(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】深層学習を使用した薬物動態パラメータの推定
(51)【国際特許分類】
G16C 20/70 20190101AFI20241028BHJP
G16C 20/30 20190101ALI20241028BHJP
【FI】
G16C20/70
G16C20/30
(21)【出願番号】P 2022557912
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021023788
(87)【国際公開番号】W WO2021195155
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-03-11
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジェームス
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0225112(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0216200(US,A1)
【文献】特表2020-504763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0078761(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0259474(US,A1)
【文献】特表2022-526937(JP,A)
【文献】DURISOVA, Maria et al.,New Mathematical Methods in Pharmacokinetic Modeling,Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology,2005年,Vol.96,p.335-342,インターネット<URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/j.1742-7843.2005.pto_01.x>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16C 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に投与される薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するための方法であって、
1つ以上のプロセッサによって、シミュレートされた訓練データ集合に基づいてニューラルネットワークを訓練することであって、前記シミュレートされた訓練データ集合が、シミュレートされた
前記薬剤の時系列濃度データセットと、前記シミュレートされた
前記薬剤の時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む、ニューラルネットワークを訓練することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、被験者から得られた前記薬剤の時系列濃度データセットを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、
前記被験者から得られた前記
薬剤の時系列濃度データセットおよび訓練された前記ニューラルネットワークを使用して、前記薬物動態パラメータについての値を予測することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記薬物動態パラメータについての前記シミュレートされた値が、区画ベースの薬物動態モデルを使用して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記区画ベースの薬物動態モデルが、1区画モデル、2区画モデル、またはミカエリス・メンテンモデルのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬物動態パラメータが、曲線下面積(AUC)、最小濃度値(C
min)、または最大濃度値(C
max)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤が小分子治療薬または生物製剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューラルネットワークが、畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被験者に投与される薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するためのシステムであって、
被験者から得られた前記薬剤の時系列濃度データセットを記憶するためのデータストアと、
前記データストアに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスであって、
1つ以上の薬剤のシミュレートされた訓練データ集合を生成するように構成された薬物動態データシミュレーションエンジンであって、前記シミュレートされた訓練データ集合が、シミュレートされた
前記薬剤の時系列濃度データセットと、前記シミュレートされた
前記薬剤の時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む、薬物動態データシミュレーションエンジンと、
前記シミュレートされた訓練データ集合を使用してニューラルネットワークを訓練し、訓練された前記ニューラルネットワークを使用して
、前記被験者から得られた前記
薬剤の時系列濃度データセットに基づいて前記薬物動態パラメータについての値を予測するように構成された薬物動態予測エンジンと
を備える、コンピューティングデバイスと、
前記コンピューティングデバイスに通信可能に接続され、前記薬物動態パラメータについて予測された前記値を含むレポートを表示するように構成されたディスプレイシステムと
を備える、システム。
【請求項8】
前記薬物動態データシミュレーションエンジンが、区画ベースの薬物動態モデルを使用して前記シミュレートされた訓練データ集合を生成するように構成される、請求項7に記載の
システム。
【請求項9】
前記区画ベースの薬物動態モデルが、1区画モデル、2区画モデル、またはミカエリス・メンテンモデルのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ニューラルネットワークが、畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記薬剤が小分子治療薬または生物製剤を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記データストアおよび前記コンピューティングデバイスが、一体化された装置の一部である、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記データストアが、前記コンピューティングデバイスとは異なるデバイスによってホストされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
被験者に投与される薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するための方法であって、
1つ以上のプロセッサによって、被験者から得られた前記薬剤の時系列濃度データセットを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、
前記被験者から得られた前記
薬剤の時系列濃度データセット
とシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練されたニューラルネットワーク
とに基づいて、薬物動態パラメータについての値を予測すること
であって、前記シミュレートされた訓練データ集合が、シミュレートされた前記薬剤の時系列濃度データセットと、前記シミュレートされた前記薬剤の時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む、ことと
を含む、方法。
【請求項15】
前記ニューラルネットワークが、畳み込みニューラルネットワークである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記薬物動態パラメータが、曲線下面積(AUC)、最小濃度値(C
min)、または最大濃度値(C
max)のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が小分子治療薬または生物製剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
被験者に投与される薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するためのシステムであって、
被験者から得られた前記薬剤の時系列濃度データセットを記憶するためのデータストアと、
前記データストアに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスであって、
シミュレートされた前記薬剤の時系列濃度データセットと、前記シミュレートされた前記薬剤の時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含むシミュレートされた訓練データ集合を使用してニューラルネットワークを訓練し、
前記被験者から得られた前記
薬剤の時系列濃度データセットおよび訓練された前記ニューラルネットワークに基づいて薬物動態パラメータについての値を予測するように構成されたコンピューティングデバイスと、
前記コンピューティングデバイスに通信可能に接続され、前記薬物動態パラメータについて予測された前記値を含むレポートを表示するように構成されたディスプレイシステムと
を備える、システム。
【請求項19】
前記ニューラルネットワークが、畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記薬物動態パラメータの値が、曲線下面積(AUC)、最小濃度値(C
min)、または最大濃度値(C
max)を含む、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
この説明は、一般に、治療薬の薬物動態特性を推定または予測するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、患者に投与される治療薬の薬物動態特性を正確に推定または予測するための機械学習ベースのシステムおよび方法が必要とされている。
【背景技術】
【0002】
背景
新薬(例えば、治療薬)の開発は、多くの分野の進歩によって推進されている。そのような分野は、創薬、バイオテクノロジー、ならびにインビボおよびインビトロ薬理学的/毒物学的特性評価技術を含む。新たな治療薬が実験室の分子またはタンパク質から病院/診療所または地元薬局の新たな製品になる前に、治療薬に関連する有効性、投与、安全性、および副作用に関して様々な疑問に答える必要がある。これらの種類の質問に答えることは、典型的には、新たな薬物候補の様々な面を研究するように慎重に設計された一連の臨床試験を含む。
【0003】
薬物動態(PK)および薬力学(PD)は、典型的には数学的モデリングを含む治療開発に関連する科学分野である。一般的な用語では、PK(またはpK)は、「身体が薬物に対して行うこと」として記載され、PD(またはpD)は、「薬物が身体に対して行うこと」として記載されることが多い。より具体的には、PKは、一旦投与され、吸収、分布、代謝および排泄または排出(ADME)の4つの身体過程に供されると、身体が薬物にどのように作用するかをモデル化することに焦点を合わせることができる。これは、一般に、または時間の関数として身体の様々な領域における体内濃度をモデル化することによって達成されることができる。PDは、これらのモデル化された薬物濃度を、それらの効果を評価するために特別に設計されたPDモデルを介して特定の薬物効果に結び付けることを目的とする。したがって、PK/PDモデリングは、全身薬物濃度動態を結果として生じる薬物効果に経時的に結び付けることができる。そのようなモデリングは、様々な投与計画に応答した様々な生理学的効果(例えば、腫瘍細胞数、血小板数、好中球数など)の時間経過の説明および予測を可能にする。
【0004】
PK/PD評価のための従来の数学的モデリング方法論は、ループ内の様々なステップに関与する人間の判断により、モデル評価および精密化の反復を必要とすることがある。これは、時間および労働集約的であり得る。そのような既存の数学的アルゴリズムの例は、期待値最大化、遺伝的アルゴリズム、および散乱探索を含む。これらの技術は最適化ベースであってもよく、これは、実際には、モデルを作成する科学者が重大な試行錯誤を伴う多くの関数および勾配評価を実行することを意味することができる。したがって、PKおよびPDをモデル化するためにこれらの既存の数学的技術を効果的に使用することは、かなりの量のノウハウおよび計算時間を必要とする。ノウハウの前提条件および計算リソース要件は、非専門家ユーザのためのPK、PDおよびPK/PDモデリングの広範な採用に向かう経路に沿った重大な障害を表す。
【発明の概要】
【0005】
概要
1つ以上の実施形態では、被験者に投与された薬剤の少なくとも1つの薬物動態学パラメータを予測するための方法が提供される。1つ以上のプロセッサは、1つ以上のプロセッサによって、シミュレートされた訓練データ集合に基づいてニューラルネットワークを訓練する。シミュレートされた訓練データ集合は、シミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。1つ以上のプロセッサは、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを受信する。1つ以上のプロセッサは、時系列濃度データセットおよび訓練されたニューラルネットワークを使用して薬物動態パラメータについての値を予測する。
【0006】
1つ以上の実施形態では、被験者に投与された薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するためのシステムが提供される。システムは、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを記憶するためのデータストアと、データストアに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスと、コンピューティングデバイスに通信可能に接続されたディスプレイシステムと、を備える。コンピューティングデバイスは、薬物動態データシミュレーションエンジンおよび薬物動態予測エンジンを備える。薬物動態データシミュレーションエンジンは、1つ以上の薬剤のシミュレートされた訓練データ集合を生成するように構成される。シミュレートされた訓練データ集合は、シミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。薬物動態予測エンジンは、シミュレートされた訓練データ集合を使用してニューラルネットワークを訓練し、訓練されたニューラルネットワークを使用して時系列濃度データセットに基づいて薬物動態パラメータについての値を予測するように構成される。ディスプレイシステムは、薬物動態パラメータについて予測された値を含むレポートを表示するように構成される。
【0007】
1つ以上の実施形態では、薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するようにニューラルネットワークを訓練するための方法が提供される。1つ以上のプロセッサは、区画ベースの薬物動態モデルのシミュレーションパラメータを受信する。1つ以上のプロセッサは、区画ベースの薬物動態モデルを使用してシミュレートされた訓練データ集合を生成する。シミュレートされた訓練データ集合は、1つ以上の薬剤のシミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。区画ベースの薬物動態モデルは、受信したシミュレーションパラメータによって符号化される。次いで、1つ以上のプロセッサは、シミュレートされた訓練データ集合によってニューラルネットワークを訓練する。
【0008】
1つ以上の実施形態では、薬剤の薬物動態パラメータ値を予測するためにニューラルネットワークを訓練するためのシステムが開示される。システムは、データストアと、コンピューティングデバイスと、ディスプレイシステムと、を含む。データストアは、区画ベースの薬物動態モデルのシミュレーションパラメータを記憶する。コンピューティングデバイスは、データストアに通信可能に接続され、薬物動態データシミュレーションエンジンおよび薬物動態予測エンジンをホストする。薬物動態データシミュレーションエンジンは、区画ベースの薬物動態モデルを使用して、シミュレートされた訓練データ集合を生成するように構成される。シミュレートされた訓練データ集合は、1つ以上の薬剤のシミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。薬物動態予測エンジンは、シミュレートされた訓練データ収集を使用してニューラルネットワークを訓練するように構成される。
【0009】
1つ以上の実施形態では、被験者に投与された薬剤の少なくとも1つの薬物動態学パラメータを予測するための方法が提供される。1つ以上のプロセッサは、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを受信する。1つ以上のプロセッサは、時系列濃度データセットおよびシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練されたニューラルネットワークに基づいて、薬物動態パラメータについての値を予測する。
【0010】
1つ以上の実施形態では、被験者に投与された薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するためのシステムが提供される。システムは、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを記憶するためのデータストアと、データストアに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスと、コンピューティングデバイスに通信可能に接続されたディスプレイシステムと、を含む。コンピューティングデバイスは、シミュレートされた訓練データ集合を使用してニューラルネットワークを訓練し、時系列濃度データセットおよび訓練されたニューラルネットワークに基づいて薬物動態パラメータについての値を予測するように構成される。ディスプレイシステムは、薬物動態パラメータについて予測された値を含むレポートを表示するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に開示された原理およびその利点のより完全な理解のために、ここで添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【0012】
【
図1】標準的な時系列濃度プロット100を示す可視化グラフであり、例示的なPKパラメータの例を示している。
【0013】
【0014】
【
図3】
図2の時系列濃度プロットに対して実行された台形和計算のワークフローの図である。
【0015】
【
図4】1つ以上の例示的な実施形態にかかる薬物動態(PK)評価システム400のブロック図である。
【0016】
【
図5】様々な実施形態にかかる、例示的なNNシステム、およびそれを使用して時系列濃度データを処理してPKパラメータを予測する方法の描写である。
【0017】
【
図6】様々な実施形態にかかる、学習段階中にNNモデルが訓練され、その後にPKパラメータを予測するために学習したことを実施することができる方法の例示的な高レベルのワークフローを示している。
【0018】
【
図7】例示的な実施形態にかかるパーセント検証誤差を示すプロットの図である。
【0019】
【
図7】様々な実施形態にかかる、被験者(すなわち、患者)に投与された薬剤(例えば、薬物、生物製剤など)のPKパラメータ値を予測するためのシステムの概略図である。
【0020】
【
図8】例示的な実施形態にかかる、訓練反復回数の関数としての訓練および検証損失の例を示すプロットの図である。
【0021】
【
図9】様々な実施形態にかかる例示的な訓練ワークフローの図である。
【0022】
【
図10】様々な実施形態にかかる様々な形態の区画モデリングの一連のプロットの図である。
【0023】
【
図11】例示的な実施形態にかかる従来の台形則と比較して、本明細書に記載のニューラルネットワーク手法を使用してAUCおよびC
maxを推定する改善された精度を示すプロットのセットを示している。
【0024】
【
図10】様々な実施形態にかかる、被験者(すなわち、患者)に投与された薬剤(例えば、薬物、生物製剤など)のPKパラメータ値を予測するための方法を示す例示的なフローチャートである。
【0025】
【
図11】様々な実施形態にかかる、従来の台形則に対する新規NN手法を使用したAUCおよびC
maxの推定の改善された精度を示すプロットである。
【0026】
【
図12】様々な実施形態にかかる、被験者(すなわち、患者)に投与された薬剤(すなわち、薬物または生物製剤)のPKパラメータ値を予測するための方法を示す例示的なフローチャートである。
【0027】
【
図13】様々な実施形態にかかる、薬剤(すなわち、薬物または生物製剤)の薬物動態パラメータ値を予測するためにニューラルネットワークを訓練するための方法を示す例示的なフローチャートである。
【0028】
【
図14】様々な実施形態にかかる、被験者(すなわち、患者)に投与された薬剤(例えば、薬物、生物製剤など)のPKパラメータ値を予測するための方法を示す例示的なフローチャートである。
【0029】
【
図15】本教示の実施形態が実装されることができるコンピュータシステムを示すブロック図である。
【0030】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、図面内の物体は必ずしも互いに一定の縮尺で描かれているわけではないことを理解されたい。図面は、本明細書に開示される装置、システム、および方法の様々な実施形態に明瞭さおよび理解をもたらすことを意図した描写である。可能な限り、同じまたは同様の部分を指すために図面全体を通して同じ参照符号が使用される。さらに、図面は、本教示の範囲を決して限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
I.概要
薬物動態/薬力学(PK/PD)の原理は、様々な治療薬の用量-濃度-効果関係を理解し、そのような治療薬に適切なプロトコル(例えば、投与量、スケジュールなど)を選択するための十分に確立された定量的フレームワークとなっている。薬物動態特性(例えば、以下のセクションIIIで説明するように)を推定するための現在の方法は基本的なものである。例えば、いくつかの現在利用可能な方法は、薬物動態パラメータを数値的に推論する非区画分析(NCA)手法を使用する。そのような方法の1つは、経時的な被験者の血液中の治療薬の量によって形成される曲線下面積(AUC)を推定する。AUCは、AUCが台形の和として計算される台形則を使用して計算されることができる。これらのタイプの手法は単純で高速である。
【0032】
しかしながら、そのような現在利用可能な方法論は、それらの精度が重要な仮定または推定に依存するため、様々な状況において不正確であり得る。これらの推定は、例えば、全ての関連する測定値が利用可能であること、および測定値間の時間間隔が適切に短く凝縮されていることを含む。したがって、台形則を使用したAUCの近似は、薬物動態パラメータを推定する精度に関して制限をもたらす可能性がある。さらに、線形台形則の推定変動性は、データ完全性に強く依存する。欠落した暫定値が線形補間によって帰属される場合、大量の欠落値は推定精度の低下につながる。
【0033】
したがって、上述した問題を認識し、考慮して、本明細書は、患者に投与される治療薬の薬物動態特性を正確に推定または予測するためのシステムおよび方法の様々な例示的な実施形態を記載する。しかしながら、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、薬物動態学におけるそれらの適用に具体的に言及しているが、それらは、トキシコキネティクスおよびトキシコダイナミクスなどの他の類似の分野にも等しく適用可能であることを理解されたい。
【0034】
本明細書中に記載される実施形態は、従来の方法と比較した場合、より高いレベルの精度で薬物動態パラメータを予測するための方法およびシステムを提供する。機械学習(ML)または深層学習(DL)を使用することは、薬物動態モデル化によるこの改善された精度を可能にするのに役立つ。例えば、深層学習システム(例えば、1つ以上のニューラルネットワークモデルを含む)では、薬物動態パラメータの予測は、基礎となるデータの特徴を学習することによって駆動される。さらに、深層学習システムは、推測を行うためにデータ内の局所パターンを利用することを可能にする。さらに、深層学習システムでは、深層学習システムの訓練に使用されるデータ量が増加するにつれて、深層学習システムの予測精度が増加する。
【0035】
様々な実施形態では、1つ以上の数学的モデルを適用してシミュレートされたデータを生成し、1つ以上の既存のまたは潜在的な将来の薬剤(例えば、化学治療薬または毒素、生物学的治療薬または毒素など)のシミュレートされたPKデータを用いて1つ以上の機械学習(ML)または深層学習(DL)アルゴリズム(例えば、畳み込みニューラルネットワークなど)を訓練し、予測値を生成するか、または現実の(例えば、臨床)PKデータを使用して1つ以上のPKパラメータ(例えば、AUC、Cmax、Tmax、t1/2など)の推定値を提供するための方法が提供される。
【0036】
様々な実施形態では、PKパラメータを予測または推定するためのシステムは、測定された(または「現実の」/臨床の)PKデータを記憶するためのデータストアと、PKデータシミュレーションエンジンおよびPK予測エンジンを含むソフトウェアコードをホストおよび実行することができる1つ以上のコンピュータ/サーバとを含むことができる。PKデータシミュレーションエンジンは、1つ以上の数学的モデルを適用して、MLまたはDLアルゴリズムを訓練するために使用されることができるPKデータをシミュレートするように構成されることができる。PK予測エンジンは、シミュレートされたPKデータを使用してMLまたはDLアルゴリズムを訓練し、データストアに記憶された測定されたPKデータを使用してPKパラメータの予測または推定を行うように構成されることができる。
II.定義
【0037】
しかしながら、本開示は、これらの例示的な実施形態および用途、または例示的な実施形態および用途が本明細書で動作するまたは説明される方法に限定されない。さらに、図は、簡略化されたまたは部分的な図を示すことができ、図の要素の寸法は、誇張されているか、または比例していない場合がある。さらに、本明細書では、「の上にある(on)」、「に取り付けられている(attached to)」、「に接続されている(connected to)」、「に結合されている(coupled to)」という用語または同様の用語が使用される場合、一方の要素が他方の要素の上に直接あるか、他方の要素に直接取り付けられているか、他方の要素に接続されているか、または他方の要素に結合されているか、または一方の要素と他方の要素との間に1つ以上の介在要素が存在するかにかかわらず、一方の要素(例えば、材料、層、基板などである)は、他方の要素「の上にある」、「に取り付けられている」、「に接続されている」、または「に結合されている」ことができる。さらに、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)が参照される場合、そのような参照は、それ自体で列挙された要素のいずれか1つ、列挙された要素の全てよりも少ない要素の任意の組み合わせ、および/または列挙された要素の全ての組み合わせを含むことが意図される。本明細書におけるセクションの区分は、単に検討を容易にするためのものであり、説明された要素の任意の組み合わせを限定するものではない。
【0038】
特に定義されない限り、本明細書に記載される本教示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。一般に、化学、生化学、分子生物学、薬理学および毒物学に関連して利用される命名法およびその技術は、本明細書に記載されており、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、意図された目的のために機能するのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当業者によって予想されるが、全体的な性能にそれほど影響しないような、絶対的または完全な状態、寸法、測定値、結果などからの微細な、僅かな変動を可能にする。数値、または数値として表されることのできるパラメータ若しくは特性に関して使用される場合、「実質的に」とは、10パーセント以内を意味する。
【0040】
「複数」という用語は、2つ以上を意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上とすることができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「曲線下面積」(AUC)という語句は、投与後時間の関数としての対象血漿中の治療(薬物)濃度の変動を表す曲線の面積を指すことができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「最大濃度」(Cmax)という語句は、薬物が投与された後で第2の用量の投与前に、治療薬(薬物)が身体の特定の区画または試験領域において達成する最大(またはピーク)血清濃度を指すことができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「最小濃度」(Cmin)または「トラフ濃度」(Ctrough)という語句は、治療薬(薬物)が、薬物が投与された後、第2の用量の投与前に、身体の特定の区画または試験領域において達成する最小(またはピーク)血清濃度を指すことができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「最大濃度の時間」(Tmax)という用語は、治療(薬物)用量が投与された後、次の用量が投与される前に最大濃度に到達する時間を指すことができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「半減期」(t1/2)という用語は、血漿中の治療薬(薬物)の濃度がその定常状態値の半分に到達するのにかかる時間を指すことができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「平均滞留時間」(MRT)という用語は、治療薬(薬物)が作用部位に留まる平均時間を指すことができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「区画モデル」または「区画モデリング」という語句は、身体の異なる領域における治療薬の濃度をモデリングすることによって、試験被験者における合成または天然の治療薬(薬物)のPKパラメータ(ADMEを示す)を予測するために使用される数学的モデリング技術を指すことができる。これらの数学的モデル内で、身体の異なる領域は、治療薬が同じように作用すると仮定することができる区画と呼ばれる部分に分割されることができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「非区画モデル」(NCA)という語句は、試験被験者に投与された治療薬(薬物)のPKパラメータ(ADMEを示す)を予測するために使用されるモデル非依存性の技術(身体区画に関する仮定に依存しないことを意味する)を指すことができる。NCAは、測定された薬物濃度の時間経過から治療薬(薬物)のPKパラメータの計算を可能にする。
【0050】
本明細書で使用される場合、「生物学的」または「高分子治療薬」は、治療効果を有するタンパク質および他の生物学的高分子を指すことができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「治療化合物」または「小分子治療薬」は、900ダルトン未満の比較的低い分子量を有する生物学的プロセスに影響を及ぼす任意の有機化合物を指すことができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「人工ニューラルネットワーク」または「ニューラルネットワーク」(NN)は、数学的アルゴリズムまたは計算モデルを指すことができる。ニューラルネットワークは、非線形ユニットの1つ以上の層を使用して、受信した入力の出力を予測することができる。いくつかのニューラルネットワークは、出力層に加えて1つ以上の隠れ層を含む。各隠れ層の出力は、ネットワーク内の次の層、すなわち、次の隠れ層または出力層への入力として使用される。ネットワークの各層は、各パラメータセットの現在の値にしたがって、受信した入力から出力を生成する。
【0053】
ニューラルネットワークは、2つの方法で情報を処理することができる。それが訓練されているとき、それは「学習モード」にあってもよく、それが学習したことを実際に使用するとき、それは「推論(または予測)モード」にあってもよい。ニューラルネットワークは、出力が訓練データの出力と一致するように、ネットワークが中間隠れ層内の個々のノードの重み係数を調整する(その挙動を修正する)ことを可能にするバックプロパゲーションと呼ばれるフィードバックプロセスを通じて学習することができる。換言すれば、ニューラルネットワークは、訓練データ(学習例)を受信し、新たな範囲または入力のセットが提示された場合であっても、正しい出力に到達する方法を自動的に学習することができる。ニューラルネットワークの種類の例は、これらに限定されないが、以下を含む:フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、モジュール型ニューラルネットワーク(MNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、ResNet(残差ニューラルネットワーク)など。
III.PKパラメータを予測するための従来の方法
【0054】
図1は、標準的な時系列濃度プロット100を示す可視化グラフであり、典型的なPKパラメータの例を示している。本明細書中に示されるように、様々なタイプのPKパラメータ(例えば、C
max102、t
1/2104、C
min106、AUC108など)が、薬物が試験被験者に投与された後の薬物についての時系列濃度プロット100に示される。C
max102は、被験者の血液中の薬物の最高濃度を示す値である。血液中の薬物の最大濃度C
max102およびこの最大値T
maxに到達するのにかかる時間を知ることがしばしば重要である。静脈内ボーラス用量では、薬物が血流に注射された直後に最大濃度が得られ、すなわちT
max=0である。血管外(経口)投与の場合、吸収ステップのため、しばらくするまで濃度はピークにならない。一般に、最大値に到達するのにかかる時間は、システムのC(t)の式をtに関して微分し、導関数を0に設定し、最後にT
maxを解くことによって求めることができる。
【0055】
プロット100において、t1/2104または半減期は、投与後の被験者における薬物の生物学的半減期を表す。すなわち、薬物の半減期は、薬物がその最大濃度の半分を失った時間である。Cmin106は、投与後の血液中の薬物の最低濃度である。このPKパラメータは、生物学的利用能および生物学的同等性研究においてしばしば使用される。
【0056】
AUC108または「曲線下面積」は、被験者の全体的な治療薬曝露を示す値である。AUC108は、ほとんどの種類のモデル(区画または非区画)を使用して評価されることができ、濃度測定の時系列に基づいてグラフィカルに決定されることができる。
【0057】
図2は、時系列濃度プロット200の図である。本明細書に示すように、時系列濃度プロット200は、薬物の投与後に生じる様々な時間間隔で試験被験者から採取された血液試料から測定された時系列濃度データ202を含む。時系列濃度プロット200のAUC204は、従来の「台形則」を使用して推定されることができる系列からなり、時系列濃度プロット200の下方のAUC204は、数学的に、薬物濃度が測定される時間間隔によって括弧で囲まれた台形である一連のAUCセグメント208に細分される。AUC204は、台形和計算として計算される。
【0058】
図3は、
図2の時系列濃度プロット200に対して実行された台形和計算のワークフロー300の図である。データ302は、濃度測定値が生成された時点を含む。プロット304は、AUC204が一連の台形に分割されている、
図2の時系列濃度プロット200の台形に基づく表現を表す。式306は、AUCの推定値を提供するために台形和計算を実行することができる一方法を特定する。したがって、このAUC推定は、個々のサブエリアを合計することによる全エリアの近似に基づく。この数値積分の方法は、一般に、n-1個のセクションにおける最後の観察値t
nまで軌跡が分割されると仮定する。
【0059】
この従来の手法は単純であり、高速であり得るが、その精度は、全ての関連する測定値が利用可能であり、測定値間の時間間隔が適切に短く凝縮されているという重大な推定に依存する。したがって、前述のように、この種の手法は、その精度に関して制限を有する。
IV.深層学習ニューラルネットワークを使用したPKパラメータの推定
【0060】
セクションIIIに記載される精度が損なわれた方法とは対照的に、本開示の様々な実施形態は、被験者に投与される薬剤の1つ以上の薬物動態パラメータ値を正確に予測するための方法およびシステムを提供する。これらの方法およびシステムは、コンピュータソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせを介して実装されることができる。
【0061】
図4は、1つ以上の例示的実施形態にかかる薬物動態(PK)評価システム400のブロック図である。PK評価システム400は、薬物(例えば、治療薬)の投与から生じるPK効果を評価するために使用されることができる。様々な実施形態では、PK評価システム400は、観察されたデータに基づいて訓練され、次いで、経時的なPK効果(観察されたデータが提供または利用可能な時間を超える時間を含む)を予測するために使用される。前述のように、PK効果は、身体内の薬物(例えば、薬物濃度)に対する用量効果または身体の効果である。
【0062】
PK評価システム400は、限定されないが、研究環境、臨床試験環境、薬物開発環境、病院環境、または何らかの他の種類の環境を含む様々な環境において使用されることができる。PK評価システム400は、入力データ401を受信および処理して、これらのPKに基づく情報を記述するおよび/または含むレポート402を生成することができる。入力データ401は、例えば、被験者の血漿から得られた実験室測定値、連続監視装置(例えば、病院または家庭環境における)からの測定値、または何らかの他の種類のデータを含むことができる。レポート402は、例えば、現在の投薬レジメンに基づいて将来の特定の日数または週数について予測されるPK時間経過を含むことができる。場合によっては、レポート402はまた、特定の投薬中断および/または現在の投薬レジメンに対する調整に基づいて予測される対応するPK時間経過の少なくとも一方を含むことができる。レポート402は、問題の個々の被験者について、または臨床試験における被験者のコホート全体について生成されることができる。1つ以上の例では、レポート402は、予測されたPK時間経過に基づく1つ以上の推奨される行動を含むことができる。
【0063】
PK評価システム400は、コンピューティングプラットフォーム403と、データストレージ404と、ディスプレイシステム406とを含む。コンピューティングプラットフォーム403は、様々な形態をとることができる。1つ以上の実施形態では、コンピューティングプラットフォーム403は、互いに通信する単一のコンピュータ(またはコンピュータシステム)または複数のコンピュータを含む。他の例では、コンピューティングプラットフォーム403は、クラウドコンピューティングプラットフォームの形態をとる。いくつかの実施形態では、コンピューティングプラットフォーム403は、コンピューティングデバイス/分析サーバと呼ばれる。いくつかの実施形態では、コンピューティングプラットフォーム403は、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、分散コンピューティングノード(「クラウドコンピューティング」または分散ネットワーキングシステムの一部)、パーソナルコンピュータ、モバイルデバイスなどとすることができる。
【0064】
データストレージ404およびディスプレイシステム406は、それぞれ、コンピューティングプラットフォーム403と通信する。データストレージ404は、限定されないが、「ハードワイヤード」物理ネットワーク接続(例えば、インターネット、LAN、WAN、VPNなど)または無線ネットワーク接続(例えば、Wi-Fi、WLANなど)のいずれかとすることができるネットワーク接続などの様々な方法でコンピューティングプラットフォーム403に通信可能に接続されることができる。
【0065】
いくつかの例では、データストレージ404、ディスプレイシステム406、またはその双方は、コンピューティングプラットフォーム403の一部と見なされるか、そうでなければ統合されてもよい。したがって、いくつかの例では、コンピューティングプラットフォーム403、データストレージ404、およびディスプレイシステム406は、互いに通信する別個の構成要素であってもよいが、他の例では、これらの構成要素のいくつかの組み合わせが一緒に統合されてもよい。
【0066】
PK評価システム400は、コンピューティングプラットフォーム403に実装されたデータマネージャ408および予測システム410を含む。データマネージャ408およびニューラルネットワークシステム410のそれぞれは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせを使用して実装される。データマネージャ408はまた、薬物動態(PK)データシミュレーションエンジンとも呼ばれることがある。予測システム410はまた、薬物動態(PK)予測エンジンとも呼ばれることがある。
【0067】
PK評価システム400の様々な構成要素またはエンジンは、特定の用途またはシステムアーキテクチャの要件に応じて、単一のエンジン、構成要素、またはモジュールに組み合わせられるか、または折り畳まれることができることを理解されたい。さらに、様々な実施形態では、データストレージ404、データマネージャ408、予測システム410、またはそれらの組み合わせは、特定のアプリケーションまたはシステムアーキテクチャによって必要とされる追加のエンジンまたは構成要素を備えることができる。
【0068】
様々な実施形態では、データマネージャ408は、入力データ401をニューラルネットワークシステム410に提供する。この入力データ401は、データストレージ404から取得されてもよく、他の何らかのソースから受信されてもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。入力データ401は、1人以上の被験者からの1つ以上の試料を介して生成されていてもよい。例えば、試料分析器420は、1つ以上の通信リンクを介して(例えば、シリアルバス、無線ネットワーク接続などを介して)データストレージ404に通信可能に接続されることができる。試料分析器420は、試験被験者422などの試験被験者からの血液試料を分析し、血液中の薬剤(薬物または生物製剤)の濃度を決定するように構成されることができる。時系列濃度データは、血液試料が設定時間間隔で被験者422から採取され、試料分析器420を使用して分析されるときに生成されることができる。様々な実施形態では、時系列濃度データは、その後の処理のためにデータストレージ404に記憶されることができる。いくつかの実施形態では、時系列濃度データは、入力データ401としてリアルタイムまたはほぼリアルタイムでデータマネージャ408に供給される。
【0069】
予測システム410は、機械学習または深層学習予測システムである。1つ以上の実施形態では、予測システム410は、ニューラルネットワークシステム411を含む。ニューラルネットワークシステム411は、1つ以上のニューラルネットワークモデルを含む。
【0070】
ニューラルネットワークシステム410が訓練されているとき、入力データ401は、訓練データ416の形態をとる。訓練後、ニューラルネットワークシステム410が実際に使用されてPKパラメータを予測することができ、これらの例では、入力データ401は、試験データ418と呼ばれることがある。したがって、ニューラルネットワークシステム410に提供される入力データ401のタイプは、ニューラルネットワークシステム410が訓練モードにあるか予測モードにあるかに応じて異なる形態をとることができる。
【0071】
例えば、ニューラルネットワークシステム410は、訓練モジュール412および予測モジュール414を含むことができる。訓練モジュール412は、ニューラルネットワークシステム410が訓練されている(例えば、訓練モードにおいて)ときに使用されることができる。一例として、訓練モジュール412は、データマネージャ408から受信した訓練データ416を使用してニューラルネットワークシステム410を訓練する。予測モジュール414は、予測のためにニューラルネットワークシステム410を使用する(例えば、予測モードにおいて)。例えば、ニューラルネットワークシステム410が訓練された後、予測モジュール414が実際に使用されて、データマネージャ408から受信した試験データ418を使用してPKパラメータ424を予測することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、データマネージャ408は、予測システム410によって使用される訓練データ416をシミュレートする。例えば、データマネージャ408は、訓練データ416(例えば、シミュレートされた訓練データ集合)を生成するために、1つ以上の区画ベースの薬物動態モデルを使用するように構成されてもよい。訓練データ416(シミュレートされた訓練データ集合)は、1つ以上のモデル化された薬剤(薬物または生物製剤)の複数の個別のシミュレートされた時系列濃度データセット、および複数の個別のシミュレートされた時系列濃度データセットに対応する1つ以上のPKパラメータについてのシミュレートされた値から構成されることができる。シミュレートされた薬物動態パラメータのタイプの例は、これらに限定されないが、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、Tlast、またはt1/2を含む。
【0073】
様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、シミュレーション時系列濃度データを生成するためにモデルシミュレーションを実行する前に、1つ以上の区画モデルパラメータを入力することによってカスタム構成されることができる。
区画モデルパラメータの例は、これらに限定されないが、投与スキーム(例えば、皮下、経口、静脈内など)、分子クラス(すなわち、小分子または大分子)、分子種(例えば、薬物、mAbs、タンパク質、酵素など)、区画モデル特異的パラメータ(例えば、中央区画の分布容積、吸収定数、脱離定数など)、モデル化種(例えば、哺乳動物、げっ歯類、ヒト、非ヒト霊長類など)、モデル化種人口統計(例えば、年齢、体重、性別など)、ベースラインアルブミン、ベースライン腫瘍サイズなどを含む。
【0074】
様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、1区画薬物動態モデルとすることができる。1区画薬物動態モデルの場合、設定され得る区画モデルパラメータには、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの排出速度などを含む。
【0075】
様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、2区画モデルとすることができる。2区画モデルの場合、設定可能な区画モデルパラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランスなどを含む。
【0076】
様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、ミカエリス・メンテン2区画モデルとすることができる。ミカエリス・メンテンPK2区画モデルの場合、設定されることができる区画モデルパラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランス、非線形クリアランス機構に関連するミカエリス・メンテン定数などを含む。
【0077】
様々な実施形態では、訓練データ416は、ニューラルネットワークシステム411を訓練する際に使用するために、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで予測システム410に送信される。様々な実施形態では、訓練データ416は、生成され、データストレージ404に記憶され、次いで、続いて、訓練用ニューラルネットワークシステム411に送信/取得される。
【0078】
予測システム410は、いくつかの実施形態では、自己組織化ニューラルネットワークを初期化し、訓練データ416を使用してニューラルネットワークを訓練し、被験者から得られた(データ記憶ユニット706に記憶された)薬剤の時系列濃度データセットに基づいて1つ以上のPKパラメータ424を予測するように構成されることができる。予測されたOKパラメータのタイプの例は、これらに限定されないが、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、Tlast、またはt1/2を含む。
【0079】
PKパラメータ424についての値が予測された後、PKパラメータ424は、ディスプレイシステム406上にレポート402(例えば、結果または要約)として表示されることができる。いくつかの実施形態におけるディスプレイシステム406は、コンピューティングプラットフォーム403に通信可能に接続されたクライアント端末426に実装されてもよい。様々な実施形態では、クライアント端末426は、シンクライアントコンピューティングデバイスとすることができる。様々な実施形態では、クライアント端末426は、データストレージ404、データマネージャ408、予測システム410、またはそれらの組み合わせの動作を制御するために使用されることができるウェブブラウザ(例えば、インターネットエクスプローラ(商標)、ファイアボックス(商標)、サファリ(商標)など)を有するパーソナルコンピューティング装置とすることができる。
【0080】
図5は、様々な実施形態にかかる、例示的なNNシステム500、およびそれを使用して時系列濃度データを処理してPKパラメータを予測する方法の描写である。
図5に示すNNシステム500は、PKパラメータ推定または予測のためのMLベースの方法論を実行することができ、それによって、NNモデル510は、訓練されたNNモデル510によるNCA PKパラメータモデリングタスクの自動化を可能にするように、PK区画モデルシミュレーションおよびNCAモデリングによって生成された複数のシミュレートされたPK訓練データセット(すなわち、シミュレートされた時系列濃度データおよびそれらの対応するPKパラメータ)によって訓練される。様々な実施形態では、NNモデル510は、フィードフォワードニューラルネットワークである。様々な実施形態では、NNモデル510は、リカレントニューラルネットワークである。様々な実施形態では、NNモデル510は、モジュール型ニューラルネットワークである。しかしながら、現実の(シミュレートされていない)またはリアルタイムの時系列濃度データ502が供給されたときにPKパラメータ508の正確な推定値または予測値を出力するようにシミュレートされたPK訓練データセットによって訓練されることができる限り、本質的に任意のタイプのNNモデル510のトポロジーが使用されることができることを理解されたい。
【0081】
様々な実施形態では、NNモデル510は、生の入力からより高いレベルの特徴を漸進的に抽出するために複数の(隠れ)層を使用する機械学習アルゴリズムのクラスである深層学習NNモデルである。様々な実施形態では、DL NNモデルは、畳み込みニューラルネットワークである。様々な実施形態では、DL NNモデルは、残差ニューラルネットワークである。
【0082】
図5に示すように、NNモデル510は、入力層504、1つ以上の隠れ層506、および出力層508から構成されることができる。様々な実施形態では、入力層504は、データがNNモデル510によって処理されることができるように、時系列濃度データ502を取り込むように構成される。様々な実施形態では、入力層504は、限定されないが、モデル化されている治療薬(薬剤)、被験者の人口統計情報、疾患状態などの時系列濃度データ以外の追加の入力を取り込むように構成されることができる。
【0083】
様々な実施形態では、隠れ層506は、2層以上、5層以上、4層以上、5層以上、または5層を超えるノードから構成されることができる。様々な実施形態では、(NN510モデルにおける)隠れ層506の数および/または各隠れ層506内のノードの数は、訓練の前に事前設定される。様々な実施形態では、(NN510モデルにおける)隠れ層506の数および/または各隠れ層506内のノードの数は、訓練されているときにNNモデル510によって自動的に設定される。
【0084】
様々な実施形態では、出力層508は、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、TW、またはt1/2を含むがこれらに限定されない1つ以上の種類のPKパラメータを出力するように構成されることができる。
【0085】
高レベルでは、NNモデル510は、入力データの入力層または任意の先行層のいずれかである入力を、NNモデル510の出力の出力層または別の層に対する先行層として機能する任意の所与の層の出力のいずれかである後続層の出力に変えるための正しい数学的操作(訓練データを使用した「学習」による)を見つけることによって動作する。これは、数学的操作が線形関係であるか非線形関係であるかにかかわらず生じる。NNモデル510は、結果の精度を向上させるために、NNモデルの様々な層におけるノードの重み(および任意の閾値)を調整することによって「学習」する。学習は、(訓練データの)追加の観察値を調べるときに完了するが、誤り率を有用に減少させないか、または誤り率を所定の値まで減少させる。複雑なNNモデルは、多くの層を有するため、「深層学習」ニューラルネットワークと呼ばれる。
【0086】
学習(訓練)後およびモデル使用(推論、予測)中、NNモデル510は、数学関数および以前に訓練された重みを介して、入力層/入力データセットを出力層/出力データセットに関連付ける役割を果たす。推論中、重みは固定され、(上記で導入されたような)NNモデル510の層のアーキテクチャとともに重みの入力データおよび数値は、NNモデル510の出力を計算するために入力データおよび重みが一緒にどのように計算されるかの数学関数を表す。
【0087】
図6は、様々な実施形態にかかる、学習段階中にNNモデルが訓練され、その後にPKパラメータを予測するために学習したことを実施することができる方法の例示的な高レベルのワークフローを示している。上述したように、ニューラルネットワークは、2つの方法で情報を処理する。それが訓練されているとき、それは学習段階602にあり、それが学習したことを実際に実行するとき、それは推論段階604にある。
【0088】
本明細書に示すように、学習段階602中に、訓練データ606は、最初に前処理され608、次いで、NNモデル610の様々な層の各々のノードの重み(および任意の閾値)を調整するバックプロパゲーション(これは訓練の一方法である)プロセスを介してNNモデル610に反復的に供給され、それにより、所定の(または事前設定された)検証セット誤差値612および/または試験セット誤差値614に収束する。
【0089】
様々な実施形態では、訓練データ606の前処理608は、訓練データ606を構成する時系列濃度データおよび相関NCA PKパラメータの正規化である。様々な実施形態では、訓練データ606の前処理608は、訓練データ606から低品質のデータセットを除外する。
【0090】
誤差バックプロパゲーションプロセスが、検証セット誤差値612および試験セット誤差値614が所定の(予め設定された)値に収束するように十分な反復を繰り返した後、完全に訓練されたNNモデル618は、推論段階604において使用されることができる。推論段階604では、臨床的に得られた時系列濃度データ616(すなわち、現実世界の臨床データ)は、前処理ステップ620を経て、次いでこの前処理されたデータは、訓練されたNNモデル618に供給され、訓練されたNNモデルは、前処理されたデータを処理し、1つ以上の予測PKパラメータ値622を出力する。出力は、これらに限定されないが、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、Tlastまたはt1/2などのPKパラメータとすることができる。
【0091】
様々な実施形態では、訓練データ606の前処理608は、訓練データ606を構成する時系列濃度データおよび相関NCA PKパラメータの正規化である。様々な実施形態では、訓練データ606の前処理608は、訓練データ606から低品質のデータセットを除外する。
【0092】
図7は、例示的な実施形態にかかるパーセント検証誤差を示すプロット700の図である。プロット700は、予測されたAUC
infおよびC
max値について、訓練段階602の間にNNモデル610を介して検証データセットを実行した後、予測値対実際値として計算されるパーセント検証誤差が、訓練反復回数が増加するにつれてどのように減少するかを示している。しかしながら、予測の精度に対する改善は、NNモデル610のための最適な訓練反復回数が存在すること、および、NNモデルを超えたときに予測精度における減少するリターンが存在することを示唆する訓練反復回数の関数として最終的に横ばいになることに留意されたい。
【0093】
バックプロパゲーション処理中に、「順方向パス」とは、入力データから出力層の値を算出する算出処理をいう。入力データは、第1の層から最後の層までの全てのノードをトラバースする。出力値から損失関数が計算され、次いで「逆方向パス」は、勾配降下アルゴリズム(または同様のもの)を使用して、重みの変化をカウントするプロセス(事実上の学習)を指す。計算は、最後の層から、第1の層に戻るように行われる。逆方向および順方向のパスサイクルが一緒に1回の反復を行う。
【0094】
図8は、例示的な実施形態にかかる、訓練反復回数の関数としての訓練および検証損失の例を示すプロット800の図である。プロット800は、
図6の初期NNモデル610および完全に訓練されたNNモデル61.8に関する訓練損失および検証損失を示している。訓練損失は、データの訓練セットの誤差である。検証損失は、訓練されたネットワークを介してデータの検証セットを模倣した後の誤差である。一般に、損失が低いほど、モデルは良好である(モデルが訓練データに過剰適合していない限り)。損失は、NNモデル610がこれらの2つのセットに対してどの程度良好に動作しているかに関する解釈である。精度とは異なり、損失はパーセンテージではない。それは、訓練または検証セットにおいて各例に対して行われた誤差の合計である。
【0095】
図9は、様々な実施形態にかかる例示的な訓練ワークフロー900の図である。訓練ワークフロー900は、シミュレートされたPKデータがどのように生成され、使用されて訓練データセットを作成することができるかの高レベルの図である。
【0096】
本明細書に示すように、シミュレートされた時系列濃度データ902は、1種類以上のPK区画モデルを用いて生成される。これは、最初に(入力によって)1つ以上のPK区画モデルのシミュレーションパラメータを設定し、次いでPK区画モデルのシミュレーションを実行して、1つ以上の既存または潜在的な将来の治療薬のシミュレーション時系列濃度データ902を生成することを含む。
【0097】
PK区画モデルシミュレーションパラメータの例は、これらに限定されないが、投与スキーム(例えば、皮下、経口、静脈内など)、分子クラス(例えば、小分子または大分子)、分子種(例えば、薬物、mAbs、タンパク質、酵素など)、区画モデル特異的パラメータ(例えば、中央区画の分布容積、吸収定数、脱離定数など)、モデル化種(例えば、哺乳動物、げっ歯類、ヒト、非ヒト霊長類など)、モデル化種人口統計(例えば、年齢、体重、性別など)、ベースラインアルブミン、ベースライン腫瘍サイズなどを含む。
【0098】
様々な実施形態では、1区画モデルが使用されて、時系列濃度データ902をシミュレートすることができる。PK1区画モデルの場合、設定されることができる区画パラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度などを含む。
【0099】
様々な実施形態では、2区画モデルが使用されて、時系列濃度データ902をシミュレートすることができる。PK2区画モデルの場合、設定されることができる区画パラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランスなどを含む。
【0100】
様々な実施形態では、ミカエリス・メンテンPK2区画モデルが使用されて、時系列濃度データ902をシミュレートすることができる。ミカエリス・メンテンPK2区画モデルの場合、設定されることができる区画パラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランス、非線形クリアランス機構に関連するミカエリス・メンテン定数などを含む。
【0101】
シミュレートされた時系列濃度データ902が生成された後、これはまばらにサンプリングされ906、シミュレートされた時系列濃度訓練データセット908のサブセットを形成し、シミュレートされた時系列濃度訓練データセット908のそれぞれは、非区画分析(NCA)904を使用してさらに処理され、それらの対応するシミュレートされたPKパラメータ値910を計算する。シミュレートされたPKパラメータ値のタイプの例は、これらに限定されないが、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、Tlastまたはt1/2を含む。
【0102】
図10は、様々な実施形態にかかる様々な形態の区画モデリングのための一連のプロット1000の図である。一連のプロット1000は、様々な実施形態にしたがって、訓練データセットを形成するためにNCAを使用して予測されたPKパラメータと結合された時系列濃度データをシミュレートするために区画モデリングが使用されることができる方法を示している。
【0103】
図10に示す例では、3つの異なる区画モデル(すなわち、1区画1010、2区画1012および2区画ミカエリス・メンテン1014)が使用されて、シミュレートされた時系列濃度データセット1002を生成した。シミュレートされた時系列濃度データセット1002に対する投与スキームの効果を示すために、異なる治療投与スキーム設定(すなわち、ボーラス1006および経口/皮下1008)を使用して同じ区画モデルシミュレーションを実行した。
【0104】
上述したように、シミュレートされた時系列濃度データセット1002が生成された後、それらは、NCAを使用してさらに処理され、それらの対応するシミュレートされたPKパラメータ値1004を計算する。様々な実施形態では、シミュレートされた時系列濃度データセットは、1つ以上の既存のまたは潜在的な将来の治療薬のものである。
V.実験結果
【0105】
本明細書に開示される改善されたシステムおよび方法が、被験者に投与される薬剤の薬物動態パラメータ値を予測するための従来の手法と比較された。
【0106】
図11は、例示的な実施形態にかかる従来の台形則と比較して、本明細書に記載のニューラルネットワーク手法を使用してAUCおよびC
maxを推定する改善された精度を示すプロットのセット1100を示している。
【0107】
本明細書に示すように、AUCinf%誤差ヒストグラム1102は、本明細書に開示されるNN法および従来の台形則法を使用して決定されたAUCinf値についての%誤差(予測値対実際値)のプロットを示している。NN法を使用して決定されたAUCinf値が、従来の台形則法を使用して決定されたAUCinf値よりもかなり正確であったことは、視覚的にも数値的にも(平均誤差率)明らかである。例えば、AUCinfの場合、NN法の平均パーセント誤差は約9.1であったが、台形則の平均パーセント誤差は約81.5であった。
【0108】
従来の方法に対するNN法の精度の観察された有意な改善は、NN法および従来の一般的な観察方法を使用して決定されたCmax値について%誤差をプロットするCmax%誤差ヒストグラム1104によって強化された。これは、NN予測法を使用した精度の改善が、AUCinf値の決定だけでなく、全てのPKパラメータ(例えば、Cmin、Ctrough、Tmax、またはt1/2)の決定にも当てはまることを示すため、重要である。Cmaxについては、NN法の平均パーセント誤差は、約2.2であり、観察された平均パーセント誤差対真の平均パーセント誤差は、約88.8であった。
VI.例示的な方法
【0109】
図12は、様々な実施形態にかかる、被験者(すなわち、患者)に投与された薬剤(すなわち、薬物または生物製剤)のPKパラメータ値を予測するための方法1200を示す例示的なフローチャートである。
【0110】
ステップ1202において、ニューラルネットワークが、1つ以上のプロセッサによって、シミュレートされた訓練データ集合に基づいて訓練され、シミュレートされた訓練データ集合は、シミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。いくつかの実施形態では、ステップ1202は、複数の個別のシミュレートされた時系列濃度データセットに基づいてニューラルネットワークを訓練することを含み、これは、ひいては、複数の個別のシミュレートされた時系列濃度データセットの各シミュレートされた時系列濃度データセットについて1つ以上の薬物動態パラメータについての値をシミュレートするために使用されることができる。
【0111】
1つ以上の実施形態では、薬物動態学パラメータについてのシミュレートされた値は、シミュレートされた時系列濃度データセットの全体に対応する。1つ以上の実施形態では、薬物動態学パラメータについてのシミュレートされた値は、シミュレートされた時系列濃度データセット(例えば、シミュレートされた時系列濃度データセット内の1つ以上のデータ点)の特定の部分に対応する。
【0112】
様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、リカレントニューラルネットワーク(RNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、モジュール型ニューラルネットワーク(MNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、残差ニューラルネットワーク(ResNet)である。
【0113】
様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、1区画モデルである。様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、2区画モデルである。様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、2区画ミカエリス・メンテンモデルである。
【0114】
ステップ1204において、1つ以上のプロセッサによって、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットが受信される。薬剤は、例えば、小分子治療薬または生物製剤を含むことができる。
【0115】
ステップ1206において、1つ以上のプロセッサによって、時系列濃度データセットおよび訓練されたニューラルネットワークを使用して、薬物動態パラメータについての値が予測される。上述したように、これらに限定されないが、値が予測される薬物動態パラメータのタイプの例は、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、Tlast、またはt1/2を含む。
【0116】
図13は、様々な実施形態にかかる、薬剤(すなわち、薬物または生物製剤)の薬物動態パラメータ値を予測するためにニューラルネットワークを訓練するための方法1300を示す例示的なフローチャートである。
【0117】
ステップ1302において、1つ以上のプロセッサによって、区画ベースの薬物動態モデルのシミュレーションパラメータが受信される。シミュレーションパラメータの例は、これらに限定されないが、投与スキーム(例えば、皮下、経口、静脈内など)、分子クラス(すなわち、小分子または大分子)、分子種(例えば、薬物、mAbs、タンパク質、酵素など)、区画モデル特異的パラメータ(例えば、中央区画の分布容積、吸収定数、脱離定数など)、モデル化種(例えば、哺乳動物、げっ歯類、ヒト、非ヒト霊長類など)、モデル化種人口統計(例えば、年齢、体重、性別など)、ベースラインアルブミン、ベースライン腫瘍サイズなどを含む。
【0118】
様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、1区画モデルである。様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、2区画モデルである。様々な実施形態では、区画ベースの薬物動態モデルは、ミカエリス・メンテンクリアランスを有する2区画モデルである。
【0119】
ステップ1304において、1つ以上のプロセッサによって、区画ベースの薬物動態モデルを使用して、シミュレートされた訓練データ集合が生成される。シミュレートされた訓練データ集合は、シミュレートされた時系列濃度データセット(または複数のシミュレートされた時系列濃度データセット)と、シミュレートされた時系列濃度データセット(または複数のシミュレートされた時系列濃度データセット)に対応する少なくとも1つの薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。1つ以上の実施形態では、1つ以上の薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値が、複数のシミュレートされた時系列濃度データセットの各シミュレートされた時系列濃度データセットについて生成される。
【0120】
区画ベースの薬物動態モデルは、受信したシミュレーションパラメータによって符号化される。シミュレートされた値が生成される薬物動態パラメータのタイプの例は、これらに限定されないが、AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、Tlast、またはt1/2を含む。
【0121】
ステップ1306において、ニューラルネットワークが、1つ以上のプロセッサによって、1つ以上のプロセッサを使用してシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練される。次いで、訓練されたニューラルネットワークが使用されて、薬剤の薬物動態パラメータ値を予測することができる。
【0122】
様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、リカレントニューラルネットワーク(RNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、モジュール型ニューラルネットワーク(MNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、残差ニューラルネットワーク(ResNet)である。
【0123】
図14は、様々な実施形態にかかる、被験者(すなわち、患者)に投与された薬剤(例えば、薬物、生物製剤など)のPKパラメータ値を予測するための方法1400を示す例示的なフローチャートである。
【0124】
ステップ1402において、1つ以上のプロセッサによって、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットが受信される。
【0125】
ステップ1404において、1つ以上のプロセッサによって、時系列濃度データセットおよびシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練されたニューラルネットワークに基づいて、薬物動態パラメータについての値が予測される。ニューラルネットワークは、例えば、限定されないが、
図13の方法1300を介して訓練されることができる。ニューラルネットワークは、1つ以上の薬剤の複数のシミュレートされた時系列濃度データセットと、複数のシミュレートされた時系列濃度データセットの各シミュレートされた時系列濃度データセットに対する1つ以上の薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含むシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練されることができる。
【0126】
様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、リカレントニューラルネットワーク(RNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、モジュール型ニューラルネットワーク(MNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、残差ニューラルネットワーク(ResNet)である。
VII.コンピュータ実装システム
【0127】
図15は、本教示の実施形態が実装されることができるコンピュータシステム1500を示すブロック図である。本教示の様々な実施形態では、コンピュータシステム1500は、情報を通信するためのバス1502または他の通信機構と、情報を処理するためのバス1502に結合されたプロセッサ1504とを含むことができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム1500はまた、プロセッサ1504によって実行される命令を決定するためにバス1502に結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)1506または他の動的記憶デバイスとすることができるメモリを含むことができる。メモリはまた、プロセッサ1504によって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するために使用されることができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム1500は、プロセッサ1504のための静的情報および命令を記憶するためにバス1502に結合された読み出し専用メモリ(ROM)1508または他の静的記憶デバイスをさらに含むことができる。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶デバイス1510が設けられ、情報および命令を記憶するためにバス1502に結合されることができる。
【0128】
様々な実施形態では、コンピュータシステム1500は、バス1502を介して、コンピュータユーザに情報を表示するために、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ1512に結合されることができる。英数字および他のキーを含む入力デバイス1514は、情報およびコマンド選択をプロセッサ1504に通信するためにバス1502に結合されることができる。別の種類のユーザ入力デバイスは、プロセッサ1504に方向情報およびコマンド選択を通信し、ディスプレイ1512上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御装置1516である。この入力デバイス1514は、典型的には、装置が平面内の位置を指定することを可能にする第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)の2軸の2自由度を有する。しかしながら、3次元(x、yおよびz)カーソル移動を可能にする入力デバイス1514も本明細書で企図されることを理解されたい。
【0129】
本教示の特定の実施と一致して、結果は、メモリ1506に含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサ1504に応答して、コンピュータシステム1500によって提供されることができる。そのような命令は、記憶デバイス1510などの別のコンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読記憶媒体からメモリ1506に読み込まれることができる。メモリ1506に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ1504に本明細書に記載のプロセスを実行させることができる。あるいは、本教示を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が使用されることができる。したがって、本教示の実装形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとの特定の組み合わせに限定されない。
【0130】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」(例えば、データストア、データストレージなど)または「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ1504に命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例は、これらに限定されないが、記憶デバイス1510などの光学、固体、磁気ディスクを含むことができる。揮発性媒体の例は、これに限定されないが、メモリ1506などのダイナミックメモリを含むことができる。伝送媒体の例は、これらに限定されないが、バス1502を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含むことができる。
【0131】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
【0132】
コンピュータ可読媒体に加えて、命令またはデータは、実行のためにコンピュータシステム1500のプロセッサ1504に1つ以上の命令のシーケンスを提供するために、通信装置またはシステムに含まれる伝送媒体上の信号として提供されることができる。例えば、通信装置は、命令およびデータを示す信号を有するトランシーバを含むことができる。命令およびデータは、1つ以上のプロセッサに、本明細書の開示に概説される機能を実装させるように構成される。データ通信伝送接続の代表的な例は、これらに限定されないが、電話モデム接続、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、赤外線データ接続、NFC接続などを含むことができる。
VIII.例示的な実施形態
【0133】
様々な例示的な実施形態が本明細書に記載される。
【0134】
1つ以上の実施形態では、薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するようにニューラルネットワークを訓練するための方法が提供される。1つ以上のプロセッサは、区画ベースの薬物動態モデルのシミュレーションパラメータを受信する。1つ以上のプロセッサは、区画ベースの薬物動態モデルを使用してシミュレートされた訓練データ集合を生成する。シミュレートされた訓練データ集合は、1つ以上の薬剤のシミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。区画ベースの薬物動態モデルは、受信したシミュレーションパラメータによって符号化される。次いで、1つ以上のプロセッサは、シミュレートされた訓練データ集合によってニューラルネットワークを訓練する。
【0135】
1つ以上の実施形態では、薬剤の薬物動態パラメータ値を予測するためにニューラルネットワークを訓練するためのシステムが開示される。システムは、データストアと、コンピューティングデバイスと、ディスプレイシステムと、を含む。データストアは、区画ベースの薬物動態モデルのシミュレーションパラメータを記憶する。コンピューティングデバイスは、データストアに通信可能に接続され、薬物動態データシミュレーションエンジンおよび薬物動態予測エンジンをホストする。薬物動態データシミュレーションエンジンは、区画ベースの薬物動態モデルを使用して、シミュレートされた訓練データ集合を生成するように構成される。シミュレートされた訓練データ集合は、1つ以上の薬剤のシミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む。薬物動態予測エンジンは、シミュレートされた訓練データ収集を使用してニューラルネットワークを訓練するように構成される。
【0136】
1つ以上の実施形態では、被験者に投与された薬剤の薬物動態パラメータ値を予測するためのシステムは、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを記憶するためのデータストアと、データストアに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスであって、ニューラルネットワークを訓練し、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットに基づいて薬物動態パラメータ値を予測するように構成された薬物動態予測エンジンを含み、ニューラルネットワークが、1つ以上の薬剤の複数のシミュレートされた時系列濃度データセットならびに対応するシミュレートされた薬物動態パラメータ値を含むシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練された、コンピューティングデバイスと、コンピューティングデバイスに通信可能に接続され、予測された薬物動態パラメータ値を含むレポートを表示するように構成されたディスプレイと、を備える。
【0137】
1つ以上の実施形態では、被験者に投与される薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータ値を予測するためのコンピュータ命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、1つ以上のプロセッサによって、シミュレートされた訓練データ集合に基づいてニューラルネットワークを訓練することであって、シミュレートされた訓練データ集合が、シミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む、ニューラルネットワークを訓練することと、1つ以上のプロセッサによって、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを受信することと、1つ以上のプロセッサによって、時系列濃度データセットおよび訓練されたニューラルネットワークを使用して、薬物動態パラメータについての値を予測することと、を含む。
【0138】
1つ以上の実施形態では、薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するようにニューラルネットワークを訓練するためのコンピュータ命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、区画ベースの薬物動態モデルのシミュレーションパラメータを受信することと、区画ベースの薬物動態モデルを使用してシミュレートされた訓練データ集合を生成することであって、シミュレートされた訓練データ集合が、1つ以上の薬剤のシミュレートされた時系列濃度データセットと、シミュレートされた時系列濃度データセットに対応する薬物動態パラメータについてのシミュレートされた値とを含む、シミュレートされた訓練データ集合を生成することと、受信したシミュレーションパラメータを用いて区画ベースの薬物動態モデルを符号化することと、シミュレートされた訓練データ集合を用いてニューラルネットワークを訓練することと、を含む。
【0139】
1つ以上の実施形態では、被験者に投与される薬剤の少なくとも1つの薬物動態パラメータを予測するためのコンピュータ命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、1つ以上のプロセッサによって、被験者から得られた薬剤の時系列濃度データセットを受信することと、1つ以上のプロセッサによって、時系列濃度データセットおよびシミュレートされた訓練データ集合を使用して訓練されたニューラルネットワークに基づいて、薬物動態パラメータについての値を予測することと、を含む。
【0140】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実施形態のニューラルネットワークは、いくつかの実施形態では畳み込みニューラルネットワークである。
【0141】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の例示的な実施形態のうちの1つ以上のシミュレーションパラメータは、シミュレートされている薬剤のクラスである。
【0142】
1つ以上の実施形態では、本明細書中に記載される例示的な実施形態の1つ以上の薬剤は、小分子治療薬または生物製剤のうちの1つである。
【0143】
1つ以上の実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上の例示的な実施形態のシミュレーションパラメータは、薬剤のための投薬スキームである。
【0144】
1つ以上の実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上の例示的な実施形態の投与スキームは、薬剤の静脈内投与または薬剤の経口投与のうちの1つである。
【0145】
1つ以上の実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上の例示的な実施形態の区画ベースの薬物動態学モデルは、1区画モデル、2区画モデルまたはミカエリス・メンテンモデルのうちの少なくとも1つを含む。
【0146】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実施形態のデータストアおよびコンピューティングデバイスは、一体化された装置の一部である。
【0147】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実施形態のデータストアは、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実施形態のコンピューティングデバイスとは異なるデバイスによってホストされる。
【0148】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実施形態のデータストアおよびコンピューティングデバイスは、分散ネットワークシステムの一部である。
IX.さらなる考察
【0149】
本明細書に記載のフローチャート、図、および付随する開示は、コンピュータシステム1300をスタンドアロンデバイスとして使用して、またはクラウドコンピューティングネットワークなどの共有コンピュータ処理リソースの分散ネットワーク上で実装されることができることを理解されたい。
【0150】
本明細書に記載の方法論は、用途に応じて様々な手段によって実装されることができる。例えば、これらの方法は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されることができる。ハードウェア実装の場合、処理ユニットは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書に記載された機能を実行するように設計された他の電子ユニット、および/またはそれらの組み合わせ内に実装されることができる。
【0151】
様々な実施形態では、本教示の方法は、C、C++、Pythonなどのような従来のプログラミング言語で書かれたファームウェアおよび/またはソフトウェアプログラムおよびアプリケーションとして実装されてもよい。ファームウェアおよび/またはソフトウェアとして実装される場合、本明細書に記載の実施形態は、コンピュータに上述した方法を実行させるためのプログラムが記憶された非一時的コンピュータ可読媒体上に実装されることができる。本明細書に記載の様々なエンジンは、コンピュータシステム1100などのコンピュータシステム上に提供されることができ、それによってプロセッサ1104は、メモリ構成要素1106/1108/1110および入力デバイス1114を介して提供されるユーザ入力のいずれか一方またはそれらの組み合わせによって提供される命令にしたがって、これらのエンジンによって提供される分析および決定を実行することを理解されたい。
【0152】
本教示は、様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、および均等物を包含する。
【0153】
様々な実施形態を説明する際に、本明細書は、特定の一連のステップとして方法および/またはプロセスを提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載の特定の順序のステップに依存しない限り、方法またはプロセスは、記載の特定の順序のステップに限定されるべきではなく、当業者は、順序が変更されてもよく、依然として様々な実施形態の趣旨および範囲内にあることを容易に理解することができる。