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特許7577845バチルス酵素群を利用した生物転換された機能性薬豆粉末を有効成分として含む組成物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】バチルス酵素群を利用した生物転換された機能性薬豆粉末を有効成分として含む組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20241028BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 11/50 20210101ALI20241028BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20241028BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241028BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20241028BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20241028BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/135
A23L11/50
A61K36/48
A61P25/00
A61K31/198
A23L33/175
C12N1/20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023518313
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 KR2021012972
(87)【国際公開番号】W WO2022060204
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0121669
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124767
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 11751BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520495010
【氏名又は名称】ククミンバイオ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KOOKMINBIO, CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】サン ムンヒ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004809(WO,A1)
【文献】韓国特許第10-2008-0811615(KR,B1)
【文献】MO, A.-Y. et al.,Isolation and characterization of Bacillus polyfermenticus isolated from Meju, Korean soybean fermentation starter,World Journal of Microbiology and Biotechnology,2009年,Vol. 26, No. 6,P. 1099-1105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を全豆乳に対して3~7%(v/v)の濃度で、35℃~39℃で3時間~5時間処理する段階を含む、薬豆生物転換粉末の製造方法であって、
前記薬豆生物転換粉末は、前記全豆乳に比べて分枝鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids、BCAA)であるVal、Leu、およびIleの含量、並びに芳香族アミノ酸であるPheおよびTyrの含量が増加したことを特徴とする、薬豆生物転換粉末の製造方法。
【請求項2】
前記薬豆生物転換粉末は、抗酸化活性を示すことを特徴とする請求項に記載の薬豆生物転換粉末の製造方法。
【請求項3】
バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を用いて発酵した全豆乳を有効成分として含む、行動障害の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を用いて発酵した全豆乳を有効成分として含む、行動障害の予防または改善用健康機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬豆生物転換粉末を有効成分として含む組成物及びその用途に係り、より詳細には、全豆乳にバチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)菌株由来の酵素液を処理して多様な生理活性機能が向上した薬豆生物転換粉末を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
運動遂行能力とは、筋力を用いて運動を行う能力であって、運動遂行能力が落ちるか、不均衡を成すようになれば、非正常な動きや歩行を招くことにより、正常な動きを損傷させ、姿勢を不良にする。また、運動遂行能力の低下によって運動量不足になって体力低下及び肥満、高脂血症、高血圧などの問題を起こしうる。したがって、正常な元気な生活を行うためには、運動遂行能力を向上しなければならない。
【0003】
運動遂行能力を向上させるための方法としては、規則的な運動、食餌療法、及び運動遂行能力向上補助剤などが使われている。運動遂行能力の向上のための機能性補助剤と関連した研究は、東洋・西洋を問わずに活発に行われている。しかし、西洋で使用する運動遂行能力向上補助剤は、カフェイン、アナボリックステロイドなどで、ほとんどが副作用を持っている。これにより、最近、安全性が保証された天然物を利用した機能性補助剤を開発しようとする研究が活発に進められているが、まだ不備な実情なので、運動遂行能力を効果的に増強させながら副作用のない補助剤についての研究が要求される。
【0004】
豆は、体に良いタンパク質及び脂肪と各種の機能性成分とを含有しており、栄養学的に非常に優れた理想的な食品として食生活において非常に重要であり、必須的な食品である。同様に、最近、抗ガン特性及び免疫性強化など新たな生理的機能がさらに知られながら、機能性食品として豆の食品栄養学的価値は日増しに増大しつつある。
【0005】
豆の代表的な加工食品の1つである豆乳(soy milk)は、豆のタンパク質利用率を高めた代表的な大豆加工製品であって、大豆タンパク質と必須アミノ酸及び必須脂肪酸とが豊かであり、鉄分、リン、カリウムなどの無機質とイソフラボン、サポニン、及びフィチン酸など機能性成分である生理活性物質とが多量含有されており、機能性栄養飲料として知られている。また、豆乳にタンパク質分解酵素を処理して大豆タンパク質を分解させて消化、吸収を促進する栄養的機能を含めて血圧強化、カルシウム吸収促進、抗アレルギー及び血清コレステロール低下作用など生理活性を有するペプチドを生産して機能性を改善する研究が行われている。しかし、運動遂行能力向上効能に関しては、いまだに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2011-0027247号(2011.03.16.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明の目的は、機能性が向上した薬豆生物転換粉末及びその製造方法を提供するものであって、バチルス・ポリファーメンチカス菌株から由来した多様な分解酵素及びペプチド合成酵素が混合された発酵液で全豆乳を処理して、低分子の機能性アミノ酸及びペプチドが形成されることを確認し、薬豆生物転換粉末が抗酸化活性、行動障害改善のような機能性効果が表われることを確認することにより、薬豆生物転換粉末を有効成分として含有する行動障害改善組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を含む生物転換用組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を全豆乳に処理する段階を含む薬豆生物転換粉末の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を用いて発効した全豆乳を有効成分として含む行動障害の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を用いて発効した全豆乳を有効成分として含む行動障害の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バチルス・ポリファーメンチカス菌株から由来した多様な分解酵素及びペプチド合成酵素が混合された発酵液で全豆乳を処理して、低分子の機能性アミノ酸及びペプチドが形成されることを確認し、薬豆生物転換粉末が抗酸化活性、行動障害改善のような機能性効果が表われることを確認することにより、薬豆生物転換粉末及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】バチルス・ポリファーメンチカスKMU01菌株の遺伝子地図及び酵素群の遺伝子を示す図面である。
図2】全豆乳と薬豆生物転換粉末の豆タンパク質分解図及び豆ペプチド生成程度を確認した結果である。
図3】全豆乳及び薬豆生物転換粉末の抗酸化活性を評価した結果である。
図4】全豆乳及び薬豆生物転換粉末の行動障害改善効果を評価した結果である。
図5】酸化ストレス下で全豆乳及び薬豆生物転換粉末の行動障害改善効果を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使われる用語は、本発明での機能を考慮しながら可能な限り現在広く使われる一般的な用語を選択したが、これは、当業者の意図または判例、新たな技術の出現などによって変わりうる。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する発明の説明部分で詳しくその意味を記載する。したがって、本発明で使われる用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が有する意味と本発明の全般に亘った内容とに基づいて定義されなければならない。
【0015】
取り立てての定義がない限り、技術的や科学的な用語を含んで、ここで使われるあらゆる用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的であるか、過度に形式的な意味として解釈されてはならない。
【0016】
数値範囲は、前記範囲に定義された数値を含む。本明細書にわたって与えられたあらゆる最大の数値制限は、低い数値制限が明確に書き込まれているように、あらゆるさらに低い数値制限を含む。本明細書にわたって与えられたあらゆる最小の数値制限は、さらに高い数値制限が明確に書き込まれているように、あらゆるさらに高い数値制限を含む。本明細書にわたって与えられたあらゆる数値制限は、さらに狭い数値制限が明確に書き込まれているように、さらに広い数値範囲内のさらに良いあらゆる数値範囲を含む。
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明者らは、このような点を勘案して、本発明者らは、行動障害改善機能に優れた薬豆生物転換粉末物を含有する機能性組成物を開発するために鋭意努力した結果、発酵食品から分離したGRAS発酵食品微生物が分泌生産する多様なタンパク質分解酵素及びペプチド合成酵素が混合されている酵素群を使用して全豆乳を加水分解した薬豆生物転換粉末物を含有する組成物の場合、行動障害改善効果に優れているということを確認し、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を含む生物転換用組成物を提供する。
【0020】
前記生物転換とは、微生物または微生物が生産する酵素の生物学的反応を用いて既存の素材(基質)を変換する技術であって、具体的に、前記生物転換は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株が生産する多様な酵素が含まれている培養上澄み液である酵素群を使用して豆または薬豆(基質)を変換することを意味し、前記の生物転換を通じて作られた生成物を薬豆生物転換粉末と言う。
【0021】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株は、2010年8月25日付で生物資源センター(KCTC)にバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)Kimchiという名称で受託されたが、以後、明確な菌株の種名がバチルス・ポリファーメンチカスと明らかになることによって、2018年6月27日にバチルス・ポリファーメンチカスKMU01に種名が変更された。
【0022】
前記培養液は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株を培養した人工培地であり、前記発酵物は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株を用いて発効した天然培地である。
【0023】
前記人工培地は、バチルス・ポリファーメンチカスまたは細菌を培養することができる商業的に製造される合成培地であり、例えば、TBS(Tryptic Soy Broth)、TSB(Tryptic Soy Broth)、NB(Nutrient Broth)、及びLB(Luria-Bertani broth)であるが、これらに制限されるものではない。
【0024】
前記天然培地は、細菌で発効する天然物を意味し、例えば、ジャガイモ、トマト、牛乳のような自然産物を利用した培地であるが、これらに制限されるものではない。
【0025】
前記培養液及び発酵物は、プロテアーゼ(protease)、GGT(Gamma-glutamyltransferase、γ-グルタミル転移酵素)、及びナットウキナーゼ(Nattokinase)の活性を示すことができる。
【0026】
前記プロテアーゼは、タンパク質分解酵素でタンパク質を成しているアミノ酸間のペプチド結合を加水分解する酵素であり、あるタンパク質分解酵素の場合、タンパク質のアミノ末端(aminopeptidase)、またはカルボキシル末端(carboxypeptidase)を切るエキソペプチダーゼ(exopeptidase)があり、ある場合は、タンパク質の中間を切るエンドペプチダーゼ(endopeptidase、例、トリプシン、ケモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラステアーゼ)がある。前記GGT(γ-グルタミル転移酵素)は、γ-グルタミル化合物のグルタミル基を適当な受容体(アミン)に転移する酵素であって、トランスアシラーゼの一種である。前記ナットウキナーゼは、豆を発酵させる時、納豆菌(Bacillus natto)が豆の栄養成分を摂取及び生育しながら作り出す血栓溶解酵素としてビタミンB群と多量の抗酸化酵素とを含有している。
【0027】
また、本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を全豆乳に処理する段階を含む薬豆生物転換粉末の製造方法を提供する。
【0028】
前記薬豆生物転換粉末とは、豆との多年生つる草の実である薬豆を微生物または微生物が生産する酵素と反応させて、薬豆内に含まれた炭水化物及びタンパク質などが切断するか、分解されて生成された生成物の粉末状を意味し、具体的に、前記薬豆生物転換粉末は、薬豆をバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株が生産する多様な酵素が含まれている培養上澄み液である酵素群を使用して変換させて生成された生成物の粉末を意味する。
【0029】
前記薬豆は、大豆、白豆、黒豆、隠元豆、エンドウ豆などの豆と植物の実を意味し、前記豆と植物の実の種類に限定されるものではない。
【0030】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物は、全豆乳に3~7%(v/v)の濃度で処理され、望ましくは、5%(v/v)の濃度で処理される。
【0031】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物は、35~40℃で3~5時間処理することができ、望ましくは、37℃で4時間処理することができる。
【0032】
前記薬豆生物転換粉末は、抗酸化活性を示すことができる。
【0033】
また、本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を用いて発効した全豆乳を有効成分として含む行動障害の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0034】
前記行動障害は、ドーパミンの過度な死滅及び不足で表われる運動性の低下及び睡眠時間の減少のような疾患の一種であって、例えば、運動障害、認知機能障害、パーキンソン病、摂食障害、注意力欠乏障害、睡眠障害などを含む。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、当業者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体を用いて製剤化することにより、単位容量の形態に製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造可能である。
【0036】
前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分の以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含みうる。
【0037】
本発明において、前記薬学的組成物に含まれる添加剤の含量は、特に限定されるものではなく、通常の製剤化に使われる含量範囲内で適切に調節される。
【0038】
前記薬学的組成物は、水溶液、懸濁液、乳濁液のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤、及びカタプラズマ剤からなる群から選択される1つ以上の外用剤の形態に剤形化される。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、剤形化のために追加の薬学的に許容可能な担体及び希釈剤を含みうる。前記薬学的に許容可能な担体及び希釈剤は、澱粉、糖、及びマンニトールのような賦形剤、リン酸カルシウムのような充填剤及び増量剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、及びポリビニルピロリドンのような結合剤、滑石、ステアリン酸カルシウム、水素化ヒマシ油及びポリエチレングリコールのような潤滑剤、ポビドン、クロスポビドンのような崩壊剤、ポリソルベート、セチルアルコール、及びグリセロールのような界面活性剤を含むが、これらに限定されるものではない。前記薬学的に許容可能な担体及び希釈剤は、対象体に生物学的及び生理学的に親和的なものである。希釈剤の例としては、塩水、水溶性緩衝液、溶媒及び/または分散剤(dispersion media)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0040】
本発明の薬学的組成物は、目的の方法によって経口投与または非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができる。経口投与である場合、錠剤、トローチ剤(troches)、ロゼンジ(lozenge)、水溶性懸濁液、油性懸濁液、調剤粉末、顆粒、エマルジョン、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤などで剤形化される。非経口投与である場合、注射液、坐剤、呼吸器吸入用粉末、スプレー用エアロゾル剤、軟膏、塗布用パウダー、オイル、クリームなどで剤形化される。
【0041】
本発明の薬学的組成物の投与量は、患者の状態及び体重、年齢、性別、健康状態、食餌体質特異性、製剤の性質、疾病の程度、組成物の投与時間、投与方法、投与期間または間隔、排泄率、及び薬物形態によって、その範囲が多様であり、当業者によって適切に選択されうる。例えば、約0.1~10,000mg/kgの範囲であるが、これに制限されず、1日1回ないし数回に分けて投与される。
【0042】
前記薬学的組成物は、目的の方法によって経口投与または非経口投与(例えば、静脈内、皮下内、腹腔内または局所に適用)される。本発明の薬学的組成物の薬学的有効量、有効投与量は、薬学的組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間及び/または投与経路などによって多様になり、当業者は目的の治療に効果的な投与量を容易に決定または処方することができる。本発明の薬学的組成物の投与は、1日1回投与され、数回に分けて投与されても良い。
【0043】
また、本発明は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を用いて発効した全豆乳を有効成分として含む行動障害の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0044】
本発明は、通用される食品として一般的に使われる。
【0045】
本発明の食品組成物は、健康機能食品として使われる。前記「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律による人体に有用な機能性を有した原料や成分を使用して製造及び加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用のような保健用途に有用な効果を得る目的として摂取することを意味する。
【0046】
本発明の食品組成物は、通常の食品添加物を含み、前記「食品添加物」としての適否は、他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法などによって当該品目に関する規格及び基準によって判定する。
【0047】
前記「食品添加物公典」に収載された品目としては、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成物、紺色素、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類が挙げられる。
【0048】
本発明の食品組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸などの形態に製造及び加工することができる。
【0049】
例えば、カプセル形態の健康機能食品のうち、硬質カプセル剤は、通常の硬質カプセルに本発明による組成物を賦形剤などの添加剤と混合及び充填して製造することができ、軟質カプセル剤は、本発明による組成物の賦形剤などの添加剤と混合し、ゼラチンなどカプセル基剤に充填して製造することができる。前記軟質カプセル剤は、必要に応じてグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含有することができる。
【0050】
前記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、着香剤などに対する用語の定義は、当業者に公知の文献に記載されたものであって、その機能などが同一ないし類似したものを含む。前記食品の種類には、特に制限がなく、通常の意味での健康機能食品をいずれも含む。
【0051】
本発明において、用語「予防」とは、本発明による組成物の投与で疾患の抑制または遅延させるあらゆる行為を言う。本発明において、用語「治療」は、本発明による組成物の投与で疾患の症状が好転または有利に変更するあらゆる行為を言う。本発明において、「改善」とは、本発明の組成物を個体に投与または摂取させて疾患の悪い状態を良くするあらゆる行為を意味する。
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0053】
実施例1.発酵食品微生物由来の多様な酵素活性の評価
【0054】
機能性薬豆生物転換粉末を製造するために、発酵菌株であるバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株の多様な酵素活性を評価した。
【0055】
まず、プロテアーゼ、GGT(γ-グルタミル転移酵素)、及びナットウキナーゼの活性を評価した。発酵菌株をTSB培地50mLに接種して37℃で24時間培養し、培養液の上澄み液を収集して8,000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離された培養液の上澄み液を用いて各酵素活性を評価した。
【0056】
プロテアーゼの活性は、基質として0.5%のアゾカゼイン(azocasein)溶液0.1mLと助酵素液0.1mLとをEppendorf tubeに入れ、恒温水槽37℃で1時間反応させた後、10%トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid)溶液0.4mLを添加して反応を中止させた。この反応液を13,000rpmで5分間遠心分離して上澄み液を回収した後、上澄み液0.6mLに0.525N NaOH溶液0.6mLを添加して中和させ、420nmで吸光度を測定し、この反応条件下で1分間にチロシン(tyrosine)1ugを遊離させる酵素量を1unintとしてプロテアーゼの活性を評価した。
【0057】
GGT(γ-グルタミル転移酵素)の活性は、0.01mL助酵素液とr-L-glutamyl-p-nitroaniline)(p-NA-Glu,Sigma-Aldrich)とを0.1mM含有した50mMリン酸緩衝溶液(pH7.0)0.09mLを混合して40℃で30分反応させた後、3.5N酢酸(acetic acid)0.01mlを添加して反応を中止させた。遊離されたp-ニトロアニリン(p-nitroaniline)の量を410nmで測定した。p-ニトロアニリンを標準溶液としてstandard curveを描いて酵素活性を計算した。GGT酵素活性1unitは、1分当たりp-NA-Gluから1moleのp-ニトロアニリンを遊離させる酵素量で計算してGGT酵素活性度を評価した。
【0058】
ナットウキナーゼの活性は、50mM Borate buffer(pH8.5)350μlと1%フィブリノーゲン(fibrinogen)溶液100ul、10unintトロンビン(Thrombin)溶液25ulとを混合して37℃で10分間反応させた後、助酵素液25ulを添加して37℃で1時間反応させる。この反応液に0.2M TCA溶液500ulを添加して反応を停止させた後、37℃で10分間静置させた。この反応液を8,000rpmで20分間遠心分離して上澄み液を回収した後、275nmで回収した上澄み液の吸光度を測定し、下記の計算式によって酵素活性を計算して血栓溶解酵素活性度を評価した。
【0059】
血栓溶解活性度(FU/ml)=A1-A0/0.01X1/60X1/0.025XD
【0060】
A1:試料の吸光値
【0061】
A0:助酵素液を入れずに製造した空試験試料の吸光値(blank)
【0062】
0.01:1分間吸光度が0.01増加した酵素の活性
【0063】
60:酵素反応時間(分)
【0064】
0.025:使用した酵素の量
【0065】
D:試料の希釈倍数
【0066】
下記表1に示されたように、プロテアーゼ活性は、78U/mlに表われ、GGT活性は、3500mU/mlに表われ、血栓分解活性を示すナットウキナーゼ活性は、24U/mlに表われた。
【0067】
【表1】
【0068】
また、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株の誘電体をPacBio_20K sequncenrとSMRT 2.3.0(HGAP2)assemblerとで分析して、多様な機能性酵素の遺伝子を確認した。その結果、図1に示されたように、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株は、61個のペプチダーゼ(peptidase)遺伝子、23個のプロテアーゼ遺伝子、8個のグルコシダーゼ(glucosidase)遺伝子、6個のリパーゼ(lipase)遺伝子、2個のGGT(γ-グルタミル転移酵素)遺伝子、2個のセルラーゼ(cellulase)遺伝子、アミラーゼ(amylase)遺伝子、及びナットウキナーゼ遺伝子を保有しているということを確認した。
【0069】
実施例2.発酵菌株を利用した機能性生物転換粉末の製造
【0070】
全豆乳を生物転換するための酵素液としてバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株をTSB培地に37℃で24時間培養した上澄み液を使用した。全豆乳を製造するために、大韓民国益山の鼠目太を洗浄した後、14時間水に浸漬させた後、水分を除去し、磨砕機を用いて水を除去しながら磨砕した。磨砕された試料を100℃で30分間煮込んだ後、全豆乳を収得した。前記収得された全豆乳に前記酵素液を5%(v/v)の比率で処理し、37℃で4時間反応させて生物転換後、凍結乾燥して薬豆生物転換粉末を製造した。
【0071】
【表2】
実施例3.薬豆生物転換粉末の加水分解度の評価
【0072】
前記実施例2から製造された薬豆生物転換粉末のタンパク質に対する加水分解度を評価した。各試料の加水分解物2mLを取って20%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)2mLが入っている試験管に入れ、混合した後、遠心分離(3,000Хg、10min)して、遠心分離した上澄み液を一定量取ってタンパク質量を測定して加水分解度を計算した。計算した結果、前記薬豆生物転換粉末の加水分解度は、53.8%に表われた。
【0073】
また、10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis;SDS-PAGE)を行って薬豆タンパク質の分子量の差を確認した結果、図2に示されたように、対照群(薬豆全豆乳)に比べて、前記薬豆生物転換粉末(薬豆酵素処理豆乳)で10,000Da以下の豆ペプチドが1.23倍増加すると表われた。
【0074】
実施例4.薬豆生物転換粉末のアミノ酸組成分析
【0075】
アミノ酸自動分析器(Biochrom 30+)を使用して薬豆生物転換粉末内の機能性アミノ酸を分析した。下記表3に示されたように、筋肉の成長に必要な分枝鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids、BCAA)と神経伝達物質の前駆体アミノ酸である芳香族アミノ酸など機能性アミノ酸との含量が増加したと表われた。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例5.薬豆生物転換粉末の抗酸化活性の評価
【0078】
前記薬豆生物転換粉末の抗酸化活性を評価するために、DPPHラジカル消去活性を分析した。DPPHラジカル消去能は、安定した自由ラジカルである1.1-diphenyl-2-picryl hydrazyl(DPPH)を一定の試料溶液と反応させてDPPHラジカルが減少する程度は、分光光度計を用いて測定する方法で、サンプル50ulと0.1mM DPPH溶液50ulとを混合した後、室温の暗室で30分間放置した後、517nmで吸光度を測定してControlに比べて、ラジカル減少程度を計算した。Blank吸光度は、水50ulと0.1mM DPPH溶液50ulとを混合して測定し、各試料のControl吸光度は、サンプル50ulと95%エタノールとを混合して測定する。陽性対照群のサンプルとしては、アスコルビン酸(ascorbic acid)を使用した。図3に示されたように、対照群(薬豆全豆乳)に比べて、薬豆生物転換粉末で74%の高いDPPHラジカル消去活性が表われた。
【0079】
実施例6.薬豆生物転換粉末の行動障害改善効果の評価
【0080】
前記薬豆生物転換粉末に行動障害改善のような機能性効果が表われるかを確認するために、対照群(薬豆全豆乳)及び薬豆生物転換粉末(酵素処理全豆乳)をショウジョウバエに5週間経口投与して、各摂食群及び非摂食群の行動の差の変化をclimbing assayで評価した。
【0081】
ショウジョウバエは、Negative geotaxisという習性を有しているために、行動学的研究に相当数用いられている。Negative geotaxisは、言葉どおりにショウジョウバエを含むガラス管及び試験管を1回衝撃を加えてショウジョウバエを底面に落とした後、重力をさかのぼる行動を表現することであって、climbing assayに多く用いられている。パーキンソン-モデルショウジョウバエは、Negative geotaxis習性を有しているが、dj-1遺伝子の欠失によって正常個体に比べて低いNegative geotaxis傾向を示す。dj-1遺伝子の欠失は、ドーパミンの死滅速度を促進してパーキンソン病の症状のような運動性の低下及び睡眠時間の減少などがある。
【0082】
使われたショウジョウバエは、野生型ショウジョウバエw1118とパーキンソンモデルショウジョウバエであるDJ-1Bex54とを使用して薬豆生物転換粉末に行動障害改善効果を評価した。前記パーキンソンモデルショウジョウバエは、dj-1遺伝子が欠失したモデルであって、dj-1遺伝子の欠失は、ドーパミンの死滅速度を促進してパーキンソン病の症状のような運動性の低下及び睡眠時間の減少のような現象を示す。あらゆるショウジョウバエは、day/nightを12時間の間隔で、温度を25℃に、湿度を60%に保持して培養した。
【0083】
まず、薬豆生物転換粉末の摂食によるモデル動物ショウジョウバエを利用した行動障害改善効果を確認するために、ショウジョウバエが入っている試験管を衝撃を加えてショウジョウバエを底面に落とした後、重力をさかのぼる行動を分析するclimbing assayを行った。
【0084】
全豆乳及び薬豆生物転換粉末をショウジョウバエに5週間経口投与し、ショウジョウバエの行動学的分析であるclimbing assayは、18cm-long vialsで行った。室温で10分間環境に適応させた後、ショウジョウバエが完全に底面に座っている時点を基準に実施し、10秒間開始部位から8cm以上部位まで上昇したショウジョウバエの数を測定し、4回反復実験を行った(n>10)。但し、統計は、T-testを使用し、有意レベル(P)は、0.05に定めてP<0.05は有意なものと判断した。
【0085】
図4に示されたように、一般ショウジョウバエご飯(一般食餌)を摂取したパーキンソン病ショウジョウバエモデル(DJ-1BEX54)は、4週目にClimbling abilityが25%に減少して、5週目には24%までClimbing abilityが減少する一方、薬豆生物転換粉末(酵素処理全豆乳)を摂取させたパーキンソンモデルショウジョウバエ(DJ-1BEX54)は、4週目まで野生ショウジョウバエと類似しているClimbing abilityを示し、5週目には、野生ショウジョウバエのClimbing abilityが69%である時、パーキンソンモデルショウジョウバエ(DJ-1BEX54)は、51%のClimbling abilityを保持するということを確認し、本結果を通じて薬豆生物転換粉末が行動障害改善効果があるということを確認した。
【0086】
また、人為的な酸化ストレス下で薬豆生物転換粉末摂食がショウジョウバエの行動障害改善に効果があるかを確認するために、1% Hが含まれた5%スクロース(sucrose)と5%薬豆生物転換粉末(酵素処理全豆乳)と1% Hが含まれた5%スクロース餌とをショウジョウバエモデルに摂食モデルに13日間経口投与し、climbing assayと生存率を確認した。図5に示されたように、人為的な酸化ストレス環境でのパーキンソンモデルショウジョウバエ(DJ-1Bex54)は、著しく低いClimbing rate及び生存率を示した一方、薬豆全豆乳及び薬豆生物転換粉末(酵素処理全豆乳)を摂食したDJ-1Bex54ショウジョウバエは、対照群に比べて高いClimbing rateを示し、薬豆生物転換粉末摂食群で最も高い生存率を示した。
【0087】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5