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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241028BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/80 F
H01L29/44 Y
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023111629
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2018214868の分割
【原出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2023118942
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017251656
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017252257
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 和也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼堂 真也
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 稔
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/123999(WO,A1)
【文献】特開2017-059599(JP,A)
【文献】特表2011-529639(JP,A)
【文献】特開2017-073500(JP,A)
【文献】特表2019-505992(JP,A)
【文献】特開2011-238700(JP,A)
【文献】特表2008-507843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 29/41
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含む電子走行層と、
AlGa(1-x)N(0<X≦1)を含み、前記電子走行層の上に形成され、前記電子走行層を露出させる開口を有する電子供給層と、
前記電子走行層の表層部において前記電子供給層と対向する領域に形成された二次元電子ガス領域と、
前記電子供給層の上に積層された絶縁層と、
前記電子供給層の前記開口に連通し、前記開口とコンタクト孔を形成するように前記絶縁層に区画されたテーパ形状の貫通孔と、
前記コンタクト孔内において前記コンタクト孔の壁面および前記電子走行層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記絶縁層の表面を被覆するバリア絶縁層と、
SiOを含み、前記コンタクト孔内において前記バリア絶縁層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記バリア絶縁層を挟んで前記絶縁層の表面に対向するゲート絶縁層と、
前記コンタクト孔内において前記ゲート絶縁層を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極層と、を含み、
前記コンタクト孔は、断面視において、前記電子供給層によって区画され、前記コンタクト孔の中間部の深さ位置に対して下方側の領域において一定の内径を有する下方部、および、前記絶縁層によって区画され、前記中間部の深さ位置に対して上方側の領域において前記下方部の内径から漸増する内径を有し、前記絶縁層の上面と滑らかにつながる上方部を有し、
前記コンタクト孔の開口エッジ部は、前記コンタクト孔内に向かう湾曲面を有し、
前記ゲート絶縁層は、前記コンタクト孔内において、前記バリア絶縁層を挟んで前記コンタクト孔の側壁に沿って延びる第1領域、および、前記バリア絶縁層を挟んで前記電子走行層に沿って延びる第2領域を含み、
前記ゲート絶縁層の前記第1領域の厚さは、前記ゲート絶縁層の前記第2領域の厚さ以上である、半導体装置。
【請求項2】
Al In Ga (1-a-b) N(0≦a+b≦1)を含む電子走行層と、
Al Ga (1-x) N(0<X≦1)を含み、前記電子走行層の上に形成され、前記電子走行層を露出させる開口を有する電子供給層と、
前記電子走行層の表層部において前記電子供給層と対向する領域に形成された二次元電子ガス領域と、
前記電子供給層の上に積層された絶縁層と、
前記電子供給層の前記開口に連通し、前記開口とコンタクト孔を形成するように前記絶縁層に区画されたテーパ形状の貫通孔と、
前記コンタクト孔内において前記コンタクト孔の壁面および前記電子走行層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記絶縁層の表面を被覆するバリア絶縁層と、
SiO を含み、前記コンタクト孔内において前記バリア絶縁層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記バリア絶縁層を挟んで前記絶縁層の表面に対向するゲート絶縁層と、
前記コンタクト孔内において前記ゲート絶縁層を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極層と、を含み、
前記絶縁層は、前記電子供給層の上にこの順に積層された平坦化層、パッシベーション層およびスペーサ層を含み、
前記コンタクト孔は、断面視において、前記電子供給層によって区画され、前記コンタクト孔の中間部の深さ位置に対して下方側の領域において一定の内径を有する下方部、および、前記絶縁層によって区画され、前記中間部の深さ位置に対して上方側の領域において前記下方部の内径から漸増する内径を有し、前記絶縁層の上面と滑らかにつながる上方部を有し、
前記ゲート絶縁層は、前記コンタクト孔内において、前記バリア絶縁層を挟んで前記コンタクト孔の側壁に沿って延びる第1領域、および、前記バリア絶縁層を挟んで前記電子走行層に沿って延びる第2領域を含み、
前記ゲート絶縁層の前記第1領域の厚さは、前記ゲート絶縁層の前記第2領域の厚さ以上である、半導体装置。
【請求項3】
前記スペーサ層の厚さは、前記平坦化層の厚さおよび前記パッシベーション層の厚さよりも大きい、請求項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記スペーサ層は、SiOを含む、請求項またはに記載の半導体装置。
【請求項5】
Al In Ga (1-a-b) N(0≦a+b≦1)を含む電子走行層と、
Al Ga (1-x) N(0<X≦1)を含み、前記電子走行層の上に形成され、前記電子走行層を露出させる開口を有する電子供給層と、
前記電子走行層の表層部において前記電子供給層と対向する領域に形成された二次元電子ガス領域と、
前記電子供給層の上に積層された絶縁層と、
前記電子供給層の前記開口に連通し、前記開口とコンタクト孔を形成するように前記絶縁層に区画されたテーパ形状の貫通孔と、
前記コンタクト孔内において前記コンタクト孔の壁面および前記電子走行層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記絶縁層の表面を被覆するバリア絶縁層と、
SiO を含み、前記コンタクト孔内において前記バリア絶縁層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記バリア絶縁層を挟んで前記絶縁層の表面に対向するゲート絶縁層と、
前記コンタクト孔内において前記ゲート絶縁層を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極層と、を含み、
前記コンタクト孔は、断面視において、前記電子供給層によって区画され、前記コンタクト孔の中間部の深さ位置に対して下方側の領域において一定の内径を有する下方部、および、前記絶縁層によって区画され、前記中間部の深さ位置に対して上方側の領域において前記下方部の内径から漸増する内径を有し、前記絶縁層の上面と滑らかにつながる上方部を有し、
前記ゲート絶縁層は、前記コンタクト孔内において、前記バリア絶縁層を挟んで前記コンタクト孔の側壁に沿って延びる第1領域、および、前記バリア絶縁層を挟んで前記電子走行層に沿って延びる第2領域を含み、
前記ゲート電極層は、ゲート下地層およびゲート埋め込み層を含む積層構造を有し、
前記ゲート絶縁層の前記第1領域の厚さは、前記ゲート絶縁層の前記第2領域の厚さ以上であ、半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート下地層は、TiN層を含み、
前記ゲート埋め込み層は、W(タングステン)層を含む、請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記電子走行層の表層部において、
前記電子供給層と対向する領域の伝導帯エネルギ準位は、フェルミエネルギ準位より小さく、
前記電子供給層の前記開口と対向する領域の伝導帯エネルギ準位は、フェルミエネルギ準位より大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電子走行層は、GaNからなる、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記電子供給層は、結晶状態のAlNからなる、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記バリア絶縁層は、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(0<γ≦1)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記γは、1である、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記バリア絶縁層は、アモルファス状態のSiNを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
平面視において、前記ゲート電極層を挟むように配置されたドレイン電極層およびソース電極層をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ゲート絶縁層は、アルモファス状態のSiOを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ゲート電極層の周囲に位置するように前記ゲート絶縁層の表面の上に形成されたフィールドプレートをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記絶縁層は、前記電子供給層の上にこの順に積層された平坦化層、パッシベーション層およびスペーサ層を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記ゲート電極層は、ゲート下地層およびゲート埋め込み層を含む積層構造を有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含む電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上に、前記電子走行層の上面の伝導帯エネルギ準位が、フェルミエネルギ準位よりも小さくなるように、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含む電子供給層を形成する工程と、
平坦化層、パッシベーション層およびスペーサ層を前記電子供給層の上に順に形成し、前記平坦化層、前記パッシベーション層および前記スペーサ層を含む絶縁層を前記電子供給層の上に形成する工程と、
前記電子供給層の一部を露出させるテーパ形状の貫通孔を前記絶縁層に形成する工程と、
前記電子供給層のうち前記絶縁層の前記貫通孔からの露出部を酸化して酸化物を形成し、前記酸化物を除去することによって、前記電子走行層を露出させ、前記貫通孔に連通するコンタクト孔を区画する開口を形成すると同時に、前記電子走行層の表面において前記開口と対向する領域の伝導帯エネルギ準位をフェルミエネルギ準位よりも大きくする工程と、
前記コンタクト孔内において前記コンタクト孔の壁面および前記電子走行層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記絶縁層の表面を被覆するバリア絶縁層を形成する工程と、
SiOを含み、前記コンタクト孔内において前記バリア絶縁層を被覆し、前記コンタクト孔外において前記バリア絶縁層を挟んで前記絶縁層の表面に対向するゲート絶縁層を形成する工程と、
前記コンタクト孔内において前記ゲート絶縁層の上にゲート電極層を形成する工程と、を含み、
前記コンタクト孔は、断面視において、前記電子供給層によって区画され、前記コンタクト孔の中間部の深さ位置に対して下方側の領域において一定の内径を有する下方部、および、前記絶縁層によって区画され、前記中間部の深さ位置に対して上方側の領域において前記下方部の内径から漸増する内径を有し、前記絶縁層の上面と滑らかにつながる上方部を含むように形成され、
前記ゲート絶縁層は、前記コンタクト孔内において、前記バリア絶縁層を挟んで前記コンタクト孔の側壁に沿って延びる第1領域、および、前記バリア絶縁層を挟んで前記電子走行層に沿って延びる第2領域を含むように形成され、
前記ゲート絶縁層の前記第1領域の厚さは、前記ゲート絶縁層の前記第2領域の厚さ以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記酸化物を形成する工程は、プラズマ酸化法によって前記電子供給層の一部を酸化させる工程を含み、
前記酸化物を除去する工程は、ウエットエッチング法によって前記酸化物を除去する工程を含む、請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記酸化物は、AlONまたはAlを含む、請求項18または19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記電子走行層を形成する工程は、GaNからなる前記電子走行層を形成する工程を含む、請求項1820のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記電子供給層を形成する工程は、結晶状態のAlNからなる前記電子供給層を形成する工程を含む、請求項1821のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HEMT(High Electron Mobility Transistor)を備えた半導体装置は、その構造上、ノーマリオフ化が困難であり、ゲート閾値電圧が比較的小さい、という問題を有している。特許文献1は、ノーマリオフ化を実現する構造の一例を開示し、特許文献2は、ゲート閾値電圧を増加させる構造の一例を開示している。
【0003】
特許文献1に係る半導体装置は、i-GaN層(電子走行層)を含む。i-GaN層の上には、AlNスペーサ層(電子供給層)が形成されている。AlNスペーサ層の上には、InAlNバリア層が形成されている。InAlNバリア層およびAlNスペーサ層には、i-GaN層を露出させるリセスが形成されている。リセスには、ゲート絶縁層を挟んでゲート電極が埋め込まれている。
【0004】
特許文献2に係る半導体装置は、p型窒化物半導体によって形成されたp型バックバリア層を含む。p型バックバリア層の上には、電子走行層が形成されている。電子走行層の上には、電子供給層が形成されている。電子供給層の上には、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極が形成されている。ゲート閾値電圧は、p型バックバリア層によって増加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-192004号公報
【文献】特開2016-163017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る半導体装置では、ノーマリオフ化を達成するため、電子走行層(i-GaN層)を露出させるリセスを形成しなければならない。リセスの形成工程では、外気に対する電子走行層の暴露を避けることはできない。そのため、電子走行層の酸化に起因してチャネル抵抗が増加する虞がある。また、ゲート絶縁層が酸化物絶縁材料からなる場合には、ゲート絶縁層の材質に起因して電子走行層が酸化する虞もある。
【0007】
一方、特許文献2に係る半導体装置では、p型バックバリア層に導入されたp型不純物(正孔)を用いてHEMTをオンオフ動作させなければならない。p型不純物(正孔)は、キャリア移動度が比較的低いという性質を有している。そのため、特許文献2に係る半導体装置は、スイッチング特性を犠牲にせざるを得ないという一面を有している。
【0008】
本発明の一実施形態は、チャネル抵抗の増加を抑制し、ゲート閾値電圧を増加できる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層と、AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含み、前記バックバリア層の上に形成された電子走行層と、AlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含み、前記電子走行層の上に形成されたトップバリア層と、AlGa(1-Z)N(0<Z≦1)を含み、前記トップバリア層の上に形成され、前記トップバリア層を露出させる開口を有する電子供給層と、前記電子走行層の表層部において前記トップバリア層を挟んで前記電子供給層と対向する領域に形成された二次元電子ガス領域と、前記電子供給層の前記開口内に形成されたゲート絶縁層を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極層と、を含む、半導体装置を提供する。
【0010】
この半導体装置によれば、電子走行層の上にトップバリア層が形成されている。このトップバリア層により、電子走行層が外気に暴露されることを回避できるから、電子走行層の酸化を抑制できる。その結果、チャネル抵抗の増加を抑制できる。
【0011】
電子走行層の上にトップバリア層が形成された構造では、電子走行層およびトップバリア層の間に生じる圧電分極によってゲート閾値電圧が低下する方向の効果が働く。そこで、この半導体装置では、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層の上に電子走行層を形成している。
【0012】
このバックバリア層によれば、バックバリア層および電子走行層の間に生じる圧電分極によって、電子走行層におけるバックバリア層側のエネルギバンドを高エネルギ側にシフトさせることができる。これにより、ゲート閾値電圧を増加させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態は、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層の上に、AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含む電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層の上に、前記電子走行層との間の界面の伝導帯エネルギ準位が、フェルミエネルギ準位よりも大きくなるように、AlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含むトップバリア層を形成する工程と、前記トップバリア層の上に、前記トップバリア層および前記電子走行層の界面の伝導帯エネルギ準位が、フェルミエネルギ準位よりも小さくなるように、AlGa(1-Z)N(0<Z≦1)を含む電子供給層を形成する工程と、前記電子供給層の一部を酸化して酸化物を形成し、前記酸化物を除去することによって、前記電子供給層に前記トップバリア層を露出させる開口を形成し、前記トップバリア層および前記電子走行層の間の界面において前記開口と対向する領域の伝導帯エネルギ準位を、フェルミエネルギ準位よりも大きくする工程と、前記トップバリア層において前記電子供給層の前記開口から露出する部分の上にゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層の上にゲート電極層を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法を提供する。
【0014】
この製造方法によれば、電子走行層の上にトップバリア層が形成される。このトップバリア層により、電子走行層が外気に暴露されることを回避できるから、電子走行層の酸化を抑制できる。その結果、チャネル抵抗の増加を抑制できる。
【0015】
電子走行層の上にトップバリア層が形成された構造では、電子走行層およびトップバリア層の間に生じる圧電分極によってゲート閾値電圧が低下する方向の効果が働く。そこで、この製造方法では、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層の上に電子走行層を形成している。
【0016】
このバックバリア層によれば、バックバリア層および電子走行層の間に生じる圧電分極によって、電子走行層におけるバックバリア層側のエネルギバンドを高エネルギ側にシフトさせることができる。これにより、ゲート閾値電圧を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図2図2は、図1に示すトップバリア層の厚さおよびAl組成比の関係を示すグラフである。
図3図3は、バックバリア層の導入の効果をシミュレーションによって調べた結果を示すグラフである。
図4A図4Aは、図1に示す半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図4B図4Bは、図4Aの後の工程を示す断面図である。
図4C図4Cは、図4Bの後の工程を示す断面図である。
図4D図4Dは、図4Cの後の工程を示す断面図である。
図4E図4Eは、図4Dの後の工程を示す断面図である。
図4F図4Fは、図4Eの後の工程を示す断面図である。
図4G図4Gは、図4Fの後の工程を示す断面図である。
図4H図4Hは、図4Gの後の工程を示す断面図である。
図4I図4Iは、図4Hの後の工程を示す断面図である。
図4J図4Jは、図4Iの後の工程を示す断面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図7図7は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図8図8は、図7に示す領域VIIの拡大図である。
図9図9は、図7に示す半導体装置のゲート閾値電圧の経時特性を示すグラフである。
図10A図10Aは、図7に示す半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図10B図10Bは、図10Aの後の工程を示す断面図である。
図10C図10Cは、図10Bの後の工程を示す断面図である。
図10D図10Dは、図10Cの後の工程を示す断面図である。
図10E図10Eは、図10Dの後の工程を示す断面図である。
図10F図10Fは、図10Eの後の工程を示す断面図である。
図10G図10Gは、図10Fの後の工程を示す断面図である。
図10H図10Hは、図10Gの後の工程を示す断面図である。
図10I図10Iは、図10Hの後の工程を示す断面図である。
図10J図10Jは、図10Iの後の工程を示す断面図である。
図10K図10Kは、図10Jの後の工程を示す断面図である。
図10L図10Lは、図10Kの後の工程を示す断面図である。
図10M図10Mは、図10Lの後の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1を示す断面図である。
【0020】
半導体装置1は、III族窒化物半導体を含むHEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)を備えた基本形態を有している。
【0021】
図1を参照して、半導体装置1は、基板2を含む。基板2は、Si基板、SiC基板、サファイア基板、GaN基板等であってもよい。基板2は、この形態では、Si基板からなる。基板2は、一方側の第1主面3および他方側の第2主面4を含む。
【0022】
基板2の第1主面3の上には、核形成層5、バッファ層6、ダブルヘテロ積層構造7および電子供給層8がこの順に形成されている。核形成層5は、この形態では、AlNを含む。核形成層5の厚さは、100nm以上300nm以下(たとえば200nm程度)であってもよい。
【0023】
バッファ層6は、単一のバッファ層6からなる単層構造を有していてもよい。バッファ層6は、この形態では、複数(2つ以上)のバッファ層が積層された積層構造を有している。複数のバッファ層は、Al組成比が積層方向に向けて漸減する順序で核形成層5の上に積層されていてもよい。
【0024】
複数のバッファ層は、この形態では、核形成層5の上からこの順に積層された第1バッファ層9および第2バッファ層10を含む。第1バッファ層9は、AlαGa(1-α)N(0<α≦1)を含む。第2バッファ層10は、AlβGa(1-β)N(0<β<α≦1)を含む。Al組成比αは0.52であり、Al組成比βは0.12であってもよい。
【0025】
第1バッファ層9の厚さは、50nm以上200nn以下(たとえば100nm程度)であってもよい。第2バッファ層10の厚さは、50nm以上200nm以下(たとえば100nm程度)であってもよい。
【0026】
ダブルヘテロ積層構造7は、バッファ層6の上からこの順に積層されたバックバリア層11、電子走行層12およびトップバリア層13を含む積層構造を有している。バックバリア層11は、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含む。Al組成比Xは1未満(X<1)であってもよい。バックバリア層11の厚さは、2nm以上2000nm以下(たとえば1000nm程度)であってもよい。
【0027】
バックバリア層11のAl組成比Xは、半導体装置1の電気的特性(たとえば耐圧)に応じて種々の値を取り得る設計値であり、一義的に定まらない。バックバリア層11の格子状数は、半導体装置1の電気的特性(たとえば耐圧)やAl組成比Xに応じて変動するため、一義的に定まらない。
【0028】
Al組成比Xは、0.01以上0.1以下であってもよい。Al組成比Xは、0.1以上0.2以下であってもよい。Al組成比Xは、0.2以上0.3以下であってもよい。バックバリア層11の厚みは、Al組成比Xに応じて変動するため、一義的に定まらない。
【0029】
電子走行層12は、AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含む。電子走行層12は、この形態では、GaNからなる。電子走行層12のa軸格子定数(=3.189Å)は、この形態では、GaNに加えてAlを含むバックバリア層11のa軸格子定数よりも大きい。電子走行層12の厚さは、50nm以上300nm以下であってもよい。
【0030】
電子走行層12は、不純物無添加のAlInGa(1-a-b)N(この形態ではGaN)を含んでいてもよい。電子走行層12は、不純物として炭素が添加されたAlInGa(1-a-b)N(この形態ではGaN)を含んでいてもよい。
【0031】
トップバリア層13は、AlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含む。Al組成比Yは1未満(Y<1)であってもよい。トップバリア層13のa軸格子定数は、電子走行層12のa軸格子定数(=3.189Å)よりも小さい。トップバリア層13の厚さおよびAl組成比Yは、図2のグラフに基づいて定められてもよい。
【0032】
図2は、図1に示すトップバリア層13の厚さおよびAl組成比Yの関係を示すグラフである。図2において、縦軸は厚さを表し、横軸はAl組成比Yを表している。
【0033】
図2には、複数のプロット点を結ぶ曲線Lが示されている。曲線Lは、トップバリア層13の厚さおよびAl組成比Yの関係を示している。縦軸および横軸によって形成された座標平面は、曲線Lによって上側領域RUおよび下側領域RLに分割されている。
【0034】
上側領域RUは、ダブルヘテロ積層構造7の上に電子供給層8が形成されていない状態で、電子走行層12およびトップバリア層13の間の領域に二次元電子ガス領域14(後述する)が形成される領域である。
【0035】
下側領域RLは、ダブルヘテロ積層構造7の上に電子供給層8が形成されていない状態で、電子走行層12およびトップバリア層13の間の領域に二次元電子ガス領域14(後述する)が形成されない領域である。
【0036】
トップバリア層13の厚さおよびAl組成比Yは、図2の座標平面において下側領域RLに位置するように設定される。つまり、ダブルヘテロ積層構造7の上に電子供給層8が形成されていない状態において、電子走行層12およびトップバリア層13の間の界面の伝導帯エネルギ準位ECは、フェルミエネルギ準位EFよりも大きい(EC>EF)。
【0037】
曲線Lを参照して、トップバリア層13の厚さは、0.5nm以上50nm以下であってもよい。また、トップバリア層13のAl組成比Yは、0.05以上0.3以下であってもよい。トップバリア層13の厚さが1.0nm以上であれば、トップバリア層13側への二次元電子ガス領域14(後述する)の波動関数の浸み出しの影響を良好に保つことができる。
【0038】
図1を再度参照して、電子供給層8は、トップバリア層13の上に形成されている。電子供給層8は、結晶状態のAlGa(1-Z)N(0<Z≦1)を含む。電子供給層8は、この形態では、結晶状態のAlNからなる。
【0039】
電子供給層8のa軸格子定数は、バックバリア層11、電子走行層12およびトップバリア層13のa軸格子定数よりも小さい。電子供給層8の厚さは、1nm以上5nm以下(たとえば2nm程度)であってもよい。電子供給層8には、トップバリア層13を露出させる開口15が形成されている。
【0040】
トップバリア層13は、電子供給層8の開口15から露出する露出部、および、電子供給層8によって被覆された被覆部を有している。トップバリア層13の露出部および被覆部は、一体的に連なる平坦面を形成している。トップバリア層13の露出部は、トップバリア層13の被覆部に対して基板2に向けて一段窪むように形成されていない。
【0041】
電子走行層12およびトップバリア層13の間の界面の伝導帯エネルギ準位ECは、電子供給層8によって調節されている。より具体的には、電子走行層12およびトップバリア層13の間の界面における電子供給層8と対向する領域の伝導帯エネルギ準位ECは、定常状態においてフェルミエネルギ準位EFよりも小さい(EC<EF)。したがって、定常状態では、電子走行層12の表層部において電子供給層8と対向する領域に、二次元電子ガス領域14が形成される。
【0042】
一方、電子走行層12およびトップバリア層13の間の界面における電子供給層8の開口15と対向する領域の伝導帯エネルギ準位ECは、定常状態においてフェルミエネルギ準位EFよりも大きい(EC>EF)。したがって、定常状態では、電子走行層12の表層部において電子供給層8の開口15と対向する領域に、二次元電子ガス領域14は形成されない。
【0043】
電子供給層8の上には、耐圧保持絶縁層21(絶縁層)が形成されている。耐圧保持絶縁層21は、この形態では、電子供給層8の上からこの順に積層された、平坦化層22、パッシベーション層23およびスペーサ層24を含む積層構造を有している。
【0044】
平坦化層22は、電子供給層8を被覆している。平坦化層22は、電子供給層8の上において、平坦性を向上させるために形成されている。平坦化層22は、GaNを含んでいてもよい。平坦化層22の厚さは、1nm以上5nm以下(たとえば2nm程度)であってもよい。
【0045】
パッシベーション層23は、平坦化層22を被覆している。パッシベーション層23は、SiNを含んでいてもよい。パッシベーション層23は、電荷のトラップを抑制し、耐圧保持絶縁層21の絶縁特性を維持する。パッシベーション層23の厚さは、1nm以上40nm以下(たとえば25nm程度)であってもよい。
【0046】
スペーサ層24は、パッシベーション層23を被覆している。スペーサ層24の厚さは、平坦化層22の厚さおよびパッシベーション層23の厚さよりも大きい。スペーサ層24は、後述するゲート電極層32を電子供給層8からの離間させるために形成されている。スペーサ層24は、SiOを含んでいてもよい。スペーサ層24の厚さは、10nm以上100nm以下(たとえば70nm程度)であってもよい。
【0047】
耐圧保持絶縁層21には、電子供給層8の開口15に連通する貫通孔25が形成されている。耐圧保持絶縁層21の貫通孔25は、電子供給層8の開口15との間で、一つのゲートコンタクト孔26を形成している。
【0048】
ゲートコンタクト孔26は、断面視において、開口面積が底面積よりも大きいテーパ形状に形成されている。ゲートコンタクト孔26の開口エッジ部は、ゲートコンタクト孔26内に向かう湾曲面を有していてもよい。
【0049】
ゲートコンタクト孔26には、ゲート絶縁層31が形成されている。ゲート絶縁層31は、酸化物絶縁材料を含む。ゲート絶縁層31は、アモルファス状態の酸化物絶縁材料を含むことが好ましい。
【0050】
酸化物絶縁材料は、SiO、SiON、Al、HfSiOまたはHfOのうちの少なくとも1種を含む。ゲート絶縁層31は、SiO層、SiON層、Al層、HfSiO層またはHfO層からなる単層構造を有していてもよい。ゲート絶縁層31は、SiO層、SiON層、Al層、HfSiO層またはHfO層のうちの少なくとも1種を含む積層構造を有していてもよい。
【0051】
ゲート絶縁層31は、酸化物絶縁材料に代えてまたはこれに加えて、SiN層を含んでいてもよい。ゲート絶縁層31は、SiO層、SiON層、Al層、HfSiO層またはHfO層のうちの少なくとも1種の酸化物絶縁材料層と、SiN層とを含む積層構造を有していてもよい。ゲート絶縁層31は、この形態では、アモルファス状態のSiOからなる。
【0052】
ゲート絶縁層31は、第1領域および第2領域を含む。第1領域は、ゲートコンタクト孔26の側壁に沿って形成されている。第2領域は、トップバリア層13の表面に沿って形成されている。ゲート絶縁層31の第1領域の厚さT1は、ゲート絶縁層31の第2領域の厚さT2以上(T1≧T2)であってもよい。ゲート絶縁層31の第1領域の厚さT1は、ゲート絶縁層31の第2領域の厚さT2よりも大きい(T1>T2)ことが好ましい。
【0053】
ゲート絶縁層31は、ゲートコンタクト孔26の内壁を介して耐圧保持絶縁層21の上に膜状に引き出されている。これにより、ゲート絶縁層31は、耐圧保持絶縁層21の表面を被覆している。ゲート絶縁層31は、この形態では、耐圧保持絶縁層21の表面のほぼ全面を被覆している。
【0054】
ゲート絶縁層31の上にはゲート電極層32が形成されている。ゲート電極層32は、耐圧保持絶縁層21の上からゲートコンタクト孔26に入り込んでいる。ゲート電極層32は、耐圧保持絶縁層21を被覆し、耐圧保持絶縁層21を挟んで電子供給層8と対向する被覆部を有している。
【0055】
ゲート電極層32は、ゲートコンタクト孔26内において、ゲート絶縁層31の第1領域を挟んでゲートコンタクト孔26の側壁と対向している。ゲート電極層32は、ゲートコンタクト孔26内において、ゲート絶縁層31の第2領域を挟んでトップバリア層13と対向している。
【0056】
ゲート電極層32においてゲート絶縁層31の第1領域を挟んでゲートコンタクト孔26の側壁と対向する部分の静電容量は、ゲート電極層32においてゲート絶縁層31の第2領域を挟んでトップバリア層13と対向する部分の静電容量よりも小さい。これにより、スイッチングノイズの低減を図ることができる。
【0057】
ゲート絶縁層31には、ドレインコンタクト孔33およびソースコンタクト孔34が形成されている。ドレインコンタクト孔33は、ゲート絶縁層31において電子供給層8と対向する領域に形成されている。ドレインコンタクト孔33は、ゲート絶縁層31および耐圧保持絶縁層21を貫通し、電子供給層8を露出させている。
【0058】
ソースコンタクト孔34は、ドレインコンタクト孔33とは異なる領域において、ゲート絶縁層31において電子供給層8と対向する領域に形成されている。ソースコンタクト孔34は、ゲート絶縁層31および耐圧保持絶縁層21を貫通し、電子供給層8を露出させている。
【0059】
ドレインコンタクト孔33には、ドレイン電極35が埋め込まれている。ドレイン電極35は、ドレインコンタクト孔33内において、電子供給層8に電気的に接続されている。ソースコンタクト孔34には、ソース電極36が埋め込まれている。ソース電極36は、ソースコンタクト孔34内において、電子供給層8に電気的に接続されている。
【0060】
所定のゲート閾値電圧Vth以上のゲート電圧が、ゲート電極層32に印加された場合、電子走行層12の表層部においてゲート電極層32の直下の領域では、伝導帯エネルギ準位ECが、フェルミエネルギ準位EFよりも小さくなる(EC<EF)。これにより、二次元電子ガス領域14が、電子走行層12の表層部においてゲート電極層32の直下の領域に形成され、ドレイン電極35およびソース電極36の間に電流が流れる。
【0061】
一方、ゲート閾値電圧Vth未満のゲート電圧が、ゲート電極層32に印加された場合、電子走行層12の表層部においてゲート電極層32の直下の領域の伝導帯エネルギ準位ECが、フェルミエネルギ準位EFよりも大きくなる(EC>EF)。
【0062】
この場合、二次元電子ガス領域14は、電子走行層12の表層部においてゲート電極層32の直下の領域に形成されない。したがって、ドレイン電極35およびソース電極36の間に電流は流れない。このようにして、半導体装置1では、ノーマリオフ動作が実現されている。
【0063】
図3は、バックバリア層11の導入の効果をシミュレーションによって調べた結果を示すグラフである。図3において、縦軸はゲート閾値電圧Vthを示しており、横軸は項目軸である。ここでは、ノーマリオン動作のモデルを用いてゲート閾値電圧Vthを調べた。ゲート閾値電圧Vthは負の値を有しているが、ノーマリオン動作およびノーマリオフ動作の間において、バックバリア層11の導入の効果は実質的には変わらない。
【0064】
図3には、第1棒グラフL1、第2棒グラフL2、第3棒グラフL3、第4棒グラフL4および第5棒グラフL5が示されている。第1棒グラフL1は、参考例に係る半導体装置の第1ゲート閾値電圧Vth1を示している。参考例に係る半導体装置は、バックバリア層11を備えていない点を除いて、半導体装置1とほぼ同様の構造を有している。参考例に係る半導体装置についての具体的な説明は省略する。
【0065】
第2棒グラフL2は、半導体装置1において、電子走行層12の厚さを100nmに設定し、バックバリア層11に係るAlGa(1-X)NのAl組成比Xを0.03に設定した場合の第2ゲート閾値電圧Vth2を示している。
【0066】
第3棒グラフL3は、半導体装置1において、電子走行層12の厚さを50nmに設定し、バックバリア層11に係るAlGa(1-X)NのAl組成比Xを0.03に設定した場合の第3ゲート閾値電圧Vth3を示している。
【0067】
第4棒グラフL4は、半導体装置1において、電子走行層12の厚さを100nmに設定し、バックバリア層11に係るAlGa(1-X)NのAl組成比Xを0.06に設定した場合の第4ゲート閾値電圧Vth4を示している。
【0068】
第5棒グラフL5は、半導体装置1において、電子走行層12の厚さを50nmに設定し、バックバリア層11に係るAlGa(1-X)NのAl組成比Xを0.06に設定した場合の第5ゲート閾値電圧Vth5を示している。
【0069】
第1棒グラフL1を参照して、第1ゲート閾値電圧Vth1は-4Vであった。第2棒グラフL2を参照して、第2ゲート閾値電圧Vth2は-3.7Vであった。第3棒グラフL3を参照して、第3ゲート閾値電圧Vth3は-2.9Vであった。第4棒グラフL4を参照して、第4ゲート閾値電圧Vth4は-3.5Vであった。第5棒グラフL5を参照して、第5ゲート閾値電圧Vth5は-2.5Vであった。
【0070】
このことから、半導体装置1によれば、参考例に係る半導体装置と比較して、ゲート閾値電圧Vthが増加(正方向にシフト)することが分かった。
【0071】
また、第2棒グラフL2および第3棒グラフL3、ならびに、第4棒グラフL4および第5棒グラフL5を参照して、Al組成比Xが同じ場合であっても、電子走行層12の厚さが小さい程、ゲート閾値電圧Vthが増加(正方向にシフト)することが分かった。
【0072】
また、第2棒グラフL2および第4棒グラフL4、ならびに、第3棒グラフL3および第5棒グラフL5を参照して、電子走行層12の厚さが同じ場合であっても、Al組成比Xが大きい程、ゲート閾値電圧Vthが増加(正方向にシフト)することが分かった。
【0073】
以上、半導体装置1によれば、電子走行層12の上にトップバリア層13が形成されている。このトップバリア層13により、電子走行層12が、外気に暴露されることを回避できるから、電子走行層12の酸化を抑制できる。その結果、チャネル抵抗の増加を抑制できる。
【0074】
電子走行層12の上にトップバリア層13が形成された構造では、電子走行層12およびトップバリア層13の間に生じる圧電分極によってゲート閾値電圧Vthが低下する方向の効果が働く。そこで、この半導体装置1では、AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層11の上に電子走行層12を形成している。
【0075】
このバックバリア層11によれば、バックバリア層11および電子走行層12の間に生じる圧電分極によって、電子走行層12におけるバックバリア層11側のエネルギバンドを高エネルギ側にシフトさせることができる。これにより、キャリア移動度を向上できると同時に、図3に示されるように、ゲート閾値電圧Vthを増加させることができる。
【0076】
図4A図4Jは、図1に示す半導体装置1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0077】
図4Aを参照して、まず、第1主面3および第2主面4を有する基板2が用意される。基板2は、この形態では、Si基板である。
【0078】
次に、図4Bを参照して、核形成層5、バッファ層6、ダブルヘテロ積層構造7および電子供給層8が、基板2の第1主面3の上にこの順に形成される。核形成層5、バッファ層6、ダブルヘテロ積層構造7および電子供給層8は、エピタキシャル成長法によってそれぞれ形成される。
【0079】
核形成層5は、より具体的には、基板2の上からAlNをエピタキシャル成長することによって形成される。バッファ層6は、核形成層5の上からAlGaNをエピタキシャル成長することによって形成される。
【0080】
バッファ層6の形成工程は、この形態では、第1バッファ層9および第2バッファ層10を、核形成層5の上からこの順に形成する工程を含む。第1バッファ層9は、核形成層5の上からAlαGa(1-α)Nをエピタキシャル成長することによって形成される。第2バッファ層10は、第1バッファ層9の上からAlβGa(1-β)Nをエピタキシャル成長することによって形成される。
【0081】
ダブルヘテロ積層構造7の形成工程は、バックバリア層11、電子走行層12およびトップバリア層13を、バッファ層6の上にこの順に形成する工程を含む。
【0082】
バックバリア層11は、バッファ層6の上からAlGa(1-X)Nをエピタキシャル成長することによって形成される。電子走行層12は、バックバリア層11の上から、AlInGa(1-a-b)N(この形態では、GaN)をエピタキシャル成長することによって形成される。
【0083】
トップバリア層13は、電子走行層12の上からAlGa(1-Y)Nをエピタキシャル成長することによって形成される。トップバリア層13は、電子走行層12との界面の伝導帯エネルギ準位ECが、フェルミエネルギ準位EFよりも大きく(EC>EF)なるように電子走行層12の上に形成される。
【0084】
電子供給層8は、電子走行層12の上からAlGa(1-Z)N(この形態ではAlN)をエピタキシャル成長することによって形成される。電子供給層8は、電子走行層12およびトップバリア層13の界面の伝導帯エネルギ準位ECが、フェルミエネルギ準位EFよりも小さく(EC<EF)なるようにトップバリア層13の上に形成される。
【0085】
次に、図4Cを参照して、耐圧保持絶縁層21が、電子供給層8の上に形成される。耐圧保持絶縁層21の形成工程は、電子供給層8の上から、平坦化層22、パッシベーション層23およびスペーサ層24をこの順に形成する工程を含む。
【0086】
平坦化層22は、電子走行層12の上からGaNをエピタキシャル成長することによって形成される。パッシベーション層23は、CVD法によって形成されてもよい。パッシベーション層23は、SiNを含んでいてもよい。スペーサ層24は、CVD法によって形成されてもよい。スペーサ層24は、SiOを含んでいてもよい。
【0087】
次に、図4Dを参照して、所定パターンを有するマスク41が、耐圧保持絶縁層21の上に形成される。マスク41は、感光性樹脂からなるレジストマスクであってもよい。マスク41は、貫通孔25を形成すべき領域を露出させる開口42を有している。
【0088】
次に、耐圧保持絶縁層21の不要な部分が除去される。耐圧保持絶縁層21の不要な部分は、マスク41を介するエッチング法によって除去されてもよい。これにより、耐圧保持絶縁層21に、電子供給層8を露出させる貫通孔25が形成される。貫通孔25が形成された後、マスク41は除去される。
【0089】
次に、図4Eを参照して、酸化処理法によって、電子供給層8において耐圧保持絶縁層21の貫通孔25から露出する部分が酸化される。これにより、電子供給層8の酸化物43が、耐圧保持絶縁層21の貫通孔25内に形成される。酸化物43は、AlONまたはAlを含んでいてもよい。
【0090】
酸化処理法は、プラズマ酸化処理法であってもよい。プラズマ酸化処理法は、酸素ガス雰囲気中で、電子供給層8において貫通孔25から露出する部分が全て酸化するまで行われる。処理温度は、100℃以上900℃以下であってもよい。処理時間は、1時間以上15時間以下であってもよい。酸素ガス中の酸素濃度は、30%程度であってもよい。
【0091】
プラズマ酸化法によれば、酸化物43が形成された後、雰囲気中の酸素がトップバリア層13に進入しないか、または、殆ど進入しない。したがって、トップバリア層13の表面は、酸化しないか、または、殆ど酸化しない。
【0092】
次に、図4Fを参照して、酸化物43が除去される。これにより、電子供給層8に、耐圧保持絶縁層21の貫通孔25に連通する開口15が形成され、開口15および貫通孔25を含む一つのゲートコンタクト孔26が形成される。
【0093】
また、酸化物43の除去と共に、トップバリア層13および電子走行層12の間の界面においてゲートコンタクト孔26から露出する領域の伝導帯エネルギ準位ECが、フェルミエネルギ準位EFよりも大きくなる(EC>EF)。
【0094】
酸化物43は、エッチング法(たとえばウエットエッチング法)によって除去されてもよい。エッチング液は、硫酸および過酸化水素水を含むSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)であってもよい。酸化物43は、酸素原子を含み、ガリウム原子を含まない点において、電子供給層8およびトップバリア層13とは異なるエッチング選択比を有している。
【0095】
したがって、酸化物43の除去時において、電子供給層8およびトップバリア層13は殆ど除去されない。これにより、トップバリア層13において開口15の底壁を形成する部分、および、トップバリア層13において電子供給層8に接する部分は、互いに平坦な平坦面を形成する。
【0096】
さらに、この工程は、電子走行層12がトップバリア層13によって被覆された状態で実施される。したがって、外気に対する電子走行層12の暴露を回避できる。これにより、電子走行層12の酸化を抑制できるから、チャネル抵抗の増加を抑制できる。
【0097】
次に、図4Gを参照して、ゲート絶縁層31が、トップバリア層13の上に形成される。ゲート絶縁層31は、この形態では、ゲートコンタクト孔26の内壁を介して耐圧保持絶縁層21の上に膜状に引き出されるように形成される。ゲート絶縁層31は、この形態では、アモルファス状態のSiOを含む。ゲート絶縁層31は、CVD法によって形成されてもよい。
【0098】
次に、図4Hを参照して、ゲート電極層32が、ゲート絶縁層31の上に形成される。ゲート電極層32は、CVD法による導電層の形成工程や、エッチング法による導電層のパターニング工程を経て形成されてもよい。
【0099】
次に、図4Iを参照して、所定パターンを有するマスク45が、ゲート絶縁層31の上に形成される。マスク45は、感光性樹脂からなるレジストマスクであってもよい。マスク45は、ドレインコンタクト孔33およびソースコンタクト孔34を形成すべき領域を露出させる開口46を有している。
【0100】
次に、ゲート絶縁層31の不要な部分および耐圧保持絶縁層21の不要な部分が、電子供給層8が露出するまで除去される。ゲート絶縁層31の不要な部分および耐圧保持絶縁層21の不要な部分は、マスク45を介するエッチング法によってそれぞれ除去されてもよい。これにより、電子供給層8を露出させるドレインコンタクト孔33およびソースコンタクト孔34が形成される。マスク45は、その後除去される。
【0101】
次に、図4Jを参照して、ドレインコンタクト孔33にドレイン電極35が埋め込まれ、ソースコンタクト孔34にソース電極36が埋め込まれる。ドレイン電極35およびソース電極36は、CVD法による導電層の形成工程や、エッチング法による導電層のパターニング工程を経て形成されてもよい。以上を含む工程を経て、半導体装置1が製造される。
【0102】
図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置51を示す断面図である。以下では、半導体装置1において述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0103】
半導体装置51は、トップバリア層13および電子供給層8の間に介在するキャップ層52をさらに含む。キャップ層52は、トップバリア層13よりも酸化し難い性質を有している。キャップ層52は、より具体的には、Alを含まないIII族窒化物半導体からなる。キャップ層52は、さらに具体的には、GaNからなる。
【0104】
キャップ層52は、電子走行層12の表層部において電子供給層8と対向する領域に、二次元電子ガス領域14が形成される厚さを有している。キャップ層52は、ゲートコンタクト孔26の底部から露出している。ゲート絶縁層31は、キャップ層52に接している。
【0105】
キャップ層52は、トップバリア層13の形成工程後、電子供給層8の形成工程に先立って、トップバリア層13の上にGaNをエピタキシャル成長することによって形成される。
【0106】
以上、半導体装置51によれば、トップバリア層13よりも酸化し難い性質を有するキャップ層52が、ゲートコンタクト孔26から露出し、ゲート絶縁層31と接している。これにより、トップバリア層13およびキャップ層52によって電子走行層12の直接的な酸化を抑制しながら、ゲートコンタクト孔26から露出し、ゲート絶縁層31に接する領域の酸化を抑制できる。その結果、チャネル抵抗の増加を抑制できるから、チャネル抵抗の安定性を高めることができる。
【0107】
図6は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置61を示す断面図である。以下では、半導体装置1において述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0108】
半導体装置61は、トップバリア層13およびゲート絶縁層31の間に介在するバリア絶縁層62をさらに含む。バリア絶縁層62は、酸化物絶縁材料以外の絶縁材料からなり、トップバリア層13の酸化を抑制する。たとえば、ゲート絶縁層31が酸化物絶縁材料からなる場合、バリア絶縁層62は、ゲート絶縁層31によるトップバリア層13の酸化を抑制する。
【0109】
バリア絶縁層62は、より具体的には、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(0<γ≦1)を含む。バリア絶縁層62は、この形態では、アモルファス状態のAlNからなる。バリア絶縁層62は、電子供給層8の開口15においてトップバリア層13と接している。
【0110】
これにより、結晶状態のAlNからなる電子供給層8、および、アモルファス状態のAlNからなるバリア絶縁層62が同一平面(トップバリア層13の表面)上に位置している。バリア絶縁層62の厚さは、1nm以上5nm以下(たとえば1.5nm程度)であってもよい。
【0111】
バリア絶縁層62は、圧電性を伴わない。電子走行層12の表層部においてバリア絶縁層62と対向する領域では、伝導帯エネルギ準位ECがフェルミエネルギ準位EFよりも大きい(EC>EF)という状態が保持されている。したがって、定常状態において、電子走行層12の表層部においてゲート電極層32の直下の領域に、二次元電子ガス領域14は形成されない。
【0112】
バリア絶縁層62およびゲート絶縁層31の間の境界領域には、バリア絶縁層62の絶縁材料およびゲート絶縁層31の絶縁材料が混晶化した混晶化層(図示せず)が形成されていてもよい。この混晶化層は、酸化物絶縁体を含んでいてもよい。
【0113】
バリア絶縁層62は、この形態では、ゲート絶縁層31に被覆された状態を保ちながら、ゲートコンタクト孔26の内壁を介して耐圧保持絶縁層21の上に膜状に引き出されている。バリア絶縁層62は、耐圧保持絶縁層21の表面を被覆している。バリア絶縁層62は、この形態では、耐圧保持絶縁層21の表面のほぼ全面を被覆している。
【0114】
ドレインコンタクト孔33およびソースコンタクト孔34は、この形態では、電子供給層8を露出させるように、ゲート絶縁層31、バリア絶縁層62および耐圧保持絶縁層21を貫通している。
【0115】
バリア絶縁層62の形成工程は、ゲート絶縁層31の形成工程に先立って実施される。バリア絶縁層62の形成工程では、トップバリア層13において電子供給層8の開口15から露出する部分の上にバリア絶縁層62が形成される。
【0116】
バリア絶縁層62は、ゲートコンタクト孔26の内壁を介して耐圧保持絶縁層21の上に膜状に引き出されるように形成される。バリア絶縁層62は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成されてもよい。処理温度は、300℃以上600℃以下であってもよい。
【0117】
ゲート絶縁層31の形成工程の後、バリア絶縁層62およびゲート絶縁層31に対して、アニール処理が実施されてもよい。アニール処理は、バリア絶縁層62およびゲート絶縁層31が結晶化しなければ、500℃以上900℃以下の温度で実施されてもよい。
【0118】
以上、半導体装置61によれば、トップバリア層13およびゲート絶縁層31の間に、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(0<γ≦1)を含むバリア絶縁層62が介在している。これにより、トップバリア層13の酸化を抑制できる。
【0119】
また、バリア絶縁層62によれば、トップバリア層13およびゲート絶縁層31の間の領域におけるGa-O結合の生成を抑制できる。Ga-O結合は、電荷トラップとして機能することで知られている。Ga-O結合の生成を抑制することにより、電荷トラップの経時的な蓄積を抑制できる。これにより、ゲート閾値電圧Vthの不所望な経時的な変動(増加)を抑制できる。
【0120】
バリア絶縁層62は、半導体装置51に適用されてもよい。また、キャップ層52は、半導体装置61に適用されてもよい。つまり、半導体装置51および半導体装置61は、半導体装置1の構造に加えて、キャップ層52およびバリア絶縁層62の双方を備えていてもよい。
【0121】
図7は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置101を示す断面図である。図8は、図7に示す領域VIIの拡大図である。
【0122】
半導体装置101は、III族窒化物半導体を含むHEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)を備えた基本形態を有している。
【0123】
図7を参照して、半導体装置101は、基板102を含む。基板102は、Si基板、SiC基板、サファイア基板、GaN基板等であってもよい。基板は、この形態では、Si基板からなる。基板102は、一方側の第1主面103および他方側の第2主面104を含む。
【0124】
基板102の第1主面103の上には、バッファ層105、電子走行層106および電子供給層107が、この順に形成されている。バッファ層105は、AlNを含んでいてもよい。電子走行層106は、Gaを含むIII族窒化物半導体からなる。電子走行層106は、より具体的には、AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含む。電子走行層106は、この形態では、GaNからなる。電子走行層106の厚さは、0.1μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0125】
電子供給層107は、結晶状態のAlGa(1-X)N(0<X≦1)を含む。Al組成比Xは、この形態では、1である。つまり、電子供給層107は、結晶状態のAlNからなる。電子供給層107の厚さは、1nm以上5nm以下(たとえば2nm程度)であってもよい。
【0126】
電子供給層107には、電子走行層106を露出させる開口108が形成されている。電子走行層106は、開口108から露出する露出部、および、電子供給層107によって被覆された被覆部を有している。電子走行層106の露出部および被覆部は、一体的に連なる平坦面を形成している。電子走行層106の露出部は、電子走行層106の被覆部に対して基板102に向けて一段窪むように形成されていない。
【0127】
電子走行層106および電子供給層107の境界領域において電子走行層106の表層部には、2DEG(Two Dimensional Electron Gas:二次元電子ガス)が形成されている。2DEGは、ピエゾ分極および電子供給層107の自発分極によって形成される。ピエゾ分極は、電子走行層106および電子供給層107の間の格子不整合に起因して形成される。
【0128】
一方、電子供給層107において開口108が形成された部分では、電子走行層106は電子供給層107に接していないので、2DEGは形成されない。したがって、半導体装置101は、ノーマリオフ構造を有している。
【0129】
図7および図8を参照して、電子供給層107の上には、耐圧保持絶縁層110(絶縁
層)が形成されている。耐圧保持絶縁層110は、この形態では、電子供給層107の上からこの順に積層された、平坦化層111、パッシベーション層112およびスペーサ層113を含む積層構造を有している。
【0130】
平坦化層111は、電子供給層107を被覆している。平坦化層111は、電子供給層107の上において、平坦性を向上させるために形成されている。平坦化層111は、GaNを含んでいてもよい。平坦化層111の厚さは、1nm以上5nm以下(たとえば2nm程度)であってもよい。
【0131】
パッシベーション層112は、平坦化層111を被覆している。パッシベーション層112は、SiNを含んでいてもよい。パッシベーション層112は、電荷のトラップを防ぎ、耐圧保持絶縁層110の絶縁特性を維持する。パッシベーション層112の厚さは、1nm以上40nm以下(たとえば25nm程度)であってもよい。
【0132】
スペーサ層113は、パッシベーション層112を被覆している。スペーサ層113の厚さは、平坦化層111の厚さおよびパッシベーション層112の厚さよりも大きい。スペーサ層113は、後述するゲート電極層131を電子供給層107からの離間させるために形成されている。スペーサ層113は、SiOを含んでいてもよい。スペーサ層113の厚さは、10nm以上100nm以下(たとえば30nm程度)であってもよい。
【0133】
耐圧保持絶縁層110には、電子供給層107の開口108に連通する貫通孔114が形成されている。貫通孔114は、開口108との間で、一つのコンタクト孔115を形成している。
【0134】
コンタクト孔115は、断面視において、開口面積が底面積よりも大きいテーパ形状に形成されている。コンタクト孔115の開口エッジ部は、コンタクト孔115内に向かう湾曲面を有している。
【0135】
図7を参照して、電子供給層107の開口108において電子走行層106の上には、バリア絶縁層121が形成されている。バリア絶縁層121は、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含む。Al組成比Yは、この形態では、1である。つまり、バリア絶縁層121は、アモルファス状態のAlNからなる。
【0136】
バリア絶縁層121の厚さは、電子供給層107の厚さ以下であってもよいし、電子供給層107の厚さ以上であってもよい。バリア絶縁層121の厚さは、1nm以上5nm以下(たとえば1.5nm程度)であってもよい。
【0137】
バリア絶縁層121は、圧電性を伴わない。したがって、電子走行層106およびバリア絶縁層121の境界領域において、電子走行層106の表層部には、2DEGは形成されない。バリア絶縁層121は、電子供給層107に含まれるガリウム原子が酸素原子と結合するのを抑制する。
【0138】
バリア絶縁層121は、電子供給層107の開口108において電子供給層107と接している。これにより、結晶状態のAlNからなる電子供給層107、および、アモルファス状態のAlNからなるバリア絶縁層121が同一平面上に位置している。
【0139】
バリア絶縁層121は、さらに、コンタクト孔115の内壁を介して耐圧保持絶縁層110の上に膜状に引き出されている。これにより、バリア絶縁層121は、耐圧保持絶縁層110の表面を被覆している。バリア絶縁層121は、この形態では、耐圧保持絶縁層110の表面のほぼ全面を被覆している。
【0140】
電子供給層107の開口108においてバリア絶縁層121の上には、ゲート絶縁層122が形成されている。ゲート絶縁層122は、酸化物絶縁材料を含む。ゲート絶縁層122は、アモルファス状態の酸化物絶縁材料を含むことが好ましい。ゲート絶縁層122の厚さは、5nm以上40nm以下(たとえば15nm程度)であってもよい。
【0141】
酸化物絶縁材料は、SiO、SiON、Al、HfSiOまたはHfOのうちの少なくとも1種を含む。ゲート絶縁層122は、SiO層、SiON層、Al層、HfSiO層またはHfO層からなる単層構造を有していてもよい。ゲート絶縁層122は、SiO層、SiON層、Al層、HfSiO層またはHfO層のうちの少なくとも1層を含む積層構造を有していてもよい。
【0142】
ゲート絶縁層122は、酸化物絶縁材料に加えて、SiNを含んでいてもよい。この場合、ゲート絶縁層122は、SiO層、SiON層、Al層、HfSiO層またはHfO層のうちの少なくとも1種の酸化物絶縁材料層と、SiN層と、を含む積層構造を有していてもよい。ゲート絶縁層122は、この形態では、アモルファス状態のSiO層からなる。
【0143】
ゲート絶縁層122は、バリア絶縁層121の上において、コンタクト孔115の内壁を介して耐圧保持絶縁層110の上に膜状に引き出されている。これにより、ゲート絶縁層122は、耐圧保持絶縁層110を挟んで電子供給層107に対向している。また、ゲート絶縁層122は、バリア絶縁層121を介して耐圧保持絶縁層110の表面を被覆している。
【0144】
ゲート絶縁層122は、この形態では、耐圧保持絶縁層110の表面のほぼ全面を被覆している。バリア絶縁層121およびゲート絶縁層122の間の境界領域には、バリア絶縁層121の絶縁材料およびゲート絶縁層122の絶縁材料が混晶化した混晶化層(図示せず)が形成されていてもよい。この混晶化層は、酸化物絶縁体を含んでいてもよい。
【0145】
ゲート絶縁層122の上には、層間絶縁層123が形成されている。層間絶縁層123は、ゲート絶縁層122の表面のほぼ全面を被覆していてもよい。層間絶縁層123は、単一の絶縁材料層を含む単層構造を有していてもよい。層間絶縁層123は、複数の絶縁材料層が積層された積層構造を有していてもよい。層間絶縁層123は、SiO層および/またはSiN層を含んでいてもよい。
【0146】
層間絶縁層123には、ゲート開口124、ドレイン開口125およびソース開口126が間隔を空けて形成されている。ゲート開口124は、層間絶縁層123において電子供給層107の開口108に対向する領域に形成されている。ゲート開口124は、層間絶縁層123を貫通し、ゲート絶縁層122を露出させている。
【0147】
ドレイン開口125およびソース開口126は、層間絶縁層123において電子供給層107に対向する領域にそれぞれ形成されている。ドレイン開口125およびソース開口126は、層間絶縁層123、ゲート絶縁層122および耐圧保持絶縁層110を貫通し、電子供給層107をそれぞれ露出させている。
【0148】
ゲート開口124には、ゲート電極層131が埋め込まれている。ゲート電極層131は、ゲート下地層132およびゲート埋め込み層133を含む積層構造を有している。ゲート下地層132は、TiN層を含んでいてもよい。ゲート埋め込み層133は、W(タングステン)層を含んでいてもよい。
【0149】
ゲート下地層132は、ゲート開口124内に凹状の空間が区画されるように、ゲート開口124の内壁に沿って膜状に形成されている。ゲート埋め込み層133は、ゲート下地層132によって区画された凹状の空間を埋めている。
【0150】
ゲート電極層131は、ゲート開口124から露出する露出部を有している。ゲート電極層131の露出部は、バリア電極層134によって被覆されている。バリア電極層134は、ゲート電極層131の上からこの順に積層されたTi層、TiN層およびAlCu層を含む積層構造を有していてもよい。
【0151】
ドレイン開口125には、ドレイン電極層141が埋め込まれている。ドレイン電極層141は、ドレイン下地層142およびドレイン埋め込み層143を含む積層構造を有している。ドレイン下地層142は、Ti層を含んでいてもよい。ドレイン埋め込み層143は、Al層を含んでいてもよい。
【0152】
ドレイン下地層142は、ドレイン開口125内に凹状の空間が区画されるように、ドレイン開口125の内壁に沿って膜状に形成されている。ドレイン埋め込み層143は、ドレイン下地層142によって区画された凹状の空間を埋めている。
【0153】
ソース開口126には、ソース電極層151が埋め込まれている。ソース電極層151は、ソース下地層152およびソース埋め込み層153を含む積層構造を有している。ソース下地層152は、Ti層を含んでいてもよい。ソース埋め込み層153は、Al層を含んでいてもよい。
【0154】
ソース下地層152は、ソース開口126内に凹状の空間が区画されるように、ソース開口126の内壁に沿って膜状に形成されている。ソース埋め込み層153は、ソース下地層152によって区画された凹状の空間を埋めている。
【0155】
ゲート電極層131およびドレイン電極層141の間の距離は、ゲート電極層131およびソース電極層151の間の距離よりも大きくてもよい。ゲート電極層131およびドレイン電極層141の間の距離は、2μm以上5μm以下(たとえば3.5μm程度)であってもよい。ゲート電極層131およびソース電極層151の間の距離は、0.5μm以上2.0μm以下(たとえば1.0μm程度)であってもよい。
【0156】
ゲート絶縁層122の表面においてゲート電極層131の周囲の領域には、フィールドプレート160が形成されていてもよい。フィールドプレート160は、ゲート電極層131に対する電界集中を緩和する。フィールドプレート160は、この形態では、ゲート絶縁層122を挟んでバリア絶縁層121に対向している。
【0157】
フィールドプレート160は、層間絶縁層123によって被覆されている。フィールドプレート160は、ゲート電極層131から少なくとも0.1μm以上間隔を空けて形成されている。フィールドプレート160は、TiN層を含んでいてもよい。
【0158】
フィールドプレート160は、この形態では、第1フィールドプレート161および第2フィールドプレート162を含む。第1フィールドプレート161は、ゲート絶縁層122の表面においてゲート電極層131およびドレイン電極層141の間の領域に形成されている。第2フィールドプレート162は、ゲート絶縁層122の表面においてゲート電極層131およびソース電極層151の間の領域に形成されている。
【0159】
第1フィールドプレート161および第2フィールドプレート162には、この形態では、ソース電圧が印加されている。つまり、第1フィールドプレート161および第2フィールドプレート162は、この形態では、ソース電極層151と同電位を成している。
【0160】
第1フィールドプレート161および第2フィールドプレート162のいずれか一方または双方は、ゲート電極層131、ドレイン電極層141およびソース電極層151から電気的に解放されていてもよい。つまり、第1フィールドプレート161および第2フィールドプレート162のいずれか一方または双方は、電気的に浮遊状態であってもよい。
【0161】
第1フィールドプレート161の幅は、第2フィールドプレート162の幅よりも大きくてもよい。第1フィールドプレート161の幅は、0.5μm以上であってもよい。第1フィールドプレート161の幅は、0.5μm未満であってもよい。
【0162】
フィールドプレート160およびゲート絶縁層122の間の領域に別の絶縁層を介在させることにより、フィールドプレート160およびバリア絶縁層121の間の距離を調節してもよい。この場合、フィールドプレート160およびバリア絶縁層121の間の距離は、30μm以上100μm以下(たとえば50μm程度)であってもよい。
【0163】
図9は、図7に示す半導体装置101のゲート閾値電圧Vthの経時特性を示すグラフである。ゲート閾値電圧Vthは、ドレイン電流IDが流れ始めるゲート・ソース間電圧VGSである。
【0164】
図9に示すグラフは、HTGB(High Temperature Gate Bias)シミュレーション試験によって求められている。この試験では、所定(たとえば+5V程度)のゲート・ソース間電圧VGSを、150℃の温度下で100時間印加し続けた場合のゲート閾値電圧Vthの変化が調べられている。
【0165】
図9には、第1特性S1、第2特性S2および第3特性S3(実線参照)が示されている。第1特性S1、第2特性S2および第3特性S3は、半導体装置101のゲート閾値電圧Vthの経時特性をそれぞれ示す。図9には、第4特性S4、第5特性S5および第6特性S6(破線参照)が示されている。第4特性S4、第5特性S5および第6特性S6は、参考例に係る半導体装置のゲート閾値電圧Vthの経時特性をそれぞれ示す。
【0166】
参考例に係る半導体装置は、バリア絶縁層121を有していない点を除いて、半導体装置101とほぼ同様の構造を有している。参考例に係る半導体装置についての具体的な説明は省略する。
【0167】
第1特性S1、第2特性S2および第3特性S3は、バリア絶縁層121の厚さが3nm程度であり、ゲート絶縁層122の厚さが15nm程度である場合のゲート閾値電圧Vthの経時特性を示している。第4特性S4、第5特性S5および第6特性S6は、ゲート絶縁層122の厚さが15nm程度である場合のゲート閾値電圧Vthの経時特性を示している。
【0168】
図9を参照して、10時間経過前の数値は安定していない。したがって、以下では、10時間経過後から100時間に至るまでの範囲について述べる。
【0169】
第1特性S1を参照して、ゲート・ソース間電圧VGSを10時間印加し続けた時のゲート閾値電圧Vthは0.2Vであり、100時間印加し続けた時のゲート閾値電圧Vthは、0.35Vであった。ゲート閾値電圧Vthの変動率は175%であった。
【0170】
第2特性S2を参照して、ゲート・ソース間電圧VGSを10時間印加し続けた時のゲート閾値電圧Vthは、0.3Vであり、100時間印加し続けた時のゲート閾値電圧Vthは、0.45Vであった。ゲート閾値電圧Vthの変動率は150%であった。
【0171】
第3特性S3を参照して、ゲート・ソース間電圧VGSを10時間印加し続けた時のゲート閾値電圧Vthは、0.3Vであり、100時間印加し続けた時のゲート閾値電圧Vthは、0.5Vであった。ゲート閾値電圧Vthの変動率は167%であった。
【0172】
以上の結果から、半導体装置101によれば、所定のゲート・ソース間電圧VGSを100時間印加し続けた場合、ゲート閾値電圧Vthの変動率を180%以下に抑制できることが分かった。
【0173】
これに対して、第4特性S4、第5特性S5および第6特性S6を参照して、参考例に係る半導体装置によれば、所定のゲート・ソース間電圧VGSを100時間印加し続けた場合、ゲート閾値電圧Vthの変動率は200%以上であった。
【0174】
以上、半導体装置101によれば、Gaを含む電子走行層106および酸化物絶縁材料を含むゲート絶縁層122との間に、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含むバリア絶縁層121が形成されている。
【0175】
これにより、電子走行層106およびゲート絶縁層122が互いに接することを抑制できる。その結果、電子走行層106およびゲート絶縁層122の間の領域において、ガリウム原子および酸素原子が結合して成るGa-O結合の生成を抑制できる。よって、ゲート閾値電圧Vthの経時的な増加を抑制できる(図9参照)。
【0176】
また、バリア絶縁層121は、アモルファス状態であるため、結晶欠陥のリスクを低減できる。したがって、バリア絶縁層121の結晶欠陥に起因するゲートリーク電流を抑制できる。
【0177】
図10A図10Mは、図7に示す半導体装置101の製造方法の一例を示す断面図である。
【0178】
図10Aを参照して、まず、基板102が用意される。基板102は、この形態では、Si基板である。次に、バッファ層105、電子走行層106および電子供給層107が、基板102の第1主面103の上にこの順に形成される。バッファ層105、電子走行層106および電子供給層107は、エピタキシャル成長法によってそれぞれ形成される。
【0179】
バッファ層105は、より具体的には、基板102の上からAlNをエピタキシャル成長することによって形成される。電子走行層106は、バッファ層105の上からAlInGa(1-a-b)N(この形態では、GaN)をエピタキシャル成長することによって形成される。電子供給層107は、電子走行層106の上からAlGa(1-X)N(この形態では、AlN)をエピタキシャル成長することによって形成される。
【0180】
次に、図10Bを参照して、耐圧保持絶縁層110が、電子供給層107の上に形成される。耐圧保持絶縁層110の形成工程は、電子供給層107の上から、平坦化層111、パッシベーション層112およびスペーサ層113をこの順に形成する工程を含む(図8も併せて参照)。
【0181】
平坦化層111は、電子走行層106の上からGaNをエピタキシャル成長することによって形成される。パッシベーション層112は、CVD法によって形成されてもよい。パッシベーション層112は、SiNを含んでいてもよい。スペーサ層113は、CVD法によって形成されてもよい。スペーサ層113は、SiOを含んでいてもよい。
【0182】
次に、図10Cを参照して、所定パターンを有するマスク171が、耐圧保持絶縁層110の上に形成される。マスク171は、感光性樹脂からなるレジストマスクであってもよい。マスク171は、貫通孔114を形成すべき領域を露出させる開口172を有している。
【0183】
次に、耐圧保持絶縁層110の不要な部分が除去される。耐圧保持絶縁層110の不要な部分は、マスク171を介するエッチング法によって除去されてもよい。これにより、耐圧保持絶縁層110に貫通孔114が形成される。貫通孔114が形成された後、マスク171は除去される。
【0184】
次に、図10Dを参照して、酸化処理法によって、電子供給層107において耐圧保持絶縁層110の貫通孔114から露出する部分が酸化される。これにより、耐圧保持絶縁層110の貫通孔114内に、電子供給層107の酸化物173が形成される。酸化物173は、AlONまたはAlを含んでいてもよい。
【0185】
酸化処理法は、プラズマ酸化処理法であってもよい。プラズマ酸化処理法は、酸素ガス雰囲気中で、電子供給層107において貫通孔114から露出する部分が全て酸化するまで行われる。処理温度は、100℃以上900℃以下であってもよい。処理時間は、1時間以上15時間以下であってもよい。酸素ガス中の酸素濃度は、30%程度であってもよい。
【0186】
プラズマ酸化法によれば、酸化物173が形成されると、雰囲気中の酸素が電子走行層106に進入しないか、または、殆ど進入しない。したがって、電子走行層106の表面部は、酸化しないか、または、殆ど酸化しない。
【0187】
次に、図10Eを参照して、酸化物173が除去される。酸化物173は、エッチング法(たとえばウエットエッチング法)によって除去されてもよい。エッチング液は、硫酸および過酸化水素水を含むSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)であってもよい。
【0188】
酸化物173は、電子供給層107とは異なるエッチング選択比を有している。したがって、酸化物173の除去時において、電子供給層107は殆ど除去されない。これにより、貫通孔114に連通する開口108が、電子供給層107に形成される。開口108は、貫通孔114との間で一つのコンタクト孔115を形成する。
【0189】
酸化物173は、Ga(ガリウム)を含まない。酸化物173は、電子走行層106とは異なるエッチング選択比を有している。したがって、酸化物173の除去時において、電子走行層106は殆ど除去されない。これにより、電子走行層106において開口108の底壁を形成する部分、および、電子走行層106において電子供給層107に接する部分は、互いに平坦な平坦面を形成する。
【0190】
次に、図10Fを参照して、バリア絶縁層121が、電子走行層106において開口108から露出する部分の上に形成される。バリア絶縁層121は、この形態では、コンタクト孔115の内壁を介して耐圧保持絶縁層110の上に膜状に引き出されるように形成される。バリア絶縁層121は、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(この形態では、AlN)を含む。バリア絶縁層121は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成されてもよい。処理温度は、300℃以上600℃以下であってもよい。
【0191】
次に、ゲート絶縁層122が、バリア絶縁層121の上に形成される。ゲート絶縁層122は、この形態では、コンタクト孔115の内壁を介して耐圧保持絶縁層110の上に膜状に引き出されるように形成される。ゲート絶縁層122は、この形態では、アモルファス状態のSiOを含む。ゲート絶縁層122は、ALD法によって形成されてもよい。
【0192】
次に、バリア絶縁層121およびゲート絶縁層122に対して、アニール処理が実施される。アニール処理は、バリア絶縁層121およびゲート絶縁層122が結晶化しなければ、500℃以上900℃以下の温度で実施されてもよい。
【0193】
次に、図10Gを参照して、ゲート絶縁層122の上に、導電体層174が形成される。導電体層174は、この形態では、TiNを含む。導電体層174は、CVD法によって形成されてもよい。
【0194】
次に、図10Hを参照して、所定パターンを有するマスク175が、導電体層174の上に形成される。マスク175は、感光性樹脂からなるレジストマスクであってもよい。マスク175は、フィールドプレート160を形成すべき領域を被覆している。
【0195】
次に、導電体層174の不要な部分が除去される。導電体層174の不要な部分は、マスク175を介するエッチング法によって除去されてもよい。これにより、フィールドプレート160が形成される。フィールドプレート160は、ゲート絶縁層122の上に別の絶縁層を形成した後、当該別の絶縁層の上に形成されてもよい。
【0196】
次に、図10Iを参照して、層間絶縁層123が、ゲート絶縁層122の上に形成される。層間絶縁層123は、フィールドプレート160を被覆する。層間絶縁層123は、この形態では、SiOを含む。層間絶縁層123は、CVD法によって形成されてもよい。
【0197】
次に、図10Jを参照して、所定パターンを有するマスク176が、層間絶縁層123の上に形成される。マスク176は、感光性樹脂からなるレジストマスクであってもよい。マスク176は、層間絶縁層123においてゲート開口124を形成すべき領域を露出させる開口177を有している。
【0198】
次に、層間絶縁層123の不要な部分が除去される。層間絶縁層123の不要な部分は、マスク176を介するエッチング法によって除去されてもよい。これにより、層間絶縁層123にゲート開口124が形成される。マスク176はその後除去される。
【0199】
次に、図10Kを参照して、ゲート電極層131およびバリア電極層134が形成される。ゲート電極層131の形成工程は、ゲート下地層132およびゲート埋め込み層133を形成する工程を含む。
【0200】
ゲート下地層132は、ゲート開口124内に凹状の空間が区画されるように、ゲート開口124の内壁に沿って膜状に形成される。ゲート下地層132は、TiN層を含む。ゲート下地層132は、スパッタ法によって形成されてもよい。
【0201】
ゲート埋め込み層133は、ゲート開口124内においてゲート下地層132によって区画された凹状の空間を埋めるように形成される。ゲート埋め込み層133は、W(タングステン)層を含む。ゲート埋め込み層133は、CVD法によって形成されてもよい。
【0202】
バリア電極層134は、ゲート電極層131においてゲート開口124から露出する露出部を被覆するように形成される。バリア電極層134の形成工程は、この形態では、Ti層、TiN層およびAlCu層を、ゲート電極層131の上からこの順に形成する工程を含む。Ti層、TiN層およびAlCu層は、それぞれスパッタ法によって形成されてもよい。
【0203】
次に、図10Lを参照して、所定パターンを有するマスク178が、層間絶縁層123の上に形成される。マスク178は、感光性樹脂からなるレジストマスクであってもよい。マスク178は、層間絶縁層123においてドレイン開口125およびソース開口126を形成すべき領域を露出させる開口179を有している。
【0204】
次に、層間絶縁層123の不要な部分が除去される。層間絶縁層123の不要な部分は、マスク178を介するエッチング法によって除去されてもよい。これにより、層間絶縁層123にドレイン開口125およびソース開口126が形成される。マスク178はその後除去される。
【0205】
次に、図10Mを参照して、ドレイン電極層141およびソース電極層151が形成される。ドレイン電極層141およびソース電極層151の形成工程は、ドレイン下地層142およびソース下地層152、ならびに、ドレイン埋め込み層143およびソース埋め込み層153を形成する工程をそれぞれ含む。
【0206】
ドレイン下地層142およびソース下地層152は、ドレイン開口125およびソース開口126に凹状の空間が区画されるように、ドレイン開口125およびソース開口126の内壁に沿って膜状にそれぞれ形成される。ドレイン下地層142およびソース下地層152は、Ti層をそれぞれ含む。ドレイン下地層142およびソース下地層152は、スパッタ法によって同時に形成されてもよい。
【0207】
ドレイン埋め込み層143およびソース埋め込み層153は、ドレイン開口125およびソース開口126内においてドレイン下地層142およびソース下地層152によって区画された凹状の空間を埋めるようにそれぞれ形成される。
【0208】
ドレイン埋め込み層143およびソース埋め込み層153は、Al層をそれぞれ含む。ドレイン埋め込み層143およびソース埋め込み層153は、CVD法によって同時に形成されてもよい。以上を含む工程を経て、半導体装置101が製造される。
【0209】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施できる。
【0210】
たとえば、第3実施形態では、バリア絶縁層62がアモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(AlN)を含む例について説明した。
【0211】
しかし、バリア絶縁層62は、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(AlN)に代えてまたはこれに加えて、アモルファス状態のSiNを含んでいてもよい。つまり、バリア絶縁層62は、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(AlN)に代えて、アモルファス状態のSiN層からなる単層構造を有していてもよい。
【0212】
また、バリア絶縁層62は、アモルファス状態のSiN層、および、アモルファス状態のSiN層の上に形成されたアモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(AlN)層を含む積層構造を有していてもよい。
【0213】
また、バリア絶縁層62は、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(AlN)層、および、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(AlN)層の上に形成されたアモルファス状態のSiN層を含む積層構造を有していてもよい。
【0214】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0215】
以下、この明細書および図面(図7図9図10A図10M)から抽出される特徴の例を示す。
【0216】
特許文献(JP2011-192834)には、HEMT(High Electron Mobility Transistor)を備えた半導体装置が開示されている。この半導体装置は、GaN層(電子走行層)を含む。GaN層の上には、AlGaN層(電子供給層)が形成されている。
【0217】
AlGaN層は、GaN層を露出させる開口を有している。AlGaN層の開口内には、SiOを含むゲート酸化層が形成されている。ゲート酸化層の上には、ゲート電極層が形成されている。
【0218】
HEMTを備えた半導体装置では、ゲート閾値電圧が経時的に増加するという問題がある。本願発明者は、電子走行層の上にゲート酸化層が形成された構造が、この問題の原因の一端を形成している点を突き止めた。
【0219】
すなわち、電子走行層の上にゲート酸化層が形成された構造では、電子走行層およびゲート酸化層の間の境界領域において、ガリウム原子および酸素原子が結合して成るGa-O結合が生成される。このGa-O結合は、電荷トラップとして機能する。
【0220】
そのため、電子走行層を流れる電荷が、Ga-O結合によって捕獲され、蓄積される。その結果、電子走行層およびゲート酸化層の間の境界領域においてトラップ準位が形成され、ゲート閾値電圧の経時的な増加が引き起こされる。
【0221】
そこで、以下では、ゲート閾値電圧の経時的な増加を抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【0222】
[A1]Gaを含む窒化物半導体からなる電子走行層と、結晶状態のAlGa(1-X)N(0<X≦1)を含み、前記電子走行層の上に形成され、前記電子走行層を露出させる開口を有する電子供給層と、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含み、前記電子供給層の前記開口内において前記電子走行層の上に形成されたバリア絶縁層と、酸化物絶縁材料を含み、前記バリア絶縁層の上に形成されたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上に形成されたゲート電極層と、を含む、半導体装置。
【0223】
この半導体装置によれば、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含むバリア絶縁層が、電子走行層およびゲート絶縁層の間に介在されている。これにより、電子走行層およびゲート絶縁層の間の領域におけるGa-O結合の生成を、バリア絶縁層によって抑制できる。その結果、ゲート閾値電圧の経時的な増加を抑制できる。
【0224】
[A2]前記ゲート絶縁層の厚さは、前記バリア絶縁層の厚さよりも大きい、A1に記載の半導体装置。
【0225】
[A3]前記バリア絶縁層および前記ゲート絶縁層の間の境界領域に形成され、前記バリア絶縁層の絶縁材料および前記ゲート絶縁層の絶縁材料が混晶化した混晶化層をさらに含む、A1またはA2に記載の半導体装置。
【0226】
[A4]前記電子供給層を被覆し、前記電子供給層の前記開口に連通し、前記電子供給層の前記開口との間で一つのコンタクト孔を形成する貫通孔が形成された絶縁層をさらに含み、前記ゲート電極層は、前記絶縁層の上から前記コンタクト孔に入り込んでいる、A1~A3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0227】
[A5]前記絶縁層は、前記電子供給層の上に形成されたパッシベーション層と、前記パッシベーション層の上に形成され、前記電子供給層から前記ゲート電極層を離間させるスペーサ層と、を含む、A4に記載の半導体装置。
【0228】
[A6]前記スペーサ層の厚さは、前記パッシベーション層の厚さよりも大きい、A5に記載の半導体装置。
【0229】
[A7]前記パッシベーション層は、SiNを含み、前記スペーサ層は、SiOを含む、A5またはA6に記載の半導体装置。
【0230】
[A8]Gaを含む窒化物半導体からなる電子走行層を用意する工程と、結晶状態のAlGa(1-X)N(0<X≦1)を含み、前記電子走行層を露出させる開口を有する電子供給層を前記電子走行層の上に形成する工程と、前記電子供給層の前記開口内において、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含むバリア絶縁層を前記電子走行層の上に形成する工程と、酸化物絶縁材料を含むゲート絶縁層を前記バリア絶縁層の上に形成する工程と、前記ゲート絶縁層の上にゲート電極層を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【0231】
この製造方法によれば、アモルファス状態のAlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含むバリア絶縁層が、電子走行層およびゲート絶縁層の間に形成される。これにより、電子走行層およびゲート絶縁層の間の領域におけるGa-O結合の生成を、バリア絶縁層によって抑制できる。その結果、ゲート閾値電圧の経時的な増加を抑制できる半導体装置を製造できる。
【0232】
[A9]前記バリア絶縁層の厚さよりも大きい厚さを有する前記ゲート絶縁層が形成される、A8に記載の半導体装置の製造方法。
【0233】
[B1]AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層と、AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含み、前記バックバリア層の上に形成された電子走行層と、AlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含み、前記電子走行層の上に形成されたトップバリア層と、AlGa(1-Z)N(0<Z≦1)を含み、前記トップバリア層の上に形成され、前記トップバリア層を露出させる開口を有する電子供給層と、前記電子走行層の表層部において前記トップバリア層を挟んで前記電子供給層と対向する領域に形成された二次元電子ガス領域と、前記電子供給層の前記開口内に形成されたゲート絶縁層を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極層と、を含む、半導体装置。
【0234】
[B2]前記電子供給層は、前記電子走行層の表層部において前記トップバリア層を挟んで前記電子供給層と対向する領域の伝導帯エネルギ準位がフェルミエネルギ準位以上となり、前記電子走行層の表層部において前記トップバリア層を挟んで前記電子供給層と対向しない領域の伝導帯エネルギ準位がフェルミエネルギ準位未満となる格子定数を有している、B1に記載の半導体装置。
【0235】
[B3]前記電子供給層は、前記トップバリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有している、B1またはB2に記載の半導体装置。
【0236】
[B4]前記電子走行層は、前記バックバリア層の格子定数よりも大きい格子定数を有している、B1~B3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0237】
[B5]前記トップバリア層は、前記電子走行層の格子定数よりも小さい格子定数を有している、B1~B4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0238】
[B6]前記電子走行層は、GaNからなる、B1~B5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0239】
[B7]前記電子供給層は、AlNからなる、B1~B6のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0240】
[B8]前記トップバリア層および前記電子供給層の間の領域に介在し、Alを含まないIII族窒化物半導体からなるキャップ層をさらに含む、B1~B7のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0241】
[B9]前記キャップ層は、GaNからなる、B8に記載の半導体装置。
【0242】
[B10]前記トップバリア層および前記ゲート絶縁層の間の領域に介在し、酸化物絶縁材料以外の絶縁材料からなるバリア絶縁層をさらに含む、B1~B9のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0243】
[B11]前記バリア絶縁層は、アモルファス状態のAlγGa(1-γ)N(0<γ≦1)を含む、B10に記載の半導体装置。
【0244】
[B12]前記バリア絶縁層においてγが1である、B10に記載の半導体装置。
【0245】
[B13]前記バリア絶縁層は、アモルファス状態のSiNを含む、B10~B12のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0246】
[B14]AlGa(1-X)N(0<X≦1)を含むバックバリア層の上に、AlInGa(1-a-b)N(0≦a+b≦1)を含む電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層の上に、前記電子走行層との間の界面の伝導帯エネルギ準位が、フェルミエネルギ準位よりも大きくなるように、AlGa(1-Y)N(0<Y≦1)を含むトップバリア層を形成する工程と、前記トップバリア層の上に、前記トップバリア層および前記電子走行層の界面の伝導帯エネルギ準位が、フェルミエネルギ準位よりも小さくなるように、AlGa(1-Z)N(0<Z≦1)を含む電子供給層を形成する工程と、前記電子供給層の一部を酸化して酸化物を形成し、前記酸化物を除去することによって、前記電子供給層に前記トップバリア層を露出させる開口を形成し、前記トップバリア層および前記電子走行層の間の界面において前記開口と対向する領域の伝導帯エネルギ準位を、フェルミエネルギ準位よりも大きくする工程と、前記トップバリア層において前記電子供給層の前記開口から露出する部分の上にゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層の上にゲート電極層を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【0247】
[B15]前記酸化物を形成する工程は、プラズマ酸化法によって前記電子供給層の一部を酸化させる工程を含み、前記酸化物を除去する工程は、ウエットエッチング法によって前記酸化物を除去する工程を含む、B14に記載の半導体装置の製造方法。
【0248】
[B16]前記酸化物は、AlONまたはAlを含む、B14またはB15に記載の半導体装置の製造方法。
【0249】
[B17]前記電子走行層を形成する工程は、GaNからなる前記電子走行層を形成する工程を含む、B14~B16のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【0250】
[B18]前記電子供給層を形成する工程は、AlNからなる前記電子供給層を形成する工程を含む、B14~B17のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【0251】
[B19]前記トップバリア層の形成工程の後、前記電子供給層の形成工程に先立って、前記トップバリア層の上に、Alを含まないIII族窒化物半導体からなるキャップ層を形成する工程をさらに含む、B14~B18のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【0252】
[B20]前記トップバリア層の形成工程の後、前記ゲート絶縁層の形成工程に先立って、前記トップバリア層において前記電子供給層の前記開口から露出する部分の上に、酸化物絶縁材料以外の絶縁材料からなるバリア絶縁層を形成する工程をさらに含み、前記ゲート絶縁層を形成する工程は、前記バリア絶縁層の上に、前記ゲート絶縁層を形成する工程を含む、B14~B19のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0253】
1 半導体装置
8 電子供給層
11 バックバリア層
12 電子走行層
13 トップバリア層
14 二次元電子ガス領域
15 電子供給層の開口
31 ゲート絶縁層
32 ゲート電極層
51 半導体装置
61 半導体装置
EC 伝導帯エネルギ準位
EF フェルミエネルギ準位
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図10K
図10L
図10M