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特許7577913多孔質シリカ、消臭剤、及び消臭剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】多孔質シリカ、消臭剤、及び消臭剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20241029BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20241029BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20241029BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241029BHJP
   C01B 33/141 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C01B33/12 A
A61L9/01 B
A61L9/01 U
B01J20/10 C
B01J20/28 Z
C01B33/141
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018139306
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020015640
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】木村 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和彰
(72)【発明者】
【氏名】生田目 大輔
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】後藤 政博
【審判官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-2409(JP,A)
【文献】特開2002-187712(JP,A)
【文献】特開2017-23292(JP,A)
【文献】特開2016-214618JP,A)
【文献】特開2000-279500(JP,A)
【文献】特開2007-14749(JP,A)
【文献】特開2003-261425(JP,A)
【文献】特開2014-94047(JP,A)
【文献】国際公開第2009/054462(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/035637(WO,A1)
【文献】特開2000-154017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
A61L 9/00 - 9/22
B01J 20/00 - 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状消臭剤に使用される多孔質シリカであって、
Mn及びCuからなる群から選択される少なくとも一種の金属Xがドープされ、
更に、前記金属Xとは異なる金属を有し、前記金属Xとは異なる金属として、Alである金属Yがドープされており、
比表面積が、500m 2 /g以上であり、
形成されている空孔の直径が2nm以上である、多孔質シリカ。
【請求項2】
多孔質シリカ中の金属Xの含有量が、0.01~10質量%である、請求項に記載の多孔質シリカ。
【請求項3】
多孔質シリカ中の金属Yの含有量が、0.01~10質量%である、請求項1又は2に記載の多孔質シリカ。
【請求項4】
前記金属Xとは異なる金属が、Co、Zn、Ag及びCaからなる群から選択される金属Zを有している、請求項1乃至のいずれかに記載の多孔質シリカ。
【請求項5】
下記式1で表される化学組成を有する構造を有している、請求項1乃至のいずれかに記載の多孔質シリカ。
(式1)SiO2・aXOb/2・cYOd/2・eZOf/2
(式1中、
Xは、前記金属Xを表し、
Yは、Alである金属Yを表し、
Zは、Co、Zn、Ag及びCaからなる群から選択される金属Zを表し、
aは、0より大きく0.1以下である数を表し、
cは、0より大きく0.1以下である数を表し、
eは、0以上0.1以下である数を表し、
b、d及びfは、それぞれ、前記金属X、前記金属Y及び前記金属Zの価数を表す。)
【請求項6】
パーマ毛髪用消臭剤である、請求項1乃至のいずれかに記載の多孔質シリカ
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載された多孔質シリカと、溶媒とを含む、液状消臭剤。
【請求項8】
pHが6~11である、請求項に記載の液状消臭剤。
【請求項9】
パーマ処理毛髪用消臭剤である、請求項7又は8に記載の液状消臭剤。
【請求項10】
硫黄含有臭気用の消臭剤である、請求項7乃至9のいずれかに記載の液状消臭剤。
【請求項11】
更に、香料又は毛髪保護成分を含有する、請求項7乃至10のいずれかに記載された液状消臭剤。
【請求項12】
前記溶媒として水を含む、請求項7乃至11のいずれかに記載された液状消臭剤。
【請求項13】
前記多孔質シリカの含有量が、0.001~50質量%である、請求項7乃至12のいずれかに記載の液状消臭剤。
【請求項14】
Mn及びCuからなる群から選択される少なくとも一種の金属Xがドープされ、更に、前記金属Xとは異なる金属を有し、前記金属Xとは異なる金属として、Alである金属Yがドープされている、請求項1乃至6のいずれかに記載の多孔質シリカを調製する工程と、
前記多孔質シリカを溶媒と混合する工程と、
を有する、
液状消臭剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリカ、消臭剤、及び消臭剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤として、多種多様の製品が知られている。消臭剤の中でも、液状消臭剤には、用途に応じて一定のニーズがある。また、消臭の対象となる臭気に応じて、様々な種類の消臭剤が知られている。例えば、硫黄含有化合物を原因とする臭気(以下、硫黄含有臭気という)を消臭の対象とする消臭剤にも、一定のニーズがある。
【0003】
上記に関連して、例えば、特許文献1(特開2003-261425号公報)には、二価金属イオンを1種又は2種以上含むことを特徴とするシステアミン処理毛髪用の消臭処理剤が開示されている。システアミンは、硫黄含有化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-261425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、硫黄含有臭気を消臭するための液状消臭剤について、消臭効率を高めることを検討している。
すなわち、本発明の課題は、硫黄含有臭気を効率よく消臭することができる液状消臭剤、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の事項を含む。
[1]Mn又はCuである金属Xがドープされた、多孔質シリカ。
[2]液状消臭剤に使用される多孔質シリカであって、Mn、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属Xを有している、多孔質シリカ。
[3]前記金属Xが、前記多孔質シリカにドープされている、[2]に記載の多孔質シリカ。
[4]更に、前記金属Xとは異なる金属を有している、[1]乃至[3]のいずれかに記載の多孔質シリカ。
[5]前記金属Xとは異なる金属が、Al,及びZrからなる群から選択される金属Yを有している、[4]に記載の多孔質シリカ。
[6]前記金属Xとは異なる金属が、Co、Zn、Ag及びCaからなる群から選択される金属Zを有している、[4]又は[5]に記載の多孔質シリカ。
[7]下記式1で表される化学組成を有する構造を有している、[4]に記載の多孔質シリカ。
(式1)SiO2・aXOb/2・cYOd/2・eZOf/2
(式1中、
Xは、前記金属Xを表し、
Yは、Al,及びZrからなる群から選択される金属Yを表し、
Zは、Co、Zn、Ag及びCaからなる群から選択される金属Zを表し、
aは、0より大きく0.1以下である数を表し、
c及びeは、それぞれ、0以上0.1以下である数を表し、
b、d及びfは、それぞれ、前記金属X、前記金属Y及び前記金属Zの価数を表す。)
[8]比表面積が、500m2/g以上である、[1]乃至[7]のいずれかに記載の多孔質シリカ。
[9]パーマ毛髪用消臭剤である、[1]~[8]の多孔質シリカを含む粉末消臭剤。
[10][1]乃至[8]のいずれかに記載された多孔質シリカと、溶媒とを含む、液状消臭剤。
[11]pHが6~11である、[10]に記載の液状消臭剤。
[12]パーマ処理毛髪用消臭剤である、[10]又は[11]に記載の液状消臭剤。
[13]硫黄含有臭気用の消臭剤である、[10]乃至[12]のいずれかに記載の液状消臭剤。
[14]更に、香料又は毛髪保護成分を含有する、[10]乃至[13]のいずれかに記載された液状消臭剤。
[15]前記溶媒として水を含む、[10]乃至[14]のいずれかに記載された液状消臭剤。
[16]前記多孔質シリカの含有量が、0.001~50質量%である、[10]乃至[15]のいずれかに記載の液状消臭剤。
[17]Mn、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属Xを有する多孔質シリカを調製する工程と、前記多孔質シリカを溶媒と混合する工程と、を有する、消臭剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硫黄含有臭気を効率よく消臭することができる液状消臭剤、及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様について説明する。本実施態様に係る消臭剤は、溶媒と多孔質シリカとを含んでいる。多孔質シリカは、溶媒中に分散しており、Mn、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属Xを含有している。このような構成を採用することにより、硫黄含有臭気を、効率よく消臭することが可能になる。
【0009】
1:溶媒
溶媒は、多孔質シリカが溶解せずに分散するようなものであれば、特に限定されるものでは無い。好ましくは、主成分(例えば50質量%以上)として水を含む液体が、溶媒として用いられる。
【0010】
溶媒のpHは、好ましくは6~11、より好ましくは6~9である。pHが6以上であれば、多孔質シリカからの金属の溶出がない。pHが11以下であれば、多孔質シリカが溶解してしまうこともない。
【0011】
また、溶媒は、低粘度であることが好ましい。低粘度であれば、消臭対象の硫黄含有化合物が多孔質シリカの細孔内部まで拡散しやすくなり、消臭に要する時間を短縮できる。溶媒の粘度は、例えば25℃において0.5~100mPa/秒である。
【0012】
2:多孔質シリカ
多孔質シリカは、上述のように、溶媒中に分散している。消臭剤中における多孔質シリカの含有量は、例えば0.001~50質量%、好ましくは0.1~10質量%である。多孔質シリカの含有量が、0.001質量%以上であれば、十分な消臭効果を得ることができる。多孔質シリカの含有量が50質量%以下であれば、流動性が維持できるという効果を得ることができる。
【0013】
多孔質シリカの比表面積は、例えば500m2/g以上、好ましくは800~2000m2/g、より好ましくは800~1600m2/gである。多孔質シリカの比表面積が500m2/g以上であれば、多孔質シリカに含まれる金属Xと消臭対象の臭気との接触面積が十分に確保され、高い消臭効率を得ることができる。また、比表面積が2000m2/g以下であれば、細孔構造を維持するための強度も確保できる。
【0014】
多孔質シリカに形成されている空孔の大きさは、溶媒分子及び硫黄含有化合物分子が出入りできる大きさであればよい。例えば、空孔の直径が2nm以上であれば、十分である。
【0015】
多孔質シリカに含まれる金属Xは、硫黄含有化合物を吸着する機能を有している。金属Xは、多孔質シリカにドープされていることが好ましい。「ドープされている」とは、金属XがシリカのSiO4骨格内のSi元素の位置に組み込まれた状態をいう。
【0016】
金属Xが多孔質シリカにドープされていることにより、金属Xがドープされることなく粒状で存在している場合に比べて、消臭効率が高くなる。金属Xがドープされている場合には、多孔質シリカの表面全体にわたって金属Xが存在することになる。その結果、金属Xが粒状で存在する場合に比べて、臭気と金属Xとの接触面積が大きくなり、高い消臭効率が得られるものと考えられる。
【0017】
また、例えば金属Xが溶媒に可溶な金属塩として多孔質シリカに担持されている場合には、消臭剤の使用場面において、金属Xが金属イオンとして溶媒中に溶出してしまうことが考えられる。場合によっては、金属イオンが排水として流出しないようにイオン交換など高コストな処理を施す必要が生じ、排水処理に要する負担が生じる場合がある。これに対して、金属Xが多孔質シリカにドープされている場合には、多孔質シリカからの金属Xの離脱が防止されるため、沈殿装置により粉末として容易に分離回収が可能であり、排水処理面での負担を軽減できる。
【0018】
更に、金属Xが多孔質シリカにドープされる形で含まれていると、金属Xが単独で存在する場合における色味が軽減される。
【0019】
多孔質シリカ中の金属Xの含有量は、例えば0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。金属Xの含有量が0.01質量%以上であれば、十分な消臭効果を得ることができる。また、10質量%以下であれば、金属Xを含有する多孔質シリカを容易に合成することができる。
【0020】
金属Xとしては、Mn又はCuが消臭性の観点から好ましく用いられる。
【0021】
多孔質シリカには、金属Xとは異なる金属が含まれていることが好ましい。
【0022】
金属Xとは異なる金属として、例えば、多孔質シリカの加水分解を抑制するための金属Yが挙げられる。金属Yとしては、例えば、Al及びZrからなる群から選択される金属が挙げられる。金属Yは、多孔質シリカにドープされていることが好ましい。
多孔質シリカに金属Yがドープされていることにより、多孔質シリカの水熱耐久性が高められる。その理由は、金属Yがドープされていると、シリカのシロキサン骨格の加水分解が抑制され、細孔構造が崩壊しにくくなるからであると考えられる。
【0023】
多孔質シリカ中の金属Yの含有量は、例えば0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。金属Yの含有量が0.1質量%以上であれば、シロキサン骨格の加水分解抑制による経時保管による比表面積維持の効果が得られる。10質量%以下であれば、比表面積が500m2/g以上の高い比表面積を実現できる。
【0024】
また、金属Xとは異なる金属として、硫黄含有臭気以外の臭気を除去する機能を有する金属Zが多孔質シリカに含まれていてもよい。金属Zとしては、例えば、Co、Zn、Ag及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属が挙げられ、好ましくはCo等が挙げられる。Co等が多孔質シリカに含まれている場合、硫黄含有臭気だけでなく、アルデヒドの分解や、脂肪酸臭気の消臭も期待でき、多臭気を一括して消臭可能な多孔質シリカを得ることができる。
金属Zは、多孔質シリカに「ドープ」されていてもよいし、「粒子として多孔質シリカに担持」されていてもよい。好ましくは、金属Xは、多孔質シリカにドープされている。
尚、「粒子として多孔質シリカに担持」されているとは、ドープされることなく、金属が多孔質シリカに支持されている状態をいう。
【0025】
多孔質シリカ中の金属Zの含有量は、例えば0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。
【0026】
具体的には、多孔質シリカは、下記式1で表される化学構造を少なくとも一部に有していることが好ましい。
(式1):SiO2・aXOb/2・cYOd/2・eZOf/2
なお、式1中、Xは、金属Xを表す。
Yは、金属Yを表す。
Zは、金属Zを表す。
aは、0より大きく0.1以下である数を表す。
c及びeは、それぞれ、0以上0.1以下である数を表す。
b、d及びfは、それぞれ、金属X、金属Y及び金属Zの価数を表す。
【0027】
なお、多孔質シリカに金属X、金属Y、又は金属Zをドープするためには、多孔質シリカの製造時に、水溶液中で、金属X又は金属Yを含む水溶性の金属塩を、多孔質シリカ又はその前駆体と混合すればよい。金属がドープしたことは、X線光電子分光もしくはラマン分光などにより、化学結合状態を測定することで確認できる。
【0028】
本実施態様に係る消臭剤は、ドープされた金属Xによって、水中にて硫黄含有臭気を除去するという機能を実現する。
消臭対象となる硫黄含有化合物としては、ドープされた金属Xにより消臭されるものであれば特に限定されないが、例えばシステアミン、チオグリコール酸、システイン、チアゾリジン、メチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン及び硫化水素等を挙げることができる。
【0029】
システアミン、チオグリコール酸及びシステイン等は、例えばパーマ剤に含まれる成分である。従って、本実施態様に係る消臭剤は、パーマ処理された毛髪に付着したシステアミン等の臭気を除去するために、好適に使用される。
【0030】
一般的に、パーマ処理時には、まず、毛髪がカーラーに巻かれる。次いで、パーマ1剤と呼ばれる薬剤が毛髪に塗布される。パーマ1剤には、毛髪のシスチン結合を切断させる還元剤が含まれている。そのような還元剤として、具体的には、システアミン、チオグリコール酸及びシステイン等が挙げられる。
シスチン結合が切断されると、毛髪は、カーラーに巻かれた形状に適合する。
その後、パーマ2剤が毛髪に塗布される。パーマ2剤には酸化剤が含まれている。酸化剤の作用によって、切断されたシスチン結合が再結合する。これにより、カーラーに巻かれた形状に、毛髪の形状が固定される。
本実施態様に係る消臭剤は、例えば、上述のパーマ2剤に配合される成分として使用することができる。あるいは、パーマ2剤とは別に毛髪に塗布される薬剤として、使用することもできる。例えば、本実施態様に係る消臭剤は、パーマ処理の後に毛髪に塗布されるコンディショナー、ヘアスプレー、及びヘアワックスなどに配合して使用することもできる。
毛髪に塗布された消臭剤は、消臭機能を発揮した後に、洗い流されてもよいし、洗い流されなくてもよい。
【0031】
消臭剤には、香料又は毛髪保護成分が含まれていてもよい。香料又は毛髪保護成分は、多孔質シリカに含まれた状態で存在することが好ましい。香料又は毛髪保護成分が含まれている場合、毛髪に消臭剤を塗布した後、放置しておくと、香料又は毛髪保護成分が徐放される。これにより、単なる硫黄含有臭気の消臭機能だけではなく、香料による体臭や頭皮臭の消臭や、毛髪保護等、他の機能をも実現できる。
多孔質シリカに香料又は毛髪保護成分を含ませるためには、これら成分を分散させた溶液中に多孔質シリカを投入、攪拌した後、真空乾燥で溶媒を留去するなどの方法がある。
【0032】
本実施態様に係る消臭剤は、必ずしもパーマ処理後の毛髪の消臭だけに用いられるものでは無く、その他の用途に使用することも可能である。例えば、生ごみ等には、硫黄含有臭気が含まれている。そのため、本実施態様に係る消臭剤は、生ごみ用の消臭スプレー等としても、好適に使用される。
【0033】
以上説明したように、本実施態様に係る消臭剤によれば、金属Xがドープされた多孔質シリカが溶媒中に分散しているため、硫黄含有臭気を効率よく消臭することができる。
特に、多孔質シリカが使用されているため、消臭機能を発現する金属Xを溶媒中にて均一に分散させることができ、その結果、金属Xと硫黄含有化合物との化学反応速度を向上させることができる。
加えて、多孔質シリカはそれ自体で硫黄含有臭気以外の臭気(酸性・塩基性臭気)に対する消臭性能も有している。よって、本実施態様に係る消臭剤は、硫黄含有臭気以外の臭気を消臭することが可能である。
また、多孔質シリカは、毛髪に付着しやすい。よって、本実施態様に係る消臭剤を毛髪に適用すると、多孔質シリカが毛髪に付着する。これにより、金属Xによる消臭作用をより確実に発揮させることが可能になる。
【0034】
3:製造方法
本実施態様に係る消臭剤は、多孔質シリカを製造した後、多孔質シリカを溶媒中に分散させることにより、得ることができる。
【0035】
なお、多孔質シリカは、例えば、以下の工程を含む方法により製造することができる。
(A)溶媒、界面活性剤、及び金属Xを含有する金属Xドープ用化合物を混合し、界面活性剤溶液を調製する工程
(B)界面活性剤溶液に、シリカ源を添加し、表面にシリカ源が集積したミセルを生成する工程
(C)集積したシリカ源を縮合させる工程
(D)縮合させる工程の後に、ミセルを回収し、焼成する工程
【0036】
以下、各工程について詳述する。
【0037】
(A):界面活性剤溶液の調製
まず、溶媒に、界面活性剤及び金属Xドープ用化合物を添加し、界面活性剤溶液を調製する。界面活性剤溶液は、好ましくは、室温以上200℃以下で、30分以上10時間以下、攪拌される。これにより、界面活性剤がミセルを形成する。
【0038】
溶媒としては、例えば水を用いることができる。また、水とエタノールやトルエンなどの有機溶媒との混合物が溶媒として用いられてもよい。
【0039】
界面活性剤の添加量は、好ましくは50~400mmol/L、より好ましくは50~
150mmol/Lである。
或いは、界面活性剤の添加量は、後に添加されるシリカ源1モルに対して、0.01~5.0モル、好ましくは0.05~1.0モルである。
【0040】
界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、陽イオン性、陰イオン性、及び非イオン性の何れの界面活性剤も使用可能である。
好ましくは、界面活性剤は、中性又は陽イオン性のものであり、より好ましくはアルキルアンモニウム塩である。アルキルアンモニウム塩は、炭素数が8以上のものが好ましく、工業的な入手の容易さを鑑みると、炭素数が12から18のものがより好ましい。アルキルアンモニウム塩としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
金属Xドープ用化合物は、多孔質シリカにドープされる金属Xの供給源となる物質である。金属Xドープ用化合物としては、金属Xを含む水溶性の化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、金属Xの塩化物、硝酸塩及び硫酸塩などが用いられる。
【0042】
例えば、金属Xが鉄である場合、塩化鉄(III)等が金属Xドープ用化合物として添加される。
例えば、金属Xが銅である場合、硝酸銅(II)等が金属Xドープ用化合物として添加される。
例えば、金属Xがマンガンである場合、塩化マンガン(II)等が金属Xドープ用化合物として添加される。
金属Xドープ用化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0043】
金属Xドープ用化合物の添加量は、例えば、シリカ源1モルに対して0.001~0.
5モル、好ましくは0.01~0.1モルである。
【0044】
(B):シリカ源の添加
続いて、界面活性剤溶液に、シリカ源を添加する。
【0045】
シリカ源は、シリカの原料となるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、およびケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのシリカ源は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカ源は、好ましくはアルコキシシランである。シリカ源は、より好ましくはテトラエトキシシランである。ケイ素原子上の有機官能基は、加水分解によって失われるため、合成物の構造に影響を与えない。ただし、有機官能基が嵩高いと加水分解速度が遅くなり、合成時間が長くかかってしまう。
尚、シリカ源としてケイ酸ナトリウムを単独もしくは併用して用いる場合、界面活性剤溶液について、200℃以下で20~2時間、加熱還流する操作をする。
【0046】
シリカ源の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、0.2~1.8モル/Lである。或いは、溶媒が水を含む場合、シリカ源の濃度は、水1モルに対して、例えば0.001~0.05モルである。
【0047】
(C):シリカ源の縮合
次に、シリカ源を縮合させる。具体的には、シリカ源が縮合するまで、溶液のpHを増加または減少させる。例えば、塩基性水溶液を添加し、攪拌することにより、シリカ源を縮合させることができる。攪拌は、例えば、1時間以上行う。塩基性水溶液の添加により、ミセルの表面に集積したシリカ源が脱水縮合し、シリカの壁を形成する。
塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの水溶液が挙げられる。塩基性水溶液は、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。これらの塩基性水溶液は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基性水溶液は、添加直後に好ましくはpHが8~14となるように、より好ましくは9~11となるように添加される。塩基水溶液の添加により、シリカ源の脱水縮合反応が加速する。
その結果、縮合部分の表面張力が上昇して、シリカの壁が球状となり、さらに球体が幾重にも接合した形態となって、スピノーダル分解(相分離)が引き起こされる。化学架橋によってこれらの構造が凍結される。
【0048】
尚、シリカ源は、pHが低い状態においても縮合する性質を有している。従って、塩基性水溶液ではなく、酸性水溶液を添加することによっても、シリカ源を縮合させることができる。
【0049】
(D):ミセルの回収及び焼成
続いて、ミセルを、水溶液から前駆体として回収する。詳細には、シリカ源を縮合させると、ミセルが沈殿する。そこで、沈殿物を濾別することにより、ミセルを前駆体として回収する。回収した前駆体を乾燥させる。乾燥後、前駆体を焼成し、前駆体中に含まれる有機成分を除去する。すなわち、ミセルを構成していた界面活性剤を除去する。これにより、細孔を有する多孔質シリカが形成される。なお、焼成は、界面活性剤の分解温度以上で行われる。焼成温度は、例えば400~600℃である。
【0050】
以上の方法により得られた多孔質シリカには、金属Xドープ用化合物由来の金属Xがドープされている。すなわち、金属Xがドープされた多孔質シリカが得られる。
【0051】
なお、上記の方法では、金属Xドープ用化合物が、工程(A)において添加される例について説明した。但し、金属Xドープ用化合物は、必ずしも工程(A)において添加される必要はなく、工程(D)の焼成前であればどの段階で溶液中に添加されてもよい。溶液中において、集積したシリカ源と金属Xドープ用化合物とが混合されていれば、金属Xドープ用化合物由来の金属Xがシリカ源に取り込まれ、金属Xがドープされた多孔質シリカが得られる。
【0052】
また、多孔質シリカとして、金属Xに加えて、金属Y及び/又は金属Zが含まれる多孔質シリカを製造する場合には、工程(D)より前のいずれかの段階において、金属Yドープ用化合物又は金属Z供給用化合物を添加すればよい。
金属Yドープ用化合物及び金属Z供給用化合物は、それぞれ、金属Y及び金属Zの供給源となる物質である。金属Yドープ用化合物及び金属Z供給用化合物としては、金属Y又はZを含む水溶性の化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、金属Y又は金属Zの塩化物、硝酸塩及び硫酸塩などが用いられる。
【0053】
例えば、金属Yがアルミニウムである場合、塩化アルミニウム等が金属Yドープ用化合物として添加される。
例えば、金属YがZrである場合、オキシ塩化ジルコニウム等が金属Yドープ用化合物として添加される。
例えば、金属Zがコバルトである場合、硝酸コバルト等が金属Z供給用化合物として添加される。
例えば、金属ZがZnである場合、硝酸亜鉛等が金属Z供給用化合物として添加される。
例えば、金属ZがAgである場合、硝酸銀等が金属Z供給用化合物として添加される。
例えば、金属ZがCaである場合、炭酸カルシウム等が金属Z供給用化合物として添加される。
金属Yドープ用化合物及び金属Z供給用化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0054】
金属Yドープ用化合物及び金属Z供給用化合物の添加量は、それぞれ、例えば、シリカ源1モルに対して0.001~0.5モル、好ましくは0.01モル~0.1モルである。
【0055】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、これら実施例に限定されて解釈されるものではない。
実施例1~8及び比較例1~6に係る消臭剤を調製した。得られた消臭剤について、比表面積、金属含有量、及びシステアミン吸着量を測定した。各実施例及び比較例の調製方法、及び測定方法は、以下の通りである。
【0056】
実施例1
溶媒としての水に、界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、金属Xドープ用化合物として塩化マンガン、金属Yドープ用化合物として塩化アルミニウムを加え、100℃で1時間攪拌した。室温まで水溶液を冷却した後、シリカ源としてテトラエトキシシランを加え、攪拌した。次いで、縮合触媒として水酸化ナトリウムを加え、攪拌した。各化合物の添加量は、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(塩化マンガン):0.0118モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0482モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.195モル
得られた懸濁液から固体生成物をろ別し、乾燥した後、焼成を行い有機成分を除去し、多孔質シリカを得た。これを、実施例1に係る消臭剤とした。
【0057】
実施例2
シリカ源の添加前に、更に、金属Z供給用化合物として硝酸コバルトを添加した。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(塩化マンガン):0.0118モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0241モル
金属Z供給用化合物(硝酸コバルト):0.011モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.195モル
その他の点は実施例1と同様にして、実施例2に係る消臭剤を用意した。
【0058】
実施例3
金属Xドープ用化合物として、硝酸銅を用いた。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(硝酸銅):0.0204モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0482モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.195モル
その他の点は、実施例1と同様にして、実施例3に係る消臭剤を用意した。
【0059】
実施例4
金属Xドープ用化合物として硝酸銅を用いた。金属Yドープ用化合物として塩化アルミニウム及びオキシ塩化ジルコニウムを用いた。金属Z供給用化合物として硝酸コバルトを添加した。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(硝酸銅):0.0102モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0478モル
金属Yドープ用化合物(オキシ塩化ジルコニウム):0.021モル
金属Z供給用化合物(硝酸コバルト):0.0116モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.282モル
その他の点は実施例1と同様にして、実施例4に係る消臭剤を用意した。
【0060】
実施例5
金属Xドープ用化合物として硝酸銅を用いた。金属Yドープ用化合物として塩化アルミニウム及びオキシ塩化ジルコニウムを添加した。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(硝酸銅):0.0102モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0498モル
金属Yドープ用化合物(オキシ塩化ジルコニウム):0.022モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.282モル
その他の点は実施例1と同様にして、実施例5に係る消臭剤を用意した。
【0061】
実施例6
金属Xドープ用化合物として塩化鉄を添加した。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(塩化鉄):0.0537モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0241モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.195モル
その他の点は実施例1と同様にして、実施例6に係る消臭剤を用意した。
【0062】
実施例7
金属Xドープ用化合物としてオキシンマンガンを添加した。金属Yドープ用化合物を添加しなかった。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Xドープ用化合物(オキシンマンガン):0.0118モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.195モル
その他の点は実施例1と同様にして、実施例7に係る消臭剤を用意した。
【0063】
実施例8
界面活性剤及び金属Yドープ用化合物を添加しなかった。金属Xドープ用化合物としては硝酸銅を使用した。縮合触媒として硝酸を使用した。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
金属Xドープ用化合物(硝酸銅):0.0102モル
水:10モル
硝酸:0.1モル
その他の点は実施例1と同様にして、実施例8に係る消臭剤を用意した。
【0064】
比較例1
和光純薬製の酸化マンガン(IV)粉末(和光一級、カタログコード138-09675)を、比較例1として用意した。
【0065】
比較例2
塩化コバルトおよび硝酸マンガンをモル比1:1で水に溶かし、100℃で加熱して水を揮発させた後に、570℃で5時間焼成して得られた粉末を、比較例2として用意した。
【0066】
比較例3
シグマアルドリッチ製の銅ナノ粒子試薬(カタログコード794317)を比較例3として用意した。
【0067】
比較例4
塩化鉄を500℃で5時間焼成して得られた粉末を比較例4として用意した。
【0068】
比較例5
シグマアルドリッチ製のメソポーラスシリカMCM-41(カタログコード643645)を比較例5として用意した。
【0069】
比較例6
金属Xドープ用化合物を添加しなかった。金属Yドープ用化合物として、塩化アルミニウム及びオキシ塩化ジルコニウムを添加した。金属Z供給用化合物として、硝酸コバルトを添加した。各化合物の添加量を、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
金属Yドープ用化合物(塩化アルミニウム):0.0478モル
金属Yドープ用化合物(オキシ塩化ジルコニウム):0.035モル
金属Z供給用化合物(硝酸コバルト):0.0231モル
水:125モル
水酸化ナトリウム:0.282モル
その他の点は実施例1と同様にして、比較例6に係る消臭剤を用意した。
【0070】
比表面積の測定方法
マイクロメリティックス社製フローソーブII2300形を使用し、1点法で液体窒素温度にて測定した。
【0071】
金属X及び金属Yの含有量の測定方法
実施例又は比較例に係る消臭剤約50mgを精確に量りとり、4mlの塩酸で溶解した後に、水溶液中の各金属(Mn、Cu、Fe、Al、Co、及びZr)の濃度を、Thermo Scientific社製のICP-OESにて測定した。塩酸で処理することにより、消臭剤に含まれる金属成分は、全て塩酸に溶解するものと考えられる。そこで、測定結果に基づき、消臭剤中に存在する各金属の含有量を、金属含有量として算出した。
【0072】
システアミン吸着試験
システアミン0.5896gを量り取り、10mlのメスフラスコを用いて超純水でメスアップし、溶液1-1を得た。この溶液1-1中のシステアミン濃度は、5.85wt%であり、これはパーマ液原液相当の濃度である。
遠沈管チューブに、測定対象の消臭剤10mgを量り取った。チューブに水0.9mlを加え、よく振って均一な分散液とした。分散液に、溶液1-1を0.1ml加え、30秒間よく振って反応させた。反応前のシステアミン濃度は、7.64×10-2モル/L、初期システアミン量は5.89mgである。90秒間、遠心分離処理を実施した。上澄みをすみやかに取り出し、反応液の235nmにおける吸光度を測定した。
検量線の測定から、システアミン濃度が7.5×10-4モル/L~1.2×10-4モル/Lの範囲で、235nmの吸光度とシステアミン濃度との間に比例関係が成立することを確認した。そこで、この濃度範囲に入るように、オートピペットを用いて、反応液を適宜希釈し、235nmの吸光度を測定した。結果から、システアミンの残存濃度を下記式1により計算した。また、吸着率の値を、下記式2により算出した。
【0073】
(式1)残存濃度=定数×235nmの吸光度×希釈倍率
(式2)吸着率(%)=(初濃度―残存濃度)/初濃度×100
【0074】
更に、容量等を、下記式3~5から算出した。
(式3)吸着量(mg)=吸着率(%)×初期システアミン量(mg)/100
(式4)金属X量(mg)=消臭剤量(mg)×金属X金属量(wt%)/100
(式5)容量(mg/金属Xmg)=吸着量(mg)/金属X量(mg)
【0075】
なお、吸光度測定装置としては、以下のものを使用した。
吸光度測定装置:コロナ吸光グレーティングマイクロプレートリーダーSH-1000(コロナ電気株式会社製)、プレート:UV Flat Bottom Microtite(登録商標) Plates(Thermo製)、測定範囲:200~600nm、レスポンス:3
【0076】
測定結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2に示されるように、実施例1乃至7に係る消臭剤は、比較例6に係る消臭剤に比べて、システアミン吸着率が向上していた。このことから、多孔質シリカに金属Xを含有させることにより、システアミン吸着性能が向上することが判る。
また、実施例1乃至8に係る消臭剤は、多孔質シリカを使用していない比較例1乃至4に係る消臭剤に比べて、システアミン吸着に関する容量が向上していた。このことから、多孔質シリカに金属Xを含有させることにより、金属Xをそのまま使用する場合よりも、単位質量当たりの金属Xの消臭能力が向上することが判る。すなわち、多孔質シリカに金属Xを含有させることにより、少量の金属Xを使用して、同等以上の消臭能力を実現できることが判る。
また、実施例1乃至7に係る消臭剤は、実施例8に係る消臭剤と比べて、システアミン吸着率が高かった。このことから、比表面積が高い方が、高いシステアミン吸着率を得ることができることが判る。
更に、実施例1及び3は、実施例6に比べて高いシステアミン吸着能力(率及び容量)を有していた。このことから、金属Xとしては、Mn及びCuが特に好ましいことが判った。
【表1】
【表2】