(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】育苗培土用粒子含有物
(51)【国際特許分類】
A01G 24/30 20180101AFI20241028BHJP
A01G 24/42 20180101ALI20241028BHJP
【FI】
A01G24/30
A01G24/42
(21)【出願番号】P 2024084659
(22)【出願日】2024-05-24
【審査請求日】2024-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7242958(JP,B1)
【文献】特許第7049516(JP,B1)
【文献】特開2017-176027(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/109252(JP,A1)
【文献】特開平5-23048(JP,A)
【文献】特開昭62-236416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/30
A01G 24/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
根鉢を移植するための育苗培土の培土構成素材に混合して使用される、育苗培土用粒子含有物であって、
非水溶性樹脂を多孔質粒子に含浸した樹脂含浸多孔質粒子を含む、育苗培土用粒子含有物。
【請求項2】
前記樹脂が生分解性樹脂である、請求項1に記載の育苗培土用粒子含有物。
【請求項3】
さらに分散剤を含み、前記多孔質粒子に対する、前記樹脂及び分散剤の合計量の質量比が40以下である、請求項1に記載の育苗培土用粒子含有物。
【請求項4】
前記樹脂含浸多孔質粒子の平均粒子径が1μm以上3,000μm以下である、請求項1に記載の育苗培土用粒子含有物。
【請求項5】
根鉢を移植するための育苗培土の製造方法であって、
培土構成素材と、請求項1~4のいずれか1項に記載の育苗培土用粒子含有物
とを混合する、育苗培土の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の育苗培土用粒子含有物を有効成分とする、移植性向上剤。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の育苗培土用粒子含有物を用いた、移植性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗培土に使用される材料、特に移植性向上のための材料に関する。
【背景技術】
【0002】
農業分野において、高齢化や少人化が進んでおり、農業の効率化が求められている。その対策として、苗を機械移植する手法が近年増加してきている。しかしながら、機械移植では、セルトレイから苗を取り出す際に、機械の爪で引っかいて苗を崩してしまい、きれいに移植できない等の問題があった。
【0003】
そのため、機械移植に使用する培土は、移植作業中に崩壊を起こさないことが要求されており、従来、天然高分子や、石油由来の合成高分子等を用いて培土を固結する方法が提案されている。しかし、培土中への均一な分散、長期間にわたる固結性能、生育障害等に技術課題がある。また培土の種類によっては十分に固結性能を発揮できない。例えば、省力化等により露地野菜等を機械移植することが求められているが、野菜用培土はピートモスのような撥水性の高い培土構成素材を多く配合した組成であるため、培土構成素材の種類によらず十分な固結性能を示す固結剤が求められている。
【0004】
また、環境意識の高まりや海洋プラスチックゴミ問題を背景に、非生分解性プラスチックから生分解性プラスチックへの置き換えが進んでおり、農業分野においても生分解性樹脂が用いられるようになってきた。農業分野において生分解性樹脂を用いる技術としては、農業用フィルム等の成型加工品(特許文献1)、農業用フィルムの吹付け遮光剤(特許文献2)等が知られているが、育苗培土における固結剤としての検討は少ない。育苗培土における固結剤としては、特許文献3の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-116798号公報
【文献】特開2004-147523号公報
【文献】特開2017-176027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、苗の移植性、特に、長期間にわたって潅水を繰り返しても固結性能を持続し、移植時の機械耐性を有すること等へのさらなる技術改良が望まれている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、苗の移植性が良好な育苗培土用粒子含有物とそれを用いた育苗培土、移植性向上剤、及び移植性向上方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行った結果、樹脂含浸多孔質粒子を用いることで、苗の移植性に優れ、特に、培土中での溶出量を制御でき、徐々に固結成分である樹脂を溶出させるため、長期間にわたり優れた固結性能を示すこと、さらに培土構成素材の種類による影響を受けないため幅広い用途への応用が可能であること、また植物への生育に悪影響を及ぼしにくく、生育障害の起きやすい植物にも使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の育苗培土用粒子含有物は、樹脂含浸多孔質粒子を含むことを特徴としている。
本発明の育苗培土は、前記育苗培土用粒子含有物を含有する。
本発明の移植性向上剤は、前記育苗培土用粒子含有物を有効成分とする。
本発明の移植性向上方法は、前記育苗培土用粒子含有物を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、苗の移植性を向上させることができる。この効果は、本発明の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。
<育苗培土用粒子含有物>
本発明の育苗培土用粒子含有物は、樹脂含浸多孔質粒子を含む。この粒子含有物の性状は、バルクで均一であり、特に粉状や粒状である。また指触で乾燥状態でもよく湿潤状態でもよい。
【0011】
樹脂を多孔質粒子に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂分散体を多孔質粒子に含浸させる方法、樹脂を溶剤に溶かして多孔質粒子に含浸させる方法、樹脂に熱をかけて溶融状態にしたものを多孔質粒子に含浸させる方法等が挙げられる。
【0012】
(樹脂)
本発明において樹脂は、多孔質粒子に含浸されて、培土中で徐々に固結成分として溶出し、固結性能を付与する。
樹脂は、特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂、合成樹脂等が挙げられる。これらの中でも、生分解性樹脂が好ましい。
【0013】
生分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
上記生分解性樹脂のうち、共重合体における上記他のヒドロキシカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシバレリン酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシオクタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、2-ヒドロキシ-2-エチル酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-エチルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-プロピルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-ブチルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-エチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-プロピルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-ブチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-ペンチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-エチルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-プロピルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-ブチルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルオクタン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-ヒドロキシ酪酸、5-ヒドロキシバレリン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
乳酸及びヒドロキシカルボン酸は、D体、L体、D/L体等の形態をとる場合があるが、いずれの形態であってもよく、制限はない。ポリ乳酸を用いる場合、D-乳酸含有率が1~30モル%であることが好ましく、5~20モル%であることがより好ましい。
【0016】
これらの中でも、本発明の効果を十分得るのに適している点から、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンが好ましく、可塑剤がなくとも移植性がより良好となる観点から、ポリカプロラクトンがより好ましい。
【0017】
生分解性樹脂の分子量としては、特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸の重量平均分子量は、本発明の効果を十分得るのに適している点から、5万~100万が好ましく、10万~80万がより好ましく、20万~60万がさらに好ましい。ポリカプロラクトンの重量平均分子量は、本発明の効果を十分得るのに適している点から、1000~20万が好ましく、1万~15万がより好ましく、5万~10万がさらに好ましい。
【0018】
ポリ乳酸及びポリカプロラクトンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、分子量が既知の標準物質と比較することにより後記の実施例欄に記載の方法で求めることができる。
【0019】
合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリウレタンポリ尿素、ポリ尿素、ポリアミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0020】
本発明の育苗培土用粒子含有物において樹脂は、培土表面で皮膜を形成し高い移植性能を発揮する点から、最低造膜温度(MFT)が低いことが好ましい。大気中の温度で皮膜を形成しやすいことを考慮すると、樹脂の最低造膜温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは60℃以下である。
【0021】
本発明の育苗培土用粒子含有物には、樹脂と共に可塑剤を配合してもよい。可塑剤は、樹脂の皮膜特性を改良する。
【0022】
可塑剤は、生分解性樹脂として最低造膜温度が高いポリ乳酸等を含有する場合に好適に配合される。可塑剤を配合する場合、生分解性樹脂の最低造膜温度が100℃以下となるような量が好ましく、60℃以下となるような量がより好ましい。生分解性樹脂の種類にもよるが、ポリ乳酸を配合する場合を含めた可塑剤の配合量は、可塑化により皮膜特性を向上する点から、生分解性樹脂100質量部に対して10質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましい。また、可塑剤のブリードアウトが発生するのを抑制する点から、生分解性樹脂100質量部に対して400質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましい。
【0023】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、アジピン酸と2-(2-メトキシエトキシ)エタノール及びベンジルアルコールのエステル等のアジピン酸誘導体、エチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸誘導体、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸誘導体、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート等のエーテルエステル誘導体、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等のグリセリン誘導体等が挙げられる。これらのうち、アジピン酸誘導体、クエン酸誘導体を用いたものが、造膜性向上効果が高い点で好ましい。
【0024】
(樹脂分散体)
樹脂分散体は、微細に分散した樹脂を指し、多孔質粒子に含浸後の状態を包含するが、本明細書中では、含浸前の樹脂分散体を含めて、樹脂分散体とする。樹脂分散体は、分散性の点から、樹脂の水系分散体であることが好ましい。従って樹脂の水系媒体中への分散性を高め、樹脂粒子を安定に分散させる観点から、分散剤を配合することが好ましい。
【0025】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子界面活性剤、アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤等のイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
高分子界面活性剤としては、例えば、アニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子が挙げられる。これらの高分子界面活性剤は、水溶性であってもよく、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリアクリルアミド、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸塩・アクリルアミド共重合体、マレイン化ポリブテン、マレイン化ポリブタジエン、ポリメチルビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸塩、カチオン化セルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等が挙げられる。
【0027】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、液体脂肪酸油硫酸エステル塩、脂肪族アミンおよび脂肪族アマイドの硫酸塩、脂肪アルコールリン酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族アミドスルホン酸塩、二塩基脂肪酸エステルのスルホン酸塩等が挙げられる。
【0028】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、アルキルポリオキシエチレンアミン等が挙げられる。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系化合物、酸化エチレン・酸化プロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン縮合物、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセリンアルキルエステル、ポリオキシアルキレングリセリンアルキルエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンポリグリセリンエステル等が挙げられる。これらの中でも、それ自体も生分解性を持ち、本発明の効果を十分得るのに適している観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0030】
ポリビニルアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、未変性のポリビニルアルコール、分岐構造を持った特殊ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールを用いることができる。これらの中でも、移植時のセルトレイからの離型性がより良くなる観点から、分岐構造を持った特殊ポリビニルアルコールが好ましい。
【0031】
変性ポリビニルアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボニル変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アルキルエーテル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アセトアミド変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール、アクリルニトリル変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している観点から、98%以下であることが好ましく、96%以下であることがより好ましく、94%以下であることがさらに好ましく、90%以下であることが特に好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度が、70%以上であることが好ましく、72%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、78%以上であることが特に好ましい。
【0033】
ポリビニルアルコールの分子量としては、特に限定されないが、例えば、移植性、移植時のセルトレイからの離型性、固結性がより良好になる観点から、粘度平均重合度による平均分子量が、1万以上であることが好ましく、3万以上であることがより好ましく、5万以上であることがさらに好ましく、7万以上であることが特に好ましく、9万以上であることが殊更好ましい。生分解性樹脂水系分散体のハンドリング性の観点から、粘度平均重合度による平均分子量が、20万以下であることが好ましく、18万以下であることがより好ましく、16万以下であることがさらに好ましく、14万以下であることが特に好ましく、12万以下であることが殊更好ましい。
【0034】
ポリビニルアルコールの平均分子量は、粘度平均重合度、ケン化度及び酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位の分子量から算出することができる。
【0035】
ポリビニルアルコールの重合度は、JIS K 6726に記載されたように、ポリビニルアルコールを水酸化ナトリウムを用いて再ケン化し、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:リットル/g)から、以下の式に基づいて算出できる。
粘度平均重合度=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
この粘度平均重合度に、ケン化度の割合に応じた酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位の分子量換算をして平均分子量とする。
変性ポリビニルアルコールの場合も、粘度平均重合度から上記と同様に算出する。
【0036】
樹脂に対する分散剤の質量比(分散剤/樹脂)としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.05以上、0.1以上、0.5以上である。樹脂に対する分散剤の質量比(分散剤/樹脂)の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、20以下、10以下、5以下、2以下である。
【0037】
含浸前の樹脂分散体における樹脂粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.010μm以上、0.050μm以上、0.10μm以上、0.30μm以上である。含浸前の樹脂分散体における樹脂粒子の平均粒子径の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、100μm以下、50μm以下、10μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下、1.0μm以下である。
【0038】
含浸前の樹脂分散体における樹脂粒子の標準偏差としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.0010以上、0.0050以上、0.010以上、0.050以上である。含浸前の樹脂分散体における樹脂粒子の標準偏差の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.90以下、0.70以下、0.50以下、0.30以下である。
【0039】
樹脂分散体において、水系溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、及び水と相溶する有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。前記混合溶媒において、水の比率は、特に限定されないが、混合溶媒の全量を基準として90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0040】
前記混合溶媒において、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、一価アルコール、多価アルコール等が挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられ、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
樹脂分散体には、本発明の効果を損なわない範囲内において、以上に示した以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、高分子化合物、有機溶媒、粘度調整剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
高分子化合物としては、ポリアクリル酸、セルロース、デンプン、キチン、天然ゴム、多糖類(キサンタンガム、グァーガム等)、リグニン等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。高分子化合物を使用することで、固結性能がより良好となる。
【0043】
樹脂分散体は、固形分が、樹脂分散体の全量を基準として5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。固形分がこの範囲内であると、分散体に占める樹脂粒子の割合が多いため乾燥効率が向上する。また分散体の粘度が適正な範囲となることで、樹脂粒子が安定的に分散する。また、固形分が、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。固形分がこの範囲内であると、分散体の粘度が高くなりすぎず、ハンドリング性が良好となる。ここで固形分とは、樹脂分散体の全体量に対して、水分等の水系溶媒の量を差し引いた質量の百分率のことである。
【0044】
(多孔質粒子)
多孔質粒子としては、特に限定されないが、例えば、バーク堆肥、ピートモス、ココピート、ヤシガラ、モミガラ、おがくず、竹粉、バガス、泥炭、草炭等の植物性繊維状物質、バーミキュライト、ケイソウ土、アタパルジャイト、セピオライト、ゼオライト、パーライト、モンモリロナイト、タルク、シリカ等の無機物質が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、本発明の効果を十分得るのに適している点から、無機物質がより好ましく、その中でも、シリカが特に好ましい。
【0045】
多孔質粒子に対する、樹脂及び分散剤の合計量の質量比((樹脂+分散剤)/多孔質粒子)としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.00010以上、0.00050以上、0.0010以上、0.0050以上、0.010以上、0.050以上、0.080以上、0.15以上である。多孔質粒子に対する、樹脂及び分散剤の合計量の質量比((樹脂+分散剤)/多孔質粒子)の上限値としては、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、40以下、20以下、10以下、5.0以下、3.0以下、1.0以下、0.50以下である。
【0046】
多孔質粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、3μm以上である。多孔質粒子の平均粒子径の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、100,000μm以下、10,000μm以下、5,000μm以下、2,000μm以下、500μm以下、100μm以下、50μm以下、20μm以下、8μm以下である。
【0047】
多孔質粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で測定した値、例えば任意に抽出した50個の粒子の最長径の平均値が参照される。
【0048】
多孔質粒子のBET比表面積としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、1m2/g以上、10m2/g以上、m2/g以上、50m2/g以上、100m2/g以上である。多孔質粒子のBET比表面積の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、1,000m2/g以下、800m2/g以下、300m2/g以下、200m2/g以下である。
【0049】
本発明においてBET比表面積とは、乾燥状態における粒子に対し、窒素ガス吸着法によって測定された表面積をBET法で解析した値をいう。BET比表面積は、市販の測定装置(例えばマイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置「BELSORP(登録商標) MAX」)を用いて測定することができる。
【0050】
多孔質粒子の嵩密度としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、0.1g/l以上、1g/l以上、10g/l以上、30g/l以上、50g/l以上である。多孔質粒子の嵩密度の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、1,000g/l以下、500g/l以下、300g/l以下、150g/l以下である。
【0051】
多孔質粒子の嵩密度は、次の方法により測定する。風袋を測定したガラス製のメスシリンダーに、多孔質粒子を数回に分けて投入するとともに、投入時毎に、多孔質粒子の入ったメスシリンダーをタッピングして、メスシリンダーの計量容積丁度になるまで、多孔質粒子を投入する。次いで、多孔質粒子が入った状態で、メスシリンダーの重量を測定し、メスシリンダーの風袋と容積から、多孔質粒子の嵩密度を決定する。
【0052】
(樹脂含浸多孔質粒子)
樹脂含浸多孔質粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、1μm以上、7μm以上、12μm以上、17μm以上、25μm以上である。樹脂含浸多孔質粒子の平均粒子径の上限値としては、特に限定されないが、本発明の効果を十分得るのに適している点から、より好ましい順に示すと、3,000μm以下、800μm以下、300μm以下、100μm以下、50μm以下である。
【0053】
樹脂含浸多孔質粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で測定した値、例えば任意に抽出した50個の粒子の最長径の平均値が参照される。
【0054】
(育苗培土用粒子含有物の製造方法)
本発明の育苗培土用粒子含有物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂及び分散剤、及び添加する場合にはその他の成分、例えば可塑剤を、水系溶媒と共に混合撹拌することで、樹脂の水系分散体を製造し、その後多孔質体と混合し、含浸させることで製造することができる。
【0055】
具体的には、例えば、攪拌装置を有する密閉槽を用い、樹脂、分散剤、可塑剤、及び水を同時に仕込み、加熱攪拌しながら加圧して樹脂を分散させる加圧分散法;加圧下で保持されている熱水中に、樹脂、分散剤、及び可塑剤を含む溶融物を添加攪拌して分散させる直接分散法;樹脂及び可塑剤を加熱溶融させ、これに分散剤を含む水溶液を添加攪拌して樹脂を水に分散させる転相法;有機溶媒、水、樹脂、分散剤、及び可塑剤を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法;樹脂及び可塑剤の有機溶媒溶液中に、分散剤を含む水溶液を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0056】
樹脂の幅広い種類に適用が可能な点、加水分解の進行を考慮すると、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、水、樹脂、分散剤、及び可塑剤を仕込み、攪拌しながら昇温し、固体原料を溶解、分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去する方法が好ましい。
【0057】
あるいは、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、樹脂、及び可塑剤を仕込み攪拌昇温し溶解して生分解性樹脂溶解溶液を調製し、別の攪拌槽に水、分散剤を仕込み、溶解した水溶液を前記密閉槽に添加し、攪拌下で樹脂溶解温度以上に昇温しながら分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去する方法が好ましい。
【0058】
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル等の蟻酸エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等のエステル系有機溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の溶解性が良好なエステル系有機溶媒、特に蟻酸エステル類、酢酸エステル類が好ましい。有機溶媒と水との割合は、樹脂や分散剤等の十分な溶解を考慮すると、質量比で、有機溶媒:水=1:9~9:1の割合が好ましく、7:3~3:7の割合がより好ましい。
【0059】
育苗培土用粒子含有物の製造における分散攪拌装置としては、ホモミキサーや高圧乳化機等を用いてもよいが、これらの特殊な装置を使用せずとも、通常の分散や混合攪拌に使用される、例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼等の攪拌翼を有する回転式攪拌機を用いることができる。また、攪拌速度及び回転速度についても通常の分散や混合で使用する条件であってよい。例えば、分散時の攪拌翼の翼径(d1)と攪拌槽の内径(d2)の比(翼比:d1/d2)が0.5~0.85である攪拌翼を用いることができる。また、攪拌翼の周速は1~8m/sとすることができる。
【0060】
<育苗培土>
本発明の育苗培土は、本発明の育苗培土用粒子含有物を含む。本発明の育苗培土は、培土構成素材を基材とし、例えば、本発明の育苗培土用粒子含有物を培土構成素材に混合したものである。
【0061】
本発明の育苗培土における培土構成素材としては、特に限定されないが、通常農業用や園芸用の培土として用いられるものが挙げられ、例えば、植物性の繊維状物質、無機物質、肥料、土等が挙げられる。これらの培土構成素材は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
育苗培土の基材である培土構成素材は、育苗対象の植物種等に応じて、以上のような培土として使用可能な素材を適宜組み合わせて使用することができる。このような育苗培土を用いることにより、根回りが少ない苗にも対応でき、定植性も良好で根鉢部分の崩壊が生じ難い根鉢を形成させることが可能となる。
【0063】
本発明の育苗培土は、本発明の育苗培土用粒子含有物を用いると、培土構成素材の種類や潅水時の水温等の影響を受けることがなく、高い固結性能を示すことができる。培土構成素材の種類による影響を受けないため、植物性の繊維状物質のように従来の固結剤では固結性能を発揮しにくい培土構成素材を含む育苗培土等、幅広い用途への応用が可能である。
【0064】
本発明の育苗培土は、育苗対象の植物種等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内においてその他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、農業用薬剤等が挙げられる。農業用薬剤としては、例えば、除草剤、動物忌避剤、成長調整剤、土壌改良剤、有用微生物、有用菌、透水剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本発明の育苗培土において、本発明の育苗培土用粒子含有物の含有量は、特に限定されないが、固結性能が良好で、根鉢強度の低下を抑制することができる点から、培土構成素材の全量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。また、生育性の点から20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。
【0066】
本発明の育苗培土用粒子含有物を、育苗培土の基材となる培土構成素材に添加混合することにより固結前の育苗培土が得られ、そのまま使用したり袋詰めして保管することができる。固結前の育苗培土は、典型的には粒状の状態で、水分含量が60%未満である。
【0067】
固結前の育苗培土は、上記のとおり袋詰めされた粒状の状態で流通可能であるので、取り扱いが容易であり、様々な形状、セル数の育苗用容器に充填可能である。このため、農業従事者がすでに保有している育苗用容器を使用することが可能であり、農産物生産の低コスト化が可能である。
【0068】
固結前の育苗培土は、例えば、育苗用容器に充填し、展圧した後に常温で風乾して、固結することで、植物を育苗する培土となる。
【0069】
固結前の育苗培土を充填するための育苗用容器としては、従来から用いられているものと同様のセル、ポット、トレイ、苗箱等が使用でき、育苗用容器の種類、形状、構造、サイズ等は各々の状況に応じて適宜選択可能であるが、固結前の育苗培土は、容積が1セル当たりの容積が10cm3以下の小容器に充填して用いた場合に、特に顕著な効果を発揮する。
【0070】
固結前の育苗培土は、育苗用容器に充填した後、展圧、すなわち上方からプレスして加圧することにより、固結後に所望の根鉢強度を備えた育苗培土となる。展圧時の圧力としては、特に限定されないが、例えば、0.1~10.0MPaの範囲である。展圧時の圧力が上記の範囲であれば、根鉢強度が高くなり、育苗施設からの運搬時や、移植機による抜き取り時および圃場への植え付け時にも根鉢に割れが生じたり、崩れるのを抑制することができる。
【0071】
このような展圧時の圧力は、育苗する農産物により好適な値が異なる。一般的な野菜については、例えば0.98MPa程度、タマネギについては、例えば4.9MPa程度である。固結前の育苗培土の展圧には、例えば、市販の播種機等を使用することができる。
【0072】
固結前の育苗培土は、常温で風乾することにより固結することができる。風乾に要する時間としては、特に限定されないが、例えば、常温で1~15日の範囲である。具体的には、ビニルハウスの中で自然乾燥させた場合3日程度、気温25~28℃、湿度0%近傍に制御された発芽室内では1日程度、住宅や納屋等の農業従事者の居住環境に近い屋内では1週間程度風乾させることが好ましい。なお、風乾後の育苗培土の水分含量については、育苗する農産物等の植物の種類に応じて適宜調節することができる。
【0073】
本発明の育苗培土は、このようにして固結前の育苗培土を加熱することなく、育苗用容器に充填して、展圧および常温で風乾するだけでもよく、育苗培土を簡便に製造することができる。そのため、加熱固結のための特殊な設備を必要とせず、しかも育苗用容器の変形や破損が生じ難く、農産物生産の低コスト化が可能である。
【0074】
本発明の育苗培土を用いて植物を育苗する際には、例えば、上記のように、播種機を用いて市販のセルトレイに固結前の育苗培土を充填し展圧した後、風乾により固結させ、野菜等の植物の種子を1セルに対して1粒ずつ播種機を用いて播種し、固結前の育苗培土で覆土した後、潅水を行う等通常の作業を行い発芽させ育苗をすることができる。また、固結前の育苗培土に、あらかじめ野菜等の植物の種子を混合したものを、市販のセルトレイに播種機を用いて充填し、展圧した後、風乾により固結させて、潅水を行う等通常の作業を行い発芽させ育苗をすることもできる。また、種子以外にも挿し木して発根させ育苗をすることもできる。
【0075】
本発明の育苗培土は、野菜用、水稲用等の農業用や、園芸用に用いることができる。本発明の育苗培土による育苗に適する植物としては、例えば、野菜セル苗用途、果菜セル苗用途、切り花用途、鉢物、苗物、花壇用途切り花用途等が挙げられる。
【0076】
野菜セル苗用途としては、例えば、ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、アスパラガス等のユリ科;セルリー、ミツバ、パセリ、ニンジン、明日葉等のセリ科;ホウレンソウ、フダンソウ、オカヒジキ等のアカザ科;ハクサイ、キャベツ、水菜、小松菜、メキャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、チンゲンサイ、コールラピ、ターサイ、ツケナ、高菜、クレソン、大根、菜の花等のアブラナ科;レタス、シュンギグ、ゴボウ、フキ、ヤーコン等のキク科、シソ等のシソ科;ビート等のヒユ科、ゴマ等のゴマ科;エンダイブ等のキク科;リーキ等のヒガンバナ科等が挙げられる。これらの中でも、培土構成素材に使用する土の比率が多い点から、また根が細く、根鉢部分の崩壊が生じやすいユリ科の育苗に好適である。
【0077】
果菜セル苗用途としては、例えば、小麦、大麦、米等のイネ科;メロン、キュウリ、スイカ、カボチャ、トウガン、キンシウリ、ゴーヤ、ズッキーニ等のウリ科;トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、とうがらし、じゃがいも等のナス科;オクラ、モロヘイヤ等のアオイ科;スイートコーン(トウモロコシ)、インゲン等のマメ亜科;エンドウ、エダマメ、ソラマメ等のマメ科等が挙げられる。
【0078】
また、固結前育苗培土又は固結後の育苗培土に挿し木するのに適する植物としては、キク、カーネーション、宿根カスミソウ等の挿し木で繁殖できる植物が挙げられる。
【0079】
切り花用途としては、例えば、トルコギキョウ、キンギョソウ、ブプレウルム、ユーストマ、ストック、アネモネ、カンパニュラ、ダリア、スカピオサ、デルフィニウム、ラークスパー、ニゲラ、ハナシノブ、ブルーレースフラワー、マトリカリア、シンテッポウユリ、リモニウムシニュアータ、オキシペタルム、クラスペディア、ユウギリソウ等が挙げられる。
【0080】
鉢物、苗物、花壇用途としては、例えば、アゲラタム、イソトマ、インパチェンス、エキザカム、ガーベラ、ガザニア、カルセオラリア、クリサンセマム、コリウス、サルビア、シザンサス、シネラリア、ゼラニウム、トレニア、パンジー、ビンカ、プリムラ、ペチュニア、ベコニア、マリーゴールド、ラナンキュラス、カーネーション等が挙げられる。
【0081】
本発明の育苗培土を用いて植物を育苗した後、移植機を用いてセル苗やポット苗等を分離し、根鉢を地床に移植する。本発明の育苗培土用粒子含有物及び育苗培土は、固結性能が良好で、含水時の根鉢強度の低下を抑制することができるので、機械移植の際に根鉢部が崩壊したり、根部と培土とが分離したりすることを抑制できる。また育苗培土に固結剤として含まれる樹脂分散体が、生分解性樹脂分散体であると、生分解性が良好で、環境汚染の懸念がない。
【0082】
<移植性向上剤、移植性向上方法>
本発明の育苗培土用粒子含有物は、苗の移植性、特に、長期間にわたる固結性能、培土構成素材の種類による影響を受けにくく幅広い用途への応用を可能とすること、また植物への生育に悪影響を及ぼしにくく、生育障害の起きやすい植物にも使用できること等に効果を発揮することから、本発明の育苗培土用粒子含有物を有効成分とする移植性向上剤、本発明の育苗培土用粒子含有物を用いて移植性を向上させる方法に好適に使用できる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.育苗培土用粒子含有物の調製
実施例及び比較例において、育苗培土用粒子含有物の配合成分は次のものを用いた。
(多孔質粒子)
ピートモス 平均繊維長1,000μm、BET比表面積500m2/g、嵩密度200g/l
バーミキュライト 平均粒子径1,000μm、BET比表面積4m2/g、嵩密度100g/l
ゼオライト 平均粒子径10μm、BET比表面積700m2/g、嵩密度650g/l
セピオライト 平均粒子径200μm、BET比表面積500m2/g、嵩密度500g/l
シリカ-1 平均粒子径5μm、BET比表面積180m2/g、嵩密度70g/l
シリカ-2 平均粒子径10μm、BET比表面積240m2/g、嵩密度200g/l
多孔質粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した。多孔質粒子のBET比表面積と嵩密度は、前記の方法で測定した。
【0084】
(非多孔質粒子)
珪砂 平均粒子径100μm
【0085】
(生分解性樹脂)
ポリ乳酸-1 重量平均分子量約40万
ポリ乳酸-2 重量平均分子量約12万
ポリカプロラクトン-1 重量平均分子量64,000
ポリカプロラクトン-2 重量平均分子量2,000
生分解性樹脂の平均分子量、すなわち、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の平均分子量をいう。
[GPC測定装置]
カラム: 日本分光株式会社製
検出器: 液体クロマトグラム用RI検出器 日本分光株式会社製RI-1530
[測定条件]
溶媒: クロロホルム(特級)
測定温度: 50℃
流速: 1.0ml/分
試料濃度: 15mg/ml
注入量: 2μl
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:ChromNAV (Ver.1.19.02)
【0086】
(分散剤)
PVA-1 ポリビニルアルコール 分子量:100,000 ケン化度:80%
PVA-2 ポリビニルアルコール 分子量:16,000 ケン化度:80%
PVA-3 ポリビニルアルコール 分子量:16,000 ケン化度:88%
ポリオキシエチレン(5モル)ノニルフェニルエーテル
酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)との共重合体 数平均分子量3300 EOPO比率(EО:PO)=46:54
ポリビニルアルコールの平均分子量は、前記のとおりJIS K 6726に記載された粘度平均重合度、ケン化度及び酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位の分子量から算出した値である。
【0087】
(可塑剤)
アジピン酸ジイソブチル
【0088】
多孔質粒子以外の原料について、表1A~表1Dに示した成分割合で、各成分を密閉分散槽に仕込む。そして、仕込んだイオン交換水の1.5倍量の酢酸エチルをさらに仕込み、65℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去して、生分解性樹脂水系分散体として得た後に、多孔質粒子と混合して含浸させ、育苗培土用粒子含有物を得た。なお、比較例1は、上記で得た生分解性樹脂水系分散体を多孔質粒子と混合しなかった。比較例3は、上記で得た生分解性樹脂水系分散体と非多孔質粒子を混合した。
【0089】
生分解性樹脂水系分散体中の生分解性樹脂粒子の平均粒子径と粒度分布の標準偏差は、島津レーザ回折型粒度分布測定装置((株)島津製作所製、SALD-2300型、屈折率1.45-0.00i)を用いて測定した。
【0090】
育苗培土用粒子含有物における樹脂含浸多孔質粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した。
【0091】
2.育苗培土の調製
<育苗培土の調製>
各種培土構成素材を以下の比率(体積比率:山土60%、腐葉土10%、赤玉土30%)となるようにミキサー(光洋機械産業株式会社製)に投入して攪拌混合した。次いで培土基材100質量部に対して、育苗培土用粒子含有物を1質量部となるように添加して、10分間攪拌混合し、固結前の育苗培土を得た。この固結前の育苗培土は、袋詰めした。なお、比較例1は、上記培土基材に添加する際、先に生分解性樹脂水系分散体を培土基材に添加混合した後に、多孔質粒子を添加混合した。
【0092】
<播種作業>
播種機(OSE-110:みのる産業株式会社製)を用いて、袋詰めされた固結前の育苗培土を448穴のセルトレイ(ポット448育苗箱:みのる産業株式会社製)に一定量充填し、展圧した後、タマネギの種子を1穴に対して1粒ずつ再度播種機を用いて播種し、一定量の固結前の育苗培土で覆土した後、一定量の潅水を行い、播種作業を完了した。なお、潅水時の温度、保管温度を20℃とし、以下の試験を実施した。
【0093】
3.評価
実施例及び比較例の育苗培土用粒子含有物について、次の評価を行った。
[移植性]
上記育苗から30日後又は60日後、セルトレイからの移植機(玉ネギ移植機歩行4条植:みのる産業株式会社製)によるタマネギの移植性について、以下の基準で評価した。なお、評価が○以上を課題が解決できたものとした。
◎+:弾力性が十分ある苗で、セルトレイから抜き取る際、移植機の爪で苗が全く崩れない。
◎:弾力性がある苗で、セルトレイから抜き取る際、移植機の爪で苗がほぼ崩れない。
○:苗がややもろく、セルトレイから抜き取る際、移植機の爪で苗がやや崩れるが、製品上問題ない。
△:苗がもろく、セルトレイから抜き取る際、移植機の爪で苗がかなり崩れる。
×:苗が非常にもろく、セルトレイから抜き取る際、移植機の爪で苗がほぼ崩れる。
【0094】
[生育性:発芽後の生育状態]
上記の実施例及び比較例で得られた播種後の育苗培土について、播種後は1日1回の潅水を一定量行い育苗し、30日後・60日後の発根状況について、以下の基準で評価した。
◎+:発根状況が極めて良好であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することができる。
◎:発根状況が良好であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することができる。
○:発根状況は問題ない。
△:発根状況はやや不良であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することはできない。
×:発根状況は不良であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することはできない。
【0095】
[固結性]
上記育苗から60日後、タマネギの苗をセルトレイから抜取り、50cmの高さから落下させ、落下前後の質量から算出した残存率よりタマネギの根鉢強度を以下の基準で評価した。
◎+:残存率が95%以上
◎:残存率が90%以上95%未満
○:残存率が80%以上90%未満
△:残存率が70%以上80%未満
×:残存率が70%未満
【0096】
[ダマのなりにくさ]
生分解性樹脂水系分散体を多孔質粒子又は非多孔質粒子と混合した際のダマのなりにくさについて、以下の基準で評価した。
◎+:ダマは全くない
◎:ダマ発生率が、混合物の重量比率で0%超5%未満
○:ダマ発生率が、混合物の重量比率で5%以上10%未満
×:ダマ発生率が、混合物の重量比率で10%以上
【0097】
上記評価の結果を表1A~表1Dに示す。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【要約】
【課題】苗の移植性が良好な育苗培土用粒子含有物とそれを用いた育苗培土、移植性向上剤、及び移植性向上方法を提供する。
【解決手段】本発明の育苗培土用粒子含有物は、樹脂含浸多孔質粒子を含む。
【選択図】なし