(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】周波数ホッピングシステムのリンクアダプテーション
(51)【国際特許分類】
H04B 1/713 20110101AFI20241028BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20241028BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H04B1/713
H04L27/00 Z
H04L1/00 E
(21)【出願番号】P 2023522560
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2021079262
(87)【国際公開番号】W WO2022090059
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-02
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルムソン, レイフ
(72)【発明者】
【氏名】アルヴィドソン, ポンタス
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173119(WO,A1)
【文献】特表2012-503349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0136268(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02779700(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0140251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/713
H04L 27/00-27/38
H04L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネル間の周波数ホッピングを含む送信の方法であって、
チャネルのリンクアダプテーションアルゴリズムインスタンスを使用して、周波数ホッピング毎に
当該チャネル
の変調及び符号化方式を調整することと、
前記チャネルが雑音で制限されているか干渉で制限されているかを決定することと、
を含み、
複数のリンクアダプテーションアルゴリズム
インスタンスが前記複数のチャネルの変調及び符号化方式を調整する
ために同時に使用され、
前記チャネルの前記変調及び符号化方式を調整することは、さらに、前記チャネルが雑音で制限されているか干渉で制限されているかの決定結果に基づく、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記チャネルの前記リンクアダプテーションアルゴリズムインスタンスは、当該チャネルのみに使用される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記チャネルの前記リンクアダプテーションアルゴリズムインスタンスは、前記チャネルに周波数において隣接する他のチャネルに対して使用される、方法。
【請求項4】
請求項
2に記載の方法であって、
前記複数のリンクアダプテーションアルゴリズム
インスタンスの数は、
前記複数のチャネル
の数と同じである、方法。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記チャネルの前記変調及び符号化方式を調整することは、
最も堅牢で利用可能な変調及び符号化方式を使用して、
前記チャネルで第1パケットを送信することと、
前記第1パケットに対する応答を受信することと、
前記チャネルに適切な変調及び符号化方式を取得することと、
前記適切な変調及び符号化方式に基づいて、次のパケットの前記変調及び符号化方式を調整することと、
を含む方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の方法であって、
前記適切な変調及び符号化方式を取得することは、前記受信した応答において、前記適切な変調及び符号化方式に関するインジケーションを受信することを含む、方法。
【請求項7】
請求項
5に記載の方法であって、
前記適切な変調及び符号化方式を取得することは、前記受信した応答から
前記適切な変調及び符号化方式を決定することを含む、方法。
【請求項8】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の方法であって、
チャネル特性を決定するために、
前記複数のチャネルのうちの1つ以上のチャネ
ルをスキャンすることを含み、
前記チャネルの前記変調及び符号化方式を調整することは、
前記1つ以上のチャネルの
スキャン結果に基づいて
行われる、方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の方法であって、
第1閾値未満の特性を有すると決定されたチャネル
の使用を行わないことを含む、方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法であって、
前記第1閾値は、
前記特性が前記第1閾値以上である場合に最小データレートの変調及び符号化方式を使用
できるように決定されている、方法。
【請求項11】
請求項
8から
10のいずれか1項に記載の方法であって、
前記周波数ホッピングで使用するために、第2閾値に達する特性を有するチャネ
ルをリスト化することを含む、方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の方法であって、
前記第2閾値は、
前記特性が前記第2閾値以上である場合に最大データレートの変調及び符号化方式を使用
できるように決定されている、方法。
【請求項13】
請求項
8から
12のいずれか1項に記載の方法であって、
前記周波数ホッピングのホッピングシーケンスは
、前記スキャ
ン結果に基づく、方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法であって、
前記ホッピングシーケンスは、
周波数ホッピング
毎に決定される、方法。
【請求項15】
請求項
13に記載の方法であって、
前記ホッピングシーケンスは、
前記スキャン
を行った際に決定される、方法。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか1項に記載の方法であって、
周波数ホッピングレートは、
前記チャネルの前記変調及び符号化方式の調整
の結果に基づいて調整可能である、方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の方法であって、
前記周波数ホッピングレートは、
周波数ホッピング
毎に決定される、方法。
【請求項18】
請求項
16に記載の方法であって、
前記周波数ホッピングレートは、
前記チャネ
ルに関する新しい情報を取得する際に決定される、方法。
【請求項19】
請求項
16に記載の方法であって、
前記周波数ホッピングレートは、使用中のチャネルが第3閾値未満の特性を有するときに新しいチャネルにホッピングすることによって決定される、方法。
【請求項20】
トランシーバのプロセッサで実行されると、前記トランシーバに、請求項1から
19のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項21】
送信機と、受信機と、前記送信機及び
前記受信機の動作を制御するためのコントローラと、を備えるトランシーバであって、前記コントローラは、請求項1から
19のいずれか1項に記載の方法に従って動作を制御する様に構成されている、トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、周波数ホッピング送信にリンクアダプテーションを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンクアダプテーション(LA)は、チャネル条件が大きく変化する場合に無線システムのパフォーマンスを向上させるのに有益であることが知られている。基本的に、LAの目標は、現在のチャネル条件に最適な変調及び符号化方式(MCS)を使用することである。ここで最適なものは、サポートされているアプリケーションによって多少異なるが、一般的に、十分に低いエラー確率で最高のデータレートを達成するMCSである。
【0003】
LAは、3GPP(登録商標)によって開発された、例えば、3G、4G、5G等のセルラシステムで使用される。これは、一般にWi-Fiと呼ばれるIEEE802.11によって開発された規格の重要な機能でもある。これらのシステムでどのMCSを選択するかは、送信機と受信機との間の距離に依存し得る、或いは、受信機での干渉レベルに依存し得る、或いは、その両方の組み合わせに依存し得る。MCSの変動は、0~30dBの範囲の受信機信号対干渉雑音比(SINR)に対応し得る。0dBの場合は、通常、最も堅牢な変調に対応し、通常は2位相シフトキーイング(BPSK)が、低レートの誤り訂正符号と共に使用される。一方、30dBは、多入力多出力(MIMO)を使用して複数のストリームを並列に送信できることに対応し、そこでは、各ストリームは、256直交振幅変調(QAM)といった高変調アルファベットを使用し、かつ、比較的高レートな誤り訂正符号を使用して変調される。
【0004】
LAを意図した通りに機能させるには、適切なMCSを選択するための受信機の状態に関する正確な情報を送信機が持つ必要がある。その様な情報は、受信機からの明示的なフィードバックによって取得される場合もあれば、異なるMCSを使用しての送信の成功又は失敗を監視することにより、送信機自体によって取得される場合もある。通常は前者が好まれるが、信号を追加するためのわずかなコストがかかる。
【0005】
略すべての無線システムに有益な別の特徴は、周波数ダイバーシティである。ほとんどの場合、送信機と受信機の間の無線チャネルは、周波数に応じて異なる特性を有する。今日、多くのシステムは少なくとも20MHz、場合によっては100MHzを超えるチャネル帯域幅を使用している。この場合、チャネルはチャネル帯域幅内で大きく変化する。この場合、チャネルは周波数選択的と言われる。事実上、周波数選択チャネルで動作する場合、チャネルをイコライズする必要があるため、受信機をより複雑にする必要がある。ただし、ある特定の周波数のチャネルが大幅に変化しても、平均チャネル条件はそれほど変動しないため、パフォーマンスもより予測し易くなる。LAは本質的に、様々なチャネル条件に対して最大の利点を提供する。例を挙げると、20MHzチャネルの平均SINRは数dB変動するだけであるが、20MHzチャネル内の各周波数のSINRは30dB以上容易に変動する。
【0006】
ただし、無線システムの中には、比較的小さなチャネル帯域幅を使用するものもある。その例は、ブルートゥース(登録商標)低エナジー(BLE)であり、帯域幅の定義方法に応じて、チャネル帯域幅は約1MHzである。これは、BLEの多くの典型的なユースケースにおいて、無線チャネルが基本的にチャネル帯域幅全体で同じであることを意味する、つまり、チャネルは単一の複素数としてモデル化され、受信信号は送信信号にこの複素数を掛けたものと、幾つかの加法性ノイズとの和になる。
【0007】
この場合、チャネルは周波数フラットと言われ、チャネル帯域幅全体が同じチャネル条件を経験することを示す。これは、信号が周波数ダイバーシティを受けないことを意味する。
【0008】
周波数フラットチャネルは、受信機の処理が簡単になること、例えば、受信は、チャネル推定を実行する必要のない単純な差動復調に基づき得ることを意味する。周波数フラットチャネルの主な欠点は、チャネル全体が非常に悪くなる可能性があることであり、チャネルは(フラット)フェージングと呼ばれる。上述した様に、チャネル変動は30dBであり得るが、これは事実上、システムが30dBのチャネル変動のフラットフェージングを経験することを意味する。
【0009】
信号が周波数ダイバーシティを受けないという問題に対処するために、周波数ホッピング(FH)を使用して周波数ダイバーシティを取得するのが一般的である。FHは、信号が経験するチャネル条件が、使用されるチャネルによって異なる様に、周波数が変更されることを意味する。ホッピングレート(周波数が変更される頻度)は、システムによって大きく異なり得る。歴史的に、FHが非常に低いデータレートに使用されるとき、高周波数ホッピングとは、ホッピングレートがチャネル符号化シンボルのレートと同じくらい高速であることを示すために使用された用語であった。したがって、単一のシンボルは、複数の異なる周波数で情報を送信することで表され、シンボルレベルで周波数ダイバーシティが効果的に実現され得る。データレートが高くなると、通常、ホッピングレートはシンボルレートよりも大幅に低くなる。従来のブルートゥース(登録商標)システムにおいては、各パケットの後に周波数が変更される(確認応答も同じ周波数で送信される)。これは、個々のパケットが、通常、非常に異なるチャネル条件を経験することを意味するため、1つのパケットが不良チャネルを経験したとしても、次のパケット(前のパケットの再送信であり得る)は、通常、完全に異なるチャネルを経験し得る。FHは、異なるチャネルを平均化する手段と見なすことができ、これにより、システムは、最悪のチャネル条件ではなく、平均的な(帯域幅全体の)条件を経験する様になる(FHがない場合、選択された狭帯域チャネルが、帯域幅内で最悪のチャネルになることが発生する。)。BLEにおいては、各接続イベントでチャネルを変更することによって周波数ホッピングが利用され、これは、7.5ミリ秒から4秒の範囲の間隔で発生する様に構成され得る。ホッピングパターンは仕様で定義されており、アダプティブFHは、信号強度が低いチャネルや干渉が強いチャネルをブラックリストに登録することによって使用される。
【0010】
LAとFHを考えると、前者はチャネルを最適に使用するための手段と見なすことができ、後者は平均的なチャネル条件を体験するための手段と見なすことができる。また、FHを使用するシステムは、通常LAを使用するが、LAは平均的な(帯域幅全体の)チャネル条件に一致する様に意図される。本質的に、MCSは、FHシステムによって使用されるチャネルの大部分において性能が十分に良好である様に選択される。
【0011】
効率的なLAは、通信チャネル、特に受信機の状態に関する正確な知識に基づく。受信機の状態が大きく変化する状況でLAを使用すると、うまく機能しない。FHに基づくシステムは設計上、送信に使用される周波数に応じてチャネルが変化するのが理想的であるため、標準的なLAをFHシステムに適用すると、一般的にうまく機能しない。
【0012】
具体的には、LAは通常、平均的なチャネル条件に基づいて、全体的に最良の結果をもたらすMCSを選択しようとする。標準的なLAをFHシステムに適用するには、少なくとも2つの主要な問題がある。第1の問題は、達成されるパフォーマンスが、通常、理論的に可能なものからかけ離れることである。特に、高いデータレートに対応するMCSは、比較的多数のチャネルではうまく機能しないため、使用されない。第2の問題は、LAアルゴリズム自体のふるまいである。通常、LAアルゴリズムは、最適なMCSに収束し、チャネル条件が変化するとわずかに更新される。システムがFHの場合、LAアルゴリズムは収束せずに常に調整を行うため、LAアルゴリズムが長時間の平均化に基づいていない限り、パフォーマンスは、略完全に予測できなくなり、これは、チャネルの変更に対するアルゴリズムの反応が非常に遅くなることを意味する。
【0013】
この背景セクションで開示された上記の情報は、開示の背景の理解を深めるためのものであり、したがって、当業者に既知の先行技術を形成しない情報を含む場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した問題の少なくとも幾つかは、LAとFHを組み合わせるが、そこでは、周波数ホッピングに使用される様々なチャネルに対して異なるLAを行うというアプローチによって軽減され得るという発明者の認識に本開示は基づく。この様にして、LAアルゴリズムは様々なチャネルにおいて異なるMCSに収束され得るため、理論上の最適値に比較的近いパフォーマンスを実現できる。潜在的に独立した多くのLAアルゴリズムを使用するアプローチは、各LAアルゴリズムがトレーニング用にアクセスできるデータが少なくなることを意味するため、明示的なフィードバックに基づいてLAを構築することが提案される。例えば、目的の受信機が最適なMCSを明示的に提案したり、送信機が受信機からの応答から適切なMCSを導出したり、適切なMCSに関する情報を他の測定で導出したりできる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、チャネル間の周波数ホッピングを含む送信方法が提供される。方法は、周波数ホッピング毎にチャネルの各セットの変調及び符号化方式を調整することを含み、リンクアダプテーションアルゴリズムのセットは、変調及び符号化方式の調整に使用され、複数のリンクアダプテーションアルゴリズムインスタンスが同時に使用される。
【0016】
チャネルのセットは、単一のチャネルを含む、或いは、周波数が隣接する複数のチャネルを含み得る。
【0017】
リンクアダプテーションアルゴリズムのセットのリンクアダプテーションアルゴリズムインスタンスの数は、チャネルのセットのチャネル数と同じであり得る。
【0018】
チャネルのそれぞれのセットに属するチャネルは、動作中に適合され得る。
【0019】
変調及び符号化方式の調整は、最も堅牢で利用可能な変調及び符号化方式を用いて1つのチャネル上で第1パケットを送信することと、第1パケットに対する応答を受信することと、チャネルに適切な変調及び符号化方式を取得することと、適切な変調及び符号化方式に基づき、次のパケットの変調及び符号化方式を調整することと、含み得る。適切な変調及び符号化方式を取得することは、受信した応答で適切な変調及び符号化方式に関するインジケーションを受信することを含み得る。あるいは、適切な変調及び符号化方式を取得することは、受信した応答から適切な変調及び符号化方式を決定することを含み得る。第1パケットは、使用される動作モードに対して最小の変調及び符号化方式を使用し得る。
【0020】
方法は、チャネルが雑音で制限されているか、干渉で制限されているかを決定することを含み、変調及び符号化方式の調整は、チャネルの制限の決定にさらに基づき得る。
【0021】
方法は、チャネル特性を決定するために、チャネルのセットの少なくともサブセットをスキャンすることを含み、変調及び符号化方式の調整は、チャネルのセットの少なくともサブセットについて得られた知識に基づいて調整することを含み得る。
【0022】
方法は、第1閾値未満の特性を有すると決定されたチャネルのセットの使用を省略することを含み得る。第1閾値は、使用される動作モードに対して最小データレートの変調及び符号化方式を使用することの実現可能性に対応し得る。
【0023】
方法は、第2閾値に達する特性を有するチャネルのセットをリスト化することを含み得る。第2閾値は、使用される動作モードに対して最大データレートの変調及び符号化方式を使用することの実現可能性に対応し得る。
【0024】
ホッピングシーケンスは、チャネルに関して得られた知識に基づき得る。ホッピングシーケンスは、チャネルの少なくともサブセットのスキャンの結果に基づき得る。ホッピングシーケンスは、各ホップで決定され得る。ホッピングシーケンスは、各スキャンで決定され得る。
【0025】
周波数ホッピングレートは、変調及び符号化方式を調整するという決定に基づいて調整可能であり得る。周波数ホッピングレートは、各ホッピングで決定され得る。周波数ホッピングレートは、チャネルのセットに関する新しい情報を取得する際に決定され得る。周波数ホッピングレートは、使用中のチャネルが第3閾値未満の特性を有する場合に新しいチャネルにホッピングすることによって決定され得る。第3閾値は、使用される動作モードのターゲット変調及び符号化方式を使用することの実現可能性に対応し得る。ホッピングレート及びホッピングシーケンスは、チャネルの使用されたセットが第2閾値を満たす様に決定され得る。
【0026】
第2態様によれば、トランシーバのプロセッサで実行されると、第1態様による方法をトランシーバに実行させる命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0027】
第3態様によれば、送信機と、受信機と、送信機及び受信機の動作を制御するためのコントローラと、を備えるトランシーバが提供され、コントローラは、第1態様による方法に従って動作を制御する様に構成される。
【0028】
LAはチャネルの様々なセットに対して個別であるため、使用されるチャネルセットそれぞれに対して適切なMCSが選択され、選択されたMCSのデータレートは、通常、チャネルセット毎に大きく異なる。特に、良好な条件のチャネルでは非常に高いデータレートが達成されるため、システムのスペクトル効率が大幅に向上する。
【0029】
本開示の上記及び追加の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本開示の好ましい実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を通じて、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】異なるチャネルでSNRがどの様に変化するかの例を示す図。
【
図2】異なるチャネルでシンボル誤り率がどの様に変化するかの例を示す図。
【
図3】MCSが低い場合に異なるチャネルでシンボル誤り率がどの様に変化するかの例を示す図。
【
図4】別の例による、異なるチャネルでSNRがどの様に変化するかを示す図。
【
図5】別の例による、異なるチャネルでシンボル誤り率がどの様に変化するかを示す図。
【
図6】別の例による、MCSが低い場合に異なるチャネルでシンボル誤り率がどの様に変化するかを示す図。
【
図7】一例による、MCSを測定し、選択し、シグナリングするための初期パケット交換の概要を示す図。
【
図8】別の例による、MCSを測定し、選択し、シグナリングするための初期パケット交換の概要を示す図。
【
図9】複数の実施形態による方法を示すフローチャート。
【
図10】一実施形態によるトランシーバを示すブロック図。
【
図11】コンピュータ可読媒体及び処理デバイスを概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
提案方法は、一般に、使用されるキャリア周波数が、比較的短い時間以上、例えば、1msから1sの間で同じであるとは予想されないシステムに適用され、複数のキャリア周波数を使用する理由は、チャネルの大部分又はチャネル全体が深いフェージングにあるという状況を回避するためである。
【0032】
本開示の説明を簡略化するために、FHを採用し、かつ、2.4GHzの産業科学医療(ISM)帯域で動作するシステムについて説明する。具体的には、ブルートゥース(登録商標)システムで使用されるものとほぼ同じ通信パラメータを想定、つまり、チャネル帯域幅が1MHzであり、チャネルが1MHzで区切られており、合計で79チャネルが利用可能であり、FHが使用されることを想定する。本開示は、チャネル帯域幅がわずかに増加し、チャネルが2MHzで分離され、合計40チャネルになるBLEにも同様に適用され得る。
【0033】
元々、ブルートゥース(登録商標)は、ガウス周波数シフトキーイング(GFSK)に基づいており、シンボルレートは1Mシンボル/sであった。当時の最高データレートは1Mb/sであり、誤り訂正符号を使用することでより低いレートが可能であった。その後、最大データレートを増加させるために拡張データレート(EDR)が導入された。EDRは差動位相シフトキーイング(DPSK)に基づいており、差動4位相シフトキーイング(DQPSK)と差動8位相シフトキーイング(D8PSK)の2種類がある。前者の総データレートは2Mb/sであり、後者の総データレートは3Mb/sであり、一般にEDR2及びEDR3と呼ばれる。
【0034】
簡略化のため、誤り訂正符号に依存するデータレートは使用しないと仮定し、その結果、送信機は次の変調のいずれかを使用する。
1.GFSK-1Mb/sのデータレート
2.DQPSK-2Mb/sのデータレート
3.D8PSK-3Mb/sのデータレート
【0035】
幾つかの数値を与えるために、提供されたシミュレーション結果では、総ての変調フォーマットに対して非コヒーレント受信機を使用している。ある種の位相基準を生成することを試みることによって、より良い結果が得られることはよく知られているが、これは本開示には関係ない。本開示は、復調の詳細に関係なく適用可能である。
【0036】
最初に、チャネル帯域幅(1MHz)内のチャネルがフラットであると仮定すると、加法性ホワイトガウスノイズ(AWGN)チャネルとしてモデル化できる。必要な信号対雑音比(SNR)は、3つの異なる変調に対して16、14及び19dBであると想定できる。2Mb/sモードが1Mb/sモードよりも優れているという事実は、使用される変調によるものであるが、結果はもちろん、EDRがサポートされている場合には1Mb/sモードが使用されることはない。SNRが十分に高い場合は3Mb/sモードのEDR3が使用され、それ以外の場合は2Mb/sモードのEDR2が使用される。これは、非常に単純なリンクアダプテーションであることを示している。
【0037】
ここで、ブルートゥース(登録商標)が79チャネルのFHを使用し、チャネルが異なれば信号の減衰も異なるという事実を考慮する。79チャネルでSNRがどの様に変化するかの例を
図1に示し、79チャネルには-39から39までの番号が付けられており、0が中央のチャネルである。
【0038】
このシミュレーションにおいて、平均SNRは20dBであり、
図1からわかる様に、様々なチャネルのSNRは、6dBから25dBまで約20dBだけ変化する。EDR3(D8PSK)とEDR2(DQPSK)を使用して79の異なるチャネルのシンボル誤り率(SER)をシミュレートすると、
図2と
図3に示す結果が得られた。
【0039】
見てわかる様に、結果は、EDR2とEDR3にそれぞれ14dBと19dBが必要であるという仮定と非常によく一致している。
【0040】
注目に値するのは、約半分のチャネルでEDR3が好ましい変調である様に見えることである。チャネルの約35%では、EDR3ではSERが高くなりすぎるため、EDR2が推奨されている。チャンネルの残りの15%では、どの変調も機能しない。ここで、様々なチャネルを区別せず、全体的なパフォーマンスに基づいてLAを設定することとする。この場合、たとえば、EDR2とEDR3のどちらが最高の合計スループットを与えるかは、(正しいビットの確率)*(送信ビット数/シンボル)の積を考慮することで検討できる。これが行われると、EDR3が最良の選択であることがわかる。ただし、総スループットが低くなる代わりにエラーの確率を小さくする必要がある場合は、EDR2が好ましい選択となる。
【0041】
20dBの受信SNRは、帯域幅が1MHzのブルートゥース(登録商標)システムにおいては、凡そ-87dBmの受信機電力に相当する(雑音指数を7dBと仮定し、1MHzチャネルの端末雑音が-114dBmであることに注意されたい。)。単純なリンクバジェット分析では、多くの典型的なユースケースにおいて受信電力がかなり高くなる可能性があることがわかる。したがって、SNRが20dBから40dBに増加するシナリオを考える。対応するSNRの変動とシミュレートされたSERを
図4~6に示す。
図5と
図6を参照すると、SNRが26dBを超えているにもかかわらず、EDR2とEDR3の両方において、チャネル番号-15付近でエラーが発生する。
【0042】
このパフォーマンスの理由は、チャネルがチャネル番号-25で非常に深いフェードを経験するため、チャネルの振幅と位相が1MHzチャネル内で大幅に変化し、信号が大幅に歪むためである。具体的には、チャネルがフラットであるという仮定は有効ではない。実際、信号はシンボル間干渉(ISI)の影響を受ける、つまり、シンボルはある程度相互に干渉する。
【0043】
シミュレーション結果と上記の説明から、多くのことがわかる。第1に、FHシステムを使用する場合、最適なMCSは、使用するチャネルによって異なる。一部のチャネルは比較的良好であり、これらのチャネルには高いデータレートを実現するMCSを使用できるが、他のチャネルは比較的悪いため、これらのチャネルには、より低いデータレートに対応するより堅牢なMCSを使用する必要がある。
【0044】
第2に、一部のチャネルのリンクでISIが発生する可能性がある様な比較的単純な受信機が使用されている場合、受信機でのSNRだけを使用して受信機の性能を判断することはできない。特に、MCSが比較的高いデータレートを達成する場合、雑音ではなくISIがパフォーマンスを制限し得る。
【0045】
上記の議論に基づいて、以下の実施形態及び例は、問題に対処し、改善された性能を達成するために開示される。
【0046】
周波数ホッピングシステムの異なるチャネルが非常に異なるチャネル条件を経験することに対処するために、この実施形態は、リンクアダプテーションアルゴリズムの複数のインスタンスが同時に使用されるアプローチをカバーする。このアプローチは、複数のLAアルゴリズムが一度に1つずつ更新(アクティブ)され、どれが更新されるかは、どの周波数チャネルがデータの送信に使用されているかに依存することを特徴とする。
【0047】
一例として、周波数ホッピングシステムでは、同時LAアルゴリズムの数は、FHに使用される異なる周波数の数と同じであり得る。たとえば、FHに79チャネルが使用されている場合、並行して実行されるLAアルゴリズムインスタンスの数は79になる。
【0048】
別の例として、複雑さを軽減するために、並行して実行されるLAアルゴリズムの数は、FHに使用されるチャネルの数よりも少なくし得る。並行して実行されるLAアルゴリズムの数は、チャネルの周波数がどの程度変化しているか、つまり、チャネルの周波数選択性がどの程度であるかの推定値に基づき得る。例として、79チャネルでは、隣接する5つのチャネルの動作が類似していると判断される場合、これらに同じLAアルゴリズムを使用することができ、79チャネルのLAには合計で16のLAアルゴリズムが必要になる。
【0049】
FHシステムの異なるチャネルのそれぞれは、ほんのわずかな時間しか使用されないため、大量の統計データの収集に基づくLAアルゴリズムは適切ではないかもしれない。この観察に基づいて、実際のLAを実行する方法も開示する。
【0050】
使用するのに最適なMCSを見つけるために、明示的なフィードバックに基づく次のアプローチが開示される。送信機から目的の受信機に送信される第1パケットは、受信機が最も適切なMCSを決定できる様にするという主な目的を有し、データを伝送しない、或いは、可能な限り最小量のデータを伝送する(つまり、最低のデータレートと最短のパケットを使用することで)。受信機によって決定された最適なMCSは送信機に報告され、送信機はこの提案された最適なMCSを次の送信で使用する。この様にして、最適なMCSが、このチャネルでの2番目の送信で使用され得る。次の送信では、チャネルが比較的遅い速度で変化するだけであることが予想され、LAは受信機からの明示的なフィードバックに基づき、或いは、明示的なフィードバック無しに行われ、送信機は、ACK/NACKレポートの統計に基づいてLAを設定し得る。
【0051】
また、この実施形態の一部は、リンクがノイズで制限されているか、シンボル間干渉によって制限されているかを、明示的なフィードバックで受信機が示し得る。
【0052】
チャネルによって非常に異なるパフォーマンスになるため、最良のチャネルを使用し、特に最悪のチャネルを避けることが有利である。この実施形態によれば、データの実際の送信を開始する前にスキャンが実行される。一例として、全部で79の利用可能なチャネルがある場合、送信機はこれらのチャネルのそれぞれでパケットを送信し、受信機に対して、例えば、それぞれのチャネルに使用できるMCSが何であるかを報告することによって、これらの異なるチャネルの品質に関する情報を送り返す様に要求することができる。例えば、パケットの持続時間が100マイクロ秒で、スイッチング周波数の時間が150マイクロ秒の場合、1ミリ秒で4チャネルをスキャンできる。つまり、79チャネルを20ミリ秒でスキャンでき、実際の送信に使用する適切なチャネルを見つけることができる。
【0053】
アダプティブFHは、主にWi-Fiからの干渉を回避するためにブルートゥース(登録商標)で使用される手段である。Wi-Fiによって干渉される周波数は使用されず、これらの周波数が使用されない様に周波数ホッピングパターンが調整されるという考え方である。通常、これは、例えば、Wi-Fi干渉が検出される場所に対応する20の連続したチャネルを使用しない様に、ホッピングパターンが更新されることを意味する。ただし、FHのアダプテーションは、個々の周波数にも適用され得る。この実施形態によれば、AFHは、例えば、実施形態3で説明した様に、異なる周波数におけるチャネル品質に基づく。
【0054】
FHシステムが、元のブルートゥース(登録商標)システムの様に、各パケット送信後に周波数が変更されるようなものである場合、FHシーケンスは、最高のデータレートが実現可能であると判断された周波数のみで構成され得る。あるいは、FHシーケンスは、2つの最高のデータレートが実現可能な周波数で構成され、
図1~
図6に示す様に、推定されたチャネル品質に応じて、異なるMCSが、異なるチャネルに使用される。
【0055】
代わりに、FHシステムが十分に良好であると見なされる1つのチャネルを使用し、この条件が満たされないときのみに変更する場合、同様のアプローチが使用されるが、FHシーケンスの次の周波数は、現在の周波数が十分に良くないことが分かった場合にのみ使用される。FHを実行するこの方法は、BLEで使用されるアプローチに似ている。
【0056】
多くの場合、チャネルはゆっくりと変化しているが、通常、完全に静的ではない。これは、ある時点で使用するのに最適なチャネルを決定するために全帯域幅をスキャンしたとしても、これらのチャネルは実際に必要なときに好ましい特性を持たない可能性があることを意味する。過去には良好と分類されたが、不良に変化したチャネルへのホッピングを回避するために、以下のアプローチが開示される。このアプローチは、チャネルが送信毎に変更される状況にも原理的に使用できるとしても、チャネルが良好である限り使用される状況を主に意図している。
【0057】
この実施形態によれば、送信機は、データを送信するために現在使用しているチャネルが悪くなる場合に変更する、適切なチャネルの更新されたリストを保持する。リストは、単一のチャネル、又は、順番に使用される複数のチャネルで構成される。この更新されたリストを維持するために、送信機は、送信の一部を使用して別の周波数でスキャンを実行し、この周波数が必要に応じて変更するのに適した周波数であるかどうかを判断する。例として、送信機が受信機に対して平均1Mb/sのデータストリームを維持する必要があるものとする。これは例えばある種のストリーミングアプリケーションに対応する。適切なチャネルを使用することにより、4Mb/sで送信できるため、総容量の25%のみを使用する必要がある。次に、送信機と受信機は、特定の時間に所定の周波数でセンシングを実行することに同意し得る。送信機は、例えば、現在使用されているチャネルが劣化し始めた場合に、周波数が変更するのに適した候補であるかどうかを判断するために、データ送信に使用される周波数以外の周波数で100ミリ秒ごとにプロービングパケットを送信し得る。送信機と受信機は、例えば、適切な周波数のリストを保持するために、10個の候補周波数すべてが毎秒プローブされる様に、所定の順序に従ってプローブされる10個の候補周波数のリストに同意する。必要な場合に変更する周波数として、送信機と受信機は、十分に良好であることが判明した最後にスキャンされた周波数を使用することに同意し得る。
【0058】
BLEシステムの特定のケースにおいては、各接続イベントでの初期送信を利用して、その特定のチャネルのチャネル状態に関する情報を取得することができる。
【0059】
マスタデバイスによって常に送信される、イベントの最初の送信は、パケットがチャネルをプローブすることを目的としていることを示すフラグを含み得る。このパケットは、1Mb/sのベースラインデータレートを使用して送信される。あるいは、拡張データレートモードが使用されている場合、ベースラインデータレートは、この拡張モードでサポートされている可能な限り低いデータレートに対応し得る。次に、スレーブデバイスは確認応答でパケットに応答し、マスタデバイスがその送信でチャネル品質測定を実行できる様にし、接続イベント全体での後続送信において適切なMCSを選択する。選択されたMCSは、次のパケットでスレーブデバイスに示される。
【0060】
測定値を伝達するために必要な追加情報が2オクテット以内に収まり、基本的な1MBPS PHYが使用されていると仮定すると、測定値を取得し、使用するMCSを選択してシグナリングするためのこの最初のトランザクションは、834μsで完了し、現在の接続イベントの残りの部分において、より高いレートでデータを送信するために使用される。
【0061】
図7は、初期パケット交換の概要を示し、ここで、(1)は接続イベントの最初の送信であり、(2)はスレーブからの確認応答であり、(3)はMCSインジケーションパケットであり、(4)はスレーブからの最終的な確認応答である。オプションで、(2)は、(1)での測定を実行することによってスレーブデバイスによって取得されたチャネル状態に関する情報を含み、マスタデバイスにMCS選択のための追加情報を提供する。
【0062】
より高いデータレートの伝送モードが、使用されるレートに関する事前の知識がなくても受信機が任意のレートをデコードできる様に構築されている場合、初期パケット交換をさらに短くすることができる。その場合、
図7のパケット(3)及び(4)は省略され得る。あるいは、明示的なフィードバックに基づく上記のアプローチを使用すること、つまり、受信側が最適なMCSを決定し、この情報を応答パケットでマスタに送信できる。
図8は、MCS情報をわずか342μsで取得できるこの短い交換を示している。
【0063】
上述した様に、BLEの周波数は、新しい接続イベント毎に変更される。異なる周波数の品質はかなり変動することが予想されるので、良好なチャネル状態のチャネルが、あまり良好ではないチャネル状態のチャネルよりも多く使用されることができれば有利である。すでに述べたアプローチの1つは、AFHを使用し、貧弱なチャネルを単純に回避する。ただし、チャネルが変化している環境では、どのチャネルが良好で、どのチャネルが不良であるかは時間の経過とともに変化し、AFHは単に遅すぎて意図したとおりに機能しない場合がある。チャネルのより良い使用を達成するために、すなわち、良好なチャネルをより多く使用するために、以下のアプローチが開示され、これは、マイナーな変更を加えたBLE FHアプローチに従う。FHシーケンスは、BLEと同様に、実際のデータ送信が開始される前に合意される。ただし、接続間隔の長さは固定されておらず、接続イベントごとに変更できる。具体的には、チャネルが不良であることが判明した場合、チャネルイベントを終了し、FHシーケンスの次の周波数で新しい接続イベントを開始できる。一方、接続イベントが良好なチャネルを使用している場合は、チャネルが十分に良好であると見なされる限り、この周波数にとどまる様に接続イベントを拡張できる。
【0064】
周波数の変更、つまり接続イベントの終了は、いずれかのデバイスによって開始でき、チャネルがますます悪化していることを示す。
【0065】
図9は、異なる実施形態による方法を示すフローチャートである。様々なオプションが利用可能で、破線のボックスとして示されている。中心的な機能は、周波数ホップ毎にチャネルの各セットの変調及び符号化方式を調整(904)することであり、変調及び符号化方式の調整にはリンクアダプテーションアルゴリズムのセットが使用される。本質的に、リンクアダプテーションアルゴリズムは、単一のチャネル、又は、隣接する周波数といった相関する特性を持つチャネルのセットに使用される。他のチャネル又はチャネルのセットについては、他のリンクアダプテーションアルゴリズムが使用される。前述した様に、これにより、それぞれのチャネルの一致と追跡が向上する。
【0066】
MCSの調整(904)は、上述した様に明示的なフィードバックに基づき得る。これには、チャネル上で、応答を取得するために最初のパケットを送信することが含まれ、最初にそのチャネルを使用するときに、応答から、使用する適切なMCS、つまりリンクアダプテーションの開始点が取得される。これは、適切なMCSに関する情報を受信することによって、又は、受信に基づいて適切なMCSを決定することによって行われ得る。後者は相互チャネルに依存する。この様にして、そのチャネルに関する知識が得られる。
【0067】
1つのオプションによると、チャンネルはスキャン(900)される。利用可能なチャネルのサブセット、又は、利用可能な総てのチャネルがスキャンされる。この様にして、チャネル特性に関する知識が得られる。
【0068】
チャネルに関する収集された知識に基づいて、一部のチャネルは不良と見なされ、例えば、使用される動作モードの最低MCS、つまり最も堅牢な利用可能MCSでの動作に対応する閾値を下回る特性を有する。その様なチャネルは、少なくともある程度の期間、さらなる使用のために無視(901)され得る。
【0069】
チャネルに関する収集された知識に基づいて、一部のチャネルは良好であると見なされ、ターゲットMCS又は使用された動作モードの最大MCSでの動作に対応する閾値に達する特性を有する。その様なチャネルは、少なくともある程度の期間、さらに使用するためにリスト化(902)される。
【0070】
チャネルに関する収集された知識から、チャネルがノイズで制限されているか干渉で制限されているかを決定(903)することもできる。その様なチャネル制限に関する知識は、周波数ホッピングでチャネルのMCSを調整するためにも使用できる。
【0071】
周波数ホッピング自体も調整できる。例えば、ホッピングシーケンス、すなわち、周波数ホッピングを実行するときにどのチャネルに変更するかは、チャネルについて得られた知識に基づいて適合(905)される。たとえば、既知の良好チャネルが優先され、既知の不良チャネルは回避される。周波数ホッピングのタイミングの側面は、追加的又は代替的に適合(906)され得る。動作は、良好な、すなわち良好で永続的な特性に長時間とどまることを含む一方、変化する特性を有するチャネルは、より短い時間だけ使用される。周波数ホッピングの文脈において、周波数ホッピングを行うための所定のペースを意味する"ホッピングレート"が参照される。しかし、この開示では、"ホッピングレート"という用語は、より広い意味で解釈されるべきであり、可変かつ調整可能なタイミングの問題と見なされるべきである。
【0072】
図10は、一実施形態によるトランシーバ1000を示すブロック図である。トランシーバ1000は、アンテナ構成1002と、アンテナ構成1002に接続される受信機1004と、アンテナ構成1002に接続される送信機1006と、好ましくは1つ又は複数の回路を含む処理要素1008であるコントローラと、1つ又は複数の入力インタフェース1010と、1つ又は複数の出力インタフェース1012と、を備える。インタフェース1010、1012は、ユーザインターフェース、及び/又は、電気又は光の信号インタフェースであり得る。トランシーバ1000は、セルラ通信ネットワークで動作する様に構成される。特に、処理要素1008が
図1から
図9を参照して示された実施形態を実行する様に構成されていることにより、トランシーバ1000は周波数ホッピングとリンクアダプテーションを組み合わせることができる。処理要素1008はまた、処理要素1008が受信機1004及び送信機1006に接続されているために受信及び送信を可能にする信号処理から、アプリケーションの実行、インタフェース1010、1012の制御等までのレンジの多数のタスクを満たすこともできる。
【0073】
本開示による方法は、特に、上で示した処理要素1008が周波数ホッピング及びリンクアダプテーションを処理するプロセッサを備える場合に、コンピュータ及び/又はプロセッサ等の処理手段を用いた実装に適している。したがって、処理手段、プロセッサ、又は、コンピュータに、
図1から
図6を参照して説明した実施形態のいずれかによる方法のいずれかのステップを実行させる様に構成された命令を含むコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、好ましくは、
図11に示す様に、コンピュータ可読媒体1100に格納されたプログラムコードを含み、処理手段、プロセッサ、又は、コンピュータ1102によってロード及び実行され、本開示の実施形態による、好ましくは、
図1から
図6を参照して説明された実施形態のそれぞれの方法を実行させることができる。コンピュータ1102及びコンピュータプログラム製品1100は、プログラムコードを順次実行する様に構成され、方法のいずれかのアクションが段階的に実行される、或いは、リアルタイムベースで実行される。処理手段、プロセッサ又はコンピュータ1102は、好ましくは、通常、組み込みシステムと呼ばれるものであり得る。したがって、
図11に示されているコンピュータ可読媒体1100及びコンピュータ1102は、原理の理解を提供するための例示のみを目的としており、要素の直接的な例示とは解釈されるべきではない。
【0074】
本開示は、次の項目に要約され得る。
【0075】
1.チャネル間の周波数ホッピングを含む送信方法であって、
周波数ホッピン毎にチャネルの各セットの変調及び符号化方式を調整することを含み、
リンクアダプテーションアルゴリズムのセットが、変調及び符号化方式の調整のために使用される、方法。
【0076】
2.項目1に記載の方法であって、チャネルのセットは、単一のチャネルを含む、方法。
【0077】
3.項目1に記載の方法であって、チャネルのセットは、隣接する周波数の複数チャネルを含む、方法。
【0078】
4.項目1から3のいずれか1つに記載の方法であって、リンクアダプテーションアルゴリズムのセットのリンクアダプテーションアルゴリズム数は、チャネルのセットのチャネル数と同じである、方法。
【0079】
5.項目1から4のいずれか1つに記載の方法であって、チャネルのセットそれぞれに属するチャネルは、動作中に適合される、方法。
【0080】
6.項目1から5のいずれか1つに記載の方法であって、変調及び符号化方式を調整することは、
最も低い変調及び符号化方式を使用して、1つのチャネルで第1パケットを送信することと、
第1パケットに対する応答を受信することと、
チャネルに適切な変調及び符号化方式を取得することと、
適切な変調及び符号化方式に基づいて、次のパケットの変調及び符号化方式を調整することと、を含む方法。
【0081】
7.項目6に記載の方法であって、適切な変調及び符号化方式を取得することは、受信した応答において、適切な変調及び符号化方式に関するインジケーションを受信することを含む、方法。
【0082】
8.項目6に記載の方法であって、適切な変調及び符号化方式を取得することは、受信した応答から適切な変調及び符号化方式を決定することを含む、方法。
【0083】
9.項目1から8のいずれか1つに記載の方法であって、チャネル制限が雑音による制限であるか、干渉による制限であるかを決定することを含み、変調及び符号化方式を調整することは、チャネル制限の決定さらに基づく、方法。
【0084】
10.項目6から9のいずれか1つに記載の方法であって、第1パケットは、使用される動作モードに対して最小の変調及び符号化方式を使用する、方法。
【0085】
11.項目1から5のいずれか1つに記載の方法であって、
チャネルプロパティを決定するために、チャネルのセットの少なくともサブセットをスキャンすることを含み、
変調及び符号化方式を調整することは、チャネルのセットの少なくともサブセットについて得られた知識に基づいて調整することを含む、方法。
【0086】
12.項目1から11のいずれか1つに記載の方法であって、第1閾値未満のプロパティを有すると決定されたチャネルのセットの使用を行わないことを含む、方法。
【0087】
13.項目12に記載の方法であって、第1閾値は、使用される動作モードに対して最小の変調及び符号化方式を使用することの実現可能性に対応する、方法。
【0088】
14.項目1から13のいずれか1つに記載の方法であって、第2閾値に達するプロパティを有するチャネルのセットをリスト化することを含む、方法。
【0089】
15.項目14に記載の方法であって、第2閾値は、使用される動作モードに対して最大の変調及び符号化方式を使用することの実現可能性に対応する、方法。
【0090】
16.項目1から15のいずれか1つに記載の方法であって、ホッピングシーケンスは、チャネルの少なくともサブセットのスキャンの結果に基づく、方法。
【0091】
17.項目16に記載の方法であって、ホッピングシーケンスは、各ホッピングで決定される、方法。
【0092】
18.項目16に記載の方法であって、ホッピングシーケンスは、各スキャンで決定される、方法。
【0093】
19.項目1から18のいずれか1つに記載の方法であって、周波数ホッピングレートは、変調及び符号化方式の調整の決定に基づいて調整可能である、方法。
【0094】
20.項目19に記載の方法であって、周波数ホッピングレートは、各ホッピングで決定される、方法。
【0095】
21.項目19に記載の方法であって、周波数ホッピングレートは、チャネルのセットに関する新しい情報を取得する際に決定される、方法。
【0096】
22.項目19に記載の方法であって、周波数ホッピングレートは、使用中のチャネルが第3閾値未満のプロパティを有するときに新しいチャネルにホッピングすることによって決定される、方法。
【0097】
23.項目22に記載の方法であって、第3閾値は、使用される動作モードに対して目標の変調及び符号化方式を使用することの実現可能性に対応する、方法。
【0098】
24.項目15、17、21、22又は23に記載の方法であって、ホッピングレート及びホッピングシーケンスは、使用されるチャネルのセットが第2閾値を満たす様に決定される、方法。
【0099】
25.トランシーバのプロセッサで実行されると、トランシーバに、項目1から24のいずれか1つに記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【0100】
26.送信機と、受信機と、送信機及び受信機の動作を制御するためのコントローラと、を備えるトランシーバであって、コントローラは、項目項1から24のいずれか1つに記載の方法に従って動作を制御する様に構成されている、トランシーバ。