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  • 特許-炭素繊維複合材及びその製造方法 図1
  • 特許-炭素繊維複合材及びその製造方法 図2A
  • 特許-炭素繊維複合材及びその製造方法 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】炭素繊維複合材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/39 20240101AFI20241028BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 35/45 20240101ALI20241028BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 35/58 20240101ALI20241028BHJP
   C01B 3/04 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
B01J35/39
B01J37/08
B01J37/16
B01J35/45
B01J37/02 101Z
B01J23/44 M
B01J35/58 A
B01J35/58 L
C01B3/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022120761
(22)【出願日】2022-07-28
(65)【公開番号】P2023021062
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】110128242
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 育晟
(72)【発明者】
【氏名】高 堂▲チュン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
(72)【発明者】
【氏名】梁 智翔
(72)【発明者】
【氏名】周 建旭
(72)【発明者】
【氏名】張 怡娟
(72)【発明者】
【氏名】歐 志軒
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 翰章
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-047611(JP,A)
【文献】特開2000-015112(JP,A)
【文献】国際公開第2004/113251(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/045115(WO,A1)
【文献】特開2003-073997(JP,A)
【文献】特開昭63-097234(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101347725(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110961091(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104888750(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1608727(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン前駆体を炭素繊維に塗布して、焼結処理を行って、前記炭素繊維の外面に二酸化チタン層を形成する工程であって、前記焼結処理の焼結温度は430℃~720℃で、前記二酸化チタン層の厚さは20nm~40nmである工程と、
遷移金属イオン含有溶液を調製する工程と、
還元剤を用いて前記遷移金属イオン含有溶液中の遷移金属イオンを還元して、前記二酸化チタン層の外面に遷移金属のナノ粒子を形成して、炭素繊維複合材を作製する工程と、を備え、二酸化チタン層とナノ粒子が光触媒として用いられ、ナノ粒子の粒子径は、5nm~15nmであり、光触媒は、環状の第2級アミン酸化を促進することに用いられ、
前記遷移金属は、ニッケル、パラジウム及びプラチナからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、且つ前記遷移金属イオン含有溶液中の遷移金属イオンの濃度が0.1mg/mL~4.0mg/mLである炭素繊維複合材の製造方法。
【請求項2】
前記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル炭素繊維を含む請求項1に記載の炭素繊維複合材の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化チタン前駆体と前記炭素繊維との重量比は、10~40である請求項1に記載の炭素繊維複合材の製造方法。
【請求項4】
前記還元剤の濃度は、0.25mg/mL~15mg/mLである請求項1に記載の炭素繊維複合材の製造方法。
【請求項5】
炭素繊維と、
前記炭素繊維を被覆する二酸化チタン層と、
前記二酸化チタン層の外面に設けられる遷移金属のナノ粒子と、を含み、
前記二酸化チタン層の厚さは20nm~40nmであり、ナノ粒子の粒子径は、5nm~15nmであり、
前記遷移金属は、ニッケル、パラジウム及びプラチナからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
二酸化チタン層とナノ粒子が光触媒として用いられ、光触媒は、環状の第2級アミン酸化を促進することに用いられる炭素繊維複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維複合材及びその製造方法に関し、特に、協同性光触媒活性を持つ炭素繊維複合材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒材料は、光エネルギーを化学エネルギーに変換することができるので、光触媒の分野に広く適用されるが、その中で、二酸化チタンが良好な光触媒活性を有するので一般的に使用されている。使用時に、光照射を受けるように、二酸化チタンを基材の表面に塗布して、複合材を形成し、また反応物に接触させることで、光触媒の目的を達成させる。
【0003】
二酸化チタンの光触媒活性を増加させるために、従来の基材は、活性炭素及び/又はグラフェンによって修飾されることは一般的であるが、これにより、複合材プロセスの複雑度が増加し、且つ生産効率が低下する。また、二酸化チタンは、1つの化学反応にしか触媒作用を与えることができず、同時に2つ以上の化学反応に触媒作用を与えることはできない。そのため、二酸化チタンの光触媒活性の適用価値は制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記複合材の欠点を改善するために、新規な複合材の製造方法の発展が望まれている。
本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、炭素繊維複合材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の炭素繊維複合材の製造方法は、特定濃度の特定の遷移金属イオンを還元することで、炭素繊維を取り囲む二酸化チタン層の外面に遷移金属のナノ粒子を形成して、炭素繊維複合材を作製する。遷移金属ナノ粒子を二酸化チタン層に直接接触させることで、炭素繊維複合材に協同性光触媒活性を持たせることができる。
【0006】
本発明の別の態様の炭素繊維複合材は、上記の製造方法によって作製される。
【0007】
本発明の一態様によると、炭素繊維複合材の製造方法において、二酸化チタン前駆体を炭素繊維に塗布して、焼結処理を行って、炭素繊維の外面に二酸化チタン層を形成する。次に、遷移金属イオン含有溶液を調製する。その後、還元剤を用いて前記遷移金属イオン含有溶液中の遷移金属イオンを還元して、二酸化チタン層の外面に遷移金属のナノ粒子を形成して、炭素繊維複合材を作製する。焼結処理の焼結温度は430℃~720℃で、二酸化チタン層の厚さは20nm~40nmである。二酸化チタン層とナノ粒子が光触媒として用いられ、ナノ粒子の粒子径は、5nm~15nmであり、光触媒は、環状の第2級アミン酸化を促進することに用いられる。遷移金属は、ニッケル、パラジウム及びプラチナからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、且つ遷移金属イオン含有溶液中の遷移金属イオンの濃度が0.1mg/mL~4.0mg/mLである。
【0008】
本発明の一実施例によると、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル炭素繊維を含む。
【0009】
本発明の一実施例によると、二酸化チタン前駆体と炭素繊維との重量比は、10~40である。
【0011】
本発明の一実施例によると、還元剤の濃度は、0.25mg/mL~15mg/mLである。
【0012】
本発明の一実施例によると、ナノ粒子の粒子径は、20nm以下である。
【0013】
本発明の一態様の炭素繊維複合材は、炭素繊維と、炭素繊維を被覆する二酸化チタン層と、二酸化チタン層の外面に設けられる遷移金属のナノ粒子と、を含む。二酸化チタン層の厚さは20nm~40nmである。ナノ粒子の粒子径は、5nm~15nmである。遷移金属は、ニッケル、パラジウム及びプラチナからなる群から選ばれる少なくとも1つである。二酸化チタン層とナノ粒子が光触媒として用いられ、光触媒は、環状の第2級アミン酸化を促進することに用いられる。
【0014】
本発明の一実施例によると、ナノ粒子の粒子径は、20nm以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炭素繊維複合材の製造方法を適用すれば、特定濃度の特定の遷移金属イオンを還元することで、炭素繊維を取り囲む二酸化チタン層の外面に遷移金属のナノ粒子を形成して、炭素繊維複合材を作製する。遷移金属ナノ粒子を二酸化チタン層に直接接触させて、炭素繊維複合材に協同性光触媒活性を持たせる。
本発明の実施例及びそのメリットをより完璧的に理解するために、対応する図面に基づき説明する。強調すべきなのは、各種の特徴は比例にして描かれたものではなく、且つ単に図示するためのものである。関連図面の内容については、下記のように説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例による炭素繊維複合材の製造方法を示す流れ図である。
図2A】本発明の一実施例による炭素繊維複合材の縦断面を示す構造模式図である。
図2B】本発明の一実施例による炭素繊維複合材の横断面を示す構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例の製造及び使用を詳しく検討する。しかしながら、理解できるのは、実施例では、様々な特定内容に実施することのできる数多くの適用可能な発明概念を提供することである。検討された特定の実施例は、単に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0018】
本発明の炭素繊維複合材の製造方法は、まず、焼結処理によって炭素繊維の外面に二酸化チタン層を形成し、また特定濃度の特定の遷移金属イオンを還元することで、二酸化チタン層の外面に遷移金属のナノ粒子を形成して、炭素繊維複合材を作製する。この炭素繊維複合材は、二酸化チタン層、及び二酸化チタン層の外面における遷移金属のナノ粒子を有する。二酸化チタン層と遷移金属ナノ粒子との直接接触によって、炭素繊維複合材に協同性光触媒活性(synergistically photocatalytic activity)を持たせることができる。
【0019】
本発明の「協同性光触媒活性」とは、炭素繊維複合材は、有機物を分解すると共に燃料用水素ガスを形成するように、有機物を光触媒酸化すると共に、水分子を光触媒分解することができることである。詳しく言えば、300nm~400nmの波長を有する光で二酸化チタン層を照射すると、二酸化チタン層における二酸化チタン価電子帯(valence band)における電子が伝導帯(conduction band)まで遷移し、価電子帯に正孔が発生し、酸化電位差が生じる。この酸化電位差により、水が水素イオン(H+)及びヒドロキシルラジカル(・OH-)に分解されることができる。ヒドロキシルラジカルは、有機物を酸化して、別の水素イオンを発生させることもできる。前記水の分解の過程中、二酸化チタンは、水分子から1つの電子を取って、前記の電子孔を補充する。
【0020】
前記の2つの水素イオン(その一方は水の分解による水素イオンであり、他方は有機物の酸化による水素イオンである)は、遷移金属ナノ粒子の1つの電子を奪って、還元されて水素ガス(H2)を形成する。電子の奪われた遷移金属ナノ粒子は、二酸化チタン層における二酸化チタンから前記伝導帯に遷移した電子を取る。このように、電子は、1つのサイクル(cycle)を行う。光が持続的に照射し且つ有機物と水分子が欠乏しない状況で、光触媒剤としての二酸化チタン層と遷移金属ナノ粒子は使い尽かないので、複数回のサイクルを続けることができる。
【0021】
電子が二酸化チタン層と遷移金属ナノ粒子との間でスズームに伝達できるように、炭素繊維複合材の二酸化チタン層と遷移金属ナノ粒子とが直接接触するので、前記サイクルが連続してよく行うことができる。つまり、炭素繊維複合材の光触媒活性が大幅に向上し、更に前記の協同性光触媒活性を達成させる。二酸化チタン層と遷移金属ナノ粒子とが直接接触しないと、電子の伝達が溶液のイオンに依存するので、炭素繊維複合材の光触媒活性が低下し、且つ協同性光触媒効果を達成させることはできない。
【0022】
図1を参照すると、炭素繊維複合材の製造方法100では、操作110に示すように、まず、二酸化チタン前駆体を炭素繊維に塗布して、焼結処理を行って、炭素繊維の外面に二酸化チタン層を形成する。本発明の二酸化チタン前駆体の調製は、特に限定されないが、焼結処理の後で炭素繊維の外面に二酸化チタン層を形成することを目的とする。
【0023】
ある実施例において、二酸化チタン前駆体は、ゾルゲル法によって作製されてよい。ゾルゲル法の具体例において、チタン酸のエステル類及び/又は4価チタンの塩類によって二酸化チタン錯体溶液を調製し、また無水溶媒、有機酸及び純水によって有機酸溶液を調製してよい。その後、20℃~50℃で、有機酸溶液を二酸化チタン錯体溶液に滴下して、二酸化チタン核(nuclear)を形成し、またしばらく(例えば、数時間)静置して、二酸化チタンを寸法安定性の粒子に成長させて、二酸化チタンゾル(つまり、前記の二酸化チタン前駆体)を取得する。
【0024】
これらの具体例において、前記無水溶媒は無水エタノールであってよく、且つ有機酸は炭素数3以下の有機酸であってよい。チタン酸のエステル類は、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトラブチル及びチタン酸テトラプロピルを含んでよいが、それらに限定されなく、且つ4価チタンの塩類はチタンテトライソプロポキシドであってよい。
【0025】
ある具体例において、作製された二酸化チタン粒子の寸法は、ナノスケール又はマイクロスケールであってよい。好ましくは、作られた二酸化チタン層の光触媒活性を向上させて、炭素繊維複合材の協同性光触媒活性を高めるように、二酸化チタン粒子の寸法は、10nm~20nmであってよい。
【0026】
ある実施例において、炭素繊維複合材の製造方法100によれば、焼結助剤を使用せずに、水素ガスを安定して発生させることができる。この焼結助剤は、低融点塩であり、且つ硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸コバルト又は酢酸マンガンであってよい。
【0027】
炭素繊維複合材の製造方法100では、二酸化チタンを担持する基材として、炭素繊維を使用する。ある実施例において、炭素繊維は、そのまま二酸化チタンを担持する基材とされてよい。別のある具体例において、炭素繊維が織物に織られてから、コーティングによって二酸化チタン前駆体を炭素繊維から織られた織物に大量に塗布してよいので、炭素繊維複合材の生産量を増加し、及び生産効率を向上させることができる。例としては、織物は、炭素繊維フェルトであってよい。
【0028】
ある実施例において、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)炭素繊維を含んでよい。好ましくは、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル炭素繊維である。炭素繊維がポリアクリロニトリル炭素繊維である場合、ポリアクリロニトリル炭素繊維は、グラフェンに類似する構造を有し、二酸化チタン層の光電子の伝達に有利であり、更に炭素繊維複合材の協同性光触媒活性を向上させる。
【0029】
ある実施例において、二酸化チタン前駆体の塗布量は、単位面積あたりの炭素繊維により担持される二酸化チタン前駆体の重量で表れ、例えば、10g/cm2~20g/cm2である。二酸化チタン前駆体の塗布量が前記の範囲にある場合、二酸化チタン層の光触媒活性を向上させるように、作製された二酸化チタン層は、ナノスケール厚さを有する。
【0030】
ある実施例において、焼結処理の焼結温度は、430℃~720℃であり、且つ好ましくは450℃~700℃である。焼結温度が前記の範囲にある場合、二酸化チタン層の純度を向上させることができるので、二酸化チタン層の光触媒活性を向上させ、更に炭素繊維複合材の光触媒活性を向上させることができる。
【0031】
ある実施例において、二酸化チタン層における有機物の焼き切りに有利であるように、焼結時間が1時間~4時間であるので、二酸化チタン層の光触媒活性を向上させ、更に炭素繊維複合材の協同性光触媒活性を向上させることができる。
【0032】
二酸化チタン層のナノスケールの二酸化チタンにより吸収される光の波長が300nm~400nmであり、この波長範囲が紫外光に属するので、太陽光によりナノスケールの二酸化チタンにより吸収される光を提供し、コストを低下させることができる。また、前記波長範囲はナノスケールの二酸化チタンのエネルギーギャップによって決められ、他の酸化金属に比べると、ナノスケールの二酸化チタンが大きいエネルギーギャップ(約3.2eV)を有するため、好適な光触媒效果を提供することができる。二酸化チタンが他の酸化金属に取り替えられると、炭素繊維複合材の協同性光触媒活性は低下する。
【0033】
前記の操作110の後で、操作120に示すように、遷移金属イオン含有溶液を調製する。遷移金属イオン含有溶液は特に限定されないが、後述の還元剤により還元されることを目的とし、且つこの溶液は二酸化チタン層に対して化学的不活性であり、つまり、二酸化チタン層と化学的反応しない。ある実施例において、遷移金属イオン含有溶液は遷移金属ハロゲン化物の水溶液であってよく、遷移金属ハロゲン化物の具体例としては、塩化パラジウム、臭化ニッケル及びヨウ化プラチナであってよい。例としては、水で遷移金属ハロゲン化物を溶解して、遷移金属イオン含有溶液を調製する。
【0034】
ある実施例において、遷移金属イオン含有溶液の濃度は、0.1mg/mL~4mg/mLであり、且つ好ましくは0.5mg/mL~1mg/mLである。溶液の濃度が前記の範囲にない場合、形成される遷移金属ナノ粒子が二酸化チタン層の外面に不均一に分布し、遷移金属のナノ粒子の光触媒活性が低下し、更に炭素繊維複合材の協同性光触媒活性が低下する。
【0035】
前記の操作120の後で、操作130に示すように、還元剤によって遷移金属イオンを還元して、二酸化チタン層の外面に遷移金属のナノ粒子を形成して、炭素繊維複合材を作製する。
【0036】
還元剤の種類は遷移金属イオンを還元できることを目的とするが、特に限定されない。ある実施例において、還元剤は、水素化ホウ素を含んでよいが、それらに限定されない。水素化ホウ素の具体例としては、水素化ホウ素リチウム及び水素化ホウ素ナトリウムであってよい。ある具体例において、約10℃の純水で還元剤を溶解してから、還元剤の還元力を低下させないように、溶液の形で使用する。
【0037】
ある実施例において、還元剤の濃度は、0.25mg/mL~15mg/mLであり、且つ好ましくは3mg/mL~10mg/mLである。還元剤の濃度が前記の範囲にある場合、十分な還元剤により、遷移金属イオンをナノスケール粒子に還元して、遷移金属のナノ粒子の光触媒活性を向上させることができる。
【0038】
遷移金属は、ニッケル、パラジウム及びプラチナからなる群から選ばれる少なくとも1つである。これらの遷移金属の何れも第8族元素に属し、5s14d8と同じ(又はそれに類似する)電子配置を有するので、二酸化チタン層における二酸化チタンから前記伝導帯に遷移した電子を取って、炭素繊維複合材に協同性光触媒活性を持たせることができる。遷移金属がニッケル、パラジウム又はプラチナではなければ、遷移金属が二酸化チタン層の二酸化チタンから伝導帯まで遷移した電子を取ることはできないので、炭素繊維複合材は、協同性光触媒活性を有しない。
【0039】
ある実施例において、還元剤は、遷移金属イオン含有溶液に滴下して加えられ、且つ滴下の過程中、二酸化チタンにより被覆される炭素繊維を超音波で発振させて、遷移金属ナノ粒子が二酸化チタン層の外面に均一に形成できるようにする。
【0040】
ある実施例において、遷移金属のナノ粒子の粒子径は、20nm以下であり、且つ好ましくは5nm~15nmである。遷移金属ナノ粒子の粒子径が前記の範囲にある場合、このナノ粒子は、二酸化チタン層の二酸化チタンから伝導帯まで遷移した電子を受けることに有利であり、且つナノ粒子が大きい表面積を有し、炭素繊維複合材の協同性光触媒活性を向上させる。ある具体例において、水素ガスの脱出速度によって炭素繊維複合材の水分解による水素ガスの発生に対する光触媒活性を評価することができる。
【0041】
図2A及び図2Bを参照すると、それぞれ本発明の一実施例による炭素繊維複合材の縦断面及び横断面を示す構造模式図である。縦断面は、炭素繊維210の軸方向に平行である方向に沿って切断した断面であるが、横断面は炭素繊維210の軸方向に垂直である方向に沿って切断した断面である。前記方法で作製された炭素繊維複合材200は、炭素繊維210と、二酸化チタン層220と、遷移金属のナノ粒子230と、を含む。炭素繊維210は外面210Aを有し、且つ二酸化チタン層220は内面220A及び外面220Bを有し、二酸化チタン層220が炭素繊維210を被覆するように、二酸化チタン層220の内面220Aが炭素繊維210の外面210Aに接触する。遷移金属ナノ粒子230は、二酸化チタン層220の外面220Bに設けられる。
【0042】
ある実施例において、炭素繊維210の直径は、5μm~8μmであってよい。好適な直径範囲は、5μm~7μmであってよい。炭素繊維210の直径が前記の範囲にある場合、織物に織られることに有利であり、更に炭素繊維複合材200の量産に有利である。
【0043】
ある実施例において、二酸化チタン層220の厚さは、ナノスケールであってよく、且つ好ましくは20nm~40nmである。二酸化チタン層220の厚さが前記の範囲にある場合、二酸化チタン層220の光触媒活性を向上させ、更に炭素繊維複合材200の協同性光触媒活性を向上させることができる。
【0044】
炭素繊維複合材200は、汚染物を分解すると共に燃料用水素ガスを形成するように、有機物を光触媒酸化(つまり、汚染物)すると共に、水分子を光触媒分解することができるので、単一の分野に限定されず、燃料電池、及び有機光触媒分解又は触媒の分野の結合に適用されることができる。ある適用例において、前記光触媒反応は、波長300nm~400nmの光によって光触媒反応を行うことができる。
【0045】
ある適用例において、有害の汚染物によってきれいな燃料用水素ガスを生産して、汚染物の価値を創造するように、汚染物は、第2級アミン、トルエン及びフォルムアルデヒドの有機汚染物を含んでよい。
【0046】
以下、実施例によって本発明の適用を説明するが、それは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、何れも本発明の精神や範囲から逸脱せずに、各種の変更と修正を加えることができる。
【0047】
炭素繊維複合材の製造
【0048】
実施例1
【0049】
実施例1の炭素繊維複合材を室温に置いて、10mL~20mLのチタン酸テトラエチルを15mL~50mLの無水エタノールに加え、溶解するまで攪拌して、二酸化チタン錯体溶液を取得した。また、10mL~50mLの無水エタノール、10mL~40mLの酢酸及び5mL~15mLの純水を混合して、酢酸溶液を取得した。次に、20℃~50℃で、酢酸溶液を攪拌中の二酸化チタン錯体溶液に滴下して、約1時間~4時間静置した後で、二酸化チタンゾルを取得した。
【0050】
塊状の炭素繊維フェルト(単位重量の面積は1000m2/g~1600m2/gである)を100℃~160℃で、2時間~7時間ベークを行った。また、二酸化チタンゾルを塊状の炭素繊維フェルトに均一に塗布して、二酸化チタンゾルを吸着させて、60℃~90℃で乾燥し、且つこの吸着工程と乾燥工程を3回繰り返して、二酸化チタンの塗布された炭素繊維フェルトを取得し、二酸化チタン前駆体の塗布量は、単位面積あたりの炭素繊維により担持される二酸化チタン前駆体の重量で表れ、10g/cm2~20g/cm2であり、且つ二酸化チタン前駆体と炭素繊維との重量比は、10~40である。窒素ガスの雰囲気において、2℃/min~10℃/minの速度で450℃~700℃の焼結温度まで昇温し、この炭素繊維フェルトに対して焼成を行い、1時間~4時間経過した後で、また窒素ガスの雰囲気において室温まで低下して、二酸化チタン層に被覆された炭素繊維を有する炭素繊維フェルトを取得し、二酸化チタン粒子の寸法は10nm~20nmであり、二酸化チタン層の厚さは20nm~40nmである。
【0051】
二酸化チタン層を形成した後で、炭素繊維フェルトを体積0.15mL且つ濃度0.5mg/mL~1mg/mLの塩化パラジウム水溶液に置いて、超音波によってパラジウムイオンを発振させて均一に分散させた後で、体積6mL且つ濃度12mg/mLの水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えて、還元反応を行った。反応が完成した後で、蒸留水で洗浄して80℃で前記炭素繊維フェルトを乾燥して、炭素繊維複合材を取得した。
【0052】
実施例2~5及び比較例1
【0053】
実施例2~5及び比較例1の何れも、実施例1に類似する方法によって製造を行った。実施例2~5及び比較例1では、塩化パラジウム水溶液及び水素化ホウ素ナトリウム水溶液の添加量を変えることに異なり、その具体的な条件を表1に示す。
【0054】
評価形態
【0055】
1.遷移金属ナノ粒子の粒子径試験
【0056】
遷移金属ナノ粒子の粒子径試験では、電子顕微鏡によって炭素繊維複合材の遷移金属ナノ粒子を観察し、その粒子径を測定した。
【0057】
2.有機物の分解試験
【0058】
有機物の分解試験では、100×20mm2の面積の炭素繊維複合材を取って1Lの平底フラスコの底部に平らに敷き、500mLの環状の第2級アミン溶液を加えて、液位を0.8mmにした。フラスコを室温に置いて、波長400nmの光を含む白光水銀灯(又はLED白色光)で2時間照り付けた。また、一滴の環状の第2級アミン溶液を取り出して過酸化物試験紙に置いて、試験紙の色変化を観察した。試験紙色が青色になると、この炭素繊維複合材の二酸化チタン層は、光触媒酸化能力を有し、環状の第2級アミン酸化を促進することができる。
【0059】
3.水分解試験
【0060】
水分解試験では、50×20mm2の面積の炭素繊維複合材を取って1Lの平底フラスコの底部に平らに敷き、250mLの20%のメタノール水溶液を加えて、液位を約10mmにした。メタノール水溶液によって脱ガス(degassing)を3回行った後で、単位面積の照射線量50mW/cm2のキセノンランプで1時間照射した。また、この溶液から発生した水素ガスをガスクロマトグラフィーに引き出して、熱伝導度型検出器(thermal conductivity detector;TCD)によって水素ガスの流量を検出して、脱出速度を評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1を参照すると、還元剤及び塩化パラジウム水溶液を使用していない(つまり、パラジウムナノ粒子がない)比較例1に比べると、実施例1~5で作製された炭素繊維複合材の試験紙色は青色となり、且つ炭素繊維複合材は、水を光触媒分解して水素ガスを発生させることができる。これにより、実施例1~5で作製された炭素繊維複合材こそ、協同性光触媒活性を備えることが判明される。
【0063】
なお、表1を参照すると、水分解試験の水素ガスの脱出速度結果によると、塩化パラジウム水溶液の用量は、脱出速度に影響を与え、0.8mLの用量を最高とする。この用量の塩化パラジウム水溶液では、粒子径10nmのパラジウムナノ粒子を形成することができ、且つパラジウムナノ粒子が二酸化チタン層の外面に均一に分布することができるので、炭素繊維複合材の協同性光触媒活性が向上する。
【0064】
以上、本発明の炭素繊維複合材製造方法は、特定濃度の特定の遷移金属イオンを還元することで炭素繊維を取り囲む二酸化チタン層の外面に遷移金属ナノ粒子を形成し、炭素繊維複合材を作製し、また、遷移金属ナノ粒子系を二酸化チタン層に直接接触させて、炭素繊維複合材に協同性光触媒活性を持たせる。
【0065】
本発明は実施形態を前述の通りに開示したが、それに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0066】
100:方法
110、120、130:操作
200:炭素繊維複合材
210:炭素繊維
220:二酸化チタン層
230:ナノ粒子
220A:内面
210A、220B:外面
図1
図2A
図2B