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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】造雪装置及び環境形成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023194322
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2021129625の分割
【原出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2024003194
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020158577
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田村 航士
(72)【発明者】
【氏名】坂根 浩喜
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-001063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、前記筒状体が前記雪及び前記空気を前記筒状体の先端に運ぶダクトとして機能し、
前記筒状体の前記先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続されている、造雪装置。
【請求項2】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体の前記先端又は前記管部材は、雪を降らせる供給口が形成されるとともに前記試験室に配置された降雪フードに繋がっており、
前記筒状体は、前記降雪フードに向けて前記筒状体内の雪が上方から下方に流れるように配置されている、造雪装置。
【請求項3】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体の前記先端又は前記管部材から流出した空気を吸い込み、前記供試体に向けて空気を吹き出す送風機をさらに備えている、造雪装置。
【請求項4】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体は、前記基端から前記先端に向けて下がるように斜めの姿勢で配置されている、造雪装置。
【請求項5】
前記筒状体の内面に雪が付着することを抑制する抑制手段を備えている、請求項1から4の何れか1項に記載の造雪装置。
【請求項6】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体の内面に雪が付着することを抑制する抑制手段を更に備え、
前記抑制手段は、前記筒状体の内面に沿って空気を流す送風機を含む、造雪装置。
【請求項7】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体の内面に雪が付着することを抑制する抑制手段を更に備え、
前記抑制手段は、前記筒状体に振動を与えるように構成されている、造雪装置。
【請求項8】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体内で生成された雪を湿らせる雪質調整ノズルを更に備える、造雪装置。
【請求項9】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体が配置される温度環境よりも低温の空気を前記造雪用ノズルから噴射された水滴に向けて吹き出す補助冷却手段を更に備えている、造雪装置。
【請求項10】
前記筒状体で生成された雪を一時的に捕捉するとともに、捕捉された雪を成長させる雪成長部材を更に備えている、請求項1から9の何れか1項に記載の造雪装置。
【請求項11】
筒状体と、
二流体ノズルによって構成され、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備え、
前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成可能な温度環境を有する部屋に開口する基端を有し、
前記造雪用ノズルは、前記造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、前記部屋内の空気を、前記基端を通して前記筒状体内に流入させるように構成されており、
前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪が生成される温度環境が前記筒状体内において得られ、
前記筒状体の先端は、供試体若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは前記部屋である試験室若しくは前記部屋とは別個の試験室に繋がる管部材に接続され、
前記筒状体で生成された雪を一時的に捕捉するとともに、捕捉された雪を成長させる雪成長部材と、
前記雪成長部材に捕捉された雪が落下するように、前記雪成長部材を振動させる振動体と、を更に備えている、造雪装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の造雪装置を備える環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造雪装置及び環境形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示にされているように、摂氏マイナス20度~マイナス40度程度に冷却された空気が供給される試験室内で雪を降らせるように構成された造雪装置が知られている。特許文献1に開示された造雪装置は、試験室の天井部分に配置された噴霧ノズルを有しており、この噴霧ノズルから試験室に向けて水滴を噴霧することにより、試験室内で雪を降らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-036069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された造雪装置のように、噴霧ノズルから噴射された水滴から雪片を生成するには、噴射ノズルから非常に微細な水滴を噴射する必要がある。このため、生成された雪片においても、微細なものがある程度含まれる。このため、天井部分から下方に向けて噴射された水滴から生成された雪片には、供試体に向けて流れずに宙に舞ったまま漂うものがある程度含まれ、このような雪片は試験室内に漂ってしまうため、供試体には供給されない。したがって、供試体に所定量の雪を降りかけるには、それよりも多くの雪を生成しなければならず、ランニングコストの増加につながっている。
【0005】
本発明の目的は、ランニングコストを抑制できる造雪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る造雪装置は、筒状体と、前記筒状体内に水滴を噴射する造雪用ノズルと、を備える。前記筒状体は、前記造雪用ノズルから噴霧された水滴から雪を生成させる温度環境に開口する基端を有する。前記筒状体の先端は、供試体若しくは試験室に向けて空気が流れるように開口し、又は、供試体に向けて空気が流れるように開口する管部材若しくは試験室に繋がる管部材に接続されている。
【0007】
前記造雪装置では、造雪用ノズルから水滴が噴射されると、噴射された水滴は、筒状体内を流れるとともに筒状体内で雪片に変わる。そして、雪片は、供試体若しくは試験室に向けて空気が流れるように筒状体から吹き出されるか、管部材を通して供試体に向けて空気が流れるように吹き出されるか、試験室内に導かれる。つまり、造雪用ノズルから噴射された水滴から生成される雪片のうち、供試体に向けて流れない雪片又は試験室に導入されない雪片の割合を低減することができる。このため、造雪用ノズルから噴射された水滴のうち、雪片となって供試体に向け吹き出される割合又は試験室内に導入される割合を向上することができる。したがって、供試体を降雪環境に曝す試験のランニングコストを抑制することができる。
【0008】
前記造雪用ノズルは、二流体ノズルによって構成されていてもよい。この態様では、造雪用ノズルは水滴とともに空気を噴射する。このため、造雪用ノズルからの空気の吹き出し力によって、筒状体内において空気が流動する。言い換えると、造雪用ノズルは、筒状体内の空気を流動させる駆動源としても機能する。したがって、筒状体内において先端に向けて空気を流動させるための送風機を用いなくても、空気を流動させることができるので、送風機を用いずに、供試体、試験室、管部材に向けて空気が流れるように筒状体から雪を吹き出すことができる。
【0009】
前記筒状体の前記先端又は前記管部材は、雪を降らせる供給口が形成されるとともに前記試験室に配置された降雪フードに繋がっていてもよい。この場合、前記筒状体は、前記降雪フードに向けて前記筒状体内の雪が上方から下方に流れるように配置されていてもよい。
【0010】
この態様では、筒状体の先端が降雪フードに繋がっている場合には、筒状体から降雪フードに向けて雪が下方に流れることになる。このため、その部分において雪が堆積することを抑制することができる。また、管部材が降雪フードに繋がっている場合には、管部材が上下方向又は傾斜方向に配置されるため、管部材において雪が堆積することを抑制することができる。
【0011】
前記造雪装置は、前記筒状体の前記先端又は前記管部材から流出した空気を吸い込み、前記供試体に向けて空気を吹き出す送風機をさらに備えていてもよい。
【0012】
この態様では、筒状体の前記先端又は前記管部材から流出した空気は送風機に吸い込まれる。送風機は、吸い込んだ雪を含む空気を供試体に向けて吹き出す。したがって、供試体に向けて所定の風速で雪を吹き付けることができる。
【0013】
前記筒状体は、前記基端から前記先端に向けて下がるように斜めの姿勢で配置されていてもよい。この態様では、筒状体内において造雪用ノズルが配置された基端側から先端に向けて雪が斜め下方に流れることになる。このため、筒状体内において雪が堆積することを抑制することができる。
【0014】
前記造雪装置は、前記筒状体の内面に雪が付着することを抑制する抑制手段を備えていてもよい。この態様では、筒状体の内面に雪が付着することを抑制できるため、より一層、ランニングコストを抑制することができる。
【0015】
前記抑制手段は、前記筒状体の内面に沿って空気を流す送風機を含んでもよい。この態様では、送風機から吹き出された空気が筒状体の内面に沿って流れることにより、筒状体内の雪が筒状体の内面に付着することを抑制し、又は付着した雪を筒状体の内面から脱離させることができる。
【0016】
前記抑制手段は、前記筒状体に振動を与えるように構成されていてもよい。この態様では、筒状体が振動することにより、筒状体内の雪が筒状体の内面に付着することを抑制し、又は付着した雪を筒状体の内面から脱離させることができる。
【0017】
前記造雪装置は、前記筒状体内で生成された雪を湿らせる雪質調整ノズルを備えてもよい。この態様では、筒状体内で生成された雪の質を変えることができるため、筒状体が配置される温湿度環境から決まる雪質以外の雪を供試体又は試験室に供給することができる。
【0018】
前記造雪装置は、前記筒状体が配置される温度環境よりも低温の空気を前記造雪用ノズルから噴射された水滴に向けて吹き出す補助冷却手段を備えていてもよい。この態様では、筒状体が配置された温度環境によって、雪が生成される温度に水滴を冷却するだけでなく、補助冷却手段によっても、造雪用ノズルから噴射された水滴を冷却する。このため、雪の生成効率を高めることができる。しかも、補助冷却手段は、局所的に水滴を冷却するため、冷却に必要なエネルギーが増大することを抑制することができる。
【0019】
前記造雪装置は、前記筒状体で生成された雪を一時的に捕捉するとともに、捕捉された雪を成長させる雪成長部材を更に備えていてもよい。この態様では、雪成長部材で成長した雪を供試体、試験室に供給することができるため、より大きな雪片からなる雪を供給することができる。
【0020】
前記造雪装置は、前記雪成長部材に捕捉された雪が落下するように、前記雪成長部材を振動させる振動体を更に備えていてもよい。この態様では、振動体によって雪成長部材を振動させることによって、雪成長部材から雪を離脱させることができる。このため、雪が雪成長部材に過剰に堆積することを防止できる。
【0021】
本発明の他の一局面に係る環境形成装置は、前記造雪装置を備える環境形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、ランニングコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図2】筒状体に振動を与えるように構成された抑制手段を示す図である。
図3】第2実施形態に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図4】第3実施形態に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図5】第4実施形態に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図6】(a)(b)第5実施形態に係る造雪装置に設けられた雪質調整ノズルを説明するための図である。
図7】雪質調整ノズルの変形例を説明するための図である。
図8】第6実施形態に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図9】雪質調整ノズルの変形例を説明するための図である。
図10】第6実施形態の変形例に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図11】第6実施形態の他の変形例に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
図12】筒状体の先端近傍に雪成長部材が配置された構成の、その他の実施形態を示す図である。
図13】雪成長部材の変形例を示す図である。
図14】雪成長部材の他の変形例を示す図である。
図15】筒状体の先端に雪成長部材が取り付けられた構成を示す図である。
図16】(a)(b)筒状に形成された雪成長部材を示す図である。
図17】その他の実施形態に係る造雪装置が適用された降雪環境試験装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る造雪装置10が適用された降雪環境試験装置1(環境形成装置)を概略的に示している。降雪環境試験装置1は、降雪環境を提供する試験室2を有しており、この試験室2には、供試体が載置される。ここで、降雪環境は、水滴から雪を生成できる温度環境でもよいが、それよりも高温の環境であってもよい。つまり、水滴から容易には雪が生成されないが、雪が溶け難い温度環境であってもよく、例えば寒冷地の温度環境を再現した温度環境であってもよい。具体的には、+5℃~-10℃程度の温度環境であってもよい。このため、試験室2には、試験室2内の空気温度を調整するための空調機13が設けられている。
【0026】
試験室2の天井部には、雪を降らせるための供給口が形成された降雪フード4が配置されている。降雪フード4には、雪を含む空気が造雪装置10から供給され、降雪フード4は、試験室2内で雪を降らせる。
【0027】
造雪装置10は、微細な水滴から雪を生成するための装置である。造雪装置10は、試験室2よりも低温の温度環境を提供する造雪室12を備えている。造雪室12は、微細な水滴から雪を生成できる温度環境を提供する部屋であり、造雪室12内は、例えば、-15℃~-25℃程度の温度環境に調整される。このため、造雪室12には、造雪室12内の空気を冷却する冷却器14aと、冷却器14aで冷却された空気を造雪室12内に吹き出す送風機14bと、を含む空調機14が設けられている。
【0028】
造雪装置10は、筒状体18と、筒状体18内に水滴を噴射する造雪用ノズル20と、筒状体18に接続された管部材22と、を備えている。
【0029】
筒状体18は、一方向に直線的に延びる筒状に形成された部材で構成されており、基端(一端)18a及び先端(他端)18bが開口している。基端18aは造雪室12に開口している。このため、筒状体18内の空間の温度環境も、造雪室12内と同じ温度環境となっている。したがって、造雪用ノズル20から噴射された水滴は、基端18aから先端18bに向かって流れる間に筒状体18内で雪片に変わる。つまり、筒状体18内において雪が生成される。
【0030】
図例の筒状体18は、直線的に延びる形状となっているが、これに限られるものではなく、曲線的に曲がった形状であってもよい。ただし、筒状体18内面への雪の付着を考慮すれば、筒状体18は真っ直ぐに延びる形状の方が好ましい。筒状体18は、金属製又は樹脂製であって、形状が変わらない構成であるが、柔軟な素材で構成されていてもよい。この場合、筒状体18の設置環境等に応じて筒状体18を曲げることができ、設置環境の影響を受け難くすることができる。
【0031】
また、筒状体18は、伸縮可能に構成されていてもよい。この場合、造雪用ノズル20は筒状体18の伸縮に応じて移動可能に構成されてもよい。筒状体18が伸縮可能な構成の場合、筒状体18の長さに応じて、筒状体18から流出する雪の質(含水率)が変わる。なお、筒状体18が伸縮可能な構成でない場合においても、造雪用ノズル20が移動可能に構成されていてもよい。
【0032】
筒状体18の内面には、雪が付着し難くなるようにフッ素樹脂加工等の表面処理が施されていてもよい。
【0033】
筒状体18は、基端18aが先端18bよりも高い位置になるように傾斜した状態で造雪室12内に配置されている。なお、筒状体18は傾斜した状態に配置されている必要はなく、水平方向に延びる姿勢或いは垂直方向に延びる姿勢に配置されてもよい。
【0034】
造雪用ノズル20は、筒状体18の基端18aの位置に合わせて配置されている。造雪用ノズル20は、二流体ノズルによって構成されており、空気と微細な水滴とを噴射するように構成されている。すなわち、造雪用ノズル20には、空気供給路24と冷水供給路26とが接続されており、造雪用ノズル20は、空気供給路24を通して供給された圧縮空気(又は冷却された圧縮空気)と、冷水供給路26を通して供給された冷水とを、噴射口から噴射する。噴射口では、圧縮空気と冷水とが衝突することにより、冷水が粉砕される。このため、噴射口からは、空気と微細な水滴とが混合した状態の流体が噴射される。噴射口は絞られているため、噴射口から噴射された流体は次第に拡がる。また、空気が造雪用ノズル20から噴射されることから、この噴射された空気の作用によって、造雪室12内の空気が基端18aから筒状体18内に進入するとともに筒状体18内において空気の流れが生ずる。
【0035】
造雪用ノズル20が、噴射口が筒状体18内を向く姿勢で配置されているので、空気と微細な水滴とが混合した状態の流体は、筒状体18内に噴射される。図例の造雪用ノズル20は、筒状体18の基端18aの位置に合わせて配置されているがこれに限られない。造雪用ノズル20は、基端18aに隣接する位置に配置されていてもよい。例えば、造雪用ノズル20は、筒状体18から離れる方向に基端18aからずれた位置に配置されて、筒状体18内に流体を噴射してもよい。この場合、造雪用ノズル20の位置は、噴射された水滴及び空気の混合流体の全てが筒状体18内に流入する範囲にあればよい。また、造雪用ノズル20は、筒状体18内に配置されてもよい。この場合、造雪用ノズル20は、噴射口が先端18bを向く姿勢で配置される。ただし、基端18aから離れるほど、筒状体18においてダクトとして機能する部分が短くなるため、造雪用ノズル20は、基端18aから離れすぎない方が好ましい。
【0036】
管部材22は、筒状体18の先端18bに接続されるとともに降雪フード4に接続されている。つまり、管部材22は試験室2に繋がっている。管部材22は、筒状体18から流出した雪を含む空気を降雪フード4に導く。筒状体18が傾斜した姿勢で配置されるとともに、降雪フード4が筒状体18よりも下に配置されているので、管部材22は、降雪フード4の流入口に向けて曲がった形状に形成されている。
【0037】
造雪装置10は、筒状体18の内面に雪が付着することを抑制する抑制手段(抑制ユニット)30を備えている。抑制手段30は、筒状体18の内面に沿って空気を流すための送風機30aを含む。送風機30aは、筒状体18の基端18a近傍において、筒状体18の外側に配置されている。送風機30aには、筒状体18の内側で開口する流出端を有する吹き出し管30bが接続されている。吹き出し管30bは、筒状体18を貫通しており、筒状体18の内面に沿って先端18b方向に延びる延出部30cを有する。吹き出し管30bの流出端(延出部30cの先端)は、筒状体18内において筒状体18の先端18bに向けて開口している。このため、送風機30aから送り出された空気は、吹き出し管30bの流出端から吹き出し、筒状体18の内面に沿って筒状体18の先端18bに向かって流れる。これにより、水滴から生成された雪が筒状体18の内面に付着するのを抑制することができる。なお、吹き出し管30bは、筒状体18の内側において、造雪用ノズル20から吹き出された水滴が付着しない位置に配置されている。なお、試験時間が短い等、筒状体18への雪の付着(堆積)が問題にならないのであれば、抑制手段30を省略することができる。
【0038】
送風機30a及び吹き出し管30bは、複数設けられ、これらが筒状体18の周方向に間隔を開けて配置されている。なお、1つの筒状体18に対して1つのみの送風機30a及び吹き出し管30bが設けられていてもよい。
【0039】
送風機30aは、造雪室12内の空気、すなわち、造雪可能な温度の空気を吸引して吹き出してもよいが、これと異なる温度(造雪室12内の温度よりも低い温度)に調整された空気を吸引して吹き出してもよい。
【0040】
抑制手段30は、送風機30aに吹き出し管30bが接続された構成に限られず、吹き出し管30bが省略された構成でもよい。すなわち、送風機30aは、筒状体18の基端18aにおいて造雪用ノズル20に隣接するように配置されるとともに、筒状体18の基端18aから先端18bに向けて筒状体18の内面に沿って空気を吹き出すように配置されてもよい。
【0041】
抑制手段30は、筒状体18の内面に沿って空気を流動させることによって雪の付着を防止する構成に限られるものではない。例えば、図2に示すように、抑制手段30は、筒状体18に振動を与えるように構成されていてもよい。この場合、抑制手段30は、筒状体18の外側に配置された振動機又はノッカーによって構成される。振動機は、筒状体18の外面に接触し、自身が振動することによって筒状体18を振動させる。一方、ノッカーは、筒状体18から離れたところに配置されるとともに、筒状体18に打撃を与えることができるように構成されている。つまり、振動機及びノッカーは筒状体18を振動させる器具によって構成されている。
【0042】
降雪環境試験装置1では、試験室2内が寒冷地の温度環境を再現した温度環境に調整され、造雪室12内が水滴から雪が生成される温度環境に調整される。そして、造雪用ノズル20から空気と微細な水滴とが混合した状態の流体が噴射されると、筒状体18内において、先端18bに向けた空気の流動が生ずる。このとき、筒状体18の基端18aから造雪室12内の空気も流入する。このため、筒状体18内を流れる水滴の少なくとも一部は雪片に変わる。筒状体18出口での水滴からの雪の生成割合は、造雪室12の室内空気の温度、筒状体18の長さ、筒状体18内での空気流速等の影響を受ける。雪の生成割合が変わると、雪質も変わる。
【0043】
筒状体18内の雪を伴った空気は、管部材22を通して降雪フード4に導入され、試験室2内において、下方に向けて吹き出される。これにより、試験室2内において降雪環境が作り出される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、筒状体18の基端18a側において、造雪用ノズル20から水滴が噴射されると、噴射された水滴は、筒状体18内を流れるとともに筒状体18内で雪片に変わる。そして、雪片は、管部材22を通して試験室2内に導かれる。つまり、造雪用ノズル20から噴射された水滴から生成される雪片のうち、試験室2に導入されない雪片の割合を低減することができる。このため、造雪用ノズル20から噴射された水滴のうち、雪片となって試験室2内に導入される割合を向上することができる。したがって、供試体を降雪環境に曝す試験のランニングコストを抑制することができる。
【0045】
また本実施形態では、造雪用ノズル20が二流体ノズルによって構成されているので、造雪用ノズル20は水滴とともに空気を噴射する。このため、造雪用ノズル20からの空気の吹き出し力によって、造雪室12内の空気を筒状体18内に流入させるとともに筒状体18内において空気が流動する。したがって、筒状体18内において先端18bに向けて空気を流動させるための送風機を用いなくても、空気を流動させることができるので、送風機を用いずに、管部材22に向けて雪を吹き出すことができる。
【0046】
また本実施形態では、筒状体18が降雪フード4よりも上に配置され、且つ管部材22が降雪フード4に繋がっているため、管部材22が傾斜方向から下向きに曲がる形状に形成されている。このため、管部材22において雪が堆積することを抑制することができる。
【0047】
また本実施形態では、筒状体18が、基端18aから先端18bに向けて下がるように斜めの姿勢で配置されているので、筒状体18内において基端18aから先端18bに向けて雪及び空気が斜め下に向けて流れることになる。このため、筒状体18内において雪が堆積することを抑制することができる。
【0048】
また本実施形態では、筒状体18の内面に雪が付着することを抑制する抑制手段30が設けられているので、筒状体18の内面に雪が付着することを抑制でき、より一層、ランニングコストを抑制することができる。
【0049】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
第2実施形態では、管部材22が省略され、筒状体18の先端18bは降雪フード4に直接的に接続されている。図3に示す例では、筒状体18が直線的に延びる形状に形成されているため、筒状体18は、鉛直方向に延びる姿勢で配置されている。なお、筒状体18は、曲がった形状に形成されてもよい。
【0051】
降雪フード4は、筒状体18の横断面積よりも広い面積の領域で雪を降らせる。なお、複数の筒状体18及び造雪用ノズル20が設けられる場合には、降雪フード4を省略することも可能である。この場合、筒状体18の先端18bは試験室2に向けて開口することになる。
【0052】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0053】
(第3実施形態)
図4は第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
第3実施形態の造雪装置10は、造雪室12内の温度よりも低温の空気を供給する補助冷却手段(補助冷却ユニット)34を備えている。補助冷却手段34は、例えば-45℃等の、-40℃以下の空気を供給するように構成されており、造雪用ノズル20から噴射された水滴に向けて空気を吹き出す管材34aを備えている。管材34aは、筒状体18の基端18aにおいて、造雪用ノズル20に隣接して配置されている。
【0055】
管材34aを通して供給された空気は、造雪用ノズル20から噴射された水滴に直接当たるため、水滴を効率的に凝固させることができる。また、補助冷却手段34が設けられることにより、造雪室12の全体を-40℃程度以下に冷却する必要がなくなる。
【0056】
したがって、本実施形態では、筒状体18が配置された温度環境によって、雪が生成される温度に水滴を冷却するだけでなく、補助冷却手段34によっても、造雪用ノズル20から噴射された水滴を冷却する。したがって、雪の生成効率を高めることができる。しかも、補助冷却手段34は、局所的に水滴を冷却するため、冷却に必要なエネルギーが増大することを抑制することができる。また、管材34aから冷却空気が吹き出されるため、この気流によって筒状体18の内面に雪が付着することを抑制できるとともに、付着した雪を筒状体18の内面から離脱させることができる。つまり、筒状体18の内面に沿う気流を生じさせる管材34aは、雪の付着を抑制する抑制手段30としても機能する。
【0057】
なお、補助冷却手段34は、筒状体18内の空間に空気を吹き出す構成に限られず、代替的に、補助冷却手段34は、筒状体18自体を冷却する構成でもよい。例えば、補助冷却手段34は、筒状体18に巻き付けられた冷却配管によって構成されてもよく、あるいは、筒状体18の周囲に設けられた外筒を有し、筒状体18と外筒との間に冷却媒体が流れる形態であってもよい。
【0058】
図4では、抑制手段30が示されていないが、抑制手段30が設けられていてもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0059】
(第4実施形態)
図5は第4実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
第4実施形態では、造雪用ノズル20が一流体ノズルによって構成される点で、造雪用ノズル20が二流体ノズルによって構成される第1実施形態と異なっている。造雪用ノズル20は、冷水供給路26が接続される一方で、空気供給路24は接続されていない。このため、造雪用ノズル20は、供給された冷水を絞って噴射口から水滴を噴射する。
【0061】
筒状体18に接続された管部材22には、送風機36が設けられている。送風機36が作動すると、送風機36の吸引作用により、筒状体18内の空気が流動する。したがって、本実施形態では、造雪用ノズル20による噴射の力によって筒状体18内で空気を流動させるのではなく、送風機36の駆動力を利用して筒状体18内の空気を流動させている。
【0062】
なお、送風機36の吸引作用を利用して空気を流動させるのではなく、送風機36の押し出し作用を利用して筒状体18内において空気を流動させてもよい。すなわち、送風機36は、造雪用ノズル20の背面側に配置され、造雪用ノズル20(つまり、筒状体18内)に向けて空気を吹き出してもよい。
【0063】
図5は、筒状体18が水平方向に配置された例を示しているが、これに限られるものではなく、傾斜姿勢又は垂直姿勢で配置されてもよい。また、管部材22の形状も図5に示す形状に限られない。また、筒状体18が試験室2に向けて延びている場合には、管部材22を省略することも可能である。
【0064】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1~第3実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0065】
(第5実施形態)
図6(a)(b)は第5実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
第5実施形態の造雪装置10は、筒状体18内で生成された雪を湿らせる雪質調整ノズル40を備えている。雪質調整ノズル40は、水滴を噴き出すノズルによって構成されており、筒状体18の先端18b寄りの位置に配置される。つまり、雪質調整ノズル40は、基端18aよりも先端18bに近い位置に配置されている。このため、雪質調整ノズル40は、筒状体18の先端18bから流出する前の雪を湿らせる。
【0067】
雪質調整ノズル40は、筒状体18の外側に配置されるとともに、筒状体18に形成された貫通孔を通して、筒状体18内に水滴を噴射する。雪質調整ノズル40は、筒状体18の外側に位置しているため、筒状体18内を流れる雪が雪質調整ノズル40に付着することが抑制される。
【0068】
図6(b)に示すように、複数の雪質調整ノズル40が設けられ、これらが筒状体18の周方向に間隔をおいて配置され、複数方向から筒状体18の半径方向内側に向けて水滴を供給してもよい。雪質調整ノズル40は周方向に1つのみ配置されてもよく、あるいは複数の雪質調整ノズル40が軸方向に並ぶように配置されてもよい。
【0069】
雪質調整ノズル40の近傍には、雪質調整ノズル40の先端に向けて空気を吹き出すパイプ42が配置されている。パイプ42から吹き出された空気が雪質調整ノズル40の先端に吹きかけられることにより、雪質調整ノズル40の先端が氷結することが防止される。パイプ42は、図6(b)では、雪質調整ノズル40に対して周方向に隣接する位置に配置されているが、雪質調整ノズル40の先端に向けて延びる構成であれば、雪質調整ノズル40に対してどちら側に配置されていてもよい。パイプ42には図略の圧縮空気源が接続されている。なお、パイプ42を省略することが可能である。
【0070】
なお、図6(a)は、雪質調整ノズル40が真っ直ぐに延びる筒状体18に設けられた例を示すが、図7は、曲がった形状の筒状体18に設けられた雪質調整ノズル40を示している。この場合、雪質調整ノズル40は、筒状体18においてエルボーのところに配置され、筒状体18の先端18bに向けて水滴を噴射する。
【0071】
図6(a)及び図7は、雪質調整ノズル40が筒状体18の先端18b近傍に配置された例を示すが、雪質調整ノズル40は、筒状体18の先端18bに配置されてもよい。あるいは、雪質調整ノズル40は、(先端18bから離れて)先端18bからさらに下流側に配置され、筒状体18から流出した雪を湿らせてもよい。この場合、雪質調整ノズル40は、管部材22に設けられてもよい。
【0072】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1~第4実施形態の説明を第5実施形態に援用することができる。
【0073】
(第6実施形態)
図8は第6実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
第1実施形態では、試験室2と別箇に造雪室12が設けられた降雪環境試験装置1について説明したが、第6実施形態では、造雪室12が設けられていない。つまり、試験室2内が、水滴から雪を生成する温度環境に調整されている。このため、試験室2の空調機13は、試験室2内の空気を、雪が生成可能な温度に冷却するように構成されている。
【0075】
筒状体18は、試験室2内に配置され、試験室2に開口する基端18aを通して筒状体18内に試験室2内の空気が流入する。筒状体18は、基端18aが上側に位置するように上下方向に延びる姿勢で配置されている。そして、造雪用ノズル20は、下に向けて筒状体18内に水滴を噴射する。筒状体18の先端18b(下端)には管部材22が接続されておらず、筒状体18から流出した雪を伴う空気は、その下方に配置される供試体に向けて流れる。
【0076】
なお、図9に示すように、雪質調整ノズル40が設けられていてもよい。この場合、雪質調整ノズル40は、筒状体18の先端18bよりも下流側に配置され、筒状体18から流出した雪に向けて水滴を噴き出す。この構成に代え、雪質調整ノズル40は、先端18bと基端18aとの間の位置に配置されて、筒状体18に形成された貫通孔を通して筒状体18内を流れる雪に水滴を供給してもよい。
【0077】
筒状体18は、先端18bが試験室2内に配置される供試体Wに向けて開口していてもよいが、図10に示すように供試体Wと異なる方向に向けて開口していてもよい。この場合、試験室2内には、筒状体18の先端18bから流れ出た空気を供試体Wに向けた気流に変える送風機44が配置される。これにより、筒状体18から流れ出た雪は、供試体Wの正面(又は側面)に吹き付けられる。なお、この場合でも、筒状体18は、先端18bが供試体Wに向けて空気が流れるように開口している。また、筒状体18が造雪室12と試験室2に跨って配置され、基端18aが造雪室12に開口し先端18bが試験室2に開口している。そのため、筒状体18には、造雪室12内の空気が流入し、雪を伴う空気を試験室2内に流出させる。
【0078】
図10では、筒状体18の先端18bが送風機44の吹き出し側に向いている構成となっているが、図11に示すように、筒状体18の先端18bは、送風機44の吸込側に向いていてもよい。図11の形態では、筒状体18の先端18bと送風機44とをつなぐ管部材22が設けられていてもよい。つまり、筒状体18から流出した空気が管部材22を通して送風機44に吸引されてもよい。また、この形態に代えて、筒状体18の先端を直接送風機44に接続してもよい。つまり、送風機44を介して、筒状体18の先端が、供試体W若しくは試験室2に向けて空気が流れるように開口する形態としてもよい。図10図11の送風機44は、回転数が変えられる構成であってもよく、その場合、供試体Wに吹き付けられる風速を変えることができる。なお、送風機44は試験室2内に配置する形態に限られず、後述の図17に示すように、送風機室54に配置する構成としてもよい。
【0079】
なお、図10では、筒状体18が垂直方向に延びる姿勢となっており、図11では、筒状体18が斜め方向に延びる姿勢となっているが、これらに限られるものではない。また、筒状体18の先端18bは、試験室2内で開口するとともに試験室2内に直接空気を流出させる構成に代え、先端18bに、試験室2内に配設された管部材22が接続されて、この管部材22を通して試験室2内に空気を流出させてもよい。
【0080】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1~第5実施形態の説明を第6実施形態に援用することができる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、第1~第5実施形態では、造雪室12が試験室2の上側に配置された構成の降雪環境試験装置1に造雪装置10が適用された例を説明したが、造雪室12は、試験室2の側方に配置されていてもよい。この場合、筒状体18は、降雪フード4よりも高い位置でもよく、或いは、降雪フード4と同じ高さ又は降雪フード4よりも下方に位置していてもよい。この場合、筒状体18と降雪フード4とを接続する管部材22には送風機36が設けられることになる。
【0082】
また、第1~第5実施形態において、降雪フード4は省略されてもよい。
【0083】
第1~第6実施形態では、1つの筒状体18及び造雪用ノズル20が設けられた例について説明したが、1つの筒状体18に複数の造雪用ノズル20が設けられてもよい。また、複数の筒状体18が設けられ、各筒状体18に造雪用ノズル20が配置されてもよい。
【0084】
前記第1~第6実施形態では、筒状体18内で生成された雪片がそのままの大きさで試験室2内に流入するが、これに限られるものではない。例えば、図12に示すように、筒状体18で生成された雪を一時的に捕捉するとともに、捕捉された雪を成長させる雪成長部材50が設けられていてもよい。雪成長部材50は、雪が付着可能なメッシュ状の部材、繊維材、又はフッ素樹脂加工が施されたシート部材によって構成されており、筒状体18から流出した空気が流れる位置に配置されている。雪成長部材50は、長方形、正方形、六角形、八角形等の多角形状のメッシュ状部材によって構成されていてもよい。また、雪成長部材50には、図13に示すように、矩形状のメッシュ状部材の一辺から切り込まれた形状のスリット50aが形成されていてもよい。この場合、雪成長部材50は、スリット50aの両側に位置する部位が気流によって揺れながら、雪を捕捉する。なお、雪成長部材50は、筒状体18内に配置されていてもよい。この場合、図14に示すように、半円形状のメッシュ状部材によって構成されて、筒状体18の内面に触れないように筒状体18の内側に配置されていてもよい。
【0085】
筒状体18は、断面円形状の筒状に形成されていてもよく、断面が楕円形等の長円形状の筒状に形成されていてもよく、断面多角形状の筒状に形成されていてもよい。また、筒状体18は、例えば長穴形状の様に、曲線と直線とを組み合わせた断面形状の筒状に形成されていてもよい。
【0086】
筒状体18は、その基端18aが雪を生成させる温度環境に開口されていればよく、筒状体18全体が雪を生成させる温度環境に配置されていなくてもよい。例えば、筒状体18は、複数の空間に跨って配置されていてもよい。
【0087】
雪成長部材50は、筒状体18から吹き出された空気又は筒状体18内を流れる空気によって揺れるように構成されていてもよい。この場合、雪成長部材50に捕捉されて成長した雪は、雪成長部材50が揺れることによって雪成長部材50から落下する。ただし、この構成に限られない。例えば、図12に示すように、雪成長部材50を振動させる振動体52が設けられていてもよい。振動体52は、例えば、雪成長部材50に向けて断続的に圧縮空気を噴出させるノズルであってもよく、あるいは、雪成長部材50を打撃するノッカー又は雪成長部材50を振動させるバイブレータであってもよい。
【0088】
雪成長部材50は、筒状体18の先端18bの近傍に設置されていれば、どのように支持されていてもよい。例えば図15は、雪成長部材50が筒状体18の先端18bに取り付けられた構成を示している。
【0089】
雪成長部材50は、図15に示すように、筒状体18から流出した空気によって揺れるように平たい形状に形成されて、筒状体18の先端18bの中心を横切るように、当該先端18bに取り付けられていてもよい。雪成長部材50は、筒状体18の先端18bにおける中心を横切る位置に取り付けられる必要はなく、中心からずれた位置に取り付けられてもよい。この場合、複数の雪成長部材50が取り付けられてもよい。図15では、雪成長部材50において筒状体18の先端18bを横切る一辺が水平向きになっている構成を示しているが、これに限られるものではなく、筒状体18の先端18bを横切る一辺が垂直の状態で筒状体18に取り付けられていてもよく、あるいは斜めの状態で筒状体18に取り付けられていてもよい。
【0090】
図12図15においては、雪成長部材50が1つのみ設けられた構成が示されているが、複数の雪成長部材50が設けられていてもよい。
【0091】
図16(a)(b)に示すように、雪成長部材50は、先端18bの形状に合わせて筒状に形成されていてもよい。この場合、雪成長部材50は、軸方向に径が同じである筒状に形成されていてもよく、或いは軸方向に径が小さくなるテーパー状に形成されていてもよい。
【0092】
上記の実施形態の降雪環境試験装置1では、筒状体18が、供試体Wに向けて雪を降らせるように配置されるか(例えば図1参照)、又は、筒状体18が、供試体Wに向けて空気を吹き出す送風機44に向けて雪を含む空気を流出させる(例えば図10参照)。一方、図17に示す降雪環境試験装置1は、供試体Wに向けて雪を降らせるように配置された筒状体(第1筒状体)18Aと、供試体Wに向けて空気を吹き出す送風機44に接続された筒状体(第2筒状体)18Bと、を有する。第1筒状体18Aの基端と第2筒状体18Bの基端は、雪を生成させる温度環境である造雪室12に開口している。第1筒状体18Aは2つ設けられているが、1つのみ設けられてもよく、3つ以上配置されてもよい。2つの第1筒状体18Aはそれぞれ降雪フード4に接続されており、第1筒状体18A内で生成された雪は、試験室2内において、降雪フード4を通して供試体Wの上方から供試体Wに向けて落下する。一方、第2筒状体18B内で生成された雪は送風機44に吸引され、送風機44は、吸引した雪を含む空気を供試体Wに向けて吹き出す。したがって、供試体Wに向けて所定の風速で雪を吹き付けることができる。なお、送風機44は試験室2に隣接する送風機室54に配置される。送風機室54は、雪を生成させる温度環境でなくてもよく、省略されてもよい。この場合であっても、第2筒状体18Bは、その基端18aが雪を生成させる温度環境(造雪室12)に開口されているため、第2筒状体18B内で雪を生成することが可能である。
【0093】
第2筒状体18Bは、送風機44に直接接続されてもよく、或いは管部材22を介して送風機44に接続されてもよい。第2筒状体18Bは2つ以上設けられてもよい。この場合、1つの送風機44に複数の第2筒状体18Bが接続されていてもよく、送風機44を複数設け、各送風機44に第2筒状体18Bを接続するようにしてもよい。
【0094】
本実施形態では、供試体Wに向けて雪を降らせるように配置された第1筒状体18Aと、供試体Wに向けて空気を吹き出す送風機44に接続された第2筒状体18Bと、を有するため、必要とされる試験に応じて、降雪態様を選択することができる。具体的には、第1筒状体18Aを使用して降雪させる試験を選択して実施でき、また、第2筒状体18Bを使用して供試体Wに雪を吹き付ける試験を選択して実施することもできる。
【0095】
また、1つの第1筒状体18Aに、造雪用ノズル20が1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。同様に1つの第2筒状体18Bに、造雪用ノズル20が1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
【0096】
さらに、第1筒状体18A及び第2筒状体18Bは、断面円形状の筒状に形成されていてもよく、断面が楕円形等の長円形状の筒状に形成されていてもよく、断面多角形状の筒状に形成されていてもよい。また、筒状体18は、例えば長穴形状の様に、曲線と直線とを組み合わせた断面形状の筒状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 :降雪環境試験装置(環境形成装置)
2 :試験室
4 :降雪フード
10 :造雪装置
18 :筒状体
18a :基端
18b :先端
20 :造雪用ノズル
22 :管部材
30 :抑制手段
30a :送風機
34 :補助冷却手段
40 :雪質調整ノズル
50 :雪成長部材
52 :振動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図17