(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】車両用導光体及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/237 20180101AFI20241029BHJP
F21S 43/249 20180101ALI20241029BHJP
F21S 43/241 20180101ALI20241029BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20241029BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20241029BHJP
【FI】
F21S43/237
F21S43/249
F21S43/241
F21S43/14
F21W103:10
(21)【出願番号】P 2020113207
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 裕章
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506153(JP,A)
【文献】特開2016-119219(JP,A)
【文献】特開2017-139059(JP,A)
【文献】特開2012-190762(JP,A)
【文献】特開2016-046093(JP,A)
【文献】特開2019-179648(JP,A)
【文献】特開2017-147102(JP,A)
【文献】特開2016-100256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/00
F21W 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状であり、車両搭載状態における車両の前部に配置され、前記車両の前面から前記車両の外側の側面にかけて後方に湾曲した湾曲部を有し、光源からの光を導光して前記車両の前方及び側方に面した正面側の出射面から出射する基部と、
前記基部のうち前記出射面に対して背面側に長手方向に沿って配置され、前記光を前記正面側に反射する複数のプリズム部と、
前記基部のうち
前記出射面に対して背面側において長手方向の少なくとも前記湾曲部を含む範囲に配置され、前記プリズム部の底面側に当該プリズム部に沿って帯状に設けられ、前記光を拡散する拡散部と
を備え
、
前記基部は、前記湾曲部に接続され前記車両の前面側に配置される前面側直線部を有し、
前記拡散部は、前記基部の長手方向における前面側の端部が、前記基部のうち前記前面側直線部に配置される
車両用導光体。
【請求項2】
前記プリズム部は、前記基部の前記前面側に設けられる部分よりも前記基部の前記湾曲部に設けられる部分の方が、高さ方向の寸法が小さい
請求項1に記載の車両用導光体。
【請求項3】
前記拡散部は、少なくとも前記湾曲部に設けられる部分の幅方向の寸法が均一である
請求項1又は請求項2に記載の車両用導光体。
【請求項4】
前記拡散部は、前記車両の前面側の端部が徐々に細くなる形状を有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用導光体。
【請求項5】
前記拡散部は、前記基部の表面に形成されたシボ部である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用導光体。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を導光して車両前方に照射する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用導光体と
を備える車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用導光体及び車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を導光して発光させる車両用導光体を搭載した車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような車両用導光体は、光源から出射される光を車両用導光体の長手方向の一方の端部から入射し、入射した光を長手方向に沿って導光して側面から出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両用導光体においては、長手方向において色及び照度が均一となるように光を照射することが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、長手方向において色及び照度が均一な光を照射することが可能な車両用導光体及び車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用導光体は、棒状であり、車両搭載状態における車両の前部に配置され、前記車両の前面から前記車両の外側の側面にかけて後方に湾曲した湾曲部を有し、光源からの光を導光して前記車両の前方及び側方に面した正面側の出射面から出射する基部と、前記基部のうち前記出射面に対して背面側に長手方向に沿って配置され、前記光を前記正面側に反射する複数のプリズム部と、前記基部のうち長手方向の少なくとも前記湾曲部を含む範囲に配置され、前記プリズム部の底面側に当該プリズム部に沿って帯状に設けられ、前記光を拡散する拡散部とを備える。
【0007】
また、前記プリズム部は、前記基部の前記前面側に設けられる部分よりも前記基部の前記湾曲部に設けられる部分の方が、高さ方向の寸法が小さくてもよい。
【0008】
また、前記拡散部は、少なくとも前記湾曲部に設けられる部分の幅方向の寸法が均一であってもよい。
【0009】
また、前記拡散部は、前記車両の前面側の端部が徐々に細くなる形状を有してもよい。
【0010】
また、前記拡散部は、前記基部の表面に形成されたシボ部であってもよい。
【0011】
本発明に係る車両用灯具は、光源と、前記光源からの光を導光して車両前方に照射する上記の車両用導光体とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長手方向において色及び照度が均一な光を照射することが可能な車両用導光体及び車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す正面図である。
【
図3】
図3は、車両用灯具を下方から見た一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用導光体及び車両用灯具の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用導光体及び車両用灯具が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。また、本実施形態では、車両の前方及び側方に面した側を正面側とし、上下方向から見て当該正面側の裏面側を背面側とする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具100の一例を示す正面図である。
図2は、
図1におけるA-A断面矢視図である。
図1及び
図2に示すように、車両用灯具100は、光源10、15と、導光体20とを備える。車両用灯具100は、例えばクリアランスランプを含む。また、車両用灯具100は、ランプハウジング30とランプレンズ40とで区画される灯室内に配置される。灯室内には、車両用灯具100の他に、例えばロービーム用ランプ、ハイビーム用ランプ、フォグランプ、コーナリングランプなどが配置されてもよい。
【0016】
車両用灯具100は、車両の前部の左右両側に取り付けられている。本実施形態では、車両の前部の右側に取り付けられる車両用灯具を例に挙げて説明する。なお、車両の前部の左側に取り付けられる車両用灯具においては、車両用灯具100に対して左右対称であり、同様の説明が可能である。車両の右側に搭載される車両用灯具100において、車両の外側は右側であり、車両の内側は左側である。なお、車両の左側に搭載される車両用灯具において、車両の外側は左側であり、車両の内側は右側である。
【0017】
光源10、15は、導光体20に例えば白色光を供給する。光源10、15は、例えばLED等の半導体型光源である。光源は、1つ以上設けられる。本実施形態においては、2つの光源10、15が設けられる。なお、光源は、1つ又は3つ以上設けられてもよい。光源10、15は、光を出射する発光面11、16を有する。発光面11は、後述する導光体20の基部21の入射面21aに対向して配置される。発光面16は、後述する導光体20の合流部24の入射面24aに対向して配置される。
【0018】
導光体20は、基部21と、プリズム部22と、散乱部23と、合流部24とを備える。基部21は、棒状であり、車両の前部に配置される。基部21は、車両の前面側に配置される第1直線部21cと、車両の前面側から側面側にかけて後方に湾曲した湾曲部21dと、車両の側面側に配置される第2直線部21eとを有する。基部21は、第1直線部21cの後方の端部に入射面21aを有する。入射面21aは、光源10からの光を入射する。また、基部21は、第1直線部21c、湾曲部21d及び第2直線部21eの全体に亘って、正面側に出射面21bが設けられる。出射面21bは、導光した光を正面側に出射する。
【0019】
プリズム部22は、基部21のうち出射面21bに対して背面側に配置される。プリズム部22は、基部21の長手方向に沿って配置され、光を正面側に反射する。
【0020】
図3は、車両用灯具100を下方から見た一例を模式的に示す図である。
図4は、
図3におけるB-B断面矢視図である。
図4に示すように、プリズム部22は、底部が平面状に形成される。以下、プリズム部22の底部に直交する方向をプリズム部22の高さ方向と表記する。
【0021】
図5は、
図3におけるC-C断面矢視図である。
図6は、
図3におけるD-D断面矢視図である。
図5及び
図6に示すように、プリズム部22の高さ方向の寸法(以下、「高さ」と表記する)は、基部21の前面側に設けられる部分よりも基部21の湾曲部21dに設けられる部分の方が小さい。例えば、側面側の端部におけるプリズム部22の高さh2(
図6参照)は、前面側の端部におけるプリズム部22の高さh1(
図5参照)に対して、10分の1以下となっている。側面側の端部におけるプリズム部22の高さh2については、例えば0.1mm以下に設定してもよい。なお、当該高さh1と高さh2との関係は一例であり、これに限定されない。このように、側面側の端部から前方側の端部に向けて徐々に大きくなるようにプリズム部22が形成されることで、光源10に近い部分における反射面の面積よりも光源10から遠い部分における反射面の面積の方が大きくなる。このため、出射面21bから出射される光の光量が長手方向で均一になるように調整される。
【0022】
図7は、
図3における要部を拡大して示す図である。
図3、
図4及び
図7に示すように、散乱部23は、プリズム部22に沿って帯状に設けられる。散乱部23は、基部21の内部を進行する光を内面側に拡散する。散乱部23が設けられることにより、導光体20の内部における光の散乱を増加させることができる。このため、例えば導光体20の湾曲部21dでレイリー散乱により青みを帯びた光が生じる場合でも、散乱部23による散乱光により当該青みが緩和される。したがって、導光体20は、基部21の長手方向の全体に亘って均一な色の光を出射することができる。
【0023】
散乱部23は、基部21の長手方向において少なくとも湾曲部21dを含む範囲に設けられる。これにより、湾曲部21dでレイリー散乱により生じる青みを帯びた光の影響を効果的に緩和できる。例えば、散乱部23の長手方向の寸法Lは、基部21の長手方向の寸法の半分程度となるように形成される。本実施形態において、基部21の長手方向の寸法は70mm程度、散乱部23の長手方向の寸法Lは32mm程度とすることができるが、この寸法に限定されない。
【0024】
また、
図7に示すように、本実施形態において、散乱部23の後方側端部23aは、例えばプリズム部22の後方側端部よりも前方に配置されるが、これに限定されず、後方側端部23aがプリズム部22の後方側端部よりも後方又は前後方向に揃う位置に配置されてもよい。
【0025】
散乱部23は、車両の正面側の斜め上方(例えば、斜め45°上方)から見た場合に、例えば基部21の前方下部に位置するように配置される。なお、散乱部23は、他の位置に配置されてもよい。散乱部23としては、例えば基部21の表面にシボ加工を施すことにより形成されるシボ部等が挙げられる。この構成により、散乱部23において確実に散乱を発生させることができる。
【0026】
図8は、
図7における要部を拡大して示す図である。
図8に示すように、本実施形態において、散乱部23は、例えば幅方向の寸法dが、1mm以上2mm以下となるように形成される。散乱部23は、幅方向の寸法dが側面側の端部23aから前面側にかけて均一に形成されるが、これに限定されず、幅方向の寸法dが長手方向について部分的に変化してもよい。散乱部23は、前面側端部23bが徐々に細くなる形状を有する。この形状により、前方にかけて、基部21の内部の光の散乱を徐々に減少させることができる。このため、散乱部23が設けられない領域との間で、光の散乱の状態が急激に変化することが抑制される。散乱部23の前面側端部23bは、例えば基部21のうち第1直線部21cに配置されるが、これに限定されず、前面側端部23bが湾曲部21dに配置されてもよい。
【0027】
合流部24は、光源15からの光を基部21の前方端部に光を導光する。合流部24は、入射面24aと、導光部24bと、接続部24cとを有する。入射面24aは、光源15からの光を入射する。導光部24bは、例えば板状であり、入射面24aから入射した光を導光しつつ車両前方に出射する。接続部24cは、導光部24bで導光された光を基部21に供給する。なお、当該合流部24は、設けられなくてもよい。
【0028】
上記のように構成された車両用灯具100において、光源10から出射される光は、入射面21aから導光体20の基部21及び合流部24に入射する。
【0029】
入射面21aから入射した光の一部である光L1は、基部21の内部において内部反射しながら長手方向に沿って導光される。この光L1は、例えば基部21の第2直線部21eから湾曲部21dを経て第1直線部21cに回り込み、第1直線部21cのプリズム部22により正面側に反射される。正面側に反射された光L1は、出射面21bから車両の前方に出射される。
【0030】
また、入射面21aから入射した光の一部である光L2は、基部21の内部において内部反射しながら長手方向に沿って導光され、例えば基部21の第2直線部21eのプリズム部22により正面側に反射される。正面側に反射された光L2は、出射面21bから車両の側方に出射される。
【0031】
また、光源15から出射される光L3は、入射面24aから合流部24に入射する。合流部24に入射した光L3は、導光部24bによって導光され、一部が導光部24bから車両の前方に出射される。また、光L3の一部は、接続部24cを介して基部21の第1直線部21cに供給される。第1直線部21cに供給された光L3は、正面側に向けて進行し、出射面21bから車両の前方に出射される。
【0032】
本実施形態のような棒状の導光体20において、基部21のうち例えば湾曲部21dでは、光源10からの光の回り込みが多く、光の散乱が他の部分よりも少ないため、レイリー散乱により青く光る現象が生じやすい。このため、導光体20の長手方向において色を均一にすることが困難になる。
【0033】
これに対して、本実施形態に係る導光体20は、棒状であり、車両搭載状態における車両の前部に配置され、車両の前面側から側面側にかけて後方に湾曲した湾曲部21dを有し、光源10からの光を導光して車両の前方及び側方に面した正面側の出射面21bから出射する基部21と、基部21のうち出射面21bに対して背面側に長手方向に沿って配置され、光を正面側に反射する複数のプリズム部22と、基部21のうち少なくとも湾曲部21dに設けられるプリズム部22の底面側に当該プリズム部22に沿って帯状に設けられ、光を拡散する散乱部23とを備える。
【0034】
この構成により、湾曲部21dにおいて、散乱部23により基部21内の光の散乱を増加させることができる。したがって、湾曲部21dにおいてレイリー散乱によって青く光る現象が生じる場合であっても、散乱部23で生じる散乱光により青味の影響を低減することができる。また、散乱部23がプリズム部22に沿って帯状に形成されるため、光学損失を抑制しつつ散乱光を生じさせることができる。これにより、長手方向において色及び照度が均一な光を照射することが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る導光体20において、散乱部23は、車両の正面側から見た場合に基部21によって隠れる位置に配置されてもよい。
【0036】
本実施形態に係る導光体20において、プリズム部22は、基部21の前面側に設けられる部分よりも基部21の湾曲部21dに設けられる部分の方が、高さ方向の寸法が小さい。この構成によれば、プリズム部22による光の反射量がより少ない湾曲部21dにおいて、より効果的に青味の影響を低減することができる。
【0037】
本実施形態に係る導光体20において、散乱部23は、車両の前面側の端部23bが徐々に細くなる形状を有する。これにより、散乱部23が設けられない領域との間で、光の散乱の状態が急激に変化することが抑制される。
【0038】
本実施形態に係る導光体20において、散乱部23は、基部21の表面に形成されたシボ部であってもよい。これにより、散乱部23において確実に散乱を発生させることができる。
【0039】
本発明に係る車両用灯具100は、光源10と、光源10からの光を導光して車両前方に照射する上記の車両用導光体とを備える。これにより、長手方向において色及び照度が均一な光を照射することが可能な導光体20を備えるため、点灯時の見栄えに優れた車両用灯具100を提供できる。
【0040】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0041】
L1,L2,L3…光、10,15…光源、11,16…発光面、20…導光体、21…基部、21a,24a…入射面、21b…出射面、21c…第1直線部、21d…湾曲部、21e…第2直線部、22…プリズム部、23…散乱部、23a,23b…端部、24…合流部、24b…導光部、24c…接続部、30…ランプハウジング、40…ランプレンズ、100…車両用灯具