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特許7577842半導体デバイスのエピタキシャル構造、その製造方法及び半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】半導体デバイスのエピタキシャル構造、その製造方法及び半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20241028BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L29/80 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023518044
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 CN2021099163
(87)【国際公開番号】W WO2022068256
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】202022206942.9
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011065977.3
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515295706
【氏名又は名称】蘇州能訊高能半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】DYNAX SEMICONDUCTOR,INC.
【住所又は居所原語表記】No.18 Chenfeng Road,Yushan Town,Kunshan City,Jiangsu Province 215300,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 暉
(72)【発明者】
【氏名】李 仕強
(72)【発明者】
【氏名】張 乃千
(72)【発明者】
【氏名】裴 軼
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106373884(CN,A)
【文献】特開2018-046207(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155496(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092953(US,A1)
【文献】特開2016-219690(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104600109(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスのエピタキシャル構造であって、
基板と、
前記基板の片側に位置するエピタキシャル層であって、前記基板の片側に位置する核生成層と、前記核生成層の前記基板から遠い側に位置する緩衝層とを含むエピタキシャル層と、
を含み、
前記緩衝層の厚さ及び前記核生成層の厚さが、当該緩衝層の厚さと核生成層の厚さの積が第1所定値以上であり且つ前記第1所定値よりも大きな第2所定値以下となるような厚さ比になっており、
前記緩衝層は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層とを含み、前記第1タイプの緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1タイプの緩衝層のドーピング濃度は、前記第2タイプの緩衝層のドーピング濃度よりも高く、
前記第1タイプの緩衝層は、少なくとも1層の第1緩衝層を含み、前記第2タイプの緩衝層は、少なくとも1層の第2緩衝層を含み、
前記第1緩衝層のドーピング濃度は、前記第2緩衝層のドーピング濃度よりも高く、
前記第1タイプの緩衝層は、積層して設けられる第1甲緩衝層と第1乙緩衝層とを含み、前記第1甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1甲緩衝層のドーピング濃度は、前記第1乙緩衝層のドーピング濃度以上であり、
前記第2タイプの緩衝層は、積層して設けられる第2甲緩衝層と第2乙緩衝層とを含み、前記第2甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第2甲緩衝層のドーピング濃度は、前記第2乙緩衝層のドーピング濃度よりも高く、
前記第1甲緩衝層、前記第1乙緩衝層、前記第2甲緩衝層及び前記第2乙緩衝層のいずれにも炭素イオンがドーピングされており、
前記第1甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第1ドーピング濃度C1であり、前記第1乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第2ドーピング濃度C2であり、前記第2甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第3ドーピング濃度C3であり、前記第2乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第4ドーピング濃度C4であり、ここで、C1>C2≧C3>C4である、
ことを特徴とする、エピタキシャル構造。
【請求項2】
前記核生成層の厚さをh1(μm)とし、前記緩衝層の厚さをh2(μm)とし、前記核生成層の厚さと前記緩衝層の厚さの積をh1×h2とすると、0.1≦h1×h2≦0.25であることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項3】
h1=0.17/h2であることを特徴とする、請求項2に記載のエピタキシャル構造。
【請求項4】
前記核生成層の厚さをh1とし、前記基板の厚さをh3とし、前記核生成層の厚さを前記基板の厚さで除算した厚さ比をh1/h3とすると、2×10 -5 ≦h1/h3≦5×10 -4 であることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項5】
前記核生成層の厚さをh1とし、前記エピタキシャル層の厚さをh4とし、前記核生成層の厚さを前記エピタキシャル層の厚さで除算した厚さ比をh1/h4とすると、0.05≦h1/h4≦0.3であることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項6】
0.07≦h1/h4≦0.1であることを特徴とする、請求項5に記載のエピタキシャル構造。
【請求項7】
前記核生成層の厚さをh1(nm)とすると、100(nm)≦h1≦150(nm)であることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項8】
前記第1甲緩衝層及び前記第1乙緩衝層には、鉄イオンがさらにドーピングされており、前記第2甲緩衝層及び前記第2乙緩衝層には、鉄イオンがドーピングされておらず、
前記第1甲緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度は、第5ドーピング濃度であり、前記第1乙緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度は、第6ドーピング濃度であり、ここで、前記第5ドーピング濃度は、前記第6ドーピング濃度と同じであることを特徴とする、請求項に記載のエピタキシャル構造。
【請求項9】
前記第1甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度C1(/cm )とし、前記第1甲緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度C5(/cm )とすると、C1/C5=(0.5~1.2)/10であり、
前記第1乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度C2(/cm )とし、前記第1乙緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度C6(/cm )とすると、C2/C6=(0.1~0.3)/10であり、
前記第2甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度C3(/cm )とすると、C3=C2であり、
前記第2乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度C4(/cm )とすると、C4/C3=(1~2)/10であることを特徴とする、請求項に記載のエピタキシャル構造。
【請求項10】
前記第1緩衝層の厚さは、前記第2緩衝層の厚さよりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載のエピタキシャル構造。
【請求項11】
前記第1タイプの緩衝層は、積層して設けられる第1甲緩衝層と第1乙緩衝層とを含み、前記第1甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1甲緩衝層の厚さは、前記第1乙緩衝層の厚さ以上であり、
前記第2タイプの緩衝層は、積層して設けられる第2甲緩衝層と第2乙緩衝層とを含み、前記第2甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第2甲緩衝層の厚さは、前記第2乙緩衝層の厚さよりも大きいことを特徴とする、請求項10に記載のエピタキシャル構造。
【請求項12】
請求項1から1のいずれか1項に記載のエピタキシャル構造を製造するための半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法であって、
基板を提供するステップと、
前記基板の片側に核生成層を製造するステップと、
前記核生成層の前記基板から遠い側に緩衝層を製造するステップと、
前記緩衝層の前記基板から遠い側にスペーサ層を製造するステップと、
前記スペーサ層の前記基板から遠い側に、前記緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成する電位障壁層を製造するステップと、
前記電位障壁層の前記基板から遠い側にキャップ層を製造するステップと、
を含み、
ここで、前記緩衝層の厚さは、前記核生成層の厚さに反比例することを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、半導体の技術分野に属し、特に半導体デバイスのエピタキシャル構造、その製造方法及び半導体デバイスに属する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料である窒化ガリウム(GaN)は、バンドギャップが広く、電子移動度が高く、ブレークダウン電界強度が高く、熱伝導性が優れるなどの利点を有し、強い自発分極効果とピエゾ分極効果を有するため、第1世代半導体材料及び第2世代半導体材料に比べて高周波、高圧、耐高温ハイパワー電子デバイスの製造に適用され、特に、無線周波数と電源の分野において優位性が顕著である。
【0003】
現在、GaN系光電子デバイス及び電力デバイスを製造する際に、GaNエピタキシャル層と基板との間に、熱的不整合及び格子不整合が存在し、エピタキシャル成長過程において発生する熱的不整合応力と格子不整合歪みは、エピタキシャルウェーハの変形を引き起こすことで、エピタキシャル層の均一性が低下し、エピタキシャル製品の歩留まりが低下し、コストが高くなる。そのため、在GaNエピタキシャル層と基板との間に核生成層が導入された。
【0004】
しかし、核生成層の存在により、エピタキシャル層全体の熱抵抗が高くなる恐れがある。この問題を解決するために、当該分野では薄い核生成層を使用する場合が多い。しかし、薄い核生成層には、結晶品質が悪いという問題があり、結晶品質が悪いと、次に成長するGaNの結晶品質に影響を与え、ひいては最終デバイスの信頼性に影響を与える場合がある。現在、電気特性に優れ、信頼性が安定する第3世代半導体デバイスを製造するために、結晶品質が高く、均一性が良好で、工業コストが低い半導体エピタキシャル構造をもとに半導体デバイスの性能と整合する必要がある。
【0005】
したがって、如何に熱抵抗が高くならずに結晶品質が良好でコストが低いエピタキシャル構造を得るかは、早急に解決しなければならない問題となっている。
【0006】
また、AlGaN/GaNヘテロ構造に比較的強い二次元電子ガスが存在するため、通常、AlGaN/GaNヘテロ構造で形成される高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)をデプリーションモードデバイスとして使用している。このデバイスにより高いブレークダウン電圧、より良いスイッチング特性及びより信頼性の高い性能を持たせるために、まず高抵抗のGaN緩衝層を得なければならない。
【0007】
高抵抗のGaN緩衝層を得る方法は様々がある。一般的に使用されている方法は、Cドーピング又はFeドーピングを行うことである。しかし、十分な高抵抗を有するGaN緩衝層を得るために必要なC含有量は、結晶品質を低下させ、ひいては最終的なデバイスの信頼性に影響を与える場合があり、C不純物によって形成される深いエネルギー準位のトラップは、最終デバイスの出力電力などの性能を低下させやすい場合がある。一方、十分な高抵抗を有するGaN緩衝層を得るために必要なFe含有量は、エピタキシャル層表面及び結晶品質の悪化を引き起こし、最終デバイスの性能に与える場合がある。したがって、如何にエピタキシャル層の結晶品質を保証しながら最終デバイスの性能を保証するかは、早急に解決しなければならない問題となっている。
【発明の概要】
【0008】
上記の事情に鑑み、本発明の実施例は、半導体デバイスのエピタキシャル構造、その製造方法及び半導体デバイスを提供することによって、核生成層の熱抵抗及び結晶品質がいずれも良好なエピタキシャル構造を提供し、ひいては緩衝層の高抵抗特性及び結晶品質がいずれも良好なエピタキシャル構造を提供する。
【0009】
第1態様では、本発明の実施例は、半導体デバイスのエピタキシャル構造であって、
基板と、
前記基板の片側に位置するエピタキシャル層であって、前記基板の片側に位置する核生成層と、前記核生成層の前記基板から遠い側に位置する緩衝層とを含むエピタキシャル層と、
を含み、
前記緩衝層の厚さは、前記核生成層の厚さに反比例するエピタキシャル構造を提供する。
選択的に、前記核生成層の厚さはh1、前記緩衝層の厚さはh2であり、
ここで、0.1/h2≦h1≦0.25/h2である。
【0010】
選択的に、h1=0.17/h2である。
【0011】
選択的に、前記核生成層の厚さはh1であり、前記基板の厚さはh3であり、
ここで、2*10-5≦h1/h3≦5*10-4である。
【0012】
選択的に、前記核生成層の厚さはh1であり、前記エピタキシャル層の厚さはh4であり、
ここで、0.05≦h1/h4≦0.3である。
【0013】
選択的に、0.07≦h1/h4≦0.1である。
【0014】
選択的に、前記核生成層の厚さはh1であり、ここで、100nm≦h1≦150nmである。
【0015】
選択的に、前記エピタキシャル層は、
前記緩衝層の前記基板から遠い側に位置するスペーサ層と、
前記スペーサ層の前記基板から遠い側に位置しかつ前記緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成する電位障壁層と、
前記電位障壁層の前記基板から遠い側に位置するキャップ層と、
をさらに含む。
【0016】
選択的に、前記緩衝層は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層とを含み、前記第1タイプの緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1タイプの緩衝層のドーピング濃度は、前記第2タイプの緩衝層のドーピング濃度よりも高い。
【0017】
選択的に、前記第1タイプの緩衝層は、少なくとも1層の第1緩衝層を含み、前記第2タイプの緩衝層は、少なくとも1層の第2緩衝層を含み、
前記第1緩衝層のドーピング濃度は、前記第2緩衝層のドーピング濃度よりも高い。
【0018】
選択的に、前記第1タイプの緩衝層は、積層して設けられる第1甲緩衝層と第1乙緩衝層とを含み、前記第1甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1甲緩衝層のドーピング濃度は、前記第1乙緩衝層のドーピング濃度以上であり、
前記第2タイプの緩衝層は、積層して設けられる第2甲緩衝層と第2乙緩衝層とを含み、前記第2甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第2甲緩衝層のドーピング濃度は、前記第2乙緩衝層のドーピング濃度よりも高い。
【0019】
選択的に、前記第1甲緩衝層、前記第1乙緩衝層、前記第2甲緩衝層及び前記第2乙緩衝層のいずれにも炭素イオンがドーピングされており、
前記第1甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第1ドーピング濃度C1であり、前記第1乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第2ドーピング濃度C2であり、前記第2甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第3ドーピング濃度C3であり、前記第2乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第4ドーピング濃度C4であり、ここで、C1>C2≧C3>C4である。
【0020】
選択的に、前記第1甲緩衝層及び前記第1乙緩衝層には、鉄イオンがさらにドーピングされており、前記第2甲緩衝層及び前記第2乙緩衝層には、鉄イオンがドーピングされておらず、
前記第1甲緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度は、第5ドーピング濃度であり、前記第1乙緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度は、第6ドーピング濃度であり、ここで、前記第5ドーピング濃度は、前記第6ドーピング濃度と同じである。
【0021】
選択的に、前記第1甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第1ドーピング濃度C1であり、前記第1甲緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度は、第5ドーピング濃度C5であり、ここで、C1/C5=(0.5~1.2)/10であり、
前記第1乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第2ドーピング濃度C2であり、前記第1乙緩衝層における鉄イオンのドーピング濃度は、前記第6ドーピング濃度C6であり、ここで、C2/C6=(0.1~0.3)/10であり、
前記第2甲緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第3ドーピング濃度C3であり、ここで、C3=C2であり、
前記第2乙緩衝層における炭素イオンのドーピング濃度は、第4ドーピング濃度C4であり、ここで、C4/C3=(1~2)/10である。
【0022】
選択的に、前記第1緩衝層の厚さは、前記第2緩衝層の厚さよりも大きい。
【0023】
選択的に、前記第1タイプの緩衝層は、積層して設けられる第1甲緩衝層と第1乙緩衝層とを含み、前記第1甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1甲緩衝層の厚さは、前記第1乙緩衝層の厚さ以上であり、
前記第2タイプの緩衝層は、積層して設けられる第2甲緩衝層と第2乙緩衝層とを含み、前記第2甲緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第2甲緩衝層の厚さは、前記第2乙緩衝層の厚さよりも大きい。
【0024】
選択的に、前記第1甲緩衝層の厚さはh1、前記第1乙緩衝層の厚さはh2、前記第2甲緩衝層の厚さはh3、前記第2乙緩衝層の厚さはh4であり、
ここで、h2=h1、2/10≦h3/h2≦9/10、4/10≦h4/h3≦9/10である。
【0025】
第2態様では、本発明の実施例は、第1態様に記載のエピタキシャル構造を含む半導体デバイスをさらに提供する。前記エピタキシャル構造は、基板と、前記基板の片側に順次位置する核生成層、緩衝層、スペーサ層、電位障壁層及びキャップ層とを含む。
前記半導体デバイスは、
前記電位障壁層の前記基板から遠い側に位置するソース電極及びドレイン電極と、
前記キャップ層の前記基板から遠い側に位置しかつ前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置するゲート電極と、
を含む。
【0026】
第3態様では、本発明の実施例は、半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法をさらに提供する。この方法は、
基板を提供するステップと、
前記基板の片側に核生成層を製造するステップと、
前記核生成層の前記基板から遠い側に緩衝層を製造するステップと、
前記緩衝層の前記基板から遠い側にスペーサ層を製造するステップと、
前記スペーサ層の前記基板から遠い側に、前記緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成する造電位障壁層を製造するステップと、
前記電位障壁層の前記基板から遠い側にキャップ層を製造するステップと、
を含み、
ここで、前記緩衝層の厚さは、前記核生成層の厚さに反比例する。
【0027】
本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造及び半導体デバイスでは、核生成層の厚さと緩衝層の厚さとを反比例させることによって、エピタキシャル構造における核生成層の熱抵抗が高くならずに核生成層の結晶品質を向上させることが保証され、ひいてはエピタキシャル構造の品質及び半導体デバイスの信頼性が向上する。
【0028】
また、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造及びその製造方法、半導体デバイスでは、緩衝層が積層して設けられる第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層を含むとともに、第1タイプの緩衝層のドーピング濃度が第2タイプの緩衝層のドーピング濃度よりも高いように設計することによって、エピタキシャル構造における緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証され、ひいてはエピタキシャル構造及び半導体デバイスの品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の構造模式図である。
図2】本発明の実施例で提供される半導体デバイスの構造模式図である。
図3】本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法のフローチャートである。
図4】本発明の実施例で提供される半導体デバイスの製造方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の構造模式図である。
図6】本発明の実施例で提供される半導体デバイスの構造模式図である。
図7】本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法のフローチャートである。
図8】本発明の実施例で提供される半導体デバイスの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面及び実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ここに記載された特定の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されたい。また、説明の便宜上、図面には、すべての構造ではなく、本発明に関連するいくつかの構造のみが示されている。
【0031】
図1は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の構造模式図である。図1に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造は、基板11と、基板11の片側に位置するエピタキシャル層12とを含む。エピタキシャル層12は、基板11の片側に位置する核生成層121と、核生成層12の基板11から遠い側に位置する緩衝層122とを含む。ここで、緩衝層122の厚さは、核生成層121の厚さに反比例する。
【0032】
例示的に、基板11は、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウム、窒化アルミニウムインジウムガリウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、炭化ケイ素、ダイヤモンド、サファイア、ゲルマニウム及びシリコンのうちの1種若しくは複数種の組み合わせ、又はIII族窒化物を成長させることができる任意の材料であってもよく、本発明の実施例では基板11の具体的なタイプを限定しない。
【0033】
エピタキシャル層12は、基板11の片側に位置する。エピタキシャル層12は、具体的に、III-V族化合物系半導体材料を含んでもよい。
【0034】
具体的には、エピタキシャル層12は、基板11の片側に近い核生成層121と、核生成層121の基板11から遠い側に位置する緩衝層122とを含む。ここで、核生成層121は、エピタキシャル層12における核生成層121の上方に位置する他の膜層の結晶品質、表面トポグラフィー及び電気特性などのパラメータに影響を与える。核生成層121は、主に基板11の材料と、エピタキシャル層12のヘテロ接合構造における半導体材料層とを整合させる作用を果たす。緩衝層122は、次に成長する必要がある半導体材料層を接着する作用を果たす。
【0035】
さらに、核生成層121の材料は、窒化アルミニウムであってもよく、緩衝層122の材料は、窒化ガリウムであってもよい。
【0036】
AlN核生成層の存在によりエピタキシャル層12全体の熱抵抗は高くなる。この問題を緩和するために、当該分野では薄いAlNをAlN核生成層としてする場合が多い。しかし、薄いAlN核生成層では、高い結晶品質を得ることが非常に困難である。AlN核生成層の厚さを増加させることは、結晶品質を向上させる方法の一つである。しかし、単にAlN厚さを増加させると、熱抵抗は高くなり、デバイスの性能に与える場合がある。本発明の実施例では、エピタキシャル層12における核生成層121の厚さと緩衝層122の厚さとが反比例するように創造的に設計される。即ち、核生成層121の厚さを増加させた後、緩衝層122の厚さを減少させる必要があり、核生成層121の厚さを減少させた後、緩衝層122の厚さを増加させる必要がある。大量の検証により、エピタキシャル層12における核生成層121の厚さが緩衝層122の厚さに反比例する場合、熱抵抗が高くならずに、核生成層121の結晶品質が向上し、核生成層121の上方に位置する他のエピタキシャル層の結晶品質、表面トポグラフィー及び電気特性が良好することが保証され、エピタキシャル構造及び半導体デバイス全体の品質が良好で信頼性が高いことが保証される。
【0037】
以上のことから、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造において、核生成層の厚さと緩衝層の厚さとを反比例させることにより、エピタキシャル構造における核生成層の熱抵抗が高くならずに、核生成層の結晶品質が向上し、ひいてはエピタキシャル構造及び半導体デバイスの品質が向上する。
【0038】
上記の実施例をもとに、核生成層121の厚さはh1、緩衝層122の厚さはh2であり、ここで、0.1/h2≦h1≦0.25/h2である。
【0039】
例示的に、エピタキシャル層12における核生成層121の厚さと、緩衝層122の厚さとが反比例することについて、核生成層121の厚さh1と緩衝層122の厚さh2が0.1/h2≦h1≦0.25/h2を満たすように設計することができる。核生成層121の厚さh1と緩衝層122の厚さh2とが上記の比例関係を満たす場合、核生成層121の熱抵抗が高くならずに核生成層121の結晶品質を向上させることが保証され、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの高信頼性が保証される。
【0040】
具体的には、核生成層121の厚さh1と緩衝層122の厚さh2とは0.1/h2≦h1≦0.25/h2を満たし、h1=0.1/h2、h1=0.15/h2、h1=0.17/h2、h1=0.2/h2又はh1=0.25/h2であってもよく、本発明の実施例では、核生成層121の厚さh1と緩衝層122の厚さh2との具体的な比例関係を限定せず、核生成層121の厚さh1と緩衝層122の厚さh2とが0.1/h2≦h1≦0.25/h2を満たせばよい。このようにして、核生成層121の熱抵抗が高くならずに核生成層121の結晶品質を向上させることが保証され、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの高信頼性が保証される。
【0041】
上記の実施例をもとに、好ましくは、核生成層121の厚さh1と緩衝層122の厚さh2とは、h1=0.17/h2を満たしてもよい。これによって、核生成層121の熱抵抗と結晶品質が最適なバランス状態にあることが保証され、核生成層121の熱抵抗が高くならずに核生成層121の結晶品質が最適になるか、又は核生成層121の結晶品質が良好でありながら熱抵抗が最小であることが保証され、核生成層121の品質が最適であることが保証され、ひいてはエピタキシャル構造及び半導体デバイス全体の信頼性が最適であることが保証される。
【0042】
選択的に、核生成層121の厚さはh1、基板の厚さはh3であり、ここで、2*10-5≦h1/h3≦5*10-4である。
【0043】
例示的に、核生成層121の厚さh1と基板11の厚さh3とが2*10-5≦h1/h3≦5*10-4を満たすように合理的に設計することによって、核生成層121の熱抵抗及び結晶品質が良好であることが保証されながら、核生成層121が基板11と十分に整合することができ、さらにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0044】
具体的には、核生成層121の厚さh1と基板11の厚さh3とは2*10-5≦h1/h3≦5*10-4を満たし、h1/h3=2*10-5、h1/h3=5*10-5、h1/h3=1*10-4、h1/h3=3*10-4又はh1/h3=5*10-4であってもよい。本発明の実施例では、核生成層121の厚さh1と基板11の厚さh3との具体的な比例関係を限定せず、核生成層121の厚さh1と基板11の厚さh3とが2*10-5≦h1/h3≦5*10-4を満たせばよい。
【0045】
選択的に、核生成層121の厚さはh1、エピタキシャル層12の厚さはh4であり、ここで、0.05≦h1/h4≦0.3である。
【0046】
例示的に、核生成層121の厚さh1とエピタキシャル層12の厚さh4とが0.05≦h1/h4≦0.3を満たすように合理的に設計することによって、核生成層121の熱抵抗及び結晶品質が良好であることが保証されながら、核生成層121の厚さがエピタキシャル層12全体の厚さと十分に整合することができ、エピタキシャル層12における核生成層121以外の他の膜層が適切な厚さ範囲を有することが保証され、エピタキシャル層12全体の高品質、並びにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの高信頼性が保証される。
【0047】
具体的には、核生成層121の厚さh1とエピタキシャル層12の厚さh4とは0.05≦h1/h4≦0.3を満たし、h1/h4=0.05、又はh1/h4=0.1、h1/h4=0.2、又はh1/h4=0.3であってもよい。本発明の実施例では、核生成層121の厚さh1とエピタキシャル層12の厚さh4との具体的な比例関係を限定せず、核生成層121の厚さh1とエピタキシャル層12の厚さh4とが0.05≦h1/h4≦0.3を満たせばよい。
【0048】
上記の実施例をもとに、好ましくは、核生成層121の厚さh1とエピタキシャル層12の厚さh4とは、0.07≦h1/h4≦0.1を満たす。これによって、核生成層121の熱抵抗及び結晶品質が良好であることが保証されながら、核生成層121の厚さがエピタキシャル層12全体の厚さと完璧に整合することができ、さらにエピタキシャル層12における核生成層121以外の他の膜層が適切な厚さ範囲を有することが保証され、さらにエピタキシャル層12全体の品質が向上し、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性が向上することが保証される。
【0049】
選択的に、基板の厚さh3が400umから600umの間である場合、核生成層121の厚さはh1であり、ここで、100nm≦h1≦150nmである。
【0050】
例示的に、核生成層121の厚さh1が100nm≦h1≦150nmを満たすように合理的に設計することによって、核生成層121が比較的低い熱抵抗を有するとともに、高い結晶品質を有することが保証される。
【0051】
具体的には、核生成層121の厚さh1は100nm≦h1≦150nmを満たし、h1=100nm、又はh1=110nm、又はh1=130nm、又はh1=150nmであってもよい。本発明の実施例では、核生成層121の具体的な厚さを限定せず、核生成層121の厚さh1が100nm≦h1≦150nmを満たせばよい。
【0052】
上記の実施例をもとに、図1に示すように、本発明の実施例で提供されるエピタキシャル層12は、緩衝層122の基板11から遠い側に位置するスペーサ層123と、スペーサ層123の基板11から遠い側に位置しかつ緩衝層122と共にヘテロ接合構造を形成する電位障壁層124と、電位障壁層124の基板11から遠い側に位置するキャップ層125とをさらに含む。
【0053】
例示的に、スペーサ層123は、AlNスペーサ層であってもよい。スペーサ層123は、電位障壁を高め、二次元電子ガスの限界性を増加させるとともに、合金散乱を減少させ、移動度を向上させることができる。
【0054】
電位障壁層124は、AlGaN電位障壁層であってもよい。電位障壁層124は、緩衝層122と共にヘテロ接合構造を形成し、二次元電子ガスの移動チャネルを形成する。
キャップ層125の主作用は、表面準位を減少させ、次の半導体デバイスの表面漏電を減少させ、電流コラプスを抑制することでエピタキシャル構造及び半導体デバイスの性能及び信頼性を向上させることである。選択的に、キャップ層125の材料は、III族窒化物であり、好ましくはP型ドーピング窒化ガリウム(P-GaN)である。P-GaN構造は、AlGaN層の電位障壁を効果的に低下させることができる。
【0055】
上記の同じ発明思想に基づいて、本発明の実施例では、半導体デバイスが提供される。本発明の実施例で提供される半導体デバイスは、上記の実施例に記載の半導体デバイスのエピタキシャル構造を含む。図2は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスの構造模式図である。図2に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスは、
基板11と、
基板11の片側に位置するエピタキシャル層12であって、基板11の片側に順次位置する核生成層121と、緩衝層122と、スペーサ層123と、電位障壁層124と、キャップ層125とを含むエピタキシャル層12と、
電位障壁層124の基板11から遠い側に位置するソース電極131及びドレイン電極132と、
キャップ層125の基板11から遠い側に位置するとともに、ソース電極131とドレイン電極132との間に位置するゲート電極133と、
を含む。
【0056】
例示的に、ソース電極131及びドレイン電極132は、電位障壁層124の基板11から遠い側に位置する。ソース電極131及びドレイン電極132は、それぞれ電位障壁層124とオーミック接触を形成する。ゲート電極133は、ソース電極131とドレイン電極132との間に位置するとともに、キャップ層125の基板11から遠い側に位置する。ゲート電極133は、キャップ層125とショットキー接触を形成する。
【0057】
上記の同じ発明思想に基づいて、本発明の実施例では、半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法がさらに提供される。図3は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法のフローチャートである。図3に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法は、以下のステップS110及びS120を含んでもよい。
S110:基板を提供する。
例示的に、基板の材料は、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウム、窒化アルミニウムインジウムガリウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、炭化ケイ素、ダイヤモンド、サファイア、ゲルマニウム、シリコンのうちの1種若しくは複数種の組み合わせ、又はIII族窒化物を成長させることができる任意の材料であってもよい。基板の製造方法は、常圧化学気相成長法、亜大気圧化学気相成長法、金属有機化合物気相成長法、低圧化学気相成長法、高密度プラズマ化学気相成長法、超高真空化学気相成長法、プラズマ強化化学気相成長法、触媒化学気相成長法、ハイブリッド物理化学気相成長法、急速熱化学気相成長法、気相エピタキシー法、パルスレーザー堆積法、原子層エピタキシー法、分子線エピタキシー法、スパッタリング法又は蒸発法であってもよい。
【0058】
S120:前記基板の片側にエピタキシャル層を製造する。前記エピタキシャル層は、前記基板の片側に位置する核生成層と、前記核生成層の前記基板から遠い側に位置する緩衝層とを含む。前記緩衝層の厚さは、前記核生成層の厚さに反比例する。
【0059】
核生成層の存在によりエピタキシャル層全体の熱抵抗は高くなり、薄いAlN核生成層では、高い結晶品質を得ることが非常に困難であり、単にAlN厚さを増加させると、熱抵抗は高くなり、デバイスの性能に与える場合がある。本発明の実施例では、エピタキシャル層における核生成層の厚さと緩衝層の厚さとが反比例するように創造的に設計することによって、熱抵抗が高くならずに核生成層の結晶品質を向上させることができ、核生成層の上方に位置する他のエピタキシャル層の結晶品質、表面トポグラフィー及び電気特性が良好することが保証され、エピタキシャル構造及び半導体デバイス全体の品質が良好で信頼性が高いことが保証される。
【0060】
以上のことから、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法において、核生成層の厚さと緩衝層の厚さとを反比例させることにより、エピタキシャル構造における核生成層の熱抵抗が高くならずに、核生成層の結晶品質が向上し、ひいてはエピタキシャル構造及び半導体デバイスの品質が向上する。
【0061】
上記の実施例をもとに、基板の片側にエピタキシャル層を製造することは、
基板の片側に核生成層を製造するステップと、
核生成層の基板から遠い側に緩衝層を製造するステップと、
緩衝層の基板から遠い側にスペーサ層を製造するステップと、
スペーサ層の基板から遠い側に、緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成する電位障壁層を製造するステップと、
電位障壁層の基板から遠い側にキャップ層を製造するステップと、
を含んでもよい。
【0062】
スペーサ層により電位障壁を高め、二次元電子ガスの限界性を向上させ、合金散乱を減少させ、移動度を向上させる。電位障壁層が緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成することにより、二次元電子ガスの移動チャネルを形成する。キャップ層により表面準位を減少させ、次の半導体デバイスの表面漏電を減少させ、電流コラプスを抑制することで、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの性能及び信頼性を向上させる。
【0063】
上記の同じ発明思想に基づいて、本発明の実施例では、半導体デバイスの製造方法がさらに提供される。図4は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスの製造方法のフローチャートである。図4に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスの製造方法は、以下のステップS210からS230を含んでもよい。
S210:基板を提供する。
S220:前記基板の片側にエピタキシャル層を製造し、前記エピタキシャル層は、前記基板の片側に順次位置する核生成層と、緩衝層と、スペーサ層と、電位障壁層と、キャップ層を含む。
S230:前記電位障壁層の前記基板から遠い側にソース電極及びドレイン電極を製造し、前記キャップ層の前記基板から遠い側にゲート電極を製造し、前記ゲート電極は、前記ソース電極と前記ドレイン電極と間に位置する。
【0064】
ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ電位障壁層とオーミック接触を形成し、ゲート電極は、キャップ層とショットキー接触を形成する。
【0065】
エピタキシャル構造の品質及びエピタキシャル構造の使用信頼性をさらに向上させるために、半導体エピタキシャル構造をさらに最適化する。図5は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の構造模式図である。図5に示すように、本発明の実施例で提供されるエピタキシャル構造は、基板11と、基板11の片側に位置するエピタキシャル層12とを含む。エピタキシャル層12は、緩衝層122を含む。緩衝層122は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222とを含む。第1タイプの緩衝層1221は、基板11に近い側に位置し、第1タイプの緩衝層1221のドーピング濃度は、第2タイプの緩衝層1222のドーピング濃度よりも高い。
【0066】
エピタキシャル層12は、基板11の片側に位置する。エピタキシャル層12は、具体的には、III-V族化合物系半導体材料を含んでもよい。
【0067】
具体的には、エピタキシャル層12は、緩衝層122を含む。緩衝層122は、次に成長する必要がある半導体材料層を接着する作用を果たす。
【0068】
緩衝層122は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層1221と、第2タイプの緩衝層1222とを含む。第1タイプの緩衝層1221は、基板11に近い側に位置し、第2タイプの緩衝層1222は、基板11から遠い側に位置する。第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222の材料は同じであってもよく、好ましくは窒化ガリウムであってもよい。さらに、第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222の厚さ及びドーピングは、異なっていてもよい。
【0069】
まず、第1タイプの緩衝層1221及び第2タイプの緩衝層1222のドーピング状況を説明する。
【0070】
高抵抗GaN緩衝層を得るために必要なCドーピング濃度が>1*1019/cmを満たす必要があるが、そうすると、GaN緩衝層の結晶品質が低下する場合がある。高抵抗GaN緩衝層を得るために必要なFeドーピング濃度>1*1019/cmを満たす必要があるが、そうすると、最終的なデバイスの性能に影響を与える場合がある。本発明の実施例において、緩衝層122は、多層の緩衝層を含み、例えば、積層して設けられる第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222とを含み、第1タイプの緩衝層1221が基板11に近い側に位置するとともに、第1タイプの緩衝層1221のドーピング濃度が第2タイプの緩衝層1222のドーピング濃度よりも高くなるように設計することによって、第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222との特定のドーピング濃度関係により高抵抗緩衝層を達成する。例えば、緩衝層を低濃度ドーピングにすることによって、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0071】
以上のことから、本発明の実施例で提供されるエピタキシャル構造において、緩衝層は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層とを含み、第1タイプの緩衝層のドーピング濃度が第2タイプの緩衝層のドーピング濃度よりも高いことによって、エピタキシャル構造における緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証される。また、第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層との特定のドーピング濃度関係により、高抵抗緩衝層を達成する。例えば、緩衝層を低濃度ドーピングすることができる。このようにして、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0072】
上記の実施例をもとに、第1タイプの緩衝層1221は、少なくとも1層の第1緩衝層を含んでもよく、第2タイプの緩衝層1222は、少なくとも1層の第2緩衝層を含んでもよく、第1緩衝層のドーピング濃度は、第2緩衝層のドーピング濃度よりも高い。
【0073】
例示的に、第1タイプの緩衝層1221は、1層又は複数層の第1緩衝層を含んでもよく、第2タイプの緩衝層1222は、1層又は複数層の第2緩衝層を含んでもよく、各層の第1緩衝層のドーピング濃度は、いずれも第2緩衝層のドーピング濃度よりも高い。これによって、緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証される。また、緩衝層は、低濃度ドーピングであってもよい。これによって、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0074】
具体的には、第1タイプの緩衝層1221は、2層の第1緩衝層を含んでもよく、第2タイプの緩衝層1222は、2層の第2緩衝層を含んでもよい。本発明の実施例では、第1タイプの緩衝層1221が2層の第1緩衝層を含み、第2タイプの緩衝層1222が2層の第2緩衝層を含む場合を例として説明する。例示的に、図5に示すように、第1タイプの緩衝層1221は、積層して設けられる第1甲緩衝層1221aと第1乙緩衝層1221bとを含み、第1甲緩衝層1221aは、基板11に近い側に位置する。第1甲緩衝層1221aのドーピング濃度は、第1乙緩衝層1221bのドーピング濃度以上である。第2タイプの緩衝層1222は、積層して設けられる第2甲緩衝層1222aと第2乙緩衝層1222bとを含み、第2甲緩衝層1222aは、基板11に近い側に位置する。第2甲緩衝層1222aのドーピング濃度は、第2乙緩衝層1222bのドーピング濃度よりも高い。
【0075】
例示的に、図5に示すように、緩衝層122は、下から上へ順次、第1甲緩衝層1221aと、第1乙緩衝層1221bと、第2甲緩衝層1222aと、第2乙緩衝層1222bとを含む。第1甲緩衝層1221a及び第1乙緩衝層1221bのいずれか1層のドーピング濃度は、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bのいずれか1層のドーピング濃度よりも高く、第1甲緩衝層1221aのドーピング濃度は、第1乙緩衝層1221bのドーピング濃度以上であり、第2甲緩衝層1222aのドーピング濃度は、第2乙緩衝層1222bのドーピング濃度よりも高い。このようにして、緩衝層122における下層に位置する緩衝層のドーピング濃度は、いずれも上層に位置する緩衝層のドーピング濃度よりも低くない。さらに、第1甲緩衝層1221a、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bは、基板から離れる方向においてこの4層の緩衝層のドーピング濃度が順に低くなる。このように、緩衝層における特定のドーピング濃度関係により高抵抗緩衝層を達成するが、緩衝層の具体的なドーピング濃度を要求しない。これによって、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0076】
上記の実施例をもとに、第1甲緩衝層1221a、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bのいずれにも炭素イオンがドーピングされてもよい。第1甲緩衝層1221aのドーピング濃度はC1、第1乙緩衝層1221bのドーピング濃度はC2、第2甲緩衝層1222aのドーピング濃度はC3、第2乙緩衝層1222bのドーピング濃度はC4であり、ここで、C1>C2≧C3>C4である。
【0077】
例示的に、第1甲緩衝層1221aのドーピング濃度C1、第1乙緩衝層1221bのドーピング濃度C2、第2甲緩衝層1222aのドーピング濃度C3及び第2乙緩衝層1222bのドーピング濃度C4がC1>C2≧C3>C4を満たすように設計することによって、緩衝層122における下層に位置する緩衝層のドーピング濃度は、いずれも上層に位置する緩衝層のドーピング濃度よりも低くないことが保証される。第1甲緩衝層1221a、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bのドーピング濃度関係を合理的に設計することによって、従来の高抵抗GaN緩衝層と同じ作用が達成されながら、結晶品質が低下しないことが保証される。
【0078】
上記の実施例をもとに、第1甲緩衝層1221a及び第1乙緩衝層1221bには、鉄イオンがさらにドーピングされており、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bには、鉄イオンがドーピングされていない。第1甲緩衝層における1221a鉄イオンのドーピング濃度は第5ドーピング濃度であり、第1乙緩衝層1221bにおける鉄イオンのドーピング濃度は第6ドーピング濃度であり、ここで、第5ドーピング濃度と第6ドーピング濃度は同じである。
【0079】
例示的に、第1甲緩衝層1221a及び第1乙緩衝層1221bには、同じ濃度の鉄イオンがドーピングされてもよい。第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bには、鉄イオンがドーピングされていない。各緩衝層におけるドーピング成分を合理的に設計することによって、従来の高抵抗GaN緩衝層と同じ作用が達成されながら、結晶品質が低下しないことが保証される。
【0080】
さらに、第1甲緩衝層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度は、第1ドーピング濃度C1であり、第1甲緩衝層における1221a鉄イオンのドーピング濃度は、第5ドーピング濃度C5であり、ここで、C1/C5=(0.5~1.2)/10である。第1乙緩衝層1221bにおける炭素イオンのドーピング濃度は、第2ドーピング濃度C2であり、第1乙緩衝層1221bにおける鉄イオンのドーピング濃度は、第6ドーピング濃度C6であり、ここで、C2/C6=(0.1~0.3)/10である。第2甲緩衝層1222aにおける炭素イオンのドーピング濃度は、第3ドーピング濃度C3であり、ここで、C3=C2である。第2乙緩衝層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度は、第4ドーピング濃度C4であり、ここで、C4/C3=(1~2)/10である。同一緩衝層における炭素イオンと鉄イオンとのドーピング比、及び異なる緩衝層における炭素イオンのドーピング比を合理的に設計することによって、最終的に優れた高抵抗緩衝層が保証され、緩衝層の結晶品質が良好であり、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの良好な品質及び高信頼が保証される。
【0081】
さらに、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度は、いずれも第1甲緩衝層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度に直接又は間接関係があり、第1甲緩衝層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度は、第1甲緩衝層1221aにおける鉄イオンのドーピング濃度に関係があるため、第1甲緩衝層1221aにおける鉄イオンのドーピング濃度が変化すると、第1甲緩衝層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度を対応して調整する必要があり、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度も対応して調整する必要がある。例えば、第1甲緩衝層1221aにおける鉄イオンのドーピング濃度が2倍のドーピング濃度に高くなる場合、第1甲緩衝層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度を対応して調整する必要があり、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度も対応して調整する必要がある。
【0082】
具体的には、第1甲ドーピング層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度C1と鉄イオンのドーピング濃度C5とはC1/C5=(0.5~1.2)/10を満たし、C1/C5=0.5/10でも、C1/C5=0.8/10でも、C1/C5=1.0/10でもC1/C5=1.2/10であってもよい。本発明の実施例では、第1甲ドーピング層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度C1と鉄イオンのドーピング濃度C5との具体的なドーピング比を限定せず、C1/C5=(0.5~1.2)/10を満たせばよい。さらに、第1乙ドーピング層1221bにおける炭素イオンのドーピング濃度C2と鉄イオンのドーピング濃度C6とは、C2/C6=(0.1~0.3)/10を満たし、C2/C6=0.1/10でも、C2/C6=0.2/10でも、C2/C6=0.3/10であってもよい。本発明の実施例では、第1乙ドーピング層1221bにおける炭素イオンのドーピング濃度C2と鉄イオンのドーピング濃度C6との具体的なドーピング比を限定せず、C2/C6=(0.1~0.3)/10を満たせばよい。さらに、第2乙ドーピング層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度C4と第2甲ドーピング層1222aにおける炭素イオンのドーピング濃度C3とは、C4/C3=(1~2)/10を満たし、C4/C3=1/10でも、C4/C3=1.5/10でも、C4/C3=2/10であってもよい。本発明の実施例では、第2乙ドーピング層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度C4と第2甲ドーピング層1222aにおける炭素イオンのドーピング濃度C3との具体的なドーピング比を限定せず、C4/C3=(1~2)/10を満たせばよい。
【0083】
さらに、第1甲緩衝層1221aにおける鉄イオンのドーピング濃度C5はC5=1*1018/cm~1*1019/cmを満たしてもよく、第1乙緩衝層1221bにおける鉄イオンのドーピング濃度C6はC6=1*1018/cm~1*1019/cmを満たしてもよい。第1甲緩衝層1221aにおける鉄イオンのドーピング濃度及び第1乙緩衝層1221bにおける鉄イオンのドーピング濃度はいずれも低濃度ドーピングであることによって、各緩衝層の結晶品質に影響を与えることなく、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの性能の安定性が保証される。実施可能な実施形態として、第1甲緩衝層1221aにおける炭素イオンのドーピング濃度C1は2*1017/cm、第1甲緩衝層1221aにおける鉄イオンのドーピング濃度C5は2*1018/cm、第1乙緩衝層1221bにおける炭素イオンのドーピング濃度C2は5*1016/cm、第1乙緩衝層1221bにおける鉄イオンのドーピング濃度C6は2*1018/cm、第2甲緩衝層1222aにおける炭素イオンのドーピング濃度C3は5*1016/cm、第2甲緩衝層1222aにおける鉄イオンのドーピング濃度は0、第2乙緩衝層1222bにおける炭素イオンのドーピング濃度C4は2.5*1016/cm、第2乙緩衝層1222bにおける鉄イオンのドーピング濃度は0であってもよい。
【0084】
上記の実施例により各緩衝層におけるドーピング状況を説明した。各緩衝層におけるドーピング濃度を合理的に設計することによって、エピタキシャル構造における緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証され、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0085】
以下、第1タイプの緩衝層1221及び第2タイプの緩衝層1222の厚さ状況を説明する。
【0086】
選択的に、第1緩衝層の厚さは、第2緩衝層の厚さよりも大きい。
【0087】
例示的に、第1タイプの緩衝層1221は、1層又は複数層の第1緩衝層を含んでもよく、第2タイプの緩衝層1222は、1層又は複数層の第2緩衝層を含んでもよい。各層の第1緩衝層の厚さは、いずれも第2緩衝層の厚さよりも大きい。これによって、緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証される。また、緩衝層は、低濃度ドーピングであってもよい。このようにして、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0088】
具体的には、第1タイプの緩衝層1221は、2層の第1緩衝層を含んでもよく、第2タイプの緩衝層1222は、2層の第2緩衝層を含んでもよい。本発明の実施例では、第1タイプの緩衝層1221が2層の第1緩衝層を含み、第2タイプの緩衝層1222が2層の第2緩衝層を含む場合を例として説明する。例示的に、図5に示すように、第1タイプの緩衝層1221は、積層して設けられる第1甲緩衝層1221aと、第1乙緩衝層1221bとを含む。第1甲緩衝層1221aは、基板11に近い側に位置する。第1甲緩衝層1221aの厚さは、第1乙緩衝層1221bの厚さ以上である。第2タイプの緩衝層1222は、積層して設けられる第2甲緩衝層1222aと、第2乙緩衝層1222bとを含む。第2甲緩衝層1222aは、基板11に近い側に位置する。第2甲緩衝層1222aの厚さは、第2乙緩衝層1222bの厚さよりも大きい。
【0089】
例示的に、図5に示すように、緩衝層122は、下から上へ順に第1甲緩衝層1221aと、第1乙緩衝層1221bと、第2甲緩衝層1222aと、第2乙緩衝層1222bとを含んでもよい。第1甲緩衝層1221a及び第1乙緩衝層1221bのいずれか1層の厚さは、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bのいずれか1層の厚さよりも大きく、第1甲緩衝層1221aの厚さは、第1乙緩衝層1221bの厚さ以上であり、第2甲緩衝層1222aの厚さは、第2乙緩衝層1222bの厚さよりも大きい。このようにして、緩衝層122における下層に位置する緩衝層の厚さは、いずれも上層に位置する緩衝層の厚さよりも低くない。例えば、基板に近い第1タイプの甲緩衝層の厚さh1を基準とし、基板から離れる方向において各緩衝層の厚さは順に小さくなる。即ち、第1タイプの甲緩衝層の厚さh1は所定厚さであり、他の緩衝層の厚さhは、h1の厚さとの関係h≦h1に応じて決定する。このように、緩衝層における特定の厚さ関係により高抵抗緩衝層を達成し、緩衝層のドーピング濃度を要求せず、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0090】
上記の実施例をもとに、第1甲緩衝層1221aの厚さはh1、第1乙緩衝層1221bの厚さはh2、第2甲緩衝層1222aの厚さはh3、第2乙緩衝層1222bの厚さはh4であり、ここで、h2=h1、2/10≦h3/h2≦9/10、4/10≦h4/h3≦9/10である。
例示的に、第1甲緩衝層1221aの厚さh1、第1乙緩衝層1221bの厚さh2、第2甲緩衝層1222aの厚さh3及び第2乙緩衝層1222bの厚さh4がh2=h1、2/10≦h3/h2≦9/10、410≦h4/h3≦9/10を満たすように、第1甲緩衝層1221a、第1乙緩衝層1221b、第2甲緩衝層1222a及び第2乙緩衝層1222bの間の厚さ比を合理的に設計することによって、従来の高抵抗GaN緩衝層と同じ作用が達成されながら、結晶品質が低下しないことが保証される。
【0091】
具体的には、第1乙緩衝層1221bの厚さh2と第2甲緩衝層1222aの厚さh3とは2/10≦h3/h2≦9/10を満たし、h3/h2=2/10でも、h3/h2=4/10でも、h3/h2=6/10でも、h3/h2=8/10でも、h3/h2=9/10でもよい。本発明の実施例では、第1乙緩衝層1221bの厚さh2と第2甲緩衝層1222aの厚さh3との具体的な比例関係を限定せず、2/10≦h3/h2≦9/10を満たせばよい。さらに、第2甲緩衝層1222aの厚さh3と第2乙緩衝層1222bの厚さh4とは4/10≦h4/h3≦9/10を満たし、h4/h3=4/10でも、h4/h3=6/10でも、h4/h3=8/10でも、h4/h3=9/10でもよい。本発明の実施例では、第2甲緩衝層1222aの厚さh3と第2乙緩衝層1222bの厚さh4との具体的な比例関係を限定せず、4/10≦h4/h3≦9/10を満たせばよい。実施可能な実施形態として、第1甲緩衝層1221aの厚さh1は500nm、第1乙緩衝層1221bの厚さh2は500nm、第2甲緩衝層1222aの厚さh3は400nm、第2乙緩衝層1222bの厚さh4は300nmであってもよい。
【0092】
上記の実施例では、各緩衝層の厚さ状況を説明した。各緩衝層の厚さを合理的に設計することによって、エピタキシャル構造における緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証され、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0093】
上記の実施例では、それぞれ異なる緩衝層のドーピング濃度及び厚さからエピタキシャル層の具体的な設計方法を説明した。エピタキシャル層を実際に設計する際に、異なる緩衝層のドーピング濃度状況及び厚さ状況を総合的に考慮することができることを理解されたい。例えば、厚さが比較的大きい緩衝層の場合、そのドーピング濃度を比較的高くすることができ、厚さが比較的小さい緩衝層の場合、そのドーピング濃度を比較的低くすることができる。異なる緩衝層のドーピング濃度状況及び厚さ状況を総合的に考慮することによって、エピタキシャル構造における緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証され、半導体デバイス漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0094】
上記の実施例をもとに、図5に示すように、本発明の実施例で提供されるエピタキシャル層12は、緩衝層122の基板11に近い側に位置する核生成層121と、緩衝層122の基板11から遠い側に位置するスペーサ層123と、スペーサ層123の基板11から遠い側に位置しかつ緩衝層122と共にヘテロ接合構造を形成する電位障壁層124と、電位障壁層124の基板11から遠い側に位置するキャップ層125とをさらに含んでもよい。
【0095】
例示的に、核生成層121は、エピタキシャル層12における核生成層121の上方に位置する他の膜層の結晶品質、表面トポグラフィー及び電気特性などのパラメータに影響を与える。核生成層121は、主に基板11の材料と、エピタキシャル層12のヘテロ接合構造における半導体材料層とを整合させる作用を果たす。
【0096】
スペーサ層123は、AlNスペーサ層であってもよい。スペーサ層123は、電位障壁を高め、二次元電子ガスの限界性を増加させるとともに、合金散乱を減少させ、移動度を向上させることができる。
【0097】
電位障壁層124は、AlGaN電位障壁層であってもよい。電位障壁層124は、緩衝層122と共にヘテロ接合構造を形成し、二次元電子ガスの移動チャネルを形成する。
【0098】
キャップ層125の主作用は、表面準位を減少させ、次の半導体デバイスの表面漏電を減少させ、電流コラプスを抑制することでエピタキシャル構造及び半導体デバイスの性能及び信頼性を向上させることである。選択的に、キャップ層125の材料は、III族窒化物であり、好ましくはP型ドーピング窒化ガリウム(P-GaN)である。P-GaN構造は、AlGaN層の電位障壁を効果的に低下させることができる。
【0099】
上記の同じ発明思想に基づいて、本発明の実施例では、半導体デバイスが提供される。本発明の実施例で提供される半導体デバイスは、上記の実施例に記載の半導体デバイスのエピタキシャル構造を含む。図6は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスの構造模式図である。図6に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスは、
基板11と、
基板11の片側に位置するエピタキシャル層12であって、基板11の片側に順次位置する核生成層121と、緩衝層122と、スペーサ層123と、電位障壁層124と、キャップ層125とを含むエピタキシャル層12と、
電位障壁層124の基板11から遠い側に位置するソース電極131及びドレイン電極132と、
キャップ層125の基板11から遠い側に位置するとともに、ソース電極131とドレイン電極132との間に位置するゲート電極133と、
を含む。
【0100】
例示的に、ソース電極131及びドレイン電極132は、電位障壁層124の基板11から遠い側に位置する。ソース電極131及びドレイン電極132は、それぞれ電位障壁層124とオーミック接触を形成する。ゲート電極133は、ソース電極131とドレイン電極132との間に位置するとともに、キャップ層125の基板11から遠い側に位置する。ゲート電極133は、キャップ層125とショットキー接触を形成する。
【0101】
本発明の実施例では、半導体デバイスの構造設計の観点から、半導体デバイスにおける核生成層の熱抵抗が高くならずに核生成層の結晶品質を向上させることを保証することを理解されたい。半導体デバイスは、高電圧及び高電流環境で動作する高電力窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor,略称:HEMT)、シリコンオンインシュレータ(Silicon-On-Insulator,略称;SOI)構造のトランジスタ、ヒ化ガリウム(GaAs)系トランジスタ、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor,略称:MOSFET)、金属絶縁層半導体電界効果トランジスタ(Metal-Semiconductor Field-Effect Transistor,略称:MISFET)、ダブルヘテロ接合型電界効果トランジスタ(Double Heterojunction Field-Effect Transistor,略称:DHFET)、接合型電界効果トランジスタ(Junction Field-Effect Transistor,略称:JFET)、金属半導体電界効果トランジスタ(Metal-Semiconductor Field-Effect Transistor,略称;MESFET)、金属絶縁層半導体ヘテロ接合型電界効果トランジスタ(Metal-Semiconductor Heterojunction Field-Effect Transistor,略称:MISHFET)又は他の電界効果トランジスタを含むが、これらに限定されない。
【0102】
上記の同じ発明思想に基づいて、本発明の実施例では、半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法がさらに提供される。図7は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法のフローチャートである。図7に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法は、以下のステップS110及びS120を含んでもよい。
S110:基板を提供する。
S120:前記基板の片側にエピタキシャル層を製造する。前記エピタキシャル層は、緩衝層を含む。前記緩衝層は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層と、第2タイプの緩衝層とを含む。前記第1タイプの緩衝層は、前記基板に近い側に位置し、前記第1タイプの緩衝層のドーピング濃度は、前記第2タイプの緩衝層のドーピング濃度よりも高い。
【0103】
高抵抗GaN緩衝層を得るために必要なCドーピング濃度が>1*1019/cmを満たす必要があるが、そうすると、GaN緩衝層の結晶品質が低下する場合がある。高抵抗GaN緩衝層を得るために必要なFeドーピング濃度が>1*1019/cmを満たす必要があるが、そうすると、最終的なデバイスの性能に影響を与える場合がある。本発明の実施例において、緩衝層122は、多層の緩衝層を含み、例えば、積層して設けられる第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222とを含み、第1タイプの緩衝層1221が基板11に近い側に位置するとともに、第1タイプの緩衝層1221のドーピング濃度が第2タイプの緩衝層1222のドーピング濃度よりも高くなるように設計することによって、第1タイプの緩衝層1221と第2タイプの緩衝層1222との特定のドーピング濃度関係により高抵抗緩衝層を達成し、緩衝層の具体的なドーピング濃度を要求しない。例えば、緩衝層を低濃度ドーピングにすることによって、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0104】
以上のことから、本発明の実施例で提供される半導体デバイスのエピタキシャル構造の製造方法において、緩衝層は、積層して設けられる第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層とを含み、第1タイプの緩衝層のドーピング濃度が第2タイプの緩衝層のドーピング濃度よりも高いことによって、半導体デバイスにおける緩衝層の高抵抗特性が保証されながら、緩衝層の良好な結晶品質が保証される。また、第1タイプの緩衝層と第2タイプの緩衝層との特定のドーピング濃度関係により、高抵抗緩衝層を達成し、緩衝層の具体的なドーピング濃度を要求しない。例えば、緩衝層を低濃度ドーピングすることができる。このようにして、半導体デバイスの漏電及びブレークダウンなどの性能が低下せずにエピタキシャル構造及び半導体デバイスの信頼性を向上させることが保証される。
【0105】
上記の実施例をもとに、基板の片側にエピタキシャル層を製造することは、
基板の片側に核生成層を製造するステップと、
核生成層の基板から遠い側に緩衝層を製造するステップと、
緩衝層の基板から遠い側にスペーサ層を製造するステップと、
スペーサ層の基板から遠い側に、緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成する電位障壁層を製造するステップと、
電位障壁層の基板から遠い側にキャップ層を製造するステップと、
を含んでもよい。
【0106】
核生成層により基板材料と、エピタキシャル層のヘテロ接合構造における半導体材料層とを整合させる。スペーサ層により電位障壁を高め、二次元電子ガスの限界性を向上させ、合金散乱を減少させ、移動度を向上させる。電位障壁層が緩衝層と共にヘテロ接合構造を形成することにより、二次元電子ガスの移動チャネルを形成する。キャップ層により表面準位を減少させ、次の半導体デバイスの表面漏電を減少させ、電流コラプスを抑制することで、エピタキシャル構造及び半導体デバイスの性能及び信頼性を向上させる。
【0107】
上記の同じ発明思想に基づいて、本発明の実施例では、半導体デバイスの製造方法がさらに提供される。図8は、本発明の実施例で提供される半導体デバイスの製造方法のフローチャートである。図8に示すように、本発明の実施例で提供される半導体デバイスの製造方法は、以下のステップS210からS230を含んでもよい。
S210:基板を提供する。
S220:前記基板の片側にエピタキシャル層を製造し、前記エピタキシャル層は、前記基板の片側に順次位置する核生成層と、緩衝層と、スペーサ層と、電位障壁層と、キャップ層を含む。
S230:前記電位障壁層の前記基板から遠い側にソース電極及びドレイン電極を製造し、前記キャップ層の前記基板から遠い側にゲート電極を製造し、前記ゲート電極は、前記ソース電極と前記ドレイン電極と間に位置する。
【0108】
ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ電位障壁層とオーミック接触を形成し、ゲート電極は、キャップ層とショットキー接触を形成する。
【0109】
なお、上記の説明は、本発明の好ましい実施例及び使用される技術的原理に過ぎない。当業者は、本発明がここに記載された特定の実施例に限定されず、様々な明白な変更、再調整、相互の組み合わせ及び置換が、本発明の保護範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得ることを理解することができる。したがって、以上の実施例により本発明を詳しく説明したが、本発明は、以上の実施例に限定されず、本発明の思想から逸脱することなくより多い他の同等実施例をさらに含んでもよく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8