(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】報知装置、電気ヒューズ機器および電気ヒューズ機器を有する装置
(51)【国際特許分類】
H01H 85/30 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
H01H85/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023181795
(22)【出願日】2023-10-23
(62)【分割の表示】P 2021548596の分割
【原出願日】2019-02-19
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591178562
【氏名又は名称】シュルター アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schurter AG
【住所又は居所原語表記】Werkhofstrasse 8, 6005 Luzern, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン バイアー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ヌスバウマー
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ツェンプ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブルフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ビッテルリ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ベーア
(72)【発明者】
【氏名】シリル ディスラー
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0328019(US,A1)
【文献】独国実用新案第20001323(DE,U1)
【文献】登録実用新案第3069664(JP,U)
【文献】登録実用新案第3075125(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズ素子(12;112)の端子(16a,16b)またはヒューズホルダのクリップに印加される電位に電気的に接続されるように適合化された報知装置(24;124;224)であって、該報知装置(24;124;224)が、前記ヒューズ素子(12;112)の少なくとも1つの特性を外部に報知するように適合化されており、
前記報知装置(24;124;224)が、
電気的に制御可能な透過率を有する少なくとも1つの透過層(32;132;232)
と、
前記透過層(32;132;232)を覆う、前記透過層(32;132;232)から離間して配置された透明な硬質トップカバー(30;130;230)と、
前記透過層(32;132;232)の端子(33a;33b)に電気的に接続されており、かつ、前記ヒューズ素子(12;112)の端子(16a,16b)または前記ヒューズホルダのクリップに電気的に接続可能な電気端子が設けられた基板(28)と
を有して
おり、
前記報知装置は、前記透過層(32;132;232)に並列に接続されたサプレッサダイオード(D)を有しており、前記報知装置は、前記透過層(32;132;232)およびサプレッサダイオード(D)に直列に接続された少なくとも1つのコンデンサ(C)をさらに有している
報知装置(24;124;224)。
【請求項2】
前記透過層(32;132;232)と前記ヒューズ素子(12;112)とを並列に接続するように適合化された導線(26a;26b;126a;126b)をさらに有する、請求項1記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項3】
前記導線(26a;26b)が、前記透過層(32)の端子(33a;33b)と、前記ヒューズ素子(12)の前記端子(16a;16b)との間、または前記透過層(32)の端子(33a;33b)と前記ヒューズホルダの前記クリップとの間でそれぞれ電気的な接続を提供するように適合化された導電性のゴム被覆導線(26a;26b)を有している、請求項2記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項4】
前記透過層(32;132;232)が、該透過層(32;132;232)の端子(33a;33b)に印加された電位に関連してその透過率を制御するように適合化されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項5】
前記透過層(32;132;232)が、電界において整列するように適合化された液晶を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項6】
前記透過層(32;132;232)が、ポリマ分散型液晶(PDLC)層を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項7】
外部から見た場合に、前記透過層(32;132;232)の背後に配置された報知層(34;134)をさらに有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項8】
前記報知層(34;134)が、前記ヒューズ素子(12;112)の少なくとも1つの特性を外部に報知するように適合化された情報素子(36;136)を有している、請求項7記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項9】
前記情報素子(36;136)が、前記透過層(32;132;232)に面した前記報知層(34;134)の1つの表面上にラベル付けおよび/または印刷されている、請求項8記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項10】
前記情報素子(36;136)が、色、記号、文字、単語および数字のうちの少なくとも1つを有している、請求項8または9記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項11】
前記ヒューズ素子(12;112)の前記特性が、前記ヒューズ素子(12;112)の導電状態または遮断状態、電圧、電流および温度のうちの少なくとも1つを有している、請求項1から10までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項12】
前記透過層(32;132;232)の前記透過率が、
不透明と透明との間の範囲で制御されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)。
【請求項13】
前記ヒューズ素子(12;112)が遮断状態にある場合に透明となるか、前記ヒューズ素子(12;112)が導電状態である場合に
不透明となるように、前記透過層(32;132;232)の透過率を制御するように適合化されている、請求項12記載の報知
装置(24;124;224)。
【請求項14】
ヒューズ素子(12;112)と、該ヒューズ素子(12;112)を支持するための基部と、請求項1から13までのいずれか1項記載の報知装置(24;124;224)とを有する電気ヒューズ機器(10;100;200)であって、前記報知装置(24;124;224)が、前記ヒューズ素子(12;112)に印加される電位に電気的に接続されている、電気ヒューズ機器(10;100;200)。
【請求項15】
少なくとも1つの電気構成要素と、請求項14に記載の電気ヒューズ機器(10;100;200)とを有する装置であって、前記電気ヒューズ機器(10;100;200)が、過電流に対して前記電気構成要素を保護するように適合化されている、装置。
【請求項16】
電気器具に電力を供給するように適合化された電源入力モジュール(PEM)であって、前記電源入力モジュール(PEM)が、請求項14記載の電気ヒューズ機器(10;100;200)を有している、電源入力モジュール(PEM)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知装置、報知装置を有する電気ヒューズ機器および電気ヒューズ機器を有する装置に関する。
【0002】
発明の背景
少なくとも1つの電気ヒューズ機器を有する電気装置は、公知である。たとえば、電気ヒューズ機器は、各端部において電気端子を備えた円筒形のボディを有するヒューズ素子を有していてよい。ヒューズワイヤは、円筒形のボディの内側に延びていてよいが、ヒューズワイヤの端部は、電気端子に電気的に接続されている。ヒューズ素子は、その端子を介して、電気ヒューズ機器が有している電気的なコネクタにより支持することができる。電気的なコネクタはさらに、ヒューズ素子に、ヒューズワイヤを通って流れる電流を供給するために適合化されている。電気装置の適切な運転状況では、電流は、少なくとも1つの電子構成要素に電流を供給するためにヒューズワイヤを通って流れ、導電状態とも呼ばれる。電気装置、またはむしろ電気装置の複数の電子構成要素のうちの少なくとも1つの電子構成要素、たとえば電力用トランジスタの故障した状態は、ヒューズ素子を通って流れる過電流をもたらしてしまう。この過電流は、ヒューズワイヤを溶断または切断し、ヒューズ素子の遮断状態と呼ばれる。ヒューズワイヤの溶断は、流れる電流を直ちに遮断し、たとえば故障した電子要素の電源を切って、これにより電子装置全体を保護する。故障状態の克服後に、切断されたヒューズ素子を新しいヒューズ素子と交換することができる。
【0003】
先行技術において、特に複数のヒューズ素子を有する電気装置において、たとえば新しいヒューズ素子と交換するために、切断されたヒューズ素子を確認し、またはむしろ位置を突き止めることは、面倒で時間がかかることが判っている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、当該技術分野において知られている問題を克服する、電気ヒューズ機器のための報知装置、電気ヒューズ機器および電気ヒューズ機器を有する装置を提供することである。別の実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0005】
発明の概要
本発明は、ヒューズ素子の端子またはヒューズホルダのクリップに印加される電位に電気的に接続されるように適合化された報知装置であって、報知装置が、ヒューズ素子の少なくとも1つの特性を外部に報知するように適合化されており、報知装置が、電気的に制御可能な透過率を有する少なくとも1つの透過層を有している、報知装置に関する。
【0006】
したがって、電気ヒューズ機器の一部であってよく、かつ少なくとも1つのヒューズ素子を有する報知装置が提供される。報知装置は、電気ヒューズ機器が有していてよいヒューズホルダのクリップまたはヒューズ素子の端子に結合することができる。これらの端子は、ヒューズ素子の端部に設けられていてよい。これにより、ヒューズ素子の端子に印加された電位は、報知装置にも印加される。この報知装置は、透過層を有しており、透過層は、電気的に制御可能な透過率を有している。透過率は、不透明と外部から見えるようになる透明との間の範囲で変化させることができる。1つの例として、透過層の背後に配置された領域が、外部に対して見えやすくなったり、見えにくくなったりする。したがって、ヒューズ素子のそれぞれの特性、すなわち導通状態(ヒューズが切断されていない状態)または遮断状態(ヒューズが切断された状態)が、たとえば電気装置のユーザまたは作業者に見えるようになる。したがって、切断されたヒューズ素子を作業者が容易に認識することができる。
【0007】
1つの実施形態では、報知装置は、透過層とヒューズ素子とを並列に接続するように適合化された導線をさらに有している。したがって、ヒューズ素子の端部、またはむしろ端子に印加される電位は、透過層にも印加される。したがって、透過層は、ヒューズ素子に印加される電界に関連してその透過率を変化させることができる。
【0008】
報知装置の1つの実施形態では、導線が、透過層の端子とヒューズ素子の端子との間、または透過層の端子とヒューズホルダのクリップとの間でそれぞれ電気的な接続を提供するように適合化された導電性のゴム被覆導線を有している。導電性のゴム被覆導線は、ヒューズ素子の端子と報知層の端子との間の電気的な接続をそれぞれ確実に提供する。導電性のゴム被覆導線の弾性により、透過層をヒューズ素子の端子に向かう方向にスムーズに押し込むことができ、これにより確実な接続を達成することができる。さらに、あらゆるギャップの発生を回避することができる。
【0009】
報知装置の1つの実施形態では、透過層が、透過層の端子に印加された電位に関連してその透過率を制御するように適合化されている。印加された電界が所定の閾値の下にある場合、透過率は低いか、むしろ無視できる程度であり、結果として、透過層は不透明である。なお、ヒューズ素子が導電状態にあるか、または切断されていない場合、電界は無視できる程度であるか、むしろ所定の閾値の下にある。その理由は、(切断されていない)ヒューズ線の抵抗を無視することができるからである。換言すると、ヒューズ素子が導電状態にある場合、透過層は不透明である。その結果、透過層の背後に配置された領域または素子は外部から見えなくなる。
【0010】
他方では、ヒューズ素子が切断されると、電界が所定の閾値を超えるように上昇する。所定の閾値を超えた電位の上昇により、透過層が透明になる。換言すると、ヒューズ素子が切断された直後に、透過層が透明になる。これにより、透過層の背後に配置された領域または素子が外部から見えるようになる。したがって、作業者は、切断されたヒューズ素子を容易に認識することができる。したがって、作業者は、必要に応じて、切断されたヒューズ素子を新しいヒューズ素子に交換することができる。
【0011】
報知装置の1つの実施形態では、透過層は、電界において整列するように適合化された液晶を有している。報知装置の別の1つの実施形態では、透過層が、ポリマ分散型液晶(PDLC)層を有している。スマートガラスとも呼ばれるPDLCベースのガラスは、電圧が加えられると、透過率またはむしろ光透過特性を変化させることができるガラスである。概して、ガラスは不透明から透明の間で変化して、光の一部(または全て)の波長を遮断するか、光を透過させるように変化する。
【0012】
1つの実施形態では、報知装置は、外部から見た場合に、透過層の背後に配置された報知層をさらに有している。換言すると、透過層は、報知層と外部との間に配置されている。この配置は、透過層の透過率を制御することだけで、報知層の視認性を制御することを可能にする。換言すると、透過層が不透明である場合、報知層は隠蔽されているか、または単に外部から見えない。他方で、透過層が透明である場合、報知層は外部から見えるようになる。
【0013】
報知装置の1つの実施形態では、報知層が、ヒューズ素子の少なくとも1つの特性を外部に報知するように適合化された情報素子を有している。別の1つの実施形態では、情報素子が、透過層に面した報知層の1つの表面上にラベル付けおよび/または印刷されている。別の1つの実施形態では、情報素子が、色、記号、文字、単語および数字のうちの少なくとも1つを有している。報知層には、ユーザまたは作業者の注意を引くことができる任意の表示をラベル付けまたは印刷することができる。1つの例では、報知層は、目立つ色、たとえば、赤色で印刷またはラベル付けすることができ、この色は、低光量の条件下でも改善して注意を引くことができる。1つの別の例では、報知層には、ヒューズ素子の状態またはむしろ特性を示す単語、たとえば「故障」という単語を印刷することができる。したがって、訓練されていない人でさえ、切断されたヒューズ素子またはむしろ故障状態の認識が可能である。
【0014】
報知装置の1つの実施形態では、ヒューズ素子の特性が、このヒューズ素子の導電状態または遮断状態、電圧、電流および温度のうちの少なくとも1つを有している。報知装置は、上述したように、備えているヒューズ素子の特性、すなわち切断されているか、または切断されていないかを示すことができる。さらに、付加的にまたは代替的に、報知装置は、たとえば印加された電圧、ヒューズ素子を流れる電流、報知装置または報知装置の隣接領域における温度等を含む1つ以上の別の状態を示すことができる。
【0015】
報知装置の1つの実施形態では、透過層の透過率が、不透明と透明との間の範囲で制御される。この実施形態では、たとえばヒューズ素子が切断されているか否かという2つの状態を示すことができることに加えて、報知装置は、段階的な、またはむしろステップ式の表示、たとえばヒューズ素子にどれだけの電流が流れているか、どのくらいの電圧が印加されているか、どのくらいの温度か等を示すことを可能にする情報を表すことができる。
【0016】
1つの実施形態では、報知装置は、ヒューズ素子が遮断状態にある場合に透明となるか、ヒューズ素子が導電状態である場合に不透明となるように、透過層の透過率を制御するように適合化されている。
【0017】
本発明は、さらに、ヒューズ素子と、ヒューズ素子を支持するための基部と、請求項1から13までのいずれか1項に記載の報知装置とを有する電気ヒューズ機器であって、報知装置が、ヒューズ素子に印加される電位に電気的に接続されている、電気ヒューズ機器に関する。
【0018】
さらに、本発明は、少なくとも1つの電気構成要素と、請求項14に記載の電気ヒューズ機器とを有する装置に関し、電気ヒューズ機器が、電気構成要素を過電流から保護するように適合化されている。したがって、電気構成要素を電気ヒューズ機器によって少なくとも過電流から保護することができる装置が提供され、電気ヒューズ機器は、さらに、電気ヒューズ機器が有しているヒューズ素子の少なくとも1つの特性を外部に報知するように適合化されている。
【0019】
さらに、本発明は、電気器具に電力を供給するように適合化された電源入力モジュールに関し、電源入力モジュールは、請求項14に記載の電気ヒューズ機器を有している。
【0020】
上述した実施形態の任意の組み合わせが、別の可能な実施形態の対象であることを明示的に指摘する。矛盾が生じるような実施形態のみが除外されている。
【0021】
本発明を、以下の詳細な説明に関連して考慮されるべき種々異なる例示的な実施形態を一緒に図示する添付の図面を参照しながらさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】報知装置を備えた電気ヒューズ機器の1つの実施形態を示す半透明図である。
【
図2】aおよびbは、報知装置をそれぞれ側面図および上面図で示す概略図である。
【
図3】a~eは、例示的な報知装置回路を示す概略図である。
【
図4】aおよびbは、1つの実施形態の円筒形のボディを有する電気ヒューズ機器を示す互いに異なる図である。
【
図5】電気ヒューズ機器の別の実施形態を示す斜視図である。
【
図6】a~cは、キャップを示す互いに異なる図である。
【
図7】別の実施形態の電気ヒューズ機器を示す図である。
【
図8】器具インレットまたは電源入力モジュールに組み込まれた例示的な電気ヒューズ機器を、それぞれ正面から示す図である。
【0023】
本発明の詳細な説明
図1は、電気ヒューズ機器10を半透明図で示している。電気ヒューズ機器10は、交換可能なヒューズ素子12を有している。このヒューズ素子12は、たとえばそれぞれ導電性の材料から成る2つのヒューズクリップを有するヒューズホルダ(図示せず)により支持することができる。図示した実施形態では、ヒューズ素子12が、筒形ヒューズ12である。ヒューズクリップは、筒形ヒューズ12を支持する一方で、筒形ヒューズ12の端子16a,bと、はんだピン(図示せず)との間の電気的な接続を提供するように適合化されていてよい。はんだピンは、ヒューズクリップが有していてよく、はんだピンは、たとえばプリント基板PCB(図示せず)が有している導電路または導電性パッドに、たとえばはんだ付けにより電気的に接続することができる。
【0024】
電気ヒューズ機器10は、図示の例では電気ヒューズ機器10に挿入された場合に筒形ヒューズ12の上方に配置されている報知装置24をさらに有している。報知装置24は、筒形ヒューズ12の端子16a,bに電気的に接続されるか、または2本の導電性のゴム被覆導線26a,bによってヒューズクリップに直接接続される端子を有していてよい。
【0025】
例示的な報知装置24は、
図2aおよび
図2bにおいてそれぞれ側面図および上面図で概略的に図示されている。基板28は、報知装置24の構成要素を支持するために構成されている。基板28は、プリント基板PCB、導電性ポリマ、ガラスまたはセラミック基板から構成されていてよい。基板28は、電気構成要素29、たとえばSMD-構成要素を備えていてよい。報知装置24は、以下でさらに説明されるトップガラス30を有している。報知装置24は、電気的に制御可能な透過率を有する透過層32をさらに有している。透過層32は、不透明または透明であるように制御することができ、不透明と透明との間の範囲における段階またはむしろステップが達成可能である。基板28は、たとえば基板28が有している電気路によって接続された、報知装置24の別の電子的な構成要素を支持することもできる。
【0026】
1つの例では、透過層32が、電界において整列するように適合化された液晶を有している。1つの例では、透過層32は、スマートガラスとも呼ばれるポリマ分散型液晶(PDLC)層である。基板28の、長手方向の延在方向で見て互いに反対にある端部には、電気端子が設けられており、これらの電気端子は、導電性のゴム被覆導線26a,bによって筒形ヒューズの端子16a,bに接続されている(
図1参照)。導電性のゴム被覆導線26a,bは、その弾性により、基板28の端子と、筒形ヒューズの端子16a,bまたはヒューズホルダのクリップとの間で、それぞれ確実な電気的な接続を提供する。基板28の電気端子自体は、透過層32のそれぞれの電気端子33a,33bに電気的に接続されている。透過層32の電気端子33a,33bは、たとえば導電性の接着剤、はんだ接合または拡散接合により、基板28上に配置されたそれぞれのパッド(図示せず)に接続されている。したがって、運転中に、透過層32と筒形ヒューズには、基本的に同一の電位が印加される。そのため、筒形ヒューズの端子16a,bに印加される電位に関連して、透過層32の透過率を制御することができる。
【0027】
筒形ヒューズが導電状態であるか、むしろ切断されていないと仮定すると、その端子16a,bに印加された電界は極めて小さいか、むしろ無視できる。その理由は、ヒューズ線の電気抵抗を無視することができ、ほぼゼロの電位が生じるからである。したがって、透過層32に印加される電位も無視することができ、透過層32は不透明である。透過層32は、筒形ヒューズが導電状態にある(切断されていない)限り、不透明のままである。
【0028】
他方では、筒形ヒューズが切断されたと仮定すると、筒形ヒューズの端子16a,bに印加される電位が急激に上昇する。増加した電位は透過層32にも印加されるので、透過層32が透明になるか、むしろ不透明から透明へと移行する。換言すると、筒形ヒューズが切断された直後に、透過層32は透明になる。これにより、透過層32の下に配置された報知層34が外部から見えるようになる。したがって、作業者は、筒形ヒューズが切断されたことを認識することができ、これにより、たとえば、切断の理由を特定し、その後、必要に応じて、切断された筒形ヒューズを新しい筒形ヒューズに交換することができる。
【0029】
報知層34は、筒形ヒューズ12の少なくとも1つの特性を外部に報知するように適合化された情報素子36を有していてよい。情報素子36は、透過層32の≧3mm下にある報知層34の表面にラベル付けするか、または印刷することができる。
図2bに示した例では、情報素子36は、「故障(DEFECT)」という単語である。単語の他、情報素子36は、色、記号、文字、数字等であってよい。さらに、報知装置24は、筒形ヒューズの特性、すなわち切断されているか、切断されていないかを外部に報知する他に、別の特性、たとえば、電圧、電流、温度等を報知することができる。透過層32は、環境的な影響、たとえば水、湿気、破壊等に対して透過層32を保護するように、上述のトップガラス30により上から覆われている。トップガラス30は、その周縁部においてトップガラス30の下に配置されたシール層37によって、基板28に接続するか、むしろ接着されている。シール層37の反対側の面は、このシール層37がさらに接着層として機能するように、接着剤を有していてよい。これにより、たとえば、透過層32の下の領域における基板28の内部が、環境に対して適切にシールされている。
【0030】
図3a~
図3eは、報知装置24の例示的な回路を概略的に図示している。
【0031】
図3aは、たとえば≦48Vのための簡略化された回路図状態表示で報知装置24を示している。報知装置24は、筒形ヒューズ12と、互いに対して並列に接続された透過層32とを有していてよい。当然ながら、
図7に示すように、筒形ヒューズ12とは異なるヒューズ素子を使用することもできる。
【0032】
図3bは、たとえば250Vのための簡略化された回路図状態表示で報知装置24を示している。この態様では、報知装置24は、筒形ヒューズ12、透過層32および容量(コンデンサ)Cを有している、透過層32と容量Cとを直列に接続することができる一方、透過層32と容量Cとの直列接続を、筒形ヒューズ12に並列に接続することができる。当然ながら、いずれの態様においても、
図1に示したような筒形ヒューズの代わりに、この筒形ヒューズとは異なるヒューズ素子を使用することができる。
【0033】
報知装置24の別の変化形が、
図3c~
図3eに示されており、
図3cは最高の安全要件を備えた回路図、
図3dは標準的な回路図、
図3eは減じられた安全要件を有する低コストバージョンの回路図を示している。描かれた変化形では、サプレッサダイオードDを透過層32に並列に接続することができる。さらに、少なくとも1つのコンデンサCを直列に接続することができる。最高の安全要件を達成する変化形では、報知装置24は、ヒューズFを備えることができる(
図3c参照)。
【0034】
図4a、
図4bおよび
図5は、異なる例における本質的に円筒形のボディを有する電気ヒューズ機器10を示している。
図4a、
図4bは、1つの例の電気ヒューズ機器10を、それぞれ側面図および斜視図で示している。ヒューズ装置10は、鉛直方向の配向で組み付けることができ、このことはたとえば、PCB(図示せず)上での安全な取付けスペースを可能にする。電気ヒューズ機器10は、たとえば、上部に位置固定されたキャップ38を、たとえばキャップ38のねじ外しにより簡単に取り外し、次いで筒形ヒューズを上方から挿入することにより、筒形ヒューズ(図示せず)を備えることができる。このようにして装備された電気ヒューズ機器10は、キャップ38をねじ締結することにより再び閉じることができる。
【0035】
図5は、別の例の円筒形のボディを有する電気ヒューズ機器10を斜視図で示している。示された電気ヒューズ機器10は、電気器具、たとえば電力供給ユニットのハウジングに組み付けられるように適合化されている。図示された例示的な電気ヒューズ機器10では、それぞれのキャップ38の上面に、挿入された筒形ヒューズの特性を外部に報知することを可能にする報知装置24が設けられている。
【0036】
図6a~
図6cは、例示的なキャップ38をそれぞれ異なる図で示している。図示されているように、キャップ38の外周部は、手でキャップ38をねじ締結またはねじ外すことを可能にするために、ローレット加工することができる。キャップ38の上面には、報知装置24が設けられており、この報知装置24は、挿入された筒形ヒューズの特性を外部に報知することを可能にする。図示しない例では、工具のみでキャップをねじ締結またはねじ外しすることを可能にするために、キャップ38の上部に、工具、たとえばドライバ(図示せず)の係合を可能にするスロットが設けられていてよい。
【0037】
図7は、別の実施形態の電気ヒューズ機器100を示している。電気ヒューズ機器100は、ヒューズ素子112と、一体的に形成された報知装置124とを有している。電気ヒューズ機器100は、導電性の端子114a,bによって支持することができ、これらの端子は、たとえばはんだ付けによって、PCB上に設けられた導電路に接続することができ、またはヒューズクリップによって設けられた導電路に接続することができる。報知装置124は、トップガラス130と、電気的に制御可能な透過率を有する透過層132とを有している。ヒューズ素子112および報知装置124の両方の導電性端子は、導電性導線126a,b、たとえば、ビア、フィルドビア、ホール等によって、それぞれ端子114a,bに並列に接続されている。したがって、本質的に等しい電位が、ヒューズ素子112および報知装置124の両方にそれぞれ印加される。電気ヒューズ機器100は、透過層132が透明になるように制御されると外部から見えるようになり、透過層132が不透明になるように制御されると外部から見えなくなる報知層134をさらに備えている。このことは、ヒューズ素子112の特性を外部に報知することを可能にする。透過層132は、環境に対して保護するように、トップガラス130の下に配置することができる。
【0038】
図8a、
図8bは、それぞれ、例示的な器具のインレット、またはむしろ電源入力モジュールPEMを正面図で示している。電源入力モジュールPEMは、それぞれが電源コード(図示せず)の対応するコネクタを受け入れるように適合化されたコネクタ201を有している。さらに、筒形ヒューズのための統合されたヒューズホルダ(いずれも図示せず)を備えた統合された電気ヒューズ機器200が設けられている。電源入力モジュールPEMは、装置(図示せず)に電力(たとえばAC電力)を供給するためのものである。
図8bに示す電源入力モジュールPEMには、電源スイッチ250がさらに設けられている。
【0039】
電源の少なくとも1つの相は、統合された電気ヒューズ機器200(図示せず)によって、たとえば過電流から保護することができる。さらに、挿入されたヒューズ素子の少なくとも1つの特性を外部に報知するように構成された報知装置224が設けられている。報知装置224は、トップガラス230を有しており、このトップガラス230の一方の面は、外部に対して露出している。さらに、制御可能な透過率を有する透過層232が設けられている。透過層232は、トップガラス230によって環境に対して保護されるように配置されている。挿入されたヒューズ素子の少なくとも1つの特性の報知は、透過層232を透明または不透明になるように制御することによって達成される。
図8a、
図8bは、透過層232が不透明であることを示しており、このことは、ヒューズ素子が切断されていないことを外部に報知する。図示されていないが、透過層232が透明に移行した場合、このことは、筒形ヒューズが切断されたことを外部に報知している。したがって、作業者は、筒形ヒューズの各特性、すなわち、切断されているか、切断されてないかを容易に認識することができる。