(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20241028BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H02J7/00 301B
(21)【出願番号】P 2022047127
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-08-25
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】土居 仁士
【審判官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-18153(JP,A)
【文献】特開2000-165415(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113859149(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端抵抗が設けられた複数の電池パックと、
前記複数の電池パックのそれぞれに対して通信線による通信制御を行う制御部と、
前記複数の電池パックのそれぞれに設けられた終端抵抗の中の任意の一つに設けられた第1の終端抵抗を前記通信線に接続する
機能を自身が有する第1のハーネスと、
前記複数の電池パックのそれぞれに設けられた終端抵抗の中の前記第1の終端抵抗を除く第2の終端抵抗を前記通信線に接続しない
機能を自身が有する第2のハーネスと、
を備える、
電源システム。
【請求項2】
前記通信線は、前記複数の電池パックのそれぞれに対応する所定位置に沿うように所定方向に延在され、
前記通信線に接続される前記第1の終端抵抗は、前記通信線における前記所定方向の末端に位置する前記所定位置に対応する前記電池パックに設けられた終端抵抗である、
請求項1に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
末端が切断されたままの通信線(ケーブル)に周波数の高い信号が流された場合、切断面から反射した信号と元の信号とが混ざって、信号の読み取りが困難となる現象が生じる。この現象の発生を防止するため、通信線の末端に終端抵抗が接続されることが知られている。
【0003】
また、複数の電池パック(バッテリーパック)を制御部により制御する電源システムが知られている。
【0004】
例えば、複数の電池パックと、複数の電池パックのうちの上流端に位置する上流端電池パックの上流側コネクタに接続される制御部と、複数の電池パックにおいて上流側に位置する上流側電池パックの下流側コネクタとその下流側に位置する下流側電池パックの上流側コネクタとを相互に接続する通信線と、複数の電池パックのうちの下流端に位置する下流端電池パックの下流側コネクタに接続される終端抵抗と、を備えた電源システムが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、部品点数を削減するため、電池パックを共通化することが考えられている。
【0007】
しかし、終端抵抗を有する電池パックと終端抵抗を有しない電池パックとの間に仕様差が生じるため、電池パックを共通化することが困難となる。また、終端抵抗を有する電池パックと終端抵抗を有しない電池パックとが類似形状部品となるため、生産ライン上で類似形状部品の識別等が必要となり、生産コストが上昇するという問題がある。
【0008】
本開示の目的は、電池パックを共通化し、かつ、生産コストの上昇を抑えることが可能となる電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示における電源システムは、
終端抵抗が設けられた複数の電池パックと、
前記複数の電池パックのそれぞれに対して通信線による通信制御を行う制御部と、
前記複数の電池パックのそれぞれに設けられた終端抵抗の中の任意の一つに設けられた第1の終端抵抗を前記通信線に接続する機能を自身が有する第1のハーネスと、
前記複数の電池パックのそれぞれに設けられた終端抵抗の中の前記第1の終端抵抗を除く第2の終端抵抗を前記通信線に接続しない機能を自身が有する第2のハーネスと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電池パックを共通化し、かつ、生産コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る電源システム1を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す電源システム1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載される。
【0014】
電源システム1は、複数の電池パックBPと、電池ECU30と、バス線2(本開示の「通信線」に対応する)と、ハーネス3と、を備えている。なお、
図1にn個の電池パックBP1,…,BPnにより構成された組電池を示す。nは、二以上の整数である。
【0015】
[バス線2]
バス線2は、バス線2A,2B,2Cを有する。バス線2Aは、電池ECU30から複数の電池パックBPのそれぞれに対応する所定位置に沿うように所定のDR1方向(例えば、電池パックBPの配列方向)に延在する。バス線2Bは、電池ECU30から複数の電池パックBPのそれぞれに対応する所定位置に沿うように所定のDR1方向に延在する。本実施の形態では、DR1方向の基端に位置する所定位置に対応するようにBP1が配置されている。DR1方向の末端に位置する所定位置に対応するようにBPnが配置されている。バス線2Cは、DR2方向に延在する。
【0016】
[電池パックBP]
複数の電池パックBPのそれぞれは、物理的に同じ要素により構成されている。具体的には、電池パックBPは、2つのCAN制御部10と、2つの終端抵抗20とを有している。
【0017】
[CAN制御部10]
CAN制御部10は、電池パックBPの電圧のバランス制御、電池パックBP内の電流、電圧、温度のそれぞれの異常監視、電池パックBPの充電容量の監視、電池パックBPの劣化の監視、電池パックBPの充放電電流制御、電池パックBPの絶縁抵抗検知、電池パックBP内のリレー駆動などを行う。
【0018】
[終端抵抗20]
終端抵抗20は、バス線2の切断面における信号反射を減衰するものであって、2つの抵抗器R1,R2とコンデンサCとを有する。抵抗器R1の一端子は、ハーネス3によりバス線2のCANH線に接続可能である。抵抗器R2の一端子は、ハーネス3によってバス線2のCANL線に接続可能である。抵抗器R1および抵抗器R2の他端子同士は、互いに接続されている。コンデンサCの一端子は、抵抗器R1および抵抗器R2の他端子同士の接続ポイントに接続されている。コンデンサCの他端子はグランドされている。
【0019】
次に、ハーネス3の種類、終端抵抗20およびバス線2の相互関係について説明する。
【0020】
[ハーネス3Aの場合]
まず、電池パックBP1において、ハーネス3A、終端抵抗20およびバス線2Aの相互関係について説明する。ハーネス3Aによって、抵抗器R1の一端子とバス線2AのCANH線とが接続されない。同様に、ハーネス3Aによって、抵抗器R2の一端子とバス線2AのCANL線とが接続されない。
【0021】
次に、電池パックBP1において、ハーネス3A、終端抵抗20およびバス線2Bの相互関係について説明する。ハーネス3Aによって、抵抗器R1の一端子とバス線2BのCANH線とが接続されない。同様に、ハーネス3Aによって、抵抗器R2の一端子とバス線2BのCANL線とが接続されない。なお、ハーネス3Aによって、電池パックBP1における一方のCAN制御部10とバス線2Aとが接続される。また、ハーネス3Aによって、電池パックBP1における他方のCAN制御部10とバス線2Bとが接続される。
【0022】
[ハーネス3Bの場合]
次に、電池パックBPnにおいて、ハーネス3B、終端抵抗20およびバス線2Aの相互関係について説明する。ハーネス3Bによって、抵抗器R1の一端子とバス線2AのCANH線とが接続される。同様に、ハーネス3Bによって、抵抗器R2の一端子とバス線2AのCANL線とが接続される。
【0023】
次に、電池パックBPnにおいて、ハーネス3B、終端抵抗20およびバス線2Bの相互関係について説明する。ハーネス3Bによって、抵抗器R1の一端子とバス線2BのCANH線とが接続される。同様に、ハーネス3Bによって、抵抗器R2の一端子とバス線2BのCANL線とが接続される。なお、ハーネス3Bによって、電池パックBPnにおける一方のCAN制御部10とバス線2Aとが接続される。また、ハーネス3Bによって、電池パックBPnにおける他方のCAN制御部10とバス線2Bとが接続される。
【0024】
[電池ECU30]
電池ECU30は、3つのCAN制御部11と、3つの終端抵抗21とを有している。3つのCAN制御部11のそれぞれは、物理的に同じ要素により構成されている。ハーネス3CによってCAN制御部11とバス線2Aとが接続される。同様に、ハーネス3DによってCAN制御部11とバス線2Bとが接続される。同様に、ハーネス3EによってCAN制御部11とバス線2Cとが接続される。
【0025】
3つの終端抵抗21のそれぞれは、物理的に同じ要素により構成されている。ハーネス3Cによって終端抵抗21とバス線2Aとが接続されている。ハーネス3Dによって終端抵抗21とバス線2Bとが接続されている。ハーネス3Eによって終端抵抗21とバス線2Cとが接続されている。
【0026】
電池ECU30における終端抵抗21は、電池パックBPにおける終端抵抗20と異なる。終端抵抗21は、直列に接続された2つの抵抗器R1、R2とコンデンサCとを有する。直列に接続された2つの抵抗器R1、R2はCAN制御部11と並列に接続されている。2つの抵抗器R1、R2の間にコンデンサCの一端子が接続され、コンデンサCの他端子はグランドされている。
【0027】
本開示の実施の形態に係る電源システム1は、終端抵抗20が設けられた複数の電池パックBPと、複数の電池パックBPのそれぞれに対してバス線2による通信制御を行うCAN制御部10と、複数の電池パックBPの中の任意の一つに設けられた終端抵抗20をバス線2に接続するハーネス3と、を備える。
【0028】
上記構成により、複数の電池パックBPのそれぞれに終端抵抗20が備えられる点で、電池パックBPを共通化することができる。また、電池パックBPが共通化されているため、生産ライン上で類似形状部品の識別等が不要となり、生産コストの上昇を抑えることが可能となる。
【0029】
また、本開示の実施の形態に係る電源システム1では、バス線2は、複数の電池パックBPのそれぞれに対応する所定位置に沿うように所定方向に延在され、バス線2に接続される終端抵抗20は、バス線2における所定方向の末端に位置する所定位置に対応する電池パックBPに設けられた終端抵抗20である。これにより、バス線2の所定の位置に終端抵抗20を設ける場合、複数の電池パックBPのそれぞれに終端抵抗20が備えられているため、所定の位置に対応する電池パックBPに備えられた終端抵抗20とバス線2とをハーネス3で接続することが可能となる。
【0030】
また、本開示の実施の形態に係る電源システム1では、
図1に示すように、2つのバス線2A,2Bを有し、2つのバス線2A,2Bのそれぞれのバス線2Bに終端抵抗20が接続されているが、2つのバス線2A,2Bが必ずしも必要でなく、いずれか1つのバス線2で足りる場合、そのバス線2に終端抵抗20が接続されていればよい。
【0031】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示は、電池パックを共通化し、かつ、生産コストの上昇を抑えことが要求される電源システムを搭載した車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0033】
CA,CB,CC キャンバス
1 電源システム
2,2A,2B,2C バス線
3,3A,3B,3C,3D,3E ハーネス
10,11 CAN制御部
20,21 終端抵抗
30 電池ECU