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特許7577942脚式移動ロボット、脚制御方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】脚式移動ロボット、脚制御方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B25J5/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020121757
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018562
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】北川 丈晴
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100904(JP,A)
【文献】特開2005-153038(JP,A)
【文献】米国特許第09833903(US,B1)
【文献】特開2005-177960(JP,A)
【文献】特開2002-166062(JP,A)
【文献】特開2004-025327(JP,A)
【文献】米国特許第09381961(US,B1)
【文献】国際公開第2003/068455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-15/08
B62D 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に移動可能な複数の脚と、
前記脚の先端部分から、前記前後方向と交差する横方向を少なくとも含む複数の方向のそれぞれに突出し、かつ、前記脚が移動する移動面に接することが可能な複数の突出部と、
前記突出部のそれぞれを、前記脚における前記移動面に接する足裏に対し上下させる方向に変位させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御することによって前記突出部の動きを制御する制御装置と
を備え、
前記脚の先端部分における前記移動面に接する足裏部は、移動面側に開口している空間部を形成する凹部形状を有し、前記空間部は、板面と当該板面に立設している周壁部とにより囲まれている空間部である脚式移動ロボット。
【請求項2】
前記制御装置は、前記脚が前記移動面から離れる方向に移動した後に前記移動面に着地する際には当該着地する前記脚の前記突出部に前記駆動装置から力が加えられていない状態となるように当該駆動装置を制御し、前記脚の着地により前記突出部が前記移動面の形状に応じて倣った後に前記突出部の動きをロックすべく前記駆動装置を制御する請求項1に記載の脚式移動ロボット。
【請求項3】
前記制御装置は、前記脚が前記移動面から離れる方向に移動する際に当該脚の前記突出部が前記移動面を押圧すべく前記駆動装置を制御する請求項1又は請求項2に記載の脚式移動ロボット。
【請求項4】
前記突出部は、前記移動面に面接触する面状の部位を有する請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の脚式移動ロボット。
【請求項5】
前記脚は、二本であり、当該二本の脚によって、二足歩行する請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の脚式移動ロボット。
【請求項6】
前後方向に移動可能な複数の脚と、前記脚の先端部分から、前記前後方向と交差する横方向を少なくとも含む複数の方向のそれぞれに突出し、かつ、前記脚が移動する移動面に接することが可能な複数の突出部と、前記突出部のそれぞれを、前記脚における前記移動面に接する足裏に対し上下させる方向に変位させる駆動装置と、前記駆動装置を制御することによって前記突出部の動きを制御する制御装置とを備え、前記脚の先端部分における前記移動面に接する足裏部は、移動面側に開口している空間部を形成する凹部形状を有し、前記空間部は、板面と当該板面に立設している周壁部とにより囲まれている空間部である脚式移動ロボットの前記制御装置によって、
前記脚が前記移動面から離れる方向に移動した後に前記移動面に着地する際には当該着地する前記脚の前記突出部に前記駆動装置から力が加えられていない状態となるように当該駆動装置を制御し、
前記脚の着地により前記突出部が前記移動面の形状に応じて倣った後に前記突出部の動きをロックすべく前記駆動装置を制御する脚制御方法。
【請求項7】
前後方向に移動可能な複数の脚と、前記脚の先端部分から、前記前後方向と交差する横方向を少なくとも含む複数の方向のそれぞれに突出し、かつ、前記脚が移動する移動面に接することが可能な複数の突出部と、前記突出部のそれぞれを、前記脚における前記移動面に接する足裏に対し上下させる方向に変位させる駆動装置と、前記駆動装置を制御することによって前記突出部の動きを制御する制御装置とを備え、前記脚の先端部分における前記移動面に接する足裏部は、移動面側に開口している空間部を形成する凹部形状を有し、前記空間部は、板面と当該板面に立設している周壁部とにより囲まれている空間部である脚式移動ロボットの前記制御装置を構成するコンピュータに、
前記脚が前記移動面から離れる方向に移動した後に前記移動面に着地する際には当該着地する前記脚の前記突出部に前記駆動装置から力が加えられていない状態となるように当該駆動装置を制御する処理と、
前記脚の着地により前記突出部が前記移動面の形状に応じて倣った後に前記突出部の動きをロックすべく前記駆動装置を制御する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚式移動ロボットの脚に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野で二足歩行ロボットなどの脚式移動ロボットの活用が進められている。脚式移動ロボットの課題の一つとして、安定した移動を実現するという課題がある。特許文献1には、歩行の安定性を高めるべく、二足歩行ロボットの脚の足底に取り付けられる足部支持機構が示されている。この足部支持機構は、複数の可動爪部を備えている。各可動爪部の先端部分は、二足歩行ロボットが歩行する歩行面に接地する接地部と成しており、接地した際に歩行面の凹凸形状に応じて上下方向に移動することにより、歩行面の凹凸に起因した足の傾きを抑制する。これにより、歩行面の凹凸に起因してロボットが傾いて転倒する事態が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-93822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1を始め、脚式移動ロボットの移動の安定性を高めるべく、様々な技術が提案されている。脚式移動ロボットの移動の安定性を高めようとすると、ロボットの構造や動作制御が複雑化する傾向にある。しかしながら、脚式移動ロボットの汎用性を考慮すると、ロボットの構造や動作制御は簡素であることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、簡単な構造と動作制御でもって脚式移動ロボットの移動の安定性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る脚式移動ロボットは、その一態様として、
前後方向に移動可能な複数の脚と、
前記脚の先端部分から、前記前後方向と交差する横方向を少なくとも含む複数の方向のそれぞれに突出し、かつ、前記脚が移動する移動面に接することが可能な複数の突出部と、
前記突出部のそれぞれを、前記脚における前記移動面に接する足裏に対し上下させる方向に変位させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御することによって前記突出部の動きを制御する制御装置と
を備える。
【0007】
本発明に係る脚制御方法は、その一態様として、
前後方向に移動可能な複数の脚と、前記脚の先端部分から、前記前後方向と交差する横方向を少なくとも含む複数の方向のそれぞれに突出し、かつ、前記脚が移動する移動面に接することが可能な複数の突出部と、前記突出部のそれぞれを、前記脚における前記移動面に接する足裏に対し上下させる方向に変位させる駆動装置と、前記駆動装置を制御することによって前記突出部の動きを制御する制御装置とを備える脚式移動ロボットの前記制御装置によって、
前記脚が前記移動面から離れる方向に移動した後に前記移動面に着地する際には当該着地する前記脚の前記突出部に前記駆動装置から力が加えられていない状態となるように当該駆動装置を制御し、
前記脚の着地により前記突出部が前記移動面の形状に応じて倣った後に前記突出部の動きをロックすべく前記駆動装置を制御する。
【0008】
本発明に係るコンピュータプログラムは、その一態様として、
前後方向に移動可能な複数の脚と、前記脚の先端部分から、前記前後方向と交差する横方向を少なくとも含む複数の方向のそれぞれに突出し、かつ、前記脚が移動する移動面に接することが可能な複数の突出部と、前記突出部のそれぞれを、前記脚における前記移動面に接する足裏に対し上下させる方向に変位させる駆動装置と、前記駆動装置を制御することによって前記突出部の動きを制御する制御装置とを備える脚式移動ロボットの前記制御装置を構成するコンピュータに、
前記脚が前記移動面から離れる方向に移動した後に前記移動面に着地する際には当該着地する前記脚の前記突出部に前記駆動装置から力が加えられていない状態となるように当該駆動装置を制御する処理と、
前記脚の着地により前記突出部が前記移動面の形状に応じて倣った後に前記突出部の動きをロックすべく前記駆動装置を制御する処理と
を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構造と動作制御でもって脚式移動ロボットの移動の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第1実施形態の脚式移動ロボットである二足歩行ロボットの脚の構成を説明する模式的な正面図である。
図2図1に表される二足歩行ロボットの脚の模式的な側面図である。
図3図1に表される二足歩行ロボットの脚の足裏を説明する模式的な図である。
図4図3のA-A部分に相当する脚の先端部分の模式的な断面図である。
図5】第1実施形態における脚の突出部である指部の動きを制御する制御装置の制御構成を説明するブロック図である。
図6】第1実施形態における制御装置の指部の制御動作の一例を説明するフローチャートである。
図7】第1実施形態における脚が着地した際の脚の先端部分の一例を説明する模式的な断面図である。
図8】第1実施形態における脚が着地した際の脚の先端部分の別の例を説明する模式的な断面図である。
図9図8における脚の先端部分に対する比較例を表す図である。
図10】本発明に係る第2実施形態における制御装置の指部の制御動作の一例を説明するフローチャートである。
図11】本発明に係るその他の実施形態の一つを説明する図である。
図12】さらに、本発明に係るその他の実施形態の一つを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1図4は、それぞれ、本発明に係る第1実施形態の脚式移動ロボットである二足歩行ロボットが備える脚の先端部分の構成を説明する図である。すなわち、図1は、第1実施形態の二足歩行ロボット1における脚2,3の模式的な正面図である。図2は、図1における右側から二足歩行ロボット1を見た場合の脚3の模式的な側面図である。図3は、脚3の先端部分の裏側(足裏)を模式的に表す図である。図4は、図3におけるA-A部分に相当する脚3の先端部分(足部分)の模式的な断面図である。なお、図1および図2に表されている脚2,3は、当該脚2,3の全体ではなく、人間で言えば膝下部分に相当する部分である。また、脚2の先端部分は脚3の先端部分と同様な構成を有することから、ここでは、図3図4に相当する脚2の先端部分の図は省略される。
【0013】
第1実施形態の二足歩行ロボット1は、図1図4に表されるような二本の脚2,3を備える。さらに、二足歩行ロボット1は、脚2,3と連接する胴体部や、頭部や、腕などを含む上半身を備えるが、ここでは、その上半身の構成は限定されず、その説明は省略される。
【0014】
脚2,3のそれぞれの先端部分(つまり、胴体部と連接する側の端部とは反対側の端部)は足部4と成している。また、脚2,3は、人間の足首や脛や膝や腿に相当する部位を有し、さらに、足首や膝などの関節に相当する部位を動かす関節駆動機構が備えられている。第1実施形態では、脚2,3における足部4以外の構成は、二足歩行ロボット1の用途に応じた上半身の構成などを考慮して適宜設計されるものであり、ここでは、その説明は省略される。
【0015】
足部4は、本体部5と、足裏部6と、突出部である指部10A~10Dと、駆動装置12と、支持部材13とを備えている。
【0016】
本体部5は、脚2,3の先端部分を構成する足部4の主となる部位と成し、足裏部6は、二足歩行ロボット1が移動面である歩行面を移動する際に接地する接地側となる本体部5の裏側部分に備えられている。足裏部6は、板部材(例えば金属板)の周縁部が板部材の板面7に対し直交する下向き(歩行面に向かう方向)に折り曲げられ周壁部8と成している態様を有している。この足裏部6における周壁部8の頂部は、歩行面に接地する接地部として機能する。なお、ここでの直交とは、直交と見なせる場合も含み、板面7に対する周壁部8の折り曲げ角度は、90度を含む例えば65度~115度の角度範囲内の角度となっている。
【0017】
指部10A~10Dは、それぞれ、駆動装置12と支持部材13を介して本体部5(足裏部6)に接続されている。指部10A~10Dは、それぞれ、本体部5から見た場合における前と後と内(脚2,3間の領域)と外(内とは反対側の領域)とに向かう四方向に本体部5から突出するように設けられている。換言すれば、指部10A~10Dは、それぞれ、脚2,3の先端部分に設けられ、互いに異なる方向であって、かつ、歩行面に沿う方向に突出している態様を持つ。また、指部10A~10Dは、歩行する際に歩行面に向く部位が、面状と成している。以下、この面状の部位を指裏面とも称する。
【0018】
このような指部10A~10Dは、個別に対応する駆動装置12に接続され、支持部材13は、そのような駆動装置12のそれぞれを本体部5に支持固定している。なお、支持部材13は、駆動装置12を本体部5に支持固定することができれば、その構成は限定されず、ここでは、支持部材13の構成の説明は省略される。
【0019】
駆動装置12は、例えば、モータであり、対応する指部10A~10Dを、図4の点線に表されているように変位駆動させる。すなわち、第1実施形態では、足裏部6の周壁部8の頂部により足裏の基準となる足裏面S(図4参照)の位置が定まる。駆動装置12は、その足裏面Sに対し上下する方向に指部10A~10Dを変位駆動させる。
【0020】
二足歩行ロボット1は、さらに、駆動装置12の動作制御を行う制御装置20を備えている。図5は、制御装置20の機能構成を表すブロック図である。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ21と、記憶装置22とを備えている。記憶装置22は、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも称する)24や、プロセッサ21の処理に利用するデータなどを記憶する記憶媒体である。記憶装置には、磁気ディスク装置や半導体メモリなどの様々な種類があり、ここでは、何れの種類の記憶装置が記憶装置22として採用されてもよい。また、複数種の記憶装置が制御装置20に備えられていてもよく、ここでは、複数種の記憶装置が備えられる場合にはそれら記憶装置をまとめて記憶装置22として表すとする。
【0021】
プロセッサ21は、記憶装置22からプログラム24を読み出し当該プログラム24を実行することにより、プログラム24に基づいた機能を持つことができる。第1実施形態では、プロセッサ21は、機能部として、脚運び制御部25と、指制御部26とを備えている。脚運び制御部25は、人間の足首や膝や股の関節に相当する関節駆動機構の動きを制御することにより、歩行に係る脚2,3の動きである脚運びを制御する機能を備えている。ここでの脚運びに関係する制御手法は、脚2,3や上半身の構造や形状や重さなどの様々な事項を考慮して適宜に選択された手法であり、ここでは、その説明は省略される。
【0022】
指制御部26は、駆動装置12の動作を制御することにより、指部10A~10Dの動きを制御する機能を備えている。例えば、二足歩行ロボット1が歩行する際には、指制御部26は、脚運び制御部25の制御動作と連動して、指部10A~10Dの動きを制御する。
【0023】
図6は、制御装置20における二足歩行時の指部10A~10Dの動作制御の一例を表すフローチャートである。例えば、制御装置20の脚運び制御部25が、脚2,3のうちの一方(ここでは、脚2とする)を踏み出すために膝や股などの関節駆動機構の動作を制御することにより、脚2を上げたとする(ステップS101)。このとき、指制御部26は、その踏み出す脚2の足部4の全ての駆動装置(モータ)12を停止する(ステップS102)。これにより、脚2の指部10A~10Dは、駆動装置12から力が掛かってない状態(力が抜けたような状態)となり、重力により足裏面Sよりも下方向に下がる。
【0024】
その後、脚運び制御部25が、関節駆動機構の動作を制御することにより、脚2を踏み出し方向に下ろす(ステップS103)。そして、脚2が着地すると、指部10A~10Dは着地した地点の歩行面の形状に倣う。これにより、歩行面が凹凸のない平滑な面、あるいは、凹凸が小さい面である場合には、指部10A~10Dの指裏面は、図7の断面図に示されるように歩行面Hに面接触あるいは面接触に近い状態となる。また、歩行面Hに、図8の断面図に表されるような突起部Tが有る場合には、脚2が着地すると、指部10A~10Dの指裏面は、それぞれ、着地した地点の突起部Tの有無、突起部Tの高さや配置位置に応じて倣った状態となる。この場合には、指部10A~10Dの指裏面は、突起部Tの有無、突起部Tの高さや配置位置に応じて、歩行面Hと面接触しているような状態や、突起部Tの頂部と点接触しているような状態や、その端縁部が歩行面Hと線接触しているような状態となる。
【0025】
その後に、指制御部26は、脚2の足部4の全ての駆動装置12を稼動することにより、指部10A~10Dの動きをロックする、つまり、指に力が入った状態にする(ステップS104)。なお、指制御部26が駆動装置12を稼動するタイミングは、脚2,3の動きを検知するセンサの出力を利用して決定することも考えられるが、ここでは、センサを利用せずに決定している。例えば、脚2を踏み出すために上げた後の下ろす動作の開始時から脚2が着地するまでに要するおおよその時間は予め求まることから、この求めた時間に基づいて、脚2を下ろす動作を開始してから駆動装置12を稼動するまでの時間が設定される。指制御部26は、脚2を下ろし始めてからの経過時間がその設定された時間になったときに、駆動装置12を稼動する。
【0026】
然る後に、制御装置20が歩行を終了するか否かを判断し(ステップS105)、歩行を終了しない(歩行を継続する)場合には、他方の脚3を踏み出すべく、脚運び制御部25と指制御部26が、脚2から脚3に代えて、ステップS101以降の動作を繰り返す。
【0027】
第1実施形態の二足歩行ロボット1は、上記のように構成されている。つまり、二足歩行ロボット1は、複数の指部10A~10Dを備え、脚2,3が着地した際に指部10A~10Dのそれぞれが着地した地点の形状に倣うことができるように駆動装置12の動作を制御する構成を備えている。これにより、二足歩行ロボット1は、そのような指部10A~10Dを備えていない場合に比べて、歩行面Hが平滑あるいは凹凸が少ない場合はもちろんのこと、凹凸や突起があっても、脚2,3が着地した際の足部4と歩行面Hとの接触面積(接触点)を増加させることができる。図9は、足部4に指部10A~10Dが設けられていない場合の図8との比較例である。図8図9との比較からも分かるように、第1実施形態の二足歩行ロボット1は、着地した際の足部4と歩行面Hとの接触点を増加させることができる。
【0028】
また、指部10A~10Dは、二足歩行ロボット1の進行方向だけでなく、後退方向と、前後方向に交差する横方向とにも突出し、また、脚2,3が着地した後に駆動装置12を稼動させて指部10A~10Dの動きをロックする動作制御が行われる。
【0029】
第1実施形態の二足歩行ロボット1は、上記のような指部10A~10Dの構成とその動作制御とによって、指部10A~10Dが無い場合に比べて、二足歩行の安定性を高めることができる。しかも、その指部10A~10Dの動作制御は、脚2,3を上げた際に駆動装置12を停止し、脚2,3が着地した際に駆動装置12を稼動させるという如く、簡単な制御であり、制御動作の煩雑化を抑制することができる。
【0030】
さらに、指部10A~10Dをそれぞれ動作させる駆動装置12が足部4に備えられており、駆動装置12の重さにより二足歩行ロボット1の重心を下げていることも、二足歩行ロボット1の二足歩行の安定性を高める要因となっている。
【0031】
さらに、足部4には足裏部6が設けられ、足裏部6は、歩行面側に開口している凹部を持つ形状である。このため、歩行面における突起部の一部あるいは全部がその足裏部6の凹部空間内に収容されることにより、当該突起部に因る脚2,3の傾きが軽減され、二足歩行ロボット1の転倒が抑制される。
【0032】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態の脚式移動ロボットである二足歩行ロボットの構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0033】
第2実施形態の二足歩行ロボット1は、第1実施形態と同様の指部10A~10Dと駆動装置12を備える構成を持ち、制御装置20の指制御部26が、歩行する際に、次のように脚運び制御部25の制御動作と連動して指部10A~10Dの動作を制御する。図10は、第2実施形態における制御装置20の二足歩行時の指部10A~10Dの動作制御の一例を表すフローチャートである。
【0034】
第2実施形態では、制御装置20の指制御部26は、踏み出す脚(ここでは、脚2とする)の足部4の全ての駆動装置12を駆動させて、指部10A~10Dを一旦上げた後に下向きに移動させる。このとき、指制御部26は、指部10A~10Dの下向き移動により指部10A~10Dが歩行面を押圧するように駆動装置12を制御する。また、このような指制御部26の制御動作と共に、脚運び制御部25は、踏み出す脚2を上げるべく関節駆動機構を制御する(ステップS201)。これら脚運び制御部25と指制御部26の制御動作によって、脚2は、関節駆動機構による持ち上げる方向の力に、指部10A~10Dが歩行面を押圧したことによる歩行面からの反力も加わって、持ち上がることとなる。
【0035】
脚2が上げられた状態で、指制御部26は、指部10A~10Dの位置を予め定められた基準位置に移動するように駆動装置12を制御する。ここでは、指部10A~10Dの基準位置は、足部4における足裏部6の周壁部8の頂部により定まる足裏面Sに沿う位置である。そして、指制御部26は、駆動装置12を停止する(ステップS202)。
【0036】
その後、脚運び制御部25が関節駆動機構の動作を制御することにより、脚2を踏み出し方向に下ろす(ステップS203)。
【0037】
これにより脚2が着地する際に、指制御部26が、指部10A~10Dを上向きに移動するように駆動装置12を制御する。この指部10A~10Dの上向き移動により、歩行面に突起部が有った場合に、突起部から指部10A~10Dへの衝撃を緩和する。その後、指制御部26は、脚2の足部4の全ての駆動装置(モータ)12を停止する(ステップS204)。これにより、脚2の指部10A~10Dは、駆動装置12から力が掛かってない状態(力が抜けたような状態)となり、歩行面の形状に倣う。そして、指制御部26は、脚2の足部4の全ての駆動装置12を稼動することにより、指部10A~10Dの動きをロックする、つまり、指に力が入った状態にする(ステップS205)。
【0038】
然る後に、制御装置20が歩行を終了するか否かを判断し(ステップS206)、歩行を終了しない(歩行を継続する)場合には、他方の脚3を踏み出すべく、脚運び制御部25と指制御部26が、脚2から脚3に代えて、ステップS201以降の動作を繰り返す。
【0039】
なお、指制御部26が駆動装置12の停止と稼動を決定するタイミングは、脚2,3の動きを検知するセンサの出力を利用してもよいが、ここでは、センサの出力を利用せずに、第1実施形態と同様にタイミングを決定している。
【0040】
第2実施形態の二足歩行ロボット1における上記以外の構成は、第1実施形態の二足歩行ロボット1と同様である。
【0041】
第2実施形態の二足歩行ロボット1は、第1実施形態と同様に、指部10A~10Dを備えると共に、脚2,3が着地した際に指部10A~10Dが歩行面の形状に倣う制御構成を備えているので、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の二足歩行ロボット1は、踏み出す脚を上げる際に、指部10A~10Dによる歩行面からの反力を利用する構成を備えている。これにより、二足歩行ロボット1は、歩行時の脚2,3の動きを速めることができる。
【0042】
<その他の実施形態>
本発明は、第1と第2の実施形態に限定されず、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1と第2の実施形態では、指制御部26は、全ての指部10A~10Dの動作を同様に制御している。これに代えて、指制御部26は、指部10A~10Dを同じように動作させなくともよい。例えば、二足歩行ロボット1に傾きを検知するセンサが備えられている場合に、そのセンサの出力に基づいて二足歩行ロボット1が閾値以上に傾いていることを検知したとする。この場合には、指部10A~10Dのうち、その傾いている方向に対応する指部から歩行面に押圧力を加えるように、指制御部26が駆動装置12を制御してもよい。
【0043】
また、二足歩行ロボット1が、カメラを備え、さらに、カメラにより撮影された歩行面の映像から歩行面の状態(凹凸形状や、段差の有無や、砂地や草地や舗装面などの面の硬軟など)を検知する機能を備えているとする。このような場合に、歩行面の状態に応じた指部10A~10Dのそれぞれの脚の着地後の動作制御手順を予め定めて制御装置20に与えておき、指制御部26は、脚2,3の着地後に、検知された歩行面の状態に応じて、指部10A~10Dの動作を制御してもよい。
【0044】
さらに、第1と第2の実施形態では、脚2,3には、それぞれ、4つの指部10A~10Dが設けられている。これに代えて、二足歩行ロボット1が移動すると想定される移動面の状態や、二足歩行ロボット1の上半身の構造などの様々な事項を考慮して、脚に設けられる突出部の数は、3つでもよいし、5つ以上でもよい。ただし、それら突出部のうちの少なくとも一つは、脚が移動する前後方向に交差する横方向に脚から突出している態様と成す。
【0045】
さらに、第1と第2の実施形態では、脚2,3には、人間の足首に相当する関節駆動機構が設けられ、この関節駆動機構よりも先端側の足部4に突出部が設けられている。これに代えて、脚2,3には、人間の足首に相当する関節駆動機構が設けられていなくともよく、このような脚2,3の先端部分から、前後方向に交差する横方向を少なくとも含む複数の方向にそれぞれ突出する突出部が設けられていてもよい。
【0046】
さらに、第1と第2の実施形態では、脚式移動ロボットとして二足歩行ロボットを例にして説明しているが、本発明は、3本以上の脚を持つ移動ロボットにも適用可能である。
【0047】
図11は、本発明に係る脚式移動ロボットの基本構成を説明する図である。図11に表される脚式移動ロボット30は、少なくとも2本の脚31,32を備える。これら脚31,32は、脚式移動ロボット30の前と後ろの両方向(換言すれば、前後方向FB)に移動可能であり、脚31,32の移動により、脚式移動ロボット30が移動する。ここでの移動とは、歩行に限らず、走って移動することも含まれる。
【0048】
脚31,32には、それぞれ、その先端部分から突出している複数の突出部33が設けられている。突出部33の突出方向は、前後方向FBに交差する横方向Wを含む複数の方向である。突出部33は、脚31,32が移動する移動面に接することが可能である。なお、横方向Wは、前後方向FBに直交する方向に限るものではなく、例えば、横方向Wと、前後方向FBとの交差角度は例えば45度であってもよい。
【0049】
また、脚式移動ロボット30は、駆動装置34を備える。駆動装置34は、突出部33のそれぞれを、脚31,32における移動面に接する足裏に対して上下させる方向に変位させる装置である。
【0050】
さらにまた、脚式移動ロボット30は、制御装置35を備える。制御装置35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有して構成されており、駆動装置34の動作を制御することにより、突出部33の動きを制御する機能を備える。
【0051】
図12は、制御装置35による突出部33の動作制御の一例を表すフローチャートである。例えば、制御装置35は、脚31,32の一方(ここでは、脚31とする)が移動面から離れる方向に移動した後に移動面に向けて移動する際に、駆動装置34を停止する(ステップS301)。これにより、脚31が着地するときに駆動装置34から突出部33に力が加えられていない状態とする。このような状態で脚31が着地することにより、脚31の突出部33が移動面の形状に応じて倣う。
【0052】
然る後に、制御装置35は、移動面の形状に応じて倣った状態の突出部33の動きをロックすべく駆動装置34を稼動する(ステップS302)。然る後に、制御装置35は、脚式移動ロボット30が移動を終了するか否かを判断する(ステップS303)。そして、終了しない(つまり、移動を継続する)場合には、脚を代えて、他方の脚32が動作し、当該脚32の動作に合わせて当該脚32の突出部33の動きを制御すべく、制御装置35は、ステップS301以降の動作を繰り返す。
【0053】
図11に表されている脚式移動ロボット30は、脚31,32の先端部分から少なくとも横方向Wに突出する突出部33を含む複数の突出部33を備え、突出部33は、図12に表されるような動作制御が成される。これにより、脚式移動ロボット30は、簡単な構造と動作制御でもって移動の安定性を高めることができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1 二足歩行ロボット
2,3,31,32 脚
10 指部
12,34 駆動装置
20,35 制御装置
30 脚式移動ロボット
33 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12