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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】棒材切断機
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/04 20060101AFI20241028BHJP
   B23D 45/04 20060101ALI20241028BHJP
   B23D 47/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
B23D47/04 Z
B23D45/04 A
B23D47/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024057373
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597044106
【氏名又は名称】株式会社ノリタケマシンテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】白水 孝明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-040021(JP,U)
【文献】特開平11-254229(JP,A)
【文献】特開2007-136625(JP,A)
【文献】特開2001-259925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D45/00-65/04
B27B 5/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を中心に回転操作される丸鋸を備え、棒材をその長手方向へ送りつつ前記丸鋸によって切断する棒材切断機において、
前記長手方向に対して直交する横方向および前記横方向に対して直交する縦方向のそれぞれに対して傾く傾き方向へ前記丸鋸を移動操作するものであって、前記丸鋸が前記回転操作された状態で前記丸鋸を前記棒材に向けて前記傾き方向へ移動操作することによって前記棒材を切断する鋸操作機構と、
前記棒材の表面に前記横方向から対向し、前記丸鋸が進入可能な隙間を介して前記長手方向に互いに対向するように配置された一対の固定クランプ部材と、
前記一対の固定クランプ部材に前記棒材を挟んで前記横方向からそれぞれ対向するものであって、前記丸鋸が進入可能な隙間を介して前記長手方向に互いに対向するように配置された一対の可動クランプ部材と、
前記棒材の切断時に前記一対の可動クランプ部材を前記横方向へ移動操作することによって前記棒材を前記一対の固定クランプ部材および前記一対の可動クランプ部材の間で挟持する挟持アクチュエーターと、
前記一対の可動クランプ部材の間の隙間内に設けられた当接部材と、
前記棒材が切断される場合に前記当接部材を前記棒材に向けて前記横方向へ移動操作する当接アクチュエーターと、を備え、
前記当接部材は、前記丸鋸によって最後に切断される最終切断箇所が異なる複数種類のそれぞれの前記棒材に対して前記最終切断箇所の近傍に当接するものであることを特徴とする棒材切断機。
【請求項2】
前記複数種類のそれぞれの前記棒材は、前記横方向の幅寸法が互いに異なるものであり、
前記挟持アクチュエーターは、前記横方向へ進退可能なピストンロッドを有するシリンダからなり、
前記当接アクチュエーターは、前記ピストンロッドに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の棒材切断機。
【請求項3】
前記当接部材は、前記丸鋸が進入可能な隙間を介して前記長手方向に互いに対向するように配置された一対の当接板からなることを特徴とする請求項1に記載の棒材切断機。
【請求項4】
前記各当接板は、前記複数種類のそれぞれの前記棒材に対して前記最終切断箇所より前記縦方向の下に位置する延設部を有していることを特徴とする請求項3に記載の棒材切断機。
【請求項5】
前記複数種類のそれぞれの前記棒材は、外径寸法が互いに異なる断面円形状のものであり、
前記各当接板は、前記各当接板のうち前記縦方向の下部から前記複数種類のそれぞれの前記棒材に対して前記最終切断箇所の近傍へ向うことに応じて前記複数種類のそれぞれの前記棒材から前記横方向へ遠ざかる傾き部を含むものであって前記複数種類のそれぞれの前記棒材の前記最終切断箇所の近傍に当接する当接面を有していることを特徴とする請求項3に記載の棒材切断機。
【請求項6】
前記各当接面は、傾斜状の平面であることを特徴とする請求項5に記載の棒材切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒材をその長手方向へ送りながら丸鋸によって切断する棒材切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記棒材切断機には、図6(a)に示すように、一対の固定クランプ部材110と一対の可動クランプ部材120と丸鋸130を備えたものがある。丸鋸130は図6(b)の傾き方向Cへ移動操作されるものである。この傾き方向Cは棒材Mの長手方向Xに対して直交する横方向Yおよび横方向Yに対して直交する縦方向Zのそれぞれに対して傾く方向であり、棒材Mは丸鋸130の回転状態で丸鋸130が棒材Mに向けて傾き方向Cへ移動操作されることによって切断される。一対の固定クランプ部材110および一対の可動クランプ部材120のそれぞれは、図6(a)に示すように、棒材Mの表面に横方向Yから対向するものであり、丸鋸130が進入可能な隙間Sを介して長手方向Xに互いに対向配置されている。一対の可動クランプ部材120は挟持アクチュエーター(図示せず)に連結されている。この挟持アクチュエーターは棒材Mの切断時に一対の可動クランプ部材120を横方向Yへ移動操作することによって棒材Mを一対の固定クランプ部材110および一対の可動クランプ部材120の間で挟持する。
【0003】
上記棒材切断機の場合には、図6(b)に示すように、棒材Mの切断時に大バリBが生じる。この大バリBとは棒材Mの切断時に鋸刃が接触しても切粉にならず棒材Mの外表面が皮状にめくれたものであり、棒材Mの丸鋸130による最終切断箇所Pを中心に縦方向Zに生じる。この大バリBは丸鋸130による棒材Mの切削が進行することに応じて縦方向Zの上下のそれぞれにおいて最終切断箇所Pに向って成長する。この大バリBは丸鋸130が棒材Mのうち最後に切断される最終切断箇所Pで傾き方向Cの上から下へ抜けるときに丸鋸130の前進力によって反転し、棒材Mから切り落とされることなく棒材Mに残ることがある。この大バリBが棒材Mに残った場合には切断された棒材Mを鍛造等することによって製品化する次工程で製品不良が発生する虞がある。
【0004】
従来では、図6(a)に二点鎖線で示すように、一対の可動クランプ部材120の間の隙間S内に当接部材140を設けることによって大バリBが棒材Mに残ることを防止していた。この当接部材140は一対の当接板140aからなるものであり、図7(a)に示すように、各当接板140aには棒材Mの曲率に一致する円弧面140bが形成されている。これら各当接板140aは棒材Mの最終切断箇所Pに当接するものであり、丸鋸130が棒材Mから抜けるときに大バリBが反転することを防ぎ、大バリBが棒材Mに残ることを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7319446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来構成では、図7に示すように、棒材Mとして小径なものが切断される場合(a参照)および大径なものが切断される場合(b参照)のそれぞれに対応して棒材Mの曲率に一致する円弧面140bを有する当接部材140を用意し、棒材Mの種類が変更される毎に当接部材140を交換する必要があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的は、複数種類の棒材を1種類の当接部材によって棒材に大バリが残ることを防止しつつ切断することが可能な棒材切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の棒材切断機の要旨とするところは、(a)軸心を中心に回転操作される丸鋸を備え、棒材をその長手方向へ送りつつ前記丸鋸によって切断する棒材切断機において、(b)前記長手方向に対して直交する横方向および前記横方向に対して直交する縦方向のそれぞれに対して傾く傾き方向へ前記丸鋸を移動操作するものであって前記丸鋸が前記回転操作された状態で前記丸鋸を前記棒材に向けて前記傾き方向へ移動操作することによって前記棒材を切断する鋸操作機構と、(c)前記棒材の表面に前記横方向から対向し前記丸鋸が進入可能な隙間を介して前記長手方向に互いに対向するように配置された一対の固定クランプ部材と、(d)前記一対の固定クランプ部材に前記棒材を挟んで前記横方向からそれぞれ対向するものであって前記丸鋸が進入可能な隙間を介して前記長手方向に互いに対向するように配置された一対の可動クランプ部材と、(e)前記棒材の切断時に前記一対の可動クランプ部材を前記横方向へ移動操作することによって前記棒材を前記一対の固定クランプ部材および前記一対の可動クランプ部材の間で挟持する挟持アクチュエーターと、(f)前記一対の可動クランプ部材の間の隙間内に設けられた当接部材と、(g)前記棒材が切断される場合に前記当接部材を前記棒材に向けて前記横方向へ移動操作する当接アクチュエーターとを備え、(h)前記当接部材は前記丸鋸によって最後に切断される最終切断箇所が異なる複数種類のそれぞれの前記棒材に対して前記最終切断箇所の近傍に当接するものであることにある。
【0009】
第2の発明の棒材切断機の要旨とするところは、第1の発明において、(a)前記複数種類のそれぞれの前記棒材は前記横方向の幅寸法が互いに異なるものであり、(b)前記挟持アクチュエーターは前記横方向へ進退可能なピストンロッドを有するシリンダからなり、(c)前記当接アクチュエーターは前記ピストンロッドに固定されていることにある。
【0010】
第3の発明の棒材切断機の要旨とするところは、第1の発明において、前記当接部材は前記丸鋸が進入可能な隙間を介して前記長手方向に互いに対向するように配置された一対の当接板からなることにある。
【0011】
第4の発明の棒材切断機の要旨とするところは、第3の発明において、前記各当接板は前記複数種類のそれぞれの前記棒材に対して前記最終切断箇所より前記縦方向の下に位置する延設部を有していることにある。
【0012】
第5の発明の棒材切断機の要旨とするところは、第3の発明において、(a)前記複数種類のそれぞれの前記棒材は外径寸法が互いに異なる断面円形状のものであり、(b)前記各当接板は前記各当接板のうち前記縦方向の下部から前記複数種類のそれぞれの前記棒材に対して前記最終切断箇所の近傍へ向うことに応じて前記複数種類のそれぞれの前記棒材から前記横方向へ遠ざかる傾き部を含むものであって前記複数種類のそれぞれの前記棒材の前記最終切断箇所の近傍に当接する当接面を有していることにある。
【0013】
第6の発明の棒材切断機の要旨とするところは、第5の発明において、前記各当接面は傾斜状の平面であることにある。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、棒材が切断される場合には一対の可動クランプ部材が横方向へ移動操作されることによって一対の固定クランプ部材および一対の可動クランプ部材の間で棒材がクランプされる。この棒材のクランプ状態で回転操作された状態の丸鋸が棒材に向けて傾き方向へ移動操作されることによって棒材が切断される。この棒材の切断時には当接部材が棒材に向けて横方向へ移動操作される。この当接部材は丸鋸によって最後に切断される最終切断箇所が異なる複数種類のそれぞれの棒材に対して最終切断箇所の近傍に当接する。このため、複数種類の棒材のいずれを切断する場合であっても丸鋸が棒材から傾き方向の下へ抜けるときに丸鋸から大バリに作用する反転力が低減されるので、大バリが反転し難くなる。従って、複数種類の棒材のいずれを切断する場合であっても棒材から大バリが切除される確率が高まるので、複数種類の棒材を1種類の当接部材によって大バリの残りを防止しつつ切断することが可能となる。しかも、当接部材が一対の可動クランプ部材に対して移動操作されるので、複数種類のいずれの棒材が切断される場合にも当接部材が棒材の最終切断箇所の近傍に確実に接触する。このため、複数種類の棒材に大バリが残ることを1種類の当接部材によって高い確率で防止することが可能になる。
【0015】
第2の発明によれば、当接アクチュエーターが挟持アクチュエーターのピストンロッドに固定されている。このため、横方向の幅寸法が互いに異なる複数種類のいずれの棒材が切断される場合にも当接アクチュエーターが棒材に互いに同程度に接近した状態で当接部材が棒材に向けて移動操作される。従って、複数種類のいずれの棒材が切断される場合にも当接部材の横方向への移動量が同程度に小さくなるので、当接アクチュエーターとしてピストンロッドの移動量が小さなシリンダを使用することが可能になる。
【0016】
第3の発明によれば、丸鋸が進入可能な隙間を介して長手方向に互いに対向するように配置された一対の当接板から当接部材が構成されている。このため、複数種類の棒材のいずれを切断する場合であっても丸鋸が一対の当接板の間の隙間内に進入する。従って、1つの部材からなる当接部材を用いる場合とは異なり、当接部材が丸鋸によって切削されることを防止することが可能になる。
【0017】
第4の発明によれば、複数種類のそれぞれの棒材に対して最終切断箇所より縦方向の下に位置する延設部を各当接板が有しているので、最終切断箇所に比べて縦方向の下で大バリが反転可能な空間が狭められる。このため、大バリが一層反転し難くなるので、複数種類のそれぞれの棒材から大バリが除去される確率が一層高まる。
【0018】
第5の発明によれば、外径寸法が互いに異なる断面円形状の複数種類のそれぞれの棒材に対して最終切断箇所の近傍に当接する当接面を各当接板が有している。このため、外径寸法が互いに異なる断面円形状の複数種類のそれぞれの棒材を大バリの残りを抑えつつ1種類の当接板で切断することが可能となる。
【0019】
第6の発明によれば、各当接板の当接面が傾斜状の平面から構成されているので、各当接板に当接面を容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1に係る棒材切断機の全体構成を示す図である。
図2】棒材がクランプされる様子を模式的に示す図である。
図3】(a)は横側可動クランプおよび爪板を横方向から示す図であり、(b)は横側可動クランプおよび爪板を長手方向から示す図である。
図4】(a)は爪板が小径な棒材に当接する様子を横方向から示す図であり、(b)は爪板が大径な棒材に当接する様子を横方向から示す図である。
図5】本発明の実施例2を説明するための図4相当図である。
図6】(a)は棒材がクランプされる様子を模式的に示す従来図であり、(b)は棒材の切断時に大バリが生じるメカニズムを説明するための従来図である。
図7】従来例に係る当接部材を模式的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例1および2について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は棒材切断機100の全体構成を示すものである。この棒材切断機100は丸鋸20を備えたものであり、棒材Mをその長手方向X(図2参照)へ送りつつ丸鋸20によって切断する。この丸鋸20は軸心Oを中心に回転可能にされたものであり、「1mm~2.6mm」の板厚を有している。この丸鋸20は円板状の台金の外周部に超硬合金製の複数の鋸刃をロウ付け等にすることから構成されている。これら各鋸刃は炭素鋼や合金鋼やステンレス鋼やアルミ合金や銅合金等の金属材を切削するものであり、炭化タングステンを主体とする焼結体からなる。この丸鋸20は本発明の丸鋸に相当し、軸心Oは本発明の軸心に相当し、長手方向Xは本発明の長手方向に相当する。
【0023】
棒材切断機100は、図1に示すように、基台10と鋸操作機構200とクランプ機構300と給材機構(図示せず)を含んで構成されている。基台10は工場等の床面F上に設置されたものであり、基台10には縦長な機枠24が設置されている。給材機構は棒材Mを長手方向Xへ一定量送る動作を断続的に繰り返すことによって丸鋸20に供給するものである。この棒材Mは本発明の棒材に相当し、鋸操作機構200は本発明の鋸操作機構に相当する。
【0024】
鋸操作機構200は基台10および機枠24に設置されたものであり、丸鋸20を円弧状の傾き方向Cへ移動操作する。この傾き方向Cは長手方向Xに対して直交する横方向Yおよび横方向Yに対して直交する縦方向Zのそれぞれに対して傾く方向であり、丸鋸20は丸鋸20の回転状態で棒材Mに向けて傾き方向Cへ移動操作されることによって棒材Mを切断する。
【0025】
続けて鋸操作機構200の詳細構成について説明する。基台10には、図1に示すように、支持台12が固定されており、支持台12には水平な支持軸14を介して傾動部材16が支持軸14の軸心を中心に傾動可能に支持されている。この傾動部材16には鋸モーター22が固定されており、鋸モーター22の駆動軸(図示せず)は丸鋸20の回転軸18にプーリーおよびベルト等を介して連結されている。この鋸モーター22は回転軸18の軸心Oを中心に丸鋸20を回転操作するものであり、傾動部材16と一体的に移動する。
【0026】
機枠24には、図1に示すように、支持台26が設置されている。この支持台26には水平な支持軸28を介して支持部材30が固定されている。この支持部材30は横長な円筒状をなすものであり、支持軸28の軸心を中心に回動可能にされている。この支持部材30の内周面にはスライド部材32の基端部が挿入されている。このスライド部材32は支持部材30の内周面に沿って支持部材30の軸方向へ直線的に移動可能にされている。
【0027】
支持部材30の一端部には、図1に示すように、操作モーター34が固定されている。この操作モーター34はサーボモーターからなるものであり、支持部材30内に同心状に突出する回転軸(図示せず)を有している。この操作モーター34の回転軸にはカップリングを介してボールネジ36が同心状に連結されている。このボールネジ36は支持部材30内に収納されたものであり、操作モーター34はボールネジ36を正方向および逆方向へ回転操作する。
【0028】
ボールネジ36はスライド部材32に螺合されており、スライド部材32はボールネジ36が正方向へ回転操作されることによって支持部材30内に退避する退避方向へ移動操作される(図1の矢印B1参照)。このスライド部材32はボールネジ36が逆方向へ回転操作されることによって支持部材30内から突出する突出方向へ移動操作される(図1の矢印B2参照)。このスライド部材32の長手方向の中央部には傾動部材16が水平な支持軸38を介して回動可能に連結されている。
【0029】
傾動部材16はスライド部材32が退避方向へ移動操作されることによって棒材Mに向けて支持軸14を中心に傾動する。この傾動部材16はスライド部材32が突出方向へ移動操作されることによって棒材Mとは反対方向に向けて支持軸14を中心に傾動する。丸鋸20は傾動部材16が支持軸14を中心に傾動することによって傾き方向Cへ移動操作される。
【0030】
続けてクランプ機構300について説明する。機枠24には、図2に示すように、2つの縦側固定クランプ40が固定されている。これら2つの縦側固定クランプ40は長手方向Xに並ぶものであり、2つの縦側固定クランプ40の間には隙間Sが形成されている。この隙間Sの長手方向Xの幅寸法Wは丸鋸20の厚さ寸法Tに比べて大きく設定されている。この隙間Sは本発明の隙間に相当する。2つの縦側固定クランプ40は給材機構からの棒材Mが載置されるものである。この棒材Mは丸鋸20が切断可能な炭素鋼や合金鋼やステンレス鋼やアルミ合金や銅合金等の金属からなるものであり、断面円形状をなしている。
【0031】
機枠24には、図1に示すように、シリンダ台42が固定されており、シリンダ台42には、図2に示すように、2つの縦側可動クランプ44が装着されている。これら2つの縦側可動クランプ44は長手方向Xに沿って並べられたものであり、各縦側可動クランプ44は縦側固定クランプ40に縦方向Zの上から対向するように配置されている。これら2つの縦側可動クランプ44の間には幅寸法Wの隙間Sが形成されている。
【0032】
シリンダ台42には、図1に示すように、縦側クランプシリンダ46が設置されている。この縦側クランプシリンダ46は油圧シリンダからなるものであり、縦方向Zへ進退可能なピストンロッド(図示せず)を有している。この縦側クランプシリンダ46のピストンロッドには2つの縦側可動クランプ44が連結されており、2つの縦側可動クランプ44は縦側クランプシリンダ46のピストンロッドと共に縦方向Zへ移動する。棒材Mは縦側クランプシリンダ46のピストンロッドが縦方向Zの下へ移動することによって一対の縦側固定クランプ40および一対の縦側可動クランプ44の間で縦方向Zにクランプされる。この棒材Mの縦方向Zのクランプは縦側クランプシリンダ46のピストンロッドが縦方向Zの上へ移動することによって解除される。
【0033】
2つの縦側固定クランプ40のそれぞれには、図2に示すように、横側固定クランプ48が固定されている。これら2つの横側固定クランプ48は長手方向Xに沿って並べられたものであり、2つの横側固定クランプ48の間には幅寸法Wの隙間Sが形成されている。これら各横側固定クランプ48は丸鋸20による棒材Mの切断が始まる開始側から棒材Mの表面に対向するものであり、棒材Mが開始側で当接する鉛直な当接面48aを有している。これら各横側固定クランプ48は本発明の固定クランプ部材に相当する。
【0034】
機枠24には、図1に示すように、横側クランプシリンダ50が固定されている。この横側クランプシリンダ50は油圧シリンダからなるものであり、横方向Yへ進退可能なピストンロッド50aを有している。このピストンロッド50aは矩形柱状をなすものであり、図3に示すように、ピストンロッド50aの両側面のそれぞれには支持板52が固定されている。
【0035】
各支持板52には、図3に示すように、横側可動クランプ54が固定されている。これら各横側可動クランプ54は縦長な直方体状をなすものであり、横方向Yへ突出する被支持部54aを有している。これら各横側可動クランプ54は支持板52を通して被支持部54aに複数のネジ56を螺合することによって支持板52に固定されたものであり、本発明の可動クランプ部材に相当する。これら2つの横側可動クランプ54は横側クランプシリンダ50のピストンロッド50aと共に横方向Yへ移動可能にされたものである。この横側クランプシリンダ50は本発明の挟持アクチュエーターに相当する。
【0036】
各ネジ56の外周部には、図3に示すように、円筒状のスペーサー58が挿入されており、各スペーサー58は支持板52および被支持部54aの間に介在されている。2つの横側可動クランプ54は、図2に示すように、長手方向Xに並べられたものであり、2つの横側可動クランプ54の間には幅寸法Wの隙間Sが形成されている。これら各横側可動クランプ54は棒材Mを介して横方向Yから横側固定クランプ48に対向するように配置されている。
【0037】
各横側可動クランプ54は、図2に示すように、丸鋸20による棒材Mの切断が終了する終了側から棒材Mの表面に対向するものであり、鉛直な当接面54bを有している。この棒材Mは横側クランプシリンダ50のピストンロッド50aが横方向Yへ突出することによって一対の横側固定クランプ48の当接面48aおよび一対の横側可動クランプ54の当接面54bの間で横方向Yに挟持される。この棒材Mの横方向Yのクランプは横側クランプシリンダ50のピストンロッド50aが横方向Yへ退避することによって解除される。
【0038】
各支持板52には、図3に示すように、L字板状のシリンダ台60が固定されており、2つのシリンダ台60の間には爪板シリンダ62が支持されている。この爪板シリンダ62はエアーシリンダからなるものであり、横方向Yへ進退可能なピストンロッド62aを有している。この爪板シリンダ62は本発明の当接アクチュエーターに相当する。この爪板シリンダ62は2つのガイドバー62bを有している。これら各ガイドバー62bは横方向Yへ移動可能にされたものであり、2つのガイドバー62bはピストンロッド62aを挟んで縦方向Zに対向するように配置されている。
【0039】
爪板シリンダ62のピストンロッド62aには、図3に示すように、移動板64が固定されており、爪板シリンダ62の2つのガイドバー62bは移動板64に連結されている。この移動板64は2つの横側可動クランプ54の縦方向Zの上面に載置されたものであり、2つのガイドバー62bおよび横側可動クランプ54によって案内されながら爪板シリンダ62のピストンロッド62aと共に横方向Yへ移動する。
【0040】
移動板64には、図3に示すように、L字状をなす2つの爪板支持板66が固定されており、各爪板支持板66には爪板68が複数のネジ70によって固定されている。これら2つの爪板68は横側クランプシリンダ50のピストンロッド50aが進退することによって2つの横側可動クランプ54と共に横方向Yへ移動する。これら2つの爪板68は爪板シリンダ62のピストンロッド62aが進退することによって2つの横側可動クランプ54に対して横方向Yへ移動する。これら2つの爪板68は当接部材80を構成するものであり、当接部材80は本発明の当接部材に相当する。
【0041】
2つの爪板68は、図2に示すように、2つの横側可動クランプ54の間の隙間S内に配置されたものである。これら2つの爪板68のうちの一方は丸鋸20が隙間S内に進入した状態で丸鋸20の一方の側面20aおよび一方の横側可動クランプ54の間に位置することによって両者の間の隙間を埋めるものである。これら2つの爪板68のうちの他方は丸鋸20が隙間S内に進入した状態で丸鋸20の他方の側面20bおよび他方の横側可動クランプ54の間に位置することによって両者の間の隙間を埋めるものである。これら各爪板68は爪板シリンダ62のピストンロッド62aが退避した状態で棒材Mの外周面に終了側から隙間を介して対向するものであり、本発明の当接板に相当する。これら2つの爪板68は丸鋸20が進入可能な隙間Stを介して長手方向Xに対向するように配置されている。
【0042】
各爪板68は、図3に示すように、当接面68aを有している。これら各当接面68aは縦方向Zの下から上に向けて棒材Mから遠ざかるように横方向Yへ傾斜する平面からなるものであり、一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間で棒材Mがクランプされた状態で爪板シリンダ62のピストンロッド62aが突出することによって棒材Mの外周面に終了側から当接する。これら各当接面68aは本発明の当接面に相当する。
【0043】
図4(a)は一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間で予め決められた小さな外径寸法を有する小径な棒材Mがクランプされた様子を示すものである。この状態で操作モーター34が正転操作された場合には丸鋸20が棒材Mに向けて傾き方向Cへ移動操作され、小径な棒材Mが丸鋸20によって隙間S内で傾き方向Cの上から下に切断される。
【0044】
一対の爪板68は、図4(a)に示すように、小径な棒材Mが一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間でクランプされた状態で小径な棒材Mに向けて横方向Yへ移動操作される。これら各爪板68の当接面68aは爪板68が小径な棒材Mに向けて移動操作されることによって小径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍に接触する。各爪板68は当接面68aが小径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍で小径な棒材Mに接触した状態で最終切断箇所Pより下方に位置する延設部68bを有する。この延設部68bは当接面68aとは傾斜角度が異なるものであり、本発明の延設部に相当する。最終切断箇所Pは小径な棒材Mのうち丸鋸20によって最後に切断される箇所であり、本発明の最終切断箇所に相当する。
【0045】
図4(b)は一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間で予め決められた大きな外径寸法を有する大径な棒材Mがクランプされた様子を示すものである。この状態で操作モーター34が正転操作された場合には丸鋸20が大径な棒材Mに向けて傾き方向Cへ移動操作され、大径な棒材Mが丸鋸20によって隙間S内で傾き方向Cの上から斜め下へ切断される。
【0046】
一対の爪板68は、図4(b)に示すように、大径な棒材Mが一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間でクランプされた状態で大径な棒材Mに向けて横方向Yへ移動操作されるものである。これら各爪板68の当接面68aは爪板68が大径な棒材Mに向けて移動操作されることによって最終切断箇所Pの近傍に接触する。各爪板68の延設部68bは当接面68aが大径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍に接触した状態で最終切断箇所Pより下方に位置する。
【0047】
即ち、当接部材80の各爪板68は爪板68のうち縦方向Zの下部から小径な棒材Mおよび大径な棒材Mのそれぞれに対して最終切断箇所Pの近傍へ向うことに応じて小径な棒材Mおよび大径な棒材Mのそれぞれから横方向Yへ遠ざかる傾き部68eを有するものであり、小径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍および大径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍のそれぞれに当接する傾斜状の平面からなる当接面68aを有している。
【0048】
上記実施例1によれば、棒材Mが切断される場合には一対の横側可動クランプ54が横方向Yへ移動操作されることによって一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間で棒材Mがクランプされる。この棒材Mのクランプ状態で回転状態の丸鋸20が棒材Mに向けて傾き方向Cへ移動操作されることによって棒材Mが切断される。この棒材Mの切断時には当接部材80が棒材Mに向けて横方向Yへ移動操作される。この当接部材80は最終切断箇所Pが異なる複数種類のそれぞれの棒材Mに対して最終切断箇所Pの近傍に当接する。このため、複数種類の棒材Mのいずれを切断する場合であっても丸鋸20が棒材Mから傾き方向Cの下へ抜けるときに丸鋸20から大バリBに作用する反転力が低減されるので、大バリBが反転し難くなる。従って、複数種類の棒材Mのいずれを切断する場合であっても棒材Mから大バリBが切除される確率が高まるので、複数種類の棒材Mを1種類の当接部材80によって大バリBの残りを防止しつつ切断することが可能となる。しかも、当接部材80が一対の横側可動クランプ54に対して移動操作されるので、複数種類のいずれの棒材Mが切断される場合にも当接部材80が最終切断箇所Pの近傍に確実に接触する。このため、複数種類の棒材Mに大バリBが残ることを1種類の当接部材80によって高い確率で防止することが可能になる。
【0049】
上記実施例1によれば、爪板シリンダ62が横側クランプシリンダ50のピストンロッド50aに固定されている。このため、横方向Yの幅寸法が互いに異なる複数種類のいずれの棒材Mが切断される場合にも爪板シリンダ62が棒材Mに互いに同程度に接近した状態で当接部材80が棒材Mに向けて移動操作される。従って、複数種類のいずれの棒材Mが切断される場合にも当接部材80の横方向Yへの移動量が同程度に小さくなるので、当接アクチュエーターとしてピストンロッド62aの移動量が小さな爪板シリンダ62を使用することが可能になる。
【0050】
上記実施例1によれば、丸鋸20が進入可能な隙間Stを介して長手方向Xに互いに対向するように配置された一対の爪板68から当接部材80が構成されている。このため、複数種類の棒材Mのいずれを切断する場合であっても丸鋸20が一対の爪板68の間の隙間St内に進入する。従って、1つの部材からなる当接部材を用いる場合とは異なり、当接部材80が丸鋸20によって切削されることを防止することが可能になる。
【0051】
上記実施例1によれば、複数種類のそれぞれの棒材Mに対して最終切断箇所Pより縦方向Zの下に位置する延設部68bを各爪板68が有しているので、最終切断箇所Pに比べて縦方向Zの下で大バリBが反転可能な空間が狭められる。このため、大バリBが一層反転し難くなるので、複数種類のそれぞれの棒材Mから大バリBが切除される確率が一層高まる。
【0052】
上記実施例1によれば、外径寸法が互いに異なる断面円形状の複数種類のそれぞれの棒材Mに対して最終切断箇所Pの近傍に当接する当接面68aを各爪板68が有している。このため、外径寸法が互いに異なる断面円形状の複数種類のそれぞれの棒材Mを大バリBの残りを防止しつつ1種類の爪板68で切断することが可能となる。
【0053】
上記実施例1によれば、各爪板68の当接面68aが傾斜状の平面から構成されているので、各当接板68に当接面68aを容易に形成することが可能となる。
【実施例2】
【0054】
当接部材80の各爪板68は、図5に示すように、傾き部68eおよび縦部68dを有している。これら各傾き部68eは爪板68のうち縦方向Zの下部から小径な棒材Mおよび大径な棒材Mのそれぞれに対して最終切断箇所Pの近傍へ向うことに応じて小径な棒材Mおよび大径な棒材Mのそれぞれから横方向Yへ遠ざかる部分であり、小径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍および大径な棒材Mの最終切断箇所Pの近傍のそれぞれに当接する傾斜状の平面からなる当接面68aを有している。各縦部68dは縦方向Zに沿って真っすぐに延びるものであり、大径な棒材Mのうち最終切断箇所Pより縦方向Zの上の部分に当接する。この実施例2によれば実施例1と同様の効果を奏する。
【0055】
以上、本発明の好適な実施例1および2を図面に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0056】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、一対の爪板68を油圧シリンダやモーター等によって横方向Yへ移動操作しても良い。
【0057】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、外径寸法が相違する断面円形状の3種以上の棒材Mのいずれが一対の横側固定クランプ48および一対の横側可動クランプ54の間でクランプされた状態においても、各爪板68の当接面68aが棒材Mの最終切断箇所Pの近傍に接触するように各当接面68aを傾斜させても良い。
【0058】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、当接部材80を一対の横側可動クランプ54の間の隙間S内に配置された1つの部材から構成しても良い。
【0059】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、横方向Yおよび縦方向Zのそれぞれに対して直線状に傾く傾き方向へ丸鋸20を移動操作することによって棒材Mを切断する構成としても良い。
【0060】
上記実施例1においては、各爪板68に延設部68bを設けなくても良い。
【0061】
上記実施例1においては、各爪板68に曲面状の当接面を設けても良い。
【0062】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、当接部材80の複数種類のそれぞれの棒材Mに対する接触箇所は図面に開示された箇所に限定されるものではなく、要は最終切断箇所Pの近傍であれば良い。この最終切断箇所Pの近傍とは複数種類のそれぞれの棒材Mを大バリBの残りを防止しつつ1種類の当接部材80によって切断することを可能とする箇所である。
【0063】
その他、一々例示はしないが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0064】
20:丸鋸、48:横側固定クランプ(固定クランプ部材)、54:横側可動クランプ(可動クランプ部材)、50:横側クランプシリンダ(挟持アクチュエーター、シリンダ)、50a:ピストンロッド、62:爪板シリンダ(当接アクチュエーター)、68:爪板(当接板)、68a:当接面、68b:延設部、68e:傾き部、80:当接部材、100:棒材切断機、200:鋸操作機構、C:傾き方向、M:棒材、O:軸心、P:最終切断箇所、X:長手方向、Y:横方向、Z:縦方向、S:隙間、St:隙間
【要約】
【課題】複数種類の棒材を1種類の当接部材によって大バリの残りを抑えつつ切断することが可能な棒材切断機を提供すること。
【解決手段】爪板68は複数種類の棒材Mのいずれに対しても棒材Mのうち最後に切断される最終切断箇所Pの近傍に接触する。このため、丸鋸20が棒材Mを傾き方向Cの上から下へ抜けるときに丸鋸20から大バリに前進力が作用することが防止される。従って、丸鋸20が棒材Mを抜けるときに大バリBが反転し難くなるので、複数種類の棒材Mを1種類の爪板68によって大バリの残りを抑えつつ切断することが可能となる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7