IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京電設サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-各種ケーブルメタルロック端末処理工法 図1
  • 特許-各種ケーブルメタルロック端末処理工法 図2
  • 特許-各種ケーブルメタルロック端末処理工法 図3
  • 特許-各種ケーブルメタルロック端末処理工法 図4
  • 特許-各種ケーブルメタルロック端末処理工法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】各種ケーブルメタルロック端末処理工法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20241028BHJP
   H02G 15/23 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G15/23
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022194309
(22)【出願日】2022-12-05
(65)【公開番号】P2024080940
(43)【公開日】2024-06-17
【審査請求日】2024-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】三留 豊
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直樹
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247148(JP,A)
【文献】実開昭53-037096(JP,U)
【文献】特公昭46-036028(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 15/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路を有するケーブルの端部に施工される各種ケーブルメタルロック端末処理工法であって、
前記ケーブルの端部において前記ケーブルの被覆を第1所定長において除去して前記被覆に覆われた導体の端部を前記第1所定長において露出させる被覆除去工程と、
前記ケーブルの端部を覆う蓋部材の内部空間に硬化性を有する薬剤を充填する薬剤充填工程と、
前記蓋部材を前記ケーブルの端部に取り付ける蓋部材取付工程と、
前記薬剤を硬化させ前記蓋部材と前記導体の端部との間に隙間無く前記薬剤に基づく充填層を形成する充填層形成工程と、を備える、
各種ケーブルメタルロック端末処理工法。
【請求項2】
前記蓋部材は、露出した前記導体と前記被覆の端部から第2所定長において覆うように形成されており、
前記蓋部材取付工程は、前記ケーブルの端部において前記蓋部材により前記導体を覆う導体遮蔽工程と、
前記被覆を端部から前記第2所定長において覆う被覆遮蔽工程を含む、
請求項1に記載の各種ケーブルメタルロック端末処理工法。
【請求項3】
前記薬剤充填工程は、所定量の前記薬剤を前記内部空間に充填するための薬剤計量工程を含む、
請求項1に記載の各種ケーブルメタルロック端末処理工法。
【請求項4】
前記蓋部材取付工程は、前記導体と前記被覆の端部を覆うと共に、前記蓋部材の端部から前記薬剤を漏出させる薬剤漏出工程を含む、
請求項1に記載の各種ケーブルメタルロック端末処理工法。
【請求項5】
前記導体は金属導体により形成され、
前記薬剤は金属接着性を有し、
前記充填層形成工程は、前記導体と前記薬剤を接着させる導体接着工程を含む、
請求項1に記載の各種ケーブルメタルロック端末処理工法。
【請求項6】
前記薬剤は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能である、
請求項1に記載の各種ケーブルメタルロック端末処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ケーブルメタルロック端末処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油路を有するOF(Oil-Filled)ケーブルでは、絶縁用の油を所定の圧力で内部に注入、充填することで、絶縁性を担保したケーブルである。OFケーブルは、内部に絶縁油を多量に含んでいるため、OFケーブルの設置または撤去の際には、地中等に敷設された長尺のOFケーブルを切断してから移送や保管する必要があり、切断した端部を有するOFケーブルは、内部に存在する絶縁油が端部から外方に絶縁油が漏れ出す場合が多い。このため、OFケーブルは、切断した端部に封止処理を施してから撤去されるのが一般的である。そして、OFケーブルを切断した後の端末処理については、その作業性およびコスト面から、鉛工処理を行っているのが一般的であるが、特許文献1、2に示すような処理方法も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、OFケーブルの端部外面のプラスチックシースを剥ぎ取ってアルミニウムシースを露出させ、はんだによりアルミニウムシース表面の凹凸を埋めた後、先端側の一部のアルミニウムシースも剥ぎ取り、その箇所でケーブルコアとアルミニウムシースとの間をキャップにて封止し、さらに、OFケーブルを一端が開口した鋼管の開口部に挿入して、鋼管の開口部付近とアルミニウムシースとの間にリングスペーサーを設けて接触をとり、はんだ付けして密閉封止する方法について記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、OFケーブルの端部外面のプラスチックシースを剥ぎ取って金属シースを露出させ、その金属シース表面の凹凸に合成樹脂製のテープを巻き、その端部を、一端が開口した金属製の筒状体の開口部から挿入してOFケーブルに筒状体を被せた後、専用の装置を用い、筒状体の側面外周から5~10トンもの圧縮力を印加してOFケーブルと筒状体を圧縮一体化して密閉封止する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-99427号公報
【文献】特開2004-343864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に示すような従来のOFケーブルの鉛工作業を伴う端部処理では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1、2は、施工のためには鉛工の特殊な技能が必要であり、しかも、その作業には多くの時間を要し、また、施工現場で火気を扱う必要があるという問題があった。
また、特許文献2のOFケーブルの端部処理では、圧縮のために専用の装置が必要であり、装置にかかる費用が増大するという問題があった。
さらに、CVケーブルの端末処理の場合には、架橋残渣ガスが発生することから、内圧に耐え、外部からの浸水にも耐えられる端末処理が短時間で行えるものが求められており、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができる各種ケーブルメタルロック端末処理工法を提供することである。
また、本発明の各種ケーブルメタルロック端末処理工法の他の目的は、OFケーブル端末にも、CVケーブル端末にも施工可能なものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る各種ケーブルメタルロック端末処理工法の態様1は、油路を有するケーブルの端部に施工される各種ケーブルメタルロック端末処理工法であって、前記ケーブルの端部において前記ケーブルの被覆を第1所定長において除去して前記被覆に覆われた導体の端部を前記第1所定長において露出させる被覆除去工程と、前記ケーブルの端部を覆う蓋部材の内部空間に硬化性を有する薬剤を充填する薬剤充填工程と、前記蓋部材を前記ケーブルの端部に取り付ける蓋部材取付工程と、前記薬剤を硬化させ前記蓋部材と前記導体の端部との間に隙間無く前記薬剤に基づく充填層を形成する充填層形成工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る各種ケーブルメタルロック端末処理工法によれば、ケーブルの端部の導体に薬剤が充填された蓋部材を取り付けるだけの簡単な作業により、導体と蓋部材との間に薬剤が硬化した充填層を形成することができる。これによりケーブルの端部の油路を封止し、油の漏出を防止したケーブル端末処理を短時間で効率よく行うことができる。
また、本発明によれば、薬剤の硬化による充填層を形成する方法となるので、必要な資機材を最低限にすることができ、薬剤の効果時間を任意に設定することが可能となるので、硬化時間の早い薬剤を採用することで、迅速に作業を行える。
【0010】
また、本発明によれば、従来のように鉛を溶かすためにバーナーを使用する鉛工処理をともなうケーブルの終端処理作業と比較して、鉛を使用しないため、特殊な技術が不要となり、高度な施工技術を有する作業者を確保する必要がなく、作業効率の向上を図ることができ、コストを低減できる。しかも、鉛工処理を行う場合に比べて、火気の取扱いが不要な端末処理を行うことができる。
【0011】
さらに、本発明の各種ケーブルメタルロック端末処理工法によれば、蓋部材がケーブルの端部に硬化した充填層とともに装着されているので、従来のようなケーブルの切断端面に対してテープを巻き付ける処理に比べて、高い靭性を確保できる。すなわち、油路の油からの内圧や外部からの外圧等に耐え得る高靭性で強固な処理構造が得られる。さらにまた、本発明では、薬剤が多少の油があっても蓋部材と導体の端部との間に隙間無く充填されて硬化することになる。
このようなことから、本発明の各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、OFケーブル端末にも、CVケーブル端末施工に適用することができ、それぞれにおいて上述した優れた効果を発揮することができる。
【0012】
(2)本発明の態様2は、態様1の各種ケーブルメタルロック端末処理工法において、前記蓋部材は、露出した前記導体と前記被覆の端部から第2所定長において覆うように形成されており、前記蓋部材取付工程は、前記ケーブルの端部において前記蓋部材により前記導体を覆う導体遮蔽工程と、前記被覆を端部から前記第2所定長において覆う被覆遮蔽工程を含むことが好ましい。
【0013】
この場合には、蓋部材の第2所定長がケーブルにおける導体の被覆が除去されて露出した第1所定長より長くなる。そのため、露出している導体を覆うように蓋部材で覆った状態で、蓋部材とケーブルの端面との間には軸方向の充填領域が形成され、この充填領域に薬剤を十分に充填させて軸方向に所定厚が確保された充填層を形成することができる。
【0014】
(3)本発明の態様3は、態様1の各種ケーブルメタルロック端末処理工法において、前記薬剤充填工程は、所定量の前記薬剤を前記内部空間に充填するための薬剤計量工程を含むことが好ましい。
【0015】
この場合には、計量によって設計された所定量の薬剤を蓋部材の内部空間に充填することができる。そのため、蓋部材をケーブルの端部に取り付けた後に、薬剤が不足して、充填層に隙間が生じて油の漏出防止効果が低下することを抑制できる。また、蓋部材に充填する薬剤が多すぎる場合のように、取り付けた蓋部材から薬剤が多量に流出してしまうことを防止でき、材料のコストが増大することを抑制できる。
【0016】
(4)本発明の態様4は、態様1の各種ケーブルメタルロック端末処理工法において、前記蓋部材取付工程は、前記導体と前記被覆の端部を覆うと共に、前記蓋部材の端部から前記薬剤を漏出させる薬剤漏出工程を含むことを特徴としてもよい。
【0017】
この場合には、導体と被覆との境界部分を覆うように、蓋部材の開口端から内部空間の薬剤を漏出させることで、蓋部材と被覆との境界部分に隙間が生じることを防止し、油の漏出をより確実に防ぐことができる。
【0018】
(5)本発明の態様5は、態様1の各種ケーブルメタルロック端末処理工法において、前記導体は金属導体により形成され、前記薬剤は金属接着性を有し、前記充填層形成工程は、前記導体と前記薬剤を接着させる導体接着工程を含むことを特徴としてもよい。
【0019】
この場合には、薬剤が金属接着性を有することから、導体と蓋部材内に充填された薬剤とをより強固に接着させることができ、導体と充填層との間に油の水みち(隙間)が生じることを防止し、油の漏出をより確実に防ぐことができる。
【0020】
(6)本発明の態様6は、態様1の各種ケーブルメタルロック端末処理工法において、前記薬剤は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であることを特徴としてもよい。
【0021】
この場合には、薬剤は油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であるので、蓋部材内に充填された薬剤が硬化してケーブルの端面をより確実に封止することができる構成であり、OFケーブルの端末だけに限らず、CVケーブルの端末にも本発明の各種ケーブルメタルロック端末処理工法を適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る各種ケーブルメタルロック端末処理工法によれば、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができる。
また、本発明に係る各種ケーブルメタルロック端末処理工法によれば、OFケーブル端末にも、CVケーブル端末にも施工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態によるOFケーブルの処理構造を示す軸方向に沿って切断した断面図である。
図2】OFケーブルの断面図である。
図3図1に示すA-A線断面図である。
図4】(a)~(c)は、OFケーブルの処理工法による作業手順を示す図である。
図5】(a)、(b)は、図4(c)に続く作業手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る各種ケーブルメタルロック端末処理工法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、内部に油が注入された油路15を有するOFケーブル1の端部(ケーブル端部1a)を、後述する金属に対して接着強度の高い接着剤を使用して閉塞処理(この閉塞手段を「メタルロック」と称する)する施工法である。すなわち、本実施形態の各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、OFケーブル1が切断されたケーブル端部1aに蓋部材2を外側から嵌合するように被せて封止し、OFケーブル1の内部に注入されている油が流出するのを防止するための端末処理部をなすケーブル処理構造10が施される方法である。
【0026】
OFケーブル1は、防食層11(被覆)、金属層12、絶縁層13、および芯線14(導体)が外周から中心に向けた順で積層されている。すなわちOFケーブル1は、防食層11によって被覆された遮蔽部材からなる金属層12の内部において絶縁層13を介して芯線14が一体的に設けられている。芯線14は、導体により形成され、金属層12によって遮蔽され、複数のケーブル線が螺旋状かつ筒状に束になって形成されている。芯線14の内側には隙間が形成されている。絶縁層13の内側には、芯線14を含みを油が注入された油路15が形成されている。
【0027】
ここで、本実施形態による各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、恒久的な対策である本補修に先だつ最初期の対応として行う仮補修を適用対象としているが、漏油状態やOFケーブル1の使用年数、設置環境などによっては、本補修として適用される各種ケーブルメタルロック端末処理工法であってもよい。
【0028】
図1および図3に示すように、ケーブル処理構造10は、ケーブル端部1aにおけるOFケーブル1の最外層(防食層11)を剥ぎ取って露出した金属層12及び芯線14の端部12bに被せられた蓋部材2と、蓋部材2の内部空間2Aで金属層12との間に硬化性を有する充填ボンド31(薬剤)が充填されて形成された充填層3と、金属層12の外周面12a(側面)と蓋部材2の側面2aとを上層側を覆うキャスティングテープ4と、キャスティングテープ4の上層側をさらに覆う防食テープ5と、を備えている。
【0029】
図1に示すように蓋部材2は、一端(開口端2b)が開口し、他端が閉口した形状の円形断面の有頂筒体をなし、側面2aを有する筒体21と頂壁22とを備える。筒体21は、OFケーブル1のケーブル端部1aを挿入して収容し、OFケーブル1を切断して開口したケーブル端面1bを閉じるための蓋材(キャップ)としての機能を有している。蓋部材2は、OFケーブル1の金属層12の外径よりも大きい内径を有する。蓋部材2の内径は、OFケーブル1の防食層11の外径と略一致し、金属層12の外径よりも大きく設定されている。すなわち、金属層12の外周面12aと筒体21の内面21aとの間には周方向充填領域S1が形成されている。
【0030】
蓋部材2の内部空間2Aの高さ、すなわち蓋部材2の開口端2bから頂壁22の内面22aまでの軸方向の長さ(第2所定長L2)は、OFケーブル1における金属層12の防食層11が除去されて露出した軸方向の長さ(第1所定長L1)より長く設定されている。つまり、露出している金属層12を覆うように蓋部材2を嵌合させた状態で、ケーブル端面1bと頂壁22の内面22aとの間には軸方向充填領域S2が形成されている。蓋部材2内の周方向充填領域S1および軸方向充填領域S2には、充填ボンド31が充填された充填層3が形成される。
【0031】
蓋部材2の材料としては、OFケーブル1内に注入されている油が、ケーブル端面1bから漏れ出す(吹き出す)際の圧力に耐えるとともに、OFケーブル1の重量などにより破壊されないような強度を有する材料であればよい。例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタンなどの金属、あるいはこれらの合金、または繊維強化プラスチック(FRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの強化プラスチック類などを用いることができる。
【0032】
蓋部材2の形状としては、一端が開口していること以外、とくに限定されることはなく、例えば筒体21が本実施形態のような円筒状の他、楕円筒状、多角筒状(三角筒状、四角筒状等)の形状が挙げられる。OFケーブル1の断面が通常円形を有しているので、OFケーブル1の形状と適合させるとともに、外部からの力が、OFケーブル1の外面に対して特定の箇所にだけ作用するのを抑制し、均一に作用するように構成するため、円筒状とすることが好ましい。
【0033】
充填ボンド31からなる充填層3は、蓋部材2内の周方向充填領域S1および軸方向充填領域S2に充填されることにより形成される。また、本実施形態では、蓋部材2内の充填ボンド31が蓋部材2の開口端2bから漏出した漏出充填部32を形成させている。漏出充填部32は、OFケーブル1の防食層11の切断端部11aを覆った状態となる。
【0034】
充填層3の充填ボンド31としては、硬化性を有し、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能な特性をもち、例えば、変性アクリルを主成分とし、高強度かつ加熱不要な常温速硬化型の接着剤メタルロック(セメダイン社製)におけるY618Hタイプを採用できる。Y618Hタイプの接着ボンドは、同社製のY610タイプに比べて金属に対して更なる接合強度を有する。Y618Hタイプを使用する場合には、充填層3が受ける面圧等に関係なく油止めの機能を発揮できる。また、Y618Hタイプの場合には、引火性のある溶剤を含まず、粗い混合であっても硬化し、温度0℃から硬化可能であり、さらに多少の油面状態であっても接着強度が得られる特性をもつ。また、硬化時間は、3~6分で硬化するものが好ましい。さらに、常温5~25℃で長期保管が可能であり、従来のアクリル接着剤のような悪臭が発せられることもない。また、金属とCFRPなど異種材料の接合にも採用できる。
【0035】
キャスティングテープ4は、蓋部材2の側面2aから防食層11にわたって上層側から覆って包み込むようにして巻き付けられ、OFケーブル1のケーブル端部1aを補強する機能を有している。キャスティングテープ4の大きさ、面積は、漏出充填部32の全体を覆うとともに、蓋部材2の側面2aと防食層11との境界部分を挟んだ両側の所定の範囲を覆うことが可能な適宜な大きさに設定されている。キャスティングテープ4は、OFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上で、かつ軸方向に重なり合うように巻き付けられている。キャスティングテープ4の材料としては、フィット性、追従性の観点から縦横方向および斜め方向の伸縮性に優れた材料が好ましく、また巻き付け作業性、張り替え性の観点から粘着性が小さい材料が好ましく、例えば、ガラス繊維ニットにポリウレタン(PU)樹脂を含有させた材料からなるテープを採用することができる。この場合、ガラス繊維ニットに含浸したポリウレタン樹脂が水と反応することで硬化しやすい特性が得られる。
【0036】
防食テープ5は、キャスティングテープ4の全体を上層側から覆って包み込むようにして巻き付けられ、キャスティングテープ4で補強された部分を防食する機能を有している。防食テープ5の大きさ、面積は、キャスティングテープ4よりも大きくなるように設定されている。防食テープ5は、OFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上で、かつ軸方向に重なり合うように巻き付けられている。防食テープ5の材料としては、耐久性、防食性に優れる材料が好ましく、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等が採用される。また、本実施形態では、キャスティングテープ4の上層側に防食テープ5が向けられることで、巻き付けられたキャスティングテープ4の凹凸を隠すように平滑に仕上げることができる。
【0037】
次に、OFケーブル1の端末における各種ケーブルメタルロック端末処理工法の作業手順について、図4(a)~(c)及び図5(a)、(b)を用いて詳細に説明する。
【0038】
先ず、図1及び図4(a)に示すように、OFケーブル1の端部(ケーブル端部1a)において、防食層11を第1所定長L1において除去して防食層11に覆われた金属層12の端部を第1所定長L1において露出させる(被覆除去工程)。具体的には、OFケーブル1の切断端末(ケーブル端部1a)において、金属層12の外側に被覆された防食層11を、例えばシースカッター等を用いて第1所定長L1だけ剥離し、金属層12の外周面12aを露出させておく。
【0039】
このとき、OFケーブル1は、図2に示すように、金属層12と、金属層12の外周に巻き付けられた防食層11と、金属層12の内部に芯線14とともに油が注入された中空状の油路15と、を備え、OFケーブル1を切断すると、油路15に充填されている油が外に漏れ出してしまう。ここでは、OFケーブル1の各種ケーブルメタルロック端末処理工法では、切断位置のOFケーブル1のケーブル端部1aから油が漏れ出すことを防止するために行う。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、上述した被覆除去工程の完了直前、あるいは完了直後において、OFケーブル1のケーブル端部1aを覆う蓋部材2の内部空間2Aに硬化性を有する充填ボンド31を適宜な量で充填する(薬剤充填工程)。薬剤充填工程では、所定量の充填ボンド31を内部空間2Aに充填するために計量作業が行われる(薬剤計量工程)。
【0041】
ここで、図1に示すように、蓋部材2は、露出した第1所定長L1の金属層12と防食層11の切断端部11aから第2所定長L2で覆うように形成されている。すなわち、蓋部材2の開口端2bから頂壁22の内面22aまでの軸方向の長さ(第2所定長L2)は、第1所定長L1より長くなるように形成し、蓋部材2をケーブル端部1aに取り付けた状態で金属層12の端面(ケーブル端面1b)と頂壁22の内面22aとの間に軸方向充填領域S2が形成されるようになっている。また、蓋部材2の内径は、防食層11の外径と略一致するとともに、露出した金属層12の外径より大きく形成し、蓋部材2をケーブル端部1aに取り付けた状態で金属層12の外周面12aと筒体21の内面21aとの間に周方向充填領域S1が形成されるようになっている。
【0042】
このように形成された蓋部材2の内部空間2Aに薬剤計量工程で所定量に計量された充填ボンド31を充填する。例えば、上記で例示した特殊な充填ボンド31(1液、2液混合型ボンド)を使用し、二液混合させることで化学反応(架橋構造化反応)を生じさせ、蓋部材2の内部空間2Aに高分子体を形成させる。充填ボンド31は金属との接着が強力であるため、蓋部材2およびOFケーブル1の金属層12と良好に接着する。本実施形態で使用する充填ボンド31を用いてOFケーブル1の終端処理を行うことにより、経時にともなって終端処理を行った部分が劣化することを抑制できる。
【0043】
次に、図4(c)に示すように、薬剤充填工程で充填ボンド31が充填された蓋部材2をケーブル端部1aに取り付け(蓋部材取付工程)、充填ボンド31を硬化させ蓋部材2と金属層12の端部との間に隙間無く充填ボンド31に基づく充填層3を形成する(充填層形成工程)。具体的に蓋部材取付工程は、ケーブル端部1aにおいて蓋部材2により露出した金属層12の外周面12a全体を覆う導体遮蔽工程と、防食層11を切断端部11aから前記第2所定長L2において覆う被覆遮蔽工程を含むものである。また、充填層形成工程は、金属層12の外周面12aと充填ボンド31を接着させる導体接着工程を含むものである。
【0044】
充填ボンド31が充填された蓋部材2は、露出した金属層12の外周面12aの全体を覆うようにして外嵌され、装着される。このとき、蓋部材2は、蓋部材2の開口端2bと防食層11の切断端部11aとが軸方向に一致するように設けられる。そして、蓋部材2の装着は、充填ボンド31の硬化時間が例えば3~6分で硬化するものを採用した場合、OFケーブル1を切断後、なるべく早いタイミングで行うことが好ましい。
【0045】
また、蓋部材取付工程において、金属層12と防食層11の切断端部11aとの境界部分を覆うように、蓋部材2の開口端2bから内部空間2Aの充填ボンド31を漏出させる(薬剤漏出工程)。これにより、蓋部材2と防食層11との境界部分に隙間が生じることを防止し、油の漏出をより確実に防ぐことができる。
【0046】
このように蓋部材2内に充填される充填ボンド31は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であるので、蓋部材2内の周方向充填領域S1および軸方向充填領域S2において充填ボンド31が硬化してOFケーブル1のケーブル端面1bを封止することができ、OFケーブル1の油路15内の油の漏れ出しを防止できる。
【0047】
次に、図5(a)に示すように、キャスティングテープ4を蓋部材2の側面2aから防食層11にわたって上層側から覆って包み込むようにして巻き付ける。キャスティングテープ4は、蓋部材2および防食層11に液密に密着し、かつケーブル端部1aを補強する。
【0048】
次に、図5(b)に示すように、防食テープ5をキャスティングテープ4の全体を上層側から覆って包み込むようにして巻き付ける。これにより、防食テープ5の防食性によってキャスティングテープ4で補強された部分が防食される。
【0049】
次に、各種ケーブルメタルロック端末処理工法の作用について、図1図3および図4(a)~(c)に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、油路15を有するOFケーブル1のケーブル端部1aに施工される。各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、ケーブル端部1aにおいてOFケーブル1の防食層11を第1所定長L1において除去して防食層11に覆われた金属層12の端部を第1所定長L1において露出させる被覆除去工程と、ケーブル端部1aを覆う蓋部材2の内部空間2Aに硬化性を有する充填ボンド31を充填する薬剤充填工程と、蓋部材2をケーブル端部1aに取り付ける蓋部材取付工程と、充填ボンド31を硬化させ蓋部材2と金属層12の端部との間に隙間無く充填ボンド31に基づく充填層3を形成する充填層形成工程と、を備える。
【0050】
本実施形態による各種ケーブルメタルロック端末処理工法によれば、OFケーブル1のケーブル端部1aの金属層12に充填ボンド31が充填された蓋部材2を取り付けるだけの簡単な作業により、金属層12と蓋部材2との間に充填ボンド31が硬化した充填層3を形成することができる。これによりケーブル端部1aの油路15を封止し、油の漏出を防止したケーブル端末処理を短時間で効率よく行うことができる。
また、本実施形態によれば、充填ボンド31の硬化による充填層3を形成する方法となるので、必要な資機材を最低限にすることができ、充填ボンド31の効果時間を任意に設定することが可能となるので、硬化時間の早い充填ボンド31を採用することで、迅速に作業を行える。
【0051】
また、本実施形態によれば、従来のように鉛を溶かすためにバーナーを使用する鉛工処理をともなうケーブルの終端処理作業と比較して、鉛を使用しないため、特殊な技術が不要となり、高度な施工技術を有する作業者を確保する必要がなく、作業効率の向上を図ることができ、コストを低減できる。しかも、鉛工処理を行う場合に比べて、火気の取扱いが不要な端末処理を行うことができる。
【0052】
さらに、本実施形態の各種ケーブルメタルロック端末処理工法によれば、蓋部材2がケーブル端部1aに硬化した充填層3とともに装着されているので、従来のようなケーブルの切断端面に対してテープを巻き付ける処理に比べて、高い靭性を確保できる。すなわち、油路15の油からの内圧や外部からの外圧等に耐え得る高靭性で強固な処理構造が得られる。さらにまた、本実施形態では、充填ボンド31が多少の油があっても蓋部材2と金属層12の端部との間に隙間無く充填されて硬化することになる。
このようなことから、本実施形態の各種ケーブルメタルロック端末処理工法は、OFケーブル端末にも、CVケーブル端末施工に適用することができ、それぞれにおいて上述した優れた効果を発揮することができる。
【0053】
なお、管口から出ている残地ケーブル端の長さが短い場合には、従来工法の鉛工処理やテーピング巻きを行うことができずに施工不可となる。このような施工不可の場合、掘削等でケーブル端を露出させるか、あるいはワイヤーを掛けて引っ張る必要がある。これに対して、本実施形態では、短い残地ケーブル端にそのまま蓋部材2を被せて端末処理を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、蓋部材2は、露出した金属層12と防食層11の切断端部11aから第2所定長L2において覆うように形成されており、蓋部材取付工程は、OFケーブル1の端部1aにおいて蓋部材2により金属層12を覆う導体遮蔽工程と、防食層11を切断端部11aから第2所定長L2において覆う被覆遮蔽工程を含む。
そのため、蓋部材2の第2所定長L2がOFケーブル1における金属層12の防食層11が除去されて露出した第1所定長L1より長くなる。そのため、露出している金属層12を覆うように蓋部材2で覆った状態で、蓋部材2とOFケーブル1の端面1bとの間には軸方向充填領域S2が形成され、この充填領域に充填ボンド31を十分に充填させて軸方向に所定厚が確保された充填層3を形成することができる。
【0055】
また、本実施形態では、充填ボンド31充填工程は、所定量の充填ボンド31を内部空間2Aに充填するための薬剤計量工程を含む。
そのため、計量によって設計された所定量の充填ボンド31を蓋部材2の内部空間2Aに充填することができる。そのため、蓋部材2をケーブル端部1aに取り付けた後に、充填ボンド31が不足して、充填層3に隙間が生じて油の漏出防止効果が低下することを抑制できる。また、蓋部材2に充填する充填ボンド31が多すぎる場合のように、取り付けた蓋部材2から充填ボンド31が多量に流出してしまうことを防止でき、材料のコストが増大することを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、蓋部材取付工程は、金属層12と防食層11の切断端部11aを覆うと共に、蓋部材2の端部から充填ボンド31を漏出させる充填ボンド31漏出工程を含む。
そのため、金属層12と防食層11との境界部分を覆うように、蓋部材2の開口端2bから内部空間2Aの充填ボンド31を漏出させることで、蓋部材2と防食層11との境界部分に隙間が生じることを防止し、油の漏出をより確実に防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態では、金属層12は金属導体により形成され、充填ボンド31は金属接着性を有し、充填層形成工程は、金属層12と充填ボンド31を接着させる導体接着工程を含む。
そのため、充填ボンド31が金属接着性を有することから、金属層12と蓋部材2内に充填された充填ボンド31とをより強固に接着させることができ、金属層12と充填層3との間に油の水みち(隙間)が生じることを防止し、油の漏出をより確実に防ぐことができる。
【0058】
また、本実施形態では、充填ボンド31は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能である。
そのため、充填ボンド31が油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であるので、蓋部材2内に充填された充填ボンド31が硬化してOFケーブル1の端面1bをより確実に封止することができる構成であり、OFケーブル1の端末だけに限らず、CVケーブルの端末にも本実施形態の各種ケーブルメタルロック端末処理工法を適用することができる。
【0059】
上述のように構成された本実施形態による各種ケーブルメタルロック端末処理工法では、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができる。また、OFケーブル端末にも、CVケーブル端末にも施工可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0061】
例えば、上記実施形態では、OFケーブル1に適用した各種ケーブルメタルロック端末処理工法を例示しているが、OFケーブル1であることに限定されることはなく、上述したようにCVケーブルの端末処理、あるいは他のケーブルの端末処理にも、本発明の各種ケーブルメタルロック端末処理工法を適用することが可能である。CVケーブルの場合には、導体が内部のケーブルとなり、内部のケーブルを被覆より露出させ、その内部のケーブルに対して薬剤(充填ボンド31)を充填させた蓋部材2を取り付ける方法となる。この場合には、内部のケーブルと蓋部材2との間に薬剤が硬化した充填層3が形成される。
【0062】
また、本実施形態では、蓋部材2を取り付けた後にその上層側からキャスティングテープ4および防食テープ5を巻き付ける施工をしているが、これらキャスティングテープ4および防食テープ5のいずれか一方、あるいは両方を省略することも可能である。
【0063】
また、本実施形態では、蓋部材2の内部空間2Aの軸方向の長さ(第2所定長L2)が金属層12の軸方向の長さ(第1所定長L1)より大きくして、蓋部材2内に軸方向充填領域S2が形成されているが、このような構成であることに限定されることはなく、第2所定長L2と第1所定長L1とが略同じ長さであってもよい。
【0064】
また、薬剤充填工程における薬剤計量工程は、薬剤を計量する必要性がない場合には省略することも可能である。
【0065】
さらに、本実施形態では、蓋部材2の開口端2bから薬剤を漏出させて漏出充填部32を形成する薬剤漏出工程を含む各種ケーブルメタルロック端末処理工法としているが、このような漏出充填部32を設けることに限定されることはなく、漏出充填部32を省略することも可能である。すなわち、蓋部材2に充填される充填ボンド31の充填量を、ケーブル端部1aに蓋部材2を取り付けた状態で充填ボンド31が蓋部材2から漏出しない量に設定しておくようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 OFケーブル
1a ケーブル端部
2 蓋部材
2A 内部空間
2a 側面
3 充填層
4 キャスティングテープ
5 防食テープ
11 防食層(被覆)
11a 切断端部
12 金属層(遮蔽)
12a 外周面
13 絶縁層
14 芯線(導体)
15 油路
21 筒体
21a 内面
22 頂壁
31 充填ボンド(薬剤)
32 漏出充填部
S1 周方向充填領域
S2 軸方向充填領域
図1
図2
図3
図4
図5