(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】色材組成物、インク、及び、カラーフィルター用レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20241028BHJP
C09B 29/42 20060101ALI20241028BHJP
C09D 11/18 20060101ALI20241028BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C09B67/20 K
C09B29/42 A
C09D11/18
G03G9/09
(21)【出願番号】P 2022139078
(22)【出願日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021156238
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】新藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】城田 衣
(72)【発明者】
【氏名】三東 剛
(72)【発明者】
【氏名】野田 智之
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-113649(JP,A)
【文献】特開2022-074025(JP,A)
【文献】国際公開第2008/069045(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/026855(WO,A1)
【文献】特開2013-209638(JP,A)
【文献】特開2015-052778(JP,A)
【文献】特開2017-082218(JP,A)
【文献】特開2019-099657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
C09D 11/18
G03G 9/09
C09B 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物Aと、
アルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物Bと、
プロトン性極性溶媒と、
を含有
し、
該化合物Bとして、一般式(2)で表される化合物または一般式(3)で表される化合物を少なくとも1つ以上含有することを特徴とする色材組成物。
【化1】
[一般式(1)中、
Aはカルボニル基またはスルホニル基を表し、
R
1及びR
2は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上12以下の分岐状のアルキル基または炭素数3以上12以下の環状のアルキル基を表し、
R
3は、炭素数1以上12以下の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、
R
4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ベンジル基、-NR
5R
6を表し、
R
5及びR
6は、各々独立して水素原子、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のアシル基、または置換基を有するアシル基を表し、R
5及びR
6が互いに結合して形成された環構造であっても良い。]
【化2】
[一般式(2))中、
R
7
は、炭素数1以上24以下の直鎖状の炭化水素基、炭素数3以上24以下の分岐状の炭化水素基又は炭素数3以上24以下の環状の炭化水素基を表し、
R
8
は、水素原子、-(CH
2
CH
2
O)
d
-H、または、-COR
10
を表し、R
10
は、炭素数1以上24以下の直鎖状の炭化水素基、炭素数3以上24以下の分岐状の炭化水素基又は炭素数3以上24以下の環状の炭化水素基を表し、dは1以上10以下の整数を表し、
R
9
は、水素原子、または、COR
11
基を表し、R
11
は、炭素数1以上24以下の直鎖状の炭化水素基、炭素数3以上24以下の分岐状の炭化水素基又は炭素数3以上24以下の環状の炭化水素基を表し、
aは0以上10以下の整数、bは1以上11以下の整数、cは0以上10以下の整数を表し、
該R
7
~該R
9
及び該bは、この化合物が少なくとも1つのヒドロキシ基を有するように選択される。]
【化3】
[一般式(3)中、
R
12
~R
16
は、それぞれ独立して、水素原子、または、-COR
17
基を表し、R
17
は、炭素数1以上24以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、
eは1以上10以下の整数を表し、
該R
12
~該R
16
は、この化合物が少なくとも1つのヒドロキシ基を有するように選択される。]
【請求項2】
前記一般式(1)におけるAがカルボニル基である請求項
1に記載の色材組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の色材組成物を含有することを特徴とするインク。
【請求項4】
請求項1または2に記載の色材組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用レジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材組成物、該色材組成物を用いたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、トナー、及び、筆記具(特にボールペン)に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶を使用したカラーディスプレイには、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、液晶ディスプレイのカラー表示のためには必要不可欠なものであり、液晶ディスプレイの性能を左右する重要な部品である。カラーフィルターの製造は、染色法、印刷法、インクジェット法、及び、フォトレジスト法が知られている。これらの中でも、分光特性及び色再現性の制御が容易であること、また、解像度が高く、より高精細なパターニングが可能であることから、フォトレジスト法が主流となっている。
フォトレジスト法は、着色剤として従来から顔料が用いられてきた。しかし、消偏作用(偏光が崩されること)や、液晶ディスプレイのカラー表示のコントラスト比の低下、カラーフィルターの明度の低下、有機溶剤やポリマーに対する分散安定性の低下等の課題が多かった。その後、それらの課題を解決させるために着色剤として染料を用いた製造方法が着目されてきた。例えば、特許文献1では、着色剤としてアゾ系色素を用いたカラーフィルターが報告されている。
また、近年、携帯式カラーディスプレイデバイスの普及に伴い、これらのデバイスを用いて撮影した写真、加工した写真、さらには作成した書類等を、その場でプリントが可能なモバイルプリンタの需要が急激に高まっている。
カラープリント方式としては、電子写真方式、インクジェット方式、感熱転写記録方式等が知られている。これらの中でも、感熱転写記録方式が、ドライプロセスによりプリントできること、小型でプリンターの携帯性に優れることから、周囲の環境によらず、手軽にプリントできる方法として優れている。感熱転写記録方式において、転写シート及び転写シート用のインク組成物に含有される染料は、転写記録のスピード、記録物の画質、及び、保存安定性に影響を与えるため、非常に重要な材料である。感熱転写記録方式に用いられる色素として、例えば、アゾ系色素を用いた例が報告されている(特許文献2参照)。
また、電子写真方式によるカラートナーでも、発色性を高めるために、着色剤に顔料と染料を用いた例が報告されている。さらに、インクジェット方式によるデジタル捺染は、低エネルギーかつ低コストで捺染製品が提供できるため、近年、再注目されている方法である。テキスタイル向けのインクジェット用インクは、一般的に顔料が用いられたが、発色性を高めるために、染料を用いた例も報告されている。特許文献3は、トナーの着色剤にアゾ系色素を用いた報告例である。
一方、筆記具(特にボールペン)の分野では、インキや機能の違いで書き味、書き出し(初筆性能)、筆跡が安定して出続ける等のユーザー要求に対する需要が急激に高まりつつある。ボールペンには、油性ボールペン、水性ボールペン、ゲルインキボールペン等の種類、黒、赤、青、ピンク、グリーン、オレンジ等様々な色味がある。ボールペン用インキに使用される着色剤は、染料、顔料、それらの混合物である。例えば、顔料を用いた油性インキは、筆跡の堅牢性に優れるが、顔料がインキ中で凝集や沈降しやすく、筆跡に不具合が生じることがあった。これに対し、染料を用いた油性インキは、染料が溶剤に溶解しやすい特徴を持つため、顔料と比べると凝集や沈降が起こりにくいものの、耐水性及び耐候性は劣る傾向があった。例えば、着色剤としてアゾ系色素を用いたインキ(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-139560号公報
【文献】特開2015-13456号公報
【文献】特許2612298号
【文献】特開平08-20669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した文献に記載されたアゾ色素化合物は、アゾ-ヒドラゾ互変異性体が存在する。これらは分子内に水素結合性置換基が多く、通常分子間の相互作用により凝集しやすい特徴がある。更に、アルコールのようなプロトン性極性溶媒存在下では、アゾ色素化合物の水素結合性置換基とアルコールのヒドロキシル基が水素結合による相互作用が分子間の相互作用より優先されるため、凝集が抑制される。そのため、分子が単一となり、熱や光によって色素の分解が進んでしまうという課題があった。そこで、プロトン性極性溶媒存在下でも熱や光によって色素の分解を抑制することができる色材組成物の開発が望まれていた。
本発明は、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れた色材組成物を提供することを目的とする。また本発明は、該色材組成物を用いることによって、熱安定性かつ耐光性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、トナー、及び筆記具(特にボールペン)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一般式(1)で表される化合物Aと、アルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物Bと、プロトン性極性溶媒と、を含有し、
該化合物Bとして、後述の一般式(2)で表される化合物(但し、式中のR
7
~R
9
及びbは、この化合物が少なくとも1つのヒドロキシ基を有するように選択される。)または後述の一般式(3)で表される化合物(但し、式中のR
12
~R
16
は、この化合物が少なくとも1つのヒドロキシ基を有するように選択される。)を少なくとも1つ以上含有する色材組成物を用いることによって、上記課題は解決される。
【0006】
【化1】
[一般式(1)中、
Aはカルボニル基またはスルホニル基を表し、
R
1及びR
2は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上12以下の分岐状のアルキル基または炭素数3以上12以下の環状のアルキル基を表し、
R
3は、炭素数1以上12以下の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、
R
4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ベンジル基、-NR
5R
6を表し、
R
5及びR
6は、各々独立して水素原子、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のアシル基、または置換基を有するアシル基を表し、R
5及びR
6が互いに結合して形成された環構造であっても良い。]
【0007】
また、本発明は、上記色材組成物を含有するインクに関する。
【0008】
また、本発明は、上記色材組成物を含有するカラーフィルター用レジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱安定性かつ耐光性に優れた色材組成物を提供することができる。また、本発明によれば、熱安定性かつ耐光性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、トナー及び筆記具(特にボールペン)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表される化合物とアルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物とを含有する色材組成物は、熱安定性かつ耐光性に優れていることを見出した。尚、本発明における「アルコール中のプロトン解離エネルギー」とは、ベンジルアルコール媒体中、化合物からプロトン(H+)が解離するために必要なエネルギーを指す。
【0016】
【化2】
[一般式(1)中、
Aはカルボニル基またはスルホニル基を表し、
R
1及びR
2は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上12以下の分岐状のアルキル基または炭素数3以上12以下の環状のアルキル基を表し、
R
3は、炭素数1以上12以下の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、
R
4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ベンジル基、-NR
5R
6を表し、
R
5及びR
6は、各々独立して水素原子、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のアシル基、または置換基を有するアシル基を表し、R
5及びR
6が互いに結合して形成された環構造であっても良い。]
【0017】
また、アルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物が、一般式(2)または(3)で表される化合物群から選択される化合物であると、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れた色材組成物を提供することができる。尚、本発明における「プロトン性極性溶媒」とは、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類を指す。
【0018】
【化3】
[一般式(2))中、
R
7は、炭素数1以上24以下の直鎖状の炭化水素基、炭素数3以上24以下の分岐状の炭化水素基又は炭素数3以上24以下の環状の炭化水素基を表し、
R
8は、水素原子、-(CH
2CH
2O)
d-H、または、-COR
10を表し、R
10は、炭素数1以上24以下の直鎖状の炭化水素基、炭素数3以上24以下の分岐状の炭化水素基又は炭素数3以上24以下の環状の炭化水素基を表し、dは1以上10以下の整数を表し、
R
9は、水素原子、または、COR
11基を表し、R
11は、炭素数1以上24以下の直鎖状の炭化水素基、炭素数3以上24以下の分岐状の炭化水素基又は炭素数3以上24以下の環状の炭化水素基を表し、
aは0以上10以下の整数、bは1以上11以下の整数、cは0以上10以下の整数を表す。]
【0019】
【化4】
[一般式(3)中、
R
12~R
16は、それぞれ独立して、水素原子、または、-COR
17基を表し、R
17は、炭素数1以上24以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、
eは1以上10以下の整数を表す。]
【0020】
一般に、アゾ色素化合物は、アゾ-ヒドラゾ互変異性体が存在する。これらは分子内に水素結合性置換基が多く、通常分子間の相互作用により凝集しやすい特徴がある。更に、アルコールのようなプロトン性極性溶媒存在下では、アゾ色素化合物の水素結合性置換基とアルコールのヒドロキシル基が水素結合による相互作用が分子間の相互作用より優先されるため、凝集が抑制される。そのため、分子が単一となり、熱や光によって色素の分解が進んでしまう。
【0021】
これに対し、本発明の色材組成物は、一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物A」と称することもある。)と、アルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物(以下、「化合物B」と称することもある。)とを含有する。この色材組成物は、一般式(1)で表される化合物が単独で存在する場合よりも熱安定性かつ耐光性に優れている。特に、プロトン性極性溶媒存在下ではその効果が著しく大きくなる。これは、化合物Aのアミン部位と化合物Bのプロトン解離性のある弱酸性基との間において、中和的に水素結合相互作用が強く働くためと考えられる。
【0022】
また、化合物Bが、一般式(2)または(3)で表される化合物である場合には、化合物A付随するアルキルアミノ基のアルキル基(R1またはR2)と、化合物Bが有する長鎖のアルキル基とが、高い相溶性を示す。高い相溶性を有するために、一般式(1)で表される化合物の分解部位(アゾ基-ヒドラゾ基)が、一般式(2)または(3)によって立体的に覆われ、熱や光の攻撃から保護する作用が強くなる。そのため、より顕著な効果が発現すると推測している。
【0023】
また、上記色材組成物を用いることによって、熱安定性かつ耐光性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、トナー、及び筆記具(特にボールペン)が得られることを見出した。
【0024】
化合物Bの含有量は、化合物Aの100質量部に対して、1.0質量部以上1000質量部以下の範囲で適宜用途に応じて選択される。特に2.0質量部以上500質量部以下であることがより好ましく、5.0質量部以上100質量部以下であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、色材組成物はプロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる。
【0025】
まず、上記一般式(1)で表される化合物Aについて説明する。
【0026】
一般式(1)中、R1及びR2における、炭素数1以上12以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上12以下の分岐状のアルキル基、炭素数3以上12以下の環状のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、炭素数8のアルキル基である場合がプロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から好ましく、特に2-エチルヘキシル基等の分岐状のアルキル基であることがより好ましい。
【0028】
一般式(1)中、R3におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1以上12以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、2-メチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、2-メチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基であることが好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0029】
一般式(1)中、R4におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1以上12以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、2-メチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基など直鎖上のアルキル基が好ましい。
【0030】
一般式(1)中、R4が-NR5R6を示すとき、R5及びR6は、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のアシル基、または置換基を有するアシル基を表す。
【0031】
R5及びR6のアルキル基は、特に限定されるものではないが、炭素数1以上20以下の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられる。なお、置換基を有する場合、上記炭素数は、該置換基の炭素数を含む数を表す。無置換のアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等の、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。また、置換アルキル基における置換基としては、例えば、シクロヘキセニル基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0032】
R5及びR6におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、炭素数6以上10以下の置換もしくは無置換のアリール基が挙げられる。置換基としては、アルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。なお、置換基を有する場合、上記炭素数は、該置換基の炭素数を含む数を表す。また、置換基は1つでも複数でもよい。炭素数6以上10以下の置換もしくは無置換のアリール基としてはプロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、具体的に、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基等が好ましい。
【0033】
R5及びR6におけるアシル基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1以上30以下の置換もしくは無置換のアシル基が挙げられる。なお、置換基を有する場合、上記炭素数は、該置換基の炭素数を含む数を表す。具体的には、ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基等の炭素数2以上30以下の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数7以上30以下の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基;2-ピリジルカルボニル基、2-フリルカルボニル基等のヘテロ環カルボニル基等が挙げられる。これらの中でも、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、アセチル基、ピバロイル基またはベンゾイル基であることが好ましく、アセチル基またはベンゾイル基であることがより好ましい。
【0034】
R5及びR6が互いに結合して形成された環としては、特に限定されるものではないが、ピリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、フタルイミド環を表す。
【0035】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、WO08/114886号公報に記載されている公知の方法を参考にして合成することが可能である。本化合物には、アゾ-ヒドラゾ互変異性体が存在するが、いずれも本発明の範疇であり、それらの混合物であってもよい。好ましい化合物の例を以下の(1-1)~(1-15)でアゾ体の表記で示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【0037】
【0038】
これらの中で、化合物(1-2)、(1-5)、(1-6)、(1-10)、(1-14)が、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる色材組成物が得られるため、好ましい。
【0039】
上記一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、また、用途に応じて、色調等を調整するために、2種以上を併用してもよい。さらに、公知の顔料や染料と組み合わせて用いることもできる。組み合わせる公知の顔料や染料は、2種以上であってもよい。
【0040】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0041】
一般式(2)中、R7、R10及びR11における炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1以上24以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上24以下の分岐状のアルキル基、炭素数3以上24以下の環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基(炭素数1)、エチル基(炭素数2)、プロピル基(炭素数3)、ブチル基(炭素数4)、ヘキシル基(炭素数5)、ヘキシル基(炭素数6)、ヘプチル基(炭素数7)、オクチル基(炭素数8)、ノニル基(炭素数9)、デシル基(炭素数10)、ウンデシル基(炭素数11)、ドデシル基(炭素数12)、トリデシル基(炭素数13)、テトラデシル基(炭素数14)、ペンタデシル基(炭素数15)、ヘキサデシル基(炭素数16)、ヘプタデシル基(炭素数17)、オクタデシル基(炭素数18)、ノナデシル基(炭素数19)、イコシル基(炭素数20)、エイコシル基(炭素数20)、ヘンイコシル基(炭素数21)、ヘンエイコシル基(炭素数21)、ドコシル基(炭素数22)、トリコシル基(炭素数23)、テトラコシル基(炭素数24)等が挙げられる。これらの中でも、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、オクチル基(炭素数8)、ドデシル基(炭素数12)、トリデシル基(炭素数13)、テトラデシル基(炭素数14)、ペンタデシル基(炭素数15)、ヘキサデシル基(炭素数16)であることが好ましい。
【0042】
一般式(2)で表される化合物として好ましい化合物の例を以下の(2-1)~(2-4)に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
一般式(2)で表される化合物は、公知の方法で合成してもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。なお、合成及び製造の都合上、混合されている場合がある。本発明では、混合物の状態で存在しても、問題なく使用することができる。
【0044】
本発明の一般式(2)で表される化合物は、プロトン解離エネルギーは、300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲内であり、好ましくは320.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲内である。尚、(2-1)は325.0kcal/mol、(2-2)は311.0kcal/mol、(2-3)は334.5kcal/mol、(2-4)は311.0kcal/molである。
【0045】
【0046】
また、一般式(2)で表される化合物を含む市販品は、容易に入手することができる。市販品は、特に限定されるものではないが、日本エマルジョン株式会社から入手可能なものとしては、例えば、DSG-2(ジアステアリン酸ポリグリセリル-2)、DSG-3(ジアステアリン酸グリセリル-3)、DSG-6(ジアステアリン酸ポリグリセリル-6)、DISG-2EX(ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2)、TISG-2(トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2)、DISG-3EX(ジイソシテアリン酸ポリグリセリル-3)、DISG-6(ジイソステアリン酸ポリグリセリル-6)、DISG-10EX(ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10)、TISG-10(トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10)、GWL-109(ラウリン酸PEG-9グリセリル)、GWIS-210EX(ジイソステアリン酸PEG-10グリセリル)、GWIS-103EX(イソステアリン酸PEG-3グリセリル)、GWIS-105EX(イソステアリン酸PEG-5グリセリル)等がある。特にプロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、GWIS-210EX、EMALEX DISG-2EX、EMALEX DISG-10EX等が好ましい。
【0047】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0048】
一般式(3)中、R17における炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1以上24以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上24以下の分岐状のアルキル基、又は炭素数3以上24以下の環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基(炭素数1)、エチル基(炭素数2)、プロピル基(炭素数3)、ブチル基(炭素数4)、ヘキシル基(炭素数5)、ヘキシル基(炭素数6)、ヘプチル基(炭素数7)、オクチル基(炭素数8)、ノニル基(炭素数9)、デシル基(炭素数10)、ウンデシル基(炭素数11)、ドデシル基(炭素数12)、トリデシル基(炭素数13)、テトラデシル基(炭素数14)、ペンタデシル基(炭素数15)、ヘキサデシル基(炭素数16)、ヘプタデシル基(炭素数17)、オクタデシル基(炭素数18)、ノナデシル基(炭素数19)、イコシル基(炭素数20)、エイコシル基(炭素数20)、ヘンイコシル基(炭素数21)、ヘンエイコシル基(炭素数21)、ドコシル基(炭素数22)、トリコシル基(炭素数23)、テトラコシル基(炭素数24)等が挙げられる。これらの中でも、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、オクチル基(炭素数8)、ドデシル基(炭素数12)、トリデシル基(炭素数13)、テトラデシル基(炭素数14)、ペンタデシル基(炭素数15)、ヘキサデシル基(炭素数16)であることが好ましい。
【0049】
一般式(3)で表される本発明の化合物として好ましい化合物の例を以下の(3-1)~(3-3)に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
公知の方法で合成してもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。なお、合成及び製造の都合上、混合されている場合がある。本発明では、混合物の状態で存在しても、問題なく使用することができる。
【0051】
本発明の一般式(3)で表される化合物は、プロトン解離エネルギーは、300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲内であり、好ましくは320.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲内である。尚、(3-1)は311.0kcal/mol、(3-2)は312.8kcal/mol、(3-3)は312.8kcal/molであった。
【0052】
【0053】
また、一般式(3)で表される化合物を含む市販品は、容易に入手することができる。市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、日光ケミカルズ株式会社から入手可能なものとしては、例えば、NIKKOL Hexaglyn 1-L(ラウリル酸ポリグリセリル-6)、NIKKOL Decaglyn 1-LF(ラウリル酸ポリグリセリル-10)、NIKKOL Hexaglyn 1-M(ミリスチン酸ポリグリセリル-6)などがある。特にプロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れる観点から、NIKKOL Hexaglyn 1-L、NIKKOL Decaglyn 1-LF等が好ましい。
【0054】
一般式(1)で表される化合物のアミン部位とアルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物、特に一般式(2)または(3)で表される化合物とからなる本発明の色材組成物は、インク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、トナー及び筆記具(特にボールペン)に用いることができる。
【0055】
次に、それぞれ本発明に係る他の構成材料について説明する。
【0056】
<インク>
本発明に係るインクについて説明する。上記した色材組成物は、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れているため、インクの着色剤としても好適である。
【0057】
本発明のインクは、媒体と、着色剤として色材組成物を含有する。該色材組成物は、媒体中に分散または溶解した状態で存在する。本発明のインクにおいて、上記色材組成物以外の構成成分は、インクの用途に応じて適宜選択される。また、各種用途における特性を阻害しない範囲において、添加剤等を適宜添加してもよい。
【0058】
本発明のインクは、インクジェット用インクの他、印刷用インク、塗料、筆記具用インク、捺染用インク、デジタルテキスタイル用インクとしても好適である。
【0059】
本発明のインクを捺染用インクとして用いる場合、捺染を行うことができる布帛は、染色されるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、アセテート、トリアセテートを含有する繊維からなる布帛が挙げられる。布帛は、織物、編物、不織布等いずれの形態であってもよい。また、綿、絹、麻、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及びレーヨン繊維からなる布帛、または、これらの繊維を2種以上組み合わせた布帛を用いることもできる。
【0060】
布帛を構成する糸の太さは、10デニール以上100デニール以下の範囲であることが好ましい。またその糸を構成する繊維の太さは、特に限定されるものではないが、1デニール以下であることが好ましい。
【0061】
本発明のインクは、以下のようにして調製することができる。
【0062】
本発明の色材組成物と、必要に応じて他の着色剤、乳化剤、樹脂等とを、媒体中に、撹拌しながら徐々に加えて、十分に媒体になじませる。さらに、分散機を用いて機械的剪断力を加え、安定に溶解または微分散させることにより、本発明のインクを得ることができる。
【0063】
[媒体]
本発明において、「媒体」とは、水または有機溶剤を意味する。媒体として有機溶剤を用いる場合、該有機溶剤の種類は、インクの目的や用途に応じて選択されるものであり、特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-ペンタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類;オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄または窒素含有有機化合物類等が挙げられる。
【0064】
また、有機溶剤としては、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体としては、付加重合性単量体または縮重合性単量体が挙げられ、付加重合性単量体であることが好ましい。重合性単量体としては、具体的に、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
[着色剤]
本発明のインクを構成する着色剤としては、色材組成物を用いるが、該色材組成物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該色材組成物の媒体への溶解性または分散性を阻害しない範囲で、公知の染料等の他の着色剤を併用してもよい。併用することができる他の着色剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、縮合アゾ化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物等が挙げられる。
【0066】
上記着色剤の含有量は、媒体1000質量部に対して1.0質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以上15質量部以下であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、十分な着色力が得られ、かつ、着色剤の分散性も良好となる。
【0067】
[乳化剤]
本発明に係るインクの媒体として水を用いる場合、着色剤の良好な分散安定性を得るために、必要に応じて乳化剤を添加してもよい。乳化剤としては、特に限定されるものではないが、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0068】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0069】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0070】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0071】
[樹脂]
本発明のインクは、さらに樹脂を含んでいてもよい。樹脂の種類は、インクの目的や用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。例えば、スチレン系重合体、アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリペプチド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
分散機としては、特に限定されるものではないが、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることができる。
【0073】
以上のように、インクは、本発明の色材組成物を含有するため、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れている。
【0074】
<カラーフィルター用レジスト組成物及びカラーフィルター>
次に、本発明に係るカラーフィルター用レジスト組成物(以下、「本発明のレジスト組成物」とも称する。)について説明する。
【0075】
本発明の色材組成物は、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れているため、カラーフィルター用レジスト組成物の調色用として好ましい。また、本発明のレジスト組成物を用いることにより、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れたカラーフィルターを得ることができる。
【0076】
本発明のレジスト組成物は、結着樹脂、媒体、及び、着色剤として本発明の色材組成物を含有する。本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、以下のようにして得られる。本発明の色材組成物及び結着樹脂を、媒体中に、撹拌しながら加える。このとき、必要に応じて重合性単量体、重合開始剤、光酸発生剤等を加えてもよい。その後、分散機を用いて機械的剪断力を加え、媒体中で上記材料を安定に溶解または微分散させることにより、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物を得ることができる。
【0077】
[結着樹脂]
本発明のレジスト組成物に用いることができる結着樹脂としては、画素形成時の露光工程における光照射部及び遮光部のいずれか一方が有機溶剤、アルカリ水溶液、水、または、市販の現像液によって溶解可能なものであればよい。その中でも、作業性及びレジスト作製後の処理のしやすさの観点から、水またはアルカリ水溶液によって現像可能な組成を有する結着樹脂が好ましい。
【0078】
結着樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アンモニウム塩を有する重合性単量体等の親水性の重合性単量体と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、N-ビニルカルバゾール等の親油性の重合性単量体とを、適切な混合比で、既知の手法により共重合化した結着樹脂を用いることができる。
【0079】
また、光により開裂し、カルボン酸を生成するキノンジアジド基を有する樹脂、ポリヒドロキシスチレンのtert-ブチル炭酸エステル、テトラヒドロピラニルエーテル等の、酸により開裂する基を有する樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを組み合わせて用いることもできる。この種の樹脂は、露光によって露光部分の現像液中の材料の現像液への溶解性が向上するため、露光部分のみが現像によって除去される、ポジ型のレジスト組成物として用いることができる。
【0080】
光重合性単量体の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートを用いることが好ましい。上記光重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
光重合性単量体の含有量としては、本発明に係るレジスト組成物の質量(全固形分)に対し、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が5質量%以上50質量%以下であることによって、露光に対する感度をさらに向上させることができ、かつ、レジスト組成物の粘着性も良好となる。
【0082】
[媒体]
本発明のレジスト組成物において、本発明の色材組成物、結着樹脂、また、必要に応じて添加される光重合性単量体、光重合開始剤、光酸発生剤を溶解または分散させるための媒体としては、水または有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-n-アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
[着色剤]
本発明のレジスト組成物を構成する着色剤としては、本発明の色材組成物を用いるが、該色材組成物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所望の分光特性を得るため、調色用途として、他の染料を併用してもよい。併用することができる染料としては、特に限定されるものではないが、縮合アゾ化合物、アゾ金属錯体、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。
【0084】
本発明のレジスト組成物には、上記添加物以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤や、フィルター作製時にガラス基板との密着性を向上させる目的でシランカップリング剤を添加してもよい。
【0085】
分散機としては、特に限定されるものではないが、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることができる。
【0086】
以上のように、カラーフィルター用レジスト組成物は、本発明の色材組成物を含有するため、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れている。なお、異なる分光特性を有する2種類以上の画素が隣接して配列されてなるカラーフィルターにおいて、その複数の画素の色(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1色を構成する画素に、本発明のレジスト組成物を用いることにより、熱安定性かつ耐光性に優れたカラーフィルターを得ることができる。
【0087】
<感熱転写記録用シート>
次に、本発明に係る感熱転写記録用シートについて説明する。本発明の色材組成物は、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れているため、感熱転写記録用シートに好適に用いることができる。
【0088】
本発明に係る感熱転写記録用シートは、基材と、本発明の色材組成物を該基材上に膜形してなる色材層とを有する。色材層は、少なくともイエロー層とマゼンタ層とシアン層とを有している。
【0089】
感熱転写記録法においては、感熱転写記録用シートの色材層と色材受容層を表面に設けた受像シートと重ね合わせた状態で、感熱転写記録用シートをサーマルヘッド等の加熱手段を用いて加熱することにより、シート中の色材を受像シートに転写させ、画像形成が行われる。
【0090】
色材層は、色材組成物を含む色材と、結着樹脂と、必要に応じて界面活性剤及びワックスと、媒体とを含有する。本発明の感熱転写記録用シートの作製方法は特に限定されるものではないが、通常、以下のようにして得られる。
【0091】
色材組成物を含む色材、結着樹脂、必要に応じて界面活性剤及びワックスを、媒体中に撹拌しながら徐々に加え、十分に媒体になじませる。続いて、分散機を用いて機械的剪断力を加えることにより、上記組成物を安定に溶解または微粒子状に分散させて、分散液(インク)を調製する。該分散液を、基材であるベースフィルムに塗布、乾燥することにより、色材層を形成する。さらに、必要に応じて、後述の転写性保護層、耐熱滑性層等を形成することにより、本発明の感熱転写記録用シートが得られる。なお、本発明の感熱転写記録用シートは、上記製造方法で作製された感熱転写記録用シートに限定されるものではない。以下、色材層に用いられる各成分について詳細に説明する。
【0092】
[色材]
色材としては、本発明の色材組成物を用いるが、該色材組成物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、従来、熱転写用に用いられている色材を併用することもできる。併用する色材に関しては、色相、印画感度、耐光性、保存性及び結着樹脂への溶解性等を考慮する必要がある。色材の使用量は、色材層に含まれる結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上150質量部以下であることが好ましく、分散液中における色材の分散性の観点から、50質量部以上120質量部以下であることがより好ましい。なお、色材を2種以上混合して用いる場合、その総量が上記の範囲内であることが好ましい。
【0093】
[結着樹脂]
結着樹脂としては、特に限定されるものではないが、セルロース樹脂、ポリアクリル酸樹脂、澱粉樹脂、及び、エポキシ樹脂等の水溶性樹脂;ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、AS樹脂、及び、フェノキシ樹脂等の有機溶剤可溶性の樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
[界面活性剤]
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド加熱時(印画時)に十分な滑性を持たせるために、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0095】
上記カチオン界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドが挙げられる。
【0096】
上記アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0097】
上記ノニオン界面活性剤としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖が挙げられる。
【0098】
[ワックス]
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド非加熱時に十分な滑性を持たせるために、ワックスを添加してもよい。添加することができるワックスとしては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本発明の感熱転写記録用シートには、上記添加物以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、帯電防止剤、粘度調整剤等を添加してもよい。
【0100】
[媒体]
色材層を形成する際に、分散体の調製に用いる媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、水または有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びイソブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム及びトリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが好ましい。上記有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
[基材]
次いで、感熱転写記録用シートを構成する基材について説明する。基材は、上記色材層を支持するものであり、ある程度の耐熱性と強度を有するフィルムであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリスチレンフィルム、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、セルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度、耐溶剤性及び経済性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0102】
上記基材の厚さは、0.5μm以上50μm以下であることが好ましく、転写性の観点から、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0103】
基材上に、色材層を形成するために染料インキを塗布する場合、塗工液の濡れ性、接着性等が不足しやすい。そのため、基材の、上記色材層を形成する面(形成面)には、必要に応じて、接着処理を行うことが好ましい。色材層の形成面は、基板の一方の面でも、両面でもよい。接着処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、オゾン処理、コロナ放電処理、紫外線処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、化学薬品処理等を挙げることができる。また、これらの処理を複数組み合わせて行ってもよい。
【0104】
上記基材の接着処理として、基材上に接着層を塗工してもよい。接着層としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の有機材料の微粒子や、シリカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機材料の微粒子等を用いることができる。
【0105】
本発明の感熱転写記録用シートは、本発明の色材組成物を含有するため、熱安定性かつ耐光性に優れている。
【0106】
<トナー>
次に、本発明に係るトナーについて説明する。本発明の色材組成物は、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れているため、トナーに好適に用いることができる。
【0107】
本発明のトナーは、着色剤として本発明の色材組成物と、結着樹脂と、必要に応じて磁性体やワックス、電荷制御剤、その他の添加剤等を含有する。本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法、乳化凝集法等が挙げられる。これらの中でも、本発明の色材組成物を着色剤として用いる本発明のトナーは、粉砕法によって製造された粉砕トナーであることが好ましい。
【0108】
また、本発明のトナーは、液体現像法に用いられる現像剤に用いることもできる。
【0109】
なお、着色剤としては、本発明の色材組成物を用いるが、該色材組成物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、トナーの製造方法に応じて、色調等を調整するために、公知の顔料または染料と併用することもできる。以下、粉砕トナーの製造方法の一例を説明する。
【0110】
[粉砕トナーの製造方法]
粉砕トナーは、結着樹脂中に着色剤等を溶融混練し、均一に分散した後、溶融混練物を冷却固化させ、混練物を微粉砕装置により微粉砕し、微粉砕物を分級機により分級して所望の粒径のトナー粒子を得ることによって製造される。具体的には、まず、着色剤として本発明の色材組成物と、結着樹脂と、必要に応じて磁性体やワックス、電荷制御剤、その他の添加剤等の材料を、ヘンシェルミキサー又はボールミル等の混合機を用いて十分混合する。次に、ロール、ニーダー及びエクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融させる。さらに、捏和及び混練することにより、樹脂類を互いに相溶させた後、必要に応じてワックスや磁性体を加えて分散させる。そして、冷却固化させた後、粉砕及び分級を行うことによって、粉砕トナーを得ることができる。粉砕トナーの製造には、混合機、熱混練機、分級機等の公知の製造装置を用いることができる。以下、トナーを構成する各成分について説明する。
【0111】
[着色剤]
着色剤としては、本発明の色材組成物を用いる。上記のとおり、該色材組成物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、トナーに使用されている公知の染料または顔料等の着色剤を併用することもできる。
【0112】
[結着樹脂]
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素系樹脂、芳香族系石油系樹脂、さらにロジン、変性ロジン等が挙げられる。これらの中でも、帯電性や定着性の観点から、ビニル樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂を用いた場合、帯電性や定着性の効果がさらに大きくなるため、より好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の樹脂を混合して用いる場合、トナーの粘弾性特性を制御するために、分子量の異なる樹脂を混合することが好ましい。
【0113】
上記結着樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、45℃以上80℃以下であるものが好ましく、55℃以上70℃以下であるものがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、1,500以上50,000以下であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)は6,000~1,000,000であることが好ましい。
【0114】
結着樹脂として、ポリエステル系樹脂を用いる場合は、特に限定されるものではないが、全成分中における、アルコール成分/酸成分のモル比が、45/55~55/45であるものが好ましい。ポリエステル系樹脂は、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなる。そのため、酸価は、90mgKOH/g以下であることが好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、水酸基価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0115】
[ワックス]
本発明のトナーにおいては、必要に応じてワックスを添加してもよい。ワックスとしては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
[電荷制御剤]
本発明のトナーにおいては、必要に応じて公知の電荷制御剤を混合してもよい。
【0117】
<油性筆記具>
次に、本発明に係る油性筆記具は油性インクを有する。
【0118】
本発明の色材組成物の配合量は、用途に応じて適宜選択されるが、油性インク全量に対し、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは2質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0119】
また、本発明の色材組成物のみを着色剤と用いてもよいが、他の公知の着色剤(染料、顔料)を併用してもよい。併用することができる着色剤(染料、顔料)は、色相、印画感度、耐光性、保存性及び樹脂との溶解性等を考慮してインキの目的や用途に応じて決められる。
【0120】
顔料の配合量は、油性インク全量に対し、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下の範囲で必要に応じて配合することができる。
【0121】
尚、本発明の色材組成物と、併用できる染料・顔料とを含めた着色剤としては、用途に応じて適宜選択されるが、油性インク全量に対し、1質量%以上50質量%以下の範囲で配合されることが好ましい。
【0122】
油性インクは、本発明の色材組成物を含有する着色剤に加えて、アルコールを含有する媒体、および媒体に溶解された状態で存在する樹脂を含有する。
【0123】
また、上記の構成成分以外に、各種用途における特性を阻害しない範囲において、添加剤を適宜添加してもよい。添加剤については、後述する。
【0124】
[媒体]
以下、好適に用いられるアルコールを記載する。
【0125】
例えば、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール等の置換基を有さないアルキルモノアルコール;2-フェノキシエタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、1-フェノキシ-2-プロパノールなどの置換基を有するアルキルモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等のアルキル多価アルコール;ベンジルアルコール、(±)-1-フェニルエチルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。置換基を有するアルキルモノアルコールにおける置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。
【0126】
更に、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系アルコールが挙げられる。
【0127】
特に、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好適に用いられる。
【0128】
また、媒体には、アルコールやグリコールエーテルに加えて、水;3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒を含んでもよい。
【0129】
媒体の使用量は、ボールペン、サインペン、マーキングペン等筆記具の種類により変動するが、インキ組成物全量を基準として、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上60質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以上30質量%以上である。
【0130】
[樹脂]
油性インクは、粘度調整及び耐擦過性の向上のため、上記媒体中に溶解した状態で存在する樹脂を含む。
【0131】
樹脂としては、インキの目的や用途に応じて決められるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、ブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン樹脂、ロジンフェノール樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、ブチラール樹脂、ケトン樹脂が好ましく用いられる。
【0132】
ブチラール樹脂としては、例えば、低重合度タイプのエスレックBL-1、BL-2、BL-10、高重合タイプのBH-3、BH-6、BX-1、BX-5、BH-S(以上、積水化学工業(株)社製)等が挙げられる。
【0133】
ケトン樹脂としては、例えば、ケトンレジンK-90(荒川化学工業(株)社製)、ハイラック901、ハイラック110H、ハイラック111(以上、日立化成(株)社製)等が挙げられる。
【0134】
また、ポリビニルピロリドン樹脂としては、例えば、ポリビニルピロリドンK-90(日本触媒(株)社製)が挙げられる。
【0135】
樹脂の配合量は、油性インク全量を基準として、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上30質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。上記の範囲内であれば、粘度調整が容易であり、またペン先の摩耗を防止でき、安定して良好な書き味が得られる。さらに、造膜性を適度に抑えることができるため、ペン先が暴露されている状態が続いた場合であっても、インクの固化を抑制でき、書き出し時の「カスレ現象」を抑制できる。
【0136】
[添加剤]
更に必要に応じて、インクに悪影響を及ぼさない範囲内で添加剤を加えてもよい。例えば、防錆剤、界面活性剤、潤滑剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、レベリング剤、防腐剤、セルロースナノファイバー等を挙げることができる。
【0137】
[製造方法]
油性インクは、公知の方法により製造することができる。
【0138】
例えば、媒体、一般式(1)で表される化合物、樹脂、及び必要に応じて、他の着色剤や添加剤を適度な温度範囲で配合し、ミキサー、ロール、ホモジナイザー、ディスパー等の撹拌混合することで得られる。また、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることもできる。
【0139】
油性インクは、一定量の固形分を確保する必要があり、固形分が少なくなるとインキの粘性が低くなり、インキのボタ落ちにつながる。即ち、油性インクの粘度は、24.5~25.5℃雰囲気下、38.30(1/s)の剪断速度で100mPa・s以上3000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0140】
[筆記具]
油性インクは、ボールペン、サインペン、マーキングペンに充填して用いられる。
【0141】
ボールペンに関して説明する。
【0142】
ボールペンの構造や形態は特に限定されるものではない。例えば、ボールを先端のボール受け座に装着したボールチップを先端部に接続させているインキ収容管が軸筒の内空に収容され、このチップが軸筒の先端から突き出ている構造を有しているボールペンを挙げることができる。インキ収容管の開口から基端から油性ボールペンインキ組成物が充填された後、基端の開口は逆流防止の液栓または逆流防止体でふさがれる。
【0143】
ボールが筆記媒体上を転がることにより、ボールチップとボールとの間隙からボール表面に油性ボールペン用インキ組成物が供給され、筆記媒体に浸みこんで筆跡が形成される。
【0144】
<水性筆記具>
次に、水性筆記具は、水性インクを含有する。
【0145】
水性インクは、水性媒体と、水性媒体に分散されているキャリアを含有し、キャリアが本発明の色材組成物を担持していることを特徴とする。色材組成物には、顔料が含有されていても良い。使用できる顔料としては、特に限定されるものではないが、従来水性ボールペンなどの筆記具用に使用されている無機系及び有機系顔料の中から選択することができる。
【0146】
[キャリア]
キャリアは、本発明の色材組成物を担持するものであり、その担持の状態としては、本発明の色材組成物が、全体に分散された状態、内部に内包された状態、或いは表面に存在する状態であってもよい。
【0147】
キャリアを構成する主体は、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、セルロースナノファイバー等をあげることができる。
【0148】
[樹脂]
本発明の色材組成物が担持された樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、塊状樹脂粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、転相乳化法等をあげることができる。
【0149】
塊状樹脂粉砕法は、予め本発明の色材組成物を含有するように重合して得た塊状の樹脂を、粉砕機等を用いて物理的に粉砕する方法である。
【0150】
懸濁重合法は、本発明の色材組成物を溶解させた重合性モノマーを分散剤の存在下、水系媒体中に液状を懸濁させ、この状態で液滴を重合させる方法である。
【0151】
乳化重合法は、本発明の色材組成物の存在下、重合性モノマーを水系媒体中に乳化させた状態で重合させる方法である。
【0152】
ミニエマルジョン重合法は、重合性モノマーを本発明の色材組成物を溶解または分散させ、界面活性剤の存在下、水系媒体中で強撹拌させて樹脂粒子を形成する方法である。
【0153】
転送乳化法は、溶媒に本発明の色材組成物と樹脂を溶解させ、界面活性剤の存在下に、水系媒体中で強撹拌させて樹脂粒子を形成した後、溶媒を留去する方法である。
【0154】
予め製造した樹脂粒子の表面に本発明の色材組成物を存在させる方法として、例えば、樹脂粒子の表面に本発明の色材組成物を付着させる物理的染色法、樹脂粒子を有機溶剤で膨潤させ、色材組成物と混合することで、色材組成物を樹脂の内部にまで侵入させる化学的膨潤法等をあげることができる。
【0155】
上記の中でも、本発明の課題を解決するために、樹脂粒子の粒子径を十分に小さくすることができ、また、着色度の高い樹脂を得る観点から乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、転相乳化法が好ましい。
【0156】
水性インクは、水性媒体に本発明の色材組成物を担持しているキャリアの分散液、及び必要に応じて、他の着色剤や添加剤を適度な温度範囲で配合し、ミキサー、ロール、ホモジナイザー、ディスパー等の撹拌混合することで得られる。また、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることで調製することができる。
【0157】
キャリアとしては、本発明の色材組成物が内包された状態であることが好ましい。このような本発明の色材組成物をキャリアに内包させるには、例えば、本発明の色材組成物を溶解させた疎水性モノマーを用いて重合する、或いは本発明の色材組成物の表面に吸着させた疎水性モノマーを用いて重合することによって製造することができる。
【0158】
本発明の色材組成物の含有量は、キャリアを構成する樹脂やセルロースナノファイバーの含有量に対して、質量比率で0.4倍以上20倍以下であることが好ましい。本発明の色材組成物の含有量が上記の範囲内である場合、線飛びやカスレの発生、芯先のつまりをより良好に抑制できる。
【0159】
キャリアを構成する樹脂としては、用途に応じて選択されるが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アンモニウム塩を有する重合性単量体等の親水性の重合性単量体と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-クロロスチレン、N-ビニルカルバゾール等の親油性の重合性単量体とを、適切な混合比で、既知の手法により共重合化した樹脂を用いることができる。
【0160】
キャリアを構成する樹脂を得るために重合性単量体を重合する際には、油溶性開始剤、水溶性開始剤、光重合開始剤、光酸発生剤等を用いることができる。
【0161】
重合開始剤の濃度は、モノマー成分の全質量に対し、0.01質量%以上10質量%以下することが好ましく、0.03質量%以上5質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0162】
重合性単量体の重合の際に用いられる乳化剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を用いることができる。
【0163】
キャリア中の樹脂の含有量としては、水性インクの質量(全固形分)に対し、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。上記範囲であることによって、露光に対する感度や画紙の強度をさらに向上させることができ、かつ、インクとしての粘着性も良好となる。
【0164】
[セルロースナノファイバー]
キャリアに含有されるセルロースナノファイバーとしては、用途に応じて選択されるが、例えば、植物繊維を化学的及び/または機械的に解繊処理を行うことによって得られるものであり、平均幅が数nm~20nm程度、平均長さが0.5μm~数μm程度の極細繊維である。これらのセルロースナノファイバーの大きさ(繊維径)は、セルロースナノファイバーの種類により異なる。また、各種用途における特性を阻害しない範囲において増粘作用、経時安定性、発色性などから好適な範囲となる繊維径を選択する。
【0165】
セルロース繊維を含有する材料としては、木、竹、ケナフ、麻、ジュート、ウッドパルプ、古紙、結晶セルロース、農作物残廃物、再生パルプ等の植物、ホヤ等の動物、藻類、微生物等が使用できる。
【0166】
解繊処理を行う装置としては、回転せん断型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置、ボールミル、サンドミル、アトライター、高圧対向衝突式の分散機、グラインダー、コニカルリファイナーなどが挙げられる。
【0167】
セルロースナノファイバーは、市販されており、それらを用いることもできる。市販品としては、例えば、レオクリスタ I-2AX、CNF 03、CNF 04(第一化学工業社製)、ELLEX-S(大王製紙社製)、na noforest-S(中越パルプ工業)が挙げられる。
【0168】
セルロースナノファイバーの配合量は、水性インクに含まれる水性媒体100質量部あたり、0.001質量部以上40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0169】
セルロースナノファイバーに本発明の色材組成物を担持させる方法は特に限定されない。例えば、水性媒体中で、セルロースナノファイバーと本発明の色材組成物とを接触させた後、必要に応じて加温や酸化処理を行い、その後、媒体を留去することで染色されたセルロースナノファイバーを得ることができる。接触させる際に、pH調整剤、顕色剤、分散剤等を添加しても良い。
【0170】
水性着色液としては、セルロースナノファイバーを染色する際に用いた系そのままであってもよく、乾燥させて着色されたセルロースナノファイバーを取り出し、再度、水性媒体などに分散させたものであってもよい。
【0171】
[媒体]
水性インクとする場合、水性媒体としては、水と水溶性有機溶剤との混合物を用いることが好ましい。水性媒体に含有させる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶剤、含硫黄極性溶剤等を用いることができる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルがあげられる。これらの水溶性有機溶剤は、筆記具用インキの保湿性維持や色材の溶解性向上、筆記具用インキの記録紙への効果的な浸透等に寄与する。筆記具用インキ中の水性媒体において、水と水溶性有機溶剤との割合(質量基準)は、水/水溶性有機溶剤=9/1~1/9であることが好ましい。より好ましくは8/2~2/8であり、さらに好ましくは7/3~3/7である。このようにすれば、本発明の色材組成物を含む着色材のインキ中における分散性、或いは溶解性を良好なものとできる。
【0172】
[添加剤]
水性インクは、水性ボールペンやゲルインキ水性ボールペン用インキ、サインペン、マーキングペン等に好適に用いることができ、各種用途における特性を阻害しない範囲において、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などの一般的に従来用いられている添加剤を適宜添加してもよい。
【0173】
[製造方法]
水性インクは、公知の方法により製造することができる。例えば、水性媒体、色材組成物、キャリア、及び必要に応じて、他の着色剤や添加剤を適度な温度範囲で配合し、ミキサー、ロール、ホモジナイザー、ディスパー等を用いて撹拌混合することで得られる。また、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることもできる。
【0174】
このように製造された水性インクは、ボールペン、サインペン、マーキングペンに充填される。
【0175】
〔本発明の実施形態に含まれる構成〕
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)上記一般式(1)で表される化合物Aと、
アルコール中のプロトン解離エネルギーが300.0kcal/mol以上335.0kcal/mol以下の範囲にある化合物Bと、
を含有することを特徴とする色材組成物。
(構成2)上記化合物Bとして、上記一般式(2)または(3)で表される化合物を少なくとも1つ以上含有する構成1に記載の色材組成物。
(構成3)前記一般式(1)におけるAがカルボニル基である構成1または2に記載の色材組成物。
(構成4)構成1~3のいずれかに記載の色材組成物を含有することを特徴とするインク。
(構成5)構成1~3のいずれかに記載の色材組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用レジスト組成物。
(構成6)基材と、該基材上に形成された色材層を有する感熱転写記録用シートであって、
該色材層に、構成1~3のいずれかに記載の色材組成物を含有することを特徴とする感熱転写記録用シート。
(構成7)結着樹脂と着色剤とを含有するトナーであって、着色剤が構成1~3のいずれかに記載の色材組成物を含有することを特徴とするトナー。
(構成8)油性インクを含有する油性筆記具であって、
該油性インクが、
アルコールを含有する媒体、
該媒体に溶解する樹脂、及び、
構成1~3のいずれかに記載の色材組成物
を含有することを特徴とする油性筆記具。
(構成9)水性インクを含有する水性筆記具であって、
該水性インクが、
水性媒体、及び、
該水性媒体に分散されているキャリア
を含有し、
該キャリアが、構成1~3のいずれかに記載の色材組成物を担持していることを特徴とする水性筆記具。
【実施例】
【0176】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中、「部」とあるのは、特に断りのない限り、「質量部」を表す。
【0177】
また、得られた化合物の同定は、1H核磁気共鳴分光分析(1H-NMR)装置(ECA-400、日本電子(株)製)、及び、LC/TOF MS装置(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)を用いて行った。吸光度測定は、紫外可視近赤(UV-VIS-NIR)分光光度計装置(UV-3600、島津製作所(株)製)を用いた。
【0178】
なお、ベンジルアルコール中のプロトン解離エネルギーの計算は、Gaussian09(Revision D.01,M.J.Frisch,et al.,Gaussian,Inc.,Wallingford CT,2013.)を用いて、B3LYP/6-31G*、SCRF(SMD,solvent=Benzylalcohol)の条件で行った。
【0179】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、WO08/114886号公報に記載されている公知の方法を参考にして合成し、1H-NMR分析及び質量分析によって同定した。
【0180】
<インクの製造>
以下に記載する方法で、色材組成物(インク)を製造した。
【0181】
〔実施例1:色材組成物(1)の製造〕
化合物A:化合物(1-2)3.0mgと化合物B:化合物(EMALEX DSG-2)40mgを2-フェノキシエタノール50mLでメスアップし、色材組成物(1)を得た。
【0182】
〔実施例2~24:色材組成物(2)~(24)の製造〕
実施例1において、化合物A及び化合物Bを、それぞれ表1に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、色材組成物(2)~(24)を得た。
【0183】
〔比較例1~17:比較用色材組成物(1)~(17)の製造〕
実施例1において、化合物A及び化合物Bを、それぞれ表2に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較用色材組成物(1)~(17)を得た。
【0184】
[耐熱性評価]
各色材組成物を100mLマヨネーズ瓶に入れ密閉し、更に遮光した上で、60℃のオーブンで10日間放置した。その後、放置前後の試料に対して、UV測定を行った。UV測定には、各色材組成物2mLを20mLメスフラスコでメスアップした溶液を用いた。
【0185】
初期(0h)の吸光度「A1」と10日間放置後の吸光度「B1」とを測定し、それらを用いて、下式より吸光度残存率Xを算出した。
吸光度残存率X(%)=B1/A1×100
【0186】
また、化合物Bを用いない以外は上記各色材組成物と同様にして調製した試料を用いて、同様のUV測定を行った。この測定における、初期(0h)の吸光度「A2」と10日間放置後の吸光度「B2」とを用いて、下式より、吸光度残存率Yを算出した。
吸光度残存率Y(%)=B2/A2×100
【0187】
得られた吸光度残存率X、Yを用いて、吸光度残存率の差ΔE1(=X-Y(%))を算出して、化合物Bを添加したことによる効果を下記の基準で評価した。評価結果を表3、4に示す。
A:10.0≦ΔE1
B:7.0≦ΔE1<10.0
C:ΔE1<7.0
【0188】
[耐光性評価]
各色材組成物を100mLマヨネーズ瓶に入れ密閉し、温度25℃で遮光せずに30日間放置した。その後、放置前後の試料に対して、UV測定を行った。UV測定には、各色材組成物2mLを20mLメスフラスコでメスアップした溶液を用いた。
【0189】
初期の吸光度「A1」と30日後の吸光度「C1」を測定し、それらを用いて、分解率ΔE2(=(A1-C1)/A1×100)を算出し、以下の基準で評価した。評価結果を表3、4に示す。
A:ΔE2≦2.0
B:2.0<ΔE2≦5.0
C:5.0<ΔE2
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
表3、4に示すように、実施例の色材組成物(インク)は、比較用色材組成物に比べ、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れている。
【0195】
<カラーフィルターの製造>
以下に記載する方法で、カラーフィルター用レジスト組成物及びカラーフィルターを製造した。
【0196】
〔実施例25〕
・化合物A:化合物(1-5) 12部
・化合物B:NIKKOL Hexaglyn 1-L 0.6部
・シクロヘキサノン 60部
・エチレングリコールモノメチルエーテル 60部
上記材料を混合し、アトライター(三井鉱山(株)製)を用いて1時間分散させることにより、レジスト組成物用インク(1)を得た。
【0197】
続いて、
・アクリル共重合体 6.7部
(質量比率で、n-ブチルメタクリレート/アクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート=40/30/30、重量平均分子量Mw:10,000)
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 1.3部
・光重合開始剤 0.4部
(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン)
・シクロヘキサノン 96.0部
上記材料を混合した溶液に、上記レジスト組成物用インク(1)22部をゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。これを1.5μmフィルターで濾過することにより、カラーフィルター用レジスト組成物(1)を得た。
【0198】
上記カラーフィルター用レジスト組成物(1)をガラス基板上にスピンコートして、90℃で3分間乾燥させた後に全面露光し、180℃でポストキュアすることにより、カラーフィルター(1)を作製した。
【0199】
カラーフィルターを温度40℃で10日間放置後、位相差顕微鏡(商品名:BX53、OLYMPUS(株)製)を用いて20倍に拡大して表面状態を観察したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が耐熱性の向上が確認された。また、キセノン試験装置(アトラス ウエザオメータCi4000、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、照度:340nmで0.28W/m2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%の条件下で、20時間曝露したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方がOD(光学濃度)残存率(%)が11%高く、耐光性の向上が確認された。
【0200】
尚、OD残存率は、初期の光学濃度をOD0とし、5時間曝露後のODをOD5としたとき、以下のように表される。
OD残存率(%)=(OD5/OD0)×100
【0201】
〔実施例26〕
<感熱転写記録用シートの製造>
メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール及びトルエンとの1:1:1混合溶媒90部に、化合物A:化合物(1-5)13.5部と化合物B:NIKKOL Hexaglyn 1-L 1.35部を溶解した。得られた溶液に、撹拌しながら、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:デンカ3000-K、電気化学工業(株)製)15部を少しずつ添加し、感熱転写記録用シート用インク(1)を得た。
【0202】
上記感熱転写記録用シート用インク(1)を、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラー(登録商標);東レ(株)製)上に、乾燥後の厚みが1μmになるように塗布し、乾燥することによって、感熱転写記録用シート(1)を作製した。
【0203】
[画像サンプルの作製]
感熱転写記録用シート(1)をキヤノン(株)製フォトプリンターSELPHYの改造機を用いて、印画紙に転写して、画像サンプルを作製した。
【0204】
画像サンプルを温度40℃で10日間放置後、位相差顕微鏡(商品名:BX53、OLYMPUS(株)製)を用いて20倍に拡大して表面状態を観察したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が耐熱性の向上が確認された。また、キセノン試験装置(照度:340nmで0.28W/m2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%)の条件下で、10時間曝露したところ、化合物Bが存在しない場合
と比較すると、存在した場合の方が、OD残存率(%)は12%高く、耐光性の向上が確認された。
【0205】
〔実施例27〕
実施例26において化合物(1-5)の代わりに化合物(1-10)を用いた以外は同様の操作を行い、感熱転写記録用シート(2)を作製し、画像サンプルを作製した。画像サンプルを温度40℃で10日間放置後、位相差顕微鏡(商品名:BX53、OLYMPUS(株)製)を用いて20倍に拡大して表面状態を観察したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が耐熱性の向上が確認された。また、キセノン試験装置(照度:340nmで0.28W/m2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%)の条件下で、10時間曝露したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が、OD残存率(%)は11%高く、耐光性の向上が確認された。
【0206】
〔実施例28〕
<トナーの製造>
・結着樹脂(ポリエステル) 100部
(Tg:55℃、酸価:20mgKOH/g、水酸基価:16mgKOH/g、分子量:Mp4500、Mn2300、Mw38000)
・化合物A:化合物(1-10) 5部
・化合物B:NIKKOL Decaglyn 1-LF 0.5部
・1,4-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5部
・パラフィンワックス(最大吸熱ピーク温度78℃) 5部
上記の材料を、ヘンシェルミキサー(商品名:FM-75J型、三井鉱山(株)製)を用いてよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機(商品名:PCM-45型、池貝鉄工(株)製)にて60kg/hrのFeed量で混練(吐出時の混練物温度は約150℃)した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗砕した後、機械式粉砕機(商品名:T-250、ターボ工業(株)製)にて20kg/hrのFeed量で微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級することにより、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100部に、ヘンシェルミキサーを用いてシリカ微粒子を2部外添し、トナー(1)を得た。得られたトナー(1)は、重量平均粒径(D4)が約5.6μmであり、粒径3.8μm以下の粒子が33.1個数%、かつ、粒径10.1μm以上の粒子が1.0体積%であった。
【0207】
上記トナーを用い、LBP-5300(キヤノン(株)製)の改造機で、CLCカラーコピー用紙(キヤノン(株)製)上に、載り量0.45mg/cm2の定着画像を作製した。得られた画像に対して耐光性試験を実施したところ、化合物Bが存在しない場合と
比較すると、存在した場合の方が、OD残存率(%)は10%高く、耐光性の向上が確認された。
【0208】
さらに上記トナー1gを10mL樹脂製カップに取り、温度40℃/湿度80%にて7日間放置後、温度10℃/湿度30%にて一か月放置した後の凝集物の有無を調べたところ、凝集物はほとんど観察されず耐熱性が非常に優れていることを確認した。
【0209】
〔実施例29〕
<油性筆記具の製造>
・混合溶媒 100部
(1-フェノキシ-2-プロパノール78部、2-フェノキシエタノール22部)
・ブチラール樹脂エスレックBL-1(積水化学工業(株)社製) 9部
・ポリビニルピロリドン樹脂K-90(日本触媒(株)社製) 1部
上記材料を混合して、70℃に加温して溶解させた後、室温まで冷却した。
【0210】
次いで、
・化合物A:化合物(1-5) 15部
・化合物B:NIKKOL Hexaglyn 1-L 3部
を加え、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散して、筆記具用油性インキ組成物を製造した。
【0211】
上記で得られた筆記具用油性インクを50mLサンプル瓶に20mL加え密閉し、温度60℃条件下で1カ月放置し、位相差顕微鏡(商品名:BX53、OLYMPUS(株)製)を用いて20倍に拡大して表面状態を観察したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が耐熱性の向上が確認された。
【0212】
上記で得られた筆記具用油性インクを、内径1.2mm、長さ140mmのポリプロピレンチューブ製のインキ収容管に充填した。このインキ収容管と燐青銅チップを具備した評価試験用ボールペンを作製し(ボール径0.7mm)、一定圧の筆圧で2cm四方の画像サンプルを作製した。
【0213】
キセノン試験装置(アトラス ウエザオメータCi4000、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、照度:340nmで0.28W/m2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%の条件下で、作製した画像サンプルに対して、5日間曝露試験を行った
ところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が、OD残存率(%)は12%高く、耐光性の向上が確認された。
【0214】
〔実施例30〕
<水性筆記具の製造>
・化合物A:化合物(1-10) 5.0部
・化合物B:EMALEX GWIS-210EX 0.6部
・メタノール 1.0部
・セルロースナノファイバーのレオクリスタI-2AX(第一工業製薬社)0.5部
上記材料を混合した後、イオン交換水99部を加えた。内温80℃に加温し、メタノールを除去しながら2時間撹拌した。室温まで放冷後、ホモジナイザーで5分間分散処理を行い、化合物A及び化合物Bを担持し、それらの化合物によって染色された、セルロースナノファイバーが媒体中に分散した筆記具用水性インク(1)を作製した。
【0215】
上記で得られた筆記具用水性インクを50mLサンプル瓶に20mL加え密閉し、温度60℃条件下で1カ月放置し、位相差顕微鏡(商品名:BX53、OLYMPUS(株)製)を用いて20倍に拡大して表面状態を観察したところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が耐熱性の向上が確認された。
【0216】
上記で得られた筆記具用水性インクを、内径1.2mm、長さ140mmのポリプロピレンチューブ製のインキ収容管に充填した。このインキ収容管と燐青銅チップを具備した評価試験用ボールペンを作製し(ボール径0.7mm)、一定圧の筆圧で2cm四方の画像サンプルを作製した。
【0217】
キセノン試験装置(アトラス ウエザオメータCi4000、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、照度:340nmで0.28W/m2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%の条件下で、作成した画像サンプルに対して5日間曝露試験を行ったところ、化合物Bが存在しない場合と比較すると、存在した場合の方が、OD残存率(%)は9.2%高く、耐光性の向上が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の色材組成物は、プロトン性極性溶媒存在下でも熱安定性かつ耐光性に優れている。該色材組成物を用いることによって、熱安定性かつ耐光性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、トナー、及び筆記具などが得られる。