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特許7577966人員最適化装置、人員最適化方法、および、人員最適化プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】人員最適化装置、人員最適化方法、および、人員最適化プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20241029BHJP
【FI】
G06Q10/0631
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020174443
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065757
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】増村 均
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 大
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-227794(JP,A)
【文献】特許第5926819(JP,B2)
【文献】特開2001-227044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶部と、
前記拠点のサービス対象エリアの属性情報と、前記拠点別サービス件数とを教師データとして入力して機械学習することにより、前記属性情報と前記拠点別サービス件数との関係を学習してモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
前記予測モデルを用いて、前記サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測部と、
前記領域別サービス件数に基づいて前記サービス領域の業務量を算定する業務量算定部と、
目的変数である前記サービス領域ごとの人員数と説明変数である前記サービス領域の業務量とを入力して、前記人員数と前記業務量との関係線形回帰モデルによってモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成部と、
設定された目的とする拠点数になるように拠点を組み合わせ、組み合わせた拠点の業務量の合計値から前記人員モデルを用いて前記組み合わせた拠点に最適な人員数を算定する最適解算定部と、
を備える人員最適化装置。
【請求項2】
前記線形回帰モデルは、前記業務量と前記人員数との関係を式(1)で示す指数関数に対する回帰計算をすることにより生成される、請求項1に記載の人員最適化装置。
G=α・人員数 β ・・・ (1)
ここで、Gは業務量、αは定数、βは弾力性である。
【請求項3】
前記最適解算定部は、前記拠点の人員数の合計を最小化するように各拠点の組合せを算定する、請求項1又は2に記載の人員最適化装置。
【請求項4】
コンピュータが、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶ステップと、
コンピュータが、前記拠点のサービス対象エリアの属性情報と、前記拠点別サービス件数とを教師データとして入力して機械学習することにより、前記属性情報と前記拠点別サービス件数との関係を学習してモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、
コンピュータが、前記予測モデルを用いて、前記サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測ステップと、
コンピュータが、前記領域別サービス件数に基づいて前記サービス領域の業務量を算定する業務量算定ステップと、
コンピュータが、目的変数である前記サービス領域ごとの人員数と説明変数である前記サービス領域の業務量とを入力して、前記人員数と前記業務量との関係線形回帰モデルによってモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成ステップと、
コンピュータが、設定された目的とする拠点数になるように拠点を組み合わせ、組み合わせた拠点の業務量の合計値から前記人員モデルを用いて前記組み合わせた拠点に最適な人員数を算定する最適解算定ステップと、
を有する人員最適化方法。
【請求項5】
コンピュータに対し、
所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶ステップと、
前記拠点のサービス対象エリアの属性情報と、前記拠点別サービス件数とを教師データとして入力して機械学習することにより、前記属性情報と前記拠点別サービス件数との関係を学習してモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、
前記予測モデルを用いて、前記サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測ステップと、
前記領域別サービス件数に基づいて前記サービス領域の業務量を算定する業務量算定ステップと、
目的変数である前記サービス領域ごとの人員数と説明変数である前記サービス領域の業務量とを入力して、前記人員数と前記業務量との関係線形回帰モデルによってモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成ステップと、
設定された目的とする拠点数になるように拠点を組み合わせ、組み合わせた拠点の業務量の合計値から前記人員モデルを用いて前記組み合わせた拠点に最適な人員数を算定する最適解算定ステップと、
を実行させる人員最適化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人員最適化装置、人員最適化方法、および、人員最適化プログラムに関し、例えば、所定のサービスを提供する際のよりどころとなるべく設置される、または、配置された拠点の人員配置を最適化する人員最適化装置、人員最適化方法、および、人員最適化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物の配達拠点において日別時間帯別に過不足なく最適な要員数を計画する要員配置システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この要員配置システムにおいては、配達拠点別の荷物数を配達希望日別と配達時間帯別に配送先の配達拠点に通知することにより、配達拠点において荷物数に応じた要員配置をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-157546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の要員配置システムでは、荷物数の増減量に比例して要員数も増減するような関係が成立する場合には適しているが、荷物数と要員数との関係の把握が困難である場合、要員数の最適化は困難であった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、拠点の人員を最適化し得る人員最適化装置、人員最適化方法、および、人員最適化プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の人員最適化装置は、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶部と、前記拠点のサービス対象エリアの属性情報と、前記拠点別サービス件数とを用い、前記拠点と前記拠点別サービス件数との関係をモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成部と、前記予測モデルを用いて、前記サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測部と、前記領域別サービス件数に基づいて前記サービス領域の業務量を算定する業務量算定部と、前記サービス領域ごとの人員数と前記サービス領域の業務量とを用いて、前記人員数と前記業務量とをモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成部と、前記人員モデルに基づいて、前記拠点に最適な人員数を算定する最適解算定部と、を備える。
【0007】
前記人員モデル生成部は、前記サービス領域ごとの人員数と前記サービス領域の業務量とを用いて、前記人員数と前記業務量とを線形回帰モデルによってモデリングすることが好ましい。
【0008】
前記最適解算定部は、前記拠点の人員数の合計を最小化するように各拠点の組合せを算定することが好ましい。
【0009】
本発明の人員最適化方法は、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を拠点別サービス件数記憶部によって記憶する拠点別サービス件数記憶ステップと、前記拠点のサービス対象エリアの属性情報と、前記拠点別サービス件数とを用い、前記拠点と前記拠点別サービス件数との関係をモデリングした予測モデルを予測モデル生成部によって生成する予測モデル生成ステップと、前記予測モデルを用いて、前記サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を領域別サービス件数予測部によって算出する領域別サービス件数予測ステップと、前記領域別サービス件数に基づいて前記サービス領域の業務量を業務量算定部によって算定する業務量算定ステップと、前記サービス領域ごとの人員数と前記サービス領域の業務量とを用いて、前記人員数と前記業務量とをモデリングした人員モデルを人員モデル生成部によって生成する人員モデル生成ステップと、前記人員モデルに基づいて、前記拠点に最適な人員数を最適解算定部によって算定する最適解算定ステップと、を有する。
【0010】
本発明の人員最適化プログラムは、コンピュータに対し、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶ステップと、前記拠点のサービス対象エリアの属性情報と、前記拠点別サービス件数とを用い、前記拠点と前記拠点別サービス件数との関係をモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、前記予測モデルを用いて、前記サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測ステップと、前記領域別サービス件数に基づいて前記サービス領域の業務量を算定する業務量算定ステップと、前記サービス領域ごとの人員数と前記サービス領域の業務量とを用いて、前記人員数と前記業務量とをモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成ステップと、前記人員モデルに基づいて、前記拠点に最適な人員数を算定する最適解算定ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、拠点の人員を最適化し得る人員最適化装置、人員最適化方法、および、人員最適化プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る人員最適化システムの全体構成を示す図である。
図2】本実施の形態に係る人員最適化装置の機能ブロック構成を示す図である。
図3】本実施の形態に係る人員最適化装置のハードウェア構成を示す図である。
図4】本実施の形態に係る拠点A~Cのサービス対象エリアとなる市区町村を示す図である。
図5】本実施の形態に係る拠点の面積、人口、業務数量を表す図である。
図6】本実施の形態に係る拠点毎の面積、人口に対する人員、業務数量および業務量を表す図である。
図7】本実施の形態に係る拠点と市区町村との間の移動時間(都市間時間)を表す図である。
図8】本実施の形態に係る業務量と最適人員数との関係を表す図である。
図9】本実施の形態に係る拠点毎の最適人員数の算出結果を表す図である。
図10】本実施の形態に係る最適解算定部における処理手順の説明に供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔1〕本発明における実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
[1] 代表的な実施の形態に係る人員最適化装置(2)は、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点(A,B,C)のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶部(65)と、拠点のサービス対象エリアの属性情報と、拠点別サービス件数とを用い、拠点と拠点別サービス件数との関係をモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成部(41)と、予測モデルを用いて、サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測部(42)と、領域別サービス件数に基づいてサービス領域の業務量(G)を算定する業務量算定部(43)と、サービス領域ごとの人員数とサービス領域の業務量とを用いて、人員数と業務量とをモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成部(51)と、人員モデルに基づいて、拠点に最適な人員数を算定する最適解算定部(52)と、を備える。
【0015】
[2]上記[1]において、人員モデル生成部(51)は、サービス領域ごとの人員数とサービス領域の業務量(G)とを用いて、人員数と業務量(G)とを線形回帰モデルによってモデリングする。
【0016】
[3]上記[1]又は[2]において、最適解算定部(52)は、拠点の人員数の合計を最小化するように各拠点の組合せを算定する。
【0017】
[4]代表的な実施の形態に係る人員最適化方法は、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点(A,B,C)のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を拠点別サービス件数記憶部(65)によって記憶する拠点別サービス件数記憶ステップと、拠点のサービス対象エリアの属性情報と、拠点別サービス件数とを用い、拠点と拠点別サービス件数との関係をモデリングした予測モデルを予測モデル生成部(41)によって生成する予測モデル生成ステップと、予測モデルを用いて、サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を領域別サービス件数予測部(42)によって算出する領域別サービス件数予測ステップと、領域別サービス件数に基づいてサービス領域の業務量(G)を業務量算定部(43)によって算定する業務量算定ステップと、サービス領域ごとの人員数とサービス領域の業務量とを用いて、人員数と業務量とをモデリングした人員モデルを人員モデル生成部(51)によって生成する人員モデル生成ステップと、人員モデルに基づいて、拠点に最適な人員数を最適解算定部(52)によって算定する最適解算定ステップと、を有する。
【0018】
[5]代表的な実施の形態に係る人員最適化プログラムは、コンピュータに対し、所定のサービス業務を提供する際のよりどころとなる拠点(A,B,C)のサービス対象エリアにおいて発生した拠点毎のサービス業務の件数である拠点別サービス件数を記憶する拠点別サービス件数記憶ステップと、拠点のサービス対象エリアの属性情報と、拠点別サービス件数とを用い、拠点と拠点別サービス件数との関係をモデリングした予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、予測モデルを用いて、サービス対象エリアと異なるサービス領域の属性を表す属性情報に基づき当該サービス領域の領域別サービス件数を算出する領域別サービス件数予測ステップと、領域別サービス件数に基づいてサービス領域の業務量(G)を算定する業務量算定ステップと、サービス領域ごとの人員数とサービス領域の業務量とを用いて、人員数と業務量とをモデリングした人員モデルを生成する人員モデル生成ステップと、人員モデルに基づいて、拠点に最適な人員数を算定する最適解算定ステップと、を実行させる。
【0019】
〔2〕実施の形態の具体例
以下、本実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、本実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の配置、データの形式、通信方法などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る人員最適化システム1の全体構成を示す図である。同図に示される人員最適化システム1は、例えば〇〇県に存在する複数の市区町村をサービス業務の需要があるサービス対象エリアとし、現時点で既に〇〇県に設置されている営業所等のサービス業務を行う人員の詰所であり、サービス業務を行う際のよりどころとなる営業拠点(以下、これを単に「拠点」と言う場合があるものとする。)のうち、拠点の統廃合等があった場合に、残りの維持された拠点の人員配置を最適化するシステムである。
【0021】
この場合、サービス業務としては、電気、ガス、水道、通信といったユーティリティ関連公益事業において、お客様側設備に接続される電力線、ガス管、水道、通信線といったアクセス設備機器や、お客様側の電力需要設備、熱源設備、水道設備、通信設備といったお客様設備機器を対象機器とし、アクセス設備機器の自然災害破損に伴う対応業務や、お客様設備機器の不調調査や機器更新の要望に対する対応業務等がある。但し、サービス業務としては、これらのユーティリティ関連公益事業に限るものではなく、あらゆるお客様側設備を対象とし、そのお客様側設備に対する故障、修理、点検等、その他種々の対応業務を対象とすることができる。
【0022】
なお、人員最適化システム1では、拠点の統廃合等がない場合においても、現状の各拠点における人員の最適化を図ることができる。人員最適化システム1によれば、サービス対象エリアにおいて、各拠点で最も効率良くサービス業務を提供できるように必要最小限の人員数を推定することができる。
【0023】
なお、本明細書において、〇〇県の市区町村を一例として以下説明するが、これに限らず、任意の県の市区町村を対象とすることができ、または地方単位、国単位等を拠点のサービス対象エリアとすることも可能である。また、人員最適化システム1は、ユーティリティ関連公益事業を対象とするだけではなく、物品配送業、商品出張販売業、食品配達業といったお客様先への出向業務を含んだあらゆる業態を対象とし、お客様に対する配送、販売、出前等の対応業務を行う出向元拠点の新設、統廃合の決定に適用可能である。加えて、消防署や学校の運営といった公共事業において、施設新設、統廃合の決定を対象とすることができる。
【0024】
この場合、例えば人員最適化システム1においてサービス業務の要求を受け付ける事業者のコールセンター(図示しない)では、サービス業務を要求してきた何れかの市区町村内の一般家庭や事業所等の地点(以下、これをサービス業務の需要がある地点すなわち「需要点」と言う場合があるものとする。)から直接連絡を受けた後、任意の拠点から需要点まで何分間で到達するかの移動時間をサービスレベル評価時間として設定している。
【0025】
例えば、本実施の形態において、サービスレベル評価時間を40分と設定する場合を一例とするが、これに限らず、都心近郊や郊外等の場所に応じてサービスレベル評価時間として設定する移動時間は、任意に決定することが可能である。また、サービス業務の要求がされた場合だけではなく、停電といったサービス停止情報を事業者が検知した場合も、検知した時点から需要点までの移動時間をサービスレベル評価時間として設定することも可能である。
【0026】
図1に示すように、人員最適化システム1においては、人員最適化装置2と、複数のクライアント端末装置5a~5dとを有している。この人員最適化装置2は、ネットワーク4と接続可能に構成され、そのネットワーク4を介して複数のクライアント端末装置5a~5d等の外部の情報処理装置と接続されている。
【0027】
ネットワーク4は、例えばインターネットに代表される広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)である。人員最適化システム1の人員最適化装置2およびクライアント端末装置5a~5dは、有線または無線通信によってネットワーク4と接続可能に構成されており、互いにデータの送受信が可能となっている。
【0028】
クライアント端末装置5a~5dは、サーバとしての人員最適化装置2に対して、人員を最小化できる最適な拠点及び当該拠点の人員数を要求するクライアント側の情報処理装置である。クライアント端末装置5a~5dは、人員最適化装置2により推定された最適な拠点及び人員数(最適な人員数の推定結果)である出力画面を受け取って表示することが可能である。但し、クライアント端末装置5a~5dは、人員最適化装置2に対して最適な拠点及び人員数を必ずしも要求しなければならない訳ではなく、人員最適化装置2自ら最適な拠点及び人員数を自ら求め、それを単に受け取るだけであってもよい。なお、クライアント端末装置5a~5dとしては、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、またはスマートフォン等の各種情報処理装置(コンピュータ)を例示することができる。クライアント端末装置5a~5dは、ネットワーク4と接続可能に構成されているため、ネットワーク4を介して人員最適化システム1等の外部の情報処理装置との通信接続についても可能である。
【0029】
次に、人員最適化システム1における人員最適化装置2の構成を具体的に説明する。図2は、本実施の形態に係る人員最適化装置2の機能ブロック構成を示す図である。また、図3は、本実施の形態に係る人員最適化装置2のハードウェア構成を示す図である。
【0030】
人員最適化装置2は、例えば、PC(Personal Computer)やサーバ等の情報処理装置(コンピュータ)であって、予めインストールされた人員最適化プログラムにしたがって市区町村毎の業務量(後述する)を推定した後、その業務量に基づいて、配置する人員数を最小化できる拠点及び当該拠点の人員数を算定する装置である。なお、人員最適化装置2だけが行うのではなく、これらの人員最適化プログラムを当該人員最適化装置2からクライアント端末装置5a~5dへオンラインまたはオフライン(例えば人員最適化プログラムの格納された所定のパッケージ)によって提供し、これらのクライアント端末装置5a~5dを人員最適化装置として機能させるようにしてもよい。
【0031】
図2に示すように、人員最適化装置2は、機能ブロックとして、通信部20、データ入出力部30、業務量推定部40、人員推定部50、記憶部60および表示部70を有している。これらの各機能ブロックは、人員最適化装置2としての情報処理装置を構成するハードウェア資源が、上記情報処理装置にインストールされたソフトウエア(人員最適化プログラム)と協働することによって実現される。
【0032】
図3に示すように、人員最適化装置2は、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、I/F(Interface)装置103、入力装置104、出力装置105、および、バス106を備えている。
【0033】
記憶装置102に記憶されるプログラム111は、コンピュータを本実施の形態に係る人員最適化装置2の各機能部として機能させる人員最適化プログラムや基本プログラム等を含み、例えば、記憶装置102に予めインストールされている。
【0034】
また、記憶装置102に記憶されるデータ112は、後述する、記憶部60の市区町村基本情報記憶部61、拠点基本情報記憶部62、経路記憶部63、市区町村別業務記憶部64および拠点別業務記憶部65に格納されている、または、格納されるデータである。
【0035】
なお、プログラム111およびデータ112は、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれた状態により流通可能であってもよい。
【0036】
以下、人員最適化装置2について説明する。例えば現在、〇〇県に存在する複数の市区町村をサービス業務の需要があるサービス対象エリアとした場合、現時点で既に〇〇県に設置されている営業所等の3つの拠点(「拠点A」、「拠点B」、および「拠点C」)が存在し、それぞれの拠点A~Cには複数の市区町村がサービス対象エリアとして重複することなく割り当てられている。但し、市区町村が複数の拠点A~Cに一部重複していてもよい。
【0037】
このような現状において、人員最適化装置2では、現状の3拠点のうち2拠点を合併させ2拠点に減らすことを要求された場合、「拠点A」、「拠点B」および「拠点C」のうち何れの拠点を合併させることが最適であるかを推定すると共に、その合併して生じる新たな拠点と合併しない拠点に配置する人員数を決定するものであり、すなわち、拠点及び人員の最適化または再配置を図る装置である。当然に人員最適化装置2では、3拠点を2拠点に減らすだけではなく、1拠点に減らす場合、10拠点を7拠点に減らす場合等、残すべき維持拠点数を種々設定することが可能である。もちろん、これらの3拠点は現存している拠点だけが対象となるのではなく、例えば全てがこれから設置予定の3拠点を2拠点に減らそうと考えた場合であってもよい。
【0038】
このような人員最適化装置2の各機能ブロックについて説明する。通信部20は、外部の情報処理装置と通信を行うための機能部である。具体的に、通信部20は、人員最適化システム1内の複数のクライアント端末装置5a~5dとの間で、上述した所定のネットワーク(例えばLAN)4を介してデータの送受信を行う。
【0039】
人員最適化装置2のデータ入出力部30は、キーボード、ポインティングデバイス等の入出力インタフェースである。但し、これに限るものではなく、タブレット端末、またはスマートフォン等を介して無線によりデータの入出力を行うことも可能である。データ入出力部30は、記憶部60に各種データを入力して格納したり、記憶部30から各種データを読み出して業務量推定部40および人員推定部50へ出力する。
【0040】
次に、記憶部60について説明する。記憶部60は、市区町村基本情報記憶部61、拠点基本情報記憶部62、経路記憶部63、市区町村別業務記憶部64および拠点別業務記憶部65を有しており、データ入出力部30を介して各種データが記憶され、または、読み出される。
【0041】
市区町村基本情報記憶部61は、オペレータによりデータ入出力部30を介して入力された市区町村毎の面積、人口、その市区町村の中心地として用いられる役所所在地(以下、これを「市区町村役所所在地」と言う場合があるものとする。)等を含む基本情報(以下、これを「市区町村基本情報」と言う場合があるものとする。)が格納される記憶部60の部分である。ここで、面積、人口、市区町村役所所在地等の市区長村基本情報は、市区長村の属性を表す属性情報でもある。市区町村基本情報の面積および人口は、市区町村のホームページ等に公開されている公式な属性情報である。また、市区町村基本情報には、市区町村役所所在地を含んでいるが、これに限らず、市区町村を代表する中心地の位置情報として、その市区町村の地図上の重心位置や人口の重心位置等その他種々の位置を、市区町村を代表する位置情報として用いてもよい。
【0042】
また、市区町村基本情報としては、面積、人口および市区町村の役所所在地だけに限らず、アクセス設備機器やお客様設備機器の契約口数、口数密度、世帯密度、人口密度、企業密度、年齢加重平均、経年建物割合等が属性情報として含まれるようにしてもよい。なお、これらの市区町村基本情報は、例えばクライアント端末装置5a~5dの何れか、または外部の情報処理装置からネットワーク4および通信部20経由で格納されるようにしてもよい。
【0043】
例えば、図4及び図5に示すように、〇〇県において3つの拠点A~拠点Cが存在し、拠点Aにはhh市、ab市、cd市、gh市、aa町、jj町、cc町、gg町がサービス対象エリアとして設定され、拠点Bにはkk市、mn市、ef市、op市がサービス対象エリアとして設定され、拠点Cにはuv市、ss町、wx町、qr町、st町、kl町がサービス対象エリアとして設定されている場合を想定する。この場合、例えば拠点Aはcd市に存在し、拠点Bはef市に存在し、拠点Cはst町に存在している。
【0044】
図5に示すように、拠点Aのサービス対象エリアの一つであるhh市に対しては面積186.96Km、人口195633人がhh市の市区町村基本情報(属性情報)として市区町村基本情報記憶部61に格納される。拠点Aのサービス対象エリアの一つであるab市に対しては62.02Km、人口110046人がabの市区町村基本情報として市区町村基本情報記憶部61に格納される。拠点Aのサービス対象エリアの一つであるcd市に対しては194.9Km、人口88078人がcd市の市区町村基本情報として市区町村基本情報記憶部61に格納される。以下、同様に、拠点Aのサービス対象エリアの一つであるgh市からgg町までの5つの市区町村に対しても面積および人口が市区町村基本情報として市区町村基本情報記憶部61に格納される。
【0045】
拠点Bのサービス対象エリアであるkk市、mn市、ef市、op市についても、それぞれの市区町村毎に市区町村基本情報(面積および人口等の属性情報)が市区町村基本情報記憶部61に格納される。同様に、拠点Cのサービス対象エリアであるuv市、ss町、wx町、qr町、st町、kl町についても、それぞれの市区町村毎に市区町村基本情報(面積および人口等の属性情報)が市区町村基本情報記憶部61に格納される。
【0046】
拠点基本情報記憶部62(人員数記憶部)は、サービス対象エリアのうち、ある拠点に割り当てられている全ての市区町村の面積の合計値と、その市区町村の人口の合計値と、その拠点に配置されている人員数とが格納される記憶部60の部分である。例えば、図6に示すように、拠点Aに割り当てられている市区町村としてはhh市、ab市、cd市、gh市、aa町、jj町、cc町、gg町であるため、これら8つの市区町村の面積の合計値818.3Km、その8つの市区町村の人口の合計値578101人、および、拠点Aに配置されている人員数5人が拠点Aの拠点基本情報としてデータ入力部30により拠点基本情報記憶部62に格納される。
【0047】
また、拠点Bに割り当てられている市区町村としてはkk市、mn市、ef市、op市であるため、これら4つの市区町村の面積の合計値644.5Km、その4つの市区町村の人口の合計値185358人、および、拠点Bに配置されている人員数5人が拠点Bの拠点基本情報として拠点基本情報記憶部62に格納される。
【0048】
さらに、拠点Cに割り当てられている市区町村としてはuv市、ss町、wx町、qr町、st町、kl町であるため、これら6つの市区町村の面積の合計値583.6Km、その6つの市区町村の人口の合計値66438人、および、拠点Cに配置されている人員数2人が拠点Cの拠点基本情報として拠点基本情報記憶部62に格納される。
【0049】
経路記憶部63は、ある拠点からサービス対象エリアの市区町村の役所所在地までの経路に対応した距離を自動車等の車両(自動二輪車、自転車等を含む)で移動したときに要する片道の移動時間(以下、これを「都市間時間」と言う場合があるものとする。)が格納される記憶部60の部分である。このような移動時間(都市間時間)については、データ入出力部30を介してオペレータによって記憶されるが、拠点Aの所在地および役所所在地の緯度経度といった地理情報に基づいて経路算定装置(図示せず)により移動時間が自動的に計算されて記憶されるようにしてもよい。なお、経路記憶部63には、移動時間としてではなく、都市間の片道の距離として格納されてもよい。
【0050】
例えば、図7に示すように、拠点Aから当該拠点Aに割り当てられているhh市の市区町村所在地である〇△町3番1号までの片道の移動に要する都市間時間は16分間であり、拠点Aからab市の市区町村所在地である△△町2-2までの片道の移動に要する都市間時間は6分間であり、以下同様に続き、最後に拠点Aからgg町の市区町村所在地であるgg町▲□57-2までの片道の移動に要する都市間時間は57分間である。これらの都市間時間(片道の移動時間)が経路記憶部63には格納されている。同様に、拠点Bに割り当てられている複数の市区町村所在地までの片道の移動に要する都市間時間、および、拠点Cに割り当てられている複数の市区町村所在地までの片道の移動に要する都市間時間についても経路記憶部63に格納されている。
【0051】
市区町村別サービス件数記憶部64は、後述する領域別サービス件数予測部42によって算出された、市区町村毎の過去1年間のサービス件数(自然災害破損、不調調査、機器更新等の全てのサービス業務が要求されたであろう合計のサービス件数)を表す市区町村別サービス件数が格納される記憶部60の部分である。この市区町村別サービス件数については後述する。
【0052】
拠点別サービス件数記憶部65は、オペレータによりデータ入出力部30を介して入力された拠点毎の自然災害破損、不調調査、機器更新等のサービス業務の過去1年間における拠点別サービス件数が格納される記憶部60の部分である。すなわち、拠点別サービス件数は、ある拠点において過去1年間に発生したサービス件数の値であり、拠点のコールセンターにおいて集計された既知のデータである。
【0053】
図6に示すように、拠点Aの全ての市区町村において「自然災害破損」のサービス業務の合計件数が年間2088件あり、「不調調査」のサービス業務の合計件数が年間191件あり、「機器更新」のサービス業務の合計件数が年間879件あるため、全体で3158件のサービス業務が拠点Aにおいて過去1年間に存在しており、この3158件が拠点Aの拠点別サービス件数となっている。
【0054】
拠点Bでは、「自然災害破損」のサービス業務の合計件数が年間1903件あり、「不調調査」のサービス業務の合計件数が年間527件あり、「機器更新」のサービス業務の合計件数が年間728件あるため、全体で3158件のサービス業務が拠点Bにおいて過去1年間に存在しており、この3158件が拠点Bの拠点別サービス件数となっている。
【0055】
拠点Cでは、「自然災害破損」のサービス業務の合計件数が年間417件あり、「不調調査」のサービス業務の合計件数が年間215件あり、「機器更新」のサービス業務の合計件数が年間148件あるため、全体で780件のサービス業務が拠点Cにおいて過去1年間に存在しており、この780件が拠点Cの拠点別サービス件数となっている。
【0056】
次に、業務量推定部40について説明する。業務量推定部40は、市区町村毎の業務量G(後述する)を推定する機能部である。業務量推定部40は、予測モデル生成部41、領域別サービス件数予測部42および業務量算定部43を有している。
【0057】
予測モデル生成部41は、データ入出力部30を介して拠点基本情報記憶部62から読み出された拠点基本情報(図6)である拠点A~C別の面積または人口といった属性情報(説明変数データ)、データ入出力部30を介して拠点別業務記憶部65から読み出されたその拠点A~Cの拠点別サービス件数(目的変数データ)を教師データとして入力して機械学習することにより、属性情報(説明変数データ)と拠点別サービス件数(目的変数データ)との関係を学習してモデリングした予測モデルを生成して内部の記憶領域に記憶する機能部である。因みに、属性情報としては、面積または人口の何れか、またはそれ以外の何らかの属性情報だけを用いるようにしてもよい。ここでは予測モデルの生成に関して、例えば多層パーセプトロンと呼ばれるニューラルネットワークを機械学習モデルとして採用してもよい。なお、予測モデルは重回帰モデルであってもよい。
【0058】
領域別サービス件数予測部42は、予測モデル生成部41で生成された予測モデルを用いて、市区町村別のサービス件数を予測する機能部である。ここで、各拠点の過去1年間のサービス件数については拠点別業務記憶部65に記憶されているものの、市区町村毎にどの程度のサービス件数が発生していたかについては実態が分からない状態であるため、領域別サービス件数予測部42において市区町村別のサービス件数を算出するようになされている。
【0059】
領域別サービス件数予測部42は、予測モデル生成部41によって生成された予測モデルに対し、データ入出力部30を介して市区町村毎の面積および人口が属性情報として入力されると、その市区町村に対応した市区町村別のサービス件数を算出することができる。例えば、図5に示すように、領域別サービス件数予測部42は、データ入出力部30を介して例えば拠点Aのサービス対象エリアの一つであるhh市の面積186.96kmおよび人口195633人が入力されると、その面積および人口に基づいて予測モデルによりhh市のサービス件数として561件を算出することができる。このように領域別サービス件数予測部42は、市区町村毎に市区町村別のサービス件数を算出し、それらを市区町村別サービス件数記憶部64に記憶させる。
【0060】
この場合、市区町村別サービス件数記憶部64には、図5に示したように、拠点Aのhh市では市区町村別サービス件数561件、ab市では市区町村別サービス件数389件、cd市では市区町村別サービス件数415件、……、gg町では市区町村別サービス件数377件が記憶される。これらの拠点Aに割り当てられている全ての市区町村別サービス件数の合計値は、拠点Aの拠点別サービス件数と同じ3158件(図6参照)となる。
【0061】
また、市区町村別サービス件数記憶部64には、拠点Bのkk市では市区町村別サービス件数800件、mn市では市区町村別サービス件数781件、ef市では市区町村別サービス件数801件、op市では市区町村別サービス件数775件が記憶される。これらの拠点Bに割り当てられている全ての市区町村別サービス件数の合計値は、拠点Bの拠点別サービス件数と同じ3158件(図6参照)となる。因みに、拠点Aの拠点別サービス件数および拠点Bの拠点別サービス件数は同じ値であるが偶然であり、特に意味はない。
【0062】
さらに、市区町村別サービス件数記憶部64には、拠点Cのuv市では市区町村別サービス件数133件、ss町では市区町村別サービス件数137件、wx町では市区町村別サービス件数131件、qr町では市区町村別サービス件数131件、st町では市区町村別サービス件数112件、kl町では市区町村別サービス件数136件が記憶される。これらの拠点Cに割り当てられている全ての市区町村別サービス件数の合計値は、拠点Cの拠点別サービス件数と同じ780件となる。
【0063】
業務量算定部43は、市区町村別サービス件数記憶部64に格納された市区町村別サービス件数と、経路記憶部63に格納されている拠点から役所所在地までの往復の移動時間(都市間時間)と、役所所在地から実際の需要点までの往復の移動時間と、および、その需要点(現地)で要する作業時間とに基づいて、市区町村別サービス件数を実態に近い市区町村毎の業務量(業務時間)に変換し、これを内部の記憶領域に記憶する機能部である。但し、本実施の形態において業務量算定部43は、需要点(現地)で要する作業時間については、処理の短時間化および簡素化のために計算対象に含めずに以下説明を続ける。
【0064】
具体的には、業務量算定部43は、市区町村基本情報のある役所所在地から最も近接した拠点(以下、これを「最隣接拠点」と言う場合があるものとする。)までの片道の移動時間t1と、次の隣接拠点からその役所所在地までの移動時間t2との合計の平均移動時間ta(=(t1+t2)/2)、その役所所在地から実際の需要点までの市内移動時間tc、および、その市区町村のサービス件数Gcに基づいて、次の(1)式により市区町村毎の業務量Gを推定することが可能である。ここで、(1)式において、2・(ta+tc)で用いられた「2」は、往復の移動時間であることを意味する。
G=Gc×2・(ta+tc)…………………………………………………(1)
ここで、移動時間を業務量Gの算定に用いる場合、客先の需要点までの移動における移動元となる拠点の確定ができない場合には、業務量Gを算定するにあたって、サービス領域である市区町村から複数の拠点までの移動時間に基づいて業務量Gを算定することが計算の精度上望ましい。
【0065】
但し、これに限るものではなく、業務量算定部43は、処理時間の短縮および処理の簡素化のため、市区町村基本情報の役所所在地から最隣接拠点までの片道の移動時間t1(分)に対して、その市区町村の市区町村別サービス件数Gcを乗算した合計時間(時間)を業務量Gとして、次の(2)式にしたがって推定してもよい。これにより、業務量算定部43では、処理が簡潔化されるので処理時間を短縮することができる。ここで、(2)式において、2tで用いられた「2」は、往復の移動時間であることを意味する。
G=Gc×2・t1………………………………………………………………(2)
【0066】
次に、人員推定部50について説明する。人員推定部50は、例えば、現状の3拠点から2拠点に減らすことを人員最適化装置2またはクライアント端末装置5a~5dのオペレータにより要求された場合、「拠点A」、「拠点B」、および「拠点C」のうち、配置する人員数を最小化できる拠点及び当該拠点の人員数を推定する機能部である。
【0067】
人員推定部50は、人員モデル生成部51と、最適解算定部52とを有している。人員モデル生成部51は、業務量推定部40の業務量算定部43により算定した市区町村毎の業務量Gを担当する拠点毎に合計した合計値、および、拠点基本情報記憶部62に格納された、拠点に配置されている人員数がデータ入出力部30を介して入力される。人員モデル生成部51は、拠点毎の業務量Gの合計値と、その拠点の人員数とを用いて、拠点の業務量Gと拠点の人員数との関係をモデリングした人員モデルを生成する機能部である。この人員モデルは、例えば、コブ・ダグラスの生産関数を用いて、業務量Gと人員数との関係を(3)式で示す指数関数に対する回帰計算をすることで線形回帰モデルを生成することができる。この際、指数関数を用いることにより、図8に示すように、弾力性を変数の一つとして考慮した線形回帰モデルとすることができ、現状の人員数と業務量の関係性に近いモデルを生成することができる。なお、上記の人員モデルに限らず、AIモデルを生成するようにしてもよい。
G=α・人員数β ………………………………………………………………(3)
G:業務量、α:定数、β:弾力性
【0068】
最適解算定部52は、データ入出力部30を介してオペレータから初期計算条件としての入力される計算目的パラメータ、拠点毎の業務量Gの合計値及びその拠点の人員数を人員モデルに用いて、配置する人員数を最小化できる拠点及び当該拠点の人員数を算定することができる機能部である。ここで、計算目的パラメータとしては、最終的に残す維持すべき拠点の数を表す拠点数N(この場合、3拠点から2拠点に減少させるため、「N=2」)である。
【0069】
最適解算定部52は、人員モデルにしたがって計算目的パラメータに合致するように最適な拠点候補を算定する。例えば、現状の3拠点(拠点A~C)を2拠点(拠点A、Bまたは拠点A、Cあるいは拠点B、C)に減少させたい場合には拠点数N=2となる。
データ入出力部30から計算目的パラメータとして拠点数Nが入力されると、最適解算定部52は、一つの拠点を他のいずれかの拠点に合併させることを想定し、拠点の組み合わせにおいて総人員数が最小となる2つを最適な拠点及び人員数として算定する。すなわち、選定された2つの拠点及び人員数が最適解として算定される。最適解算定部52では、網羅的に全ての拠点の組み合わせを算出する所謂グリッドサーチ法を用いて試行結果の中から人員数が最小となる2拠点を算定する。
この場合、最適解算定部52は、例えば、図9に示すような最適解の算定結果画面Ansを作成し、これを表示部70に表示し、または、通信部30およびネットワーク4経由でクライアント端末装置5a~5dへ送信する。
【0070】
具体的に、試行1では、拠点Aと拠点Bが合併されると共に拠点Cが維持され、この場合における拠点A+Bの現状の人員数は10名で、拠点Cの現状の人員数は2名である。これに対し、最適解算定部52により算定された拠点A+Bの最適人員数は6.4名で、拠点Cの最適人員数は1.9名である。
試行2では、拠点Bと拠点Cが合併されると共に拠点Aが維持され、この場合における拠点B+Cの現状の人員数は7名で、拠点Aの現状の人員数は5名である。これに対し、最適解算定部52により算定された拠点B+Cの最適人員数は4.7名で、拠点Aの最適人員数は4.2名である。
試行3では、拠点Aと拠点Cが合併されると共に拠点Bが維持され、この場合における拠点A+Cの現状の人員数は7名で、拠点Bの現状の人員数は5名である。これに対し、最適解算定部52により算定された拠点A+Cの最適人員数は4.9名で、拠点Bの最適人員数は4名である。
【0071】
図9に示すような算定結果を踏まえて、最適解算定部52は、全ての拠点の人員数を合計した総人員数が最小となる拠点の組み合わせ及びその拠点毎の人員数を最適解として算定する。図9の場合、試行1の組み合わせにおける総人員数は8.3名で、試行2の組み合わせにおける総人員数は8.9名で、試行3の組み合わせにおける総人員数は8.9名である。したがって、最適解算定部52は、試行1のように、拠点Aと拠点Bとを合併させて拠点数を2つに減らすとともに、拠点Aと拠点Bの人員数を6.4名(実際には6名又は7名が適切)、拠点Cの人員数を1.9名(実際には2名が適切)に変更することを最適解として算定する。
【0072】
次に、このような人員推定部50における最適解算定部52の処理の流れについて、フローチャートを用いながら説明する。図10は、最適解算定部52による処理の流れを示すフローチャートである。最適解算定部52は、ステップSP1において、データ入出力部30を介して計算目的パラメータ(拠点数N)が設定または変更されたことを受け付けると、次のステップSP2へ移る。
【0073】
最適解算定部52は、ステップSP2において、拠点の合計がN個となるように現状の拠点を組み合わせ、組み合わせた拠点の業務量の合計値から人員モデルを用いて最適人員数を算出し、次のステップSP3へ移る。
【0074】
最適解算定部52は、ステップSP3において、3つの拠点から2の拠点に削減する際の全ての組み合わせについて、ステップSP2の最適人員数を算出したか否かについて、判定する。全ての組み合わせについて、最適人員数を算出した場合(ステップSP3:YES)には、次のステップSP4へ移り、全ての組み合わせについて最適人員数の算出が終了していない場合(ステップSP3:NO)には、次のステップSP2へ戻る。
【0075】
最適解算定部52は、ステップSP4において、拠点の各組み合わせにおいて算出された最適人員数の合計(総人員数)を比較する。
【0076】
最適解算定部52は、ステップSP5において、拠点の各組み合わせにおける最適人員数の合計(総人員数)が最小となる2つの拠点の組み合わせを算定する。そして、その組み合わせを構成する2つの拠点及びその人員数が最適解であるとして、その最適解を表示部70に出力し、処理フローを終了する。
【0077】
以上の本実施の形態によれば、人員最適化装置2では、拠点A~Cの3拠点を2拠点に減らす際、予測モデル及び人員モデルを用いて、現状の業務量に応じた最適な人員数を新たな2つの拠点の人員数として算定することができる。
人員モデルは、生産関数を用いてモデルを生成しているので、同じ拠点で複数の業務を連続して行う場合のように、業務の効率化が図れている状況も想定し、弾力性を考慮したモデルとなっているので、人員推定部50は、より現状の人員数と業務量の関係性に近い人員数を推定することができる。
また、人員最適化装置2は、各拠点の組み合わせ毎に最適な人員数を算出し、算定結果画面Ans(図9)を介してオペレータに提示することができる。更に、人員最適化装置2は、その中から総人員数が最小となる2拠点を最適解として出力することができる。
また、人員最適化装置2は、市区町村別のサービス件数を実態に即した業務量に変換し、その業務量を用いて候補の拠点及び人員数を算定するようにしたことにより、より正確な拠点候補及び人員数を算定することができる。
【0078】
〔3〕他の実施の形態
以上の本実施の形態においては、人員最適化装置2において全拠点を対象に全ての組み合わせ計算を行う場合について述べたが、これに限定されず、クライアント端末から拠点組み合わせ情報を受信し当該拠点組み合わせに対する人員数情報を返信するようにしてもよく、人員最適化装置2とクライアント端末装置5a~5dとで処理を分散して行うようにしてもよい。この場合、人員最適化システム1全体で上述した処理を実行することになる。
また、人員最適化システム1、人員最適化装置2、クライアント端末装置5a~5dのそれぞれについても上記の構成は一例にすぎず、具体的構成はこれに限定されない。
【0079】
また、上述の人員推定部50は、維持すべき拠点の人員の合計を最小化するように各拠点の人員数を算定していたが、人員推定部50は、維持すべき拠点の人員の減少数又は減少率を最大化するように各拠点の人員数を算定するようにしてもよい。具体的には、図9に示すように、各拠点の現状の人員と比べた最適な人員の減少数又は減少率を算出し、この減少数又は減少率が最も大きな拠点の組み合わせを最適解としてもよい。図9においては、人員の減少数でみると、試行1における拠点A+Bと拠点Cの組み合わせが最も減少数が大きい(-3.7人)ので好ましく、人員の減少率でみると、試行3における拠点A+Cと拠点Bの組み合わせが最も減少率が大きい(-49%)ので好ましい。
【0080】
また、最適解算定部52による上述のフローチャートは、最適解算定部52における処理の流れを説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、最適解算定部52によるフローチャートの各ステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部のステップの順番が変更されてもよいし、各ステップの処理間に他の処理が挿入されてもよいし、場合によっては一部のステップの処理が並列に行われてもよい。
【0081】
上述の人員推定部50は、各拠点の業務量から人員モデルによって算定される最適人員数の最小化を図れる拠点の合併組み合わせを最適解として算定している。さらに、例えば、拠点Aと拠点Bの合併が最適と算定した場合、拠点Aを維持し、拠点Bを廃止した場合の拠点Aのみの場合のサービスレベル評価時間と、拠点Aを廃止し、拠点Bを維持した場合の拠点Bのみの場合のサービスレベル評価時間を比較し、拠点Aと拠点Bのいずれを廃止するかを算定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1……人員最適化システム、2……人員最適化装置、4……ネットワーク、5a~5d……クライアント端末装置、20……通信部、30……データ入出力部、40……業務量算定部、41……予測モデル生成部、42……領域別サービス件数予測部、43……業務量算定部、50……人員推定部、51……人員モデル生成部、52……最適解算定部、60……記憶部、61……市区町村基本情報記憶部、62……拠点基本情報記憶部、63……経路記憶部、64……市区町村別サービス件数記憶部、65……拠点別サービス件数記憶部、70……表示部、101……演算装置、102……記憶装置、111……プログラム、112……データ、103……I/F装置、104……入力装置、105……出力装置、106……バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10