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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241029BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20241029BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241029BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241029BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241029BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C08K5/101
B32B27/28 101
B32B27/18 D
B32B7/025
C08L23/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020028666
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021134229
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】宇都 雄一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好正
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-343655(JP,A)
【文献】特開平10-244638(JP,A)
【文献】特開平11-071482(JP,A)
【文献】特開2003-321613(JP,A)
【文献】特開2005-305830(JP,A)
【文献】特開2008-303272(JP,A)
【文献】特開2014-005003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B32B
B65D65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・酢酸ビニル共重合体に、帯電防止剤として(A)ジグリセリン脂肪酸エステル0.05~0.20重量%かつ(B)グリセリン脂肪酸エステル0.20~0.40重量%のみを配合した樹脂組成物(ただし、ソルビタン脂肪族エステルを含む組成物及び液状ポリオレフィンを含む組成物を除く。)からなる層を少なくとも片側表面に有しており、静防性の表面固有抵抗値が加電圧500Vで1013以下かつオネストメーター半減期が60秒以下である積層体からなることを特徴とするかつおパック用包材
【請求項2】
前記樹脂組成物からなる層が押出ラミネート法で製造されたことを特徴とする請求項1に記載のかつおパック用包材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた積層体に関し、特には、優れた静防性でありながら、シール強度と透明性を低下させることのない押出ラミネート用樹脂組成物及び積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合で製造されるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、低温シール性とカット性を特長としており、かつおパックの包材にも使用されている。内容物は帯電しやすい性質があり、充填や取出しの際はシーラント層に付着するため、一般的に帯電防止剤を練り込んだエチレン・酢酸ビニル共重合体を使用する。エチレン・酢酸ビニル共重合体は、極性が強く、帯電防止剤の効果が発現しにくいため帯電防止剤の成分が限定される。比較的使われるのは分子量の高いジグリセリン脂肪酸エステルである。
しかし、ジグリセリン脂肪酸エステルは遅効性のため、表面への析出速度が著しく遅い。そのため、帯電防止剤量を多く配合するのが一般的である。しかし、シーラント層が厚い場合、ブルームが起こりやすくなり、シール強度や透明性を低下させる問題が発生しやすい。帯電防止剤効果と物性とのバランスの調和が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ラジカル重合で製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む樹脂組成物であって、優れた静防性でありながら、シール強度と透明性を低下させることのない押出ラミネート用の樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、かかる樹脂組成物を用いた積層体及び該積層体からなるかつおパック用包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ラジカル重合で製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体に、ジグリセリン脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルを適正な量で組み合わせることによって、シーラント層の厚みに関係なく静防性に優れながら、シール強度と透明性を低下させることのない押出ラミネート用の樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
即ち、本発明の第1の発明によれば、エチレン・酢酸ビニル共重合体に、帯電防止剤として(A)ジグリセリン脂肪酸エステル0.05~0.20重量%かつ(B)グリセリン脂肪酸エステル0.20~0.40重量%を配合した樹脂組成物が提供される。
【0006】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明に係る樹脂組成物からなる層を少なくとも有しており、静防性の表面固有抵抗値が加電圧500Vで1013以下かつオネストメーター半減期が60秒以下であることを特徴とする積層体が提供される。
【0007】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも片側表面に有することを特徴とする積層体が提供される。
【0008】
また、本発明の第4の発明によれば、第2又は第3の発明において、前記樹脂組成物からなる層が押出ラミネート法で製造されたことを特徴とする積層体が提供される。
【0009】
また、本発明の第5の発明によれば、第2~第4のいずれかの発明に係る積層体からなることを特徴とするかつおパック用包材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物によれば、優れた静防性でありながら、シール強度と透明性を低下させることのない押出ラミネート用の樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の積層体及びかつおパック用包材によれば、かかる樹脂組成物を用いた積層体及び該積層体からなるかつおパック用包材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の樹脂組成物及び積層体について、項目毎に詳細に説明する。
【0012】
I.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体及び帯電防止剤を含む樹脂組成物である。
【0013】
(i)エチレン・酢酸ビニル共重合体
本発明の樹脂組成物に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、一般的にラジカル重合で製造される。エチレン・酢酸ビニル共重合体の重合法としてオートクレーブ製法とチューブラー製法に大別される。オートクレーブ製法は、オートクレーブ型の反応器(槽型とも呼ばれる)を用い、チューブラー製法は、チューブラー型の反応器(管型とも呼ばれる)を用いる。
これらの重合法では、用いる反応器の形状や重合条件の違いから、得られる重合体の特性についても違いがみられるため、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、オートクレーブ製法で得られるものと明確に区別される。チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、分子量分布が比較的狭く、溶融弾性が比較的小さいことが知られている。
【0014】
1.エチレン・酢酸ビニル共重合体の分子量分布
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5以上であることが好ましく、5.5以下であることが更に好ましい。
なお、分子量分布Mw/Mnの測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=-3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0015】
2.エチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、押出ラミネート加工性の観点から、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が、5~15g/10分が好ましく、7~12g/10分がより好ましい。
なお、エチレン・酢酸ビニル共重合体のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した値である。
【0016】
3.エチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する単量体
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体であり、共重合体を構成するエチレンの割合は88~95重量%が好ましく、共重合体を構成する酢酸ビニルの割合は5~12重量%が好ましい。
【0017】
(ii)帯電防止剤
本発明の樹脂組成物は、帯電防止剤として(A)ジグリセリン脂肪酸エステル及び(B)グリセリン脂肪酸エステルを含む。本発明の樹脂組成物によれば、エチレン・酢酸ビニル共重合体に、ジグリセリン脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルを所定量配合することで、シーラント層の厚みに関係なく静防性に優れ、シール強度と透明性を低下させない押出ラミネート用の樹脂組成物を提供することができる。
【0018】
1.ジグリセリン脂肪酸
本発明に用いるジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、公知の方法で製造され、市販品を使用できる。
【0019】
ジグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるジグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約1.5~2.4、好ましくは平均重合度が約2.0のジグリセリン混合物が挙げられる。また、ジグリセリンはグリシドール又はエピクロルヒドリン等を原料として得られるものであってもよい。反応終了後、必要であれば中和、脱塩、脱色等の処理を行ってよい。
【0020】
本発明においては、上記ジグリセリン混合物を、例えば蒸留又はカラムクロマトグラフィー等の公知の方法を用いて精製し、グリセリン2分子からなるジグリセリンを約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上に高濃度化した高純度ジグリセリンが、好ましく用いられる。
【0021】
ジグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、炭素数8~22の脂肪酸が好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。中でも、帯電防止性能及び色調の点からラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が更に好ましい。これら脂肪酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
2.グリセリン脂肪酸
本発明に用いるグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物、又はグリセリンと油脂とのエステル交換された生成物が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルは、公知の方法で製造され、市販品を使用できる。
【0023】
グリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、炭素数8~22の脂肪酸が好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。中でも、帯電防止性能及び色調の点からラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が更に好ましい。これら脂肪酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
3.トリグリセリン脂肪酸
本発明の樹脂組成物は、帯電防止剤としてトリグリセリン脂肪酸エステルを更に含んでもよい。本発明に使用できるトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、公知の方法で製造され、市販品を使用できる。
【0025】
トリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるトリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸(例えば、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸等)又はアルカリ(例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)を触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約2.5~3.4、好ましくは平均重合度が約3.0のトリグリセリン混合物が挙げられる。また、トリグリセリンはグリシドール又はエピクロルヒドリン等を原料として得られるものであってもよい。反応終了後、所望により中和、脱塩、脱色等の処理を行ってよい。本発明においては、上記トリグリセリン混合物を、例えば蒸留又はカラムクロマトグラフィー等自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン3分子からなるトリグリセリンを約50%以上、好ましくは約80%以上に高濃度化した高純度トリグリセリンが好ましく用いられる。
【0026】
トリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、炭素数8~22の脂肪酸が好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。中でも、帯電防止性能及び色調の点からラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が更に好ましい。これら脂肪酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(iii)配合量
本発明の樹脂組成物中において、帯電防止剤としての(A)ジグリセリン脂肪酸エステルの配合量は0.05~0.20重量%、(B)グリセリン脂肪酸エステルの配合量は0.20~0.40重量%であり、好ましくは(A)ジグリセリン脂肪酸エステルの配合量は0.08~0.18重量%、(B)グリセリン脂肪酸エステルの配合量は0.25~0.35重量%である。本発明の樹脂組成物中において、エチレン・酢酸ビニル共重合体の配合量は、99.40~99.75重量%であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物中において、帯電防止剤としての(A)ジグリセリン脂肪酸エステルと(B)グリセリン脂肪酸エステルの合計の配合割合が0.25重量%未満である場合、押出ラミネート加工後の積層体の帯電防止性能が低下し好ましくなく、一方、帯電防止剤としての(A)ジグリセリン脂肪酸エステルと(B)グリセリン脂肪酸エステルの合計の配合割合が0.60重量%を超える場合、押出ラミネート加工後の積層体が白化し及びシール強度が低下し好ましくない。
【0028】
(iv)樹脂組成物の調製
本発明の樹脂組成物は、公知の方法で調製できる。例えば、本発明の樹脂組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体と帯電防止剤を押出機で溶融混合したものでも良く、エチレン・酢酸ビニル共重合体に帯電防止剤を予め練り込んだマスターバッチとエチレン・酢酸ビニル共重合体をドライブレンドしたものであってもよい。
【0029】
(v)その他の成分
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて滑剤、中和剤、酸化防止剤等通常ポリエチレン等に使用される添加剤を添加したものであってもよい。
【0030】
II.積層体
本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも有するものであり、該樹脂組成物からなる層を少なくとも片側表面に有することが好ましい。上述した本発明の樹脂組成物からなる層は、シーラント層として好適に使用され、その厚さは、15~40μmが好ましい。以下、本発明の樹脂組成物からなる層をシーラント層ともいう。
【0031】
(i)表面固有抵抗値
本発明の積層体は、上記樹脂組成物からなる層が静防性に優れており、例えば静防性の表面固有抵抗値が加電圧500Vで1013以下、好ましくは1011~1012である。
本明細書において、表面固有抵抗値は、表面固有抵抗測定器(例えば三菱油化製表面固有抵抗測定器MCP-HT250)で、500Vの電荷を1分かけ測定した値であり、単位はΩ/□である。
【0032】
(ii)半減期
本発明の積層体は、上記樹脂組成物からなる層が静防性に優れており、例えばオネストメーター半減期が60秒以下、好ましくは30秒以下である。
本明細書において、オネストメーター半減期は、オネストメーター(例えばシシド静電気製スタチックオネストメータH-0110)で、10KVの電荷を2分かけ、初期帯電圧が半分に減衰する時間を測定した値である。
【0033】
(iii)ヒートシール強度
本発明の積層体は、上記樹脂組成物からなる層が優れた静防性でありながら、シール強度の低下を抑えることができる。例えば、無添加品に比べヒートシール強度の低下は3N/15mm以下が好ましい。
本明細書において、ヒートシール強度は、15mm幅に切断した積層フィルムをシーラント面同士を合わせ、ヒートシーラー(例えばテスター産業製熱盤式ヒートシーラー)の上部シールバーを120℃、下部シールバー30℃でシール圧力2kg/cm、シール時間1秒でヒートシールしたものを引張試験機(例えば東洋精機製引張試験機)にて引張速度300mm/分の速度でヒートシール部の強度を測定した値である。
【0034】
(iv)ヘーズ
本発明の積層体は、上記樹脂組成物からなる層が優れた静防性でありながら、透明性の低下を抑えることができる。例えば、無添加品に比べヘーズの低下は0.5%以下が好ましい。
本明細書においては、ヘーズメーター(例えば村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150型)で、ヘーズ(曇り価)を測定する。
【0035】
(v)積層体の構成
本発明の積層体は、通常、基材層を有する。本発明の積層体に使用できる基材層としては、上質紙、クラフト紙、薄葉紙、ケント紙等の紙、アルミニウム箔等の金属箔、セロファン、織布、不織布、延伸ナイロン、無延伸ナイロン、特殊ナイロン(MXD6等)、Kーナイロン(ポリフッ化ビニリデンコート)等のナイロン系基材、延伸PET、無延伸PET、KーPET、アルミニウム蒸着PET(VMPET)等のPET(ポリエチレンテレフタレート)系基材、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、アルミニウム蒸着PP、K-PP、共押出フィルムPP等のポリプロピレン系基材、LDPEフィルム、LLDPEフィルム、EVAフィルム、延伸LDPEフィルム、延伸HDPEフィルム、ポリスチレン系フィルム等の合成樹脂フィルム系基材等が挙げられ、これらは印刷されたものでも差し支えない。また必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、紫外線処理、アンカーコート処理等の各種前処理がなされていてもよい。
【0036】
本発明の積層体において、シーラント層と基材層とは隣接するように配置されてもよいが、基材層とシーラント層の間に、必要に応じてバリヤー性材料層を設けることが望ましい。バリヤー性材料層は、酸素等の気体あるいは水蒸気等を遮断して内容物の劣化を防ぐ材料で構成されるもので、用途に応じて、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム箔等の金属箔、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物等などからなるものが挙げられる。特に、気体透過性および水蒸気透過性が小さいアルミニウム箔、気体透過性が小さいエチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物が好ましい。これらの材料は、上述した基材層、例えば、アルミニウム蒸着PET、アルミニウム蒸着PPなどのバリヤー性を有する基材層と重複させてもよい。また、基材層等との接着性が悪い場合には、オゾン処理、コロナ放電処理、界面活性剤の塗布等の表面処理により二次加工性を高めてもよい。
【0037】
本発明の積層体は、これに限定されるものではなく、例えば、基材層とシーラント層の間、基材層とバリヤー性材料層の間、バリヤー性材料層とシーラント層の間、又は基材層の外側に、ポリエチレン等のポリオレフィン、アイオノマー樹脂、各種のポリオレフィン及び/又はゴムに不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン及び/又はゴム等からなる層を更に設けてもよい。
【0038】
例えば、層構成としては、
PET系基材/PEラミ/シーラント層、PET系基材/PEラミ/Al/シーラント層、PET系基材/PEラミ/Al/PEラミ/シーラント層、PET系基材/酸変性PE/EVOH/PEラミ/シーラント層、PET系基材/Al/PEラミ/シーラント層、
ナイロン系基材/PEラミ/シーラント層、ナイロン系基材/PEラミ/Al/シーラント層、ナイロン系基材/PEラミ/Al/PEラミ/シーラント層、ナイロン系基材/酸変性PE/EVOH/シーラント層、
紙/PEラミ/シーラント層、紙/PEラミ/Al/シーラント層、紙/PEラミ/Al/PEラミ/シーラント層、紙/酸変性PE/EVOH/シーラント層、OPP/PEラミ/シーラント層、OPP/PEラミ/Al/シーラント層、K-ナイロン/酸変性PE/EVOH/シーラント層、延伸HDPE/酸変性PE/EVOH/PEラミ/シーラント層、不織布/酸変性PE/EVOH/PEラミ/シーラント層等が挙げられる。また、Alの変わりにアルミ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルムを使用してもよい。
(但し、PEラミ:ポリエチレン系樹脂のラミネート層、Al:アルミニウム箔、酸変性PE:無水マレイン酸変性ポリエチレンを示す)。
【0039】
(vi)積層体の用途
本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも有するため、包装用材料として好適に使用できる。特に、本発明の積層体は、帯電しやすい性質の内容物のための包装用材料、具体的にはかつおパック用包材として好適である。
【0040】
(vii)積層体の製造方法
本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる層が押出ラミネート法で製造したものであることが好ましい。
ここで、押出ラミネート法は、ダイより溶融した樹脂組成物をフィルム状に押出し、基材層等の上に樹脂組成物からなる層を積層させる方法である。
例えば、基材層に、LDPEやLLDPE等の樹脂を押出ラミネーション法で積層した後に、シーラント層を押出ラミネーション法で積層する方法や、基材層にLDPEやLLDPE等の樹脂を押出ラミネーション法で積層すると同時にアルミ基材をサンドさせた後にシーラント層を押出ラミネーション法で積層する方法がある。基材層とLDPEやLLDPE等の樹脂の間に接着剤を介在させる方法をはじめ、種々の方法で行ってもよい。
【実施例
【0041】
以下、本発明を、実施例によって、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性、加工性の測定方法と評価方法及び使用樹脂、基材、添加剤は、以下の通りである。
【0042】
1.物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS K7210の試験条件4(190℃、21.18N荷重)に準拠し、測定した。
(2)密度:
JIS K7112に準拠し、測定した。
(3)分子量分布(Mw/Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=-3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0043】
2.樹脂組成物および積層体の評価方法
(1)表面固有抵抗:
三菱油化製の表面固有抵抗測定器MCP-HT250で、500Vの電荷を1分かけ、測定した。単位はΩ/□である。
(2)半減期:
シシド静電気製スタチックオネストメータH-0110で、10KVの電荷を2分かけ、初期帯電圧が半分に減衰する時間を測定した。
(3)ヒートシール強度:
15mm幅に切断した積層フィルムを、シーラント面同士を合わせ、テスター産業製熱盤式ヒートシーラーの上部シールバーを120℃、下部シールバー30℃でシール圧力2kg/cm、シール時間1秒でヒートシールしたものを東洋精機製引張試験機にて引張速度300mm/分の速度でヒートシール部の強度を測定した。測定値から下記判定基準に従いヒートシール強度を評価した。
〇:無添加品より低下が3N以下
△:無添加品より低下が3Nより高く10N未満
×:無添加品より低下が10N以上
(4)ヘーズ
村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150型で、ヘーズ(曇り価)を測定した。測定値から下記判定基準に従いヘーズ(曇り価)を評価した。
〇:無添加品より低下が0.5%以下
△:無添加品より低下が0.5%より高く2%未満
×:無添加品より低下が2%以上
【0044】
3.原材料
(1)使用樹脂:
以下のポリエチレン樹脂を用いた。
(i)ラジカル重合で製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR:10g/10分、VA:7重量%、Mw/Mn:5.36、銘柄:EVA LV271 日本ポリエチレン株式会社製)
(ii)エチレン-1-ヘキセン共重合体(密度:0.919g/cm、MFR:10g/10分、銘柄:カーネルKC581 日本ポリエチレン株式会社製)
【0045】
(2)帯電防止剤
以下の帯電防止剤を用いた。
(A):ジグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製 リケマールS-71-D)
(B):グリセリンモノステアリン酸エステル(花王社製 TS-5BS)
【0046】
(3)基材:
以下の基材を用いた。
(i)ASOPP(銘柄P2241:東洋紡株式会社製)
(ii)EVOH(銘柄:クラレ株式会社製)
【0047】
4.加工条件・装置
以下の装置、条件で、積層体を加工した。
装置:モダン社、90mmφシングルラミネート機
ダイ巾:500mm
加工速度:100m/min
アンカーコート剤:A3210/A3075(三井化学ポリウレタン株式会社製)
【0048】
[実施例1]
メルトフローレート(MFR)が10g/10分、VA7%のエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(銘柄:EVA LV271、日本ポリエチレン(株)製)に、(A)ジグリセリン脂肪酸エステル5wt%を東芝機械社製の二軸押出機で、混練ペレット化しマスターバッチとした。また、(B)グリセリン脂肪酸エステルとしてグリセリンモノステアリン酸エステル(花王社製 TS-5B)を同様の処方で、混練ペレット化を行いマスターバッチとした。
再び、日本ポリエチレン(株)製のLV271に、(A)ジグリセリン脂肪酸エステルのマスターバッチ1.6wt%と、(B)グリセリン脂肪酸エステルのマスターバッチ4.8wt%をそれぞれ投入し、(A)ジグリセリン脂肪酸エステルが0.12wt%、(B)グリセリン脂肪酸エステルが0.35wt%になるように調合した。
基材として帯電防止剤配合のOPP(25μ 東洋紡(株)製 銘柄P2241)とEVOHフィルム(12μ(株)クラレ製 銘柄EF-XL)を予めドライラミで積層したEVOH#12面に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.919g/cm、MFR:10g/10分、銘柄:カーネル KC581、日本ポリエチレン(株)製)をアンカーコート剤(タケラックA3210/A3075(芳香族エステル)三井化学ポリウレタン社製)を介して押出ラミネートによりLLDPEが厚さ30μmとなるようにラミネートし得られた積層体を準備した。
次に、前記調合したペレットを用いてモダン社、90mmφシングルラミネート機へ供給し、前記積層体のLLDPE側上に、さらに40μmの厚さになるように、ラミネートして積層体を得た。
得られた積層体を用いて、1ケ月保管後におけるシーラント層同士のヒートシール強度、帯電防止性能(表面固有抵抗、半減期)、透明性を評価した。それらの評価結果を表1に示した。
【0049】
[実施例2~5]
実施例2~5では、表1に示す割合に、(A)及び(B)の各帯電防止剤の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製及び評価した。評価結果を表1に示した。
【0050】
[実施例6]
実施例6では、表1に示す割合に、(A)及び(B)の各帯電防止剤の配合量を変更し、また、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂のラミネート厚みを15μmとし、さらに、EVA厚みを15μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を作製及び評価した。評価結果を表1に示した。
【0051】
[実施例7]
実施例7では、表1に示す割合に、(A)及び(B)の各帯電防止剤の配合量を変更し、また、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂のラミネート厚みを20μmとし、さらに、EVA厚みを30μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を作製及び評価した。評価結果を表1に示した。
【0052】
[比較例1]
比較例1では、帯電防止剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製及び評価した。評価結果を表2に示した。
【0053】
[比較例2~5]
比較例2~5では、表2に示す割合に、(A)及び(B)の各帯電防止剤の配合量の変更以外は、実施例2~5と同様にして、積層体を作製及び評価した。評価結果を表2に示した。
【0054】
[比較例6]
比較例6では、表2に示す割合に、(A)及び(B)の各帯電防止剤の配合量の変更以外は、実施例6と同様にして、積層体を作製及び評価した。評価結果を表2に示した。
【0055】
[比較例7]
比較例7では、表2に示す割合に、(A)及び(B)の各帯電防止剤の配合量の変更以外は、実施例7と同様にして、積層体を作製及び評価した。評価結果を表2に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】