(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/58 20060101AFI20241028BHJP
C07D 493/04 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C07D311/58
C07D493/04
(21)【出願番号】P 2022506236
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2020009549
(87)【国際公開番号】W WO2021020788
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0092711
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518462156
【氏名又は名称】グラセウム・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サン・ク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホ・リム
(72)【発明者】
【氏名】ク・スク・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・キム
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/111428(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0037584(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108822065(CN,A)
【文献】特開2006-008604(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103030647(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/
C07D 493/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化学式1の化合物を還元させて化学式2の化合物を製造するステップと、
(b)前記化学式2の化合物を化学式3の化合物とカップリングさせるステップとを含む、化学式4で表される2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法:
【化1】
前記化学式において、
点線は、選択的二重結合であり;
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキル基;ハロゲン原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルコキシ基;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4チオアルキル基;置換もしくは非置換アリルオキシ基;置換もしくは非置換アリールオキシ基;およびフェニル基のいずれか1つであり;
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つであり;
Pは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4アルキル基;置換もしくは非置換のベンジル基;アリル基;t-ブチルジメチルシリル基;t-ブチルジフェニルシリル基;ジメチルフェニルシリル基;トリメチルシリル基;MeSO
2;p-トルエンスルホニル基;および2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニル基のいずれか1つであり;
nは、1~3であり;
OPが複数の時は、同一または異なり;
前記置換アルキル基、置換アルコキシ基、置換チオアルキル基、置換アリルオキシ基、置換アリールオキシ基および置換ベンジル基の場合、前記置換基は、ベンジルオキシ基、ハロゲン原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルコキシ基、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
3チオアルキル基、ニトロ基およびナフタレン基のいずれか1つである。
【請求項2】
前記(b)ステップは、塩基条件で行われるものである、請求項1に記載の2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法。
【請求項3】
前記塩基条件は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、炭酸水素カリウム(KHCO
3)、トリエチルアミンおよびピリジンの中から選択された1種以上の塩基性化合物の添加によるものである、請求項2に記載の2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法。
【請求項4】
(i)請求項1~3のいずれか1項に
記載の合成方法に従って化学式4の化合物を
製造し、前記化学式4の化合物を環化させて化学式5の化合物を製造するステップと、
(ii)前記化学式5の化合物を還元させるステップとを含む、化学式Iの3-フェニル-2,3,4,8,9,10-ヘキサヒドロピラノ[2,3-f]クロメン誘導体の合成方法:
【化2】
前記化学式において、
点線は、選択的二重結合であり;
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキル基;ハロゲン原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルコキシ基;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4チオアルキル基;置換もしくは非置換アリルオキシ基;置換もしくは非置換アリールオキシ基;およびフェニル基のいずれか1つであり;
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つであり;
Pは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4アルキル基;置換もしくは非置換のベンジル基;アリル基;t-ブチルジメチルシリル基;t-ブチルジフェニルシリル基;ジメチルフェニルシリル基;トリメチルシリル基;MeSO
2;p-トルエンスルホニル基;および2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニル基のいずれか1つであり;
nは、1~3であり;
OPが複数の時は、同一または異なり;
前記置換アルキル基、置換アルコキシ基、置換チオアルキル基、置換アリルオキシ基、置換アリールオキシ基および置換ベンジル基の場合、前記置換基は、ベンジルオキシ基、ハロゲン原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルコキシ基、および直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
3チオアルキル基、ニトロ基およびナフタレン基のいずれか1つである。
【請求項5】
下記化学式2で表される6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-オール誘導体またはその溶媒和物
の、請求項1に記載の合成方法に従って化学式4の化合物を合成するための、使用:
【化3】
前記化学式2において、
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2019年7月30日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0092711号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
本発明は、2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1[大韓民国公開特許第10-2015-0075030号]は、ピラノクロメニルフェノール誘導体が高脂血症、脂肪肝、糖代謝異常、糖尿病および肥満を含む各種代謝症侯群の予防および治療に効果があることを開示しており、特許文献2[大韓民国公開特許第10-2018-0037584号]は、これらのピラノクロメニルフェノール誘導体を合成するための核心中間体として3-フェニル-2,3,4,8,9,10-ヘキサヒドロピラノ[2,3-f]クロメン誘導体を製造する方法を開示している。すなわち、特許文献2には、下記反応式Aのように、化学式A-1の化合物と化学式A-2の化合物とをカップリングして化学式A-3の化合物を得、これを還元させて化学式A-4の化合物を得、環化反応を進行させて化学式A-5の化合物を得、最終的に水素添加反応により特許文献1に開示された各種誘導体を合成する方法を開示している。ここで、化学式A-3の化合物から化学式A-4の化合物を製造するステップは、L-selectrideRを極低温である-78℃でゆっくり添加して反応を進行させるだけでなく、L-selectrideRが高価なため、化学式A-4で表される2-((6-(ヒドロキシメチル)-2H-クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を商業的に大量生産するのに大きな手間と困難が伴う。
【0003】
【0004】
そこで、化学式A-4で表される2-((6-(ヒドロキシメチル)-2H-クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を穏やかな条件で大量生産できる合成方法が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国公開特許第10-2015-0075030号
【文献】大韓民国公開特許第10-2018-0037584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が達成しようとする技術的課題は、2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を穏やかな条件で大量生産できる合成方法を提供することである。
ただし、本発明が解決しようとする課題は上記の課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様は、(a)化学式1の化合物を還元させて化学式2の化合物を製造するステップと、(b)前記化学式2の化合物を化学式3の化合物とカップリングさせるステップとを含む、化学式4で表される2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法を提供する:
【化2】
前記化学式において、
点線は、選択的二重結合であり;
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキル基;ハロゲン原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルコキシ基;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4チオアルキル基;置換もしくは非置換アリルオキシ基;置換もしくは非置換アリールオキシ基;およびフェニル基のいずれか1つであり;
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つであり;
Pは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4アルキル基;置換もしくは非置換のベンジル基;アリル基;t-ブチルジメチルシリル基;t-ブチルジフェニルシリル基;ジメチルフェニルシリル基;トリメチルシリル基;MeSO
2;p-トルエンスルホニル基;および2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニル基のいずれか1つであり;
nは、1~3であり;
OPが複数の時は、同一または異なり;
前記置換アルキル基、置換アルコキシ基、置換チオアルキル基、置換アリルオキシ基、置換アリールオキシ基および置換ベンジル基の場合、前記置換基は、ベンジルオキシ基、ハロゲン原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルコキシ基、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
3チオアルキル基、ニトロ基およびナフタレン基のいずれか1つである。
【0008】
本発明の他の実施態様は、(i)本発明の一実施態様により製造された化学式4の化合物を環化させて化学式5の化合物を製造するステップと、(ii)前記化学式5の化合物を還元させるステップとを含む、化学式Iの3-フェニル-2,3,4,8,9,10-ヘキサヒドロピラノ[2,3-f]クロメン誘導体を合成する方法を提供する:
【化3】
前記化学式において、点線は、選択的二重結合であり、R
1~R
5、Pおよびnは、前記化学式1~4で定義したものと同じである。
【0009】
本発明のさらに他の実施態様は、下記化学式2で表される6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-オール誘導体またはその溶媒和物を提供する:
【化4】
前記化学式2において、
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施態様に係る製造方法は、2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を簡単かつ、商業的に容易に製造することができる。
また、本発明の一実施態様に係る製造方法は、2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を経済的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施態様は、(a)化学式1の化合物を還元させて化学式2の化合物を製造するステップと、(b)前記化学式2の化合物を化学式3の化合物とカップリングさせるステップとを含む、化学式4で表される2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の合成方法を提供する:
【化5】
前記化学式において、
点線は、選択的二重結合であり;
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキル基;ハロゲン原子;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルコキシ基;置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4チオアルキル基;置換もしくは非置換アリルオキシ基;置換もしくは非置換アリールオキシ基;およびフェニル基のいずれか1つであり;
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つであり;
Pは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
4アルキル基;置換もしくは非置換のベンジル基;アリル基;t-ブチルジメチルシリル基;t-ブチルジフェニルシリル基;ジメチルフェニルシリル基;トリメチルシリル基;MeSO
2;p-トルエンスルホニル基;および2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニル基のいずれか1つであり;
nは、1~3であり;
OPが複数の時は、同一または異なり;
前記置換アルキル基、置換アルコキシ基、置換チオアルキル基、置換アリルオキシ基、置換アリールオキシ基および置換ベンジル基の場合、前記置換基は、ベンジルオキシ基、ハロゲン原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
5アルコキシ基;直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
3チオアルキル基、ニトロ基およびナフタレン基のいずれか1つである。
【0012】
前記特許文献2[大韓民国公開特許第10-2018-0037584号]の反応式Aのように、化学式A-4の化合物(本発明の化学式4の化合物)を合成する場合には、極低温で反応を進行させなければならないだけでなく、高価なL-selectrideRを使用しなければならないので、商業的に大量生産するのに困難が伴っていた。しかし、本発明の一実施態様により化学式4の化合物を合成する場合には、先に化学式1の化合物を還元させた後、製造された化学式2の化合物を化学式3の化合物とカップリングさせることにより、極低温で還元反応を進行させる必要もなく、高価な還元剤を使用する必要もない。したがって、2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を簡単かつ、商業的に容易に製造することができる。
【0013】
前記化学式4で表される2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体の例には下記の化合物がある。
【化6A】
【化6B】
【化6C】
【化6D】
【化6E】
【化6F】
【化6G】
【化6H】
【化6I】
【化6J】
【化6K】
【化6L】
【化6M】
【0014】
以下、本発明の一実施態様に係る化学式4の化合物の合成方法を各ステップごとにより詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施態様に係る(a)ステップは、化学式1の化合物のホルミル基(-COH)を還元させて化学式2の化合物を製造するステップである。前記還元は、0℃~5℃で還元剤として、例えば、ソジウムボロハイドライド、リチウムアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどを用いて行われる。具体的には、前記還元剤は、ソジウムボロハイドライドまたはリチウムアルミニウムハイドライドであってもよい。発明の背景技術に示すように、特許文献2において、化学式A-3の化合物を化学式A-4の化合物に還元するステップは、ケトンのカルボニル基を還元させることなく、ホルミル基のみを選択的に還元させなければならないので、極低温で反応選択的な還元剤を使用しなければならない問題点があったが、本発明の合成方法は、化学式1の化合物を先に還元させて、穏やかな条件で反応選択的な還元剤を用いずに化学式4の化合物を容易に製造することができる。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、前記(b)ステップは、塩基条件で行われるものであってもよい。例えば、前記(b)ステップは、塩基性化合物を用いて行われるものであってもよい。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、前記塩基条件は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、トリエチルアミンおよびピリジンの中から選択された1種以上の塩基性化合物の添加によるものであってもよいし、具体的には、炭酸カリウムや炭酸ナトリウムであってもよい。
【0018】
本発明の他の実施態様は、(i)本発明の一実施態様により製造された化学式4の化合物を環化させて化学式5の化合物を製造するステップと、(ii)前記化学式5の化合物を還元させるステップとを含む、化学式Iの3-フェニル-2,3,4,8,9,10-ヘキサヒドロピラノ[2,3-f]クロメン誘導体を合成する方法を提供する:
【化7】
前記化学式において、点線は、選択的二重結合であり、R
1~R
5、Pおよびnは、前記化学式1~4で定義したものと同じである。
【0019】
前記化学式4の化合物を化学式5の化合物に環化させる場合、i)化学式4の化合物をアセトニトリルに溶解させ、トリフェニルホスホニウムブロミド(Ph3P・HBr)を添加して中間体を得、ii)前記i)の中間体を濃縮させた後、濃縮液を溶解させ、ソジウムエトキシド(NaOEt)を添加して環化させることができる。
【0020】
前記(ii)ステップは、化学式5の化合物において二重結合を還元させ、保護基を除去して、化学式Iの化合物を合成するものであってもよい。前記保護基の除去は、二重結合を還元させる反応と同一のPd/C(palladium on carbon)を触媒として用いる水素添加反応により行われる。
【0021】
本発明のさらに他の実施態様は、下記化学式2で表される6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-オール誘導体またはその溶媒和物を提供する:
【化8】
前記化学式2において、
R
3は、水素原子;C
1-C
3アルキル基;C
1-C
3アルコキシ基;およびハロゲン原子のいずれか1つであり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子;およびC
1-C
2アルキル基のいずれか1つである。
【0022】
前記化学式2で表される6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-オール誘導体の例には下記の化合物がある。
【化9】
【実施例】
【0023】
以下、一つ以上の実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1.2-(6-ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノン[2-(6-(hydroxymethyl)-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethanone](化合物4-1)の製造
1-1.6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-オール[6-(hydroxymethyl)-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-ol]の合成
【化10】
5-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-カルバルデヒド[5-hydroxy-2,2-dimethyl-2H-chromene-6-carbaldehyde]3g(0.01469mol)をメタノール60mlに投入し、0~5℃に冷却した後、ソジウムボロハイドライド0.28g(0.0074mol)を4回にわたって分割投入した。反応液を常温に昇温後、追加的に30分間撹拌した。反応終結後、反応液を濃縮した後、エチルアセテート60ml、精製水15mlを投入して激しく撹拌しながら、酢酸をゆっくり投入してpHを6~6.5に調節した。層分離後に水層を除去し、有機層をブライン(brine)15ml、2%重曹水溶液で順次に洗浄した。有機層を無水処理後、濾過濃縮した後、n-ヘキサンで結晶化して、2.37g(収率78.2%)の6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-オールを得た。得られた化合物に対する
1H-NMRおよび
13C-NMRの結果は下記の通りである。
【0025】
1H-NMR (CDCl3): 7.596(s, 1H), 6.715(d, 1H, J=10Hz), 6.686(d, 1H, J=10Hz), 6.287(d, 1H, 8.4H), 5.587(d, 1H, J=10Hz), 4.746(s, 2H), 2.296(br, 1H), 1.412(s, 6H).
13C-NMR (CDCl3): 153.842, 152.180, 129.192, 127.311, 116.803, 116.548, 110.336, 107.820, 75.957, 64.751, 27.730.
【0026】
1-2.2-(6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノン[2-(6-(hydroxymethyl)-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethanone]の合成
【化11】
6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-オール5g(0.0242mol)と1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)-2-ブロモエタノン8.47g(0.0242mol)、そして炭酸カリウム7.4g(0.0535mol)を、アセトン50mlに入れて、常温で一晩撹拌した。反応終結後、濾過し、濾液を完全に濃縮した。濃縮液にメチレンクロライドを入れて、精製水で洗浄後、有機層を無水処理した後、濃縮し、n-ヘキサンで結晶化して、10.8g(収率93.9%)の2-(6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノンを得た。得られた化合物に対する
1H-NMRおよび
13C-NMRの結果は下記の通りである。
【0027】
1H-NMR (CDCl3): 8.063(d, 1H, J=8.8Hz), 7.35~7.32(m, 5H), 7.001(d, 1H, J=8.4Hz), 6.585(dd, 1H, J=8.8, 2.0Hz), 6.532(d, 1H, J=8.0Hz), 6.503(d, 1H, J=2.0Hz), 6.383(d, 1H, J=10Hz), 5.464(d, 1H, J=9.6Hz), 5.092(s, 2H), 5.065(s, 2H), 4.522(s, 2H), 4.078(q, 2H, J=13.6), 3.502(br, 1H), 1.424(t, 3H, J=6.8Hz), 1.367(s, 6H).
13C-NMR (CDCl3): 194.136, 164.785, 160.506, 154.276, 153.734, 135.384, 133.298, 130.280, 129.713, 128.772, 128.570, 127.905, 126.120, 117.735, 117.273, 114.343, 112.067, 106.684, 99.536, 80.734, 75.497, 70.927, 63.988, 61.479, 27.543, 14.594.
【0028】
実施例2.2-(6-(ヒドロキシメチル)-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノン[2-(6-(hydroxymethyl)-2,2,7-trimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethanone](化合物4-2)の製造
2-1.6-(ヒドロキシメチル)-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-5-オール[6-(hydroxymethyl)-2,2,7-trimethyl-2H-chromen-5-ol]の合成
【化12】
5-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-カルバルデヒドの代わりに5-ヒドロキシ-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-6-カルバルデヒドを用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を行って、6-(ヒドロキシメチル)-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-5-オールを得た。得られた化合物に対する
1H-NMRおよび
13C-NMRの結果は下記の通りである。
【0029】
1H-NMR (CDCl3): 8.066(s, 1H), 6.648(d, 1H, J=10Hz), 6.167(s, 1H), 5.525(d, 1H, J=10Hz), 4.827(s, 2H), 2.401(br, 1H), 2.132(s, 3H), 1.399(s, 6H).
13C-NMR (CDCl3): 152.863, 152.580, 135.759, 128.156, 116.639, 114.949, 109.944, 108.437, 75.880, 60.798, 27.735, 19.462.
【0030】
2-2.2-(6-(ヒドロキシメチル)-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノン[2-(6-(hydroxymethyl)-2,2,7-trimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethanone]の合成
【化13】
6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-オールの代わりに6-(ヒドロキシメチル)-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-5-オールを用いたことを除けば、前記実施例1-2と同様の方法を行って、2-(6-(ヒドロキシメチル)-2,2,7-トリメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノンを得た。得られた化合物に対する
1H-NMRおよび
13C-NMRの結果は下記の通りである。
【0031】
1H-NMR (CDCl3): 8.047(d, 1H, J=8.8Hz), 7.375~7.279(m, 5H), 6.574(dd, 1H, J=9.2, 2.4Hz), 6.495(d, 1H, J=2.4Hz), 6.479(s, 1H), 6.330(d, 1H, J=10Hz), 5.405(d, 1H, J=9.6Hz), 5.120(s, 2H), 5.078(s, 2H), 4.618(d, 2H, J=6.4Hz), 4.126~4.044(m, 2H), 3.156(br, 1H), 2.325(s, 3H), 1.417(t, 3H, J=7.2Hz), 1.359(s, 6H).
13C-NMR (CDCl3): 192.848, 164.723, 160.478, 154.581, 153.075, 139.010, 135.408, 133.229, 130.478, 129.135, 128.710, 128.665, 128.507, 127.920, 124.442, 117.383, 114.026, 111.674, 81.044, 75.421, 63.952, 56.773, 27.547, 19.331, 14.574.
【0032】
実施例3.2-(6-(ヒドロキシメチル)-7-メトキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノン[2-(6-(hydroxymethyl)-7-methoxy-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethanone](化合物4-3)の製造
3-1.6-(ヒドロキシメチル)-7-メトキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-オール[6-(hydroxymethyl)-7-methoxy-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-ol]の合成
【化14】
5-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-カルバルデヒドの代わりに5-ヒドロキシ-7-メトキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-カルバルデヒドを用いることを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を行って、6-(ヒドロキシメチル)-7-メトキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-オールを得る。得られた化合物に対する
1H-NMRおよび
13C-NMRの結果は下記の通りである。
【0033】
1H-NMR (CD3OD): 6.741(d, 1H, J=9.6Hz), 5.819(s, 1H), 5.350(d, 1H, J=9.6Hz), 4.627(s, 2H), 3.724(s, 3H), 1.369(s, 6H).
13C-NMR (CD3OD): 157.480, 154.814, 153.923, 124.960, 119.470, 107.049, 105.714, 90.203, 76.517, 58.645, 55.602, 27.885.
【0034】
3-2.2-(6-(ヒドロキシメチル)-7-メトキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-5-イルオキシ)-1-(2-(ベンジルオキシ)-4-エトキシフェニル)エタノン[2-(6-(hydroxymethyl)-7-methoxy-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethenone]の合成
【化15】
6-(hydroxymethyl)-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-olの代わりに6-(hydroxymethyl)-7-methoxy-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-olを用いることを除けば、前記実施例1-2と同様の方法を行って、2-(6-(hydroxymethyl)-7-methoxy-2,2-dimethyl-2H-chromen-5-yloxy)-1-(2-(benzyloxy)-4-ethoxyphenyl)ethanoneを得る。得られた化合物に対する
1H-NMRおよび
13C-NMRの結果は下記の通りである。
【0035】
1H-NMR (CDCl3): 8.048(d, 1H, J=8.8Hz), 7.386~7.296(m, 5H), 6.567(dd, 1H, J=8.8, 2Hz), 6.509(s, 1H), 6.369(d, 1H, J=10Hz), 6.207(s, 1H), 5.348(d, 1H, J=10Hz), 5.120(s, 2H), 5.088(s, 2H), 4.637(d, 2H, J=6.8Hz), 4.060(q, 2H, J=14, 7.2Hz), 3.799(s, 3H), 3.032(t, 1H, J=6.4Hz), 1.411(t, 3H, J=6.8Hz), 1.366(s, 6H).
13C-NMR (CDCl3): 193.599, 164.605, 160.395, 158.879, 154.891, 154.317, 135.459, 133.157, 128.641, 128.364, 127.786, 127.088, 117.880, 117.249, 114.782, 107.335, 106.616, 99.520, 95.947, 81.138, 76.028, 70.810, 63.914, 55.636, 54.542, 27.569, 14.561.
【0036】
以下、前記実施例1と同様の方法を用いて、下記表1のような各種の2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を合成した。
【0037】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【表1-28】
【表1-29】
【表1-30】
【表1-31】
【表1-32】
【0038】
前記実施例に開示された方法を用いると、2-((6-(ヒドロキシメチル)クロメン-5-イル)オキシ)-1-フェニルエタノン誘導体を穏やかな条件で簡単かつ、商業的に容易に経済的に製造することができる。
【0039】
これまで、本発明についてその好ましい実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明が本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で変形した形態で実現可能であることを理解するであろう。そのため、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等範囲内にあるすべての差異は本発明に含まれたと解釈されなければならない。