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特許7577788ロボット連動エレベータの制御システム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ロボット連動エレベータの制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
B66B13/14 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023085520
(22)【出願日】2023-05-24
(65)【公開番号】P2024002918
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0076543
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089424
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523173793
【氏名又は名称】ヒュンダイ エレベーター カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドンホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、タエリョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ムンス
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ドンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、セクケ
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/250409(WO,A1)
【文献】特表2020-506129(JP,A)
【文献】特開2011-042444(JP,A)
【文献】特開2021-066605(JP,A)
【文献】特開2020-114763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0133851(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112520519(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内で自律移動するロボットと、
前記ロボットと通信しながら前記建物内で設置されたエレベータの運行及び前記ロボットがエレベータを乗降車する時にエレベータドアを制御するエレベータ制御部と、
を備え、
前記ロボットが前記建物の階を移動するために前記エレベータを使用する際、
前記ロボットより前記エレベータへの乗車を開始する「乗車中」の信号が受信された後、前記ロボットより前記エレベータへの乗車が完了した「乗車完了」の信号が受信されない場合と、
前記ロボットより前記エレベータから降車を開始する「降車中」の信号が受信された後、前記ロボットより前記エレベータからの降車が完了した「降車完了」の信号が受信されない場合とのいずれか一つに該当する失敗モードが発生した時、
前記エレベータ制御部は、前記乗車中の信号又は前記降車中の信号が受信されてから所定時間が経過した後で、前記エレベータのドアゾーン内に前記ロボットが感知されない条件で前記エレベータのドア閉ボタンの無効化を解除することを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御システム。
【請求項2】
請求項に記載のロボット連動エレベータの制御システムにおいて、
前記エレベータ制御部は、前記ドア閉ボタンの無効化を解除するが、前記エレベータドアを自動的には閉じさせないことを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御システム。
【請求項3】
建物内で自律移動するロボットと、
前記ロボットと通信しながら前記建物内で設置されたエレベータの運行及び前記ロボットがエレベータを乗降車する時にエレベータドアを制御するエレベータ制御部と、
を備え、
前記ロボットが前記建物の階を移動するために前記エレベータを使用する際、
前記ロボットより前記エレベータへの乗車を開始する「乗車中」の信号が受信された後、前記ロボットより前記エレベータへの乗車が完了した「乗車完了」の信号が受信されない場合と、
前記ロボットより前記エレベータから降車を開始する「降車中」の信号が受信された後、前記ロボットより前記エレベータからの降車が完了した「降車完了」の信号が受信されない場合とのいずれか一つに該当する失敗モードが発生した時、
前記エレベータ制御部は、前記乗車中の信号又は前記降車中の信号が受信されてから所定時間が経過した後で前記エレベータのドア閉ボタンの無効化を解除し、
前記ロボットが前記エレベータに乗車を完了した後、目的階で到着したにもかかわらず前記エレベータから降車できない「降車失敗」が発生した時、降車失敗階をメモリに貯蔵して記憶し、他の階に対する乗客呼出サービスを優先実行した後で前記エレベータを前記降車失敗階に自動復帰させて前記ロボットの降車を再実行することを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御システム。
【請求項4】
請求項に記載のロボット連動エレベータの制御システムにおいて、
前記他の階の乗客呼出サービスを実行する間に、さらに他の新たな乗客呼出サービスの要求が発生した場合、前記新たな乗客呼出サービスの実行を完了した後で前記エレベータを前記降車失敗階に自動復帰させることを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御システム。
【請求項5】
請求項に記載のロボット連動エレベータの制御システムにおいて、
前記新たな乗客呼出サービスを実行する時に前記エレベータの動線が前記降車失敗階を通過する場合、前記エレベータを前記降車失敗階に停車させて前記ロボットの降車を実行した後、新たな乗客呼出サービスが要請された階に移動させることを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御システム。
【請求項6】
建物内で自律移動するロボット、及び前記ロボットと通信しながら前記建物内で設置されたエレベータの運行及び前記ロボットがエレベータを乗降する時にエレベータドアを制御するエレベータ制御部を備えるロボット連動エレベータの制御方法において、
前記エレベータ制御部より乗車を許可された前記ロボットが割り当てられた前記エレベータに乗車動作を開始し、乗車動作の進行中に前記エレベータ制御部へ乗車中の信号を発信するステップと、
前記ロボットが前記割り当てられたエレベータへ乗車を完了し、前記エレベータ制御部に乗車完了の信号を発信するステップと、
前記エレベータ制御部が、前記ロボットの乗車が完了した前記割り当てられたエレベータを前記ロボットの目的階に移動させるステップと、
前記割り当てられたエレベータが前記目的階に到着した後、前記エレベータ制御部より降車を許可された前記ロボットが、前記割り当てられたエレベータから降車動作を開始し、降車動作の進行中に前記エレベータ制御部へ降車中の信号を発信するステップと、
前記ロボットが前記割り当てられたエレベータから降車を完了し、前記エレベータ制御部へ降車完了の信号を発信するステップと、
を含み、
前記ロボットより前記乗車中の信号が受信された後に前記乗車完了の信号が受信されない場合と、前記ロボットより降車中の信号が受信された後に前記降車完了の信号が受信されない場合とのいずれか一つに該当する失敗モードが発生した時、
前記エレベータ制御部は前記乗車中の信号又は前記降車中の信号が受信されてから所定時間が経過した後、前記エレベータのドアゾーン内に前記ロボットが感知されない条件で前記エレベータのドア閉ボタンの無効化を解除することを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御方法。
【請求項7】
請求項に記載のロボット連動エレベータの制御方法において、
前記エレベータ制御部は、前記ドア閉ボタンの無効化を解除するが、前記エレベータドアを自動的には閉じさせないことを特徴とする、
ロボット連動エレベータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータを用いてロボットの建物の階移動サービスを提供する際に発生し得る失敗モードの対応策を確立して提示する、ロボットとエレベータシステムとの連動制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用や業務用、商業用などで建てられる様々な建物では、当該建物を出入りする人間が円滑に階を移動するためにエレベータが設けられる。
【0003】
通常、エレベータは建物の内部に垂直方向に形成された昇降路に沿って移動するエレベータカゴ、エレベータカゴを昇降させるための動力を発生するモータ部と巻上機などからなる機械部、エレベータの運行に関する制御を行う制御部などを備えて構成される。
【0004】
近年では、建物内のロボットによるサービスが活性化して、建物内でロボットが階を移動するためにエレベータ利用の必要性が高まっている。
【0005】
例えば、建物内を移動しながら物品の運搬、掃除、顧客案内などの業務を実行するロボットが多く開発及び実用化され、現在まで商用化されたロボットは床が平らな廊下や室内で水平方向には無理なく移動することができるが、ロボットが複数の階で作業するために他の階へ移動する場合には、階を移動するための手段が必要となる。
【0006】
現在、エレベータがロボットが階を移動するための最適手段と考えられ、ロボットを目的階まで効果的に移動させるために、ロボットとエレベータシステムとの間における様々な連動制御技術が開発されている。
【0007】
一方、従来は人間の安全を確保するためにロボットと人間が同じエレベータで乗らないように制御することがあったが、近年は建物内でサービスロボットの適用が拡大するにつれて、同じエレベータでロボットと人間の同乗が要求されることが多く発生した。
【0008】
このような乗車方式は、何よりもロボットに対するサービスによって乗客の利便性とサービス品質が低下することを防止する必要性が大きく要求されるが、ますます実生活で肯定的影響を及ぼすロボットに対するサービスをいつまでも遅らせてはいけないので、人間とロボットの両方に対するエレベータのサービス品質を向上させるバランスのとれた連動制御技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0049566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
エレベータを利用したロボットによる建物の階の移動は、ロボットがエレベータを呼び出すことから、ロボットが出発階に到着したエレベータに乗車し目的階まで移動した後に降車する一連の過程で行われる。
【0011】
このとき、エレベータの運行を制御するエレベータ制御部とロボットとの間で信号を送受信しながら、ロボットの乗降車手順が段階的に行われることとなり、具体的な手順及び過程は下記の通りである。
【0012】
ロボットがエレベータを遠隔で呼び出すと、エレベータ制御部はその呼出しに対して特定のエレベータカゴを割り当て、割り当てられたカゴを出発階に移動させる。
【0013】
割り当てられたエレベータが出発階に到着すると、エレベータ制御部はドアを開けてロボットに「乗車許可」の信号を送信して乗車が可能な状態であることを知らせる。乗車許可の信号を受信したロボットはエレベータカゴに乗る乗車動作を開始し、乗車動作を開始したロボットは乗車が完了するまでエレベータ制御部に「乗車中」の信号を持続的に送って乗車動作が進行中であることを知らせる。エレベータカゴへの乗車が完了するとロボットはエレベータ制御部に「乗車完了」の信号を送信し、ロボットから乗車完了の信号まで受信した時にのみエレベータ制御部がドアを閉めてエレベータカゴをロボットの目的階まで移動させる。
【0014】
エレベータカゴからロボットが降車する過程も同様に行われる。ロボットを乗せたエレベータカゴが目的階に到着すると、エレベータ制御部はドアを開けてロボットに「降車許可」の信号を送信して降車が可能な状態であることを知らせる。降車許可の信号を受信したロボットはエレベータカゴから降りる降車動作を開始し、降車動作を開始したロボットは降車が完了するまでエレベータ制御部に「降車中」の信号を持続的に送って降車動作が進行中であることを知らせる。エレベータカゴから降車が完了すると、ロボットはエレベータ制御部に「降車完了」の信号を送信し、ロボットから降車完了の信号まで受信した時にのみエレベータ制御部がドアを閉めて、エレベータカゴによる他のサービスができるようになる。
【0015】
一方、前記のようなサービス手順が段階的に行われることにおいて、各段階ごとに失敗モードが発生することがある。例えば、割り当てられたエレベータカゴは出発階に到着したがロボットが乗降場にない場合や、ロボットから乗降車に関する信号が受信されなかった場合、又は何らかの原因でロボットがエレベータから降車できなかった場合などの失敗が発生する可能性があるが、従来ではこのような失敗モードに対する具体的な対応策が確立されておらず、失敗モードが発生した時にエレベータの管理者が状況を判断して適切に措置しただけである。
【0016】
特に、従来はロボットからエレベータへ乗車又は降車する動作が開始されていることを知らせる「乗車中」又は「降車中」の信号が受信される場合、ロボットから「乗車完了」又は「降車完了」の信号を受信するまでエレベータドアの閉ボタン(DCB:Door Close Button)を無効化してドアを開固定しているが、ロボットの乗車及び降車に関する手順の進行中に何らかの原因で失敗が発生したにもかかわらず、引き続きドアの閉ボタンを無効化(ドアの開固定)してエレベータカゴの運行を中断すると、一緒に乗車している乗客や他の階で待っている乗客に対するサービス遅延が生じ、それによる不便を招く問題がある。
【0017】
また、ロボットの降車失敗が発生した場合、ロボットが完全に降りるまでドアの閉ボタンを無効化(ドアの開固定)してエレベータカゴの運行を中断すれば、一緒に乗車している乗客は非常に大きな不便を感じることになる。
【0018】
ロボットの降車が失敗した状態でエレベータドアが閉められても、降車に失敗したロボットはそのままエレベータカゴの内部で閉じ込められているか、又は降車しようとする目的階と異なる階で降車するおそれがある。
【0019】
ロボットが降車に失敗したことによりエレベータカゴの内部でそのままロボットの運転を終了すると、人間が来てロボットを直接取り出さなければならない煩わしさが発生し、ロボットが目的階でない他の階で降車した場合には、ロボットが認知している階データと構造が異なるためロボットが道を失うという問題がある。
【0020】
また、他の階で降車したロボットが再び元の目的階に到達するためには、降車した階でさらにエレベータを呼び出して階移動するための一連の過程を最初から行う必要があるので、ロボットのサービスが遅延するという問題がある。
【0021】
本発明は、前記のような問題を解決するために提案され、ロボットによるエレベータの乗/降車手順の進行中で失敗モードが発生したとき、特にロボットの乗車又は降車動作は開始されたが、乗車完了又は降車完了の信号が受信されない状況における具体的な対応策を確立して提示することにより、乗客サービスが長時間にわたって遅延することを防止し、ロボットと連動制御されるエレベータシステムの全体的なサービス性と運用効率を大幅に向上させることができる、ロボット連動エレベータの制御システムを提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、ロボットがエレベータに乗車を完了して目的階に到着したにもかかわらず、何らかの原因で降車ができない状況、すなわちロボットの降車失敗が発生した場合、エレベータの利用者に対するサービス品質が低下しなく、ロボットの業務効率が低下することも共に防止できる、ロボット連動エレベータの制御システムを提供する。
【0023】
本発明の技術的課題は前述した技術的課題に限定されなく、言及されていない他の技術的課題は通常の技術者が以下の記載から明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するため本発明の一態様では、建物内で自律移動する自律移動体と、前記自律移動体と通信しながら前記建物内で設置されたエレベータの運行及び前記自律移動体がエレベータを乗降車する時にエレベータドアを制御するエレベータ制御部と、を備え、前記自律移動体が建物の階を移動するために前記エレベータを使用する際、前記自律移動体より前記エレベータへの乗車を開始する「乗車中」の信号が受信された後、前記自律移動体より前記エレベータへの乗車が完了した「乗車完了」の信号が受信されない場合と、前記自律移動体より前記エレベータからの降車を開始する「降車中」の信号が受信された後、前記自律移動体より前記エレベータからの降車が完了した「降車完了」の信号が受信されない場合とのうち、いずれか一つに該当する失敗モードが発生した時、前記エレベータ制御部は、前記乗車中の信号又は前記降車中の信号が受信されてから所定時間が経過した後、前記エレベータのドア閉ボタン(Door Close Button)の無効化を解除することを特徴とする、ロボット連動エレベータの制御システムが提供される。
【0025】
前記エレベータ制御部は、前記エレベータのドアゾーン(door zone)内に前記自律移動体が感知されない条件で前記ドア閉ボタンの無効化を解除することができる。
【0026】
前記エレベータ制御部は、ドア閉ボタンの無効化を解除するが、前記エレベータドアを自動的には閉鎖しないことができる。
【0027】
一方、前記目的を達成するため本発明の他の一態様では、建物内で自律移動する自律移動体、及び前記自律移動体と通信しながら前記建物内で設置されたエレベータの運行及び前記自律移動体がエレベータを乗降する時にエレベータドアを制御するエレベータ制御部を備えるロボット連動エレベータの制御方法において、前記エレベータ制御部より乗車を許可された前記自律移動体が割り当てられた前記エレベータに乗車動作を開始し、乗車動作の進行中に前記エレベータ制御部へ乗車中の信号を送信するステップと、前記自律移動体は、前記割り当てられたエレベータへの乗車を完了し、前記エレベータ制御部に乗車完了の信号を送信するステップと、前記エレベータ制御部は、前記自律移動体の乗車が完了した前記割り当てられたエレベータを前記自律移動体の目的階に移動させるステップと、前記割り当てられたエレベータが前記目的階に到着した後、前記エレベータ制御部より降車を許可された前記自律移動体が前記割り当てられたエレベータから降車動作を開始し、降車動作の進行中に前記エレベータ制御部へ降車中の信号を送信するステップと、前記自律移動体は、前記割り当てられたエレベータから降車を完了し、前記エレベータ制御部へ降車完了の信号を送信するステップと、を含み、前記自律移動体より乗車中の信号が受信された後、前記乗車完了の信号が受信されない場合と、前記自律移動体より降車中の信号が受信された後、前記降車完了の信号が受信されない場合とのうち、いずれか一つに該当する失敗モードが発生した時、前記エレベータ制御部は前記乗車中の信号又は前記降車中の信号が受信されてから所定時間が経過した後、前記エレベータのドア閉ボタン(Door Close Button)の無効化を解除することを特徴とする、ロボット連動エレベータの制御方法が提供される。
【0028】
前記エレベータ制御部は、前記エレベータのドアゾーン(door zone)内に前記自律移動体が感知されない条件で前記ドア閉ボタンの無効化を解除することができる。
【0029】
前記エレベータ制御部は、ドア閉ボタンの無効化を解除するが、前記エレベータドアを自動的には閉鎖しないことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、建物の階を移動するためにロボットがエレベータを利用する過程で、ロボットの乗降車手順の進行中に発生する失敗モード、特にロボットの乗車又は降車動作が開始したが、乗車完了又は降車完了の信号が受信されない状況における具体的な対応策を確立及び提示することにより、失敗モードが発生した時にも長時間にわたってサービスが遅延しなくエレベータシステムの円滑な運用が可能であり、ロボットと連動制御するエレベータシステムの全体的なサービス性と運用効率が著しく向上する効果がある。
【0031】
また、本発明は、ロボットがエレベータに乗車を完了して目的階に到着したにもかかわらず、何らかの原因によって降車ができない状況、すなわちロボットの降車失敗が発生した場合、他の階の乗客による呼出しに応じて優先サービスした後で降車失敗階に自動復帰してロボットが降車できるようにロボットとエレベータシステムを連動制御し、エレベータの利用者に対するサービス品質の低下を防止しつつロボットの業務実行も効率的に行われる効果がある。
【0032】
本発明の効果は前記の効果に限定されなく、言及されていない他の効果は以下の説明によって当業者が明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムの概略図である。
図2】本発明に係る自律移動体が建物の階を移動するためにエレベータを利用するプロセスを示す図である。
図3】本発明に係る自律移動体が降車失敗した時においてエレベータの制御方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の目的、技術的構成、及びその作用と効果に関する詳細は、本発明の明細書の添付図面に基づく詳細な説明によって、もっと明確に理解できる。
【0035】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されるものであり、本発明を限定する意図はない。例えば、本明細書で使用される「構成される」又は「含む」などの用語は、本発明で記載された複数の構成要素又は複数のステップを必ずしも全て含むと解釈されるべきではなく、そのうち一部の構成要素又は一部のステップを含まないか、又は追加の構成要素又はステップをさらに含み得ると解釈されなければならない。さらに、本明細書で使用される単数の表現は、文脈上明らかに他の意味がない限り、複数の表現を含む。
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を用いて本発明を詳細に説明する。以下で説明する実施例は、本発明の技術思想を当業者が容易に理解できるように提供されるものであり、これによって本発明が限定されると解釈されるべきではなく、本発明の実施例が該当分野における通常の技術者において様々な応用ができることは当然である。
【0037】
図1は本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムの概略図である。
【0038】
図2は本発明に係る自律移動体が建物の階を移動するためにエレベータを利用するプロセスを示す図である。図3は本発明に係る自律移動体が降車失敗した時においてエレベータの制御方法を示す流れ図である。
【0039】
図1を参照すると、本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムは、建物内で自律移動する自律移動体10と、自律移動体10との通信によって建物内で設置されたエレベータの運行を制御するエレベータ制御部20を備え、自律移動体10とエレベータとの連動制御を実施することができる。
【0040】
本発明における自律移動体10は、ロボットを含めて建物内で人間の操作がなくても自律的に移動できる全ての移動機器を総称する。例えば、自律移動体10は、宅配などの物品の運搬、掃除、顧客案内などの業務を行うサービスロボットであってもよく、建物内で移動する全てのロボットを制御及び管理するロボット管理システム(図示せず)と連動し、建物内の顧客に必要なサービスを提供することができる。
【0041】
自律移動体10は、エレベータの運行を制御するエレベータ制御部20と通信することができ、エレベータ制御部20との連動制御によって自律移動体10が建物の階を移動することが実現される。自律移動体10は、エレベータ制御部20とエレベータの呼出し、目的階の登録、乗降車の動作などに関連する信号を送受信することができ、より詳細な内容は後説する。
【0042】
自律移動体10とエレベータ制御部20及びロボット管理システムとの通信は、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(登録商標)、CAN、WANなどの無線通信又は有線通信を用いて実現することができる。
【0043】
自律移動体10は、ライダー(Lidar)、近距離センサ、超音波センサ及びカメラなどを用いて収集した情報に基づく自己位置推定技術(SLAM:Simultaneous Localization And Mapping)により建物内の空間を認知して自律的に移動することができる。
【0044】
また、自律移動体10は、建物の内/外部の構造及び建物内のエレベータの位置に関する情報を自分のデータベースで記憶することができ、自己位置推定技術を用いてリアルタイムで算出した現在位置からエレベータまでの最適距離と移動経路は内部アルゴリズムを用いて求めることができる。
【0045】
エレベータ制御部20は、エレベータの全体的な運行及び動作を制御するものであり、乗客のボタン入力や遠隔呼出し又は自律移動体10から受信する呼出しを含めて、建物内の各階から入力される呼出しに最適のエレベータカゴを割り当て、割り当てられたエレベータカゴが呼出しの入力階まで移動するように制御する。
【0046】
エレベータ制御部20は、乗客又は自律移動体10によって発生したエレベータ呼出し信号を受信して処理する呼出受信部21;受信した呼出し信号に応じて建物内で設置された複数のエレベータカゴから最適のエレベータカゴを決定して割り当てる割当部22;エレベータカゴに対する自律移動体10の乗降車動作を制御する乗降車制御部23;と、エレベータカゴの走行を制御する走行制御部24などを含めて構成することができる。
【0047】
エレベータ制御部20は、乗客によるボタン入力や遠隔呼出しに応じて最適のエレベータカゴを割り当ててエレベータカゴを移動させるサービスを提供するが、これは従来の公知技術が利用できるため、以下では自律移動体10に関連する制御に焦点を当てて説明する。
【0048】
呼出受信部21は、自律移動体10からエレベータ乗車の要請を受信することができる。エレベータ乗車の要請に含まれる情報には、自律移動体10が現在位置する階である出発階の情報と、自律移動体10が移動しようとする目的階の情報が含まれるとともに、自律移動体10が乗降場に到着するまで必要な移動時間に関する情報、重量、体積、エレベータ利用の目的などの情報もさらに含まれ得る。
【0049】
割当部22は、自律移動体10によるエレベータ乗車の要請を受信した場合、建物内の交通量と複数の利用可能なエレベータカゴ及び自律移動体10の位置情報との相関分析を行って、最も効率的なエレベータカゴを決定して割り当てる。
【0050】
より具体的に、割当部22は、建物内で運行する複数のエレベータカゴの占有率又は残存容量に関する状態情報を検出し、自律移動体10から受信する乗車の要請情報に含まれた自律移動体10の重量、体積などの情報に基づいて自律移動体10が乗車できる利用可能なエレベータカゴを抽出する。
【0051】
そして、抽出された利用可能なエレベータカゴの位置と自律移動体10の位置とを考慮して最適のエレベータカゴを割り当てる。このとき、自律移動体10が乗車を要請した呼出し階の情報だけでなく、自律移動体10が現在の位置から乗降場への移動に必要な時間の情報も最適のカゴを選ぶために併せて考慮することができる。
【0052】
また、自律移動体10が自ら自分の位置情報を算出する代わりに、自律移動体10が発信する信号に基づいて自律移動体10の階内位置をリアルタイムで追跡し、自律移動体10の現在位置から乗降場まで移動するために必要な時間を算出する自律移動体の位置収集部(図示せず)をさらに備え得る。
【0053】
乗降車制御部23は、エレベータの乗車を要請した自律移動体10に割り当てられたエレベータカゴへ乗車及び降車するために関連した全体的な動作を管理及び制御する。
【0054】
例えば、自律移動体10が乗降場へ移動中である場合には「移動中」の信号を、乗降場で既に到着した場合には「待機中」の信号を乗降車制御部23へ発信して乗降場で待機している状態であることを知らせる。すると、乗降車制御部23は、自律移動体10から受信する情報に基づいて自律移動体10がエレベータへ乗車できるか否かを判断し、可能であると判断した場合には、自律移動体10に当該エレベータカゴへの乗車を指示する信号を発信する。
【0055】
また、自律移動体10の降車動作に関連して、乗降車制御部23は自律移動体10がエレベータカゴに乗車を完了してから目的階で到着した場合、自律移動体10にエレベータカゴから降車することを指示する。
【0056】
自律移動体10がエレベータカゴへ乗り降りする乗降車の動作を実現するため、乗降車制御部23はサービス階に停車したエレベータカゴのドア及び当該乗降場のドアの開閉を制御するドア制御部25と連係することができる。
【0057】
走行制御部24は、建物内で垂直方向に形成される昇降路内でエレベータカゴを昇降させる走行動作を制御するものであり、エレベータカゴの走行を開始させるために巻上機モータを駆動したり、エレベータカゴを停止させるためにブレーキを駆動するなどの制御を実行する。
【0058】
また、本実施形態において走行制御部24は、自律移動体10の乗車の要請に応じて割り当てられたエレベータカゴを自律移動体10の位置した階に移動させる指令信号を発生するか、自律移動体10が乗車しているエレベータカゴを自律移動体10の目的階まで移動させる指令信号を発生して、エレベータカゴの運行を制御する。
【0059】
以下では、図2を参照して、自律移動体10が建物内で階を移動するためにエレベータを利用するプロセスを、一連の段階にしたがって順次に説明する。
【0060】
自律移動体10は、エレベータ制御部20と無線又は有線通信により遠隔でエレベータカゴを呼び出すことができる。自律移動体10は、建物内で階の移動が必要な場合、エレベータカゴの呼出しを要請する「乗車要請」の信号をエレベータ制御部20へ発信する。
【0061】
エレベータ制御部20の呼出受信部21が自律移動体10から「乗車要請」の信号を受信し、割当部22は「乗車要請」の信号に含まれた情報と建物内で利用できるエレベータカゴの位置情報などを考慮して、複数の利用可能なエレベータカゴの中から最適のエレベータカゴを割り当てる。割当部22は、割り当てられたエレベータカゴ及びそれに対応する乗降場の情報を自律移動体10に提供する。
【0062】
自律移動体10は、割り当てられたエレベータカゴに対応する乗降場の情報を受信して当該乗降場まで移動し、移動中には定期的にエレベータ制御部20へ移動状況を報告する。また、自律移動体10が当該乗降場に到着した場合には、乗降場で待機していることを知らせる信号を発信する。
【0063】
エレベータ制御部20は、割り当てられたエレベータカゴに対応する乗降場まで自律移動体10が到着したか否かを検出することができる。ここで、自律移動体10が乗降場に到着したか否かは、上述したように自律移動体10が自己位置推定技法で自ら獲得した位置情報あるいは追加の自律移動体の位置収集部(図示せず)で収集する自律移動体10の位置情報に基づいて判断することができる。
【0064】
自律移動体10が乗降場で感知された場合、エレベータ制御部20の乗降車制御部23は、当該自律移動体10に割り当てられたエレベータカゴのドアを開けて自律移動体10に「乗車許可」の信号を発信する。
【0065】
一方、自律移動体10がエレベータカゴより遅く到着する場合には、自律移動体10の到着予想時間が所定設定値以下であれば、自律移動体10が到着するまでエレベータカゴ及び乗降場のドアを開放状態で待つように制御し、自律移動体10の到着が所定の設定時間を超えて遅延する場合には、自律移動体10に現在の呼出しをキャンセルする信号を発信する。キャンセル信号を受信した自律移動体10はエレベータを再び呼出し、エレベータ制御部20は自律移動体10の再呼出しに対し最適のカゴをさらに割り当てて、サービス階までエレベータカゴを走行させる制御をする。
【0066】
乗降車制御部23から「乗車許可」の信号を受信した自律移動体10は、割り当てられたエレベータカゴに乗る乗車動作を実行する。自律移動体10は、乗車動作の開始時点から完了時点まで継続的に乗降車制御部23へ「乗車中」の信号を発信して乗車動作が進行中であることを知らせる。乗降車制御部23は、ドア制御部25との連係により自律移動体10がエレベータの出入口を通過している間にはドアが閉じないように制御する。
【0067】
エレベータカゴ内で自律移動体10の乗車が完了すると、自律移動体10は乗車の完了を示す「乗車完了」の信号を乗降車制御部23へ発信する。
【0068】
自律移動体10より「乗車完了」の信号を受信したエレベータ制御部20は、エレベータドアを閉めて自律移動体10の目的階を自動登録し、エレベータカゴを自律移動体10の目的階まで移動させる制御を実行する。
【0069】
エレベータカゴが自律移動体10の目的階に到着すると、エレベータ制御部20はエレベータカゴ及び到着階(目的階)の乗降場のドアを開け、乗降車制御部23によって降車を指示する「降車許可」の信号を自律移動体10へ発信する。
【0070】
「降車許可」の信号を受信した自律移動体10はエレベータから降りる降車動作を実行する。この時、自律移動体10は、降車動作の開始時点から完了時点まで持続的に乗降車制御部23へ「降車中」の信号を発信して降車動作が進行中であることを知らせることができ、乗降車制御部23はドア制御部25との連係により自律移動体10がエレベータの出入口を通過する間にはドアが閉じないように制御する。
【0071】
エレベータカゴから自律移動体10が降車を完了すると、自律移動体10は降車の完了を示す「降車完了」の信号を乗降車制御部23に発信する。
【0072】
自律移動体10から「降車完了」の信号を受信すると、エレベータ制御部20はエレベータのドアを閉めて、当該自律移動体10に対する階移動のサービスを終了する。
【0073】
一方、上述したように一連のプロセスを実行する過程において、自律移動体10の乗車及び降車で様々な問題が発生し得る。例えば、以下の5つの場合がある。
【0074】
1)自律移動体10の呼出しで割り当てられたエレベータカゴが呼び出し階に到着した時点で自律移動体10の乗降場の待機状態が認識されない場合、すなわち自律移動体10の乗車要請(呼出し)が発生してその呼出しに対して割り当てられたエレベータカゴが出発階に到着したが、自律移動体10から乗降場の待機信号が受信されない場合
【0075】
2)自律移動体10の呼出しで割り当てられたエレベータカゴが呼び出し階に到着した後で所定時間以上まで自律移動体10が乗車を開始しない場合、すなわち自律移動体10から乗降場の待機信号を受信しエレベータ制御部20が自律移動体10へ乗車許可の信号を発信したが、自律移動体10から乗車中の信号が受信されない場合
【0076】
3)自律移動体10が割り当てられたエレベータカゴに乗車中であることを認識したが次のステップである乗車完了にならない場合、すなわち自律移動体10から乗車中の信号を受信したが乗車完了の信号が受信されない場合
【0077】
4)自律移動体10の乗車が完了したエレベータカゴが目的階に到着したが、所定時間以上まで自律移動体10が降車を開始しない場合、すなわち自律移動体10から乗車完了の信号を受信し自律移動体10を乗せたエレベータカゴが目的階まで到着した後、エレベータ制御部20が自律移動体10に降車許可の信号を発信したが自律移動体10から降車中の信号が受信されない場合
【0078】
5)自律移動体10がエレベータカゴから降車中であることを認識したが、次のステップである降車完了にならない場合、すなわち自律移動体10から降車中の信号を受信したが降車完了の信号が受信されない場合
【0079】
前記したように各ステップで発生する失敗モード(failure mode)のうち、特に、「3)及び5)」のケースは、自律移動体10がエレベータカゴへ乗車中又は降車中であることを知らせた後で発生する失敗モードであるため、自律移動体10がエレベータカゴへ乗降車する途中で故障が発生したり横転して乗降車動作に進めない場合を含む。したがって自律移動体10がエレベータドアゾーン内に位置する可能性があるので、より積極的な対応策を講じなければならない。
【0080】
ただし、自律移動体10から乗車完了又は降車完了の信号が受信されない場合でも、その事実が自律移動体10の故障や横転を意味するのではなく、自律移動体10が乗/降車中に自律移動体10とエレベータ制御部20との間で通信問題により、自律移動体10の乗車が完了した状態又は降車が完了した状態を認識できない可能性もある。
【0081】
そこで、本発明は、前述したように単純な通信問題で発生する場合を含め、自律移動体10から乗車完了又は降車完了の信号が受信されない失敗モードに対する具体的な対応策を確立して提示する。
【0082】
一方、以下で示す対応策では、自律移動体10が利用するエレベータがロボットと人間が一緒に乗車可能な「乗合モード」で設定されているか、又はロボットのみ利用可能になる「ロボット専用モード」で設定されているかによって、その対応方法が異なるように設定され得る。
【0083】
また、本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムは、エレベータドアの開放待機時間を予め定めた所定の時間値で設定することができる。ここで、「エレベータドアの開放待機時間」とは、ドアが開いた状態で待機する時間を意味する。すなわち、ドアの開閉動作にかかる時間を除いて、完全に開いた時点から閉鎖が開始する直前までの時間を意味することができる。
【0084】
特に、本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムは、エレベータの設定モードに応じてエレベータドアの開放待機時間を、一般乗客(人間乗客)が乗降車するための「一般の開放待機時間」と自律移動体(ロボット)10が乗降車するための「ロボットの開放待機時間」の2つの設定値で運用することができる。
【0085】
「一般の開放待機時間」は、自律移動体10の利用が予定されていない場合、エレベータドアの開閉時に適用する通常の設定値であり、一般の開放待機時間を適用する時、エレベータドアは完全に開けた状態で短時間(例えば、約2~4秒)だけ開けた状態を維持した後、閉じた状態に切り替えることができる。
【0086】
「ロボットの開放待機時間」は、自律移動体10が乗降車する際にエレベータドアの開閉時で適用する設定値であり、一般の開放待機時間に比べて長い時間値(例えば、40秒)で設定することができる。一般の開放待機時間とロボットの開放待機時間は、エレベータドアの出入り環境などによって変更できる任意の設定値である。
【0087】
また、前記において一般の開放待機時間及びロボットの開放待機時間が適用される「エレベータドア」は、エレベータカゴのドア(car door)と乗降場のドア(landing door)の両方を含む概念と理解することができ、ドア開放時間の設定及びドア開閉の制御は前述したようにドア制御部25によって実行することができる。
【0088】
以下では、自律移動体10から「乗車完了」又は「降車完了」の信号が受信されない失敗モードの発生時に対する対応方法に該当する制御ロジックをエレベータの設定モードごとに説明する。
【0089】
I.乗車完了の信号が受信されない場合
A.定常状態における動作
まず、失敗モードにおける対応と比較するために、定常状態における動作を簡単に説明する。自律移動体10から乗車中の信号を受信した後に乗車完了の信号まで受信すれば自律移動体10がエレベータカゴ内で乗車に成功したことを意味するので、エレベータ制御部20はエレベータドアを閉めて自律移動体10の目的階までエレベータカゴを出発させる。
【0090】
B.乗合モードにおける対応方法
自律移動体10から乗車中の信号を受信すると、エレベータ制御部20はドア閉ボタン(DCB:Door Close Button)を無効化してエレベータドアを開状態に維持する。しかし、この状態で自律移動体10の乗車に問題が発生したにもかかわらず自律移動体10から乗車完了の信号を受信するまでエレベータカゴを待機させると、他の乗客に大きな不便を招く恐れがある。
【0091】
したがって、本発明は、自律移動体10の乗車中の信号を受信した後に所定時間(好ましくはロボットの開放待機時間)が経過するまで自律移動体10から乗車完了の信号が受信されなければドア閉ボタンの無効化を解除し、乗客のドア閉ボタンの入力によってドアを閉めることができる。
【0092】
ただし、この場合は自律移動体10の乗車中の信号を受信した状態であるため、自律移動体10がエレベータドアゾーン内で存在する可能性があるから、所定時間又はロボットの開放待機時間が経過してもエレベータドアを自動的には閉じさせない。すなわち、ドア閉ボタンの無効化は解除するが、エレベータドアを自動的には閉じさせないことであり、これはエレベータドアゾーン内で自律移動体10が存在した場合にはドアが閉じることによる破損を防止するためである。
【0093】
エレベータドアは自動的には閉じないが、ドア閉ボタンの無効化が解除されるので、当該エレベータを利用する他の乗客がドアを閉めることができる状況であるか否かを確認し、閉められる状況であればドア閉ボタンを操作してドアを閉めて他の階にエレベータカゴを出発させることができる。
【0094】
ただし、このときエレベータドアゾーンで設置する監視装置(例えば、カメラ又は物体感知センサなど)を用いてエレベータドアゾーンで自律移動体10がないと判定される条件でのみドア閉ボタンの無効化を解除することができる。もし、エレベータドアゾーン内で自律移動体10が感知された場合にはドア閉ボタンの無効化を解除しない。
【0095】
また、エレベータ制御部20は、所定時間が経過するにつれてエレベータのドア閉ボタンの無効化を解除するとともに、前記監視装置によりエレベータドアゾーンで自律移動体10や他の物体が感知されない場合には、エレベータのドアを直接閉めることもできる。ただし、この場合、エレベータドアゾーン内で自律移動体10だけでなく他の物体も感知されないクリーンな状態でなければならない。
【0096】
C.ロボット専用モードにおける対応方法
ロボット専用モードでも同様に自律移動体10の乗車中の信号を受信したら、エレベータ制御部20はドア閉ボタンを無効化にしてエレベータドアを開状態で維持する。
【0097】
ただし、ロボット専用モードは人間乗客が共に利用しないモードであるため、所定時間が経過するまで自律移動体10の乗車完了の信号を受信しなくても、ドア閉ボタンの無効化を維持しながらドアの開状態を維持することができる。
【0098】
この場合、必要に応じて自律移動体10の故障処理を実施することができ、自律移動体10の故障処理が完了した後、エレベータ制御部20は自律移動体10を管理するロボット管理システムから特定の命令を受信してドア閉ボタンの無効化を解除し、エレベータドアを閉めて他の階でサービスをするためにエレベータカゴを出発させることができる。
【0099】
II.降車完了の信号が受信されない場合
A.定常状態における動作
自律移動体10の降車中の信号を受信した後に降車完了の信号まで受信すると、エレベータカゴから自律移動体10の降車が成功したことを意味するので、エレベータ制御部20はエレベータドアを閉めて自律移動体10の階の移動サービスを終了することができる。
【0100】
B.乗合モードにおける対応方法
この場合の対応方法は、「乗車完了の信号が受信されない場合」と同様に行うことができる。自律移動体10の降車中の信号を受信すると、エレベータ制御部20はドア閉ボタンを無効化してエレベータドアを開状態に維持する。しかし、この場合でも自律移動体10から降車完了の信号が受信されるまでエレベータカゴを待機させることは他の乗客に大きな不便を招く恐れがあるので、本発明は自律移動体10の降車中の信号を受信した後、所定の時間(好ましくはロボットの開放待機時間)が経過するまで降車完了の信号が受信されなければ、ドア閉ボタンの無効化を解除し乗客の入力によってドアを閉めることができる。
【0101】
ただし、この場合には自律移動体10から降車中の信号を受信した状態であるため、自律移動体10がエレベータドアゾーン内で存在する可能性があるから、所定時間又はロボットの開放待機時間が経過してもエレベータドアを自動的には閉じさせない。
【0102】
エレベータのドアを自動的には閉じさせないが、ドア閉ボタンの無効化が解除されるので当該エレベータを利用する他の乗客がドアを閉められる状況であるか否かを確認し、閉められる状況であればドア閉ボタンを操作してドアを閉めて他の階までエレベータカゴを出発させることができる。
【0103】
ただし、このときエレベータドアゾーンで設置する監視装置(例えば、カメラ又は物体感知センサなど)を用いてエレベータドアゾーンに自律移動体10がないと判定される条件でのみドア閉ボタンの無効化を解除することができる。もし、エレベータドアゾーン内で自律移動体10を感知した場合にはドア閉ボタンの無効化を解除しない。
【0104】
また、エレベータ制御部20は、所定時間が経過するにつれてエレベータのドア閉ボタンの無効化を解除するとともに、前記監視装置によりエレベータドアゾーンで自律移動体10や他の物体が感知されない場合には、エレベータのドアを直接閉めることもできる。ただし、この場合、エレベータドアゾーン内で自律移動体10だけでなく他の物体も感知されないクリーンな状態でなければならない。
【0105】
C.ロボット専用モードにおける対応方法
この場合の対応方法も、「乗車完了の信号が受信されない場合」と同様に行うことができる。ロボット専用モードでも同様に自律移動体10の降車中の信号を受信したら、エレベータ制御部20はドア閉ボタンを無効化してエレベータドアを開状態に維持する。
【0106】
ただし、ロボット専用モードは人間の乗客が共に利用しないモードであるため、所定時間が経過するまで自律移動体10から降車完了の信号を受信しなくてもドア閉ボタンの無効化を維持しながらドアの開状態を維持することができる。
【0107】
この場合、必要に応じて自律移動体10の故障処理を実施することができ、自律移動体10の故障処理が完了した後、エレベータ制御部20は自律移動体10を管理するロボット管理システムから特定の命令を受信してドア閉ボタンの無効化を解除し、エレベータドアを閉めて他の階でサービスするためにエレベータカゴを出発させることができる。
【0108】
自律移動体10から「乗車完了」又は「降車完了」の信号が受信されない場合、エレベータの設定モードごとに対応方法を下記の[表1]でまとめる。
【0109】
【表1】
【0110】
前述したように、本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムは、建物で階を移動するためにロボットがエレベータを利用する過程において、ロボットの乗/降車手順の進行中に失敗が発生した時、特にロボットの乗車又は降車の動作が開始したが乗車完了又は降車完了の信号が受信されない状況が発生した時、所定の条件下でエレベータドアを制御し、開固定を解除(ドア閉ボタンの無効化を解除)する対応手順を確立し、エレベータのサービス遅延が発生することを効果的に防止し、効率的な運用ができることに特徴がある。
【0111】
一方、乗合モードに設定されるエレベータはロボットと一般利用者による呼出しの両方を実行するため、両方の客体に対するサービス効率を考慮してエレベータの運行を制御する必要がある。
【0112】
本発明は、自律移動体10がエレベータカゴに乗車を完了して目的階に到着したが、自律移動体10が目的階に降車できない「降車失敗」が発生した場合、エレベータカゴ内で同乗した利用者に対するサービス低下を防止するとともに、自律移動体10の業務実行の効率が低下することも防止するために、エレベータの制御ロジックを以下のように構成する。
【0113】
自律移動体10の降車失敗で代表的な例は次の通りである。
・―自律移動体10が目的階に到着したが、降車許可の信号に該当するデータを受信できず、降車時点を逃した場合。
・自律移動体10が目的階に到着したことを認知したが、エレベータ内の混雑や乗客のいたずら又は乗客の持っている物品によって降車が物理的に不可能である場合。
・自律移動体10が降車しようとする時、エレベータカゴ内の乗客がドア閉ボタンを押して自律移動体10が降車する前にドアが閉じてしまう場合。
・自律移動体10が登録した目的階の指定が、何らかの原因で取り消しとなって当該目的階で停車しない場合。
【0114】
本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムは、前記のようにエレベータカゴ内に乗車を完了した自律移動体10が目的階で降車を失敗した場合に、当該エレベータカゴで他の階に対する乗客呼出サービスの要請があったら、現在階(降車に失敗した階)を記憶し、エレベータドアを閉状態に切り替えて他の階に対する乗客呼出サービスを優先実行し、元々自律移動体10が降車しようとした目的階に自動復帰させて自律移動体10が降車するように制御する。
【0115】
また、自律移動体10の降車失敗が発生し他の階に対する乗客呼出サービスを優先実行している間に新たな乗客呼出サービスの要請がさらに発生した場合、新たに登録される呼出しに対するサービスまで全て完了した後、それ以上他の階への呼出しがなくなったとき、初めて自律移動体10が元々の降車しようとした目的階にエレベータカゴを移動させることになる。
【0116】
すなわち、本発明によるロボット連動エレベータの制御システムは、自律移動体10の降車失敗が発生したとき、既に登録された乗客呼出サービスの要請とともに、自律移動体10の降車失敗が発生した後で既に登録された乗客呼出サービスを実行する間で新たに発生する乗客呼出サービスの要請まで全て完了した後、さらに他の乗客呼出サービスの要請が発生しない条件でエレベータカゴを自律移動体10の元の目的階に復帰させる制御を行う。
【0117】
ただし、新たな呼出しが発生した階へサービスを提供するために移動するエレベータカゴの動線が自律移動体10の降車目的階を通過する場合には、エレベータカゴを自律移動体10の降車目的階で先に停車させて、自律移動体10が降車した後に新たな呼出し階まで移動させる制御をすることができる。
【0118】
新たな呼出しが発生した階が自律移動体10の降車目的階と同じ場合には、当然、当該階で停車する時に自律移動体10が降車すればよい。
【0119】
本発明で自律移動体10の降車失敗が発生した時において、優先的にサービスされるのは人間乗客による呼出サービスの要請で限定することができる。すなわち、自律移動体10が降車失敗した時に他の自律移動体による呼出サービスの要請が存在したり新たに発生しても、これは本発明の適用対象ではない。
【0120】
なお、前記において「乗客呼出サービスの要請」は、他の階の乗降場に設けられるボタンや遠隔呼出しによってエレベータカゴを当該階に呼び出すサービスの要請を含むことはもちろん、既にエレベータカゴで乗車している乗客がカゴ内のボタンを入力して他の階を行先階で指定する場合も含む。
【0121】
一方、通常、ロボットがエレベータの乗降車モードである時にエレベータ制御部20は、エレベータドアの制御が一時的に不可能な状態で設定する。具体的には、エレベータ制御部20がロボットに「乗車許可」又は「降車許可」の命令を出すと、ロボットから「乗車完了」又は「降車完了」の信号が受信されるまで、エレベータドアの閉鎖を無効化してドアを開固定の状態で維持する。
【0122】
しかし、前記のように自律移動体10が目的階で降車できない降車失敗が発生したにもかかわらず、自律移動体10の「降車完了」の信号を受信するまでドア開固定の状態を維持すれば、該当エレベータカゴで共に乗車している一般利用者の不便が非常に大きくなる。
【0123】
そこで、本発明は、自律移動体10の降車失敗が発生したときに所定の条件下でエレベータドアの開固定を解除し、他の階に対する乗客呼出サービスを優先的に行うことができるシステムを構成する。
【0124】
まず、自律移動体10に設けられたカメラや空間感知センサなどを用いて降車経路を探索した結果、目的階で降車が不可能であると自己判断した場合、自律移動体10は「降車キャンセル」の信号を発生して乗降車制御部23に発信する。
【0125】
また、エレベータカゴ内で設けられた空間認識カメラなどの監視装置により自律移動体10の降車が不可能である状況を感知した場合、自律移動体10が「降車キャンセル」の信号を乗降車制御部23へ発信する。
【0126】
そして、自律移動体10から「降車中」の信号を受信したが「降車完了」の信号がなく、何らかの理由によりエレベータドアが閉じる場合、又は自律移動体10から「降車中」の信号を受信したが既に設定された自律移動体10の降車制限時間を超えるまで「降車完了」の信号が受信されない場合には、乗降車制御部23は自ら「降車キャンセル」の信号を発生することができる。ここで、自律移動体10の降車制限時間は任意に設定することができ、エレベータの規模、自律移動体10の仕様などに応じて変更することができる。
【0127】
自律移動体10から乗降車制御部23に「降車キャンセル」の信号が発信されるか、乗降車制御部23が自ら「降車キャンセル」の信号を発生する場合、エレベータ制御部20は現在階の情報、すなわち自律移動体10の降車失敗階の情報をメモリに記憶した後、エレベータドアの開固定を解除してドアを閉状態に切り替え、他の階の乗客サービスを実行するためにエレベータカゴを出発させることができる。
【0128】
そして、エレベータ制御部20は、他の階において既登録された乗客の呼出し及び新たに登録される乗客の呼出しに対するサービスの両方を実行した後、元々自律移動体10が降車しようとした目的階へ復帰するようにエレベータカゴを制御することができる。
【0129】
他の階の乗客サービスを全て完了したエレベータカゴが自律移動体10の降車目的階に復帰すると、既存の降車手順と同様に所定時間エレベータドアの開状態を維持しながら自律移動体10に降車許可の信号を発信して降車を誘導する。
【0130】
一方、自律移動体10の降車失敗は発生したが、他の階に対する乗客呼出サービスの要請が発生しない場合には、エレベータのドアを開状態で維持しながら自律移動体10の「降車完了」を受信するまで待機する。
【0131】
すなわち、自律移動体10が降車中の状態で降車完了が認識されない状況において、所定の降車制限時間を超えても他の階に対する乗客呼出サービスの要請がない場合には、現在の降車階でエレベータドアを開状態に維持して自律移動体10が降車する機会を継続的に提供することができる。
【0132】
以下では、図3を参照し本発明に係るロボット連動エレベータの制御方法について説明する。
【0133】
図3を参照すると、本発明に係るロボット連動エレベータ制御方法は、自律移動体10の乗車要請によりエレベータカゴを呼び出すステップ(S10)と、自律移動体10が出発階(呼出階)の乗降場に到着するステップ(S20)と、自律移動体10が出発階の乗降場で割り当てられたエレベータカゴに乗車するステップ(S30)と、自律移動体10を乗せたエレベータカゴが出発階から移動して目的階に到着するステップ(S40)と、エレベータカゴから自律移動体10が降車することを指示するステップ(S50)と、自律移動体10の降車が完了したか否かを検出するステップ(S60)と、自律移動体10の降車完了の信号が受信されない場合、自律移動体10の降車をキャンセルする降車キャンセル信号が受信されるか否かを確認するステップ(S70)と、自律移動体10の降車キャンセル信号が受信された場合、他の階に対する乗客呼出サービスの要請があるか否かを確認するステップ(S80)と、他の階に対する乗客呼出サービスの要請があった場合、自律移動体10の降車失敗が発生した現在階の情報をメモリに記憶するステップ(S90)と、他の階の乗客呼出サービスを優先実行するステップ(S100)と、他の階の乗客呼出サービスを実行する間にさらに他の新たな乗客呼出サービスの要請が発生したことを確認して発生が確認された場合には、該当階に対する乗客呼出サービスを実行するステップ(S110)と、それ以上新たな乗客呼出サービスの要請が発生しない条件で自律移動体10を乗せたエレベータカゴをメモリで記憶された降車失敗階に復帰させるステップ(S120)と、降車失敗階に到着したらエレベータドアを開けて自律移動体10の降車を再び指示するステップ(S130)と、自律移動体10が降車を完了するステップ(S140)と、自律移動体10が階の移動サービスを終了するステップ(S150)とを含めて実行することができる。
【0134】
各ステップごとの特徴は、前述した自律移動体10とエレベータシステムとの間の連動制御部分及び自律移動体10が降車失敗した時の制御ロジック部分を参照すれば容易に理解できるため、具体的な内容を省略する。
【0135】
ステップS60において、自律移動体10の降車完了の信号が正常に受信された場合には、エレベータを利用した自律移動体10の階の移動が正常に実行されたことと認識してサービスを終了する(S150)。
【0136】
ステップS80において、他の階の乗客呼出サービスの要請が確認されない場合には、現在階でエレベータのドアを開状態で維持しながら自律移動体10の降車を誘導(S81)することができ、他の階の乗客呼出サービスの要請が発生すると、次のステップ(S90)に進むことができる。
【0137】
以上で説明した本発明に係るロボット連動エレベータの制御システムは、自律移動体10及びエレベータ制御部20から受信する信号を処理し、それに対応する命令を発生及び出力するプロセスを実行するコンピュータ又はプログラムが搭載したサーバーによって実装できる。また、プロセスを行う過程でデータが貯蔵及び記録される記録媒体を含むことができ、記録媒体の例には、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などがある。
【0138】
本発明は前記実施態様に限定されなく、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な形態で修正又は変更できることは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、そのような修正又は変更は、本発明の特許請求の範囲に属すると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0139】
10:自律移動体
20:エレベータ制御部
21:呼出受信部
22:割当部
23:乗降車制御部
24:走行制御部
25:ドア制御部
図1
図2
図3