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特許7577875新規の造粒球状黒鉛、これを負極活物質として含む二次電池、および該造粒球状黒鉛の製造方法
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  • 特許-新規の造粒球状黒鉛、これを負極活物質として含む二次電池、および該造粒球状黒鉛の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】新規の造粒球状黒鉛、これを負極活物質として含む二次電池、および該造粒球状黒鉛の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20241028BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241028BHJP
【FI】
C01B32/205
H01M4/587
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023572552
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2021014070
(87)【国際公開番号】W WO2023008646
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0099774
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523440684
【氏名又は名称】エルピーエヌ カンパニー、リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522467404
【氏名又は名称】チョン、ヨン ウン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】オウ、チョン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハン ジン
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124425(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0040810(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-2254549(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0087986(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0078044(KR,A)
【文献】特開2004-210634(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 -32/991
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鱗片状の天然黒鉛およびピッチをそれぞれ微粉化する段階(「天然黒鉛およびピッチそれぞれの微粉化段階」);
(b)前記段階(a)のそれぞれ微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合段階(「天然黒鉛およびピッチの混合段階」);
(c)前記段階(b)の混合物に溶媒の追加混合段階(「溶媒混合段階」);
(d)前記段階(c)の混合物を造粒球状加工して、造粒球状化した第1黒鉛複合体を製造する段階(「造粒球状化段階」);
(e)前記段階(d)の造粒球状化が完了した第1黒鉛複合体に追加の微粉化したピッチを付加および混合コーティングする段階(「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」);
(f)前記段階(e)の混合物を追加混合し、混合を完了して、球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体を製造する段階(「追加混合の完了段階」)
(g)前記段階(f)の前記二次複合体を一次熱処理する段階(「一次熱処理段階」);および
(h)前記段階(g)の一次熱処理後、常温に冷ました後、さらに二次熱処理する段階(「二次熱処理段階」);を含む、造粒球状黒鉛の製造方法であって、
前記段階(e)である「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」の追加される微粉化したピッチの量は、前記段階(a)の微粉化した天然黒鉛、微粉化したピッチ、および前記追加される微粉化したピッチを合わせた総重量部に対して前記段階(a)の微粉化したピッチおよび前記段階(e)の追加される微粉化したピッチを合わせた量が25重量%超であり、
前記段階(d)である「造粒球状化段階」の造粒球状の条件は、線速度4,500m/min~8,000m/min、および加工時間100秒~600秒であり、
前記段階(g)である「一次熱処理段階」の熱処理条件は、1,000℃以上で30分間以上処理し、
前記段階(h)である「二次熱処理段階」の熱処理条件は、2,000℃以上で30分間以上処理することを特徴とする、前記の造粒球状黒鉛の製造方法。
【請求項2】
前記段階(a)の「鱗片状の天然黒鉛」平均粒径は、5μm~500μmであり、前記天然黒鉛の微粉化は、5bar~10barの圧力下で高速機械的ミーリング装置を用いて行われ、微粉化した天然黒鉛粒子の平均粒径は、1μm~10μmであることを特徴とする請求項1に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
【請求項3】
前記段階(a)のピッチの微粉化は、5bar~10barの圧力下で高速機械的ミーリング装置を用いて行われ、微粉化したピッチの平均粒径は、0.5μm~10μmであることを特徴とする請求項1に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
【請求項4】
前記段階(b)の微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合重量%の割合は、99:1~50:50であることを特徴とする請求項1に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
【請求項5】
前記段階(c)の溶媒混合段階の溶媒は、灯油、重油、軽油、またはパラフィンオイルの鉱物油;トルエン、またはデカンの炭化水素溶媒;およびこれらの混合物;からなるグループから選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
【請求項6】
前記段階(c)の溶媒混合段階の溶媒使用量は、「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合物」100重量部に対して10~50重量部であることを特徴とする請求項1に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
【請求項7】
前記段階(f)である「追加混合の完了段階」の追加混合は、前記段階(e)から形成された球状化した第1黒鉛複合体を1,000rpm~3,000rpmの速度の高速混合器で1分間以上混合することを特徴とする請求項1に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の造粒球状黒鉛、これを負極活物質として含む電池、および該造粒球状黒鉛の製造方法に関し、具体的には、鱗片状の天然黒鉛および非結晶質炭素であるピッチから球状化過程を経て製造される粒径が数μmの造粒球状黒鉛、該造粒球状黒鉛を負極活物質として使用する電池、および該造粒球状黒鉛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、5G通信などの登場による携帯電話のような携帯用情報機器の発達に伴い、電池の需要が急速に増加しており、また、電池の用途も拡大している。このような状況によって要求される電池が、電池の小型化と軽量化を満足するリチウムイオン二次電池である。このようなリチウム二次電池の高い性能のために、電池の負極活物質として黒鉛のような炭素質材料が用いられている。
【0003】
前記二次電池用負極活物質に使用される炭素質材料の黒鉛は、電池の充放電効率のために、球状の形態で使用しなければならず、より好ましくは、結晶性の球状形態で使用しなければならない。二次電池用負極活物質に使用される球状黒鉛の製造は、多様な方法が知られている。
【0004】
一方、一般的に、結晶性の高い黒鉛であるほど、結晶性が規則的に成長して鱗片状を示す。これによって、二次電池用負極活物質として好ましい結晶性の球状黒鉛を得る1つの方法としては、天然資源から採取した鱗片状の天然黒鉛を破砕、精製、粉砕、選別などの機械的方法を通じて球状形態に加工する方法が用いられる。このような機械的方法で鱗片状の天然黒鉛から結晶性の球状黒鉛が得られる収率は約30%以下であり、残りの70%以上が前記機械的過程で廃棄される。
【0005】
鱗片状の天然黒鉛は、安価に購入できるが、鱗片状の天然黒鉛から結晶性の球状黒鉛の製造効率が上記のように約30%に低く、結局、結晶性の球状黒鉛の製造に高コストがかかる。
【0006】
したがって、廃棄される鱗片状の天然黒鉛の効用性を高め、高効率で製造が比較的容易であり、大量生産が可能な造粒球状黒鉛を製造できる新しい製造方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、廃棄される天然黒鉛を用いて高効率で低コストでありながらも製造が容易で、大量生産が可能な負極活物質用造粒球状黒鉛の製造方法を提供しようとする。
【0008】
また、本発明は、電池の初期放電容量および初期効率に優れた負極活物質用造粒球状黒鉛の製造方法およびこの製造方法で得られた造粒球状黒鉛を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、造粒球状黒鉛の結晶質に優れた造粒球状黒鉛の製造方法およびこの製造方法で得られた造粒球状黒鉛を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記造粒球状黒鉛の結晶質化後、結晶質の粒子が比表面積4.5m/g以下と粒子サイズが均一であり、結晶質化後に造粒球状黒鉛粒子の結晶質化度を示すd002(nm、黒鉛層間距離)が0.338以下と結晶化度に優れた造粒球状黒鉛の製造方法およびこの製造方法で得られた造粒球状黒鉛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述のような目的を達成するための本発明の新規の造粒球状黒鉛の製造方法は、
(a)鱗片状の天然黒鉛およびピッチをそれぞれ微粉化する段階(「天然黒鉛およびピッチそれぞれの微粉化段階」);
(b)前記段階(a)のそれぞれ微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合段階(「天然黒鉛およびピッチの混合段階」);
(c)前記段階(b)の混合物に溶媒の追加混合段階(「溶媒混合段階」);
(d)前記段階(c)の混合物を造粒球状加工し、造粒球状化した第1黒鉛複合体を製造する段階(「造粒球状化段階」);
(e)前記段階(d)の造粒球状化が完了した第1黒鉛複合体に追加のピッチを付加および混合コーティングする段階(「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」);
(f)前記段階(e)の混合物を追加混合し、混合を完了して、球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体を製造する段階(「追加混合の完了段階」)
(g)前記段階(f)の前記二次複合体を一次熱処理する段階(「一次熱処理段階」);および
(h)前記段階(g)の一次熱処理後、常温に冷ました後、さらに二次熱処理する段階;を含む。
【0012】
前記の段階(a)~(h)を含む本発明による造粒球状黒鉛の製造方法で製造された造粒球状黒鉛は、二次電池の負極活物質の製造に使用できる。

本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
(a)鱗片状の天然黒鉛およびピッチをそれぞれ微粉化する段階(「天然黒鉛およびピッチそれぞれの微粉化段階」);
(b)前記段階(a)のそれぞれ微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合段階(「天然黒鉛およびピッチの混合段階」);
(c)前記段階(b)の混合物に溶媒の追加混合段階(「溶媒混合段階」);
(d)前記段階(c)の混合物を造粒球状加工して、造粒球状化した第1黒鉛複合体を製造する段階(「造粒球状化段階」);
(e)前記段階(d)の造粒球状化が完了した第1黒鉛複合体に追加のピッチを付加および混合コーティングする段階(「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」);
(f)前記段階(e)の混合物を追加混合し、混合を完了して、球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体を製造する段階(「追加混合の完了段階」)
(g)前記段階(f)の前記二次複合体を一次熱処理する段階(「一次熱処理段階」);および
(h)前記段階(g)の一次熱処理後、常温に冷ました後、さらに二次熱処理する段階;を含むことを特徴とする、造粒球状黒鉛の製造方法。
[2]
前記段階(a)の「鱗片状の天然黒鉛」は、当該平均粒径が5μm~500μmであり、前記天然黒鉛の微粉化は、5bar~10barの圧力下で高速機械的ミーリング装置を用いて行われ、微粉化した天然黒鉛粒子の平均粒径は、1μm~10μmであることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[3]
前記段階(a)のピッチの微粉化は、5bar~10barの圧力下で高速機械的ミーリング装置を用いて行われ、微粉化したピッチの平均粒径は、0.5μm~10μmであることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[4]
前記段階(b)の微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合重量%の割合は、99:1~50:50であることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[5]
前記段階(c)の溶媒混合段階の溶媒は、灯油、重油、軽油、パラフィンオイルなどの鉱物油;トルエン、デカンなどの炭化水素溶媒;およびこれらの混合物;からなるグループから選ばれる1つ以上であることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[6]
前記段階(c)の溶媒混合段階の溶媒使用量は、「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合物」100重量部に対して10~50重量部であることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[7]
前記段階(d)である「造粒球状化段階」の造粒球状化は、4,000m/min超8,000m/minまでの回転力および100秒~600秒の作動時間で行われることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[8]
前記段階(e)である「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」の追加される微粉化したピッチの量は、前記段階(a)の微粉化した天然黒鉛、微粉化したピッチ、および前記追加される微粉化したピッチを合わせた総重量部に対して前記段階(a)の微粉化したピッチおよび前記段階(e)の追加される微粉化したピッチを合わせた量が25重量%超であることを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[9]
前記段階(f)である「追加混合の完了段階」の追加混合は、前記段階(e)から形成された球状化した第1黒鉛複合体を1,000rpm~3,000rpmの速度の高速混合器で1分間以上混合することを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[10]
前記段階(g)である「一次熱処理段階」の熱処理条件は、1,000℃以上で30分間以上処理することを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[11]
前記段階(h)である「二次熱処理段階」の熱処理条件は、2,000℃以上で30分間以上処理することを特徴とする[1]に記載の造粒球状黒鉛の製造方法。
[12]
[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする造粒球状黒鉛。
[13]
天然黒鉛および非晶質炭素のピッチを用いて製造した造粒球状黒鉛中の天然黒鉛に対して結晶質炭素の割合が15%超であることを特徴とする造粒球状黒鉛。
[14]
造粒球状黒鉛の粒子の比表面積が4.5m /g以下であり、黒鉛粒子の結晶化度を示すd002(nm、黒鉛層間距離)が0.338以下であることを特徴とする造粒球状黒鉛。
[15]
[12]に記載の造粒球状黒鉛を負極活物質として使用することを特徴とする二次電池。
[16]
[13]または[14]に記載の造粒球状黒鉛を負極活物質として使用することを特徴とする二次電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明による新規の造粒球状黒鉛の製造方法は、低コストかつ高効率、および製造の容易性による大量生産が可能であるという長所がある。
【0014】
また、本発明による新規の造粒球状黒鉛の製造方法は、優れた結晶性および一定の粒子サイズを有する負極活物質として使用できる造粒球状黒鉛を製造することができ、このような特性によって本発明による造粒球状黒鉛の製造方法によって製造された造粒球状黒鉛を電池の負極活物質として使用する場合、電池の初期放電容量および初期効率に優れているという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による造粒球状黒鉛の製造方法の実施例1によって製造された造粒球状黒鉛集合体のSEMである。
図2図2は、本発明の実施例2によって製造された造粒球状黒鉛集合体のSEMである。
図3図3は、本発明の比較例2によって製造された造粒球状黒鉛集合体のSEMである。
【0016】
(発明を実施するための最善の形態)
下記の説明では、本発明の実施例を理解するのに必要な部分のみが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で省略されることに留意されたい。
【0017】
以下で説明される本明細書および請求範囲に使用される用語や単語は、通常的または辞書的意味に限定して解釈されるべきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味と概念に沿って解釈されるべきものである。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえることを理解すべきである。
【0018】
本発明は、高効率による低コストで大量生産が可能であり、造粒球状黒鉛の結晶質に優れ、粒子サイズが均一な造粒球状黒鉛の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る造粒球状黒鉛の製造方法は、
(a)鱗片状の天然黒鉛およびピッチをそれぞれ微粉化する段階(「天然黒鉛およびピッチそれぞれの微粉化段階」);
(b)前記段階(a)のそれぞれ微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合段階(「天然黒鉛およびピッチの混合段階」);
(c)前記段階(b)の混合物に溶媒の追加混合段階(「溶媒混合段階」);
(d)前記段階(c)の混合物を造粒球状加工して、造粒球状化した第1黒鉛複合体を製造する段階(「造粒球状化段階」);
(e)前記段階(d)の造粒球状化が完了した第1黒鉛複合体に追加のピッチを付加および混合コーティングする段階(「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」);
(f)前記段階(e)の混合物を追加混合し、混合を完了して、球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体を製造する段階(「追加混合の完了段階」)
(g)前記段階(f)の前記二次複合体を一次熱処理する段階(「一次熱処理段階」);および
(h)前記段階(g)の一次熱処理後、常温に冷ました後、さらに二次熱処理する段階;を含む。
【0020】
以下では、前記段階(a)~(h)について具体的に説明する。
【0021】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(a)の「鱗片状の天然黒鉛」は、当該平均粒径が5μm~500μmであってもよく、好ましくは、5μm~100μmであってもよく、平均粒径が500μmを超えると、全体的な製造時間が増加し、経済的に好ましくない。
【0022】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(a)の天然黒鉛の微粉化は、高速機械的ミーリング装置であるハンマーミル、ジェットミル、ビーズミル、またはこれらの混合で行われ、好ましくは、ジェットミルを使用する。この際、前記ハンマーミル、ジェットミル、ビーズミルの使用圧力は、それぞれ、使用されるミルに必要な圧力で使用され、ジェットミルを使用して微粉化する場合の圧力は、5bar~10barであり、好ましくは、7bar~10barである。
【0023】
また、前記のような鱗片状の天然黒鉛からジェットミルなどを用いた微粉化過程を経て平均粒径1μm~10μm、好ましくは、1μm~5μmの天然黒鉛粒子を製造する。このように製造された平均粒径1μm~10μmの天然黒鉛粒子を「微粉化した天然黒鉛」という。
【0024】
なお、段階(a)のピッチは、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、または高分子樹脂であり、好ましくは、石油系ピッチである。
【0025】
前記ピッチの微粉化は、高速機械的ミーリング装置であるハンマーミル、ジェットミル、ビーズミル、またはこれらの混合で行われ、好ましくは、ジェットミルを使用する。この際、前記ハンマーミル、ジェットミル、ビーズミルの使用圧力は、それぞれ、使用されるミルに必要な圧力で使用され、ジェットミルを使用して微粉化する場合の圧力は、5bar~10barであり、好ましくは、6bar~10barである。
【0026】
また、前記のようなピッチからジェットミルなどを用いた微粉化過程を経て平均粒径0.5μm~10μm、好ましくは、0.5μm~5μmのピッチ粒子を製造する。このような平均粒径0.5μm~10μmのピッチ粒子を「微粉化したピッチ」という。
【0027】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(b)の「天然黒鉛およびピッチの混合段階」において「微粉化した天然黒鉛」および「微粉化したピッチ」の混合重量%の割合は、99:1~50:50であり、好ましくは、99:1~70:30である。前記範囲から外れる場合には、完成された造粒球状黒鉛の結晶質化が低くなり、負極活物質に製造する過程中に加圧などの工程で造粒球状黒鉛の粒子がこわれるなど負極活物質の製造過程が不安定な短所が発生することがある。
【0028】
前記混合段階の混合時間は、「微粉化した天然黒鉛」および「微粉化したピッチ」の混合が完全に行われるまでの時間であり、使用される量によって決定することができる。好ましい混合時間は、1時間以上である。
【0029】
前記段階(c)の「溶媒混合段階」は、前記段階(b)による「微粉化した天然黒鉛」および「微粉化したピッチ」の混合物に溶媒を付加し、さらに混合する段階である。
【0030】
前記溶媒は、ピッチを溶解できる溶媒は、いずれも使用可能であり、好ましくは、灯油、重油、軽油、パラフィンオイルなどの鉱物油;トルエン、デカンなどの炭化水素溶媒;およびこれらの混合物;からなるグループから選ばれる1つ以上であり、より好ましくは、灯油、軽油、重油、パラフィンオイルなどの石炭系オイルである。
【0031】
前記段階(c)の「溶媒混合段階」で溶媒の使用量は、「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合物」100重量部に対して10~50重量部であり、好ましくは、20~40重量部であり、より好ましくは、20~30重量部である。
【0032】
溶媒の使用量が前記10重量部より少なければ、微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチの混合が不良になり、結果的に、球状化が部分的に行われず、造粒化しない天然黒鉛の微粉が多くなり得るので、造粒球状黒鉛の製造効率が劣り、また、液状ピッチの使用量の割合が前記50重量部より多ければ、製造される造粒球状黒鉛の平均粒径が大きくなり、二次電池用負極活物質などのような利用可能な適正の粒子直径の造粒球状黒鉛粒子の製造収率に問題が発生することがある。
【0033】
前記段階(c)における混合は、スクリューミキサーのような混合器を用いて混合し、混合時間は、「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチ」の混合物が溶媒に完全に混合されるまでの時間であり、使用される量によって決定することができる。好ましい混合時間は、1時間以上である。
【0034】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(d)の「造粒球状化段階」は、前記段階(c)の混合物を造粒球状化装置を用いて造粒球状化した第1黒鉛複合体である「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体」を製造する段階である。
【0035】
前記造粒球状化装置は、当業界に知られた回転が可能な装置であり、ローターにブレードが形成され、回転時に摩擦とせん断応力を前記減圧処理された混合物に加える球状化装置が好ましい。このような減圧処理された混合物に加えられた摩擦とせん断応力によって微粒化した黒鉛の球状化が行われると見られる。
【0036】
前記造粒球状化装置は、4,000m/min超8,000m/minの回転力で作動し、好ましくは、4,500m/min~6,000m/minの回転力で作動する。また、前記回転力での作動時間は、100秒~600秒であり、好ましくは、150秒~400秒である。前記回転力が前記範囲より小さければ、「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体」の製造時に微粉が多く発生し、最終的に製造された造粒球状黒鉛全体粒子の比表面積が大きくなり(比較例2参照)、また、前記範囲より回転力が超過しても、最終的に適正なレベルの比表面積を有する造粒球状黒鉛の製造が困難になる。これによって、初期放電容量などで優れた効果を示すことができる二次電池の負極活物質用造粒球状黒鉛の製造効率が低くなる。
【0037】
また、前記造粒球状化時間が前記作動時間範囲の時間より少なければ、黒鉛の造粒球状化の効率が低くなり、前記作動時間範囲の時間より多ければ、造粒球状化した黒鉛の粒子が大きくなり、初期放電容量などで優れた効果を示すことができる二次電池負極活物質用の造粒球状黒鉛を製造することが困難がなる。
【0038】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(e)の「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」は、前記段階(d)の造粒球状化段階で製造された球状化した第1黒鉛複合体、すなわち「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体」の外部に追加の微粉化したピッチを付加し、混合し、コーティングする段階である。
【0039】
前記追加される微粉化したピッチの量は、前記段階(a)の微粉化した天然黒鉛、微粉化したピッチ、および前記追加される微粉化したピッチを合わせた総重量部のうち全ピッチ、すなわち微粉化したピッチおよび追加される微粉化したピッチを合わせた割合が25重量%超に該当する量である。好ましくは、25重量%超~60重量%である。追加されるピッチの量が前記25重量%以下の量で付加されると、微粉化した天然黒鉛間の結合に関与するピッチの量が不十分であり、これによって、球状化した第1黒鉛複合体、すなわち「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体」の結晶化が十分に行われないため、完全に製造が終わった後の造粒球状黒鉛の粒子硬度が弱くなる(比較例3参照)。
【0040】
このように粒子硬度の弱い造粒球状黒鉛は、負極活物質に製造するとき、加圧などの条件でこわれやすいので、負極活物質の製造工程に不利な短所がある。
【0041】
前記段階(e)の混合時間は、前記球状化した第1黒鉛複合体である「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体」に「追加される微粉化したピッチ」が完全に混合されるまでの時間であり、使用される量によって決定することができる。好ましい混合時間は、1時間以上である。
【0042】
前記段階(e)で追加されるピッチは、前記段階(d)から製造された球状化した第1黒鉛複合体、すなわち「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体」の外部にコーティングされ、その後に行われる一次および二次熱処理で一定の粒子サイズおよび黒鉛結晶質化が行われた最終の造粒球状黒鉛が得られる。
【0043】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(f)の「追加混合の完了段階」は、前記段階(e)の「追加ピッチ付加および混合コーティング段階」から形成された球状化した第1黒鉛複合体である微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体をメカノフュージョンなどの高速混合器で混合し、前記混合物の混合を完了する段階である。前記高速混合器は、約1,000rpm~3,000rpmの速度で作動し、混合時間は、前記混合速度および使用される量によって決定することができ、好ましくは、1分間以上である。
【0044】
前記段階(f)の追加混合の完了段階は、前記段階(e)の球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチのコーティングが良好に行われるようにするためのものである。前記段階(f)によって「微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる第1複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体」である「球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体」が生成される。
【0045】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記段階(g)の「一次熱処理段階」は、前記段階(f)の「球状化した第1黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体」を一次熱処理する段階である。
【0046】
前記熱処理温度は、1,000℃以上であり、好ましくは、1,000℃~1,500℃であり、前記熱処理温度を30分間以上、好ましくは、1時間以上維持する。前記段階(g)の一次熱処理は、窒素雰囲気下で行われる。
【0047】
前記段階(g)の一次熱処理は、前記「球状化した黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体」で使用されたピッチおよび/または溶媒を炭化して、非晶質炭素化するためのものであり、また、ピッチの追加コーティングによる前記二次複合体の外部不純物を除去して球状化した黒鉛の第2複合体の表面性を良好にする。
【0048】
前記段階(g)によって「一次熱処理された造粒球状黒鉛」を得ることができる。
【0049】
前記本発明による造粒球状黒鉛の製造方法において、前記(h)段階の「二次熱処理段階」は、前記段階(g)の「一次熱処理された造粒球状黒鉛」を二次熱処理する段階である。前記一次熱処理された造粒球状黒鉛は、常温に冷ました後、二次熱処理が行われる。前記二次熱処理温度は、2,000℃以上である。二次熱処理は、アルゴンガスなどのような不活性ガス雰囲気で行われ、前記二次熱処理温度を30分間以上、好ましくは、1時間以上維持する。
【0050】
前記(h)段階の二次熱処理は、前記段階(g)の一次熱処理で形成された一次熱処理造粒球状黒鉛の炭化したピッチ、天然黒鉛などの非晶質炭素を結晶質化する段階であり、このような結晶質化によって造粒球状黒鉛の結晶化がさらに良好になる。このような造粒球状黒鉛の優れた結晶化は、負極活物質の製造工程時に有利である。
【0051】
したがって、前記(h)段階を経ない造粒球状黒鉛の結晶質化度が低くなり(比較例1参照)、これによって、製造された造粒球状黒鉛は、初期充放電時に非可逆容量が増加し、初期効率が低くなり、充放電寿命特性が劣る短所が発生し、負極活物質の製造用に不利である。
【0052】
上記のように、前記段階(h)の二次熱処理を完了した造粒球状黒鉛は、初期放電容量、初期効率などにおいて優れた電気的特性を示す二次電池の負極活物質として使用できる。
【0053】
以上説明したように、段階(a)~(h)を含む本発明による造粒球状黒鉛の製造方法は、一次に鱗片状の微粉化した天然黒鉛および微粉化したピッチによる複合体を製造し、前記複合体の外部にピッチをコーティングした二次複合体を製造した後(段階(a)~ (f))、前記二次複合体を一次に加熱して、二次複合体を非晶質炭素化した後(段階(g))、さらに前記非晶質化された二次複合体を二次熱処理し、結晶質化して、造粒球状黒鉛を製造する。
【0054】
このように段階(a)~(h)を含む本発明の製造方法で製造された造粒球状黒鉛は、天然黒鉛と比べて、結晶質炭素の割合が15%超である。
【0055】
また、前記段階(a)~(h)を含む本発明による造粒球状黒鉛の製造方法で製造された造粒球状黒鉛の粒子平均粒度(D50)は、15~50μmのサイズであり、好ましくは、15~30μmのサイズである。また、本発明の製造方法で製造された造粒球状黒鉛粒子は、比表面積が4.5m/g以下と粒子サイズが均一であり、造粒球状黒鉛粒子の結晶化度を示すd002(nm、黒鉛層間距離)が0.338以下であり、前記造粒球状黒鉛粒子の結晶性に優れていて、負極活物質の製造時に加えられる強い圧力に対して、造粒球状黒鉛の粒子化を維持し、電池の優れた初期放電容量(%)、および初期効率(%)を示すものである。
【0056】
以上、段階(a)~(h)を含む本発明による造粒球状黒鉛の製造方法で製造された造粒球状黒鉛集合体のSEMを図1および図2に示す。図1および図2のSEMから分かるように、本発明による造粒球状黒鉛の製造方法で製造された造粒球状黒鉛は、球状の形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳述するが、下記実施例は、本発明を例示したり、具体的に説明するためのものであり、本発明の範疇がこれらによって限定されるものではない。
【0058】
なお、ここで記載されていない内容は、当該技術分野における熟練者なら十分に類推できるものであるから、その説明を省略する。
【0059】
<造粒球状黒鉛の製造>
<実施例1>
平均粒度100μmのサイズの鱗片状の天然黒鉛原料を粉砕圧力7bar~9barにセットしたジェットミルで粉砕し、平均粒度3μmのサイズに粉砕して微粉化した天然黒鉛を製造した。なお、平均粒度5mmのサイズのピッチを粉砕圧力6bar~8barにセットしたジェットミルで粉砕して、平均粒度2μmのサイズの微粉化したピッチを製造した(「段階(a)」)。
【0060】
前記微粉化したピッチ10kgと微粉化した天然黒鉛90kgをスクリューミキサーに入れ、1時間混合した後(「段階(b)」)、灯油10kg、パラフィンオイル10kgを入れ、1時間追加混合をした(「段階(c)」)。前記混合が完了した混合品6kgを造粒球状化装置に投入し、線速度4,500m/minの条件で150秒間造粒球状加工を行った(「段階(d)」)。
【0061】
前記造粒球状加工が完了した「球状化した黒鉛複合体」6kgをスクリューミキサーに入れ、さらに微粉化したピッチ25kgを追加し、1時間混合した(「段階(e)」)。前記「球状化した黒鉛複合体」と「微粉化したピッチ」の追加混合が完了すると、メカノフュージョン高速混合器に投入し、さらに1,500rpmで10分間再混合した(「段階(f)」)。
【0062】
前記再混合が完了した「球状化した黒鉛複合体の外部にピッチがコーティングされた二次複合体」を電気炉に入れ、窒素雰囲気で1,000℃で一次熱処理し、1,000℃の熱処理温度を維持する時間は、1時間とした(「段階(g)」)。1,000℃の一次熱処理された造粒球状黒鉛は、室温まで冷却した後、さらに、電気炉に入れ、アルゴンガス雰囲気で2,400℃で二次熱処理した。2,400℃に熱処理温度を維持する時間は、1時間とし(「段階(h)」)、最終的に造粒球状黒鉛を得た。
【0063】
前記段階(a)~(h)を含んで製造が完了した造粒球状黒鉛は、平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0064】
<実施例2>
前記実施例1の「段階(c)の溶媒を灯油15kg、およびパラフィンオイル15kgを入れたこと」を除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0065】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0066】
<実施例3>
前記実施例1の「段階(b)の微粉化したピッチ20kgと微粉化した天然黒鉛80kgを使用したこと」と「段階(e)の微粉化したピッチ15kgを追加したこと」を除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0067】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0068】
<実施例4>
前記実施例1の段階(d)の造粒球状工程の条件として「線速度4,800m/minの条件で150秒間造粒球状加工」したことを除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0069】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0070】
<実施例5>
前記実施例1の段階(d)の造粒球状工程の条件として「線速度4,500m/minの条件で300秒間造粒球状加工」したことを除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0071】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0072】
<比較例1>
前記実施例1の段階(h)の「二次熱処理」をしないことを除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0073】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0074】
<比較例2>
前記実施例1の段階(d)の造粒球状工程の条件として「線速度4,000m/minの条件で150秒間造粒球状加工」したことを除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0075】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0076】
<比較例3>
前記実施例1の「段階(e)の微粉化したピッチ15kgを追加したこと」を除いては、実施例1と同じ方法で進めて、最終の造粒球状黒鉛を製造した。
【0077】
前記製造された造粒球状黒鉛の平均粒径(D50、μm)、比表面積(m/g)、およびXRD分析を通した黒鉛層間距離(d002、nm)を測定し、また、前記造粒球状黒鉛を負極活物質とするCoin Cell半電池を製造し、前記電池の初期放電容量(mAh/g)と初期効率(%)を測定した(表1および表2参照)。
【0078】
下記の表1に前記実施例1~5、および比較例1~3の工程条件を示した。下記の表2には、前記表1の条件の工程で製造した造粒球状黒鉛の粒度(D50、μm)、比表面積(m/g)、d002(nm、黒鉛層間距離)を示した。
【0079】
前記平均粒度は、Anton Paar社製のParticle Size Analyserを用いて粒子サイズを測定し、比表面積は、Micromertics社製のBET装置を用いて比表面積を測定した。
【0080】
また、黒鉛層間距離のd002は、XRD分析を通してそれぞれの炭素六角網面の積層距離を測定したものであり、計算は、下記の通りである。
d002=λ/2(sinθ)
λ:X-raysターゲットであるCuの波長値(1.5406A)
θ:黒鉛で代表的な002は26.554 2θ
【0081】
<コインセルの製造>
前記造粒球状黒鉛負極活物質:SBR:CMCを98:1:1の割合で超純水で混合して、スラリーを製造した。前記スラリーを銅ホイルに均一に塗布し、80℃オーブンで約2時間乾燥後、ロールプレスし、110℃真空オーブンで約12時間追加乾燥して、負極板を製造した。
【0082】
前記製造された負極板;対電極としてリチウムホイル;多孔性ポリエチレン膜のセパレーター;およびエチレンカーボネート(ethylene carbonate)とジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)を3:7の体積比で混合した溶媒にLiPF6が1.0Mの濃度で溶けている液体電解液;を使用して通常知られた製造工程によってCR2032コイン型ハーフセルを製造した。
【0083】
<コインセルの初期放電容量および効率の測定>
25℃で0.1Cレートの電流で電池電圧が0.01V(vs.Li)に達するまでは定電流を印加し、電池電圧が0.01Vに達すると、電流が0.01Cレートに達するまで定電圧を印加して充電した。放電時に電圧が1.5V(vs.Li)に達するまで0.1Cレートの定電流で放電した。
【0084】
下記表1は、前記実施例1~5および比較例1~3の黒鉛、ピッチ、溶媒の燃料投入量と造粒球状工程の各条件、および表面処理工程用ピッチ投入量、そして熱処理温度を記載して比較したものである。
【0085】
【表1】
【0086】
前記表1は、段階(a)~(h)を含む本発明による造粒球状黒鉛の製造方法に関する前記実施例1~5の各段階条件を示すものである。
【0087】
具体的に説明すると、本発明の実施例1~5は、黒鉛、ピッチ、および表面処理工程用ピッチの全合計量のうち、ピッチと表面処理工程用ピッチの含有量が25%以上であるのに対し、比較例3は、25%未満である。
【0088】
また、比較例1は、一次熱処理のみを実施し、二次熱処理を省略したものであり、比較例2は、段階(d)の造粒化工程で線速度が4,000m/minであり、本発明の線速度の条件である4,500m/min以上を満足しない線速度の工程を示す。
【0089】
下記表2には、前記表1の工程条件で製造された実施例1~5および比較例1~3の造粒球状黒鉛の粒度(D50、μm)、比表面積(m/g)、d002(nm、黒鉛層間距離)の物理的特性および前記造粒球状黒鉛を負極活物質として使用した電池の初期放電容量(%)、および初期効率(%)を示した。
【0090】
【表2】
【0091】
前記表2から本発明による造粒球状黒鉛の製造方法に関する実施例1~5は、比較例1~3に比べて、初期放電容量が同様または高く、初期効率が格別に優れていることが分かる。このような高い初期効率は、初期充電時に正極で提供するリチウムイオンの消耗量を減らすことができ、高容量のセル設計が可能であるという長所がある。
【0092】
また、前記表2の実施例1~5とは異なって、比較例1~3は、下記のような短所を示す。
【0093】
まず、一次熱処理のみが行われた比較例1の造粒球状黒鉛は、結晶質化を示すd002が0.341nmであり、一次熱処理および二次熱処理が行われた実施例1~5、および比較例1~2の造粒球状黒鉛と比べて、d002の値が大きく、これは、比較例1の造粒球状黒鉛の結晶化程度が低いことを意味する。これによって、比較例1の造粒球状黒鉛を負極活物質として電池を製造する場合、初期充放電時に非可逆容量が増加して初期効率が低くなり、充放電寿命特性が劣るという短所が発生する。
【0094】
次に、比較例2は、微粉化する黒鉛および微粉化したピッチの造粒球状化の線速度が4,000m/minであり、実施例1~5の4,500m/min以上に比べて低く、これによって、造粒球状化程度が低くなるにつれて、前記比較例1のように製造工程で加圧によって負極活物質である造粒球状黒鉛の形態がこわれて、負極活物質の効率が低くなり、電池の初期効率が劣るという短所が発生する。
【0095】
また、比較例3は、造粒球状黒鉛中のピッチの使用量が25%以下であり、実施例1~5の25%超に比べて、ピッチの使用量が少ないものである。このような少ない量のピッチは、微粉化した黒鉛の球状化を成すバインダーの役割が小さくなり、最終的に製造された造粒球状黒鉛の比表面積が大きくなり、これは、前記造粒球状黒鉛の状態が粉末になり(比表面積が比較例3と類似した比較例2の図3を参照されたい)、負極活物質として使用する場合、負極活物質の効率が低くなり、電池の初期効率が劣るという短所が発生する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
このように前記実施例1~5の本発明による新規の造粒球状黒鉛の製造方法は、電池の負極活物質として使用され、優れた初期効率および初期放電容量を示すことによって、電池の優れた負極活物質として使用され得る効果があり、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3