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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241028BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241028BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G09F9/00 366G
G09F9/00 313
H04N5/64 511A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022501699
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2021001101
(87)【国際公開番号】W WO2021166506
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2020025898
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 建吾
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181482(WO,A1)
【文献】特開2010-134051(JP,A)
【文献】特開2005-309264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0060649(US,A1)
【文献】国際公開第2019/130988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼光学装置、並びに、
画像形成装置、及び、画像形成装置から入射された画像を接眼光学装置へと出射する転送光学装置を備えた画像表示装置、
を備えており、
接眼光学装置と画像表示装置とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置は、転送光学装置からの画像を観察者の網膜に結像させ、
画像表示装置は、更に、
制御部、
接眼光学装置の位置を検出する第1位置検出装置及び第2位置検出装置、並びに、
転送光学装置・制御装置、
を備えており、
第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、制御部の制御下、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御し、且つ、第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は第1位置検出装置の検出位置補正を行う表示装置。
【請求項2】
第1位置検出装置によって、又は、第2位置検出装置によって、又は、第1位置検出装置及び第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は画像形成装置における画像の形成を制御する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
第1位置検出装置は、
光源、
第1光路合成部、
第2光路合成部、及び、
受光部、
を具備しており、
画像形成装置から入射された画像は、第2光路合成部、転送光学装置、接眼光学装置を経由して、観察者の網膜に結像され、
光源から出射された光は、第1光路合成部、第2光路合成部、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、転送光学装置及び第2光路合成部を経由して第1光路合成部に入射し、光源とは異なる方向に第1光路合成部から出射され、受光部に入射する請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
第1光路合成部から受光部に入射した光の受光部への入射位置が所定の位置からズレた場合、ズレを無くすように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置の位置を制御する請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
光源の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角と、画像形成装置の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角とは異なる請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
光源は、アイセーフ波長帯の赤外線を出射する請求項3に記載の表示装置。
【請求項7】
光源から出射され、第1光路合成部に入射する光は発散光である請求項3に記載の表示装置。
【請求項8】
受光部は、光源と光学的に共役な位置よりも第1光路合成部に近い位置に配置されている請求項3に記載の表示装置。
【請求項9】
受光部は、位置検出素子、多分割フォトダイオード、又は、複数のフォトダイオードから構成されている請求項3に記載の表示装置。
【請求項10】
第1位置検出装置は第2位置検出装置を兼ねている請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
転送光学装置・制御装置は、観察者の網膜に結像される画像の水平方向及び垂直方向に沿った、観察者の網膜への画像投影制御を行う請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
転送光学装置は、2つのガルバノミラーの組合せから構成されている請求項1に記載の光学装置。
【請求項13】
接眼光学装置には、再帰性反射素子が取り付けられている請求項1に記載の光学装置。
【請求項14】
接眼光学装置は、回折光学部材を備えている請求項1に記載の表示装置。
【請求項15】
接眼光学装置は、集光部材及び偏向部材を備えている請求項1に記載の表示装置。
【請求項16】
接眼光学装置と画像表示装置とは相対的に移動可能である請求項1に記載の表示装置。
【請求項17】
接眼光学装置は観察者に装着される請求項1に記載の表示装置。
【請求項18】
接眼光学装置は観察者から離れた所に配置される請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
観察者の頭部に装着する頭部装着型の画像表示装置が、例えば、特開2005-309264号公報から周知である。この特許公開公報に開示された画像表示装置1は、観察者の頭部に装着される頭部装着部6と、観察者の身体に携帯される身体携帯部7とから構成されている。頭部装着部6には、転送光学系5を構成する凸レンズ8と、方位・距離検出系の一部とが設けられている。頭部装着部6には、赤外LEDから構成された発光部R、凸レンズ8を移動させるアクチュエータ27及び駆動回路28が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-309264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許公開公報に開示された技術にあっては、頭部装着部6に備えられた発光部R、アクチュエータ27及び駆動回路28には電源(電池)が必要とされるので、頭部装着部6の質量や大きさの増加等、観察者に負担が強いられる構造である。仮に、発光部R、アクチュエータ27及び駆動回路28を取り除き、頭部装着部6に凸レンズ8のみを搭載することを想定した場合、観察者が動くと、身体携帯部と頭部装着部との位置関係が崩れてしまい、投影された画像が観察者の瞳から外れる結果、画像を観察することが困難になるという問題が発生する。
【0005】
従って、本開示の目的は、観察者に負担を強いることの無い構成、構造を有する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置は、
接眼光学装置、並びに、
画像形成装置、及び、画像形成装置から入射された画像を接眼光学装置へと出射する転送光学装置を備えた画像表示装置、
を備えており、
接眼光学装置と画像表示装置とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置は、転送光学装置からの画像を観察者の網膜に結像させ、
画像表示装置は、更に、
制御部、
接眼光学装置の位置を検出する第1位置検出装置及び第2位置検出装置、並びに、
転送光学装置・制御装置、
を備えている。
【0007】
そして、本開示の第1の態様に係る表示装置にあっては、第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、制御部の制御下、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御し、且つ、第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は第1位置検出装置の検出位置補正を行う。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る表示装置にあっては、第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、制御部の制御下、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御し、且つ、第1位置検出装置によって、又は、第2位置検出装置によって、又は、第1位置検出装置及び第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は画像形成装置における画像の形成を制御する。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の第3の態様に係る表示装置は、
接眼光学装置、並びに、
画像形成装置、及び、画像形成装置から入射された画像を接眼光学装置へと出射する転送光学装置を備えた画像表示装置、
を備えており、
接眼光学装置と画像表示装置とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置は、転送光学装置からの画像を観察者の網膜に結像させ、
画像表示装置は、更に、接眼光学装置の位置を検出する第1位置検出装置を備えており、
第1位置検出装置は、
光源、
第1光路合成部、
第2光路合成部、及び、
受光部、
を具備しており、
画像形成装置から入射された画像は、第2光路合成部、転送光学装置、接眼光学装置を経由して、観察者の網膜に結像され、
光源から出射された光は、第1光路合成部、第2光路合成部、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、転送光学装置及び第2光路合成部を経由して第1光路合成部に入射し、光源とは異なる方向に第1光路合成部から出射され、受光部に入射する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1の表示装置の概念図である。
図2図2は、実施例1の表示装置を構成する接眼光学装置を装着した観察者を正面から眺めた模式図である。
図3図3A図3B及び図3Cは、実施例1の表示装置における画像形成装置の概念図である。
図4図4は、受光部における位置検出光を示す概念図である。
図5図5は、実施例1の表示装置の動作を説明するための表示装置の概念図である。
図6図6は、実施例1の表示装置の動作を説明するための表示装置の概念図である。
図7図7は、実施例1の表示装置の動作を説明するための表示装置の概念図である。
図8図8は、実施例1の表示装置の動作を説明するための表示装置の概念図である。
図9図9は、実施例1の表示装置の動作を説明するための表示装置の概念図である。
図10図10は、受光部における位置検出光を示す概念図である。
図11図11は、受光部における位置検出光を示す概念図である。
図12図12は、受光部における位置検出光を示す概念図である。
図13図13は、受光部における位置検出光を示す概念図である。
図14図14A図14B及び図14Cは、転送光学装置から出射される光束の挙動、接眼光学装置と観察者の瞳との位置関係を模式的に示す図であり、特に、図14Cは、接眼光学装置の中心と観察者の瞳の中心を結ぶ直線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度θ1、及び、画像形成装置の中心から出射された光線が転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達するときの光線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度θ2を説明するための図である。
図15図15A及び図15Bは、転送光学装置から出射される光束の挙動、接眼光学装置と観察者の瞳との位置関係を模式的に示す図であり、接眼光学装置の中心と観察者の瞳の中心を結ぶ直線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度θ1、及び、画像形成装置の中心から出射された光線が転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達するときの光線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度θ2を説明するための図である。
図16図16は、実施例4の表示装置の概念図である。
図17図17A及び図17Bは、実施例4の表示装置を室内で使用している状態、及び、座席の背の背面に画像形成装置を配設した模式図である。
図18図18は、実施例4の表示装置をオートバイに搭載した例を説明するための図である。
図19図19A及び図19Bは、実施例5の表示装置及びその変形例の概念図である。
図20図20A及び図20Bは、実施例6の表示装置の概念図である。
図21図21は、実施例7の表示装置の概念図である。
図22図22A図22B図22C及び図22Dは、実施例8の表示装置において、転送光学装置から出射される光束の挙動、接眼光学装置と観察者の瞳との位置関係を模式的に示す図である。
図23図23Aは、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図であり、図23B及び図23Cは、反射型ブレーズド回折格子、及び、ステップ形状を有する反射型ブレーズド回折格子の模式的な一部断面図(但し、ハッチング線は省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1~実施例3の変形)
6.実施例5(実施例4の変形)
7.実施例6(実施例1~実施例5の変形)
8.実施例7(実施例1~実施例6の変形)
9.実施例8(実施例1~実施例7の変形)
10.その他
【0012】
〈本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置、全般に関する説明〉
以下の説明において、観察者の網膜に結像される画像の水平方向をX方向と呼び、画像の垂直方向をY方向と呼び、画像の奥行き方向をZ方向と呼ぶ場合がある。また、X方向に相当する転送光学装置における方向を『x方向』と呼び、Y方向に相当する転送光学装置における方向を『y方向』と呼び、Z方向に相当する転送光学装置における方向を『z方向』と呼ぶ。更には、画像形成装置から入射された光を、便宜上、『画像形成光』と呼び、画像形成装置の中心から入射された光を、便宜上、『画像形成中心光』と呼び、光源から出射された光を、便宜上、『位置検出光』と呼び、光源の中心から出射された光を、便宜上、『位置検出中心光』と呼ぶ。
【0013】
本開示の第1の態様に係る表示装置にあっては、第1位置検出装置によって、又は、第2位置検出装置によって、又は、第1位置検出装置及び第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は画像形成装置における画像の形成を制御する形態とすることができる。
【0014】
上記の好ましい形態を含む本開示の第1の態様に係る表示装置、あるいは又、本開示の第2の態様に係る表示装置において、
第1位置検出装置は、
光源、
第1光路合成部、
第2光路合成部、及び、
受光部、
を具備しており、
画像形成装置から入射された画像(画像形成光)は、第2光路合成部、転送光学装置、接眼光学装置を経由して、観察者の網膜に結像され、
光源から出射された光(位置検出光)は、第1光路合成部、第2光路合成部、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、転送光学装置及び第2光路合成部を経由して第1光路合成部に入射し、光源とは異なる方向に第1光路合成部から出射され、受光部に入射する形態とすることができる。尚、このような形態の本開示の第1の態様に係る表示装置を、便宜上、『本開示の第1-Aの態様に係る表示装置』と呼ぶ場合があるし、このような形態の本開示の第2の態様に係る表示装置を、便宜上、『本開示の第2-Aの態様に係る表示装置』と呼ぶ場合がある。
【0015】
本開示の第1-Aの態様あるいは第2-Aの態様に係る表示装置において、第1光路合成部から受光部に入射した光(位置検出光)の受光部への入射位置が所定の位置(基準位置)からズレた場合、ズレを無くすように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置の位置を制御する構成とすることができる。
【0016】
このような好ましい構成を含む本開示の第1-Aの態様あるいは第2-Aの態様に係る表示装置、あるいは又、本開示の第3の態様に係る表示装置にあっては、光源の中心から出射された光(位置検出中心光)の転送光学装置からの出射角と、画像形成装置の中心から出射された光(画像形成中心光)の転送光学装置からの出射角とは、異なる構成とすることができる。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の第1-Aの態様あるいは第2-Aの態様に係る表示装置において、あるいは又、上記の好ましい構成を含む本開示の第3の態様に係る表示装置において、光源は、アイセーフ波長帯(例えば、1.55μm前後の波長)の赤外線を出射する構成とすることができる。
【0018】
ところで、受光部に戻る位置検出光の光量が多い程、位置検出分解能を上げることができる。その一方で、接眼光学装置の位置検出のために、平行光に近い光を観察者の目の付近に向けて照射するため、位置検出光の光量は、安全を考慮した上で、上限を決める必要がある。瞳孔や網膜に対する被爆限界は位置検出光の波長に依存しており、アイセーフ波長帯で最も許容光量が大きい。このアイセーフ波長帯の光は、水分子の存在下、減衰する性質があり、網膜に届かないためである。以上の理由により、位置検出光の波長帯をアイセーフ波長帯とすることで、高い安全性と高い位置検出分解能を達成することができる。また、同様の理由で、地表付近の太陽光の強度が弱い波長帯でもあるため、第1位置検出装置は外光の影響を受け難いという利点もある。
【0019】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の第1-Aの態様あるいは第2-Aの態様に係る表示装置において、あるいは又、上記の好ましい構成を含む本開示の第3の態様に係る表示装置において、第1位置検出装置を構成する光源から出射され、第1光路合成部に入射する光(位置検出光)は発散光である構成とすることができる。
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の第1-Aの態様あるいは第2-Aの態様に係る表示装置において、あるいは又、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の第3の態様に係る表示装置において、受光部は、光源と光学的に共役な位置よりも第1光路合成部に近い位置(インフォーカス側)に配置されている構成とすることができる。即ち、受光部から第1光路合成部までの光学的距離(位置検出中心光の光路における媒質の空間的な距離と媒質の屈折率の積の総和であり、受光部と第1光路合成部との間にレンズが配置されている場合にはレンズの焦点距離も考慮する)は、光源から第1光路合成部までの光学的距離(位置検出中心光の光路における媒質の空間的な距離と媒質の屈折率の積の総和であり、光源と第1光路合成部との間にレンズが配置されている場合にはレンズの焦点距離も考慮する)よりも短い。また、位置検出光のビームウエスト位置(スポット径が最小となる位置)よりも受光部を第1光路合成部に近い位置(インフォーカス側)に配置することで、異物耐性の向上を図ることができる。
【0021】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の第1-Aの態様あるいは第2-Aの態様に係る表示装置において、あるいは又、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の第3の態様に係る表示装置において、受光部は、動作原理によって、非分割型と分割型の2つに分けられる。前者は、フォトダイオードの表面抵抗値の変化を応用して位置検出光の位置を検出する位置検出素子である。光量に応じて表面抵抗値が変化する原理を用いて、位置検出光の位置を検出する。後者は、複数(例えば、4つ)にエリア分割されたフォトダイオードの電圧を比較することで位置検出光の位置を検出する。エリア分割ではなく、複数のフォトダイオードから構成することもできる。いずれもアナログ出力のため、理論的には位置検出分解能は無限小となる。以上のとおり、受光部(接眼光学装置の位置を検出する装置あるいは素子)は、位置検出素子(Position Sensitive Detector,PSD)、多分割フォトダイオード、又は、複数のフォトダイオードから構成されている構成とすることができる。
【0022】
第2位置検出装置として、カメラ(撮像装置)や、TOF(Time Of Flight)方式の距離測定装置、インダイレクト(間接)TOF方式の距離測定装置を挙げることができる。また、カメラを用いて、再帰性反射素子(後述する)の大きさや複数の再帰性反射素子間の距離から再帰性反射素子までの距離を測定することができる。カメラは、表示装置の使用開始時、接眼光学装置の位置を特定するための粗調整用としても用いることができる。即ち、表示装置の使用開始時、接眼光学装置の位置をカメラで探し、転送光学装置を粗調整し、受光部が位置検出光を受光し始めたならば、第1位置検出装置によって転送光学装置を微調整すればよい。あるいは又、表示装置の使用開始時、転送光学装置の走査に基づき接眼光学装置の位置を探し、受光部が位置検出光を受光し始めたならば、第1位置検出装置によって転送光学装置を微調整してもよい。
【0023】
場合によっては、第1位置検出装置は第2位置検出装置を兼ねていてもよい。即ち、第1位置検出装置を構成する光源を高周波で強度変調し、接眼光学装置に衝突し反射してくる位置検出光を受光部で受光し、パルス波の位相遅れ時間等からターゲット(接眼光学装置)までの距離を求める。具体的には、位置検出光をメガヘルツ乃至ギガヘルツのオーダーで変調し、受光部が出力する信号を変調帯域相当の高域成分(接眼光学装置までの距離を検出するための帯域)とキロヘルツ以下の低域成分(接眼光学装置の位置を検出するための帯域)に分けて信号処理することで、部品点数や再帰性反射素子(後述する)の数を増やすことなく、接眼光学装置の位置を求めることができる。
【0024】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、第1位置検出装置は第2位置検出装置を兼ねている形態とすることができる。
【0025】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、転送光学装置・制御装置によって、転送光学装置は、観察者の網膜に結像される画像の水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)に沿った、観察者の網膜への画像投影制御を行う形態とすることができる。即ち、転送光学装置は、接眼光学装置に向かう光(画像形成光)をx方向又はy方向に移動させる制御を行う形態とすることができる。
【0026】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、転送光学装置は可動ミラーから成る形態とすることができ、具体的には、例えば、2つのガルバノミラーの組合せから構成されている形態とすることができる。転送光学装置から接眼光学装置に向かう光(画像形成光)をx方向及び/又はy方向に移動させるためには、転送光学装置として、例えば、2方向に可動な可能なミラー、具体的には、2つのガルバノミラーの組合せ以外にも、2軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを含む2軸のジンバルミラーを挙げることができる。
【0027】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、接眼光学装置には、位置表示手段(位置被検出手段)、具体的には、再帰性反射素子が取り付けられている形態とすることができる。再帰性反射素子として、具体的には、再帰性反射シートを含む再帰性反射マーカーやコーナーキューブプリズムを挙げることができる。コーナーキューブプリズムとは、光が反射する性質を持った3枚の平面の板を互いに直角に組み合わせ、立方体の頂点型にした装置である。プリズムの数が1つであるため面内のバラツキが無いことと、反射率を上げ易いため、戻り光の光量を増やし、解像度を上げることができるという利点がある。また、小型のコーナーキューブプリズムが複数並んだコーナーキューブアレイを用いれば、再帰性反射素子の厚さを薄くすることができ、接眼光学装置への取付け自由度が増える。
【0028】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、接眼光学装置はホログラム素子を備えている形態とすることができるし、あるいは又、接眼光学装置は回折光学部材を備えている形態とすることができるし、あるいは又、接眼光学装置は集光部材及び偏向部材を備えている形態とすることができる。接眼光学装置をホログラム素子から構成する場合、ホログラム素子は集光機能を有していてもよい。画像形成装置から入射された画像形成光は、ほぼ平行光の状態で転送光学装置に入射し、転送光学装置から接眼光学装置へと出射されるが、観察者の瞳孔が接眼光学装置の焦点に位置になるように、接眼光学装置は配置されている。
【0029】
接眼光学装置は、位置検出光に対する集光特性に波長依存性を有する構成とすることができる。即ち、位置検出光を構成する赤外線は、接眼光学装置の集光特性の影響を受けない構成、あるいは又、接眼光学装置の集光特性の影響を殆ど受けない構成とすることが好ましい。例えば、接眼光学装置をホログラム素子から構成する場合、位置検出光を構成する赤外線は、ホログラム素子によって集光されないか、あるいは又、集光されても僅かである構成とすることが好ましい。ホログラム素子は、周知の構成、構造とすることができる。
【0030】
接眼光学装置は、限定するものではないが、支持部材に取り付けられ、あるいは又、支持部材に支持部材と一体となって設けられている。透明なプラスチック材料から支持部材を構成する場合、プラスチック材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデンあるいはポリテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、ポリアミドイミドあるいはポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、ポリアリレート、ポリスルフォン等を挙げることができる。ガラスから支持部材を構成する場合、ガラスとして、ソーダライムガラス、白板ガラス等の透明なガラスを挙げることができる。
【0031】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、接眼光学装置と画像表示装置とは相対的に移動可能である形態とすることができる。即ち、画像表示装置は、観察者から離れた所に配置され、あるいは又、観察者の頭部とは離れた観察者の部位に配置されている形態とすることができる。後者の場合、限定するものではないが、例えば、画像表示装置は、観察者の頭部とは離れた観察者の手首等の部位にウエアラブル・デバイスとして装着される。あるいは又、画像表示装置は、パーソナルコンピュータに配置され、あるいは又、パーソナルコンピュータに接続された状態で配置されている。あるいは又、画像表示装置は、後述するように、外部の設備等に配設されている。
【0032】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置において、接眼光学装置は観察者に装着される形態とすることができるし、あるいは又、接眼光学装置は観察者から離れた所に配置される(即ち、接眼光学装置は観察者に装着されていない)形態とすることができる。
【0033】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置(以下、これらを総称して、『本開示の表示装置等』と呼ぶ場合がある)にあっては、接眼光学装置と画像表示装置とは空間的に分離して配置されているが、具体的には、接眼光学装置と画像表示装置とは、相互に分離して配置されており、一体的に接続されていない。
【0034】
本開示の表示装置等にあっては、第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、制御部の制御下、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御するが、画像形成装置から入射された画像の全てが接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御する形態とすることもできるし、画像形成装置から入射された画像の一部が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御する形態とすることもできる。本開示の表示装置等は、マクスウェル視に基づく網膜投影型の表示装置である。
【0035】
光源から出射された光(位置検出光)は、第1光路合成部によって反射され、第2光路合成部に入射する。そして、この場合、第2光路合成部からの光(戻り光)は、第1光路合成部を透過し、受光部に入射する。あるいは又、光源から出射された光(位置検出光)は、第1光路合成部を透過し、第2光路合成部に入射する。そして、この場合、第2光路合成部からの光(戻り光)は、第1光路合成部によって反射され、受光部に入射する。このような機能を有する第1光路合成部として、偏光ビームスプリッターを挙げることができる。偏光ビームスプリッターはP偏光の光は透過し、S偏光の光を反射する。あるいは又、このような機能を有する第1光路合成部として、ハーフミラーを挙げることができる。
【0036】
画形成装置から入射された画像は、第2光路合成部を透過し、転送光学装置に入射する。一方、光源からの光(位置検出光)は、第2光路合成部で反射され、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、第2光路合成部に入射し、第2光路合成部によって反射され、第1光路合成部に入射する。あるいは又、画形成装置から入射された画像は、第2光路合成部で反射され、光源からの光(位置検出光)は、第2光路合成部を透過し、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、第2光路合成部に入射し、第2光路合成部を透過し、第1光路合成部に入射する。このような機能を有する第2光路合成部として、ハーフミラー、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過するダイクロイックミラー、可視光だけを反射させ、赤外光を透過させるコールドミラーを挙げることができる。
【0037】
第1光路合成部及び第2光路合成部と画像形成光及び位置検出光との関係を以下の表1、表2、表3及び表4に纏めた。
【0038】
〈表1〉
波長 第1光路合成部 第2光路合成部
画像形成光 450nm付近 --- 透過
520nm付近 --- 透過
640nm付近 --- 透過
位置検出光 1550nm付近 往路:反射 往路:反射
復路:透過 復路:反射
【0039】
〈表2〉
波長 第1光路合成部 第2光路合成部
画像形成光 450nm付近 --- 透過
520nm付近 --- 透過
640nm付近 --- 透過
位置検出光 1550nm付近 往路:透過 往路:反射
復路:反射 復路:反射
【0040】
〈表3〉
波長 第1光路合成部 第2光路合成部
画像形成光 450nm付近 --- 反射
520nm付近 --- 反射
640nm付近 --- 反射
位置検出光 1550nm付近 往路:反射 往路:透過
復路:透過 復路:透過
【0041】
〈表4〉
波長 第1光路合成部 第2光路合成部
画像形成光 450nm付近 --- 反射
520nm付近 --- 反射
640nm付近 --- 反射
位置検出光 1550nm付近 往路:透過 往路:透過
復路:反射 復路:透過
【0042】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、光源は、前述したとおり、赤外線を出射する形態とすることができるが、これに限定するものではなく、所定の波長を有する可視光を受光する形態とすることもできる。尚、前者(赤外線を出射する形態)の場合、光源は、例えば、赤外線を出射する発光ダイオード、あるいは、赤外線を出射する半導体レーザ素子、赤外線を出射する半導体レーザ素子と光拡散板の組合せから構成することができる。また、受光部は、前述した非分割型あるいは分割型の受光部以外にも、赤外線を検出することができる撮像装置(赤外線カメラ)やセンサ(赤外線センサ)から構成することもできる。撮像装置の前方に、検出に使用する赤外線の波長のみを通過させるフィルタ(赤外線透過フィルタ)を搭載することで、後段の画像処理を簡素化することができる。一方、後者(所定の波長を有する可視光を受光する形態)の場合、受光部は、可視光を検出することができる撮像装置(カメラ)やセンサ(イメージセンサ)から構成することができる。また、後者(所定の波長を有する可視光を受光する形態)の場合、接眼光学装置は、集光特性に波長依存性を有する構成とすることができ、また、接眼光学装置は、レンズ部材から成る構成とすることができるし、ホログラム素子から成る構成とすることもでき、更には、場合によっては、受光部を構成する撮像装置(カメラ)やセンサは、得られた接眼光学装置の画像を画像処理することで、接眼光学装置の位置を特定することができる。再帰性反射素子は不要であるが、例えば、カラーマーカーを接眼光学装置に取り付けることで、画像処理の簡素化を図ることができる。
【0043】
光源から出射された位置検出光を、第1光路合成部に入射させる光を平行光とするために光源に隣接して配置したカップリングレンズを経由して第1光路合成部に入射させる場合、位置検出光が通過する全ての光学素子(第1光路合成部、第2光路合成部及び転送光学装置だけでなく、カップリングレンズも含む)を、接眼光学装置における位置検出光のスポットサイズより大きくする必要がある。具体的には、再帰性反射素子の大きさと、各種動作時のマージンと、想定される観察者の移動範囲内で生じ得る進行軸のズレとを考慮して、カップリングレンズの大きさを設計することが必要となり、表示装置、全体の小型化が困難となる場合がある。光源をカップリングレンズの焦点位置より内側に配置することで、前述したように、光源から出射された光(位置検出光)は発散光となり、表示装置、全体の小型化を実現することができる。また、光学設計において、小型化の観点から本体内の光路長(光源から転送光学装置までの距離)を、できるだけ短くすることが望ましい。
【0044】
本開示の表示装置等には、周知のアイトラッキング装置(アイトラッキングカメラ)が備えられていてもよい。アイトラッキング装置にあっては、例えば、角膜上に光(例えば、近赤外線)の反射点を生じさせ、それをアイトラッキング装置で撮像し、撮像された眼球の画像から、角膜上の光の反射点及び瞳孔を識別し、光の反射点やその他の幾何学的特徴を基に眼球の方向が算出される。また、観察者の瞳径を計測する瞳径計測部を備えていてもよい。瞳径計測部として、周知のアイトラッキング装置(アイトラッキングカメラ)を挙げることができる。具体的には、アイトラッキング装置で記録された目の画像に基づき、アイトラッキング装置から瞳孔までの距離が算出され、撮像された画像の中の瞳孔の直径から瞳孔径を求めることができる。瞳孔径を求めることによって、画像の輝度の制御、瞳孔への画像の入射の最適化を行うことができる。
【0045】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、接眼光学装置の中心と観察者の瞳の中心を結ぶ直線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ1、画像形成装置の中心から出射された光線が転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達するときの光線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ2、接眼光学装置の焦点距離をf0(単位:mm)としたとき、観察者の瞳の径は環境や観察者の状態に強く依存し、2mm乃至7mmと云われているので、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦3.5
好ましくは、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦1
一層好ましくはθ1=θ2を満足するように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置を制御する形態とすることができる。
【0046】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、接眼光学装置は回折格子を備えている形態とすることができる。回折格子は、格子状のパターンにより回折現象を生じさせる光学素子である。回折格子から出射されるk次の回折光(但し、k=0,±1,±2・・・)に基づき、複数の画像が得られる。尚、平行光から構成された画像が回折格子に入射すると、回折格子から出射される画像のそれぞれを構成する光線も平行光となる。
【0047】
接眼光学装置を構成する回折格子として、透過型回折格子若しくは透過型ホログラム回折格子(具体的には、透過型体積ホログラム回折格子)、又は、反射型回折格子若しくは反射型ホログラム回折格子(具体的には、反射型体積ホログラム回折格子)を挙げることができるが、これらに限定するものではない。回折格子を透過型回折格子若しくは透過型ホログラム回折格子から構成する場合、画像を構成する光の入射角ψを一定としたとき、回折格子によって分けられ、回折格子から出射される複数の画像を得るためには、Θの値を、種々、変える必要がある。Θの値を変えるには、式(B)から傾斜角φの値を変えればよいし、また、式(A)から格子面のピッチdの値を変えればよい。云い換えれば、傾斜角φの値及び格子面のピッチdの値を適切に選択することによって、体積ホログラム回折格子から成る回折格子に入射する画像を、回折格子によって分け、回折格子から複数の画像を出射させることができる。
【0048】
あるいは又、回折格子は、周知の構成、構造とすることができ、例えば、反射型ブレーズド回折格子(図23B参照)、ステップ形状を有する反射型ブレーズド回折格子(図23C参照)を例示することができるが、これらの回折格子に限定するものではない。格子パターンは、例えば、直線状の凹凸がマイクロメートルサイズの周期で平行に並んで構成されており、その周期やパターン厚(凹凸の差厚)等は画像形成装置から出射される光の波長域に基づき、適宜、選択される。回折格子は周知の方法で作製することができる。
【0049】
接眼光学装置を構成する回折格子によって少なくとも2つの画像に分けられる形態とすることができる。具体的には、例えば、回折格子によって、水平方向に3つの画像に分ける形態、垂直方向に3つの画像に分ける形態、水平方向に3つの画像、垂直方向に3つの画像に十文字に画像を分ける形態(中心光進路を含む1つの画像は重複するので、合計5つの画像に分ける形態)、水平方向に2つの画像、垂直方向に2つの画像に、画像を2×2=4に分ける形態、水平方向に3つの画像、垂直方向に3つの画像に、画像を3×3=9に分ける形態を例示することができる。
【0050】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、接眼光学装置を、半透過(シースルー)型とすることができ、これによって、接眼光学装置を介して外景を眺めることができる。そして、この場合、接眼光学装置は、ホログラム素子から構成され、あるいは又、ホログラム素子を備えている形態とすることができる。場合によっては、接眼光学装置を非透過型(接眼光学装置を介して外景を眺めることができない形態)とすることもできる。
【0051】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、画像表示装置は観察者よりも前方に配置されている形態とすることができる。尚、画像表示装置は、観察者よりも前方に配置されていれば、転送光学装置や接眼光学装置の仕様に依存するが、観察者の頭部よりも高いところに位置していてもよいし、観察者の頭部と同じレベルに位置していてもよいし、観察者の頭部よりも低いところに位置していてもよいし、観察者に対向して位置していてもよいし、観察者に対して斜めに位置していてもよい。表示装置を非透過型とする場合には、画像表示装置を観察者の正面に配置することもできる。
【0052】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、画像形成装置は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する形態とすることができる。このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第1構成の画像形成装置』と呼ぶ。
【0053】
第1構成の画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ素子等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、有機EL発光素子から構成された画像形成装置(有機EL表示装置)、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置とすることが好ましい。空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させて転送光学装置へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができる。あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。画素の数は、画像形成装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。第1構成の画像形成装置にあっては、レンズ系(後述する)の前方焦点(画像形成装置側の焦点)の位置に絞りが配置されている形態とすることができる。
【0054】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等における画像形成装置は、光源、及び、光源から出射された光を走査して画像を形成する走査手段を備えている形態とすることができる。このような画像形成装置を、便宜上、『第2構成の画像形成装置』と呼ぶ。
【0055】
第2構成の画像形成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。第2構成の画像形成装置における画素(仮想の画素)の数も、画像形成装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。また、カラーの画像表示を行う場合であって、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、二次元方向に回転可能なマイクロミラーを有するMEMSミラーやガルバノミラーを挙げることができる。第2構成の画像形成装置にあっては、レンズ系(後述する)の前方焦点(画像形成装置側の焦点)の位置にMEMSミラーやガルバノミラーが配置されている形態とすることができる。
【0056】
第1構成の画像形成装置あるいは第2構成の画像形成装置において、レンズ系(出射光を平行光とする光学系)にて複数の平行光とされた光を転送光学装置(具体的には、例えば、可動ミラー)に入射させる。平行光を生成させるためには、具体的には、上述したとおり、例えば、レンズ系における焦点距離の所(位置)に画像形成装置の光出射部を位置させればよい。レンズ系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。レンズ系と転送光学装置との間には、レンズ系から不所望の光が出射されて転送光学装置に入射しないように、開口部を有する遮光部をレンズ系の近傍に配置してもよい。
【0057】
本開示の表示装置等において、接眼光学装置は、フレームに取り付けられている形態とすることができる。フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部、及び、ノーズパッド部を備えている。各テンプル部の先端部にはモダン部が取り付けられている。また、フロント部と2つのテンプル部とが一体となった構成とすることもできる。フレーム(リム部を含む)及びノーズパッド部の組立体は、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。ノーズパッド部を含むフレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から構成することができる。あるいは又、接眼光学装置は、ゴーグルやフェイスマスクに取り付けられている形態あるいはゴーグルやフェイスマスクに一体となって形成されている形態とすることもできるし、観察者の頭部に装着可能な防災面に類似した形状を有する面部材(フェイス部材、マスク部材)に取り付けられている形態あるいは面部材に一体となって形成されている形態とすることもできる。
【0058】
観察者に装着される接眼光学装置は非常に簡素な構造であり、駆動部が無いため駆動のための電池等が不要であり、接眼光学装置の小型軽量化を容易に達成することができる。従来のHMDと異なり、画像表示装置は観察者の頭部に装着されていない。画像表示装置は、外部の設備等に配設されており、あるいは又、観察者の手首等にウエアラブル・デバイスとして装着される。画像表示装置が外部の設備等に配設されている例として、
(A)車両や航空機の座席の背(背もたれ)の背面に、乗客向けの画像表示装置が取り付けられている例
(B)劇場等の座席の背(背もたれ)の背面に、観客者向けの画像表示装置が取り付けられている例
(C)車両や航空機、自動車、オートバイ、自転車等に、運転手等向けの画像表示装置が取り付けられている例
(D)観察者に対して一定の距離を維持できるドローン(飛行船タイプを含む)や自走するエージェントロボット(アーム型のロボットを含む)に、画像表示装置が取り付けられている例
(E)パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートウォッチ等において使用されるモニターの代替として使用される例
(F)金融機関における現金自動預け払い機において使用されるディスプレイやタッチパネルの代替として使用される例
(G)店舗や事務所において使用されるディスプレイやタッチパネルの代替として使用される例
(H)携帯電話やパーソナルコンピュータの画面を拡大あるいは拡張して表示する例
(I)美術館や遊園地等において使用される表示プレート等の代替として使用される例
(J)喫茶店やカフェ等のテーブルに顧客向けの画像表示装置が取り付けられている例
(K)フルフェイスのヘルメットや防護用のフェイスマスク等に組み込まれている例
【0059】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等にあっては、画像形成装置において画像を表示するための信号(接眼光学装置において虚像を形成するための信号)を外部(表示装置の系外)から受け取る形態とすることができる。このような形態にあっては、画像形成装置において表示する画像に関する情報やデータは、例えば、所謂クラウドコンピュータやサーバーに記録、保管、保存されており、画像表示装置が通信手段、例えば、電話回線や光回線、携帯電話機、スマートフォンを備えることによって、あるいは又、画像表示装置と通信手段とを組み合わせることによって、クラウドコンピュータやサーバーと画像表示装置との間での各種情報やデータの授受、交換を行うことができるし、各種情報やデータに基づく信号、即ち、画像形成装置において画像を表示するための信号を受け取ることができる。あるいは又、画像形成装置において画像を表示するための信号は画像表示装置に記憶されている形態とすることができる。画像形成装置において表示される画像には、各種情報や各種データが含まれる。ウエアラブル・デバイスとしての画像表示装置はカメラ(撮像装置)を備えている形態とすることもでき、カメラによって撮像された画像を通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーに送出し、クラウドコンピュータやサーバーにおいてカメラによって撮像された画像に該当する各種情報やデータを検索し、検索された各種情報やデータを通信手段を介して画像表示装置に送出し、検索された各種情報やデータを画像形成装置において画像を表示してもよい。
【0060】
以上に説明した種々の形態、構成を含む本開示の表示装置等は、例えば、インターネット上の種々のサイトにおける各種情報等の表示、各種装置等の観察対象物の運転、操作、保守、分解時等における各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;人物や物品等の観察対象物に関する各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;動画や静止画の表示;映画等の字幕の表示;映像に同期した映像に関する説明文やクローズド・キャプションの表示;芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等における観察対象物に関する各種説明、その内容や進行状況、背景等を説明するための説明文等の表示に用いることができるし、クローズド・キャプションの表示に用いることができる。芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した画像としての文字を画像形成装置において表示すればよい。具体的には、例えば、映画等の進行状況に応じて、あるいは又、芝居等の進行状況に応じて、所定のスケジュール、時間配分に基づき、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、画像制御信号が画像形成装置に送出され、画像が画像形成装置にて表示される。また、各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を行うが、カメラによって各種装置、人物や物品等の観察対象物を撮影(撮像)し、画像形成装置において撮影(撮像)内容を解析することで、予め作成しておいた各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を画像形成装置にて行うことができる。
【実施例1】
【0061】
実施例1は、本開示の第1の態様~第3の態様に係る表示装置に関する。実施例1の表示装置の概念図を図1に示し、実施例1の表示装置を構成する接眼光学装置を装着した観察者を正面から眺めた模式図を図2に示す。
【0062】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8における表示装置は、本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置に則って表現すれば、
接眼光学装置40A、並びに、
画像形成装置20、及び、画像形成装置20から入射された画像を接眼光学装置40Aへと出射する転送光学装置30を備えた画像表示装置10、
を備えており、
接眼光学装置40Aと画像表示装置10とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置40Aは、転送光学装置30からの画像を観察者70の網膜に結像させ、
画像表示装置10は、更に、
制御部11、
接眼光学装置40Aの位置を検出する第1位置検出装置50及び第2位置検出装置60、並びに、
転送光学装置・制御装置31、
を備えている。
【0063】
あるいは又、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8における表示装置は、本開示の第3の態様に係る表示装置に則って表現すれば、
接眼光学装置40A、並びに、
画像形成装置20、及び、画像形成装置20から入射された画像を接眼光学装置40Aへと出射する転送光学装置30を備えた画像表示装置10、
を備えており、
接眼光学装置40Aと画像表示装置10とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置40Aは、転送光学装置30からの画像を観察者70の網膜に結像させ、
画像表示装置10は、更に、接眼光学装置40Aの位置を検出する第1位置検出装置50を備えており、
第1位置検出装置50は、
光源51、
第1光路合成部52、
第2光路合成部53、及び、
受光部54、
を具備している。
【0064】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8における表示装置は、本開示の第3の態様に係る表示装置に則って表現すれば、あるいは又、本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置の好ましい形態に則って表現すれば、
画像形成装置20から入射された画像(画像形成光)は、第2光路合成部53、転送光学装置30、接眼光学装置40Aを経由して、観察者70の網膜に結像され、
光源51から出射された光(位置検出光)は、第1光路合成部52、第2光路合成部53、転送光学装置30を経由して接眼光学装置40Aに到達し、接眼光学装置40Aによって転送光学装置30へと戻され、転送光学装置30及び第2光路合成部53を経由して第1光路合成部52に入射し、光源51とは異なる方向に第1光路合成部52から出射され、受光部54に入射する。
【0065】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の表示装置は、本開示の第1の態様に係る表示装置に則って表現すれば、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置31は、制御部11の制御下、画像形成装置20から入射された画像が接眼光学装置40Aに到達するように転送光学装置30を制御し、且つ、第2位置検出装置60によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、制御部11は第1位置検出装置50の検出位置補正を行う。
【0066】
また、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の表示装置は、本開示の第2の態様に係る表示装置に則って表現すれば、あるいは又、本開示の第1の態様に係る表示装置の好ましい形態に則って表現すれば、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置31は、制御部11の制御下、画像形成装置20から入射された画像が接眼光学装置40Aに到達するように転送光学装置30を制御し、且つ、第1位置検出装置50によって、又は、第2位置検出装置60によって、又は、第1位置検出装置50及び第2位置検出装置60によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、制御部11は画像形成装置20における画像の形成を制御する。
【0067】
光源51から出射された光は、第1光路合成部52によって反射され、第2光路合成部53に入射する。一方、第2光路合成部53からの光(戻り光)は、第1光路合成部52を透過し、受光部54に入射する。
【0068】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の表示装置において、光源51は、画像と干渉しないアイセーフ波長帯(例えば、1.55μm前後の波長)の赤外線を出射する。具体的には、光源51は、赤外線を出射する半導体レーザ素子から成る。また、光源51から出射され、第1光路合成部52に入射する光は、発散光である。光源51と第1光路合成部52との間にカップリングレンズ55が配置されている。光源51はカップリングレンズ55の焦点位置より内側に配置されている。これによって、光源51から出射された光は発散光となり、表示装置、全体の小型化を実現することができる。また、第1光路合成部52をビームスプリッターから構成することができるし、第2光路合成部53をダイクロイックミラーから構成することができる。光源51から出射された赤外線(位置検出光)は、画像と干渉しない。
【0069】
受光部54は、限定するものではないが、複数のフォトダイオードから構成されており、複数のフォトダイオード(具体的には、4つのダイオード54A,54B,54C,54D)の電圧を比較することで位置検出光の位置を検出する。受光部54と第1光路合成部52との間にはレンズ部材56が配置されている。そして、受光部54は、光源51と光学的に共役な位置よりも第1光路合成部52に近い位置(インフォーカス側)に配置されている。即ち、受光部54は、位置検出光のビームウエスト位置(スポット径が最小となる位置)よりも第1光路合成部側に配置されている。そして、これによって、異物耐性の向上を図ることができる。
【0070】
第2位置検出装置60は、カメラや、TOF方式の距離測定装置、あるいは、インダイレクト(間接)TOF方式の距離測定装置から構成されている。TOF方式の距離測定装置にあっては、パルス状の光を接眼光学装置40Aに照射し、この光が接眼光学装置40Aとの間を往復するときの時間遅れを検出する。また、インダイレクト(間接)TOF方式の距離測定装置にあっては、パルス状の光を接眼光学装置40Aに照射し、この光が接眼光学装置40Aとの間を往復するときの時間遅れを位相差として検出する。
【0071】
インダイレクト(間接)TOF方式では、受光強度の変化を必ずしも直接電気信号に変換する必要はなく、センサ上で同期検波する(位相ずれ量を電荷量として検出する)ことができる。より具体的には、距離測定装置に設けられた制御回路の制御下、距離測定装置は、第1期間TP1及び第2期間TP2において、距離測定装置の光源から出射された光に基づき接眼光学装置40Aを撮像して、第1期間TP1にあっては、距離測定装置の受光装置において得られた第1画像信号電荷を第1電荷蓄積部に蓄積し、第2期間TP2にあっては、距離測定装置の受光装置において得られた第2画像信号電荷を第2電荷蓄積部に蓄積する。そして、制御回路は、第1電荷蓄積部に蓄積された第1画像信号電荷と、第2電荷蓄積部に蓄積された第2画像信号電荷とに基づき、距離測定装置から接眼光学装置40Aまでの距離を求める。ここで、第1画像信号電荷をQ1、第2画像信号電荷をQ2、cを光速、TPを第1期間TP1及び第2期間TP2の時間(パルス幅)としたとき、距離測定装置から接眼光学装置40Aまでの距離Dは、
D=(c・TP/2)×Q2/(Q1+Q2
に基づき求めることができる。
【0072】
転送光学装置30は可動ミラーから成る。転送光学装置30は、転送光学装置30の動きを制御する転送光学装置・制御装置31に取り付けられており、転送光学装置・制御装置31は制御部11によって制御される。転送光学装置30は、転送光学装置30に入射した光(画像形成光及び位置検出光)をx方向に移動させるガルバノミラーとy方向に移動させるガルバノミラーの2つのガルバノミラーの組合せから構成されている。但し、これに限定するものでない。
【0073】
実施例1において、接眼光学装置40Aは、周知のホログラム素子を備えている。また、実施例1の表示装置において、接眼光学装置40Aには、位置表示手段41(位置被検出手段)、具体的には、再帰性反射素子、より具体的には、限定するものではないが、再帰性反射マーカーが固定されている。再帰性反射マーカーは、入射光と反射光が同じ方向になるように作製された光反射部品であり、この特性を利用することで、原理的には、観察者70が動いても必ず転送光学装置30に戻り光が戻ってくる。その結果、転送光学装置30と再帰性反射マーカーとの相対位置関係に依らず、再帰性反射マーカーの位置を検出することができる。再帰性反射マーカーは、フレーム140に対して迷彩色であることが望ましい。尚、位置表示手段41に波長選択性を付与すれば、具体的には、位置表示手段41を、位置検出光を反射し、その他の光を透過する構成、構造とすれば、位置表示手段41を、接眼光学装置40Aを構成するホログラム素子に取り付け、あるいは又、ホログラム素子に形成してもよい。
【0074】
接眼光学装置40Aは観察者70に装着される形態とすることができる。具体的には、接眼光学装置40Aは、観察者70の頭部に装着されるフレーム140(例えば、眼鏡型のフレーム140)に取り付けられている。より具体的には、接眼光学装置40Aはフロント部141に備えられたリムに嵌め込まれている。フレーム140は、観察者70の正面に配置されるフロント部141と、フロント部141の両端に蝶番142を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部143と、各テンプル部143の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)144から成る。また、ノーズパッド部140’が取り付けられている。フレーム140及びノーズパッド部140’の組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。
【0075】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の画像表示装置にあっては、或る瞬間に表示装置から出射された光(例えば、1画素分あるいは1副画素分の大きさに相当する)は観察者70の瞳71(具体的には、水晶体)に到達し、水晶体を通過した光は、最終的に、観察者70の網膜において結像する。
【0076】
図3Aに示すように、画像形成装置20(以下、図3Aに示す画像形成装置を画像形成装置20aと呼ぶ)は、第1構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、画像形成装置20aは、反射型空間光変調装置、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源21aから構成されている。各画像形成装置20aの全体は、筐体24(図3Aでは、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体24には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系21d(平行光出射光学系、コリメート光学系)から光が出射される。反射型空間光変調装置は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)21cから成る。更には、光源21aからの光の一部を反射して液晶表示装置21cへと導き、且つ、液晶表示装置21cによって反射された光の一部を通過させて光学系21dへと導く偏光ビームスプリッター21bが備えられている。液晶表示装置21cは、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、21d0×480個)の画素(液晶セル、液晶表示素子)を備えている。偏光ビームスプリッター21bは、周知の構成、構造を有する。光源21aから出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター21bに衝突する。偏光ビームスプリッター21bにおいて、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター21bにおいて反射され、液晶表示装置21cに入射し、液晶表示装置21cの内部で反射され、液晶表示装置21cら出射される。ここで、液晶表示装置21cら出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置21cら出射され、偏光ビームスプリッター21bに衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター21bを通過し、光学系21dへと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター21bにおいて反射され、光源21aに戻される。光学系21dは、例えば凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系21dにおける焦点距離の所(位置)に画像形成装置20a(より具体的には、液晶表示装置21c)が配置されている。画像形成装置20aから出射された画像は、転送光学装置30及び接眼光学装置40Aを介して観察者70の網膜に到達する。
【0077】
あるいは又、図3Bに示すように、画像形成装置20(以下、図3Bに示す画像形成装置を画像形成装置20bと呼ぶ)は、有機EL表示装置22aから構成されている。有機EL表示装置22aから出射され画像は、凸レンズ22bを通過し、平行光となって、転送光学装置30及び接眼光学装置40Aを介して観察者70の網膜に到達する。有機EL表示装置22aは、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(有機EL素子)を備えている。
【0078】
あるいは又、図3Cに示すように、第2構成の画像形成装置である画像形成装置20(以下、図3Cに示す画像形成装置を画像形成装置20cと呼ぶ)は、
光源23a、
光源23aから出射された光を平行光とするコリメート光学系23b、
コリメート光学系23bから出射された平行光を走査する走査手段23d、及び、
走査手段23dによって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系23e、
から構成されている。尚、画像形成装置20c全体が筐体24(図3Cでは、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体24には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系23eから光が出射される。光源23aは、発光素子、具体的には、発光ダイオードや半導体レーザ素子から構成されている。そして、光源23aから出射された光は、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系23bに入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー23cで反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段23dによって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素(画素数は、例えば、画像形成装置20aと同じとすることができる)が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系(平行光出射光学系)23eを通過し、画像形成装置20cから出射された画像は、転送光学装置30及び接眼光学装置40Aを介して観察者70の網膜に到達する。光源23aを赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から構成すれば、観察者70はカラー画像を検出することが可能となるし、光源23aを1種類の発光素子から構成すれば、観察者70は単色の画像を検出することが可能となる。
【0079】
以上のとおり、画像形成装置20で生成された画像は、平行光(あるいは又、ほぼ平行光)の状態で転送光学装置(具体的には、可動ミラー)30に入射し、転送光学装置30によって反射された後、接眼光学装置40Aに向かう光束とされる。接眼光学装置40Aは、観察者70の瞳孔が接眼光学装置40Aの焦点(焦点距離f0)の位置に位置する配置されており、投射された光束が接眼光学装置40Aで集光され、観察者70の瞳孔を通過することで網膜に直接描画され、観察者70は画像を認識することができる。
【0080】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の表示装置において、転送光学装置・制御装置31によって、転送光学装置30は、観察者70の網膜に結像される画像の水平方向(X方向)及び/又は垂直方向(Y方向)に沿った、観察者70の網膜への画像投影制御を行う。即ち、転送光学装置30は、接眼光学装置40Aに向かう光をx方向及び/又はy方向に移動させる制御を行う。そして、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置31は、制御部11の制御下、画像形成装置20から入射された画像が接眼光学装置40Aに到達するように転送光学装置30を制御するが、画像形成装置20から入射された画像の全てが接眼光学装置40Aに到達するように転送光学装置30を制御する形態とすることもできるし、画像形成装置20から入射された画像の一部が接眼光学装置40Aに到達するように転送光学装置30を制御する形態とすることもできる。実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の表示装置は、マクスウェル視に基づく網膜投影型の表示装置である。
【0081】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8の表示装置において、第1光路合成部52から受光部54に入射した光(戻り光)の受光部54への入射位置が所定の位置(基準位置)からズレた場合、ズレを無くすように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30の位置を制御するが、これについては後に詳しく説明する。
【0082】
また、実施例1の表示装置にあっては、光源51の中心から出射された光(位置検出中心光)の転送光学装置30からの出射角と、画像形成装置20の中心から出射された光(画像形成中心光)の転送光学装置30からの出射角とは、図5に示すようにθ0(度)だけ異なる。θ0の値は、表示装置に求められる仕様等に基づき決定すればよい。実際には、出射角はxyz空間において立体的に(3次元的に)異なる。図1においては、光源51の中心から出射された光(位置検出中心光)の転送光学装置30からの出射角と、画像形成装置20の中心から出射された光(画像形成中心光)の転送光学装置30からの出射角とは、同じ角度のように図示しているが、実際には、画像形成装置20、第2光路合成部53、転送光学装置30及び第2位置検出装置60が載置された第1ユニットと、光源51、第1光路合成部52、第2光路合成部53及び受光部54が載置された第2ユニットとは、例えば、光源51からの位置検出中心光が、第1光路合成部52には45度で入射するが、第2光路合成部53には45度以外の角度で入射するように配置されている。尚、第1光路合成部52と第2光路合成部53の相対的な配置角度を適切なものとすることでも、角度θ0(度)だけ、異ならせることができる。尚、この場合、必要に応じて、受光部54の位置の最適化を図ればよい。また、光源51の中心から出射された光(位置検出中心光)と画像形成装置20の中心から出射された光(画像形成中心光)とは、必ずしも、図5に示すように転送光学装置30において交わる必要はなく、表示装置に求められる仕様等に基づき決定すればよく、例えば、第2光路合成部53において交わっていてもよい。
【0083】
あるいは又、角度θ0は、以下の点を留意して決定することが望ましい。即ち、画像形成中心光が接眼光学装置40Aの中心を通るように転送光学装置を制御したとき、想定する観察者の移動範囲において、
[1]位置検出光のスポット中に位置表示手段41が常に納まること。
[2]戻り光を含む位置検出光が転送光学装置30に常に入射・出射し、受光部54を含む全ての光学部品の有効エリアからはみ出さないこと。
尚、[1][2]については、位置表示手段が静止している状態だけでなく、動的な状態(位置表示手段が動いてから次のフィードバックがかかるまでの時間に動く量)の余裕も考慮して設計する必要がある。
【0084】
片眼で画像を観察する場合には1つの表示装置を用いればよい。また、両眼で画像を観察する場合には2つの表示装置を用いればよいし、以下の構成を有する1つの表示装置を用いてもよい。即ち、2つの接眼光学装置40A、並びに、1つの画像形成装置、及び、1つの画像形成装置から入射された画像を分岐させて2つの接眼光学装置40Aへと出射する2つの転送光学装置30を備えた画像表示装置を備えている構造としてもよいし、あるいは又、2つの接眼光学装置40A、並びに、1つの画像形成装置、及び、1つの画像形成装置から入射された画像が入射され、2つの画像に分割して2つの接眼光学装置40Aへと出射する1つの転送光学装置30を備えた画像表示装置を備えている構造としてもよい。
【0085】
実施例1の表示装置にあっては、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置31は、制御部11の制御下、画像形成装置20から入射された画像が接眼光学装置40Aに到達するように転送光学装置30を制御する。具体的には、第1光路合成部52からの光(位置検出光)が受光部54の所定の位置(基準位置)に入射していた状態から、接眼光学装置40Aに位置変化が生じると(具体的には、例えば、観察者70が動いたとき)、第1光路合成部52からの光(位置検出光)が受光部54に入射する位置に変化が生じる。x方向に相当する受光部54における方向を『ζ方向』と呼び、y方向に相当する受光部54における方向を『η方向』と呼ぶ。すると、x方向への接眼光学装置40Aの位置変化は、第1光路合成部52からの光(位置検出光)が受光部54に入射する位置のζ方向への変化である。また、y方向への接眼光学装置40Aの位置変化は、第1光路合成部52からの光(位置検出光)が受光部54に入射する位置のη方向への変化である。
【0086】
それ故、上述したとおり、第1光路合成部52からの光(位置検出光)が受光部54の所定の位置に入射するように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30の位置を制御し、転送光学装置30からの画像形成光を観察者70の瞳71に確実に入射させる。第1光路合成部52から受光部54に入射した光の受光部54への入射位置が所定の位置からズレた場合、この「ズレ」は、受光部54において、エラー信号(ズレ量に応じて電圧が変化する信号)として検出される。即ち、第1光路合成部52からの光(位置検出光の戻り光)が受光部54の所定の位置(基準位置)に入射していた状態における信号の電圧値をV0、第1光路合成部52から受光部54に入射した光(戻り光)の受光部54への入射位置が所定の位置(基準位置)からズレた状態における信号の電圧値をV1としたとき、V1がV0となるように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30の位置を制御する。尚、電圧値がV0となるときの受光部54への位置検出光スポットを、図4において、実線「A」の円で示し、電圧値がV1となるときの受光部54への位置検出光スポットを、図4において、点線「B」の円で示す。そして、概念的には、円「B」が円「A」に重なるように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30の位置を制御する。
【0087】
受光部54は、前述したとおり、4つのフォトダイオード54A,54B,54C,54Dが「田の字」型に並べられた構造(2×2に配列された構造)を有する。そして、それぞれのフォトダイオード54A,54B,54C,54Dが受光した光量に依存して出力電圧(正確には出力は電流であるが、後段にI-V変換素子を配置し、電圧に変換して扱うのが一般的であるため、この部分の説明は省略する)が変化する。各フォトダイオード54A,54B,54C,54Dから出力される4つの電圧信号を、制御部11に設けられたオペアンプの演算回路を通してエラー信号に変換する。各フォトダイオード54A,54B,54C,54Dからの出力信号をVA,VB,VC,VDとすると、ζ方向(x方向に対応する)とη方向(y方向に対応する)のエラー信号は下記のように計算することができる。
ζError=(VA+VC)-(VB+VD
ηError=(VA+VB)-(VC+VD
【0088】
尚、光量が変化するとエラー信号の大きさが変わってしまうため、各方向のエラー信号を和信号(=VA+VB+VC+VD)で規格化した信号を実際の制御信号として用いる場合が多いが、ここでは、説明は省略する。
【0089】
エラー信号と転送光学装置30と接眼光学装置40Aの位置との関係を図4を用いて説明する。前述したとおり、ζErrorの値が「0」になるように転送光学装置30を制御すれば、画像形成中心光が例えば接眼光学装置40Aの中心に入射するように、画像形成中心光が転送光学装置30から出射される。即ち、概念的には、図4の点線「B」で示す位置検出光スポットの重心が、実線「A」で示す円の中心に重なるように、転送光学装置30を制御することで、画像形成中心光を例えば接眼光学装置40Aの中心に入射させることができる。逆に、ζErrorの値が「0」ではないu或る値VX_offsetを有するように設定すれば、位置検出中心光が受光部54の中心からズレて入射する状態が正常な状態であるといった系(状態)を作り出すことができる。即ち、図4の点線「B」で示す位置に位置検出光スポットが位置する場合、画像形成中心光が接眼光学装置40Aの中心に入射している状態と規定することもできる。
【0090】
実際とは異なるが、説明を簡素化するため、接眼光学装置40A、画像形成装置20、転送光学装置30、第1位置検出装置50、第2位置検出装置60及び観察者70の瞳71は、xz平面に位置しており、画像形成中心光及び位置検出中心光は、xz平面内を進行するとして、以下、説明を行う。y≡0であるので、各種(x,y,z)座標におけるy座標の値は省略し、(x,z)座標で表す。また、受光部54における位置検出中心光の位置の座標を(ζ,η)で表すが、ζ座標はx座標に対応し,η座標はy座標に対応する。受光部54は、2次元の座標を取り扱うので、位置検出中心光の位置の座標は(ζ,η)となる。y≡0としたので、η≡0である。
【0091】
図5に概念図を示すように、画像形成中心光が入射する転送光学装置30の座標(x,z)を(0,0)とする。また、観察者70の瞳71の位置の座標を(0,z1)、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の座標を(x1,z1’)とする。但し、以下の説明の簡素化のため、z1=z1’とする。このとき、受光部54における位置検出中心光の位置の座標(ζ,η)を(0,0)とする。このときの受光部54における位置検出光スポットの位置を、図10の実線「C」で表す。この状態を初期状態とする。
【0092】
図6に概念図を示すように、観察者70が初期状態(図5参照)からx方向と平行に移動し(即ち、z座標(=z1)を保持したまま移動し)、観察者70の瞳71の位置の座標が(x2,z1)になったと仮定する。これに伴い、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の座標は(x2+x1,z1)になる。このとき、受光部54における位置検出中心光の位置の座標は(0,0)から(ζ1,0)へと変化する。このときの受光部54における位置検出光スポットの位置を、図10の一点鎖線「D」で表す。そして、受光部54における位置検出中心光の位置の座標が(ζ1,0)から(0,0)となるように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30の位置を制御する。
【0093】
次に、図7に示すように、観察者70の瞳71がx座標(=0)を保持したまま、転送光学装置30から離れるz方向にz2へと移動したと仮定する。観察者70の瞳71の座標は(0,z2)である。このとき、位置表示手段41の座標は(x1,z2)となる。また、このときの受光部54における位置検出中心光の位置の座標を(ζ2,0)とする。図7からも明らかなように、観察者70の瞳71はx座標(=0)を保持したままなので、本来、転送光学装置30から出射される画像形成中心光を変化させる必要はない。しかしながら、受光部54における位置検出中心光の位置の座標は(0,0)から(ζ2,0)へと変化してしまう。従って、このような観察者70のz方向への移動によって生じる受光部54における位置検出中心光の位置の変化に従い、転送光学装置30から出射される画像形成中心光を変化させたのでは、画像形成光が観察者70の瞳71に届かなくなる。ζ2の値は、接眼光学装置40Aの位置(距離)の関数で表すことができる。尚、以下の式(C)におけるkは、受光部54のz方向の位置(座標)に依存した値である。それ故、例えば、k,x1,z1の値の関係をテーブル化しておけば、第2位置検出装置60によってz2の値を求めることで、ζ2の値を得ることができる。
【0094】
ζ2=k(1/z1-1/z2)x1 (C)
【0095】
ここで、第2位置検出装置60によって、転送光学装置30から接眼光学装置40Aの位置表示手段41までの距離が求められるので、転送光学装置30を基準とした、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の位置(z2)が求められる。それ故、式(C)に従い、位置検出中心光の位置の座標(ζ2,0)を求めることができる。このときの受光部54における位置検出光スポットの位置を、図11の点線「E」で表す。このように、受光部54における位置検出中心光の位置の座標(ζ2,0)が恰も座標(0,0)となるようにエラー信号に所定のオフセット量を加えることで、観察者70のz方向への移動に伴う位置表示手段41の座標の原点[所定の位置(基準位置)]をリセットすることができる。このときの受光部54における位置検出光スポットの位置を、図12の点線「E」で表す。また、表示装置の概念図を図8に示す。画像形成装置20の中心から出射された光(画像形成中心光)の転送光学装置30からの出射角とは、図7に示すようにθ0(度)だけ異なる。前述したとおり、θ0の値は、表示装置に求められる仕様等に基づき決定された値であり、固定の値である。ここで、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の位置がz2となったときの転送光学装置30と位置表示手段41とを結ぶ直線(図7では点線で示され、図8では実線で示される)と、転送光学装置30と観察者70の瞳71とを結ぶ直線(図7及び図8ではz軸で示される)との成す角度をθ0’とする。この場合、転送光学装置30から位置表示手段41に向かって、角度θ0から角度θ0’を減じた角度([θ0-θ0’]であり、便宜上、『角度オフセット値』と呼ぶ)で位置検出光が出射されるように、転送光学装置30を制御すればよい。ここで、角度オフセット値は、前述した、受光部54における位置検出中心光の位置の座標(ζ2,0)が恰も座標(0,0)となるようにエラー信号に加えるオフセット量に対応する。尚、x方向への移動量が大きく、受光部54における位置検出光スポットの位置が受光部54の検出有効エリアからはみ出しそうになった場合には、エラー信号に所定の位置補正オフセット量を加えて、位置表示手段41の座標の原点[所定の位置(基準位置)]を変えればよい。
【0096】
以上のとおり、受光部54における位置検出光スポットの位置の座標は、接眼光学装置40A(観察者70)のz方向の位置を反映していない。このような問題は、転送光学装置30から出射される画像形成光の出射角と位置検出光の出射角が一致していないことに起因する。図5に示した例では、転送光学装置30から出射される画像形成光の出射角は0度であり、転送光学装置30から出射される位置検出光の出射角はθ0(度)である。転送光学装置30からの画像形成光の出射点と、転送光学装置30からの位置検出光の出射点とを離して、転送光学装置30から出射される画像形成光の出射角と位置検出光の出射角を一致させれば、上記の問題を回避することができるが、これらの出射点の間の距離が長すぎて、表示装置が大型化してしまうといった問題が生じる。あるいは又、観察者70の瞳71に入射する光線上に位置表示手段41を配置すれば、あるいは又、位置表示手段41の重心が光線上に来るように配置すれば、上記の問題を回避することができるが、このような構造は、実際に採用することは極めて困難である。
【0097】
それ故、第2位置検出装置60によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、制御部11は、第1位置検出装置50の検出位置補正を行う。具体的には、接眼光学装置40Aまでの位置(距離)の変化量と、受光部54におけるζ方向、η方向の位置検出中心光の位置の変化量との関係を、予め、求めておき、接眼光学装置40Aの位置(距離)を第2位置検出装置60によって検出し、検出結果に基づき、第1位置検出装置50の検出位置補正(具体的には、受光部54における位置検出光の検出位置の補正)を行う。この補正をリアルタイムで、常時、行うことで、観察者70が表示装置に対して前後(z方向)に動いても違和感の無い映像体験を実現することができる。
【0098】
次に、図9に概念図を示すように、観察者70が初期状態から移動し、観察者70の瞳71の位置の座標が(0,z1)から(x2,z2)になったとする。これに伴い、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の座標は(x1,z1)から(x2+x1,z2)になる。また、受光部54における位置検出中心光の位置の座標は(0,0)から(ζ3,0)へと変化する。即ち、第2位置検出装置60によって求められた、転送光学装置30から接眼光学装置40Aの位置表示手段41までの距離が変化する。このときの受光部54における位置検出光スポットの位置を、図13の二点鎖線「F」で表す。このような場合、制御部11は、先ず、図7図8図11図12を参照して説明した処理を行い、次いで、図6図10を参照して説明した処理を行えばよい。
【0099】
このように、受光部54における位置検出光スポットの位置変化を解析することで、転送光学装置30から眺めたときの、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の方向が判明する。また、以上のとおり、転送光学装置30を基準とした、接眼光学装置40Aの位置表示手段41の位置を求めることができる。即ち、上記の(x2,z2)を求めることができる。
【0100】
そして、観察者70のz方向への移動に伴う位置表示手段41の座標の原点[所定の位置(基準位置)]がリセットされ、図12の点線「E」で示す円が基準となったので、図13の二点鎖線「F」で示す位置検出光スポットの重心が点線「E」で示す円の中心に重なるように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30の位置を制御すればよい。
【0101】
以下、転送光学装置30の制御を説明する。
【0102】
[ステップ-A]
先ず、接眼光学装置40Aの位置情報(x,y,z)を入手する。具体的には、接眼光学装置40Aの位置情報(x,y)を第1位置検出装置50によって入手し(前述した例では、基準となる(x1,z1)からの変化量)、接眼光学装置40Aまでの位置情報(距離情報であり、前述した例では、(x2 2+z2 21/2の値)を第2位置検出装置60によって入手する。
【0103】
[ステップ-B]
制御部11においては、これらの情報に基づき、画像の発散・収束処理や、画像の伸縮処理やシフト処理を含む各種の画像処理を行う。また、制御部11においては、これらの情報に基づき、エラー信号に加えるべきオフセット量を決定する(前述した例では(ζ2,0)の値の決定)。こうして、位置検出光の受光部54への入射位置が所定の位置(基準位置)を決定することができる。尚、これらの処理は、どちらを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0104】
[ステップ-C]
そして、受光部54から電圧信号を取得し、エラー信号(ζError,ηError)を演算し、エラー信号に基づき、位置検出光の受光部54への入射位置が所定の位置(基準位置)となっているかを調べ、入射位置が所定の位置(基準位置)となっていれば、転送光学装置30をそのままとし、入射位置が所定の位置(基準位置)となっていなければ、所定の位置(基準位置)となるように転送光学装置30を移動させる。
【0105】
以上、観察者がxz平面に相当する平面を移動する場合について説明したが、観察者がyz平面に相当する平面を移動する場合、観察者がxyz空間に相当する空間を移動する場合についても、同様とすることができる。
【0106】
また、表示装置の設計上の接眼光学装置40Aの位置と、受光部54における位置検出光の設計上の検出位置との間にズレが生じる場合がある。このようなズレは、例えば、表示装置の製造時に発生する。従って、このようなズレを無くすために、受光部54からの信号にズレ補償信号を加えてもよい。
【0107】
また、転送光学装置30と接眼光学装置40Aとの相対的な位置関係によっては、画像形成装置20からの画像が観察者70によって観察される位置にズレが生じたり(即ち、観察者は画像が観察できているが、その位置にずれが生じた場合)、画像に歪みが生じる場合があり、このような場合、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、制御部11は画像形成装置20における画像の形成を制御すればよい。具体的には、接眼光学装置40Aの位置情報に基づき、画像形成装置20において形成される画像の位置補正を行うことが好ましい。更には、第2位置検出装置60によって検出された転送光学装置30から接眼光学装置40Aまでの距離等に依存して、観察者70の網膜に結像される画像の大きさに変化が生じたり、画像にピントズレが生じたり、画像に発散・収束が生じたり、画像に歪みや収差が生じるといった問題が発生する虞がある。このような場合、第2位置検出装置60によって検出された転送光学装置30から接眼光学装置40Aまでの位置(距離)情報に基づき、制御部11は画像形成装置20における画像の形成を制御することで、このような問題の発生を回避することができる。また、画像形成装置からの画像の出射位置を制御することで、画像をシフトさせ、観察者70の網膜に結像する画像の位置の微調整を行うこともできる。即ち、具体的には、画像形成装置における画像形成領域を、表示すべき画像よりも大きくしておき、画像形成領域において画像を形成する位置を制御することで、具体的には、x方向に相当する方向への画像の移動、又は、y方向に相当する方向への画像の移動、又は、x方向及びy方向に相当する方向への画像の移動によって、画像形成装置から出射される画像をシフトさせることができる。
【0108】
実施例1にあっては、観察者の接眼光学装置の装着負担を軽減するために、画像形成装置、転送光学装置、第1位置検出装置、第2位置検出装置は画像表示装置側に配置されている。即ち、実施例1の表示装置にあっては、画像表示装置と接眼光学装置とは空間的に分離して配置されており、転送光学装置を制御するので、接眼光学装置の質量や大きさの増加等、観察者に負担が強いられる構造では無く、観察者に負担を強いること無く、画像を観察者の瞳に確実に到達させることができる。
【0109】
次に、転送光学装置30の位置制御について説明する。
【0110】
転送光学装置30から出射される光束の挙動、接眼光学装置40Aと観察者70の瞳71との位置関係を、図14A図14B図14C図15A及び図15Bに模式的に示す。図14Aは、接眼光学装置40Aと観察者70の瞳71との位置関係が正常な状態にある場合を示す。図14Bは、接眼光学装置40Aに対する観察者70の瞳71のズレ量がd0となった場合を示す。図14Cは、図14Bに示す状態において、転送光学装置30の傾きが制御され、転送光学装置30から出射された画像が観察者70の網膜に結像する状態を示す。図14A等において、「O」は転送光学装置30の回転中心を示し、画像形成装置20の中心から出射された光線は転送光学装置30の回転中心「O」に衝突する。また、図14A図14B図14C図15A及び図15Bにおいて、画像形成装置20の中心から出射された光線を細い実線で示し、画像の外縁に相当する光線を細い破線で示す。
【0111】
先ず、接眼光学装置40Aの中心位置と観察者70の瞳71の中心位置の相対的なズレに対して、接眼光学装置40Aが十分に大きい理想的な状態について説明する。この場合、接眼光学装置40Aの中心と観察者70の瞳71の中心を結ぶ直線L1と、接眼光学装置40Aの中心を通る法線LNLとの成す角度をθ1(投射角θ1)、画像形成装置20の中心から出射された光線が転送光学装置30を経由して接眼光学装置40Aに到達するときの光線L2と、接眼光学装置40Aの中心を通る法線LNLとの成す角度をθ2、接眼光学装置40Aの焦点距離をf0(単位:mm)としたとき、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦3.5
好ましくは、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦1
一層好ましくはθ1=θ2を満足するように、転送光学装置・制御装置31は転送光学装置30を制御すればよい。具体的には、転送光学装置30の傾きを制御すればよい。尚、以下においては、簡素化のため、θ1=θ2を満足するように転送光学装置・制御装置31によって転送光学装置30を制御する例に基づき、説明を行う。
【0112】
角度θ2は、図14Cに示すように、式(1)から求めることができる。
【0113】
θ1=θ2=tan-1(d0/f0) (1)
【0114】
ここで、
0・・・画像の相対的な位置ズレ量(接眼光学装置に対する観察者の瞳のズレ量)
である。
【0115】
一方、実際の表示装置を想定した場合、接眼光学装置40Aの大きさは有限である。それ故、式(1)を満たすように転送光学装置30を制御すると、画像形成装置20から出射された画像が接眼光学装置40Aに到達しなくなり、画像が観察者70の瞳71に到達しない状態が生じ得る。そのため、接眼光学装置40Aが空間的に存在する範囲の内で式(1)を満たすという条件を追加する必要がある。ここで、観察者70にとって画像が観察できなくなる状態には2つの前提が想定される。
【0116】
即ち、第1の前提は、画像の一部が欠ける状態となってはならないとする前提である。観察者70が観察する画像に欠けが生じることを許容しない場合の条件は、図15Aに示すように、以下の式(2)のとおりとなる。そして、式(2)を変形すると、式(3)のとおりとなる。図15Aに示す状態は、転送光学装置30から出射される画像の外側の外縁が接眼光学装置40Aの外縁に達した状態を示しており、これ以上、図15Aの上方に転送光学装置30から出射される画像が移動すると、画像の一部が欠ける状態が生じることを示している。
【0117】
|L0・tan(θ2)|≦(w0-i0)/2 (2)
|L0・(d0/f0)| ≦(w0-i0)/2 (3)
【0118】
ここで、
0・・・投射距離
0・・・接眼光学装置の大きさ
0・・・投影される画像の一辺の長さ(大きさ)
である。
【0119】
式(3)の範囲内にあれば、式(1)(前述の理想的な条件)を満たすように転送光学装置30を制御すればよい。また、この範囲から外れる場合には、接眼光学装置40Aの外縁より内側に光束が投射されるように転送光学装置30の制御を行う必要がある。以上を纏めると、式(4-1),(4-2)のとおりとなる。
【0120】
|L0・(d0/f0)|≦(w0-i0)/2の場合
θ2=tan-1(d0/f0) (4-1)
|L0・(d0/f0)|>(w0-i0)/2の場合
θ2=tan-1{(w0-i0)/2L0) (4-2)
【0121】
また、第2の前提は、画像の一部が欠ける状態となってもよいとする前提である。観察者70が観察する画像に欠けが生じることを許容する場合の条件は、以下の式(5)のとおりとなる。そして、式(5)を変形すると、式(6)のとおりとなる。尚、図15Bに示す状態は、転送光学装置30から出射される画像の内側の外縁が接眼光学装置40Aの外縁に達した状態を示しており、これ以上、図15Aの上方に転送光学装置30から出射される画像が移動すると、画像の全てが欠ける状態が生じることを示している。
【0122】
|L0・tan(θ2)|≦(w0+i0)/2 (5)
|L0・(d0/f0)| ≦(w0+i0)/2 (6)
【0123】
この範囲から外れる場合、接眼光学装置40Aの外縁に光束が一部でもかかるように転送光学装置30の制御を行えばよい。以上を纏めると、式(7-1)、式(7-2)のとおりとなる。尚、θlimitは、θ2(あるいは、投射角θ1)の取り得る最大値である。そして、θlimitの取り得る範囲は、
tan-1{(w0-i0)/2L0)<θlimit<tan-1{(w0+i0)/2L0
である。
【0124】
θ1≦θlimitの場合
θ2=tan-1(d0/f0) (7-1)
θ1>θlimitの場合
θ2=θlimit (7-2)
【0125】
どの程度まで画像の欠けを許容するかによってθ2(あるいは、投射角θ1)の最大値θlimitを決定すればよく、また、画像の内容(コンテンツ)によってもθ2(あるいは、投射角θ1)の最大値θlimitは変わってくる。例えば、背景が黒である画像の場合、投影される画像の一辺の長さ(大きさ)i0を小さめに設定することが好ましい。
【0126】
式(4-1)、式(4-2)、式(7-1)、式(7-2)で示した内容は、θ2(あるいは、投射角θ1)に制限を設けて投射する必要があることを示している。従って、観察者70の瞳71の位置がずれてズレ量d0の値が大きくなっていくと、いずれ、観察者70は画像を観察できなくなってしまう。画像が観察できなくなる条件は、観察者70の瞳孔の大きさも考慮する必要があり、従って、環境(明るさ等)によっても変化する。しかしながら、本開示を適用することは、観察者70が画像を観察することができる位置関係に関するロバスト性を向上させることと等価であり、より気軽に画像を観察するためには非常に有用である。
【実施例2】
【0127】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例1においては、第1位置検出装置50と第2位置検出装置60を別々の部品とした。一方、実施例2にあっては、第1位置検出装置は第2位置検出装置を兼ねている。即ち、第1位置検出装置50を構成する光源51を高周波で強度変調し、接眼光学装置40Aに衝突し反射してくる位置検出光を受光部54で受光し、パルス波の位相遅れ時間等から接眼光学装置40Aまでの距離を求める。具体的には、位置検出光をメガヘルツ乃至ギガヘルツのオーダーで変調する。そして、実施例1と同様にして、光源51から出射された光(位置検出光)は、第1光路合成部52、第2光路合成部53、転送光学装置30を経由して接眼光学装置40Aに到達し、接眼光学装置40Aによって転送光学装置30へと戻され、転送光学装置30及び第2光路合成部53を経由して第1光路合成部52に入射し、光源51とは異なる方向に第1光路合成部52から出射され、受光部54に入射する。そして、受光部54が出力する信号を変調帯域相当の高域成分(接眼光学装置までの距離を検出するための帯域)とキロヘルツ以下の低域成分(接眼光学装置の位置を検出するための帯域)に分けて信号処理する。即ち、受光部54が出力する高域成分に基づき、TOF方式あるいはインダイレクト(間接)TOF方式に基づき接眼光学装置40Aまでの距離を検出する。また、ローパスフィルタ処理されたキロヘルツ以下の低域成分によって、接眼光学装置40Aの位置を検出する。
【0128】
このように、第1位置検出装置が第2位置検出装置を兼ねていることで、部品点数や再帰性反射素子の数を増やすことなく、接眼光学装置の位置を求めることができる。場合によっては、受光部における位置検出光の大きさ(スポットサイズ)に基づき、接眼光学装置までの距離を求めてもよい。
【0129】
以上の点を除き、実施例2の表示装置の構成、構造は,実施例1において説明した表示装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0130】
実施例3も実施例1の変形である。実施例3にあっては、第2位置検出装置60をカメラから構成する。そして、位置表示手段41の大きさや複数の位置表示手段41の間の距離から位置表示手段41までの距離を測定する。カメラは、表示装置の使用開始時、接眼光学装置40Bの位置(観察者70の位置)を特定するための粗調整用としても用いることができる。即ち、表示装置の使用開始時、接眼光学装置40Bの位置(観察者70)をカメラで探し、転送光学装置30を粗調整し、受光部54が位置検出光を受光し始めたならば、第1位置検出装置50によって転送光学装置30を微調整すればよい。
【実施例4】
【0131】
実施例4は、実施例1~実施例3の変形例である。画像と背景との重畳が要求される場合、画像表示装置10は観察者70の正面には位置しないことが望ましい。常に観察者の視界に画像表示装置が入り込む場合、観察者70は画像や外景に没入できなくなる虞がある。図16に概念図を示すように、実施例4の表示装置において、画像表示装置等(図示を省略)は、観察者70の正面以外の位置に配置されている。その結果、観察者の視界に画像表示装置等が入り込まない状態で、観察者70は画像及び外景を観察することができる。即ち、表示装置を半透過(シースルー)型とすることができ、接眼光学装置40Bを介して外景を眺めることができる。しかしながら、画像表示装置(具体的には、転送光学装置)を観察者70の正面以外の位置に配置すると、投射光が接眼光学装置40Bに斜めに入射する結果、接眼光学装置40Bの焦点位置が観察者70の瞳71からずれるため、観察者70の瞳71に画像が到達しなくなる虞がある。
【0132】
このような問題に対処するために、接眼光学装置40Bは回折光学部材を備えている。回折光学部材は、回折機能を有する回折手段42、及び、集光機能を有する集光手段43から成る。回折手段42は、例えば、透過型体積ホログラム回折格子から構成すればよいし、集光手段43は、例えば、ホログラム素子から構成すればよい。あるいは又、回折手段42及び集光手段43を1つの部材から構成することもできる。また、回折手段42と集光手段43の配置の順序は、観察者側に集光手段43を配置してもよいし、観察者側に回折手段42を配置してもよい。転送光学装置(可動ミラー)から出射された画像形成光は、回折手段42によって偏向され、進行する角度(方向)を変えられ、集光手段43に入射し、集光手段43によって集光され、観察者70の網膜に結像する。集光機能の波長選択性としては、画像形成装置から出射される画像形成光の波長のみに作用することが求められる。集光機能の波長選択性が弱まり、画像形成装置から出射される光の波長以外の光(例えば、外景の光)を接眼光学装置40Bが集光すると、観察者70は外景が観察し難くなる。
【0133】
接眼光学装置として一般的な光学ガラスから作製されたレンズ部材を用いる場合、波長選択性が無く、全ての可視光が集光され、観察者70の網膜に到達するため、観察者は投影された画像しか観察することができず、外景を観察することはできない。
【0134】
実施例4の表示装置の一使用例を図17Aに示すが、図17Aは、実施例4の表示装置を室内で使用している状態の模式図である。部屋80の壁面81に画像表示装置10が配設されている。観察者70が部屋80の所定の位置に立つと、画像表示装置10からの画像が、接眼光学装置40Bに到達し、観察者70は接眼光学装置40Bを介してこの画像を観察することができる。
【0135】
あるいは又、実施例4の表示装置の別の一使用例を図17Bに示すが、実施例4の表示装置を構成する画像表示装置10を座席82の背(背もたれ)の背面に配設して使用している状態の模式図である。観察者が後ろ側の座席82に着席すると、前側の座席82の背の背面に配設された画像表示装置10から、観察者が装着した接眼光学装置40Bに向けて、画像が出射され、接眼光学装置40Bに到達し、観察者70は接眼光学装置40Bを介してこの画像を観察することができる。より具体的には、車両や航空機の座席の背(背もたれ)の背面に、乗客向けの画像形成装置が取り付けられている例や、劇場等の座席の背(背もたれ)の背面に、観客者向けの画像形成装置が取り付けられている例を挙げることができる。尚、以上に説明した表示装置の使用例は、他の実施例においても適用することができる。
【0136】
図18に図示するように、オートバイのハンドル部分に画像表示装置を取り付け、オートバイの操縦者が装着するフルフェイスのヘルメットの部分に接眼光学装置40Bを取り付けてもよい。尚、図18において、画像形成光及び位置検出光を矢印で示した。オートバイのハンドル部分は、場合によっては100ヘルツ以上の高い周波数で振動することが知られている。そのため、数10FPS乃至数100FPSの撮像装置から第1位置検出装置を構成した場合、画像表示装置に伝わる振動に起因して第1位置検出装置による接眼光学装置の位置情報の検出が追従できず、画像から細かい揺れを取り切ることができなくなり、映像酔いの原因になる。例えば第2位置検出装置60としてTOF方式あるいはインダイレクトTOF方式の距離測定装置を採用し、例えば複数のフォトダイオード54A,54B,54C,54Dを備えた受光部54から構成された第1位置検出装置50を用いることで、10キロヘルツ乃至100キロヘルツのオーダーの画像表示装置の動きにも対応することが可能となり、オートバイ等の移動体への組込みに更なる効果を発揮する。実施例4の表示装置の更なる適用例として、画像表示装置が自動車に組み込まれ、接眼光学装置が自動車用のフロントガラスに組み込まれた例や、接眼光学装置が防護用のフェイスマスク等に組み込まれた例を挙げることができる。
【実施例5】
【0137】
実施例5は、実施例4の変形である。概念図を図19Aに示すように、実施例5の表示装置にあっては、接眼光学装置40Cと画像表示装置10とは相対的に移動可能であり(即ち、画像表示装置10は、観察者70から離れた所に配置され)、しかも、接眼光学装置40Cは観察者70から離れた所に配置される。即ち、接眼光学装置40Cは観察者70に装着されていない。接眼光学装置40Cは、据え置き型であり、保持部材44によって保持されており、あるいは又、保持部材44と一体に保持部材44に組み込まれている。持ち運び時には保持部材44及び接眼光学装置40Cを折り畳んで収納し、表示装置の使用時に、接眼光学装置40Cを組み立てる。転送光学装置30と接眼光学装置40Cとは、組立時に位置調整を行えばよく、使用中、原則として、位置関係は変わらない。画像形成装置20から出射された画像は、接眼光学装置40Cを介して観察者70の瞳71に到達する。このような実施例5の表示装置として、網膜投射型ミニモニタを挙げることができる。接眼光学装置40Cは、実施例4において説明した接眼光学装置40Bと同様の構成、構造を有する。
【0138】
あるいは又、概念図を図19Bに示すように、据え置きの接眼光学装置40Cは、博物館や美術館、展望台、水族館等のガラス窓45や展示窓に組み込まれている、この場合にも、転送光学装置30と接眼光学装置40Cの位置が変化することはなく、画像形成装置20から出射された画像は、接眼光学装置40Cを介して観察者70の瞳71に到達する。尚、図19A及び図19Bにおいては、図16と同様に、画像表示装置等の図示を省略している。
【実施例6】
【0139】
実施例6は、実施例1~実施例5の変形である。
【0140】
前述した式(4-1)、式(4-2)、式(7-1)、式(7-2)は、接眼光学装置における投射光の位置を表している。ここで、画像の相対的な位置ズレ量(接眼光学装置に対する観察者の瞳のズレ量)d0の値を一定としたとき、接眼光学装置40Dの焦点距離f0を大きくするほど、θ2(あるいは、投射角θ1)の値を小さくすることができる。云い換えれば、接眼光学装置40Dの焦点距離f0を大きくするほど、大きなズレ量d0に対応することが可能となる。従って、理想的な条件を崩さずに制御可能なズレ量d0の値を大きくすることができる。
【0141】
図20A及び図20Bに接眼光学装置40Dの概念図を示すように、実施例6の表示装置において、接眼光学装置40Dは、転送光学装置30からの画像が入射される集光部材46A,46B、及び、集光部材46A,46Bから出射された光を観察者70の瞳71に導く偏向部材47A,47Bを備えている。転送光学装置30からの画像は、集光部材46A,46Bにおいて、偏向部材47A,47Bに向かう方向に伝播・伝搬方向を変えられる。集光部材46A,46B及び偏向部材47A,47Bは、限定するものではないが、支持部材48に取り付けられ、あるいは又、支持部材48に支持部材48と一体となって設けられている。このように、集光部材46A,46B及び偏向部材47A,47Bを組み合わせ、光路を折り返すことで、焦点距離f0の伸長を図っている。尚、図20Aに示すように、集光部材46Aは反射型のホログラム素子から成り、偏向部材47Aは反射型体積ホログラム回折格子から成り、あるいは又、図20Bに示すように、集光部材46Bは透過型のホログラムレンズから成り、偏向部材47Bは透過型体積ホログラム回折格子から成る。但し、集光部材及び偏向部材はこれらに限定するものではない。また、集光部材からの光を、支持部材内で、1回以上、全反射させ、偏向部材に入射させてもよい。
【実施例7】
【0142】
実施例7は、実施例1~実施例6の変形である。概念図を図21に示すように、実施例7の表示装置において、接眼光学装置40Eは、回折格子49Bを備えており、更に、光入射側に集光部材49Aを備えている。尚、回折格子49Bと観察者70の瞳71との間に集光部材49Aを備えていてもよい。そして、これによって、接眼光学装置40Eの焦点が複数存在するのと等価の構造が得られる。即ち、仮に、例えば実施例1において説明した転送光学装置30から出射された画像が、種々の理由により、観察者70の瞳71に到達しなくなった場合でも、回折格子49Bの0次の回折光ではなく、例えば、1次の回折光、-1次の回折光等が観察者70の瞳71に到達することで、観察者70にとって一層ロバスト性の高い系を実現することができる。即ち、観察者70への負担を減らしながらも、一層ロバスト性の高い表示装置を実現することができる。また、焦点を複数点用意することができるので、θ2(あるいは、投射角θ1)の値が大きな場合であっても、観察者70が画像を観察することができる範囲を拡大することができる。
【0143】
回折格子49Bによって、水平方向に3つの画像に分ける形態、垂直方向に3つの画像に分ける形態、水平方向に3つの画像、垂直方向に3つの画像に十文字に画像を分ける形態(中心光進路を含む1つの画像は重複するので、合計5つの画像に分ける形態)、水平方向に2つの画像、垂直方向に2つの画像に、画像を2×2=4に分ける形態、水平方向に3つの画像、垂直方向に3つの画像に、画像を3×3=9に分ける形態を例示することができる。
【実施例8】
【0144】
実施例8は、実施例1~実施例7の変形である。実施例8の表示装置にあっては、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Fの位置情報、及び、第2位置検出装置60によって検出された観察者70の瞳71の位置情報に基づき、画像形成装置20において形成される画像の位置補正が行われる。
【0145】
実施例8にあっては、画像形成装置において、画像形成領域全体よりも小さな領域において画像を形成する。例えば、画像形成領域全体の領域を1×1としたとき、画像を形成する領域を(p×q)とする。但し、0<p<1,0<q<1である。
【0146】
図22A図22B図22C及び図22Dに概念図を示すように、画像形成領域全体の領域(1×1)に基づき画像を形成する場合の画像の外縁を二点鎖線で示し、領域(1×1)に基づき画像を形成する場合の画像の中心からの光を一点鎖線で示し、画像を形成する領域(p×q)に基づき画像を形成する場合の画像の外縁を破線で示す。図示した例では、p=q=0.5であり、画像形成領域全体の領域(1×1)に基づき形成される画像の一辺の長さ(大きさ)をi0としたとき、領域(p×q)に基づき形成される画像の一辺の長さ(大きさ)はi0/2である。
【0147】
図22Aに示した状態から、観察者70の瞳71が、図22Bに示すように、図面の上方に移動したとする。図22Aに示した状態における観察者70が観察する画像を模式的に矢印「A」で示し、図22Bに示した状態における観察者70が観察する画像を模式的に矢印「B」で示す。観察者70が観察する画像は、矢印「A」の状態から矢印「B」の状態へと網膜の下方に移動してしまう。このように、接眼光学装置40Fと観察者70の瞳71との相対的な位置の変化によって、図22A及び図22Bに示すように、観察者70が観察する網膜上の画像に移動が生じる。そして、このような場合、図22Cに示し、実施例1~実施例7において説明したように、第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報、及び、第2位置検出装置によって検出された観察者70の瞳71の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように、即ち、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置を介して観察者70の網膜に結像するように、転送光学装置を制御する。図22Cに示した状態における観察者70が観察する画像を模式的に矢印「C」で示すが、観察者70が観察する画像は、矢印「A」の状態から矢印「C」の状態へと網膜の下方に移動したままである。
【0148】
それ故、第1位置検出装置50によって検出された接眼光学装置40Fの位置情報、及び、第2位置検出装置60によって検出された観察者70の瞳71の位置情報に基づき、画像形成装置20において形成される画像の位置補正が行われる。具体的には、図22Dに示すように、領域(p×q)に基づき形成される画像を観察者70が観察したときに網膜上の画像に移動が生じないように、あるいは又、網膜上における画像の移動が出来るだけ少なくなるように、画像形成装置20において領域(p×q)を適切な位置に移動させ、画像を形成する。例えば、画像形成装置20の中央領域において画像を形成していた場合(図22A図22B及び図22C参照)、図22Dに示すように、画像形成装置20の上方の領域において画像が形成されるように(転送光学装置から出射される画像は、転送光学装置の下部から出射されるように)、画像形成装置20における画像の形成位置の補正を行う。図22Dに示した状態における観察者70が観察する画像を模式的に矢印「D」で示す。即ち、接眼光学装置40Fと観察者70の瞳71の相対的な位置ズレを打ち消す方向に、画像形成装置20における画像形成位置をずらす。これによって、一層確実に観察者70が観察する網膜上の画像に移動が生じることを出来る限り抑制することができるし、観察者の視野に対する画像の表示位置を出来る限り固定することが可能となる。
【0149】
以上、本開示の表示装置を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示の表示装置はこれらの実施例に限定されるものではない。表示装置の構成、構造、画像表示装置、画像形成装置、転送光学装置あるいは接眼光学装置の構成、構造は、適宜、変更することができる。例えば、表示装置からみて、観察者が不適切な場所にいる場合、観察者を適切な場所に誘導する音声あるいは画像・映像による案内を表示装置は行ってもよい。表示装置は複数の画像形成装置を備えていてもよい。即ち、表示装置は、画像を出射する位置の異なる画像形成装置を、複数、備えており、これらの複数の画像形成装置から同じ画像を射出し、1つの接眼光学装置でこれらの複数の画像の内の1つの画像を受け取る構成とすることもできる。そして、これによって、画像形成装置と観察者の相対的な位置関係の自由度を高くすることができる。即ち、例えば、観察者が所定の位置に位置すると、画像形成装置からの画像が接眼光学装置に到達し、観察者は接眼光学装置を介してこの画像を観察することができるが、この所定の位置の拡大を図ることができる。
【0150】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《表示装置・・・第1の態様》
接眼光学装置、並びに、
画像形成装置、及び、画像形成装置から入射された画像を接眼光学装置へと出射する転送光学装置を備えた画像表示装置、
を備えており、
接眼光学装置と画像表示装置とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置は、転送光学装置からの画像を観察者の網膜に結像させ、
画像表示装置は、更に、
制御部、
接眼光学装置の位置を検出する第1位置検出装置及び第2位置検出装置、並びに、
転送光学装置・制御装置、
を備えており、
第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、制御部の制御下、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御し、且つ、第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は第1位置検出装置の検出位置補正を行う表示装置。
[A02]第1位置検出装置によって、又は、第2位置検出装置によって、又は、第1位置検出装置及び第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は画像形成装置における画像の形成を制御する[A01]に記載の表示装置。
[A03]第1位置検出装置は、
光源、
第1光路合成部、
第2光路合成部、及び、
受光部、
を具備しており、
画像形成装置から入射された画像は、第2光路合成部、転送光学装置、接眼光学装置を経由して、観察者の網膜に結像され、
光源から出射された光は、第1光路合成部、第2光路合成部、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、転送光学装置及び第2光路合成部を経由して第1光路合成部に入射し、光源とは異なる方向に第1光路合成部から出射され、受光部に入射する[A01]又は[A02]に記載の表示装置。
[A04]第1光路合成部から受光部に入射した光の受光部への入射位置が所定の位置からズレた場合、ズレを無くすように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置の位置を制御する[A03]に記載の光学装置。
[A05]光源の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角と、画像形成装置の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角とは異なる[A03]又は[A04]に記載の表示装置。
[A06]光源は、アイセーフ波長帯の赤外線を出射する[A03]乃至[A05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A07]光源から出射され、第1光路合成部に入射する光は発散光である[A03]乃至[A06]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A08]受光部は、光源と光学的に共役な位置よりも第1光路合成部に近い位置に配置されている[A03]乃至[A07]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A09]受光部は、位置検出素子、多分割フォトダイオード、又は、複数のフォトダイオードから構成されている[A03]乃至[A08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A10]第1位置検出装置は第2位置検出装置を兼ねている[A01]乃至[A09]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A11]転送光学装置・制御装置によって、転送光学装置は、観察者の網膜に結像される画像の水平方向及び垂直方向に沿った、観察者の網膜への画像投影制御を行う[A01]乃至[A10]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A12]転送光学装置は、2つのガルバノミラーの組合せから構成されている[A01]乃至[A11]のいずれか1項に記載の光学装置。
[A13]接眼光学装置には、再帰性反射素子が取り付けられている[A01]乃至[A12]のいずれか1項に記載の光学装置。
[A14]接眼光学装置は、ホログラム素子を備えている[A01]乃至[A13]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A15]接眼光学装置は、回折光学部材を備えている[A01]乃至[A13]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A16]接眼光学装置は、集光部材及び偏向部材を備えている[A01]乃至[A13]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A17]接眼光学装置と画像表示装置とは相対的に移動可能である[A01]乃至[A16]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A18]接眼光学装置は観察者に装着される[A01]乃至[A17]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A19]接眼光学装置は観察者から離れた所に配置される[A01]乃至[A17]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A20]接眼光学装置の中心と観察者の瞳の中心を結ぶ直線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ1、画像形成装置の中心から出射された光線が転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達するときの光線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ2、接眼光学装置の焦点距離をf0(単位:mm)としたとき、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦3.5
を満足するように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置を制御する[A01]乃至[A19]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B01]《表示装置・・・第2の態様》
接眼光学装置、並びに、
画像形成装置、及び、画像形成装置から入射された画像を接眼光学装置へと出射する転送光学装置を備えた画像表示装置、
を備えており、
接眼光学装置と画像表示装置とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置は、転送光学装置からの画像を観察者の網膜に結像させ、
画像表示装置は、更に、
制御部、
接眼光学装置の位置を検出する第1位置検出装置及び第2位置検出装置、並びに、
転送光学装置・制御装置、
を備えており、
第1位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、転送光学装置・制御装置は、制御部の制御下、画像形成装置から入射された画像が接眼光学装置に到達するように転送光学装置を制御し、且つ、第1位置検出装置によって、又は、第2位置検出装置によって、又は、第1位置検出装置及び第2位置検出装置によって検出された接眼光学装置の位置情報に基づき、制御部は画像形成装置における画像の形成を制御する表示装置。
[B02]第1位置検出装置は第2位置検出装置を兼ねている[B01]に記載の表示装置。
[B03]第1位置検出装置は、
光源、
第1光路合成部、
第2光路合成部、及び、
受光部、
を具備しており、
画像形成装置から入射された画像は、第2光路合成部、転送光学装置、接眼光学装置を経由して、観察者の網膜に結像され、
光源から出射された光は、第1光路合成部、第2光路合成部、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、転送光学装置及び第2光路合成部を経由して第1光路合成部に入射し、光源とは異なる方向に第1光路合成部から出射され、受光部に入射する[B01]又は[B02]に記載の表示装置。
[B04]第1光路合成部から受光部に入射した光の受光部への入射位置が所定の位置からズレた場合、ズレを無くすように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置の位置を制御する[B03]に記載の光学装置。
[B05]光源の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角と、画像形成装置の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角とは異なる[B03]又は[B04]に記載の表示装置。
[B06]光源は、アイセーフ波長帯の赤外線を出射する[B03]乃至[B05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B07]光源から出射され、第1光路合成部に入射する光は発散光である[B03]乃至[B06]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B08]受光部は、光源と光学的に共役な位置よりも第1光路合成部に近い位置に配置されている[B03]乃至[B07]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B09]受光部は、位置検出素子、多分割フォトダイオード、又は、複数のフォトダイオードから構成されている[B03]乃至[B08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B10]転送光学装置・制御装置によって、転送光学装置は、観察者の網膜に結像される画像の水平方向及び垂直方向に沿った、観察者の網膜への画像投影制御を行う[B01]乃至[B09]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B11]転送光学装置は、2つのガルバノミラーの組合せから構成されている[B01]乃至[B10]のいずれか1項に記載の光学装置。
[B12]接眼光学装置には、再帰性反射素子が取り付けられている[B01]乃至[B11]のいずれか1項に記載の光学装置。
[B13]接眼光学装置は、ホログラム素子を備えている[B01]乃至[B12]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B14]接眼光学装置は、回折光学部材を備えている[B01]乃至[B12]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B15]接眼光学装置は、集光部材及び偏向部材を備えている[B01]乃至[B12]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B16]接眼光学装置と画像表示装置とは相対的に移動可能である[B01]乃至[B15]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B17]接眼光学装置は観察者に装着される[B01]乃至[B16]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B18]接眼光学装置は観察者から離れた所に配置される[B01]乃至[B16]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B19]接眼光学装置の中心と観察者の瞳の中心を結ぶ直線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ1、画像形成装置の中心から出射された光線が転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達するときの光線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ2、接眼光学装置の焦点距離をf0(単位:mm)としたとき、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦3.5
を満足するように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置を制御する[B01]乃至[B18]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C01]《表示装置・・・第3の態様》
接眼光学装置、並びに、
画像形成装置、及び、画像形成装置から入射された画像を接眼光学装置へと出射する転送光学装置を備えた画像表示装置、
を備えており、
接眼光学装置と画像表示装置とは、空間的に分離して配置されており、
接眼光学装置は、転送光学装置からの画像を観察者の網膜に結像させ、
画像表示装置は、更に、接眼光学装置の位置を検出する第1位置検出装置を備えており、
第1位置検出装置は、
光源、
第1光路合成部、
第2光路合成部、及び、
受光部、
を具備しており、
画像形成装置から入射された画像は、第2光路合成部、転送光学装置、接眼光学装置を経由して、観察者の網膜に結像され、
光源から出射された光は、第1光路合成部、第2光路合成部、転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達し、接眼光学装置によって転送光学装置へと戻され、転送光学装置及び第2光路合成部を経由して第1光路合成部に入射し、光源とは異なる方向に第1光路合成部から出射され、受光部に入射する表示装置。
[C02]光源の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角と、画像形成装置の中心から出射された光の転送光学装置からの出射角とは異なる[C01]に記載の表示装置。
[C03]光源は、アイセーフ波長帯の赤外線を出射する[C01]又は[C02]に記載の表示装置。
[C04]光源から出射され、第1光路合成部に入射する光は発散光である[C01]乃至[C03]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C05]受光部は、光源と光学的に共役な位置よりも第1光路合成部に近い位置に配置されている[C01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C06]受光部は、位置検出素子、多分割フォトダイオード、又は、複数のフォトダイオードから構成されている[C01]乃至[C05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C07]転送光学装置は、2つのガルバノミラーの組合せから構成されている[C01]乃至[C06]のいずれか1項に記載の光学装置。
[C08]接眼光学装置には、再帰性反射素子が取り付けられている[C01]乃至[C07]のいずれか1項に記載の光学装置。
[C09]接眼光学装置は、ホログラム素子を備えている[C01]乃至[C08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C10]接眼光学装置は、回折光学部材を備えている[C01]乃至[C11]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C11]接眼光学装置は、集光部材及び偏向部材を備えている[C01]乃至[C10]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C12]接眼光学装置と画像表示装置とは相対的に移動可能である[C01]乃至[C11]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C13]接眼光学装置は観察者に装着される[C01]乃至[C12]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C14]接眼光学装置は観察者から離れた所に配置される[C01]乃至[C12]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C15]接眼光学装置の中心と観察者の瞳の中心を結ぶ直線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ1、画像形成装置の中心から出射された光線が転送光学装置を経由して接眼光学装置に到達するときの光線と、接眼光学装置の中心を通る法線との成す角度をθ2、接眼光学装置の焦点距離をf0(単位:mm)としたとき、
0・|tan(θ2)-tan(θ1)|≦3.5
を満足するように、転送光学装置・制御装置は転送光学装置を制御する[C01]乃至[C14]のいずれか1項に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0151】
10・・・画像表示装置、11・・・制御部、20,20a,20b,20c・・・画像形成装置、21a・・・光源、21b・・・偏光ビームスプリッター、21c・・・液晶表示装置(LCD)、21d・・・光学系、22a・・・有機EL表示装置、22b・・・凸レンズ、23a・・・光源、23b・・・コリメート光学系、23c・・・全反射ミラー、23d・・・走査手段、23e・・・リレー光学系、24・・・筐体、30・・・転送光学装置、31・・・転送光学装置・制御装置、40A,40B,40C,40D,40E,40F・・・接眼光学装置、41・・・位置表示手段(再帰性反射マーカー)、42・・・回折手段、43・・・集光手段、44・・・保持部材、45・・・ガラス窓、46,46A,46B・・・集光部材、47,47A,47B・・・偏向部材、48・・・支持部材、49A・・・集光部材、49B・・・回折格子、50・・・第1位置検出装置、51・・・ 光源、52・・・第1光路合成部、53・・・第2光路合成部、54・・・受光部、55・・・カップリングレンズ、56・・・レンズ部材、60・・・第2位置検出装置、70・・・観察者、71・・・瞳、80・・・部屋、81・・・壁面、82・・・座席、140・・・フレーム、140’・・・ノーズパッド部、141・・・フロント部、142・・・蝶番、143・・・テンプル部、144・・・モダン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図20
図21
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