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特許7577702高解像メッシュマップへの再生可能な低解像メッシュマップを生成する装置、プログラム及び方法
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  • 特許-高解像メッシュマップへの再生可能な低解像メッシュマップを生成する装置、プログラム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】高解像メッシュマップへの再生可能な低解像メッシュマップを生成する装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022028408
(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公開番号】P2023124573
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 直人
(72)【発明者】
【氏名】上坂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮博
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-118853(JP,A)
【文献】特開2018-084982(JP,A)
【文献】特開2018-195069(JP,A)
【文献】DeepDPM: Dynamic Population Mapping via Deep Neural Network,Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence,2019年07月17日,Vol.33, No.1: AAAI-19, IAAI-19, EAAI-20,pp. 1294-1301,doi:10.1609/aaai.v33i01.33011294
【文献】Terrain feature-aware deep learning network for digital elevation model superresolution,ISPRS Journal of Photogrammetry and Remote Sensing,2022年05月17日,Volume 189, July 2022,Pages 143-162,doi:10.1016/j.isprsjprs32022.04.028
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00ーG09B 29/14
G06T 1/00ーG06T 7/90
G06N 3/00ーG06N 99/00
G01C 21/00ーG01C 25/00
G08B 1/00ーG08G 99/00
G06F 18/00ーG06F 18/40
G06V 20/00ーG06V 20/90
G01V 1/00ーG01V 99/00
G01W 1/00ーG01W 1/18
Science Direct
arXiv
KAKEN
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高解像メッシュマップを再生可能とする低解像メッシュマップを生成するメッシュマップ生成装置であって、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力する第1の低解像化手段と、
第1の高解像メッシュマップX1と同一範囲であって第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する第2の低解像化手段と、
訓練段階として、教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練すると共に、推定段階として、対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する疑似高解像化手段と
を有することを特徴とするメッシュマップ生成装置。
【請求項2】
第1の情報は、メッシュ毎の任意の数値であり、
第1の低解像化手段は、複数のメッシュの数値の和となる代表値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項3】
高解像メッシュマップ及び低解像メッシュマップは、地図上の地域に基づくものであり、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1と、第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2とは、同一地域範囲であり、
第1の情報における数値は、地図上の各メッシュの人口である
ことを特徴とする請求項2に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項4】
第2の情報は、メッシュ毎の任意のカテゴリ又は数値であり、
第2の低解像化手段は、複数のメッシュのカテゴリ又は数値から、所定規則に基づいて導出した代表値を設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項5】
第2の情報におけるカテゴリは、地図上の各メッシュのPOI(Point Of Interest)又は被覆情報である
ことを特徴とする請求項4に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項6】
疑似高解像化手段は、SRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network)である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項7】
疑似高解像化手段は、高解像メッシュマップXと、当該疑似高解像化手段から出力された疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)との間の誤差を小さくする第2の損失関数を設定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項8】
第2の損失関数は、MSE(Mean Squared Error)である
ことを特徴とする請求項7に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項9】
疑似高解像化手段から出力された疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた疑似低解像メッシュマップD1(F(Y;θ))を出力する疑似低解像化手段を
更に有し、
疑似高解像化手段は、低解像メッシュマップY1=D1(X)と、疑似低解像メッシュマップD1(F(Y;θ))との間の誤差を小さくする第1の損失関数を設定する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項10】
第1の損失関数は、PE(Population Error)である
ことを特徴とする請求項9に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項11】
疑似高解像化手段は、第2の損失関数にパラメータαを乗じ、第1の損失関数にパラメータ1-αを乗じて合わせて設定する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のメッシュマップ生成装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のメッシュマップ生成装置から、疑似高解像メッシュマップを再生するメッシュマップ再生装置であって、
メッシュマップ生成装置の疑似高解像化手段を有し、
疑似高解像化手段は、第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する
ことを特徴とするメッシュマップ再生装置。
【請求項13】
高解像メッシュマップを再生可能とする低解像メッシュマップを生成するメッシュマップ生成装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力する第1の低解像化手段と、
第1の高解像メッシュマップX1と同一範囲であって第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する第2の低解像化手段と、
訓練段階として、教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練すると共に、推定段階として、対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する疑似高解像化手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
低解像メッシュマップから高解像メッシュマップを生成する装置のメッシュマップ生成方法であって、
装置は、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力すると共に、第1の高解像メッシュマップX1と同一範囲であって第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する第1のステップと、
訓練段階として、教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練すると共に、推定段階として、対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する第2のステップと
を実行することを特徴とするメッシュマップ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CV(Computer Vision)技術に基づく超解像の技術に関する。特に、地図上の地域における分布マップに適する。
【背景技術】
【0002】
従来、超解像の技術として、低解像メッシュマップから高解像メッシュマップを再生するSRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network)がある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、訓練時に、高解像画像Xから低解像画像Yに変換した後、3層のCNN(Convolutional Neural Network)によって、高解像画像を復元させる。
第1層は、低解像画像Yを入力し、畳み込みによって特徴量マップを抽出する。第2層は、これらの特徴量マップを、高解像のパッチ表現(特徴ベクトル)へ変換する。第3層は、特徴ベクトルから予測値を結合し、マッピング関数Fに基づく高解像画像X'=F(Y)を生成する。X'とXとの間では、損失関数MSE(Mean Squared Error、平均二乗誤差)によって誤差が小さくなるように、ネットワークの重みを学習する。
訓練時に、大量の教師データによって学習することによって、推定時に、低解像画像Yのみを入力することによって、高解像画像Xが出力される。
【0003】
また、一般的な既存のサービスとして、携帯電話事業者によって、膨大な数のユーザの携帯端末から収集した、地域に基づくビッグデータが提供されている(例えば非特許文献2参照)。ビッグデータについては、プライバシー保護の観点から、個人の位置情報を特定できないように加工して、クライアントへ提供される。
例えば、以下のようにデータが加工される。
・地域範囲をメッシュ化し、時間帯毎にメッシュ単位で分布傾向を集計する。
・個人固有の生活圏内の移動履歴を排除する。
・個人識別子を秘匿化する。
・稀有な位置情報のみを抽出できないように、少人数の移動履歴を排除する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Chao Dong, Chen Change Loy, Kaiming He, Xiaoou Tang. Learning a Deep Convolutional Network for Image Super-Resolution, Proc. of European Conference on Computer Vision (ECCV), 2014、[online]、[令和4年2月13日検索]、インターネット<URL:https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-10593-2_13>
【文献】KDDI、「位置情報ビッグデータ」の活用、[online]、[令和4年2月13日検索]、インターネット<URL:https://www.kddi.com/corporate/kddi/public/bigdata/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯電話事業者から提供されるビッグデータは、個人の位置情報を特定できないようにするために、低解像のメッシュ単位(例えば250m四方又は125m四方)でしか提供されていない。例えば人口分布の場合、メッシュ単位の数値は人数(人口)となり、都心部のように大量の人が移動する地域範囲では、細かい人流などを認識することが難しい。
【0006】
これに対し、本願の発明者は、携帯電話事業者から提供されるビッグデータが、低解像メッシュマップに基づくものであっても、クライアント側で、できる限り高解像メッシュマップとして認識することができないか、と考えた。
【0007】
そこで、本発明によれば、事業者からビッグデータに基づく低解像メッシュマップであっても、比較的精度の高い高解像メッシュマップへの再生が可能となる装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、高解像メッシュマップを再生可能とする低解像メッシュマップを生成するメッシュマップ生成装置であって、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力する第1の低解像化手段と、
第1の高解像メッシュマップX1と同一範囲であって第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する第2の低解像化手段と、
訓練段階として、教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練すると共に、推定段階として、対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する疑似高解像化手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
第1の情報は、メッシュ毎の任意の数値であり、
第1の低解像化手段は、複数のメッシュの数値の和となる代表値を設定する
ことも好ましい。
【0010】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
高解像メッシュマップ及び低解像メッシュマップは、地図上の地域に基づくものであり、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1と、第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2とは、同一地域範囲であり、
第1の情報における数値は、地図上の各メッシュの人口である
ことも好ましい。
【0011】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
第2の情報は、メッシュ毎の任意のカテゴリ又は数値であり、
第2の低解像化手段は、複数のメッシュのカテゴリ又は数値から、所定規則に基づいて導出した代表値を設定する
ことも好ましい。
【0012】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
第2の情報におけるカテゴリは、地図上の各メッシュのPOI(Point Of Interest)又は被覆情報である
ことも好ましい。
【0013】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
疑似高解像化手段は、SRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network)である
ことも好ましい。
【0014】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
疑似高解像化手段は、高解像メッシュマップXと、当該疑似高解像化手段から出力された疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)との間の誤差を小さくする第2の損失関数を設定する
ことも好ましい。
【0015】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
第2の損失関数は、MSE(Mean Squared Error)である
ことも好ましい。
【0016】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
疑似高解像化手段から出力された疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた疑似低解像メッシュマップD1(F(Y;θ))を出力する疑似低解像化手段を
更に有し、
疑似高解像化手段は、低解像メッシュマップY1=D1(X)と、疑似低解像メッシュマップD1(F(Y;θ))との間の誤差を小さくする第1の損失関数を設定する
ことも好ましい。
【0017】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
第1の損失関数は、PE(Population Error)である
ことも好ましい。
【0018】
本発明のメッシュマップ生成装置における他の実施形態によれば、
疑似高解像化手段は、第2の損失関数にパラメータαを乗じ、第1の損失関数にパラメータ1-αを乗じて合わせて設定する
ことも好ましい。
【0019】
本発明によれば、前述したメッシュマップ生成装置から、疑似高解像メッシュマップを再生するメッシュマップ再生装置であって、
メッシュマップ生成装置の疑似高解像化手段を有し、
疑似高解像化手段は、第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する
ことも好ましい。
【0020】
本発明によれば、高解像メッシュマップを再生可能とする低解像メッシュマップを生成するメッシュマップ生成装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力する第1の低解像化手段と、
第1の高解像メッシュマップX1と同一範囲であって第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する第2の低解像化手段と、
訓練段階として、教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練すると共に、推定段階として、対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する疑似高解像化手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、低解像メッシュマップから高解像メッシュマップを生成する装置のメッシュマップ生成方法であって、
装置は、
第1の情報が分布する第1の高解像メッシュマップX1を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力すると共に、第1の高解像メッシュマップX1と同一範囲であって第2の情報が分布する第2の高解像メッシュマップX2を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する第1のステップと、
訓練段階として、教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練すると共に、推定段階として、対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のメッシュマップ生成装置、プログラム及び方法によれば、事業者からビッグデータに基づく低解像メッシュマップであっても、比較的精度の高い高解像メッシュマップへの再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明におけるシステム構成図である。
図2】地図上の地域に基づく複数のメッシュマップを表す説明図である。
図3】本発明におけるメッシュマップ生成装置の機能構成図である。
図4】3つのメッシュマップについて低解像化を表す説明図である。
図5】損失関数を表す説明図である。
図6】本発明におけるメッシュマップ再生装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0026】
図1のシステムによれば、メッシュマップ生成装置1と、メッシュマップ再生装置2とを有する。
[メッシュマップ生成装置1]
メッシュマップ生成装置1は、携帯電話事業によってビッグデータを収集し、そのビッグデータを加工してクライアントへ提供する事業設備であってもよい。ビッグデータとしては、例えば膨大な数のユーザの携帯端末から収集した、地域に基づく位置情報である。これらビッグデータは、地域的且つ時間的に細かい粒度で収集され、高解像メッシュマップとして作成される。尚、メッシュとは、地図上の地域範囲として所定長で四方に区分したものである。
本発明によれば、メッシュマップ生成装置1は、地域に基づく高解像メッシュマップから、疑似低解像メッシュマップを生成する。疑似低解像メッシュマップは、高解像メッシュマップにできる限り近くなるような再生を可能とする。
そして、メッシュマップ生成装置1は、その疑似低解像メッシュマップを、メッシュマップ再生装置2へ送信する。
【0027】
[メッシュマップ再生装置2]
メッシュマップ再生装置2は、ビッグデータを利用するクライアントによって管理されるものである。
本発明によれば、メッシュマップ再生装置2は、メッシュマップ生成装置1から疑似低解像メッシュマップを受信する。
そして、メッシュマップ再生装置2は、疑似低解像メッシュマップから疑似高解像メッシュマップを再生する。
【0028】
図2は、地図上の地域に基づく複数のメッシュマップを表す説明図である。
【0029】
図2によれば、地図上の同一地域について、異なる観点に基づく3つのチャネルのメッシュマップが存在する。
第1の高解像メッシュマップX :人口分布マップ
第21の高解像メッシュマップX21:POI(Point Of Interest)分布マップ
第22の高解像メッシュマップX22:被覆(地図)マップ
【0030】
第1の高解像メッシュマップX1は、メッシュ(地図上の地域範囲)毎に、第1の情報が分布するものである。第1の情報は、メッシュ毎の任意の数値であり、例えば地図上の人口(人数)であってもよい。人口は、0~1の間で正規化された数値であってもよい。第1の高解像メッシュマップは、携帯電話事業によって収集された、ユーザの位置情報の点群データから作成されたものであってもよい。
【0031】
第2の高解像メッシュマップX2(第21の高解像メッシュマップX21及び第22の高解像メッシュマップX22)は、第1の高解像メッシュマップX1と同一地域であって、第2の情報が分布するものである。第2の情報は、メッシュ毎の任意のカテゴリ又は数値であり、例えば地図上のPOI及び/又は被覆情報であってもよい。
POIとは、例えばビル(1)、店舗(2)、公園(3)、神社(4)のように、その地域の建造物的特徴のようなカテゴリであってもよい。
被覆情報とは、例えば河川・湖沼(1)、住宅地(2)、道路用地(3)のように、その地域の地図的特徴のようなカテゴリであってもよい。
【0032】
第1の高解像メッシュマップX1と第2の高解像メッシュマップX2との関係性として、例えば「被覆情報:河川となるメッシュでは、基本的に人口は0となる」というような意味的な特徴が内在すると期待される。
【0033】
図3は、本発明におけるメッシュマップ生成装置の機能構成図である。
【0034】
メッシュマップ生成装置1は、第1の高解像メッシュマップX1と、第2の高解像メッシュマップX2(第21の高解像メッシュマップX21及び第22の高解像メッシュマップX22)とを入力し、疑似低解像メッシュマップを出力する。
図3によれば、メッシュマップ生成装置1は、第1の低解像化部111と、第2の低解像化部112(第21の低解像化部1121及び第22の低解像化部1122)と、疑似高解像化部12と、疑似低解像化部13とを有する。これら機能構成部は、メッシュマップ生成装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、メッシュマップ生成方法としても理解できる。
【0035】
図4は、3つのメッシュマップについて低解像化を表す説明図である。
【0036】
第1の低解像化部111と、第2の低解像化部112(第21の低解像化部1121及び第22の低解像化部1122)とはそれぞれ、チャネルに応じて、異なる方法で数値やカテゴリが低解像化される。
【0037】
[第1の低解像化部111]
第1の低解像化部111は、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第1の低解像メッシュマップY1(=D1(X1))を出力する。
第1の低解像メッシュマップY1
第1の低解像化関数D
第1の高解像メッシュマップX
第1の低解像化部111は、複数のメッシュの数値の和となる「代表値」を設定する。人口分布の場合、高解像メッシュマップ内の複数個のメッシュにおける数値の和(合計値)を、低解像メッシュマップの1個のメッシュの代表値とする。勿論、合計値とすることなく、0~1で正規化した値であってもよい。
【0038】
[第2の低解像化部112]
(第21の低解像化部1121及び第22の低解像化部1122)
第2の低解像化部112も、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた第2の低解像メッシュマップY2(=D2(X2))を出力する。
ここで、第2の低解像化部112は、複数のメッシュのカテゴリ又は数値から、「所定規則」に基づいて導出した代表値を設定する。
【0039】
例えばPOI分布を低解像化する場合、カテゴリに優先付けするものであってもよい。例えばビル->店舗->その他、と優先付けしたとする。この場合、例えば高解像メッシュマップの4個のメッシュの中で1個のメッシュに、カテゴリ「ビル」が含まれている場合、低解像メッシュマップでまとめた1個のメッシュには、必ずカテゴリ「ビル」を付与する。また、高解像メッシュマップの1個のメッシュに、カテゴリ「ビル」が含まれていないが、カテゴリ「店舗」が含まれている場合、低解像メッシュマップでまとめた1個のメッシュには、カテゴリ「店舗」を付与する。
【0040】
例えば被覆(地図)情報を低解像化する場合も、カテゴリに優先付けするものであってもよい。例えば河川・湖沼->道路用地->その他、と優先付けしたとする。この場合、例えば高解像メッシュマップの4個のメッシュの中で1個のメッシュに、カテゴリ「河川」が含まれている場合、低解像メッシュマップでまとめた1個のメッシュには、必ずカテゴリ「河川」を付与する。また、高解像メッシュマップの1個のメッシュに、カテゴリ「河川」が含まれていないが、カテゴリ「建物」が含まれている場合、低解像メッシュマップでまとめた1個のメッシュには、カテゴリ「建物」を付与する。
【0041】
勿論、POI分布や被覆情報であっても、カテゴリの優先付けに限られず、高解像メッシュマップの4個のメッシュの中で最も多いカテゴリを、低解像メッシュマップでまとめた1個のメッシュに付与するものであってもよい。
【0042】
[疑似高解像化部12]
疑似高解像化部12は、既存技術として前述したSRCNNであってもよい(例えば非特許文献1参照)。
その上で、疑似高解像化部12は、以下のように機能する。
(訓練段階)教師データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、第1の高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力するように訓練する。
F:マッピング関数
θ:重みパラメータ
(推定段階)対象データとしての第1の低解像メッシュマップY1と第2の低解像メッシュマップY2とを積層(Y)して入力し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する
【0043】
第1の低解像メッシュマップにおける人口分布から、第1の高解像メッシュマップにできる限り近い疑似的な人口分布を再生するために、第1の低解像メッシュマップのみならず、同一範囲となる多種多様な第2の低解像メッシュマップも積層することによって、疑似高解像メッシュマップを生成する。
【0044】
本発明の疑似高解像化部12によれば、第1の高解像メッシュマップに基づく第1の低解像メッシュマップのみならず、同一範囲における第2の高解像メッシュマップに基づく第2の低解像メッシュマップも積層して同時に訓練することによって、疑似低解像メッシュマップから疑似高解像メッシュマップへの超解像精度の向上が期待される。
【0045】
[疑似低解像化部13]
疑似低解像化部13は、疑似高解像化部12から出力された疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を入力し、複数のメッシュを1つの代表値のメッシュにまとめた疑似低解像メッシュマップD(F(Y;θ))を出力する。
低解像化関数D(第1の低解像化部111の低解像化関数Dと同じ)
疑似低解像メッシュマップD(F(Y;θ))は、高解像メッシュマップを再生可能とするものとして、メッシュマップ再生装置2へ送信される。
【0046】
図5は、損失関数を表す説明図である。
【0047】
疑似高解像化部12は、低解像メッシュマップY=D1(X)と、疑似低解像メッシュマップD(F(Y;θ))との間の誤差を小さくする第1の損失関数を設定する。
第1の損失関数は、例えばPE(Population Error)であってもよい。
PE(θ)=1/n・Σi=1 n||D(F(Yi;θ))-Yi||
θ:ある訓練時点における重みパラメータ
PEは、既存のCNNにはない概念である。例えば人口分布は、画像と異なって、超解像前と超解像後との間で値が変わることはない。PEは、元の人数を担保しながら(元の人口分布の形状を担保しながら)、超解像できていることを評価する。
これによって、疑似低解像メッシュマップD(F(Y;θ))が、複数の低解像メッシュマップYに近くなるように推定できているかどうかをフィードバックする。
【0048】
また、疑似高解像化部12は、高解像メッシュマップXと、当該疑似高解像化部12から出力された疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)との間の誤差を小さくする第2の損失関数を設定する。
第2の損失関数は、MSE(Mean Squared Error)であってもよい。
MSE(θ)=1/n・Σi=1 n||F(Yi;θ)-Xi||
θ:ある訓練時点における重みパラメータ
MSEは、既存のSRCNNでも使用される損失関数であって、細かいメッシュが再現できているかどうかを評価する。
これによって、疑似高解像メッシュマップの人口分布が、高解像メッシュマップの人口分布に近くなるように推定できているかどうかをフィードバックする。
【0049】
疑似高解像化部12は、第1の損失関数のみを設定するものであってもよいし、第2の損失関数のみを設定するものであってもよいし、第1の損失関数及び第2の損失関数の両方を合わせて設定するものであってもよい。
この場合、疑似高解像化部12は、第2の損失関数にパラメータαを乗じ、第1の損失関数にパラメータ1-αを乗じて合わせて設定する。
L(θ)=α・MSE(θ)+(1-α)・PE(θ)
α:MSEの損失関数の反映割合
これによって、大域を評価するPEと、狭域を評価するMSEとを組み合わせることによって、全体の人口分布の形状を担保しつつ、細かいメッシュでの人口分布を正しく推定することが期待される。
【0050】
図6は、本発明におけるメッシュマップ再生装置の機能構成図である。
【0051】
図6によれば、メッシュマップ再生装置2は、メッシュマップ生成装置から、疑似高解像メッシュマップを再生することができる。メッシュマップ再生装置2は、前述した疑似高解像化部12を有する。
疑似高解像化部12は、低解像の人口分布マップ、POI分布マップ及び被覆マップを積層したYを受信し、疑似高解像メッシュマップF(Y;θ)を出力する。
【0052】
これによって、例えば携帯電話事業者によって提供されるビッグデータが、プライバシー保護の観点に基づく人口分布の低解像メッシュマップであっても、クライアント側で、できる限り、元の人口分布に近い疑似的な高解像メッシュマップとして認識することができる。
【0053】
以上、詳細に説明したように、本発明のメッシュマップ生成装置、プログラム及び方法によれば、事業者からビッグデータに基づく低解像メッシュマップであっても、比較的精度の高い高解像メッシュマップへの再生が可能となる。
【0054】
尚、これにより、「ビッグデータの利用が促進する」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0055】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0056】
1 メッシュマップ生成装置
111 第1の低解像化部
112 第2の低解像化部
1121 第21の低解像化部
1122 第22の低解像化部
12 疑似高解像化部
13 疑似低解像化部
14 逆疑似低解像化部
2 メッシュマップ再生装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6