IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 日立パワーデバイスの特許一覧

特許7577910整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置
<>
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図1
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図2
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図3
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図4
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図5
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図6
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図7
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図8
  • 特許-整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】整流回路、並びに、それを用いる半導体装置および電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H02M7/12 X
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021140860
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034562
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三輪 明寛
(72)【発明者】
【氏名】庄司 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】坂野 順一
(72)【発明者】
【氏名】内海 智之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孝裕
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-68812(JP,A)
【文献】特開2019-129656(JP,A)
【文献】特開平11-146640(JP,A)
【文献】特開2011-151788(JP,A)
【文献】特開2008-211703(JP,A)
【文献】国際公開第2010/4738(WO,A1)
【文献】特開2009-194791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を一方向に流す整流回路において、
エンハンスメント型の第1のMOSFETと、
前記第1のMOSFETに直列に接続され、前記第1のMOSFETよりも低耐圧のエンハンスメント型の第2のMOSFETと、
前記第1のMOSFETと前記第2のMOSFETとを共に整流動作させる制御回路と、
前記制御回路に電源を供給し、前記第2のMOSFETにおけるドレイン-ソース間電圧によって充電されるコンデンサと、
を備えることを特徴とする整流回路。
【請求項2】
請求項1に記載の整流回路において、
前記制御回路は、
前記第2のMOSFETにおける前記ドレイン-ソース間電圧に基づいて前記第1のMOSFETと前記第2のMOSFETとを共にオン・オフすることにより、前記第1のMOSFETと前記第2のMOSFETとを共に整流動作させることを特徴とする整流回路。
【請求項3】
請求項1に記載の整流回路において、
前記制御回路は、
前記第2のMOSFETにおける前記ドレイン-ソース間電圧に応じて、出力レベルを切り換える比較器と、
前記比較器の前記出力レベルに応じて、前記第1のMOSFETおよび前記第2のMOSFETの各ゲートへ共通のゲート信号を出力するゲートドライバと、
を有することを特徴とする整流回路。
【請求項4】
請求項3に記載の整流回路において、
前記第2のMOSFETのドレインおよびソースが、前記比較器の入力に接続されることを特徴とする整流回路。
【請求項5】
請求項4に記載の整流回路において、
前記第2のMOSFETにおける前記ドレイン-ソース間電圧が前記比較器の差動入力電圧以下であることを特徴とする整流回路。
【請求項6】
請求項1に記載の整流回路おいて、前記第1のMOSFETのゲート-ソース間の耐圧が、前記第2のMOSFETがオフのときにおける前記第2のMOSFETの前記ドレイン-ソース間電圧よりも大きいことを特徴とする整流回路。
【請求項7】
請求項1に記載の整流回路おいて、前記第2のMOSFETのドレインとゲートとの間にツェナーダイオードが接続されることを特徴とする整流回路。
【請求項8】
請求項1に記載の整流回路おいて、さらに、
前記第1のMOSFETと並列に接続される第1の抵抗と、
前記第2のMOSFETと並列に接続される第2の抵抗と、
を備えることを特徴とする整流回路。
【請求項9】
請求項3に記載の整流回路において、
前記比較器は、値が異なる第1の閾値および第2の閾値と、前記第2のMOSFETにおける前記ドレイン-ソース間電圧とを比較することを特徴とする整流回路。
【請求項10】
整流回路と、
前記整流回路を内蔵する半導体パッケージと、
を備える半導体装置において、
前記整流回路が、請求項1から9の何れかに記載される整流回路であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
複数の整流回路から構成されるブリッジ整流回路と、
前記ブリッジ整流回路を内蔵する半導体パッケージと、
を備える半導体装置において、
前記複数の整流回路の各々が、請求項1から9の何れかに記載される整流回路であることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
整流回路部を有する電源装置において、
前記整流回路部が、請求項1から9の何れかに記載される整流回路を備えることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流回路、並びに整流回路を用いる半導体装置および電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置に用いられ、交流を直流に変換する整流回路としては、ダイオード整流回路や、MOSFETを用いる同期整流回路が使用されている。同期整流回路は、MOSFETがダイオードのような内蔵ポテンシャルを有さず0Vから順方向電流が立ち上がるため、電力損失が低い。したがって、フロントエンド電源などのように低損失化を要する電源装置においては、同期整流回路が用いられている。
【0003】
同期整流回路に関する従来技術として、特許文献1および特許文献2に記載される技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、オルタネータに用いられる低損失な整流回路として、制御回路とMOSFETが1つのパッケージに搭載される。この整流回路は、ダイオードのように、電流を一方向に流す機能(整流機能)を有する2端子の半導体装置として動作する。
【0005】
特許文献1に記載の技術による整流回路は、比較器およびゲートドライバを有する制御回路と、制御回路に電源を供給するコンデンサと、MOSFETとから構成されている。制御回路は、比較器によって検出されるMOSFETのドレイン-ソース間電圧に応じて、ゲートドライバによってMOSFETをオン・オフする。コンデンサは、MOSFETがオフしているときに、MOSFETのドレイン-ソース間電圧によって充電される。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、アノード(A)とカソード(K)の間に、ノーマリオフのエンハンスメント型の低耐圧トランジスタQ1と、ノーマリオンのデプレッション型の高耐圧トランジスタQ2とが直列接続される。低耐圧トランジスタQ1が、比較器の出力によってオン・オフされる。比較器は、アノードに接続されるQ1のソース電圧と、Q2とともにカソードに接続されるデプレッション型の高耐圧トランジスタQ3のソース電圧を入力とする。比較器の電源となるコンデンサは、高耐圧トランジスタQ3を介して、アノード・カソード間に接続され、Q1のオフ時に、アノード・カソード間電圧によって充電される。
【0007】
特許文献2に記載の技術による整流回路は、ダイオードのように、アノードおよびカソードを備える整流素子として動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-116053号公報
【文献】特開2011-151788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術では、整流回路を高耐圧化するために高耐圧MOSFETを用いると、制御回路やコンデンサも高電圧化を必要とする。また、半導体スイッチング素子を用いて、比較器への入力電圧やコンデンサの充電電圧を、比較器やコンデンサの電圧レベルに制御する手段を用いる場合には、高耐圧の半導体スイッチング素子が必要となる。したがって、整流回路を高耐圧化すると、整流回路の電力損失が増大する。
【0010】
特許文献2の技術では、低耐圧トランジスタQ1と、高耐圧トランジスタQ2とが直列接続されることにより、整流回路を高耐圧化することができる。しかしながら、比較器への入力電圧やコンデンサの充電電圧を制御するために高耐圧トランジスタQ3が用いられるので、整流回路の電力損失が増大する。
【0011】
そこで、本発明は、電力損失の増大を抑制しながら高耐圧化することができる整流回路、並びに、この整流回路を用いる半導体装置および電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明による整流回路は、電流を一方向に流すものであって、エンハンスメント型の第1のMOSFETと、第1のMOSFETに直列に接続され、第1のMOSFETよりも低耐圧のエンハンスメント型の第2のMOSFETと、第1のMOSFETと第2のMOSFETとを共に整流動作させる制御回路と、制御回路に電源を供給し、第2のMOSFETにおけるドレイン-ソース間電圧によって充電されるコンデンサと、を備える。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明による半導体装置は、整流回路と、整流回路を内蔵する半導体パッケージと、を備えるものであって、整流回路が、上記の本発明による整流回路である。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明による半導体装置は、複数の整流回路から構成されるブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路を内蔵する半導体パッケージと、を備えるものであって、複数の整流回路の各々が、上記の本発明による整流回路である。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明による電源装置は、整流回路部を有するものであって、整流回路部が、上記の本発明による整流回路を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、整流回路を電力損失の増大を抑制しながら高耐圧化することができる。これにより、整流回路を有する半導体装置や、整流回路部を有する電源装置の電力損失を低減できる。
【0017】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1である整流回路の構成を示す回路図である。
図2】実施例2である整流回路の構成を示す回路図である。
図3】実施例3である整流回路の構成を示す回路図である。
図4】実施例4である整流回路の動作を示す電流・電圧波形図である。
図5】実施例5である半導体装置の構成図である。
図6】実施例6である半導体装置の構成図である。
図7】実施例7である電源装置の構成を示す回路図である。
図8】第1の比較例である整流回路の構成を示す回路図である。
図9】第2の比較例である整流回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、下記の実施例1~7により、図面を用いながら説明する。各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1である整流回路の構成を示す回路図である。
【0021】
実施例1の整流回路は、図1に示すように、第1の端子T1と第2の端子T2との間に直列接続される高耐圧(例えば、数100V以上)のMOSFET QH1と、MOSFET QH1よりも低耐圧のMOSFET QL1と、制御回路1と、ダイオードD1と、コンデンサC1から構成される。
【0022】
第1の端子T1および第2の端子T2には、それぞれ、MOSFET QL1のソースおよびMOSFET QH1のドレインが接続される。QL1のドレインとQH1のソースとが互いに接続され、直列接続点となる。なお、実施例1では、整流電流(I)は、QH1とQL1の直列接続において、T1からT2へ向かう方向へ流れ、T2からT1に向かう方向へは流れない。
【0023】
なお、実施例1において、MOSFET QL1およびMOSFET QH1は、エンハンスメント型のnチャネルMOSFETである。
【0024】
制御回路1は、比較器COMP1とゲートドライバGD1から構成される。比較器COMP1は、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSと所定の閾値を比較する。ゲートドライバGD1は比較器COMP1の比較結果に基づき、MOSFET QL1およびMOSFET QH1のオン・オフを制御する制御信号を生成する。すなわち、MOSFET QL1およびMOSFET QH1は同じゲートドライバGD1によって、同時にターンオンされるとともに、同時にターンオフされる。
【0025】
コンデンサC1は、比較器COMP1とゲートドライバGD1に電源を供給する。MOSFET QL1がオフの時に、MOSFET QL1のドレイン-ソース間に印加される電圧VQL1DSの正の電圧によって、コンデンサC1と逆流防止用ダイオードD1とを経由してMOSFET QL1のドレイン端子からソース端子へ流れる電流によってコンデンサC1は充電される。
【0026】
このとき、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSは、第1の端子T1と第2の端子T2との間に印加される電圧を、MOSFET QL1とMOSFET QH1およびコンデンサC1とからなる回路部によって分圧される電圧である。なお、VQL1DSの大きさは、主に、MOSFET QH1のドレイン-ソース間寄生容量と、MOSFET QL1のドレイン-ソース間寄生容量と、コンデンサC1の容量の比で決まる。したがって、MOSFET QH1のドレイン-ソース間寄生容量と、MOSFET QL1のドレイン-ソース間寄生容量と、コンデンサの容量を考慮して、QH1,QL1,C1を選定することで、コンデンサに印加される電圧と比較器の検出電圧(入力電圧)とを、QH1およびQL1の直列接続の耐圧よりも低く、コンデンサおよび比較器に適する所望の電圧レベルに設定することができる。
【0027】
以下、図1の整流回路の同期整流動作について説明する。
【0028】
まず、ターンオン動作について説明する。
【0029】
第1の端子T1から第2の端子T2に整流電流(I)が流れ始めるとき、Iは、MOSFET QH1,QL1の各ボディダイオード(寄生ダイオード)を流れる。このとき、ボディダイオードの順方向電圧により、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧(VQL1DS)は負の値となる。VQL1DSの値が、比較器COMP1の閾値(VTH1)よりも小さくなると、比較器COMP1の出力が低レベルから高レベルに遷移する。比較器COMP1の出力が高レベルになると、ゲートドライバGD1は、MOSFET QH1,QL1の各ゲートにオンゲート信号を出力する。これにより、MOSFET QH1のゲート-ソース電圧(VQH1GS)とMOSFET QL1のゲート-ソース電圧(VQL1GS)が増大するので、MOSFET QH1,QL1はターンオンする。
【0030】
MOSFET QH1,QL1のターンオン後、整流電流(I)は、MOSFET QH1,QL1の各チャネルを流れる。このとき、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧(VQL1DS)は、MOSFET QL1のオン抵抗とIとの積で表される。同じIに対して、MOSFETのオン抵抗による電圧降下は、ボディダイオードのオン電圧より小さいので、整流回路が低損失化される。
【0031】
次に、ターンオフ動作について説明する。
【0032】
整流電流(I)が減少すると、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧(VQL1DS(負の値))は増加する。VQL1DSの値が、比較器COMP1の閾値(VTH1)よりも大きくなると、比較器COMP1の出力が高レベルから低レベルに遷移する。比較器COMP1の出力が低レベルになると、ゲートドライバGD1は、MOSFET QH1,QL1の各ゲートにオフゲート信号を出力する。これにより、MOSFET QH1のゲート-ソース電圧(VQH1GS)とMOSFET QL1のゲート-ソース電圧(VQL1GS)が減少するので、MOSFET QH1,QL1はターンオフする。
【0033】
MOSFET QH1,QL1のターンオフ後、MOSFET QH1,QL1の各ドレイン-ソース間容量およびコンデンサC1からなる回路部によって分圧される、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧(VQL1DS(正の値))によって、C1は再び充電される。
【0034】
なお、MOSFET QH1,QL1がオフ状態の場合、MOSFET QH1のゲート-ソース電圧VQH1GSはゲートドライバの出力電圧(=0)からMOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSを引いた電圧に等しい。したがって、オフ状態におけるVQL1DSは、MOSFET QH1のゲート-ソース間耐圧よりも低く設定されることが好ましい。もしくは、MOSFET QH1のゲート-ソース間耐圧が、オフ状態におけるVQL1DSよりも高いことが好ましい。
【0035】
ここで、実施例1の比較例について説明する。いずれの比較例においても、MOSFETのオン・オフによる同期整流が適用されている。
【0036】
図8は、第1の比較例である整流回路の構成を示す回路図である。
【0037】
第1の比較例では、上述の特許文献1の技術と同様に、一個のMOSFETが用いられ、図8では高耐圧MOSFET QH1がオン・オフされ、整流電流は高耐圧MOSFET QH1に流れる。さらに、図8に示すように、コンデンサC1の検出電圧が、高耐圧MOSFET QH2によって所望のレベルに制御されるとともに、比較器COMP1に入力される検出電圧が、高耐圧MOSFET QH3によって所望のレベルに制御される。なお、比較器COMP1に入力される検出電圧は、比較器COMP1の差動入力電圧以下に抑えられる。
【0038】
なお、第1の比較例では、高耐圧MOSFET QH2に直列にコンデンサC2が接続され、このコンデンサC2が比較器COMP1の入力に接続される。また、高耐圧MOSFET QH3のゲート駆動電圧を生成するために、ツェナーダイオードZD1と抵抗R3の直列回路が、第1の端子T1と第2の端子T2の間に接続される。このように、第1の比較例では、部品点数が増加する。
【0039】
図9は、第2の比較例である整流回路の構成を示す回路図である。
【0040】
第2の比較例では、エンハンスメント型の低耐圧MOSFET QL1とデプレッション型の高耐圧MOSFET QH1とが直列に接続され、整流電流は低耐圧MOSFET QL1および高耐圧MOSFET QH1に流れる。低耐圧MOSFET QL1がオン・オフされるとともに、高耐圧MOSFET QH1によって整流回路が高耐圧化される。さらに、図9に示すように、デプレッション型の高耐圧MOSFET QH2によって、コンデンサC1の電圧と、比較器COMP1の検出電圧とが、所望のレベルに制御される。なお、本比較例では、QH1およびQH2は、ノーマリオン型のスイッチング素子として動作する。
【0041】
第1の比較例(図8)および第2の比較例(図9)において用いられる高耐圧MOSFETの個数は、それぞれ3個(QH1,QH2,QH3)および2個(QH1,QH2)である。これに対し、実施例1(図1)において用いられる高耐圧MOSFETの個数は、1個である。これにより、実施例1によれば、整流回路の電力損失が低減できるとともに、整流回路のサイズやコストが低減できる。
【0042】
また、第2の比較例(図9)において、整流電流が流れ、整流回路を高耐圧化する高耐圧MOSFET QH1が、ノーマリオンで動作するデプレッション型MOSFETである。これに対し、実施例1(図1)では、高耐圧MOSFET QH1がエンハンスメント型MOSFETである。これにより、実施例1によれば、電力損失が低減できたり、コストが低減できたりする。
【0043】
上述のように、実施例1によれば、エンハンスメント型の高耐圧MOSFETとエンハンスメント型の低耐圧MOSFETとを直列接続して、高耐圧MOSFETにより整流回路を高耐圧化するとともに、高耐圧MOSFETと低耐圧MOSFETをともにオン・オフ制御して整流動作させる。さらに、高耐圧MOSFETと低耐圧MOSFETを整流動作させる制御回路の電源となるコンデンサが、低耐圧MOSFETのドレイン-ソース間電圧によって充電されるとともに、制御回路は低耐圧MOSFETのドレイン-ソース間電圧を検出して、検出電圧に応じて高耐圧MOSFETと低耐圧MOSFETを整流動作させる。
【0044】
これにより、整流回路を高耐圧化しながらも、高耐圧MOSFETなどの制御用素子を用いることなく、制御回路用の電源や検出電圧の電圧レベルを所望の大きさに設定することができる。さらに、整流電流が流れる高耐圧MOSFETが、エンハンスメント型であるため、電力損失が低減できたり、コストが低減できたりする。したがって、実施例1によれば、電力損失やコストを増大することなく、整流回路を高耐圧化できる。
【実施例2】
【0045】
図2は、本発明の実施例2である整流回路の構成を示す回路図である。以下、主に、実施例1と異なる点について説明する。
【0046】
図2に示すように、実施例2においては、低耐圧のMOSFET QL1のドレイン-ゲート間にツェナーダイオードZD1が挿入される。なお、ツェナーダイオードZD1のアノードおよびカソードが、それぞれ、ゲートおよびドレインに接続される。ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、MOSFET QL1の耐圧以下、または制御回路1の定格電圧以下、または比較器COMP1の差動入力電圧以下とする。
【0047】
MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSがツェナーダイオードZD1のツェナー電圧以上になるとき、ZD1が降伏して、VQL1DSがツェナー電圧によって設定される所望の値にクランプされる。
【0048】
これにより、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSを、確実に、MOSFET QL1の耐圧以下に抑えたり、あるいはコンデンサC1の電圧を制御回路1の定格電圧以下に抑えたり、または、比較器COMP1の検出電圧をCOMP1の差動入力電圧以下に抑えたりすることができる。また、MOSFET QH1のゲート-ソース間電圧の大きさを、MOSFET QH1のゲート-ソース間耐圧よりも低く抑えることができる。したがって、整流回路の動作の信頼性が向上する。
【実施例3】
【0049】
図3は、本発明の実施例3である整流回路の構成を示す回路図である。以下、主に、実施例1と異なる点について説明する。
【0050】
図3に示すように、実施例3においては、MOSFET QL1,QH1に、それぞれ抵抗R1,R2が並列接続される。
【0051】
第1の端子T1と第2の端子T2との間に印加される電圧が、抵抗R1とR2の比に応じて、MOSFET QH1のドレイン-ソース間電圧VQH1DSとMOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSとに分圧される。これにより、VQL1DSの値が、確実に所望の電圧値に設定することができる。
【0052】
したがって、実施例3によれば、コンデンサに印加される電圧と比較器の検出電圧(入力電圧)とを、確実にコンデンサおよび比較器に適する所望の電圧レベルに設定することができる。
【実施例4】
【0053】
図4は、本発明の実施例4である整流回路の動作を示す電流・電圧波形図である。以下、主に、実施例1と異なる点について説明する。
【0054】
図4においては、整流電流Is、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DS、MOSFET QL1のゲート-ソース間電圧VQL1GS、MOSFET QH1のゲート-ソース間電圧VQH1GSを示す。なお、図4においては、整流電流Iは、正弦半波電流としている。
【0055】
実施例4では、回路構成は実施例1(図1)と同様であるが、実施例1と異なり、比較器COMP1が大きさの異なる二つの閾値(VTH1,VTH2)を有する。
【0056】
図4に示すように、実施例4における比較器COMP1は、第1の閾値VTH1および第2の閾値VTH2を有している。VTH1,VTH2は共に負の値を有する。VTH1<VTH2であり、VTH1の絶対値はVTH2の絶対値よりも大きい。
【0057】
以下、実施例4の整流回路動作について説明するが、電圧の大小および増減については、電圧の正負を考慮して記述する。
【0058】
比較器COMP1は、MOSFET QL1,QH1のターンオン動作時には、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSと第1の閾値VTH1とを比較し、MOSFET QL1,QH1のターンオフ動作時には、MOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSと第2の閾値VTH2とを比較する。
【0059】
が流れ始め、VQL1DSが正から負に変わり、その後、VQL1DSがVTH1よりも低くなると、比較器COMP1は、出力を低レベルから高レベルに遷移する。これにより、ゲートドライバGD1がオンゲート信号を出力するので、VQH1GSおよびVQL1GSが増大する。したがって、QH1,QL1はターンオンする。
【0060】
QH1,QL1はターンオンすると、VQL1DSは、一旦増大して、その後、正弦半波状に変化するが、第2の閾値VTH2には到達しない。このため、比較器COMP1は出力を高レベルに維持するので、QH1,QL1はオン状態を維持する。
【0061】
が減少して、VQL1DS(<0)がVTH2(<0)以上に増大すると、比較器COMP1は、出力を高レベルから低レベルに遷移する。これにより、ゲートドライバGD1がオフゲート信号を出力するので、VQH1GSおよびVQL1GSが減少する。したがって、QH1,QL1はターンオフする。
【0062】
上述のように、比較器COMP1がMOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSと比較する閾値が、ターンオン動作時とターンオフ動作時で異なることにより、比較器COMP1の出力レベルの高低が短時間で切り替わる、いわゆるチャタリングが防止できる。これにより、整流回路のターンオン動作およびターンオフ動作が短時間で繰り返されるような不安定動作が防止される。
【0063】
上述のように、実施例4によれば、整流回路の動作の安定性が向上する。特に、ターンオン後におけるMOSFET QL1のドレイン-ソース間電圧VQL1DSの変動が大きな場合に、VQL1DSの変動幅に応じて、VTH1,VTH2を設定することにより、整流回路の動作の安定性が確実に向上する。
【0064】
なお、実施例4における比較器としては、例えば、ヒステリシスコンパレータが適用できる。
【実施例5】
【0065】
図5は、本発明の実施例5である半導体装置の構成図である。
【0066】
図5に示すように、実施例5では、半導体回路として、整流回路2が、半導体パッケージ3に内蔵される。整流回路2としては、実施例1(図1)の整流回路が適用される。したがって、整流回路2を構成する、高耐圧MOSFET Q1、低耐圧MOSFET Q2、コンデンサC1、逆流防止用ダイオードD1、制御回路1(比較器COMP1、ゲートドライバGD1)が半導体パッケージ3に内蔵される。
【0067】
半導体パッケージ3においては、整流回路2が成形樹脂もしくは樹脂ケースなどによって樹脂封止され、第1の端子T1と第2の端子T2が、整流回路2を封止する樹脂の外表面に露出している。
【0068】
実施例5によれば、整流ダイオードの代替として同期整流回路を容易に適用して、整流回路部を備える電気・電子装置を低損失化することができる。
【0069】
実施例5の半導体装置は、同期整流を用いながらも、ダイオードと同様に2端子の整流素子として動作する。このため、整流回路部を備える電気・電子装置の設計および実装の工数を削減することができる。
【0070】
なお、整流回路2として、実施例2~4のいずれかの整流回路が適用されてもよい。
【実施例6】
【0071】
図6は、本発明の実施例6である半導体装置の構成図である。
【0072】
図6に示すように、実施例6では、半導体回路として、整流回路2,5,6,7が、半導体パッケージ4に内蔵される。整流回路2は、実施例1(図1)と同様の回路が適用される。整流回路5,6,7の各々にも、実施例1(図1)と同様の回路が適用される。これらの整流回路2,5,6,7は、単相ブリッジ整流回路を構成している。
【0073】
半導体パッケージ4においては、整流回路2,5,6,7が成形樹脂もしくは樹脂ケースなどによって樹脂封止され、単相ブリッジ整流回路の一対の交流端子T4,T5および一対の直流端子T3,T6が、整流回路2,5,6,7を封止する樹脂の外表面に露出している。
【0074】
実施例6によれば、整流ダイオードの代替として同期整流回路を単相ブリッジ整流回路に容易に適用して、単相ブリッジ整流回路や、単相ブリッジ整流回路を備える電気・電子装置を低損失化することができる。
【0075】
実施例6の半導体装置は、半導体パッケージ4において交流端子T4,T5および直流端子T3,T6の配置を、パッケージングされたダイオードブリッジに合わせることにより、このダイオードブリッジとの互換性を有することができる。また、実施例6の半導体装置は、同期整流を用いながらも、単相ダイオードブリッジと同様に4端子の整流素子として動作する。このため、全波整流回路部を備える電気・電子装置の設計および実装の工数を削減することができる。
【0076】
なお、整流回路2,5,6,7として、実施例2~4のいずれかの整流回路が適用されてもよい。また、実施例1~4のいずれかの整流回路を6個用いて、三相ブリッジ整流回路を構成することができる。この場合、三相分の3個の交流端子および一対の直流端子が、6個の整流回路を封止する樹脂の外表面に露出する。
【実施例7】
【0077】
図7は、本発明の実施例7である電源装置の構成を示す回路図である。
【0078】
図7の電源装置は、商用交流電源からの交流電力を、所望の電圧の直流電力に変換して出力する。
【0079】
図7中に、ダイオードの回路記号で示す整流素子の内、商用交流電圧の交流電圧を整流するブリッジ整流回路を構成する整流素子CRD1~CRD4と、チョッパ回路部における還流用の整流素子FWD1と、インバータ回路部の交流出力電力をトランスを介して入力して、所望の電圧の直流電圧に変換する整流回路部を構成する整流素子SSD1,SSD2と、逆流防止用の整流素子ORD1の少なくともいずれかに、実施例1~4のいずれかの整流回路、もしくは実施例5の半導体装置が適用される。なお、整流素子CRD1~CRD4には、実施例6の単相ブリッジ整流回路を用いてもよい。
【0080】
なお、図7中で、MOSFETに並列に接続される整流素子は、MOSFETの寄生ダイオード(ボディダイオード)である。また、図7中の整流素子が全てダイオードである場合、図7の電源装置の回路構成は公知の回路構成である。
【0081】
実施例7によれば、電源装置の電力損失を低減することができる。なお、実施例7による電源装置は、高い効率が要求されるフロントエンド電源に好適である。
【0082】
なお、実施例1~4の整流回路と実施例5~6の半導体装置は、フロント電源に限らず、整流回路部を備える各種の電源装置に適用できる。
【0083】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0084】
例えば、MOSFETは、nチャネル型に限らず、pチャネル型でもよい。また、MOSFETを構成する半導体材料は、シリコン(Si)に限らず、炭化ケイ素(SiC)などのワイドバンドギャプ半導体でもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 制御回路
2,5,6,7 整流回路
3,4 半導体パッケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9