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特許7577937カール検出装置、画像形成装置、及び、カール検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】カール検出装置、画像形成装置、及び、カール検出方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20241029BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241029BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241029BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B65H7/02
G03G21/00 370
G03G21/00 510
G06T7/00 610C
H04N1/00 567H
H04N1/00 002A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020116607
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014332
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖津 俊太
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097213(JP,A)
【文献】特開2013-201553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/02
G03G 21/00
G06T 7/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される用紙を撮像する撮像部と、
前記撮像部に撮像された画像上において、前記用紙の外形を検出し、検出された前記外形のうち前記用紙の角部分を除いた前記外形に基づいて、前記用紙のカール状態を評価するカール評価部と、
を備えるカール検出装置。
【請求項2】
前記カール評価部における「検出された前記外形のうち前記用紙の角部分を除いた前記外形に基づいて、前記用紙のカール状態を評価する」とは、前記外形のうち前記用紙の角部分を除いた前記外形に基づいた評価対象幅と、カールが発生していないときの用紙の基準幅と、に基づいてカール状態を評価することである
請求項1に記載のカール検出装置。
【請求項3】
前記カール評価部は、前記用紙における角折れの有無を判定し、
前記用紙に角折れの有を判定した場合に、検出された前記外形のうち前記用紙の角部分を除いた前記外形に基づいて、前記用紙のカール状態を評価する
請求項1又は2に記載のカール検出装置。
【請求項4】
前記カール評価部は、前記用紙に角折れの無を判定した場合に、検出された前記外形に基づいて、前記用紙のカール状態を評価する
請求項3に記載のカール検出装置。
【請求項5】
前記カール評価部における「検出された前記外形に基づいて、前記用紙のカール状態を評価する」とは、検出された前記外形に基づいた評価対象幅と、カールが発生していないときの用紙の基準幅と、に基づいてカール状態を評価することである
請求項4に記載のカール検出装置。
【請求項6】
除かれる前記角部分は、検出された前記外形における搬送方向に沿った辺上での前記用紙の幅方向における位置ずれ方向及び位置ずれ量に基づいて判定した前記用紙の角折れ部分である
請求項1に記載のカール検出装置。
【請求項7】
前記カール評価部は、
前記外形のエッジ領域の形状に基づいて、前記用紙における角折れの有無を判定し、
前記用紙が前記角折れを有しない場合、前記外形のエッジ端における幅を、評価対象の幅として設定し、
前記用紙が前記角折れを有する場合、前記画像上において、検出された前記外形の搬送方向に沿った辺上で、且つ、前記用紙の前記角折れによる形状変化を含まないと推定される領域に解析点を設定して、当該解析点の座標に基づいて、評価対象の前記幅を算出し、
前記カール評価部は、
評価対象の前記幅と、カールが発生していないときの前記用紙の前記エッジ領域における基準幅との差異又は比率に基づいて、前記用紙のカール状態を評価する、
請求項1に記載のカール検出装置。
【請求項8】
前記カール評価部は、
前記用紙が前記角折れを有する場合、複数の前記解析点の座標に基づいて、カールのみによる形状変化が生じているときの前記用紙の形状を曲線近似し、当該曲線から推定される前記エッジ端における幅を、評価対象の前記幅として設定する、
請求項に記載のカール検出装置。
【請求項9】
前記カール評価部は、
前記画像内で前記外形の搬送方向に沿った辺上の各地点を探索し、連続する探索点間での前記用紙の幅方向における位置ずれ方向及び位置ずれ量に基づいて、前記用紙における前記角折れの有無を判定する、
請求項又はに記載のカール検出装置。
【請求項10】
前記カール評価部は、
前記解析点の搬送方向の座標を基準位置とした前記外形の幅を、評価対象の前記幅として算出する、
請求項に記載のカール検出装置。
【請求項11】
前記カール評価部は、
検出された前記外形の前記エッジ領域の形状に基づいて、前記解析点の位置が、前記角折れによる形状変化を含む位置に該当するか否かを判定し、前記解析点の位置が、前記角折れによる形状変化を含む位置に該当する場合、前記用紙を、評価対象から除外する、
請求項10に記載のカール検出装置。
【請求項12】
前記カール評価部は、
検出された前記外形のうち、前記用紙の中央領域の外形に基づいて、前記基準幅を設定する、
請求項乃至11のいずれか一項に記載のカール検出装置。
【請求項13】
前記カール評価部は、
検出された前記外形の前記エッジ領域における幅が、前記基準幅よりも拡大しているか否かにより、前記用紙のカール方向を判定する、
請求項乃至12のいずれか一項に記載のカール検出装置。
【請求項14】
前記カール評価部は、
前記用紙のカール状態の評価結果に基づいて、前記用紙に対してカール矯正処理を施す際の矯正量を決定する、
請求項乃至13のいずれか一項に記載のカール検出装置。
【請求項15】
前記カール評価部は、
前記用紙上において、前記用紙のエッジ端位置から前記用紙の中央側に向かって、前記撮像部と前記撮像部に隣接する搬送部の搬送ローラとの間の距離に相当する範囲を、カール状態が発生しているカール領域として設定し、
前記外形上の前記カール領域のうち、前記角折れによる形状変化がないと推定される領域に複数の前記解析点の座標を設定する、
請求項に記載のカール検出装置。
【請求項16】
前記カール評価部は、
前記用紙上において、前記用紙のエッジ端位置から前記用紙の中央側に向かって、前記撮像部と前記撮像部に隣接する搬送部の搬送ローラとの間の距離に相当する範囲を、カール状態が発生しているカール領域として設定し、
前記外形上の前記カール領域の前記用紙の中央側の基端位置を基準とした前記解析点までの距離と前記用紙のエッジ端位置までの距離との比率と、前記解析点の前記用紙の幅方向の座標と、に基づいて、評価対象の前記幅を推定する、
請求項に記載のカール検出装置。
【請求項17】
前記カール評価部は、前記画像の解像度に基づいて、前記解析点の搬送方向における座標を設定する、
請求項10に記載のカール検出装置。
【請求項18】
前記撮像部は、前記用紙の上面側及び下面側それぞれを別個に撮影し、
前記カール評価部は、
前記撮像部によって生成された前記用紙の上面側画像及び下面側画像それぞれにおいて、前記用紙の前記外形を検出し、
前記上面側画像及び前記下面側画像のうち、前記外形から求まる前記用紙のエッジ領域における幅が、前記用紙のエッジ領域の基準幅と比較して拡大傾向にある方の画像を、前記カール状態を評価するために用いる画像として選択する、
請求項1乃至17のいずれか一項に記載のカール検出装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載のカール検出装置を備える画像形成装置。
【請求項20】
カール矯正を行うカール矯正装置をさらに備え、
前記カール評価部は、カール状態の評価結果に基づいて、前記カール矯正装置のカール矯正動作を決定する
請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
搬送される用紙を撮像する処理と、
撮像された画像上において、前記用紙の外形を検出し、検出された前記外形のうち前記用紙の角部分を除いた前記外形に基づいて、前記用紙のカール状態を評価する処理と、
を備えるカール検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カール検出装置、画像形成装置、及び、カール検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンターや、これら機能が複合した複合機などの画像形成装置では、用紙に画像を転写し、熱と圧力を加えて定着するプロセスを有している。このプロセスにおいては、定着において転写ドラムや定着器を用紙が通過しており、その際に、用紙がカール(即ち、用紙の反り)してしまうことがある。カールは、例えば、定着器の熱や圧力等によって、紙表裏の水分量に差が生じることで発生する。又、その他、画像形成に備えて給紙される用紙が、カールした状態で搬送される場合もある。カールした用紙は、印刷品質を低下させたり、積載不良となったり、その後の綴じ処理などの後処理を適正に行うことを困難にする。
【0003】
このような背景から、近年、用紙のカール状態を評価して、その評価結果に基づいて、カールした用紙を矯正したり、用紙に印刷する画像データを補正したりする処理を行うことが可能な画像形成装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-097213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る従来技術には、この種の画像形成装置として、用紙を撮影した画像から、用紙の所定パラメータ(例えば、出力用紙サイズ、カール検知用画像、又は画像エッジの輪郭)を抽出し、当該所定パラメータを基準値と比較することで、用紙のカール状態を評価する手法が開示されている。
【0006】
しかしながら、この種の画像形成装置においては、用紙を搬送する際等に、用紙に、カールの他、角折れ(用紙の四隅の角部に生じた用紙の折れ曲がりを意味する。以下同じ)が発生する場合もある。本願の発明者の鋭意検討の結果、従来手法では、このような場合、カール量(即ち、用紙の反りの程度)やカール方向(即ち、用紙の反りの方向)について、異常な評価結果が出力されてしまうおそれがあることが分かってきた。
【0007】
尚、カール量やカール方向について、異常な評価結果が出力された場合、例えば、画像形成装置内に設けられたカール矯正装置にて、カールした用紙を矯正する際に、用紙への過剰な矯正又は矯正不足が生じてしまうおそれがある。換言すると、用紙を適切に矯正する上で、用紙のカール状態を定量的に正確に検出することは不可欠である。
【0008】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、用紙に角折れが発生している場合にも、用紙のカール状態を正しく評価することを可能とするカール検出装置、画像形成装置、及び、カール検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
搬送される用紙を撮像する撮像部と、
前記撮像部に撮像された画像上において、前記用紙の外形を検出し、検出された外形のうち前記用紙の角折れによる変化が生じていると推定される部分を除いて、前記用紙のカール状態を評価するカール評価部と、
を備えるカール検出装置である。
【0010】
又、他の局面では、
上記のカール検出装置を備える画像形成装置である。
【0011】
又、他の局面では、
搬送される用紙を撮像する処理と、
前記撮像部に撮像された画像上において、前記用紙の外形を検出し、検出された外形のうち前記用紙の角折れによる変化が生じていると推定される部分を除いて、前記用紙のカール状態を評価する処理と、
を備えるカール検出方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るカール検出装置によれば、用紙に角折れが発生している場合にも、用紙のカール状態を正しく評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を示す図
図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を示す図
図3】第1の実施形態に係るカール検出装置の構成の一例を示す図
図4】第1の実施形態に係るカール検出装置のCCDカメラに読み取られた用紙全体を写す画像を示す図
図5】第1の実施形態に係るカール矯正装置の構成の一例を示す図
図6】CCDカメラで撮影した得られた上向きのカールを有する用紙の読取画像の一例を示す図
図7A】用紙のエッジ領域に上向きのカールが発生しており、さらに、そのエッジ領域に角折れが発生している場合に、CCDカメラに生成された用紙の読取画像の一例を示す図
図7B】用紙のエッジ領域に下向きのカールが発生しており、さらに、そのエッジ領域に角折れが発生している場合に、CCDカメラに生成された用紙の読取画像の一例を示す図
図8】カール検出装置のより好適な構成を示す図
図9】第1の実施形態に係るカール検出装置の動作の一例を示す図
図10】第2の実施形態に係るカール検出装置における、用紙のカール評価方法を説明する図
図11】第2の実施形態に係るカール検出装置の動作の一例を示す図
図12】第3の実施形態に係るカール検出装置における、用紙のカール評価方法を説明する図
図13】第3の実施形態に係るカール検出装置の動作の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
[画像形成装置の構成]
まず、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。尚、本実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンター、ファクシミリなどに適用される。
【0016】
図1及び図2は、画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。
【0017】
図1に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Pに二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0018】
又、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0019】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、通信部71、記憶部72、カール検出装置80、カール矯正装置90、及び制御部100等を備える。
【0020】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を含んで構成される。そして、制御部100は、CPU101が、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。但し、制御部100の各機能は、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア回路によっても実現できることは勿論である。
【0021】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Pにトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0022】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0023】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0024】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0025】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0026】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、入力画像データに対して、記憶部72内の色補正データ(LUT(Lookup table))に基づいて補正処理を施す。画像処理部30は、当該色補正データに基づいて、例えば、入力画像データに対して、階調補正、色補正、及びシェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。そして、これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0027】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0028】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0029】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0030】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0031】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0032】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0033】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0034】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0035】
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0036】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0037】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0038】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Pへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0039】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0040】
その後、用紙Pが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Pに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Pの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Pに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着部60に向けて搬送される。
【0041】
ベルトクリーニング部426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。尚、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
【0042】
定着部60は、用紙Pの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Pの裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Pを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0043】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Pを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Pにトナー像を定着させる。又、定着部60には、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Pを分離させるエア分離ユニット60Dが配置されている。
【0044】
用紙搬送部50は、給紙部51、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙P(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0045】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Pは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Pの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Pの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。
【0046】
画像形成された用紙Pは、後処理装置(FNS)として配設されたカール検出装置80及びカール矯正装置90に搬送され、これらの装置にて、カール状態の評価及び矯正が行われた後、画像形成装置1の機外に排紙される。
【0047】
尚、後処理装置(FNS)は、ステイプル、パンチ、中折り、製本などの所定の後処理部を有してもよい。
【0048】
[カール検出装置及びカール矯正装置の構成]
図3は、カール検出装置80の構成の一例を示す図である。図3Aは、カール検出装置80を側面視した図、図3Bは、カール検出装置80の斜視図である。
【0049】
カール検出装置80は、搬送部81、CCDカメラ82、及び、カール評価部83を有している。
【0050】
搬送部81は、用紙搬送部50の一部を構成し、画像形成部40で画像形成され、定着部60で画像の定着処理が施された用紙Pを、定着部60から受け取り、カール矯正装置90に向かって搬送する。搬送部81は、所定の間隔で設けられた搬送ローラー81aを有し、用紙Pは、搬送ローラー81aに、上下から押圧されながら上流側から下流側に向かって搬送される。搬送ローラー81aは、例えば、平面視で、CCDカメラ82を挟んで搬送方向の両側に、CCDカメラ82と重ならない位置に配設されている。
【0051】
CCDカメラ82(本発明の「撮像部」に相当)は、搬送部81に搬送される用紙Pを、用紙Pの上面側又は下面側から撮影する。CCDカメラ82は、用紙Pの幅方向(搬送部81の搬送方向に直交する方向を表す。以下同じ)に沿ってライン状に配設されている。CCDカメラ82は、例えば、用紙Pが上流側から下流側に向かって搬送されている際に、各位置で用紙Pを撮影することで、用紙P全体を撮影する。
【0052】
CCDカメラ82は、用紙Pの幅を超える長さを有しており、CCDカメラ82に生成された画像から、用紙Pの外形を検出し得るようになっている。尚、CCDカメラ82の対面側には、CCDカメラ82に生成された画像から用紙Pの外形を検出しやすくするために、黒色背景板82Tが配設されている。
【0053】
カール評価部83は、CCDカメラ82にて撮影された用紙Pの画像を用いて、用紙Pのカール状態を評価する。カール評価部83は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力ポート、及び出力ポート等を含んで構成されるマイコンである。尚、カール評価部83は、画像形成装置1を統括制御する制御部100の機能の一部として実現されてもよい。
【0054】
図4は、カール検出装置80のCCDカメラ82に読み取られた用紙P全体を写す画像を示す図である。
【0055】
図4は、用紙Pにカール及び角折れが生じていないときの用紙P全体を写す画像である。尚、図4の画像は、例えば、CCDカメラ82が各位置で撮影した画像が、カール評価部83にて、重ね合わされることで、生成されたものである。図4中で、白色のR1領域が用紙領域を表し、黒色のR2領域が背景領域を表している。又、図4では、紙面の上方向が用紙Pの搬送方向に相当し、紙面の横方向が用紙Pの幅方向に相当する。
【0056】
尚、本実施形態では、CCDカメラ82によって生成された画像内の各位置を、互いに直交するxy座標系で表している。ここでは、用紙Pが搬送される方向を-x方向、用紙Pの幅方向の紙面右側を+y方向で表している。
【0057】
本実施形態に係るカール検出装置80においては、用紙Pのカール状態は、用紙Pの搬送方向上流側のエッジ領域Leが、CCDカメラ82の下流側で隣接する搬送ローラー81aに到達する直前の位置に存在するときに、CCDカメラ82に生成された画像に基づいて評価されることになる。これは、用紙Pが、かかる位置に存在する場合には、カールによる用紙Pの反りが搬送ローラー81aで規制されない状態となり、用紙Pのカール状態を適切に評価し得るためである。
【0058】
尚、CCDカメラ82とCCDカメラ82に下流側で隣接する搬送ローラー81aとの間の距離(図3A及び図4に示す距離TL)は、用紙Pのカール状態を検出し得るように適宜な距離に設定されている。以下では、用紙Pの上流側のエッジ端Leeから用紙Pの中央側に向かって、このCCDカメラ82とCCDカメラ82に下流側で隣接する搬送ローラー81aとの間の距離に相当する範囲を、用紙Pにカールが発生する可能性がある領域として「カール領域TL」とも称する。
【0059】
尚、以下では、説明の便宜として、用紙Pの搬送方向の上流側のエッジ端のことを、「用紙Pのエッジ端Lee」と称する。又、用紙Pの搬送方向の上流側のエッジ端Lee側の領域を「用紙Pのエッジ領域」(図4のLeの領域)と称し、用紙Pを搬送方向に沿って見たときに用紙Pのエッジ領域Leよりも中央側の領域を「用紙Pの中央領域」(図4のLmの領域)と称して説明する。
【0060】
図5は、カール矯正装置90の構成の一例を示す図である。
【0061】
カール矯正装置90は、カール検出装置80から搬送される用紙Pを、上下方向に互いに対向して配設される第1矯正ローラー91及び第2矯正ローラー92を用いて、上下から圧接することによって、当該用紙Pに生じたカール状態を矯正する。カール矯正装置90は、例えば、第1矯正ローラー91及び第2矯正ローラー92の上下の配置の切り替えが可能になっており、上下の配置の切り替えによって上方向及び下方向それぞれのカール方向に対応することができる。又、カール矯正装置90は、第1矯正ローラー91と第2矯正ローラー92との接触位置を変更することにより、カール矯正量の調整を行うことができる。
【0062】
カール矯正装置90の動作は、典型的には、カール検出装置80にて検出された用紙Pのカール量及びカール方向に基づいて、設定されることになる。
【0063】
[カール状態の評価方法]
以下、図6図8を参照して、本実施形態に係るカール検出装置80(カール評価部83)が行う用紙Pのカール状態の評価方法について説明する。
【0064】
まず、用紙Pに角折れが発生していない場合における、用紙Pのカール状態の評価方法について、説明する。
【0065】
図6は、CCDカメラ82で撮影した得られた上向きのカールを有する用紙Pの画像(以下、「読取画像」と称する。)の一例を示す図である。図6の右図は、図6の左図の四角で囲んだ位置における用紙Pのエッジ領域Leの画像を示す拡大図である。尚、図6中で、実線の境界線R1nは、読取画像から検出された用紙Pの実際の外形を表し、点線の境界線R1mは、用紙Pの基準外形(カール及び角折れが生じていない状態における用紙Pの外形)を表している。
【0066】
用紙Pに上向き(用紙Pの紙面に対してCCDカメラ82側を意味する。以下同じ)のカールが発生している場合、用紙Pのエッジ領域Leは、用紙Pの中央領域Lmよりも、CCDカメラ82に近づくことになる。そのため、読取画像内において、用紙Pのエッジ領域Leは、図6に示すように、用紙Pの中央領域Lmよりも幅方向に拡大された状態となる。又、このとき、用紙Pのエッジ領域Leにおいては、用紙PとCCDカメラ82との間の距離は、用紙Pの中央領域Lmからエッジ端Leeに向かうにつれて近づくことになるため、読取画像内において、用紙Pのエッジ領域Leにおける幅(搬送方向と直交する方向における用紙Pのサイズを表す。以下同じ)は、用紙Pの中央領域Lmから用紙Pのエッジ端Leeに向かうにつれて、大きくなる。
【0067】
一方、用紙Pに下向き(用紙Pの紙面に対してCCDカメラ82と反対側を意味する。以下同じ)のカールが発生している場合には、用紙Pのエッジ領域Leは、用紙Pの中央領域Lmよりも、CCDカメラ82から遠ざかることになる。そのため、かかる場合には、用紙Pのエッジ領域Leは、読取画像内において、用紙Pの中央領域Lmよりも幅方向に縮小されたように撮影されることになる(後述する図7Bを参照)。又、このとき、用紙Pのエッジ領域Leにおいては、用紙PとCCDカメラ82との間の距離は、用紙Pの中央領域Lmからエッジ端Leeに向かうにつれて遠ざかることになるため、読取画像内において、用紙Pのエッジ領域Leにおける幅は、用紙Pの中央領域Lmから用紙Pのエッジ端Leeに向かうにつれて、小さくなる。
【0068】
カール評価部83は、かかる観点から、例えば、読取画像から、用紙Pの外形を検出する。そして、カール評価部83は、検出された用紙Pの外形から求まる用紙Pのエッジ領域Leにおける幅を、カールが発生していないときの用紙Pのエッジ領域Leにおける基準幅と比較することによって、用紙Pのカール状態を評価する。カール評価部83は、ここでは、用紙Pのエッジ領域Leのエッジ端Leeにおける幅を基準として、用紙Pのカール状態を評価しており、カール評価部83は、例えば、検出された用紙Pの外形から求まる用紙Pのエッジ端Leeにおける幅(以下、「評価対象幅de」とも称する)と、カールが発生していないときの用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅(以下、単に「基準幅dn」とも称する)と、の比率から用紙Pのカール状態を評価する。
【0069】
具体的には、カール評価部83は、まず、例えば、読取画像内の各画素の階調値と所定の閾値とを比較することで、用紙Pの外形を検出する。ここでの所定の閾値は、例えば、読取画像内で検出される(最大値階調値+最小値階調値)/2、又は、事前に定められた固有値等が設定される。尚、このとき、カール評価部83は、読取画像内の互いに隣接する画素の階調変化から、用紙Pの外形を検出してもよい。
【0070】
次に、カール評価部83は、例えば、検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形R1nと、カールが発生していないときの用紙Pのエッジ領域Leの基準外形R1mと、を比較し、検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形R1nが、カールが発生していないときの用紙Pのエッジ領域Leの基準外形R1mに対して拡大しているか又は縮小しているかを判定する。これにより、評価対象の用紙Pに生じているカール方向が上方向か下方向かを特定する。尚、ここで、検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形R1nが、カールが発生していないときの用紙Pのエッジ領域Leの基準外形R1mと重なる場合には、カール評価部83は、評価対象の用紙Pにカールは発生していないと特定する。
【0071】
次に、カール評価部83は、例えば、評価対象の用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnとの比率(=de/dn)によって、カール量を評価する。尚、カール評価部83は、この際、評価対象の用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnとの差異(=de-dn)によって、カール量を評価してもよい。
【0072】
尚、カール評価部83は、カール状態の評価を行うに際して、例えば、読取画像で検出された用紙Pの中央領域Lmにおける外形から、用紙Pの基準外形R1m及び基準幅dnを推定する。用紙Pの中央領域Lmは、搬送部81の搬送ローラー81aにて上下から押圧されているため、用紙Pのエッジ領域Leにカールが発生している場合であっても、読取画像内において、用紙Pの中央領域Lmの外形は、変化しない。そして、用紙Pの形状は、予め把握されているため(典型的には、矩形状)、カール評価部83は、読取画像から、カール及び角折れが発生していないときの用紙Pの基準外形R1mを描くことができる。そして、これによって、カール評価部83は、当該基準外形R1mの頂点P1b間の距離として、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnを推定することができる。
【0073】
次に、用紙Pに角折れが発生している場合における、用紙Pのカール状態の評価方法について、説明する。
【0074】
図7Aは、用紙Pのエッジ領域Leに上向き(ここでは、CCDカメラ82側)のカールが発生しており、さらに、そのエッジ領域Leに角折れが発生している場合に、CCDカメラ82に生成された用紙Pの読取画像の一例を示す図である。
【0075】
図7Bは、用紙Pのエッジ領域Leに下向き(ここでは、CCDカメラ82とは反対側)のカールが発生しており、さらに、そのエッジ領域Leに角折れが発生している場合に、CCDカメラ82に生成された用紙Pの読取画像の一例を示す図である。
【0076】
尚、図7A図7Bは、用紙Pのエッジ領域Leの拡大図のみを示している。図7A図7Bにおいて、点線で囲むR1tの領域が、読取画像内で、用紙Pの角折れによる影響で、用紙Pの外形が変化している部分である。
【0077】
用紙Pに角折れが発生している場合、読取画像に映る用紙Pの外形は、図7A及び図7Bに示すように、当該角折れの部分は、読取画像内に映らず、読取画像内に映る用紙Pの外形は、エッジ領域Leに欠けが生じているような形状に変化する。
【0078】
具体的には、用紙Pのエッジ領域Leに上向きのカールが発生しており、さらに、そのエッジ領域Leに角折れが発生している場合には、図7Aに示すように、読取画像内において、用紙Pのエッジ領域Leにおける幅は、用紙Pの中央領域Lmから用紙Pのエッジ端Leeに向かうにつれて、カールの影響により大きくなったのち、角折れの影響により次第に小さくなる。換言すると、読取画像内において、角折れの影響を受けた用紙Pのエッジ領域Leのマイナスx方向に対する傾き方向は、カールの影響を受けた用紙Pのエッジ領域Leのマイナスx方向に対する傾き方向とは逆方向となっている。
【0079】
一方、用紙Pのエッジ領域Leに下向きのカールが発生しており、さらに、そのエッジ領域Leに角折れが発生している場合には、図7Bに示すように、読取画像内において、用紙Pのエッジ領域Leにおける幅は、例えば、用紙Pの中央領域Lmから用紙Pのエッジ端Leeに向かうにつれて、カールの影響により小さくなったのち、角折れの影響により更に小さくなる。尚、読取画像内において、角折れの影響による用紙Pのエッジ領域Leにおける画像上の欠けは、カールの影響による用紙Pのエッジ領域Leにおける画像上の欠けよりも大きくなっている。換言すると、読取画像内において、角折れの影響を受けた用紙Pのエッジ領域Leの外形のマイナスx方向に対する傾き角は、カールの影響を受けた用紙Pのエッジ領域Leの外形のマイナスx方向に対する傾き角よりも大きくなっている。
【0080】
このように、用紙Pに角折れが発生している場合に、用紙Pのカール状態を正確に評価するためには、角折れによる用紙Pの外形の形状変化の影響を除外した形で(即ち、カールのみによる用紙Pの外形の形状変化を推定して)、基準幅dnと比較する評価対象幅deを設定する必要がある。
【0081】
かかる観点から、カール評価部83は、まず、読取画像から検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形に基づいて、用紙Pのエッジ領域Leにおける角折れの有無を判定する。そして、カール評価部83は、用紙Pに角折れが発生している場合には、検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形の搬送方向に沿った辺上で、且つ、角折れによる形状変化を含まない領域に解析点を設定して、当該解析点の座標に基づいて、用紙Pの角折れによる形状変化を含まないと仮定したときの用紙Pのエッジ領域Leの外形を推定し、これにより、基準幅dnと比較する評価対象幅deを設定する。
【0082】
具体的には、カール評価部83は、例えば、読取画像から検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形が、図7A又は図7Bのように形状変化しているか否かを判定することによって、用紙Pの角折れの有無を判定する。
【0083】
このとき、カール評価部83は、例えば、用紙Pのエッジ領域Leの外形の搬送方向に沿った辺上の各地点を探索し、連続した探索点間での、用紙Pの幅方向における位置ずれ方向及び位置ずれ量に基づいて、角折れが発生しているか否かを判定する。カール評価部83は、例えば、用紙Pの中央領域Lm側からエッジ端Leeに向かって見たときに(-x方向)、連続した探索点間での用紙Pの幅方向への位置ずれ方向が、始めは拡大方向(+y方向)となっており、途中から縮小方向(-y方向)に変化する場合には、用紙Pのエッジ領域Leにおいて、上向きのカールと角折れが共に発生していると判定する。又、カール評価部83は、例えば、用紙Pの中央領域Lm側からエッジ端Leeに向かって見たときに(-x方向)、連続した探索点間での用紙Pの幅方向への位置ずれ方向が縮小方向(-y方向)のみに向かい、且つ、その位置ずれ量(即ち、用紙Pの外形の傾斜角度の変化)が途中から所定の閾値を超えている場合には、用紙Pのエッジ領域Leにおいて、下向きのカールと角折れが共に発生していると判定する。
【0084】
この角折れの有無の判定処理で、用紙Pが角折れを有しないと判断した場合、カール評価部83は、通常通り、カール状態の評価を行うことになる。
【0085】
一方、この角折れの有無の判定処理で、用紙Pが角折れを有しないと判断した場合、カール評価部83は、検出された用紙Pの外形のエッジ領域Leのうち、角折れによる形状変化がない領域(図7A図7Bの領域Lem)に複数の解析点(図7A図7Bの点P1c)を設定し、当該複数の解析点P1cそれぞれの座標から、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pのエッジ領域Leの外形を、近似式で表現する。ここで、カールによる形状変化が生じている場合の用紙Pのエッジ領域Leの外形は、カールが上向きの場合及び下向きの場合のいずれの場合にも、例えば、2次曲線で近似可能である。
【0086】
例えば、カールによる形状変化が生じている場合の用紙Pのエッジ領域Leの外形を、2次曲線の近似式y=αx+βx+γで表す。このとき、角折れによる形状変化がない領域に設定した解析点P1cの座標を(x,y)、解析点P1cの参照個数をn点とすると、近似式の各係数α、β、γは、以下の式(1)のように表される。そして、各係数α、β、γは、例えば、最小二乗法を用いて最適化することが可能である。
【数1】
【0087】
カール評価部83は、このように、カールのみによる形状変化が生じている領域の用紙Pのエッジ領域Leの外形を2次曲線式で算出した後、近似した2次曲線式を、用紙Pのエッジ端Leeのx座標位置まで延長させることで、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pのエッジ端Leeの頂点位置P1a’の座標を推定する。尚、図7A図7Bでは、P1a’点が、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pのエッジ端Leeの推定頂点位置に相当する。
【0088】
カール評価部83は、このようにして求めた用紙Pのエッジ領域Leの推定頂点位置P1a’を基準として、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを推定し、この推定幅deを、基準幅dnと比較する評価対象幅deとして設定する。そして、カール評価部83は、用紙Pに角折れが存在しない場合と同様に、評価対象幅deと基準幅dnとの比率(=de/dn)又は差異(=de-dn)を指標として、用紙Pのカール量を評価する。
【0089】
カール評価部83は、このようにして評価した用紙Pのカール状態の評価結果(即ち、用紙Pのカール量及びカール方向)に基づいて、カール矯正装置90のカール矯正動作を決定する。この際、カール評価部83は、例えば、用紙Pのカール方向を矯正するように、カール矯正装置90の第1矯正ローラー91及び第2矯正ローラー92の上下の配置を決定すると共に、用紙Pのカール量に対応するように、第1矯正ローラー91及び第2矯正ローラー92による用紙Pの押圧量を調整する。尚、カール矯正装置90の動作は、例えば、制御データとして、用紙Pのカール量及びカール方向と予め対応付けられており、カール評価部83は、当該制御データに基づいて、カール矯正装置90の動作を決定する。
【0090】
図8は、カール検出装置80のより好適な構成を示す図である。
【0091】
図3に示すカール検出装置80では、CCDカメラ82にて、用紙Pの上面側のみを撮影する構成となっていたが、図8に示すカール検出装置80では、用紙Pの上面側及び下面側それぞれを別個に撮影し得るように、上面撮影用CCDカメラ82aと下面撮影用CCDカメラ82bと、が設けられた構成となっている。
【0092】
かかる態様においては、カール評価部83は、上面撮影用CCDカメラ82aに生成された用紙Pの上面側読取画像、及び、下面撮影用CCDカメラ82bに生成された用紙Pの下面側読取画像それぞれから、用紙Pの外形を検出し、用紙Pの上面側読取画像及び用紙Pの下面側読取画像のうち、検出された用紙Pのエッジ領域Leにおける外形が、用紙Pの基準外形と比較して、拡大傾向にある方の画像を、評価に用いる画像として選択する。
【0093】
図7A及び図7Bから分かるように、用紙Pにおける角折れの有無を判定する際には、用紙Pのエッジ領域LeがCCDカメラ82に近づく方向にカールしている状態を撮影した画像(図7A)を用いた方が、用紙Pのエッジ領域LeがCCDカメラ82から遠ざかる方向にカールしている状態を撮影した画像(図7B)を用いるよりも、正確な判定を行うことができる。
【0094】
従って、図8のように、上面撮影用CCDカメラ82aと下面撮影用CCDカメラ82bとにより、用紙Pの上面側及び下面側それぞれを別個に撮影し、カール評価部83にて、用紙Pのエッジ領域LeがCCDカメラ82(上面撮影用CCDカメラ82a又は下面撮影用CCDカメラ82b)に近づく方向にカールしている状態を撮影した画像を、カール状態を評価するために用いる画像として選択する構成とすることによって、より正確に、且つ、高精度に用紙Pのカール状態を評価することが可能となる。
【0095】
尚、用紙Pの上面側及び下面側それぞれを撮影するための構成は、図8のように、上面撮影用CCDカメラ82aと下面撮影用CCDカメラ82bとを用意する態様に代えて、搬送部81に、搬送経路内で用紙Pの反転経路を組み込み、1つのCCDカメラ82で用紙Pの上面側及び下面側それぞれを撮影する態様で実現されてもよい。
【0096】
[カール検出装置の動作]
図9は、本実施形態に係るカール検出装置80の動作の一例を示す図である。図9のフローチャートは、例えば、カール評価部83がコンピュータプログラムに従って、搬送される用紙P毎に実行する処理である。尚、ここでは、図8のように、上面撮影用CCDカメラ82aと下面撮影用CCDカメラ82bとが設けられた態様における、カール評価部83の動作を示している。
【0097】
ステップS1において、カール評価部83は、上面撮影用CCDカメラ82aに、用紙Pの上面を撮影させると共に、下面撮影用CCDカメラ82bに、用紙Pの下面を撮影させ、これらから、用紙Pの上面側読取画像及び下面側読取画像の情報を取得する。
【0098】
ステップS2において、カール評価部83は、用紙Pの上面側読取画像及び下面側読取画像それぞれから、用紙Pの外形を検出する。
【0099】
ステップS3において、カール評価部83は、ステップS2で検出された用紙Pの中央領域Lmの外形に基づいて、用紙Pにカール及び角折れのいずれも発生していない状態における、用紙Pの基準外形を作成すると共に、用紙Pの基準外形上における用紙Pのエッジ領域Le(ここでは、エッジ端Lee)における基準幅dnを求める。
【0100】
尚、この際、カール評価部83は、用紙Pの上面側読取画像から検出された用紙Pの外形、及び、用紙Pの下面側読取画像それぞれから検出された用紙Pの外形それぞれについて、用紙Pの基準外形を作成してもよいし、用紙Pの上面側読取画像又は下面側読取画像のいずれかから検出された用紙Pの外形についてのみ、用紙Pの基準外形を作成してもよい。
【0101】
ステップS4において、カール評価部83は、ステップS2で検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形と、ステップS3で作成した用紙Pの基準外形と、を比較して、ステップS2で検出された用紙Pの外形が、用紙Pの基準外形よりも拡大しているか否かを判定する。
【0102】
尚、この際、カール評価部83は、用紙Pの上面側読取画像から検出された用紙Pの外形、及び、用紙Pの下面側読取画像それぞれから検出された用紙Pの外形それぞれについて、この判定処理を行ってもよいし、用紙Pの上面側読取画像又は下面側読取画像のいずれかから検出された用紙Pの外形についてのみ、この判定処理を行ってもよい。
【0103】
ここで、カール評価部83は、ステップS2で検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形が、用紙Pの基準外形よりも拡大している場合(ステップS4:YES)、ステップS5に移行し、一方、ステップS2で検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形が、用紙Pの基準外形よりも拡大していない場合(ステップS4:NO)、ステップS6に移行する。
【0104】
ステップS5において、カール評価部83は、用紙Pの上面側読取画像を、用紙Pのカール状態を評価する際に用いる画像として選択する。一方、ステップS6において、カール評価部83は、用紙Pの下面側読取画像を、用紙Pのカール状態を評価する際に用いる画像として選択する。
【0105】
ステップS7において、カール評価部83は、ステップS5又はステップS6で選択された画像を用いて、用紙Pが角折れを有するか否かを判定する。ここで、カール評価部83は、用紙Pが角折れを有すると判定した場合(ステップS7:YES)、ステップS8に移行する。一方、カール評価部83は、用紙Pに角折れがないと判定した場合(ステップS7:NO)、ステップS9aにスキップする。
【0106】
尚、このステップS7において、カール評価部83は、例えば、読取画像から検出された用紙Pのエッジ領域Leの外形が、図7Aのように形状変化しているか否かを判定することによって、用紙Pの角折れの有無を判定する。
【0107】
ステップS8において、カール評価部83は、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを求めるべく、用紙Pのカール領域TLのうち、角折れ部分を除いた領域に複数の解析点P1cを設定し、当該複数の解析点P1cそれぞれの座標から、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pの外形を規定する近似曲線を作成する。
【0108】
ステップS9において、カール評価部83は、ステップS8で作成した近似曲線から、用紙Pのエッジ端Leeの頂点位置P1a’を推定し、この頂点位置P1a’の座標から、カールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを推定する。
【0109】
ステップS9aにおいて、カール評価部83は、画像(ここでは、ステップS5又はステップS6で選択された画像)上で検出された用紙Pの外形から、用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを算出する。
【0110】
ステップS10において、カール評価部83は、用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnと、を比較することで、用紙Pのカール量を評価する。
【0111】
尚、このステップS10において、カール評価部83は、用紙Pに角折れがない場合には、例えば、ステップS9aで求められた用紙Pの外形のエッジ端Leeの幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnと、の比率により、用紙Pのカール量を評価する。一方、カール評価部83は、用紙Pが角折れを有する場合には、ステップS9において推定されたカールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pの外形のエッジ端Leeの幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnと、の比率により、用紙Pのカール量を評価する。
【0112】
カール評価部83は、以上のような処理を、例えば、搬送される用紙P毎に実行する。そして、カール評価部83は、用紙Pのカール状態の評価結果に基づいて、例えば、カール矯正装置90を動作させて、用紙Pに矯正処理を施す。
【0113】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るカール検出装置80は、搬送部81に搬送される用紙Pを撮像する撮像部(上記実施形態のCCDカメラ82)と、撮像部に撮像された画像上において、用紙Pの外形を検出し、検出された外形のうち用紙Pの角折れによる変化が生じていると推定される部分を除いて、用紙Pのカール状態を評価するカール評価部83と、を備える。
【0114】
これによって、用紙Pに角折れが生じている場合であっても、用紙Pのカール状態(カール方向及びカール量等)を正確に評価することが可能である。これにより、例えば、用紙Pのカール状態にあわせた適切な矯正処理を行うことが可能である。
【0115】
(第2の実施形態)
次に、図10図11を参照して、第2の実施形態に係るカール検出装置80の構成について説明する。
【0116】
本実施形態に係るカール検出装置80は、用紙Pのカール評価方法の点で、第1の実施形態に係るカール検出装置80と相違する。尚、第1の実施形態と共通する構成については、説明を省略する。
【0117】
図10は、本実施形態に係るカール検出装置80における、用紙Pのカール評価方法を説明する図である。尚、図10では、説明の便宜として、図7Aと同一の読取画像を示している。
【0118】
本実施形態に係る用紙Pのカール評価方法では、予め用紙Pが角折れを有することを想定して、実際に用紙Pが角折れを有するか否かによらず、読取画像上で、用紙Pの外形の搬送方向に沿った辺上のうち、用紙Pの角折れによる形状変化を含まないと推定される領域に解析点(図10の点P1d)を設定して、当該解析点P1dの搬送方向の座標を基準位置とした用紙Pの外形の幅(図10のde)を、評価対象幅として設定する。そうすることで、仮に、用紙Pに角折れが発生している場合にも、その影響を受けることなく用紙Pのカール状態を評価することが可能となる。これによって、より簡易的に、用紙Pのカール状態を評価することが可能となる。
【0119】
具体的には、本実施形態に係るカール評価部83は、評価対象のすべての用紙Pについて、用紙Pが角折れを有するか否かの判定処理を行うことなく、用紙Pの外形のエッジ領域Leの搬送方向に沿った辺上において、用紙Pのエッジ端Leeから中央領域Lm側に所定量シフトした位置に解析点P1dを設定する。そして、解析点P1dの用紙Pの幅方向の座標から、評価対象幅deを求める(例えば、用紙Pの幅方向の中心位置を±Y方向の原点とした座標系であれば、解析点P1dのY座標を2倍した値が評価対象幅deとなる)。そして、本実施形態に係るカール評価部83は、このようにして求めた評価対象幅deと、基準幅dnとの比率から、カール量を評価する。
【0120】
ここで、用紙Pのエッジ端Leeからのシフト量(即ち、解析点P1dの設定位置)は、用紙Pが角折れを有する場合に想定される用紙Pのエッジ端Leeから用紙Pの角折れ地点までの距離以上で、且つ、解析点P1dがカール領域TL(即ち、エッジ領域Le)内に位置するように、カール領域TLの距離以下に設定される。当該シフト量は、予め実験やシミュレーションにより設定された値が用いられてもよいし、ユーザーにより設定された値が用いられてもよい。又、当該シフト量は、読取画像の解像度から、角折れ検知ができない画素数以上に設定されてもよい。
【0121】
但し、シフト量を大きくするほど、カールによる用紙Pの形状変化は小さくなり、用紙Pのカール状態の評価の精度が悪化するため、当該シフト量は、用紙Pが角折れを含まない範囲で、できるだけ小さく設定するのが好ましい。
【0122】
尚、用紙Pのエッジ領域Leにおける基準幅dnは、解析点P1dの搬送方向の座標を基準位置として、用紙Pの基準外形から求められてもよいし、読取画像で検出された用紙Pの中央領域Lmにおける外形から求まる幅が当該基準幅dnとして用いられてもよい。
【0123】
尚、本実施形態に係るカール評価方法では、用紙Pに発生している角折れが大きい場合には、解析点P1dが角折れによる形状変化の影響を受けている位置に設定されてしまうため、カール状態を適切に評価することができない。そのため、外形のエッジ領域Leの形状に基づいて、解析点P1dの位置が、角折れによる形状変化の影響を受けている位置に該当するか否かを判定し、解析点P1dの位置が、角折れによる形状変化の影響を受けている位置に該当する場合、用紙Pを、評価対象から除外してもよい。
【0124】
図11は、本実施形態に係るカール検出装置80の動作の一例を示す図である。尚、ステップS11からステップS16までは、上述したステップS1からステップS6と同じ処理であるため、ここでの説明を省略する。
【0125】
ステップS17において、カール評価部83は、用紙Pの外形のエッジ領域Leの搬送方向に沿った辺上において、解析点P1dを設定する。そして、カール評価部83は、解析点P1dの位置(即ち、シフト位置)が、画像上で、角折れによる形状変化の影響を受けている位置に該当するか否かを判定する。ここで、カール評価部83は、解析点P1dの位置が、画像上で、角折れによる形状変化の影響を受けている位置に該当しない場合(ステップS17:NO)、ステップS18に移行する。一方、カール評価部83は、解析点P1dの位置が、画像上で、角折れによる形状変化の影響を受けている位置に該当する場合(ステップS17:YES)、ステップS19に移行して、用紙Pを評価対象から除外する。
【0126】
ステップS18において、カール評価部83は、解析点P1dの用紙Pの幅方向の座標から、基準幅dnと比較するべき、評価対象幅deを求める。そして、カール評価部83は、このようにして求めた評価対象幅deと、用紙Pのエッジ領域Leにおける基準幅dnとの比率から、カール量を評価する。
【0127】
以上のように、本実施形態に係るカール検出装置80によれば、角折れにより形状変化が生じている場合でも、その影響を抑制しつつ、より簡易な手法で、用紙Pのカール状態を評価することが可能である。
【0128】
(第3の実施形態)
次に、図12を参照して、第3の実施形態に係るカール検出装置80の構成について説明する。
【0129】
本実施形態に係るカール検出装置80は、用紙Pにおける角折れの有無を判定し、用紙Pが角折れを有する場合には、用紙Pが角折れを有しない場合とカール状態を評価するための演算処理を変更する点で、第2の実施形態に係るカール検出装置80と相違する。尚、ここでは、第1の実施形態及び第2の実施形態と共通する構成については、説明を省略する。
【0130】
図12は、本実施形態に係るカール検出装置80における、用紙Pのカール評価方法を説明する図である。尚、図12では、説明の便宜として、図7Aと同一の読取画像を示している。
【0131】
本実施形態に係るカール評価方法では、カール評価部83は、まず、第1の実施形態と同様に、用紙Pのエッジ領域Leの形状に基づいて、用紙Pにおける角折れの有無を判定する。そして、用紙Pが角折れを有しない場合には、カール評価部83は、読取画像から検出された用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを、評価対象幅deとして設定し、第1の実施形態で説明したのと同様の手法に、例えば、評価対象幅deと基準幅dnとの比率(=de/dn)を用いて、用紙Pのカール状態を評価する。
【0132】
一方、用紙Pが角折れを有する場合には、カール評価部83は、第2の実施形態のカール評価方法を用いて、用紙Pのカール状態を評価する。即ち、この場合、カール評価部83は、用紙Pの外形の搬送方向に沿った辺上において、用紙Pのエッジ端Leeから中央領域Lm側に所定量シフトした位置に解析点(図12の点P1d)を設定する。そして、解析点P1dの用紙Pの幅方向の座標から、評価対象幅deを求める。
【0133】
但し、このままでは、用紙Pが角折れを有する場合には、用紙Pが角折れを有しない場合よりも、カール量を規定する比率(=de/dn)が小さく算出されてしまうことになるため、基準を揃える必要がある。そこで、本実施形態に係るカール評価方法では、用紙Pのカールはカール領域TLの全領域に亘って発生しており、且つ、カールによる画像変化は線形であると仮定して、解析点P1dの座標から、用紙Pに角折れによる形状変化が生じていないときの用紙Pのエッジ端Leeの頂点位置P1a’を推定する。
【0134】
具体的には、カール領域TLのx軸方向の長さをV2、用紙Pの中央側の基端位置を基準とした解析点P1dまでのx軸方向の長さをV1、用紙Pの基準外形に対する解析点のy軸方向の位置ずれ量をfとすると、三角形の幾何学的相似の関係から、用紙Pに角折れによる形状変化が生じていないときにおける、用紙Pの基準外形に対する用紙Pのエッジ端Leeの位置のy軸方向の位置ずれ量g(即ち、用紙Pに角折れによる形状変化が生じていないときの用紙Pのエッジ端Leeにおける幅de)は、以下の式で計算される。
【数2】
【0135】
本実施形態に係るカール評価部83は、このように、用紙Pに角折れによる形状変化が生じていないときの用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを、評価対象幅として設定する。そして、カール評価部83は、評価対象幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnとの比率(=de/dn)から、用紙Pのカール状態を評価する。
【0136】
図13は、本実施形態に係るカール検出装置80の動作の一例を示す図である。尚、ステップS21からステップS26までは、上述したステップS1からステップS6と同じ処理であるため、ここでの説明を省略する。
【0137】
ステップS27において、カール評価部83は、ステップS25又はステップS26で選択された画像を用いて、用紙Pが角折れを有するか否かを判定する。ここで、カール評価部83は、用紙Pが角折れを有すると判定した場合(ステップS27:YES)、ステップS28に移行する。一方、カール評価部83は、用紙Pに角折れがないと判定した場合(ステップS27:NO)、ステップS28aに移行する。
【0138】
ステップS28において、カール評価部83は、用紙Pの外形のエッジ領域Leの搬送方向に沿った辺上において、解析点P1dを設定する。そして、カール評価部83は、解析点P1dの用紙Pの座標から、上式(2)を用いて、基準幅dnと比較するべき、評価対象幅de(ここでは、用紙Pに角折れによる形状変化が生じていないときの用紙Pのエッジ端Leeにおける幅de)を求める。
【0139】
ステップS28aにおいて、カール評価部83は、画像(ここでは、ステップS5又はステップS6で選択された画像)上で検出された用紙Pの外形から、用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deを算出する。
【0140】
ステップS29において、カール評価部83は、用紙Pのエッジ端Leeにおける幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnと、を比較することで、用紙Pのカール量を評価する。
【0141】
尚、このステップS29において、カール評価部83は、用紙Pに角折れがない場合には、例えば、ステップS28aで求められた用紙Pの外形のエッジ端Leeの幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnと、の比率により、用紙Pのカール量を評価する。一方、カール評価部83は、用紙Pが角折れを有する場合には、ステップS28において推定されたカールのみによる形状変化が生じていると仮定したときの用紙Pの外形のエッジ端Leeの幅deと、用紙Pのエッジ端Leeにおける基準幅dnと、の比率により、用紙Pのカール量を評価する。
【0142】
以上のように、本実施形態に係るカール検出装置80によれば、角折れにより形状変化が生じている場合でも、その影響を抑制しつつ、より簡易な手法で、用紙Pのカール状態を評価することが可能である。
【0143】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0144】
上記実施形態では、カール評価に用いる用紙Pの基準幅dnの設定方法の一例として、読取画像で検出された用紙Pの中央領域Lmにおける外形から推定する手法を挙げた。但し、用紙Pの基準外形R1n及び基準幅dnの求め方は、当該手法に限らない。例えば、用紙Pのエッジ領域Leにおける基準幅dnが、使用される用紙Pの規格から既知である場合には、用紙Pの基準幅dnは、用紙Pの規格から設定されてもよい。
【0145】
又、上記実施形態では、用紙Pのカール状態の評価結果の使用態様の一例として、用紙Pの矯正処理を挙げた。但し、用紙Pのカール状態の評価結果の使用態様は、用紙Pの矯正処理に限らない。例えば、用紙Pのカール状態の評価結果は、画像形成部40や定着部60の校正処理、又は、続く用紙に印刷する画像データの補正処理等に使用されてもよい。
【0146】
又、上記実施形態では、カール検出装置80の配設位置の一例として、定着部60の下流側を示した。しかしながら、カール検出装置80の配設位置は、定着部60の下流側に限らず、画像形成部40の上流側であってもよい。
【0147】
又、カール検出装置80は、用紙Pのカール状態の検出機能に加えて、用紙Pに形成された画像の読み取り機能を備えていてよい。換言すると、カール検出装置80は、用紙Pに形成された画像を読み取って、画像形成装置1の動作の校正を行うための画像読取装置として、用いられてもよい。
【0148】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示に係るカール検出装置によれば、用紙に角折れが発生している場合にも、用紙のカール状態を高精度に評価することが可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
60 定着部
71 通信部
72 記憶部
80 カール検出装置
81 搬送部
82 撮像部
83 カール評価部
90 カール矯正装置
100 制御部
P 用紙
de 用紙のエッジ領域における幅(評価対象幅)
dn 用紙のエッジ領域における基準幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13