と比較するグラフである。
【
図2】低速圧縮または高速圧縮を用い、「A-ダロルタミド」組成物の平均打錠圧対引張強度曲線を「B-ダロルタミド」の曲線と比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、活性成分としてダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む、経口投与用の、特に錠剤の形態の医薬組成物に関する。「ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩」という用語は、ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩の溶媒和物(solvent)、互変異性体または結晶形を含む。ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩は、アモルファスや微結晶状態を含む結晶であってもよい。好ましい形態は、特許文献3に記載されているダロルタミドの結晶形Iである。それは、約8.5、10.4、16.6、16.9、および24.3°2θに特徴的なピークを含むX-線粉末回析パターン(Cu充填X-線管、室温)により特徴づけることができる。好ましくは、上記結晶形Iは、約6.4、8.5、9.6、9.7、10.4、12.8、13.6、14.9、15.9、16.6、16.9、18.7、19.2、21.8、24.3、および25.5°2θに特徴的なピークを含むX-線粉末回析パターン(Cu充填X-線管、室温)によって特徴づけることもできる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、(a)組成物の重量に対して少なくとも35%、好ましくは40%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;(b)組成物の重量に対して5~60%の充填剤;(c)組成物の重量に対して0.5~10%の崩壊剤;(d)組成物の重量に対して0.5~10%の結合剤;および(e)組成物の重量に対して0.2~5%の潤滑剤を含む医薬組成物が提供される。
【0012】
上記実施形態のサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して40~85%、好ましくは45~80%、例えば45~75%、45~70%、45~65%、45~60%または45~55%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【0013】
上記実施形態のいずれかのサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して5~55%、好ましくは5~50%、例えば5~45%または25~50%の充填剤を含む。
【0014】
本明細書において使用される場合、「充填剤」は、医薬組成物にかさ高さをもたらす一つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を意味する。充填剤の例としては、ラクトース、リン酸水素カルシウム、微結晶性セルロース、ソルビトール、スターチ、糖(例えばマンニトールまたはスクロース)またはそれらの任意の組合せが挙げられる。一つの好ましい実施形態によれば、充填剤はリン酸水素カルシウムを含む。本明細書において使用する場合、「リン酸水素カルシウムを」という用語は、無水リン酸水素カルシウムや、リン酸水素カルシウム二水和物などの水和物も含む。無水リン酸水素カルシウムが好ましい。
【0015】
他の好ましい実施形態によれば、充填剤は、リン酸水素カルシウムをラクトースおよび/または微結晶セルロースと組み合わせて含む。一つの特に好ましい実施形態によれば、充填剤は、リン酸水素カルシウムとラクトースとの組合せを含む。一つの実施形態によれば、充填剤はリン酸水素カルシウムとラクトースとの組み合わせからなる。本明細書において使用する場合、「ラクトース」という用語は、ラクトース一水和物および無水ラクトースを含む。ラクトース一水和物が好ましい。
【0016】
上記実施形態のいずれかのサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して5~20%、例えば7~15%のリン酸水素カルシウムを含む。上記実施形態のいずれかの別のサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して5~20%、例えば7~15%のリン酸水素カルシウムと、組成物の重量に対して10~40%、例えば15~40%、20~40%、または25~35%のラクトースを含む。
【0017】
上記実施形態のいずれかのサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して0.5~8%、好ましくは3~7%の崩壊剤を含む。
【0018】
本明細書において使用される場合、「崩壊剤」は、医薬組成物からの活性成分の放出をサポートするためにその崩壊を引き起こす医薬組成物に添加される一つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を意味する。崩壊剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、クロス架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウムまたはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0019】
一つの好ましい実施形態によれば、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含む。
【0020】
上記実施形態のいずれかのサブクラスにおいて、組成物は、0.5~8%、好ましくは3~7%の結合剤を含む。
【0021】
本明細書において使用される場合、「結合剤」は、活性成分と賦形剤とを混合物に結合して固めることにより増強された凝集性を与える一つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を意味する。結合剤の例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、酢酸ポリビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびそれらの組合せが挙げられる。
【0022】
一つの好ましい実施形態によれば、結合剤はポリビニルピロリドン(PVP)を含む。
【0023】
上記実施形態のいずれかのサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して0.2~3%、好ましくは0.3~2%、例えば0.5~2%の潤滑剤を含む。
【0024】
本明細書において使用される場合、「潤滑剤」は、固体表面間に導入された場合に、摩擦、熱および摩耗を減少するために医薬組成物に加えられる一つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を意味する。潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、シリカ、ステアリン酸カルシウム、カルナバワックス、フマル酸ステアリルナトリウム、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
一つの好ましい実施形態によれば、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムを含む。
【0026】
また別の実施形態によれば、組成物は、(a)組成物の重量に対して少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、例えば45%~80%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;(b)組成物の重量に対して5~20%のリン酸水素カルシウム;(c)組成物の重量に対して0.5~10%の崩壊剤;(d)組成物の重量に対して0.5~10%の結合剤;および(e)組成物の重量に対して0.2~5%の潤滑剤を含む。
【0027】
また別の実施形態によれば、組成物は、(a)組成物の重量に対して少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、例えば45%~80%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;(b)組成物の重量に対して5~20%のリン酸水素カルシウム;(c)組成物の重量に対して10~40%のラクトース;(d)組成物の重量に対して0.5~10%の崩壊剤;(e)組成物の重量に対して0.5~10%の結合剤;および(f)組成物の重量に対して0.2~5%の潤滑剤を含む。
【0028】
また別の実施形態によれば、組成物は、(a)組成物の重量に対して45~80%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩;(b)組成物の重量に対して5~20%のリン酸水素カルシウム;(c)組成物の重量に対して10~40%のラクトース;(d)組成物の重量に対して0.5~10%のクロスカルメロースナトリウム;(e)組成物の重量に対して0.5~10%のポリビニルピロリドン;および(f)組成物の重量に対して0.2~5%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0029】
上記実施形態のサブクラスにおいて、組成物は、組成物の重量に対して45~75%、45~70%、45~65%、45~60%、または45~55%のダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【0030】
本発明の医薬組成物は、例えば、顆粒、ペレット、カプセルまたは錠剤の形態とすることができる。そのような組成物は、例えば、湿式造粒、乾式造粒、または乾式圧縮により製造することができる。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、コーティング錠または素錠の形態である。一つの好ましい実施形態によれば、錠剤は湿式造粒により製造される。
【0031】
一つの実施形態によれば、錠剤は、粒内部と粒外部とを含む。また別の実施形態によれば、粒内部がダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩、充填剤、結合剤、および崩壊剤の一部を含み、粒外部が潤滑剤、および崩壊剤の残部を含む。
【0032】
本発明の一つの実施形態にしたがい、本発明の医薬組成物を製造するプロセスは、(a)ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩、充填剤、結合剤および崩壊剤の第1の部分を混合する工程;(b)造粒液として水を用いて混合物を造粒する工程;(c)湿った顆粒を乾燥する工程;(d)潤滑剤および崩壊剤の残部を顆粒と混合する工程;(e)得られた塊を錠剤に圧縮する工程;ならびに任意には、一つ以上の薬学的に許容され得るフィルムコーティング剤で錠剤をコーティングする工程により特徴付けられる。
【0033】
医薬組成物の製造のために、ダロルタミドは、好ましくはその非塩形態かつ結晶形Iで、一般に200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、例えば10~100μmの間、より典型的には15~95μmの間、例えば、20~90μmの間の体積メジアン径(Dv50)を有する粒子サイズにひかれる。粒子サイズ分布は、レーザー光回折により、例えば、分散媒として空気を用いるトルネード ドライ パウダー システム(Tornado Dry Powder System)を備えたベックマン・コールター(Beckman Coulter) LS13320レーザー回折粒子サイズ分析器を用い、測定圧24”H2O±2”H2O、サンプル量10ml、システム制御標識オブスキュレーション5%およびフラウンホーファー光学モデルを適用して分析することができる。
【0034】
活性成分の粉砕は、適切なフィーダーおよび粉砕装置、例えばシングルまたはツインスクリュー/オーガーフィーダー、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル、または篩ミルを用い、例えば、3000~10000rpmなどの適切なローター回転速度を用いて行うことができる。粉砕は、適切な温度、例えば室温以下で行うことができる。
【0035】
本発明の組成物は、例えば、まずダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩、充填剤、結合剤および第1の部分の崩壊剤(例えば全量の20~80重量%)を適切な造粒容器、例えば湿式高剪断造粒機中で混合することにより適切に製造することができる。次いで混合物は造粒機内で造粒液として精製水を用いて適切に造粒される。湿った顆粒は、その後、例えば、スクリーニングミルユニット(回転羽根車)を用いてスクリーニングされ、その後、例えば流動層乾燥機において乾燥される。
【0036】
ついで、乾燥された顆粒をスクリーニング装置、例えばスクリーニングミルでスクリーニングしてもよい。その後、崩壊剤の残部を顆粒に加え、例えば拡散ミキサーにおいて混合物をブレンドすることができる。その後、潤滑剤を先の工程の塊に加え、ブレンドする。ついで、錠剤塊を、例えば電動回転式打錠機において錠剤核に圧縮される。
【0037】
錠剤核は、望まれる場合、錠剤の嚥下を容易にするために、薬物との直接的な接触から保護するために、および美的感覚を向上させるために、水溶性フィルムコーティングを施され得る。適切なフィルムコーティング剤は、可塑剤、フィルム形成剤および着色剤からなる群より選択され得る。任意には、粘着防止剤または乳白剤を使用してもよい。ポリエチレングリコール(PEG)などの可塑剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのフィルム形成剤、ならびに酸化鉄および二酸化チタンなどの顔料は、フィルムコーティング液、好ましくは水と組合せられ、例えば穴あきドラムコーターなどの適切なコーティング装置で錠剤に吐出(brought up)、好ましくはスプレーされる均質なコーティング懸濁液を生じる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、即時放出剤形、好ましくは錠剤である。組成物は、パドル速度75rpm、室温で、パドル装置(USP装置2)を用いて1.0%のラウリル硫酸ナトリウムを含む0.01M塩酸において60分後にダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩少なくとも80%の溶解を提供することが好ましい。
【0039】
ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩は、例えば、前立腺がんの治療のために、1日につき約100mg~約3000mg、好ましくは約300mg~約2500mg、より好ましくは約500mg~約2000mg、例えば約800mg~1500mgの範囲の量、約1200mgなどで患者に好適に投与される。患者は、例えば前立腺がんの治療の必要な哺乳動物、特にヒトである。用量は、1日1回、または1日に数回に分けて、例えば1日に2回に分けて投与することができる。錠剤などの本発明の組成物は、ダロルタミドまたはその薬学的に許容され得る塩を、約50mg~約1000mg、好ましくは約100mg~約800mg、より好ましくは約150mg~約600mg、例えば約200~約400mgの範囲の量、300mgなどで含んでもよい。そのような組成物は、1日1回、または1日数回、例えば毎日1回、毎日2回、または毎日数回、1錠または数錠、毎日2回300mg錠を2錠などで投与することができる。
【0040】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
実施例1~5の錠剤組成物は、薬物、ラクトース一水和物、ポリビニルピロリドン、無水リン酸水素カルシウムおよびクロスカルメロースナトリウムの一部を高剪断造粒機中で混合することにより調製する。混合物は、混合物中に水をスプレーすることにより造粒される。顆粒を流動床乾燥機で乾燥する。残りのクロスカルメロースナトリウムを顆粒と混合する。その後、ステアリン酸マグネシウムを加えて混合する。得られる混合物を打錠機で錠剤に圧縮した。水をコーティング賦形剤の混合物と合わせ、コーティング懸濁液を調製する。最後に、錠剤は、コーティング懸濁液を加熱パンコーターにおいて錠剤核に理論的な錠剤の重量増加に達するまでスプレーすることによりコーティングされる。
【0047】
実施例6.錠剤化能の比較試験
錠剤化のための第1の塊を実施例1にしたがい製造した(「A-ダロルタミド」組成物)。ダロルタミドの代わりにモデル薬としてパラセタモールを用いた以外は同じことを繰り返した(「パラセタモール」組成物)。第3の塊は、ラクトース一水和物を微結晶性セルロースに置き換えた以外は実施例1にしたがい製造した(「B-ダロルタミド」組成物)。製造された実際の組成物を、以下表1に示す。
【0048】
【0049】
錠剤は、10mm楕円ツーリングを備えた単発式油圧打錠機で、おおよそ300mg単位重量および最低7つの異なる圧縮高さに圧縮した。シングルエンド正弦波プロファイルは、高速圧縮に関しては標的10ms潜在時間(dwell time)で、低速圧縮に関しては標的100ms潜在時間で使用した。錠剤の直径、高さおよび破壊耐性をそれぞれカリパスおよび硬度試験機により測定した。
【0050】
平均圧縮強さを、上杵ピーク強さおよび下杵ピーク強さの平均として測定し、パンチ先端面積で割ることにより圧力に変換した。引張強度は等式:
引張強度=2P/(π・D・t)
(式中、
P=破壊耐性
π=数学定数pi
D=錠剤直径
t=錠剤厚さ)
を用いて決定した。
【0051】
図1は、低速圧縮または高速圧縮での「A-ダロルタミド」および「パラセタモール」組成物に関する平均打錠圧対引張強度曲線を示す。
【0052】
図1に表される錠剤化能プロファイルは、実施例1の錠剤化塊(「A-ダロルタミド」)は、低速圧縮および高速圧縮でのダロルタミドの錠剤化プロセスに格別に適しているということを明らかに証明している。活性成分としてのモデル薬(パラセタモール)以外同様の組成物との比較は、他の薬物を使用した同じ組成物は、錠剤産生に適した圧縮力の範囲内で許容可能な引張強度を有する錠剤を産生できなかったということを示す。
【0053】
図2は、「A-ダロルタミド」組成物の平均打錠圧対引張強度曲線を、ラクトースを微結晶性セルロースで置き換えた「B-ダロルタミド」の曲線と比較している。驚くべきことに、微結晶性セルロースを含む組成物は、改善された錠剤化能を示さなかった。代わりに、特に高速圧縮の場合、この組成物は不十分な引張強度のため錠剤生産にリスクをもたらす。