(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】高温成形用金型
(51)【国際特許分類】
B30B 11/02 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
B30B11/02 A
B30B11/02 F
(21)【出願番号】P 2023209323
(22)【出願日】2023-12-12
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000207425
【氏名又は名称】大同工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】南 拓人
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実用新案登録第2553811(JP,Y2)
【文献】特開昭54-118408(JP,A)
【文献】特開2016-168676(JP,A)
【文献】特開昭56-141998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面を含む外型と、
前記保持面に少なくとも一部が隣接する外側面と、成形室を区画する内側面とを含む内型と、を備え、
前記内型は、複数の分割型の集合体で形成される分割タイプの内型であり、前記保持面が前記内型を取り囲む内壁面であり、
高温成形前の前記外型および前記内型の温度をT、高温成形に伴う温度上昇をΔTとし、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記内型の熱膨張率をα、前記外型の熱膨張率をβとするとき、下記式(1)の関係を満た
し、
前記成形室の中心を通る中心線に沿う方向における、前記内型の外寸をA、前記外型の内寸をBとするとき、下記式(2)の関係を満たす、高温成形用金型において、
前記複数の分割型は、
前記成形室の中心線を挟んで対向して配置された一対の第1分割型と、
前記中心線と交差し、前記一対の第1分割型の一端および他端にそれぞれ隣接するように対向して配置された一対の第2分割型と、を含み、
前記中心線に沿う前記第1分割型の寸法をA1、前記中心線に沿う前記第2分割型の一つの寸法をA2とするとき、下記式(3)の関係を満たし、
温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記第1分割型の熱膨張率がα1、前記第2分割型の熱膨張率がα2であるとき、下記式(4)の関係を満たし、
前記成形室は、前記中心線に沿う方向と、前記中心線と直交する方向とで、前記成形室で成形される成形品の熱膨張率が相違する形状を有する、高温成形用金型。
(1)α>β
(2)α×A×ΔT>β×B×ΔT
(3)α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT
(4)α1×A1×ΔT+2×(α2×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1>β、α2>β)
【請求項2】
請求項1に記載の高温成形用金型において、
複数の分割型は、前記一対の第1分割型と前記一対の第2分割型とで区画された内壁面に沿って配置され、前記成形室を区画する一対の第3分割型および一対の第4分割型をさらに含み、
前記一対の第3分割型は、前記成形室の中心線を挟んで対向して配置され、
前記一対の第4分割型は、前記中心線と交差し、前記一対の第3分割型の一端および他端にそれぞれ隣接するように対向して配置され、
温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記第3分割型および前記第4分割型の熱膨張率をγとし、前記中心線に沿う前記第3分割型の寸法をC1、前記中心線に沿う前記第4分割型の一つの寸法をC2とするとき、下記式(6)または(7)の関係を満たす、高温成形用金型。
(6)α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α<γ)
(7)2×(α×A2×ΔT)+γ×C1×ΔT+2×(γ×C2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α>γ)
【請求項3】
請求項1または2に記載の高温成形用金型において、
前記成形室の内部に配置され、当該成形室を複数の区画に分ける仕切り板をさらに備える、高温成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材を高温で成形する金型に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いた高温成形では、熱膨張の影響で被加工材の金型からの取り出しが困難となることがある。高温成形時、金型は熱膨張する上、成形荷重による弾性変形によって初期寸法よりも大きくなる。成形後の冷却で高温環境を除去したとき、金型の熱収縮量および弾性変形量が被加工材の熱収縮量よりも大きいと、被加工材を金型から取り出せなくなる。このため、金型を内型と外型との二層構造とし、内型を分割型にすると共に、内型と外型とをテーパ嵌合させたテーパ金型構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、テーパ金型は、製作に際してテーパ形状への加工が必要となり、精度を出し難く、加工費が高価となる傾向がある。また、内型と外型とを実際に組み立てての現合仕上げ加工が必要となることがある。この場合、現合調整された内型と外型とのセットでの使用および保管が必須となる。従って、多数の金型を用いて熱間成形を行う成形装置等においては、金型の管理・保管の手間が増大するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、被加工材の取り出しが容易で、管理の容易な高温成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る高温成形用金型は、保持面を含む外型と、前記保持面に少なくとも一部が隣接する外側面と、成形室を区画する内側面とを含む内型と、を備え、前記内型は、複数の分割型の集合体で形成される分割タイプの内型であり、前記保持面が前記内型を取り囲む内壁面であり、高温成形前の前記外型および前記内型の温度をT、高温成形に伴う温度上昇をΔTとし、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記内型の熱膨張率をα、前記外型の熱膨張率をβとするとき、下記式(1)の関係を満たし、前記成形室の中心を通る中心線に沿う方向における、前記内型の外寸をA、前記外型の内寸をBとするとき、下記式(2)の関係を満たす、高温成形用金型において、前記複数の分割型は、前記成形室の中心線を挟んで対向して配置された一対の第1分割型と、前記中心線と交差し、前記一対の第1分割型の一端および他端にそれぞれ隣接するように対向して配置された一対の第2分割型と、を含み、前記中心線に沿う前記第1分割型の寸法をA1、前記中心線に沿う前記第2分割型の一つの寸法をA2とするとき、下記式(3)の関係を満たし、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記第1分割型の熱膨張率がα1、前記第2分割型の熱膨張率がα2であるとき、下記式(4)の関係を満たし、前記成形室は、前記中心線に沿う方向と、前記中心線と直交する方向とで、前記成形室で成形される成形品の熱膨張率が相違する形状を有する。
(1)α>β
(2)α×A×ΔT>β×B×ΔT
(3)α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT
(4)α1×A1×ΔT+2×(α2×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1>β、α2>β)
【0007】
この態様によれば、内型の熱膨張率αが外型の熱膨張率βよりも大きいので、熱間では外型で周囲が拘束された状態で内型が膨張することになる。従って、被加工材を成形室に入れて加熱およびプレスを行った場合、内型の内壁面への被加工材の押し当て力が高まり、精度の良い加工が行える。つまり、成形室の内面形状を良好に被加工材へ転写できる。一方、熱間から冷間に降温すると、内型の方が外型より熱収縮度合いが大きくなる。このため、内型と外型との間に隙間が生じ易くなり、外型からの内型の離型が容易に行える。また、内型と外型との熱膨張率差を利用して成形精度の向上と被加工材の取り出しを実現するので、テーパ金型のような内型と外型との現合仕上げ加工が不要である。従って、内型と外型とのセットでの管理・保管は不要となり、金型の管理の容易化を図ることができる。
【0008】
上記の高温成形用金型において、前記保持面が前記内型を取り囲む内壁面であり、前記成形室の中心を通る中心線に沿う方向における、前記内型の外寸をA、前記外型の内寸をBとするとき、下記式(2)の関係を満たすことが望ましい。
(2)α×A×ΔT>β×B×ΔT
【0009】
この態様によれば、ΔTの温度範囲における熱伸縮量について、内型の外寸の方が外型の内寸よりも大きくなる。このため、熱間においては内型が外型に押し当たって締まり嵌めとなり、金型の強度が向上する。一方、熱間から冷間に降温した際、内型が外型よりも大きく収縮するので、内型を外型から確実に離型させることができる。
【0010】
上記の高温成形用金型において、前記内型は、複数の分割型の集合体で形成される分割タイプの内型であることが望ましい。
【0011】
この態様によれば、内型が分割タイプであるので、被加工材を高温成形した後の成形品の、内型からの離型を容易に行える。
【0012】
上記の高温成形用金型において、前記複数の分割型は、前記成形室の中心線を挟んで対向して配置された一対の第1分割型と、前記中心線と交差し、前記一対の第1分割型の一端および他端にそれぞれ隣接するように対向して配置された一対の第2分割型と、を含み、前記中心線に沿う前記第1分割型の寸法をA1、前記中心線に沿う前記第2分割型の一つの寸法をA2とするとき、下記式(3)の関係を満たす構成として良い。
(3)α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT
【0013】
この態様によれば、内型が一対の第1分割型と一対の第2分割型とのペアで構成される。ΔTの温度範囲における熱伸縮量について、内型を構成する分割型ペアの合計の外寸の方が外型の内寸よりも大きくなる。従って、成形の精度を高めるとともに、分割型ペアからなる内型を外型から確実に離型させることができる。
【0014】
上記の高温成形用金型において、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記第1分割型の熱膨張率がα1、前記第2分割型の熱膨張率がα2であるとき、下記式(4)の関係を満たす構成として良い。
(4)α1×A1×ΔT+2×(α2×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1>β、α2>β)
【0015】
この態様によれば、内型が第1分割型と第2分割型とのペアで構成され、かつ両者の熱膨張率が相違する場合でも、成形の精度を高めるとともに、分割型ペアからなる内型を外型から確実に離型させることができる。
【0016】
上記の高温成形用金型において、前記複数の分割型は、前記成形室の中心を円中心とする円筒型の内型を周方向に複数に分割した円弧状の分割型であって、前記成形室の中心線に沿って対向する一対の円弧分割型を含み、前記中心線上における前記一対の円弧分割型間の距離をA3、前記中心線に沿う前記円弧分割型の一つの寸法をA4とするとき、下記式(5)の関係を満たす構成として良い。
(5)α×(A3+2×A4)×ΔT>β×B×ΔT
【0017】
この態様によれば、円弧状の分割型の組み合わせで内型が構成される場合において、ΔTの温度範囲における熱伸縮量について、当該内型の外寸の方が外型の内寸よりも大きくなる。従って、成形の精度を高めるとともに、分割型ペアからなる内型を外型から確実に離型させることができる。
【0018】
上記の高温成形用金型において、複数の分割型は、前記一対の第1分割型と前記一対の第2分割型とで区画された内壁面に沿って配置され、前記成形室を区画する一対の第3分割型および一対の第4分割型をさらに含み、前記一対の第3分割型は、前記成形室の中心線を挟んで対向して配置され、前記一対の第4分割型は、前記中心線と交差し、前記一対の第3分割型の一端および他端にそれぞれ隣接するように対向して配置され、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における前記第3分割型および前記第4分割型の熱膨張率をγとし、前記中心線に沿う前記第3分割型の寸法をC1、前記中心線に沿う前記第4分割型の一つの寸法をC2とするとき、下記式(6)または(7)の関係を満たす構成として良い。
(6)α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α>γ)
(7)2×(α×A2×ΔT)+γ×C1×ΔT+2×(γ×C2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α<γ)
【0019】
この態様によれば、内型は、一対の第1分割型と一対の第2分割型とで構成される外側型内に、さらに一対の第3分割型と一対の第4分割型とで構成される内側型が配置された、多層構造となる。また、前記外側型と前記内側型との熱膨張率の相違を踏まえて、ΔTの温度範囲における熱伸縮量について、内型のトータルの外寸の方が外型の内寸よりも大きく設定される。従って、成形の精度を高めるとともに、第1~第4分割型からなる内型を外型から確実に離型させることができる。
【0020】
上記の高温成形用金型において、前記成形室の内部に配置され、当該成形室を複数の区画に分ける仕切り板をさらに備えていても良い。
【0021】
この態様によれば、一つの成形室を仕切り板で複数の区画に分けることができる。従って、成形品の生産効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被加工材の取り出しが容易で、管理の容易な高温成形用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係る高温成形用金型が適用される成形装置の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る、断面矩形の成形室を備える高温成形用金型を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例であって、断面円形の成形室を備える高温成形用金型を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例であって、成形室内に仕切り板が配置される高温成形用金型を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る、断面矩形の成形室が分割型の内型で区画される高温成形用金型を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の変形例であって、断面円形の成形室が分割型の内型で区画される高温成形用金型を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の変形例であって、熱膨張率の異なる分割型の内型を用いる高温成形用金型を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の変形例であって、成形室内に仕切り板が配置される高温成形用金型を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る、断面矩形の成形室が2層の分割型の内型で区画される高温成形用金型を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の変形例であって、熱膨張率の異なる分割型の内型を用いる高温成形用金型を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態の変形例であって、熱膨張率の異なる分割型の内型を用いる高温成形用金型を示す断面図である。
【
図13】
図13(A)は、外型の変形例を示す上面図、
図13(B)は、
図13(A)のXIIIB-XIIIB線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る金型は、金属やセラミック等の粉末や固体片等の焼結素材を加熱加圧する焼結や、溶融金属を加圧成形するダイカスト、異なる材種同士または同一の材種同士を接合する拡散接合等に用いられ、数百℃程度の高温で使用される高温成形用の金型である。つまり、金型に収められた加熱状態の被加工材をプレスすることで、当該金型の内壁面形状を被加工材に転写し、精度の良い成形品を生産する用途に用いられる高温成形用金型である。
【0025】
図1は、焼結品の成形等に用いられる成形装置1を概略的に示す縦断面図であって、本発明に係る高温成形用の金型2の好ましい適用用途を示す図である。金型2は、被加工材MPを成形するための成形室20を有する。金型2は、成形室20から外側に向かう方向に、少なくとも内型と外型との2層構造を有する。金型構造の詳細については後述する。
【0026】
成形装置1は、成形室20内の被加工材MPをプレスする上パンチ11と、プレスされる被加工材MPを受ける下パンチ12とを備える。上パンチ11には、プレス力が与えられる上バッキング13が取り付けられている。下パンチ12には、プレス荷重を受けるバッキングを用いる場合と、
図1のように、被加工材に与える荷重を制御するクッション機構で支持される下バッキング14が取り付けられる場合とがある。成形装置1は、さらに金型2の加熱手段を備える。加熱手段は、例えば金型2の通電加熱または誘導加熱装置、あるいは、成形装置1を収容する加熱炉などである。
【0027】
上記のような金型2を用いた高温成形であって、被加工材MPをプレスして成形室20の内壁面に押し付ける成形の場合、金型2は熱膨張する上、プレスの成形荷重による弾性変形によって初期寸法よりも大きくなる。成形後の冷却で、金型2および被加工材MPの寸法が高温環境よりも収縮した状態となる。しかし、金型2の熱収縮量が被加工材MPの熱収縮量よりも大きいと、被加工材MPを金型2から取り出せなくなる。
【0028】
この問題を解決する一つの手段はテーパ金型の使用であるが、既述の通り現合仕上げが必要で、金型管理に手間を要する不具合がある。本発明では、内型および外型の構成素材に熱膨張率差を具備させることで、被加工材MPの精度出しおよび取り出しを容易に行え、且つ、金型管理の手間も簡素化できる高温成形用の金型2を提供する。以下、このような金型2の各種具体例を説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係る、断面矩形の成形室を備える高温成形用金型2Aを示す水平方向の断面図である。金型2Aは、最終的には成形品となる被加工材MPを収容する断面矩形の成形室20を有する。金型2Aは、外型3と、この外型3で周囲が囲われた内型4とで構成されている。
【0030】
外型3は、断面視において矩形の枠体の形状を有し、内型4の保持面となる矩形の内壁面301を有する。内型4は、外型3の内壁面301に隣接する外側面401と、成形室20を区画する内側面402とを含む。内壁面301は、内型4の四つの側面を取り囲んでいる。内型4も、断面視において矩形の枠体の形状を有している。外型3および内型4を構成する金型材料としては、金属系材料、非金属系材料、金属系材料および非金属系材料の複合材料、サーメット系材料、セラミック系材料を例示できる。金属系材料としては、例えば超硬合金、工具鋼、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金などを例示できる。非金属系材料としてはグラファイト、プラスチックフォームドカーボン、CFRP、カーボンコンポジットを例示できる。サーメット系材料としては炭窒化チタン、セラミック系材料としては、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等を各々例示できる。
【0031】
上掲の金型材料のうち、内型4の構成材料としては、所定の温度領域において、外型3の構成材料よりも熱伸縮の大きい材料が選択される。ここで、高温成形前の外型3および内型4の温度をT、高温成形に伴う温度上昇をΔTとする。温度Tは、金型2Aからの成形品の取り出し時の温度でもある。ΔTは、高温成形時と成形品の取り出し時の温度差である。また、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における内型4の熱膨張率をα、外型3の熱膨張率をβとする。このとき、金型2Aは、下記式(1)の関係を満たす。
(1)α>β
【0032】
さらに、成形室20の中心を通る一つの中心線CLに沿う方向における、内型4の外寸をA、外型3の内寸をBとする。このとき、金型2Aは、下記式(2)の関係を満たすことが望ましい。
(2)α×A×ΔT>β×B×ΔT
【0033】
上記の金型2Aによれば、式(1)の通り、内型4の熱膨張率αが外型3の熱膨張率βよりも大きいので、高温成形が行われる熱間では、外型3で周囲が拘束された状態で内型4が内側へ膨張することになる。従って、被加工材MP(
図1)を成形室20に入れて加熱およびプレスを行った場合、内型4の内側面402への被加工材MPの押し当て力が高まる。従って、成形室20の内面形状を良好に被加工材MPへ転写でき、精度の良い加工が行える。また、熱間においては、内型4が外型3に押し当たって締まり嵌めとなり、金型2Aの強度が向上する利点もある。
【0034】
一方、金型冷却後の冷間では、内型4の方が外型3より熱収縮度合いが大きくなる。つまり、式(2)の通り、ΔTの温度範囲における熱伸縮量について、内型4の外寸Aの方が外型3の内寸Bよりも大きくなる。すなわち、熱間から冷間に降温した際には、内型4が外型3よりも大きく収縮する。このため、内型4の外側面401と外型3の内壁面301との間に隙間が生じ易くなり、外型3からの内型4の離型が容易に行える。内型4の熱膨張率αを、被加工材MPの熱膨張率よりも小さく設定すれば、成形室20内において被加工材MPの方が内型4よりも大きく収縮する。従って、非分割型の内型4であっても、被加工材MPの成形品を容易に内型4から取り出すことができる。
【0035】
以上の通り、金型2Aでは、内型4と外型3との熱膨張率差を利用して成形精度の向上と被加工材MPの取り出しを実現する。このため、テーパ金型のような現合仕上げ加工が不要である。従って、内型4と外型3とのセットでの管理・保管は不要となり、金型の管理の容易化を図ることができる。
【0036】
図3は、第1実施形態の変形例であって、水平方向の断面視において円形の成形室20を備える高温成形用金型2Bを示す断面図である。金型2Bは、断面円形の枠体の形状を有する外型3と、この外型3で周囲が囲われた内型4とで構成されている。内型4は、外型3の円筒型の内壁面301に隣接する円筒型の外側面401と、成形室20を区画する円筒型の内側面402とを含む。
【0037】
金型2Bにおいて、内型4の熱膨張率αと、外型3の熱膨張率βとの関係は上掲の式(1)の通りである。また、成形室20の中心を通る中心線CLに沿う内型4の外寸および外型3の内寸の関係、つまり内型4の直径をA、外型の内径をBとしたときの、ΔTの温度範囲における熱伸縮量の関係は、上掲の式(2)の通りである。金型2Bのような断面円形の金型においても、式(1)、さらには式(2)の関係を満たすことで、冷間において内型4が外型3よりも大きく収縮する。従って、被加工材MPの成形品の金型2Bからの取り出し性を向上させることができる。
【0038】
図4は、第1実施形態の他の変形例に係る高温成形用金型2Cを示す断面図である。金型2Cの外型3および内型4の構造自体は、先に
図2に示した金型2Aと同じである。相違する点は、内型4の成形室20内に、仕切り板5が配置されている点である。
図4では、2枚の仕切り板5が中心線CL方向に均等間隔で配置されている例を示している。2枚の仕切り板5により、成形室20は3つの小室20Aに区画されている。各々の小室20Aに被加工材MPが装填され、高温成形が行われる。つまり、金型2Cは、1回の成形で、3個の成形品を同時に生産することができる。
【0039】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る、断面矩形の成形室20が分割型の内型で区画される高温成形用金型2Dを示す水平方向の断面図である。金型2Dは、外型3と、この外型3で周囲が囲われた内型4Aとで構成されている。内型4Aは、外型3の内壁面301に隣接する外側面401と、断面矩形の成形室20を区画する内側面402とを有する。以上の点は、第1実施形態の金型2Aと同様である。金型2Dの内型4Aが、一対の第1分割型41と、一対の第2分割型42との集合体で形成される分割型とされている点で、第1実施形態の金型2Aと相違する。分割型の内型4Aを採用することで、被加工材MPを高温成形した後の成形品の、内型4Aからの取り出しを容易に行える。
【0040】
一対の第1分割型41は、それぞれ断面矩形の金型片であって、成形室20の中心線CLを挟んで対向して配置されている。一対の第2分割型42は、それぞれ断面矩形の金型片であって、中心線CLと交差する方向、より詳しくは中心線CLと直交する方向に配置されている。一つの第2分割型42は、第1分割型41の一端411に隣接して配置され、一対の一端411の間を塞いでいる。他の一つの第2分割型42は、第1分割型41の他端412に隣接して配置され、一対の他端412の間を塞いでいる。
【0041】
第1分割型41および第2分割型42は、同一の金型材料で形成されている。すなわち、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における第1分割型41および第2分割型42の熱膨張率はαである。外型3の熱膨張率はβであり、式(1)の通りα>βの関係に設定されている。熱伸縮量について金型2Dは、中心線CLに沿う第1分割型41の寸法をA1、中心線CLに沿う第2分割型42の一つの寸法をA2とするとき、下記式(3)の関係を満たす。
(3) α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT
【0042】
第2実施形態の金型2Dによれば、一対の第1分割型41と一対の第2分割型42とのペアからなる内型4Aが用いられる。そして、ΔTの温度範囲において、内型4Aを構成する分割型ペアの合計の外寸A1+2×A2の熱伸縮量の方が、外型3の内寸Bの熱伸縮量よりも大きい。従って、被加工材MPの成形の精度を高めるとともに、分割型ペアからなる内型4Aを外型3から確実に離型させることができる。また、内型4Aからの成形品の取り出しも容易となる。
【0043】
図6は、第2実施形態の変形例であって、断面円形の成形室20が分割型の内型4Bで区画される高温成形用金型2Eを示す水平方向の断面図である。金型2Eは、断面円形の枠体の形状を有する外型3と、この外型3で周囲が囲われた断面円形の枠体の形状を有する内型4Bとで構成されている。分割型の内型4Bは、成形室20の中心を円中心とする円筒体を周方向に複数に分割した円弧状の分割片で構成されている。
図6では、周方向に均等に4分割した内型4Bが例示されている。内型4Bは、外型3の円筒型の内壁面301に隣接する円筒型の外側面401と、成形室20を区画する円筒型の内側面402とを含む。内型4Bの分割の態様は任意であり、3分割以下、5分割以上としても良く、均等分割で無くとも良い。
【0044】
具体的には内型4Bは、成形室20の中心を通る一つの中心線CLに沿って対向する一対の第1円弧分割型45と、中心線CLを挟んで対向して配置される一対の第2円弧分割型46とからなる。一対の第1円弧分割型45の周方向の2つの隙間を、一対の第2円弧分割型46がそれぞれ塞ぐ態様で、円環状の内型4Bが構成されている。
【0045】
第1円弧分割型45および第2円弧分割型46は、同一の金型材料で形成されている。すなわち、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における第1円弧分割型45および第2円弧分割型46の熱膨張率はαである。外型3の熱膨張率はβであり、式(1)の通りα>βの関係に設定されている。熱伸縮量について金型2Eは、中心線CL上における第1円弧分割型45間の距離をA3、中心線CLに沿う第1円弧分割型45の一つの寸法(厚さ)をA4とするとき、下記式(5)の関係を満たす。
(5) α×(A3+2×A4)×ΔT>β×B×ΔT
【0046】
図6の金型2Eによれば、第1円弧分割型45および第2円弧分割型46の組み合わせで内型4Bが構成される場合において、ΔTの温度範囲において、当該内型4Bの外寸A3+2×A4の熱伸縮量の方が、外型の内寸Bの熱伸縮量よりも大きい。従って、被加工材MPの成形の精度を高めるとともに、分割型ペアからなる内型4Bを外型3から確実に離型させることができる。また、内型4Bが分割型であるので、当該内型4Bからの成形品の取り出しも容易である。
【0047】
図7は、第2実施形態の変形例であって、熱膨張率の異なる分割型の内型4Aを用いる高温成形用金型2Fを示す水平方向の断面図である。金型2Fの外型3および分割型の内型4Aの構造自体は、先に
図5に示した金型2Dと同じである。相違する点は、第1分割型41の熱膨張率と第2分割型42の熱膨張率とが異なる点である。例えば、成形品の形状、すなわち成形室20の形状によっては、中心線CLに沿う方向と中心線CLと直交する方向とで、熱伸縮量が大きく相違することがある。この場合、分割型の内型4Aにおいては、第1分割型41および第2分割型42の熱膨張率を調整することで、成形品の取り出し性を良好とすることが可能である。
【0048】
熱伸縮量について金型2Fは、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における第1分割型41の熱膨張率がα1、第2分割型42の熱膨張率がα2であるとき、下記式(4)の関係を満たす。
(4)α1×A1×ΔT+2×(α2×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1>β、α2>β)
【0049】
図8は、第2実施形態の他の変形例に係る高温成形用金型2Gを示す断面図である。金型2Gの外型3および分割型の内型4Aの構造自体は、先に
図5に示した金型2Dと同じである。相違する点は、内型4Aの成形室20内に、2枚の仕切り板5が配置されている点である。2枚の仕切り板5により、成形室20は3つの小室20Aに区画されている。各々の小室20Aに被加工材MPが装填され、高温成形が行われる。つまり、金型2Gは、1回の成形で、3個の成形品を同時に生産することができる。
【0050】
金型2Gにおいて、成形室20への収容物の熱膨張率を考慮しても良い。金型2Gでは、仕切り板5と、小室20Aに装填される被加工材MPとが収容物となる。中心線CLに沿う前記収容物の熱伸縮量が、中心線CLに沿う第1分割型41の熱伸縮量よりも小さい場合、内型4Aの外型3からの離型を阻害することが起こり得る。例えば、熱間から冷間へ移行したとき、第1分割型41の熱収縮量よりも前記収容物の熱収縮量が小さいと、結果的に当該収容物が第2分割型42を外型3の内壁面301に押し当てる現象が生じ得る。この場合、前記収容物を含めた内型4Aの熱伸縮量の方が、外型の熱伸縮量よりも大きく設定することが望ましい。つまり、中心線CLに沿う第1分割型41の熱伸縮量に加えて、前記収容物の熱伸縮量を考慮に入れても良い。
【0051】
ここで、仕切り板5の熱膨張率をδ、小室20Aに装填される被加工材MPの熱膨張率をε、中心線CLに沿う仕切り板5の寸法をD、中心線CLに沿う小室20Aの寸法をE、仕切り板5の並列数をN1、小室20Aの並列数をN2とするとき、上掲の式(3)に加えて、下記式(3-1)の関係をさらに満たす構成としても良い。
(3-1) 2×(α×A2×ΔT)+δ×D×ΔT×N1+ε×E×ΔT×N2>β×B×ΔT
【0052】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係る、断面矩形の成形室20が2層の分割型の内型で区画される高温成形用金型2Hを示す断面図である。金型2Hは、外型3と、この外型3で周囲が囲われた内型4Cとで構成されている。内型4Cは、共に分割型の枠体であって、第1内型層40Aと、第1内型層40Aで周囲が囲われた第2内型層40Bとの2層構造を有している。金型2Hは、
図5に示した金型2Dの内型4Aの内側に、さらに分割型の内型を配置した態様である。
【0053】
内型4Cの第1内型層40Aは、一対の第1分割型41と、一対の第2分割型42との集合体で形成されている。一対の第1分割型41は、成形室20の中心線CLを挟んで対向して配置されている。一対の第2分割型42は、中心線CLと直交する方向に配置されている。一つの第2分割型42は、第1分割型41の一端411に隣接して配置され、一対の一端411の間を塞いでいる。他の一つの第2分割型42は、第1分割型41の他端412に隣接して配置され、一対の他端412の間を塞いでいる。
【0054】
第2内型層40Bは、成形室20を区画している。第2内型層40Bは、第1内型層40Aで区画された領域の内側面402沿って配置された、一対の第3分割型43と、一対の第4分割型44との集合体で形成されている。一対の第3分割型43は、それぞれ断面矩形の金型片であって、成形室20の中心線CLを挟んで対向して配置されている。一対の第2分割型42は、それぞれ断面矩形の金型片であって、中心線CLと直交する方向に配置されている。一つの第4分割型44は、第3分割型43の一端431に隣接して配置され、一対の一端431の間を塞いでいる。他の一つの第4分割型44は、第3分割型43の他端432に隣接して配置され、一対の他端432の間を塞いでいる。第2内型層40Bの外側面403は、第1内型層40Aの内側面402に当接する。第2内型層40Bの内側面404は、成形室20を区画する内壁面となる。
【0055】
熱間の金型2Hにおいては、外型3で外方への膨らみが規制された第1内型層40Aが内側へ膨張し、第2内型層40Bを内側へ押し込む。中心線CLの延在方向においては、第2内型層40Bの第3分割型43の一端431および他端432が、第4分割型44に突き当たる。中心線CLと交差する方向においては、第2内型層40Bの側面が第1内型層40Aの内側面402に突き当たる。このため、2層構造の分割式の内型4Cを備える金型2Hによれば、成形室20内の寸法は設計通りの寸法となり、且つ、分割型間に隙間が生じないことからバリ発生を抑制できる利点がある。
【0056】
金型2Hにおいて、第1分割型41および第2分割型42の、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における熱膨張率は共にαである。また、第3分割型43および第4分割型44の、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における熱膨張率は共にγである。なお、α=γであっても良い。外型3の熱膨張率はβであり、式(1)の通り少なくともα>βの関係に設定されている。熱伸縮量について金型2Hは、中心線CLに沿う第1分割型41の寸法をA1、中心線CLに沿う第2分割型42の一つの寸法をA2、中心線CLに沿う第3分割型43の寸法をC1、中心線CLに沿う第4分割型44の一つの寸法をC2とするとき、下記式(6)または(7)の関係を満たすように設定される。
(6) α×A1×ΔT+2×(α×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α>γ)
(7) 2×(α×A2×ΔT)+γ×C1×ΔT+2×(γ×C2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α<γ)
【0057】
金型2Hによれば、内型4Cは一対の第1分割型41と一対の第2分割型42とで構成される第1内型層40A内に、さらに一対の第3分割型43と一対の第4分割型44とで構成される第2内型層40Bが配置された、多層構造となる。また、第1内型層40Aと第2内型層40Bとの熱膨張率の相違を踏まえて、ΔTの温度範囲における熱伸縮量について、内型4Cのトータルの外寸の方が外型3の内寸よりも大きく設定される。従って、成形の精度を高めるとともに、2層の分割型で形成される内型4Cを外型3から確実に離型させることができる。なお、第3実施形態においても、仕切り板5を成形室20に配置して、
図8の第2実施形態の変形例のように、複数の小室20Aを区画してもよい。これにより、1回の成形で、複数個の成形品を同時に生産することができる。
【0058】
図10は、第3実施形態の変形例であって、熱膨張率の異なる分割型を用いて形成された内型4Cを備える高温成形用金型2Iを示す断面図である。金型2Iの外型3および分割型の内型4Cの構造自体は、先に
図9に示した金型2Hと同じである。相違する点は、第1内型層40Aの第1分割型41の熱膨張率と第2分割型42の熱膨張率とが異なる点である。なお、第2内型層40Bの第3分割型43および第4分割型44の熱膨張率は、同一値=γである。
【0059】
熱伸縮量について金型2Iは、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における第1分割型41の熱膨張率がα1、第2分割型42の熱膨張率がα2であるとき、上掲の式(6)、(7)を下記の通り書き換えた式(6-1)または(7-1)の関係を満たすように設定される。
(6-1) α1×A1×ΔT+2×(α2×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1>γ)
(7-1) 2×(α2×A2×ΔT)+γ×C1×ΔT+2×(γ×C2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1<γ)
なお、当該変形例においても、仕切り板5を成形室20に配置して、
図8の第2実施形態の変形例のように、複数の小室20Aを区画してもよい。これにより、1回の成形で、複数個の成形品を同時に生産することができる。
【0060】
図11は、第3実施形態の他の変形例であって、熱膨張率の異なる分割型を用いて形成された内型4Cを備える高温成形用金型2Jを示す断面図である。金型2Jの外型3および分割型の内型4Cの構造自体は、先に
図9に示した金型2Hと同じである。相違する点は、第1内型層40Aの第1分割型41の熱膨張率と第2分割型42の熱膨張率とが異なるとともに、第2内型層40Bの第3分割型43の熱膨張率と第4分割型44の熱膨張率とが異なる点、さらに、成形室20に2枚の仕切り板5が配置されている点である。
【0061】
金型2Jにおいて、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における第1分割型41の熱膨張率がα1、第2分割型42の熱膨張率がα2、第3分割型43の熱膨張率がγ1、第4分割型44の熱膨張率がγ2であるとする。この場合、熱伸縮量について金型2Jは、上掲の式(6)、(7)を下記の通り書き換えた式(6-2)または(7-2)の関係を満たすように設定される。
(6-2) α1×A1×ΔT+2×(α2×A2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1×A1 > γ1×C1+2×γ2×C2)
(7-2) 2×(α2×A2×ΔT)+γ1×C1×ΔT+2×(γ2×C2×ΔT)>β×B×ΔT(但し、α1×A1 < γ1×C1+2×γ2×C2)
【0062】
第3実施形態のさらなる他の変形例として、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における第1分割型41および第2分割型42の熱膨張率を同一値=αとし、第3分割型43の熱膨張率をγ1、第4分割型44の熱膨張率をγ2(γ1≠γ2)とした高温成形用金型としても良い。また、仕切り板5を成形室20に配置して小室20Aを区画することにより、1回の成形で、複数個の成形品を同時に生産することができる。
【0063】
[外型の変形例]
続いて、外型3の変形例を示す。上記実施形態では、外型3は内型4の四方を完全に取り囲む態様を例示した。外型3は、上掲のような完全包囲型でなくとも良く、内型4を保持する保持面を有していれば良い。
【0064】
図12(A)は、変形例に係る外型3Aを有する高温成形用金型2Kを示す上面図、
図12(B)は、
図12(A)のXIIB-XIIB線断面図である。金型2Kは、外型3Aと、この外型3Aで保持される内型4Dとで構成されている。外型3Aは、上面視で略正方形の直方体からなる外型ベース31と、外型ベース31から立設された規制板32とを含む。規制板32は、断面矩形の直方体であり、外型ベース31の4つの辺の中央領域からそれぞれ立設されている。規制板32の内面は、内型4を保持する保持面32Aである。
【0065】
内型4Dは、一対の第1分割型41Aおよび一対の第2分割型42Aとで形成され、成形室20を区画している。第1分割型41Aおよび第2分割型42Aの外側面は、それぞれに対応して配置されている規制板32の保持面32Aに隣接している。第1分割型41Aおよび第2分割型42Aは、それぞれ規制板32より小サイズであり、両者のサイズ差を埋めるスペーサ6が、内型4Dの四隅に配設されている。
【0066】
金型2Kにおいて、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における内型4Dの第1分割型41Aおよび第2分割型42Aの熱膨張率をα、外型3Aの熱膨張率をβとする。この場合、式(1)の通りα>βの関係に設定される。熱伸縮量については、
図5に示す金型2Dの関係を準用できる。すなわち、第1分割型41Aの寸法をA1、第2分割型42Aの一つの寸法をA2、対向する一対の規制板32の保持面32A間の寸法をBとするとき、金型2Kは上掲の式(3)の関係を満たす。
【0067】
図13(A)は、他の変形例に係る外型3Bを有する高温成形用金型2Lを示す上面図、
図13(B)は、
図13(A)のXIIIB-XIIIB線断面図である。金型2Lは、外型3Bと、この外型3Bで保持される内型4Eとで構成されている。外型3Bは、上面視で略正方形の直方体からなる外型ベース310と、外型ベース310から立設された規制棒33とを含む。規制棒33は、円柱体であり、外型ベース310の4つの辺の各々から2本ずつ立設されている。
【0068】
内型4Eは、一対の第1分割型41Bおよび一対の第2分割型42Bとで形成され、成形室20を区画している。第1分割型41Bおよび第2分割型42Bの外側面は、それぞれに対応して配置されている規制棒33の内側周面に隣接している。本変形例では、規制棒33の内側周面が内型4Eの保持面である。
【0069】
金型2Lにおいて、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における内型4Eの第1分割型41Bおよび第2分割型42Bの熱膨張率をα、外型3Bの熱膨張率をβとする。この場合、式(1)の通りα>βの関係に設定される。熱伸縮量については、
図5に示す金型2Dの関係を準用できる。すなわち、第1分割型41Bの寸法をA1、第2分割型42Bの一つの寸法をA2、対向する一対の規制棒33の内側周面間の寸法をBとするとき、金型2Lは上掲の式(3)の関係を満たす。
【0070】
上記の各実施形態では、成形室20を水平断面視において矩形や円形のものとして説明したが、断面形状はこれらに限定されるものではない。成形室20の断面形状は、成形品の輪郭に応じて適宜設定される。したがって、上記各実施形態で例示した内型の断面視形状は、成形品の輪郭に応じて適宜設定される。
【符号の説明】
【0071】
1 成形装置1
2、2A~2L 金型
20 成形室
20A 小室(複数の区画)
3、3A、3B 外型
301 内壁面(保持面)
4、4A~4E 内型
401 外側面
402 内側面
40A 第1内型層
40B 第2内型層
41 第1分割型
411 一端
412 他端
42 第2分割型
43 第3分割型
44 第4分割型
45 第1円弧分割型
46 第2円弧分割型
5 仕切り板
【要約】
【課題】被加工材の取り出しが容易で、管理の容易な高温成形用金型を提供する。
【解決手段】高温成形用金型2Aは、保持面としての内壁面301を含む外型3と、内壁面301に少なくとも一部が隣接する外側面401と、成形室20を区画する内側面402とを含む内型3と、を備える。高温成形前の外型3および内型4の温度をT、高温成形に伴う温度上昇をΔTとし、温度Tから温度T+ΔTまでの温度領域における内型4の熱膨張率をα、外型3の熱膨張率をβとするとき、下記式(1)の関係を満たす。
(1)α>β
【選択図】
図1