(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】塗布装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/08 20060101AFI20241029BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241029BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241029BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B05C1/08
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B05C5/00 101
B05C9/10
(21)【出願番号】P 2020121388
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 勝比呂
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067984(JP,A)
【文献】特開2011-194331(JP,A)
【文献】特開2003-047897(JP,A)
【文献】特開2012-088367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/08
B41J 2/01
B05C 5/00
B05C 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が塗布される被塗布媒体であって、記録媒体に画像を転写する被塗布媒体に対して接触/離間可能に構成され、前記被塗布媒体に前記液体を塗布する液体塗布部と、
前記液体塗布部に対して接触/離間可能に構成され、前記液体塗布部における前記液体の量を調整する調整部と、
前記被塗布媒体に前記液体を塗布する場合、前記被塗布媒体と前記液体塗布部との接触タイミングと、前記液体塗布部と前記調整部との接触タイミングとを異ならせる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記調整部における前記液体塗布部との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記液体塗布部と前記調整部とを接触させ、
前記液体塗布部における前記被塗布媒体との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる、
塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる前に、前記液体塗布部と前記調整部とを接触させる、
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記液体を保持可能であり、回転することで保持した前記液体を前記液体塗布部との接触部分まで搬送するローラー部材を有する、
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記調整部における最初に前記液体を保持した部分が、前記液体塗布部との接触部分に到達するタイミング以降に前記液体塗布部と前記調整部とを接触させる、
請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記調整部における前記ローラー部材に前記液体を供給する供給部を備える、
請求項3または請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記液体塗布部は、前記液体を保持可能であり、回転することで保持した前記液体を前記被塗布媒体との接触部分まで搬送するローラー部材を有する、
請求項
1~5の何れか1項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記液体塗布部における最初に前記液体を保持した部分が、前記液体が前記被塗布媒体との接触部分に到達するタイミングで、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる、
請求項
6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記液体塗布部の回転方向における、前記被塗布媒体との接触部分よりも下流側で前記液体塗布部と接触して前記液体塗布部に保持された前記液体を清掃する清掃部材を備え、
前記清掃部材は、前記液体塗布部と接触/離間可能に構成され、
前記制御部は、前記液体塗布部との接触部分に前記液体塗布部に保持された液体が到達するタイミングに合わせて前記清掃部材を前記液体塗布部に接触させる、
請求項1~
7の何れか1項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記液体塗布部における最初に前記液体を保持した部分が、前記液体が前記被塗布媒体との接触部分に到達するタイミング以降で、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる、
請求項
8に記載の塗布装置。
【請求項10】
記録媒体に画像を転写する被塗布媒体に液体を塗布する塗布装置と、
前記塗布装置により液体の塗布された前記被塗布媒体上に画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置であって、
前記塗布装置は、
液体が塗布される被塗布媒体に対して接触/離間可能に構成され、前記被塗布媒体に前記液体を塗布する液体塗布部と、
前記液体塗布部に対して接触/離間可能に構成され、前記液体塗布部における前記液体の量を調整する調整部と、
前記被塗布媒体に前記液体を塗布する場合、前記被塗布媒体と前記液体塗布部との接触タイミングと、前記液体塗布部と前記調整部との接触タイミングとを異ならせる制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記調整部における前記液体塗布部との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記液体塗布部と前記調整部とを接触させ、
前記液体塗布部における前記被塗布媒体との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる、
画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記画像形成装置の立ち上げ時に、前記調整部と前記液体塗布部とを接触させ、かつ、前記液体塗布部と前記被塗布媒体とを接触させる、
請求項
10に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等において、インク等をメディアに付着させて印刷を行うが、低コストの観点から、メディアへのインク付着量を減らすと、メディアにおけるインクの隠蔽率が低下する。そのため、例えばベタ画像を印刷した場合、メディアに形成された画像にムラが発生する。それに対して、インクをメディア上で広げることができれば隠蔽率の低下を抑制できるが、インクを広げるためにインク粘度を下げるとメディア上では広がるものの、浸透ムラによるにじみが発生する。
【0003】
そこで、コート層(液体)を被塗布媒体に塗布して、上記の問題の発生を抑制する方法が知られている。例えば、インクをメディアに直接印字する方式では、メディア(被塗布媒体)にコート層を塗布することでプレコーティングを行う。これにより、ドットのにじみを防止しつつ、ドットの径を拡大する方法が知られている。
【0004】
また、インクを中間転写ベルト(被塗布媒体)に付着させる方式では、中間転写ベルト上にインクに不溶で表面張力が大きいコート層を形成する。これにより、インクの着弾時におけるインクの濡れ広がりを確保しつつ、メディアへの転写時においてコート層によってインクを転写しやすくすることで転写率を向上させる方法が知られている。
【0005】
上記のような液体を被塗布媒体に塗布する装置として、例えば特許文献1には、供給ローラーを介して液体を塗布ローラーに供給して、当該塗布ローラーで圧胴上の被塗布媒体に液体を塗布する構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、被塗布媒体に液体を塗布する塗布ローラーと、塗布ローラーに当接して塗布ローラーにおける液体保持空間に液体を保持させるための保持部材とを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-194331号公報
【文献】特開2007-000778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、画像形成装置の立ち上げの際には、被塗布媒体に液体を塗布する液体塗布部に液体が供給されていない状態であるので、液体がない状態で被塗布媒体(被塗布媒体を搬送する搬送部材)と液体塗布部とが駆動することとなる。そのため、摩擦の影響により、液体塗布部および被塗布媒体(被塗布媒体を搬送する搬送部材)が摩耗して劣化しやすくなり、ひいては画像形成に影響を与えたり、部品の寿命が短くなるという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、摩擦の影響に起因して液体塗布部に関連する部品が摩耗して劣化することを抑制することが可能な塗布装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る塗布装置は、
液体が塗布される被塗布媒体であって、記録媒体に画像を転写する被塗布媒体に対して接触/離間可能に構成され、前記被塗布媒体に前記液体を塗布する液体塗布部と、
前記液体塗布部に対して接触/離間可能に構成され、前記液体塗布部における前記液体の量を調整する調整部と、
前記被塗布媒体に前記液体を塗布する場合、前記被塗布媒体と前記液体塗布部との接触タイミングと、前記液体塗布部と前記調整部との接触タイミングとを異ならせる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記調整部における前記液体塗布部との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記液体塗布部と前記調整部とを接触させ、前記液体塗布部における前記被塗布媒体との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる。
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体に画像を転写する被塗布媒体に液体を塗布する塗布装置と、
前記塗布装置により液体の塗布された前記被塗布媒体上に画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置であって、
前記塗布装置は、
液体が塗布される被塗布媒体に対して接触/離間可能に構成され、前記被塗布媒体に前記液体を塗布する液体塗布部と、
前記液体塗布部に対して接触/離間可能に構成され、前記液体塗布部における前記液体の量を調整する調整部と、
前記被塗布媒体に前記液体を塗布する場合、前記被塗布媒体と前記液体塗布部との接触タイミングと、前記液体塗布部と前記調整部との接触タイミングとを異ならせる制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記調整部における前記液体塗布部との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記液体塗布部と前記調整部とを接触させ、前記液体塗布部における前記被塗布媒体との接触部分に前記液体を介在させた状態で、前記被塗布媒体と前記液体塗布部とを接触させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、摩擦の影響に起因して液体塗布部に関連する部品が摩耗して劣化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
【
図3】塗布部における移動制御について説明するための図である。
【
図4】塗布部における移動制御について説明するための図である。
【
図5】塗布部における移動制御について説明するための図である。
【
図6】塗布部における移動制御について説明するための図である。
【
図7】変形例に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
【0015】
図1に示すように、画像形成装置1は、インクジェット方式を利用した中間転写型のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、インク吐出部10と、中間転写部20と、用紙搬送部30と、第1光照射部40と、第2光照射部50と、クリーニング部60と、塗布部100と、制御部200(
図2参照)とを有する。塗布部100は、本発明の「塗布装置」に対応する。
【0016】
図2に示すように、制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロック等の動作を集中制御する。このとき、記憶部(不図示)に格納されている各種データが参照される。記憶部(不図示)は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0017】
図1に示すように、インク吐出部10は、インクジェットヘッド11Y,11C,11M,11Kを備え、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のインクを、中間転写部20に吐出してインクに基づく画像を形成する。なお、インクジェットヘッド11Y,11C,11M,11Kは、同様の構成を有するため、以下の説明では、便宜上、Y、M、C、Kを省略して示すこととする。インク吐出部10は、本発明の「画像形成部」に対応する。
【0018】
中間転写部20は、被塗布媒体の一例としての中間転写ベルト21と、3つの支持ローラー22,23,24とを有する。中間転写ベルト21は無端状ベルトで構成され、3つの支持ローラー22,23,24に逆三角形状に張架される。中間転写ベルト21は、例えば、フッ素樹脂等の耐薬品性の高い材料から構成される表層と、ポリイミド等の樹脂材料から構成される基層と、シリコンゴム等から構成される弾性層とを有する。
【0019】
3つの支持ローラー22,23,24のうち、少なくとも1つのローラーは、駆動ローラーであり、制御部200の制御の下、駆動する。これにより、中間転写ベルト21がA方向(
図1における時計回り方向)に回転する。
【0020】
中間転写ベルト21における、逆三角形状の左右の頂点部分に位置する支持ローラー22,24に張架された部分は、インクジェットヘッド11から吐出されたインクの着弾面となっている。中間転写ベルト21における、逆三角形状の下側の頂点部分に位置する支持ローラー23は、中間転写ベルト21を用紙搬送部30に向けて所定のニップ圧により加圧する加圧ローラーである。
【0021】
用紙搬送部30は、金属ドラムで構成され、支持ローラー23に加圧されることで、転写ニップを形成する。用紙搬送部30は、記録媒体Sの先端を固定する爪(不図示)を有している。用紙搬送部30は、制御部200の制御の下、当該爪に記録媒体Sの先端を固定し、
図1における反時計回り方向に回転することで、記録媒体Sを転写ニップに搬送する。
【0022】
第1光照射部40は、インク吐出部10の下流側における中間転写ベルト21におけるインクの着弾面に対向している。第1光照射部40は、中間転写ベルト21上に形成された画像にUV(Ultra Violet)光を照射して、当該画像をプレ硬化させる。
【0023】
第2光照射部50は、用紙搬送部30における転写ニップの下流側の部分に対向しており、記録媒体S上の画像にUV光を照射して、当該画像を本硬化させる。
【0024】
インクジェットヘッド11により中間転写ベルト21の表面に形成された画像は、中間転写ベルト21が回転することにより、第1光照射部40によりプレ硬化され、支持ローラー23と用紙搬送部30との転写ニップに搬送される。そして、転写ニップに搬送された画像は、用紙搬送部30により搬送される記録媒体Sに転写される。記録媒体Sに転写された画像は、第2光照射部50により本硬化される。
【0025】
クリーニング部60は、転写ニップよりも下流側に位置し、制御部200の制御の下、中間転写ベルト21に形成された画像である転写残画像等を除去する。
【0026】
塗布部100は、中間転写ベルト21に液体を塗布する部分であり、アニロクスローラー110と、液体貯留部120と、ブレード130と、コーティングローラー140と、清掃部材150とを有する。
【0027】
液体は、例えば、インクに不溶で表面張力が比較的大きい成分を有する液体である。なお、液体は、上記に限定されず、液体の用途に応じて適宜変更可能である。
【0028】
アニロクスローラー110は、例えば、金属で構成されており、コーティングローラー140における液体の量を調整(計量)するための回転可能なローラー部材である。アニロクスローラー110は、本発明の「調整部」に対応する。
【0029】
図3および
図4に示すように、アニロクスローラー110は、液体W1を保持可能であり、図示しない公知の移動機構により、コーティングローラー140に対して接触/離間可能に構成されている。
【0030】
液体貯留部120は、アニロクスローラー110に供給する液体Wを貯留する部分であり、図示しない公知の移動機構によりアニロクスローラー110に対して移動可能に構成されている。液体貯留部120にアニロクスローラー110が浸かる位置に液体貯留部120が位置する場合、液体貯留部120の液体Wが、アニロクスローラー110に供給される。
【0031】
アニロクスローラー110は、液体貯留部120に浸かることで液体W1を保持し、回転することで保持した液体W1をコーティングローラー140との接触部分に対応する位置まで搬送する。この接触部分に対応する位置まで液体W1が移動すると、制御部200の制御の下、アニロクスローラー110は、コーティングローラー140に接触する位置に移動する。これにより、アニロクスローラー110からコーティングローラー140に液体W1が供給される。
【0032】
ブレード130は、アニロクスローラー110が液体貯留部120で保持した液体W1の量を一定量にする部材である。ブレード130は、アニロクスローラー110の回転方向における液体貯留部120よりも下流側で、かつ、コーティングローラー140よりも上流側でアニロクスローラー110に接触して、アニロクスローラー110の表面に保持された液体W1を掻き落とす。ブレード130により、ブレード130よりも下流側の液体W1の厚みが、ブレード130よりも上流側の液体W1の厚みよりも薄くなっている。
【0033】
コーティングローラー140は、例えば、ゴム等の弾性部材で構成されており、中間転写ベルト21に液体を塗布するための回転可能なローラー部材である。コーティングローラー140は、本発明の「液体塗布部」に対応する。
【0034】
コーティングローラー140は、液体W2を保持可能であり、図示しない公知の移動機構により、中間転写ベルト21に対して接触/離間可能に構成されている。
【0035】
図5および
図6に示すように、コーティングローラー140は、アニロクスローラー110との接触部分における液体W2を保持し、回転することで保持した液体W2を中間転写ベルト21との接触部分に対応する位置まで搬送する。この接触部分に対応する位置まで液体W2が移動すると、制御部200の制御の下、コーティングローラー140は、中間転写ベルト21に接触する位置に移動する。これにより、コーティングローラー140が保持する液体W2が中間転写ベルト21に塗布される。
【0036】
清掃部材150は、例えば、ブラシであり、コーティングローラー140の回転方向における、中間転写ベルト21との接触部分よりも下流側でコーティングローラー140と接触してコーティングローラー140に保持された液体W2を清掃する。
【0037】
このように清掃部材150が存在することにより、中間転写ベルト21に塗布されずにコーティングローラー140上に残留した液体W2を清掃部材150により除去することができる。その結果、残留した液体W2がコーティングローラー140上で蒸発することを抑制することができる。
【0038】
制御部200は、例えば、画像形成装置1の立ち上げ時に、アニロクスローラー110およびコーティングローラー140の移動を制御することで、塗布部100における液体の塗布を制御する。画像形成装置1の立ち上げ時とは、例えば画像形成装置1の電源をONにして起動した時や、画像形成装置1の駆動を開始した時等である。
【0039】
具体的には、制御部200は、中間転写ベルト21に液体を塗布する場合、アニロクスローラー110、コーティングローラー140および中間転写ベルト21のそれぞれが離間した状態から、アニロクスローラー110とコーティングローラー140とを接触させ、かつ、コーティングローラー140と中間転写ベルト21とを接触させる。この場合、制御部200は、中間転写ベルト21とコーティングローラー140との接触タイミングと、コーティングローラー140とアニロクスローラー110との接触タイミングとを異ならせる。
【0040】
制御部200は、中間転写ベルト21とコーティングローラー140とを接触させる前に、コーティングローラー140とアニロクスローラー110とを接触させる。
【0041】
より詳細には、まず、
図3に示すように、アニロクスローラー110、コーティングローラー140および中間転写ベルト21のそれぞれが離間した状態から、アニロクスローラー110が回転駆動して、液体貯留部120内の液体Wを保持して、コーティングローラー140との接触部分に対応する位置まで搬送する。
【0042】
図4に示すように、制御部200は、アニロクスローラー110とコーティングローラー140とを接触させる。
【0043】
次に、
図5に示すように、コーティングローラー140が回転駆動して、アニロクスローラー110から供給された液体を保持して、中間転写ベルト21との接触部分に対応する位置まで搬送する。
【0044】
そして、
図6に示すように、制御部200は、コーティングローラー140と中間転写ベルト21とを接触させる。
【0045】
例えば、コーティングローラーと中間転写ベルトとが常時接触している装置では、装置の立ち上げの際等、コーティングローラーに液体が供給されてない状態であるため、液体がない状態で中間転写ベルトとコーティングローラーとが駆動することとなる。そのため、摩擦の影響により、コーティングローラーおよび中間転写ベルトが摩耗して劣化しやすくなり、ひいては画像形成装置における画像形成に影響を与えたり、部品の寿命が短くなるという問題が生じる。
【0046】
それに対し、本実施の形態では、コーティングローラー140と中間転写ベルト21とが接触する前のタイミングで、コーティングローラー140にアニロクスローラー110から液体が供給されることとなる。これにより、コーティングローラー140と中間転写ベルト21とが接触する際に、コーティングローラー140と中間転写ベルト21との接触部分に液体を介在させやすくすることができる。
【0047】
その結果、摩擦の影響により、コーティングローラー140および中間転写ベルト21が摩耗して劣化することを抑制し、ひいては画像形成装置1における画像形成に影響を与えたり、部品の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0048】
また、
図3および
図4に示すように、制御部200は、アニロクスローラー110におけるコーティングローラー140との接触部分に液体W1を介在させた状態で、コーティングローラー140とアニロクスローラー110とを接触させる。
【0049】
具体的には、制御部200は、アニロクスローラー110における最初に液体W1を保持した部分がコーティングローラー140との接触部分に到達するタイミング以降にコーティングローラー140とアニロクスローラー110とを接触させる。
【0050】
最初に液体を保持した部分は、液体を保持していない状態のアニロクスローラー110またはコーティングローラー140における、液体の供給が開始された部分である。
【0051】
このようにすることで、コーティングローラー140とアニロクスローラー110とが接触する際に、アニロクスローラー110におけるコーティングローラー140との接触部分に液体W1が確実に介在していることとなる。
【0052】
その結果、当該接触部分に液体W1がない状態でアニロクスローラー110とコーティングローラー140とが接触して、互いに回転駆動することを防止することができるので、摩擦の影響で、コーティングローラー140とアニロクスローラー110とが摩耗して劣化することを抑制することができる。
【0053】
また、
図5および
図6に示すように、制御部200は、コーティングローラー140における中間転写ベルト21との接触部分に液体W2を介在させた状態で、中間転写ベルト21とコーティングローラー140とを接触させる。
【0054】
具体的には、制御部200は、コーティングローラー140における最初に液体W2を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分に到達するタイミングで中間転写ベルト21とコーティングローラー140とを接触させる。
【0055】
このようにすることで、中間転写ベルト21とコーティングローラー140とが接触する際に、コーティングローラー140における中間転写ベルト21との接触部分に液体W2が確実に介在していることとなる。
【0056】
その結果、当該接触部分に液体W2がない状態でコーティングローラー140と中間転写ベルト21とが接触して、互いに回転駆動することを防止することができるので、摩擦の影響で、中間転写ベルト21とコーティングローラー140とが摩耗して劣化することを抑制することができる。
【0057】
また、コーティングローラー140における最初に液体W2を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分まで中間転写ベルト21との接触部分まで到達するタイミングで中間転写ベルト21とコーティングローラー140とを接触させるので、コーティングローラー140における最初に液体W2を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分を通り越すことを抑制することができる。
【0058】
例えば、コーティングローラーに十分に液体を保持させた後の任意のタイミングで、コーティングローラーと中間転写ベルトとを接触させると、コーティングローラーが液体を保持した状態でアニロクスローラーからコーティングローラーに液体が供給されることとなる。つまり、コーティングローラーに過剰に液体が供給され続けることとなる。
【0059】
そのため、中間転写ベルトに液体が塗布されるまでの間に、コーティングローラー上の液体の一部が蒸発し、その液体が蒸発した部分に液体がさらに供給される。そうすると、当該部分における液体の濃度の上昇が発生して、当該部分によって中間転写ベルトに液体が塗布されることに起因する中間転写ベルトへの塗布異常が発生するおそれがある。
【0060】
それに対し、本実施の形態では、コーティングローラー140における最初に液体W2を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分を通り越さずに、当該部分の液体W2が中間転写ベルト21に塗布されるので、コーティングローラー140上の液体がある程度減らされる。
【0061】
そのため、コーティングローラー140における液体が減らされた部分に、再度アニロクスローラー110から液体W1が供給されても、当該部分における液体の量が過剰なものとならない。
【0062】
すなわち、コーティングローラー140に過剰に液体が供給されることを防止することができる。その結果、コーティングローラー140上の液体の濃度の上昇を防止し、ひいては、中間転写ベルト21への塗布異常が発生することを抑制することができる。
【0063】
以上のように構成された本実施の形態によれば、各部品の接触タイミングを異ならせることで、塗布部100における駆動開始時のアニロクスローラー110、コーティングローラー140および中間転写ベルト21が摩耗して劣化することを抑制することができる。
【0064】
これにより、画像形成装置1における画像形成に影響を与えたり、部品の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0065】
また、液体が、各部品の接触部分に介在した状態で、各部品のそれぞれが接触するので、液体がないことによる摩擦に起因した各部品が摩耗して劣化することを確実に防止することができる。
【0066】
また、コーティングローラー140における最初に液体を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分まで中間転写ベルト21との接触部分に到達するタイミングで中間転写ベルト21とコーティングローラー140とを接触させる。
【0067】
その結果、コーティングローラー140における最初に液体を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分を通り越さずに、当該部分の液体が中間転写ベルト21に塗布されるので、コーティングローラー140に過剰に液体が供給されることを防止することができる。
【0068】
すなわち、本実施の形態では、塗布部100の駆動開始時における各部品の摩擦による摩耗、劣化を抑制し、かつ、コーティングローラー140における液体の蒸発を抑制することができる。その結果、インク吐出部10からのインクを中間転写ベルト21上で適切な大きさに広げることができ、ひいては画像品質を向上させることができる。
【0069】
なお、上記実施の形態では、中間転写型の画像形成装置1を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図7に示すように、直接転写型の画像形成装置2であっても良い。
【0070】
画像形成装置2は、インク吐出部10と、用紙搬送部70と、光照射部80と、塗布部100と、制御部200とを有する。インク吐出部10および制御部200は、
図1に示す画像形成装置1と略同様である。
【0071】
用紙搬送部70は、金属ドラムで構成された第1搬送部材71、第2搬送部材72および第3搬送部材73を有する。第1搬送部材71は、第2搬送部材72と接触しており、第2搬送部材72との接触部分に記録媒体Sを搬送する。第1搬送部材71と第2搬送部材72との接触部分に搬送された記録媒体Sは、当該接触部分で第1搬送部材71から第2搬送部材72に受け渡される。
【0072】
第2搬送部材72は、第1搬送部材71および第3搬送部材73と接触しており、第1搬送部材71から受け渡された記録媒体Sを第3搬送部材73との接触部分に搬送する。第2搬送部材72と第3搬送部材73との接触部分に搬送された記録媒体Sは、当該接触部分で第2搬送部材72から第3搬送部材73に受け渡される。
【0073】
第3搬送部材73は、第2搬送部材72と接触しており、第2搬送部材72から受け渡された記録媒体Sを搬送する。また、インク吐出部10は、第3搬送部材73と対向しており、第3搬送部材73によって搬送される記録媒体Sにインクを吐出してインクに基づく画像を形成する。
【0074】
光照射部80は、インク吐出部10の下流側における第3搬送部材73におけるインクの着弾面に対向している。光照射部80は、記録媒体S上に形成された画像にUV光を照射して、当該画像を硬化させる。
【0075】
塗布部100は、記録媒体S(被塗布媒体)に液体を塗布する部分であり、第1搬送部材71に対応する位置に配置されている。塗布部100は、
図1に示す構成と同様に、アニロクスローラー110と、液体貯留部120と、ブレード130と、コーティングローラー140と、清掃部材150とを有する。
【0076】
この構成におけるコーティングローラー140は、記録媒体Sに液体を塗布する。より詳細には、この構成におけるコーティングローラー140は、第1搬送部材71(第1搬送部材71を搬送される記録媒体S)と接触/離間可能に構成され、記録媒体Sと接触することで、記録媒体Sに液体を塗布する。アニロクスローラー110およびコーティングローラー140および記録媒体S(被塗布媒体)の接触タイミングに係る制御は、
図1に示す構成と同様である。
【0077】
このような構成であっても、各部品の接触タイミングを異ならせることで、塗布部100における駆動開始時のアニロクスローラー110、コーティングローラー140および記録媒体Sを搬送する第1搬送部材71(コーティングローラー140に関連する部品)が摩耗して劣化することを抑制することができる。
【0078】
これにより、画像形成装置2における画像形成に影響を与えたり、部品の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0079】
また、上記実施の形態では、清掃部材150はコーティングローラー140に常時接触していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、清掃部材150は、コーティングローラー140と接触/離間可能に構成されていても良い。
【0080】
この場合、清掃部材150は、公知の移動機構により、移動可能に構成される。制御部200は、コーティングローラー140における、清掃部材150との接触部分に対応する位置に、液体が到達するタイミングに合わせて清掃部材150をコーティングローラー140に接触させる。
【0081】
このようにすることで、液体が存在しない状態で、コーティングローラー140と清掃部材150とが接触する時間を短縮することができるので、コーティングローラー140と清掃部材150とが摩耗することを抑制することができる。
【0082】
また、上記実施の形態では、清掃部材150が設けられていたが、本発明はこれに限定されず、清掃部材が設けられていなくても良い。
【0083】
また、上記実施の形態では、液体貯留部120がアニロクスローラー110に対して移動可能な構成であったが、本発明はこれに限定されず、液体貯留部がアニロクスローラーに対して移動しない構成であっても良い。
【0084】
また、上記実施の形態では、液体貯留部120によってアニロクスローラー110に液体を供給していたが、本発明はこれに限定されず、他の供給部材によってアニロクスローラーに液体を供給しても良い。
【0085】
また、上記実施の形態では、調整部としてアニロクスローラー110を例示したが、本発明はこれに限定されず、液体塗布部(コーティングローラー)の液体の量を調整可能なブレードのような部材であっても良い。
【0086】
また、上記実施の形態では、コーティングローラー140における最初に液体W2を保持した部分が、中間転写ベルト21との接触部分に到達するタイミングで中間転写ベルト21とコーティングローラー140とを接触させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部がコーティングローラーにおける最初に液体を保持した部分が、被塗布媒体との接触部分に到達するタイミング以降で被塗布媒体とコーティングローラーとを接触させても良い。
【0087】
この構成の場合、被塗布媒体とコーティングローラーとの接触部分を液体が通り越す場合があるので、コーティングローラー上の液体の蒸発防止の観点から、上記の清掃部材が設けられていることが好ましい。また、コーティングローラーと清掃部材との摩擦の影響を防止する観点から、上記の清掃部材がコーティングローラーに対して接触/離間可能に構成されていることがさらに好ましい。
【0088】
また、上記実施の形態では、画像形成装置に塗布部(塗布装置)が設けられていたが、本発明はこれに限定されず、塗布部を搭載可能な装置である限り、画像形成装置以外の装置に塗布部が設けられていても良い。
【0089】
また、上記実施の形態では、画像形成装置の立ち上げ時に、アニロクスローラーとコーティングローラーとを接触させ、かつ、コーティングローラーと被塗布媒体とを接触させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、印刷ジョブの開始時等、適宜なタイミングで、アニロクスローラーとコーティングローラーとを接触させ、かつ、コーティングローラーと被塗布媒体とを接触させるようにしても良い。
【0090】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置
2 画像形成装置
10 インク吐出部
11 インクジェットヘッド
20 中間転写部
21 中間転写ベルト
22 支持ローラー
23 支持ローラー
24 支持ローラー
30 用紙搬送部
40 第1光照射部
50 第2光照射部
60 クリーニング部
70 用紙搬送部
71 第1搬送部材
72 第2搬送部材
73 第3搬送部材
80 光照射部
100 塗布部
110 アニロクスローラー
120 液体貯留部
130 ブレード
140 コーティングローラー
150 清掃部材
S 記録媒体