IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ 東北パイオニア株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】音響再生装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/04 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
H04R3/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023026011
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2021066969の分割
【原出願日】2015-09-15
(65)【公開番号】P2023062165
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2014264512
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善直
(72)【発明者】
【氏名】黒田 敏博
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-054863(JP,A)
【文献】特開2011-254297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/00-11/06
G10K 15/00-15/12
H04R 3/00- 3/14
H04S 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性を入力信号へ重畳する演算を行う演算装置と、
前記演算された信号を増幅して前記スピーカユニットに出力する増幅装置と、
前記演算装置で演算された信号レベルの調整を行うイコライザと、
を備え、
前記逆特性は、車内における前記スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性であって、当該逆特性の低域の一部がカットされており、
前記演算装置は、前記逆特性に、前記車内の前記出力音圧周波数特性の予測値と前記車内の前記出力音圧周波数特性の実測値との差分から生成された補正情報を加算し、
前記イコライザは、前記補正情報を加算した前記逆特性を用いて前記演算装置で演算された結果に対して前記調整を行
前記カットされる前記逆特性の一部における、周波数の上限値は、前記増幅装置の可変の増幅率に合わせて変化し、前記増幅率が小さいほど小さことを特徴とする音響再生装置。
【請求項2】
前記カットされる前記逆特性の一部における、周波数の上限値は、100Hzであることを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項3】
前記車内における前記スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性の傾きは、低域の所定の周波数範囲において、自由音場における前記スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性の傾きよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の音響再生装置。
【請求項4】
前記イコライザは、前記結果に対して、1/3オクターブ毎または1/6オクターブ毎に出力音圧レベルを調整することを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の音響再生装置。
【請求項5】
前記イコライザは、前記結果に対する調整を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の音響再生装置。
【請求項6】
前記イコライザによる前記結果に対する調整が限界であるときに、前記イコライザによる前記結果に対する調整を終了することを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の音響再生装置。
【請求項7】
スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性を入力信号へ重畳する演算を行う演算工程と、
前記演算された信号を増幅装置で増幅させて前記スピーカユニットに出力させる増幅工程と、
前記演算工程で演算された信号レベルの調整を行うイコライジング工程と、
を含む音響再生装置の再生方法において、
前記逆特性は、車内における前記スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性であって、当該逆特性の低域の一部がカットされており、
前記演算工程は、前記逆特性に、前記車内の前記出力音圧周波数特性の予測値と前記車内の前記出力音圧周波数特性の実測値との差分から生成された補正情報を加算し、
前記イコライジング工程は、前記補正情報を加算した前記逆特性を用いて前記演算工程で演算された結果に対して前記調整を行
前記カットされる前記逆特性の一部における、周波数の上限値は、前記増幅装置の可変の増幅率に合わせて変化し、前記増幅率が小さいほど小さい、
ことを特徴とする音響再生装置の再生方法。
【請求項8】
請求項に記載の音響再生装置の再生方法を、コンピュータにより実行させることを特徴とする音響再生装置の再生プログラム。
【請求項9】
請求項に記載の音響再生装置の再生プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載するスピーカユニットは、省エネルギーの観点からなるべく軽く小型であることが望ましい。しかし、比較的口径の小さなスピーカユニットでは、比較的口径の大きなスピーカユニットに比べて特に低音が不足する場合がある。比較的口径の小さなスピーカユニットの周波数特性は、例えば100Hz以下で比較的口径の大きなスピーカユニットに比べて急峻に音圧が下がる場合があった。このため、特に小~中音量における再生で低音不足が感じられる。
【0003】
比較的口径の小さなスピーカユニットの低音不足を補うためには、増幅装置(アンプ)で低音信号を大きく出力するなどの方法がある。例えば、特許文献1には、周波数特性を調整したいベースやドラム等の音楽成分が比較的大きいときは、低域(低音)のブースト量を上げることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-17480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、増幅装置等で低音を大きく出力すると特に大音量の再生においては、スピーカユニットにとって増幅装置からの信号が大きすぎて異音を発生する場合があり、再生音の品位が損なわれる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、例えば、比較的小さな口径のスピーカユニットにおいても、小~中音量の再生における低音の不足を解消するとともに、大音量の再生における再生音の品位が損なわれないようにすることができる音響再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性を入力信号へ重畳する演算を行う演算装置と、前記演算された信号を増幅して前記スピーカユニットに出力する増幅装置と、前記演算装置で演算された信号レベルの調整を行うイコライザと、を備え、前記逆特性は、車内における前記スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性であって、当該逆特性の低域の一部がカットされており、前記演算装置は、前記逆特性に、前記車内の前記出力音圧周波数特性の予測値と前記車内の前記出力音圧周波数特性の実測値との差分から生成された補正情報を加算し、前記イコライザは、前記補正情報を加算した前記逆特性を用いて前記演算装置で演算された結果に対して前記調整を行い、前記カットされる前記逆特性の一部における、周波数の上限値は、前記増幅装置の可変の増幅率に合わせて変化し、前記増幅率が小さいほど小さいことを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性を入力信号へ重畳する演算を行う演算工程と、前記演算された信号を増幅装置で増幅させて前記スピーカユニットに出力させる増幅工程と、前記演算工程で演算された信号レベルの調整を行うイコライジング工程と、を含む音響再生装置の再生方法において、前記逆特性は、車内における前記スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性であって、当該逆特性の低域の一部がカットされており、前記演算工程は、前記逆特性に、前記車内の前記出力音圧周波数特性の予測値と前記車内の前記出力音圧周波数特性の実測値との差分から生成された補正情報を加算し、前記イコライジング工程は、前記補正情報を加算した前記逆特性を用いて前記演算工程で演算された結果に対して前記調整を行前記カットされる前記逆特性の一部における、周波数の上限値は、前記増幅装置の可変の増幅率に合わせて変化し、前記増幅率が小さいほど小さい、ことを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の音響再生装置の再生方法を、コンピュータにより実行させることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載された発明は、請求項に記載の音響再生装置の再生プログラムを格納したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例にかかる音響再生装置を有する音響再生システムのブロック構成図である。
図2図1に示されたスピーカユニットの周波数特性と逆特性の例を示したグラフである。
図3図1に示されたスピーカユニットの入力信号レベルに対する周波数特性を示したグラフである。
図4図1に示されたスピーカユニットの入力信号レベルに対する周波数特性を示したグラフである。
図5図1に示されたスピーカユニットの入力信号レベルごとの逆特性を示したグラフである。
図6図1に示されたスピーカユニットの音響再生装置での演算後の入力信号レベルに対する周波数特性を示したグラフである。
図7図1に示された音響再生装置の動作のフローチャートである。
図8】自由音場におけるスピーカユニットの入力信号レベルに対する出力音圧周波数特性のグラフである。
図9図8における破線と一点鎖線の差分を示したグラフである。
図10】車両の車室内(圧力音場)におけるスピーカユニットの入力信号レベルに対する出力音圧周波数特性のグラフである。
図11図10における破線と一点鎖線の差分を示したグラフである。
図12】本発明の第2の実施例にかかる音響再生装置のブロック構成図である。
図13図12に示された音響再生装置の出力音圧特性の調整方法のフローチャートである。
図14】車室内における出力音圧特性と逆特性とを比較したグラフである。
図15】基本特性情報と逆特性とを比較したグラフである。
図16】うねり成分情報と基本特性情報とうねり成分情報を加算した調整値とを比較したグラフである。
図17】うねり成分情報を加算した後の調整値と逆特性を比較したグラフである。
図18】調整後の車室内予測値と調整前の車室内特性とを比較したグラフである。
図19】調整後の車室内予測値と実測値とを比較したグラフである。
図20】グラフィックイコライザの調整パラメータの例である。
図21図20に示したパラメータでグラフィックイコライザによる調整を行った後の調整値と逆特性とを比較したグラフである。
図22】調整後の車室内予測値と調整前の車室内特性とを比較したグラフを示す。
図23】調整後の車室内予測値と実測値とを比較したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる音響再生装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる音響再生装置は、入力信号の演算を行う演算装置と、その演算がされた信号を増幅してスピーカユニットに出力する増幅装置と、を備えている。そして、演算装置は、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性を入力信号へ重畳する演算を行う。このようにすることにより、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性に基づいて、スピーカユニットの出力音圧周波数特性をフラットにすることができ、低音の不足を解消することができる。
【0013】
また、演算装置は、低域における逆特性の一部をカットする演算を行ってもよい。このようにすることにより、スピーカユニットが持続的に音を放射できる最大の出力音圧を超えた信号を入力されてスピーカユニットから異音が発生することを防止できる。したがって、大音量の再生における再生音の品位が損なわれないようにすることができる。
【0014】
また、カットされる逆特性の一部における、周波数の上限値は、増幅装置の増幅率が小さいほど小さくしてもよい。このようにすることにより、増幅率が小さいほどより低域の周波数までスピーカユニットから異音が発生しなくなるので、より低音まで再生音の品位が損なわれることなく再生させることができる。したがって、小音量における低音不足を解消することができる。
【0015】
また、カットされる逆特性の一部における、周波数の上限値は、100Hzであってもよい。このようにすることにより、特に低域を再生するスピーカユニットに対応させることができる。
【0016】
また、逆特性は、車内におけるスピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性であってもよい。このようにすることにより、スピーカユニットが設置された車両に応じた周波数特性に合わせることができる。
【0017】
また、演算装置は、逆特性に車内における出力音圧周波数特性に基づいた補正情報を加算してもよい。このようにすることにより、スピーカユニットの特性に基づいた逆特性だけでなく、車室の形状等による定在波の影響を考慮した補正をすることができるので、車両に搭載した際にスピーカユニットの周波数特性をフラットに近づけることができる。
【0018】
また、車内におけるスピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性の傾きは、低域の所定の周波数範囲において、自由音場におけるスピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性の傾きよりも、小さくなっている。このような傾向を示すため、自由音場で測定した結果に基づき逆特性をそのまま利用するよりも、車内(圧力音場)における特性に合わせた逆特性を利用することで、車内におけるスピーカユニットの周波数特性をフラットに近づけることができる。
【0019】
また、移動体に上述した音響再生装置を備えてもよい。このようにすることにより、車両等の移動体において、スピーカユニットの出力音圧周波数特性をフラットにすることができ、低音の不足を解消することができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態にかかる音響再生装置の再生方法は、入力信号の演算を行う演算工程と、その演算がされた信号を増幅装置で増幅させてスピーカユニットに出力させる増幅工程と、を含んでいる。そして、演算工程は、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性を入力信号へ重畳する演算を行う。このようにすることにより、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性に基づいて、スピーカユニットの出力音圧周波数特性をフラットにすることができ、低音の不足を解消することができる。
【0021】
また、演算工程は、低域における出力音圧周波数特性の一部をカットする演算を行ってもよい。このようにすることにより、スピーカユニットが持続的に音を放射できる最大の出力音圧を超えた信号を入力されてスピーカユニットから異音が発生することを防止できる。大音量の再生における再生音の品位が損なわれないようにすることができる。
【0022】
また、上述した音響再生装置の再生方法をコンピュータにより実行させる音響再生装置の再生プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、スピーカユニットの出力音圧周波数特性の逆特性に基づいて、スピーカユニットの出力音圧周波数特性をフラットにすることができ、低音の不足を解消することができる。
【0023】
また、上述した音響再生装置の再生プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例1】
【0024】
本発明の第1の実施例にかかる音響再生装置を図1乃至図7を参照して説明する。図1に本実施例にかかる音響再生装置10を有する音響再生システム1を示す。
【0025】
音響再生システム1は、電源2と、MAIN UNIT3と、スピーカユニット4と、音響再生装置10と、を備えている。
【0026】
電源2は、外部または自身が有するバッテリ等からの電源電圧を所定の直流電圧に変換してMAIN UNIT3や音響再生装置10に供給する。
【0027】
MAIN UNIT3は、例えばCD(Compact Disc)プレーヤやメモリオーディオ、ラジオ受信機等の音響信号を音響再生装置10に出力する装置である。
【0028】
スピーカユニット4は、例えばサブウーハ等で構成されている。なお、スピーカユニット4は、サブウーハに限らず、ウーハやフルレンジ等であってもよい。
【0029】
音響再生装置10は、μCom11と、DSP12と、AMP13と、を備えている。μCom11は、音響再生装置10の制御を司り、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えた周知のマイクロコンピュータ(マイコン)である。
【0030】
DSP12は、μCom11からの制御に基づいて、MAIN UNIT3から入力された音響信号に対して後述する演算を行う。DSP12は、周知のようにデジタル信号処理演算に特化したマイクロプロセッサであり、内部にCPUやROM,RAMおよび信号処理用の演算器等を備えている。DSP12は、演算後の信号をAMP13に出力する。
【0031】
本実施例では、μCom11とDSP12とで演算装置を構成している。但し、μCom11のみ、あるいはDSP12のみで演算装置を構成してもよい。また、音響信号は、演算装置に入力される入力信号となり、DSP12で入力信号の演算を行う。そして、DSP12の出力信号が、演算装置で演算された信号となる。
【0032】
AMP13は、DSP12から入力される信号を、例えば図示しないボリューム等に基づいた所定の増幅率に増幅してスピーカユニット4に出力する増幅装置である。AMP13は、デジタル/アナログ変換器付アナログアンプであってもよいし、デジタルアンプであってもよい。
【0033】
ここで、DSP12が行う演算について図2乃至図6を参照して説明する。図2は、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性とその逆特性を示したグラフである。図2において、縦軸は出力音圧レベル、横軸は周波数である。
【0034】
スピーカユニット4は図2の実線に示したような出力音圧周波数特性を示す。この場合、約80Hz以下の低域では、出力音圧レベルが低下している。そこで、この出力音圧周波数特性の図2の破線で示したような逆特性のフィルタ処理を行う。これは、例えば逆特性の周波数信号をMAIN UNIT3から入力された音響信号に加算(重畳)することで、スピーカユニット4から放射される出力音圧周波数特性をフラットにして、特に低域の特性を改善させることができる。
【0035】
スピーカユニット4の出力音圧周波数特性は、あらかじめ測定しその測定結果から逆特性を生成する。そして、その逆特性情報をDSP12内のメモリ等に記憶させておく。DSP12は、記憶されている逆特性の周波数信号をMAIN UNIT3から入力された音響信号に加算(重畳)する演算を行う。
【0036】
但し、特性情報を図2に示した逆特性のままとすると、所定の周波数以下ではスピーカユニット4が持続的に音を放射できる最大の出力音圧を超えた信号が入力されるため異音等が発生してしまうことがある。一例を図3に示す。図3は、スピーカユニット4の入力信号レベルに対する出力音圧周波数特性であり、縦軸に出力音圧レベル、横軸に周波数を示している。そして、実線が入力信号レベル-5dBV、破線が入力信号レベル-10dBV、一点鎖線が入力信号レベル-15dBV、二点鎖線が入力信号レベル-20dBVである。
【0037】
図3において、各入力信号レベルとも所定の周波数以下はプロットされていない。これは、当該周波数以下ではスピーカユニット4が持続的に音を放射できる最大の出力音圧を超えた信号が入力されるために当該スピーカユニット4に異音が発生することを示している。この異音が発生する周波数は入力信号レベルが小さくなるほど小さくなっている。
【0038】
この異音は、例えばスピーカユニット4の振動版が大きな振幅で振動する際に、ボイスコイル等が磁気ギャップ内においてポールヨーク等に衝突することにより生じる。つまり、スピーカユニットの入力信号レベルが大きいほど発生しやすくなるため、AMP13における増幅率が大きいほど発生しやすくなる。
【0039】
図4は、図2に示した逆特性を加算しない状態における、いくつかの異なる大きさの入力信号レベルに対するスピーカユニットの出力音圧周波数特性である。実線に示される特性は、約45Hz以下で-10dBから出力音圧レベルが下がり始め20Hzでは-28dBまで下がっている。破線に示される特性は、約45Hz以下で-15dBから出力音圧レベルが下がり始め20Hzでは-32dBまで下がっている。一点鎖線に示される特性は、約45Hz以下で-20dBから出力音圧レベルが下がり始め20Hzでは-37dBまで下がっている。二点鎖線に示される特性は、約45Hz以下で-25dBから出力音圧レベルが下がり始め20Hzでは-42dBまで下がっている。
【0040】
いずれの場合も出力音圧レベルが下がり始めるのは同じ約45Hzであるために、出力音圧レベルが小さい場合にはスピーカが出すことが出来る最大の音圧に満たない音圧しか出していない。そのため、特に小さな音で再生される場合に使用者が低音不足であると感じる場合がある。
【0041】
そこで、本実施例では、逆特性のうち所定の周波数以下をカットして、スピーカユニット4が持続的に音を放射できる最大の出力音圧を超えた信号を入力しないようにする。図5に、入力信号レベルごとの逆特性の例を示す。図5の例では、逆特性信号のレベルに応じて約55Hz以下をカットしている。
【0042】
そして、低域をカットした逆特性の周波数信号をMAIN UNIT3から入力された音響信号に重畳する。この時の演算の一例としては、低域をカットした逆特性の周波数信号とMAIN UNIT3から入力された音響信号にそれぞれ所定の重み付けをして加算を行う。そして重畳された出力信号をAMP13に入力する。
【0043】
低域をカットした逆特性の周波数信号とMAIN UNIT3から入力された出力音圧周波数特性を有する音響信号とを重畳して、AMP13を経てスピーカユニット4から放射される出力音圧周波数特性の一例を図6に示す。なお、この例ではMAIN UNIT3から入力された出力音圧周波数特性は全周波数にわたってフラットであるものとする。図6の場合、入力信号レベルに応じて約65Hz~35Hz以下をカットするようにしている。このようにすることにより、カットする周波数以下では、スピーカユニット4の特性にしたがって、出力音圧レベルが低下し、異音が発生することを防止できる。
【0044】
したがって、本実施例では、AMP13の増幅率によって逆特性のうちカットする周波数の上限値を変化させる。例えば、図6に示したように、入力信号レベルが-5dBVに相当する増幅率のときは、例えば65Hz以下はカットする。また、入力信号レベルが-10dBVに相当する増幅率のときは、例えば45Hz以下はカットし、入力信号レベルが-15dBVに相当する増幅率のときは、例えば35Hz以下はカットするようにする。このようにすることにより、AMP13の増幅率が小さいほどカットする周波数の上限値を小さくすることができる。なお、増幅率が所定値以下の場合はカットしなくてもよい。例えば図6に示した-20dBV以下ではカットしなくても異音は発生しないと思われるため、このような場合は、カットしないようにする。
【0045】
即ち、特性情報において、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性のうちカットされる低域の一部における、周波数の上限値は、AMP13の増幅率が小さいほど小さくしている。このようにすることで、AMP13の増幅率は小さい場合でも低域の音圧レベルがより小さい周波数まで延びるために、低音不足が相当程度解消される。
【0046】
また、このカットされる低域の一部における、周波数の上限値としては可聴周波数帯のうち100Hz以下の範囲で変化させてもよい。この100Hzは例えば最大の増幅率のときに異音が発生する周波数に基づいて設定された値であり、サブウーハの場合に好適な値である。勿論前記100Hzや65Hz等は、対象となるスピーカユニットの出力音圧周波数特性に基づいて適宜変更してもよい。本実施例は、スピーカユニットの出力音圧周波数特性において、低域の特性を改善させるものであり、カットされる低域の一部における、周波数の上限値は、対象となるスピーカユニットの低域の特性が悪化する周波数に応じて設定すればよい。
【0047】
次に、上述した構成の音響再生装置10の動作(音響再生装置の再生方法)について図7のフローチャートを参照して説明する。図7に示したフローチャートはμCom11のROM等に記憶されている音響再生装置の再生プログラムをμCom11のCPU上で実行することで動作する。
【0048】
まず、ステップS1において、μCom11はAMP13から増幅率を取得する。次に、ステップS2において、μCom11はDSP12に対してステップS1で取得した増幅率に応じた逆特性信号を音響信号に加算(重畳)する演算を行わせる。ここで、逆特性信号は、増幅率応じて複数種類がDSP12のメモリ等にデータ等として記憶されている。あるいは、1つの増幅率(例えば最大値)の場合のみを記憶し、それに対して増幅率に応じた所定の係数等を乗じることで生成するようにしてもよい。
【0049】
次に、ステップS3でμCom11はAMP13の増幅率が変化したか否かを判断し、変化した場合(YESの場合)はステップS1に戻り、変化しない場合(NOの場合)はステップS4に進む。
【0050】
次に、ステップS4でμCom11は電源がOFFされたか否かを判断し、OFFされた場合(YESの場合)は終了し、OFFされない場合(NOの場合)はステップS3に戻る。
【0051】
本実施例によれば、音響再生装置10は、入力信号に対して演算を行うDSP12およびμCom11と、その演算がされた信号を増幅してスピーカユニットに出力するAMP13と、を備えている。そして、DSP12およびμCom11は、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性の低域の一部をカットし、入力信号へ加算(重畳)する演算を行う。このようにすることにより、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性に基づいて、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性をフラットにすることができ、低音の不足を解消することができる。また、逆特性のうち低域の一部をカットすることで、スピーカユニット4が持続的に音を放射できる最大の出力音圧を超えた信号が入力されてスピーカユニット4から異音が発生することを防止できる。したがって、大音量の再生における再生音の品位が損なわれないようにすることができる。
【0052】
また、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性のうちカットされる低域の一部の上限周波数は、AMP13の増幅率が小さいほど小さくしている。このようにすることにより、増幅率が小さいほどスピーカユニット4から異音の発生しづらくなるので、より低音まで再生させることができる。したがって、小音量における低音不足を解消することができる。
【0053】
また、本実施例のスピーカユニット4としてはサブウーハとしている。このようにすることにより、サブウーハにおいて、小~中音量の再生における低音の不足を解消するとともに、大音量の再生における異音の発生を抑えることができる。
【0054】
なお、特性情報の元となるスピーカユニット4の出力音圧周波数特性は、当該スピーカユニット4の開発時に測定したものを利用してもよいが、例えばスピーカユニット4を部屋等の空間に設置した状態で測定して、その測定値に基づいて出力音圧周波数特性を得て、逆特性を生成するようにしてもよい。スピーカユニット4の出力音圧周波数特性としては、例えば、所定の測定信号をスピーカユニット4に入力し、スピーカユニット4から発せられた音をマイクで集音することによって測定する等が挙げられる。このようにすることにより、スピーカユニット4が設置された空間に応じた出力音圧周波数特性に合わせることができる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の第2の実施例にかかる音響再生装置を図8乃至図23を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
第1の実施例で説明した音響再生装置10は、移動体、例えば自動車等の車両に搭載することも可能である。しかしながら、車内(車室内)においては、第1の実施例に示したような逆特性を重畳するだけでは、出力音圧特性をフラットにできないことが発明者らによる実験により判明した。
【0057】
図8は、自由音場におけるスピーカユニット4の入力信号レベルに対する出力音圧周波数特性のグラフである。ここで、自由音場とは、等方性かつ均質の媒質中で境界の影響を無視できる音場をいうが、本実施例においては、無響室或いは建物の部屋等の自動車の車内よりも広い空間で車内よりも壁などによる反射の影響が少ない空間をいう。図8の実線は第1の実施例で説明した方法による調整(以下、第1の調整とする)をしない場合のスピーカユニット4の出力音圧周波数特性を示し、破線は第1の調整を加味した出力音圧周波数特性の予測値を示し、一点鎖線は第1の調整を加味した出力音圧周波数特性の実測値を示している。
【0058】
図9は、図8における破線と一点鎖線の差分を示したグラフである。図9に示したように、低域(約300Hz以下)では予測値と実測値とでは大きな差異は見られない。
【0059】
図10は、車両の車室内(圧力音場)におけるスピーカユニット4の入力信号レベルに対する出力音圧周波数特性のグラフである。図10の実線は第1の調整をしない場合のスピーカユニット4の出力音圧周波数特性を示し、破線は第1の調整を加味した出力音圧周波数特性の予測値を示し、一点鎖線は第1の調整を加味した出力音圧周波数特性の実測値を示している。
【0060】
図11は、図10における破線と一点鎖線の差分を示したグラフである。図11に示したように、低音(約200Hz以下)において予測値と実測値とでは振幅のうねりが発生している。以下、このうねりをうねり成分と呼ぶ。
【0061】
このうねり成分は、密閉空間である車室の形状による影響やスピーカユニット4から放射された音が車室内で反射した際の定在波の影響等と考えられる。従って、車両に音響再生装置10を搭載した場合は、うねり成分の影響により単に逆特性を重畳するだけでは出力音圧特性をフラットにすることができないことが明らかとなった。そこで、本実施例では、うねり成分を考慮した補正を含む調整を行っている。
【0062】
図12に本実施例にかかる音響再生装置10Aのブロック構成図を示す。図12に示した音響再生装置10Aは、図1に示した構成に対してグラフィックイコライザ(GEQ)14が追加されている。グラフィックイコライザ14は、DSP12の出力に対して、例えば1/3オクターブ毎や1/6オクターブ毎に出力音圧レベルを上げる又は下げるように調整を行いAMP13に出力する。なお、音響再生装置10Aは、例えば車内の座席の下やMAIN UNIT3やスピーカユニット4の近傍等車内に設置されている。
【0063】
図13に本実施例の車室内における出力音圧特性の調整方法のフローチャートを示す。まず、ステップS101において、車室内の出力音圧周波数特性を測定する。この測定は、直接対象とする車両で行ってもよいし、仮想的に車室空間を模した環境等により行ってもよい。
【0064】
次に、ステップS102において、ステップS101で測定した出力音圧周波数特性の逆特性を生成する。図14に、ステップS101で測定した出力音圧周波数特性(実線)と本ステップで生成した逆特性(破線)とを比較したグラフを示す。ここで、図14に示した車内におけるスピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性は、図2に示した自由音場におけるスピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性と比較すると、低域の所定の周波数範囲(10~80Hz)において、周波数が上がるにしたがって出力音圧が穏やかに低下する(図14のA)。つまり、車内におけるスピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性の傾きは、自由音場におけるスピーカユニット4の出力音圧周波数特性の逆特性の傾きと比較すると、低域の所定の周波数範囲(10~80Hz)において、小さい。ここで、低域とは本実施例の場合約10~80Hz程度を示すが、スピーカユニット4の特性により概ね数百Hz以下の範囲を示す。なお、出力音圧周波数特性の逆特性の傾きとは、低域の所定の周波数範囲(10~80Hz)における、出力音圧周波数特性の逆特性に示された、出力音圧の低下の度合いを示すものであり、具体的には図14に示されるAで示される直線の傾きである。
【0065】
これは、スピーカユニット4の出力音圧周波数特性が、自由音場の場合は、低域では、周波数が下がるにしたがって急激に出力音圧レベルが低下するが、車内(圧力音場)の場合は、低下が緩やかになることに起因している。このような点からも自由音場で生成した逆特性をそのまま車内で利用することは好ましくない。なお、このような差異は、同じスピーカユニット4を自由音場と車内とで出力音圧周波数特性を測定することで、双方の逆特性を生成して比較することができ、よって、容易に傾きが緩やか(小さい)か否かを判断することができる。
【0066】
次に、ステップS103において、基本特性を生成する。図15に基本特性(実線)と逆特性(破線)とを比較したグラフを示す。基本特性とは、うねり成分を考慮する前の逆特性である。即ち、DSP12において、実際に入力信号に対して加算される逆特性である。本実施例では、図15に示したように、基本特性は、DSP12においてシェルビング・ロー型(SHL)及びシェルビング・ハイ型(SHH)のフィルタとなるように図15に示したカーブを描く波形となっている。
【0067】
次に、ステップS104において、うねり成分を生成する。うねり成分は、図8図11で説明したように、まず、車室内の出力音圧周波数特性に第1の調整を加味した出力音圧周波数特性の予測値と第1の調整を加味した出力音圧周波数特性の車室内での実測値との差分から生成する。図16にうねり成分情報(実線)と基本特性(破線)と基本的性にうねり成分を加算した調整値(一点鎖線)とを比較したグラフを示す。図17に基本的性にうねり成分を加算した調整値(実線)と図14等に示した逆特性(破線)を比較したグラフを示す。図17では、図15に対して約100Hz以下が逆特性(破線)に近い波形となっている。即ち、うねり成分が、車内における出力音圧周波数特性に基づいた補正情報となる。
【0068】
次に、ステップS105において、ステップS104までに生成した基本特性にうねり成分を加算した調整後の車室内予測値を算出する。図18に基本特性にうねり成分を加算した調整後の車室内予測値(実線)と基本特性にうねり成分を加算した調整前の車室内特性(破線)とを比較したグラフを示す。図18に示したように、基本特性にうねり成分を加算した調整後の車室内予測値は、約60Hz以下が引き上げられフラットに近づいている。
【0069】
次に、ステップS106において、ステップS105(図18)に示した調整後の車室内予測値と実際に基本特性にうねり成分を加算した調整を行った結果(実測値)とを比較する。図19にステップS105(図18)に示した調整後の車室内予測値(実線)と実測値(破線)とを比較したグラフを示す。図19に示したように、予測値と実測値とも、約100Hz以下において、フラットに近づいているが、若干出力音圧レベルに変動があり調整の余地があることが分かる。
【0070】
次に、ステップS107において、基本特性にうねり成分を加算した調整を行った結果に対して更にグラフィックイコライザ14による調整(微調整)を行うためのパラメータを抽出し、そのパラメータによりグラフィックイコライザ14で微調整を行う。図20にパラメータの例を示す。図20(a)は1/3オクターブ毎の微調整の例、図20(b)は1/6オクターブ毎の微調整の例である。図21図20に示したパラメータでグラフィックイコライザ14による微調整を行った後の調整値と図14等に示した逆特性(破線)とを比較したグラフを示す。図21では、図17よりも100Hz以下が逆特性(破線)に近い波形となっている。
【0071】
次に、ステップS108において、ステップS107で行ったグラフィックイコライザ14による微調整後の車室内予測値を算出する。図22に微調整後の車室内予測値(実線)と微調整前の車室内特性(破線)とを比較したグラフを示す。図22に示したように、微調整後の車室内予測値は、約60Hz以下の出力音圧周波数特性が図18のグラフィックイコライザ14による微調整前よりもフラットに近づいている。
【0072】
次に、ステップS109において、ステップS108(図22)に示したグラフィックイコライザ14による微調整後の車室内予測値と実際に車室内においてグラフィックイコライザ14による微調整を行った結果(実測値)とを比較する。図23に微調整後の車室内予測値(実線)と実測値(破線)とを比較したグラフを示す。
【0073】
次に、ステップS110において、グラフィックイコライザ14による微調整が限界か否かを判断し、限界である場合(YESの場合)は微調整を終了する。一方、限界でない場合(NOの場合)は、ステップS107に戻ってグラフィックイコライザ14による微調整を行う(パラメータを再抽出する)。グラフィックイコライザ14による微調整が限界とは、ステップS107~109を繰り返しても前の微調整における実測値と今回の実測値とが殆ど変化しない状態である。このような場合は、これ以上の微調整をしても特性の改善は見込めないと判断し終了する。このフローチャートを実行した結果、得られた調整結果(基本特性、うねり成分、グラフィックイコライザ14のパラメータ)は、それぞれ、DSP12やグラフィックイコライザ14に設定される。
【0074】
そして、上記調整結果が設定された後は、音響再生装置10Aの入力信号に対して図13のフローチャートで生成された基本特性とうねり成分に基づいてDSP12が演算が行われ、DSP12による演算の結果をグラフィックイコライザ14が設定されたパラメータに基づいて微調整を行いAMP13に出力する。
【0075】
なお、図13に示したフローチャートでは、特定車種を対象として説明したが、ステップS101の出力音圧特性の測定を複数車種にて行い、その平均値に基づいて以降のステップを実施するようにしてもよい。或いは、座席位置毎や全席平均の出力音圧特性に基づいて同様の調整を行ってもよい。
【0076】
また、図13に示したフローチャートでは、グラフィックイコライザ14による微調整を行っていたが、この微調整は必須ではなく、うねり成分の生成までであってもよい。グラフィックイコライザ14が無い場合でも、うねり成分の影響を少なくすることができるので有効である。即ち、図1に示した構成に適用することもできる。
【0077】
本実施例によれば、出力音圧周波数特性の逆特性に対して、更に車室内の定在波等の影響によるうねり成分を加算して調整を行っている。このようにすることにより、スピーカユニット4の特性に基づいた逆特性だけでなく、車室の形状等による定在波の影響を考慮した補正をすることができるので、車両に搭載した際にスピーカユニット4の周波数特性をフラットに近づけることができる。
【0078】
なお、上述した実施例では、1つのスピーカユニット4の逆特性のみがDSP12に記憶されていたが、複数種類のスピーカユニットの逆特性を記憶させてもよい。そして、接続するスピーカユニットに合わせてスイッチや外部からの切替信号等の切替手段で切り替えるようにしてもよい。あるいは、デフォルトの逆特性と上述したスピーカユニット4が設置された空間に応じた逆特性とを切り替えるようにしてもよい。
【0079】
また、予め上述したDSP12で行う演算処理が施された信号をメモリ等に予め記憶し、そのメモリから信号を読み出して、アンプ等を介してスピーカユニットに出力するようにしてもよい。この場合、演算装置と増幅装置は別体となってそれぞれ個別に機能するが、そのような構成も本発明に含まれる。
【0080】
また、移動体としては、自動車等の車両に限らず、航空機や船舶等の周囲が壁面で覆われた空間(圧力空間)を持つものであれば適用可能である。
【0081】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の音響再生装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
4 スピーカユニット
10、10A 音響再生装置
11 μCom(演算装置)
12 DSP(演算装置)
13 AMP(増幅部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23