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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】サイクロン分離器のための渦ファインダ
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/16 20060101AFI20241028BHJP
   B04C 5/13 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A47L9/16
B04C5/13
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022542153
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2020087944
(87)【国際公開番号】W WO2021140041
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】20150969.2
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523393508
【氏名又は名称】ヴェルスニ ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル コーイ ヨハネス ツェアルド
(72)【発明者】
【氏名】コープマンス エミール
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0167336(US,A1)
【文献】特表2016-533873(JP,A)
【文献】特開2010-035904(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107581973(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/16
B04C 3/00-5/13
B01D 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロン分離器のための渦ファインダであって、
前記渦ファインダは、複数の固定羽根のまわりで、流入する空気が前記渦ファインダ内にガイドされる、前記複数の固定羽根を備え、前記流入する空気に面する前記羽根の側部が、淀み点において突出部を備える、渦ファインダ。
【請求項2】
前記突出部が、前記流入する空気を前記渦ファインダ内にガイドするような形状である、請求項1に記載の渦ファインダ。
【請求項3】
前記突出部が、隣接する羽根の形状に追従する凹状側部を有する、請求項1又は2に記載の渦ファインダ。
【請求項4】
前記突出部が丸みを帯びた頂部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の渦ファインダ。
【請求項5】
前記突出部が、前記羽根間の間隙幅の70%から130%の範囲の高さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の渦ファインダ。
【請求項6】
前記突出部が、前記羽根間の間隙幅の85%から115%の範囲の高さを有する、請求項5に記載の渦ファインダ。
【請求項7】
隣接する前記羽根間の間隙幅が、前記渦ファインダの外側から内側へ増加する、請求項1から4のいずれか一項に記載の渦ファインダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の渦ファインダを有するサイクロン分離器を備える、真空掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン分離器のための渦ファインダ、及びそのような渦ファインダを備える真空掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
バッグレス真空掃除機は、空気から埃粒子を分離するためにサイクロンを使用している。サイクロンは、空気の流れが高速で回転する円筒形の室で構成されている。ぐるぐる回る空気流によって発生する遠心力は、塵粒子をサイクロン室の壁に向かって放り投げ、塵粒子はサイクロン室の壁から集塵室内に落下する。清浄化された空気は、サイクロンの中心を通って逆方向に流れ、渦ファインダを経由してサイクロンの出口に排出される。渦ファインダの機能は、安定した回転流を確保して分離性能を向上させることである。渦ファインダは、通常、出口に向かって空気をガイドする複数の羽根を有する。
【0003】
米国特許出願公開第2012167336号は、分離室と空気出口との間に流体的に配置された排気グリルを備える分離モジュールを備えた真空掃除機を開示している。排気グリルは、複数のルーバと、隣接するルーバ間に画定された複数の入口とを有する本体を備えることができる。ルーバのうちの少なくとも1つは、埃を複数の入口のうちの少なくとも1つから偏向させるように構成された翼形部を備える。ルーバの前端は、空隙から埃粒子を偏向させるように構成された翼端を有することができる。一実施形態では、翼端は、上流面に形成された湾曲したガイド面によって形成される。ガイド面は、上流面の最も外側の部分に配置することができる。ガイド面は、後端に向かう上流面の曲率半径と比較して、前端に向かってより小さな曲率半径を有することができる。ガイド面は、前端に近い方の遷移点の側部の第1接線の傾きが、後端に近い方の遷移点の側部の第2接線の傾きよりも小さい点を規定する遷移点を含み、その結果、翼端の上流面に凹状の三日月形が生じる。
【0004】
WO2015150435は渦ファインダを開示し、サイクロン室の軸線を中心として螺旋状の経路を流れる空気はこの渦ファインダを通過して出口まで流れる。渦ファインダは、軸方向に延在し、軸線の周りに半径方向に間隔を置いて配置された複数の固定した重なり合う羽根を備え、羽根は、サイクロン室の軸線の周りの空気の螺旋状の流れが羽根の外面を通過し、その空気の流れの一部が各羽根の前縁の周りで方向変更され、隣接する羽根間の隙間を通って出口まで流れるように、互いに対して配置される。軸線に沿った任意の点において、各羽根の外側の一部は、軸線と同軸の中心を有する円上に位置し、各羽根の外側は、円から離れるように内側に延在する、前端に向かう部分を有し、それにより、空気が羽根間の空隙を通るように方向変更されるところである各羽根の前端は、円によって結合された領域内に位置して、空隙の近傍で隣接する羽根の外側上に過圧の領域を作り出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、とりわけ、改良された渦ファインダを提供することである。本発明は、独立請求項によって規定される。有利な実施形態は、従属請求項に規定される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、サイクロン分離器のための渦ファインダを提供し、当該渦ファインダは、複数の固定羽根のまわりで、流入する空気が渦ファインダ内にガイドされる複数の固定羽根を備え、流入する空気に面する羽根の側部が、淀み点において突出部を備える。突出部は、流入する空気を渦ファインダ内にガイドするような形状であり、隣接する羽根の形状に追従する凹状側部を有し、丸みを帯びた頂部を有する。突出部は、羽根間の間隙幅の70%から130%の範囲内の高さを有することが好ましく、羽根間の間隙幅の85%から115%の範囲内の高さを有することがより好ましい。別の好ましい実施形態では、隣接する羽根間の間隙幅は、渦ファインダの外側から内側へ漸進的に増加する。サイクロン分離器を備える真空掃除機は、このような渦ファインダを有することが好ましい。
【0007】
大部分において、本発明の実施形態は、参照により本明細書に組み込まれるWO2015150435の実施形態と同様である。大きな違いは、渦ファインダの羽根の形状によってなされる。
【0008】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本出願人の未公開の同時係属出願EP19158400.2によってカバーされる羽根で生じるような空気流を示す図である。
図2A】本発明による渦ファインダの実施形態の図である。
図2B】本発明による渦ファインダの実施形態の図である。
図3A】本発明による渦ファインダの実施形態の図である。
図3B】本発明による渦ファインダの実施形態の図である。
図4A】本発明による渦ファインダの実施形態の図である。
図4B】本発明による渦ファインダの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本出願人の未公開の同時係属出願EP19158400.2(代理人側処理番号2019P00168EP)によってカバーされる羽根で生じるような空気流を示す。ほとんどの空気流は、真空掃除機(図示せず)のモーターファン集合体による吸引の結果として渦ファインダF内に入るが、実際には、いくらかの空気流は羽根Vにぶつかり、別の部分は羽根Vの周りを回る。空気が羽根Vにぶつかると、埃がたまる。空気が羽根Vにぶつかる場所は淀み点Sと呼ばれ、通常、流体の局所速度がゼロである流れ場の点として定義される(Wikipedia等を参照のこと)。流れ場内の物体の表面には、流体が物体によって静止させられる淀み点が存在する。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、流入空気Aに面する羽根Vの側部は、淀み点Sにおいて突出部Pを備え、それによって、淀み点Sにおいて羽根Vに埃が蓄積するのを防止する。これにより、分離性能や圧力損失に影響を与えることなく、汚染を大幅に低減することができる。
【0012】
突出部Pは、ここでは、羽根Vが、空気が渦ファインダFの内側で羽根Vから分離する1つの鋭い縁部Eのみを有するというコンテキストで説明され、これは、本出願人の未公開の同時係属出願EP19158400.2によってカバーされるが、空気が渦ファインダの羽根にぶつかる淀み点での埃の蓄積の問題、及び羽根の側部に突出部を設けるという解決策は、このような羽根に限定されず、異なる羽根(例えば米国特許出願公開第2012167336号又はWO2015150435に記載されたもの)にも同様に起こることがあり、埃の蓄積が起こるのを防止するのに突出部が同様に役立つことに留意されたい。
【0013】
突出部Pが淀み点Sのできるだけ近くに配置されることが重要である。WO2015150435の図12bは、羽根41から一部を切り取ることによって生じる外側後端縁45を示している。しかしながら、この解決策は、淀み点が位置する後端面42の凹んだ部分の内側に埃が蓄積するのを防止するのに役立たない。したがって、この従来技術の解決策では、淀み点には、淀み点で埃が蓄積するのを防止する突出部はなく、埃を集める凹んだ形状がある。
【0014】
図2A及び図2Bは、埃が蓄積するのを防止するために突出部Pが設けられた羽根Vの第1の実施形態を示す。ここで、突出部Pの両側は凹状である。
【0015】
図3A及び図3Bは、埃が蓄積することを防止するために突出部Pが設けられた羽根Vの第2の実施形態を示す。ここで、渦流ファインダFの内側に面する突出部Pの側部は凹状であり、渦流ファインダFの外側に面する突出部Pの側部は凸状である。
【0016】
図2A図3Bの凹形状は、突出部Pが、流入空気Aを比較的スムーズに渦流ファインダF内にガイドするように形作られていることを確実にする役割を果たす。
【0017】
突出部Pは、丸みを帯びた頂部を有することが好ましく、これにより、鋭い頂部よりも製造公差に関してより許容されることになる。しかしながら、鋭い頂部も可能である。
【0018】
実際的な実施形態では、羽根は、約1.75mmの間隙幅を有する間隙によって分離され、異なる間隙幅を有する場合、以下で論じる他の寸法のサイズは、それに応じて縮小拡大される必要がある。
【0019】
図2A及び図2Bの実施形態において、突出部Pが淀み点Sにできるだけ近い位置に配置されるという設計目標は、突出部Pが淀み点Sから1mm未満しかずれないことが好ましいことを意味する。突出部Pの丸みを帯びた頂部の直径は、約0.3mmなど、0.25mmから0.35mmの範囲が好ましい。図1図4に示すような羽根の基本形状と比較して、突出部Pの高さは、約1mmなど、0.75mmから1.25mmの範囲が好ましい。突出部Pのフットプリントは、約3mmなど、2.5mmから3.5mmの範囲が好ましい。
【0020】
図3A及び図3Bの実施形態では、突出部Pの凹面側は、隣接する羽根V間の間隙幅がほぼ一定となるような形状、即ち、これらの凹面側が隣接する羽根Vの形状に追従するような形状であることが好ましい。図1図4に示すような羽根の基本形状と比較して、突出部Pの高さは、1.25mm(間隙幅1.75mmの70%)から2.25mm(1.75mmの130%)の範囲が好ましく、約1.75mmなど、1.5mm(1.75mmの85%)から2.0mm(1.75mmの115%)の範囲がより好ましく、それによって、突出部Pが淀み点Sに位置するという最良の結果になる。突出部Pの凹面は、羽根の基本形状から突出部Pの頂部に向かって連続した曲線であるような形状であることが好ましい。突出部Pの丸みを帯びた任意の頂部の直径は、約0.2mmなど、0.15mmから0.25mmの範囲が好ましい。
【0021】
図4A及び図4Bの実施形態では、突出部Pは、隣接する羽根V間の間隙幅が、渦ファインダFの外側からの内側に向かって増加するような形状である。間隙幅の増加は、漸進的及び/又は連続的であることが好ましい。その結果、間隙はディフューザ状の形状となる。ディフューザは、例えば「I.E. Idel‘chik-Handbook of hydraulic resistance」(1960)から知られている。(ここでは隣接する羽根Vの湾曲形状間の)間隙幅の増加は、5°から30°の角度で配置された平板間の間隙幅の増加と同程度であることが好ましく、約12°がより好ましい。一例では、間隙は、0.9mmの初期幅Wを有し、突出部Pより向こうでは、1.75mmの端部幅Wを有する。突出部Pは、丸みを帯びた頂部、2.3mmの高さ、及び7mmのフットプリントFPを有する。
【0022】
上述の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの代替の実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧の間に付されたいかなる参照記号も、請求項を限定するものと解釈してはならない。単語「備える」は、請求項に列挙されたもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。単数形の要素は、複数のこのような要素の存在を排除するものではない。羽根Vが淀み点Sに突出部Pを有するという特許請求された特徴は、突出部Pが正確に淀み点Sになければならないことを意味するのではなく、単に突出部Pが淀み点Sの近くに配置されることを意味する。相互に異なる従属請求項に記載された手段を組み合わせて使用することが有利になることがある。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B