(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】掘削システム及び掘削方法
(51)【国際特許分類】
E21B 7/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
E21B7/00 A
(21)【出願番号】P 2020191228
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】萩原 由訓
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169496(JP,A)
【文献】特開2017-190579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削具を備えた重機の本体部において異なる位置に取り付けられた3個以上の位置情報取得装置と前記掘削具との位置関係を記憶した特定装置を用いた掘削システムであって、
前記特定装置が、
前記3個以上の位置情報取得装置の中で2個の位置情報取得装置からなるペアを特定し、
前記特定した
ペア毎に、前記位置情報取得装置の位置を用いて杭孔の候補位置を特定し、
前記特定した杭孔の候補位置の統計値を、前記掘削具の掘削位置として特定することにより、前記掘削具により形成する杭孔の予定位置を特定することを特徴とする掘削システム。
【請求項2】
掘削具を備えた重機の本体部において異なる位置に取り付けられた3個以上の位置情報取得装置と前記掘削具との位置関係を記憶した特定装置を用いた掘削方法であって、
前記特定装置が、
前記3個以上の位置情報取得装置の中で2個の位置情報取得装置からなるペアを特定し、
前記特定した
ペア毎に、前記位置情報取得装置の位置を用いて杭孔の候補位置を特定し、
前記特定した杭孔の候補位置の統計値を、前記掘削具の掘削位置として特定することにより、前記掘削具により形成する杭孔の予定位置を特定することを特徴とする掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭孔等を形成する重機を用いて、杭孔の位置を特定して掘削を行なう掘削システム及び掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持層に杭を打設する際には、地面に墨出しされたポイントを杭位置として用いる。更に、打ち込む杭孔の位置を、墨出により確認する作業が行われている(特許文献1参照)。この文献には、基準点に光学式測量機をセットし、杭芯位置の墨出を行う。次いで、杭を打設する前に、一対のアンテナ、受信機、通信機、コントローラからなるGPS測量機により墨出位置の確認作業を行なう。
また、杭孔の位置決めのために、杭打機のブームやリーダ上にGPS受信機を設置して、杭心を特定する技術も検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】PRODUCTS 際とポジショニングシステム、[online]、大裕株式会社 ホームページ、[令和2年10月8日検索]インターネット、〈URL:http://taiyu-corp.com/products02/gnss/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
墨出しによって杭位置を特定する場合には、他の杭を施工する際等に墨出しを消してしまうことがある。墨出しが不鮮明な場合には、杭位置の特定が困難である。
更に、杭施工の管理を行なう場合、図面を用いて杭を確認した後、杭番号をシステムに入力する。このため、杭番号の入力には手間が掛かっていた。また、杭番号を間違える可能性があった。
更に、杭打機のブームやリーダの上面へのGPS受信機を設置した場合、GPS受信機のメンテナンスが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する掘削システムは、掘削具を備えた重機の本体部において複数の位置に配置された位置情報取得装置と前記掘削具との位置関係を記憶した特定装置を用いた掘削システムであって、前記特定装置が、前記複数の位置情報取得装置の位置を取得し、前記取得した位置情報取得装置の位置と前記位置関係とを用いて前記掘削具の掘削位置を特定することにより、前記掘削具により形成する杭孔の予定位置を特定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、杭孔の位置を効率的に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における掘削システムの構成を説明する構成図。
【
図2】
図1における2-2線方向から見た重機の平面図。
【
図4】実施形態における建築物情報記憶部に記録されたデータ構成の説明図。
【
図5】実施形態における掘削管理処理の処理手順を説明する流れ図。
【
図6】実施形態における掘削位置確認処理の処理手順を説明する流れ図。
【
図7】実施形態における掘削位置確認処理を説明する説明図。
【
図8】実施形態における作業用端末の表示部に表示される掘削状況画面の画面図。
【
図9】変更例において3箇所以上のマーカ装置を用いた杭孔位置特定処理の処理手順を説明する流れ図。
【
図10】変更例において高さ確認処理を説明する説明図。
【
図11】変更例において高さ確認処理の処理手順を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図8を用いて、掘削システム及び掘削方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、支持層に打込む現場打ち杭を配置する杭孔を形成する掘削システムとして説明する。
【0010】
図1に示すように、掘削システム10は、掘削用の重機としてのアースオーガ11を用いる。アースオーガ11は、クローラ11cと、この上に載置される旋回可能な本体部11bとを備える。本体部11bには、運転席等が設けられており、作業中は、複数のアウトリガー12によって固定される。
【0011】
図2は、
図1における2-2線方向(上方)から見たアースオーガ11の平面図である。本体部11bの上には、複数(本実施形態では2個)のマーカ装置A1,A2が、離間した位置に設けられている。マーカ装置A1,A2は、位置情報取得装置として機能する。本実施形態では、マーカ装置A1,A2として、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)を用いて、マーカ装置A1,A2が設置された各位置(経度緯度)を特定するGNSS受信機を用いる。
【0012】
図1に示すようにアースオーガ11は、キャッチホークを介してガイドリーダ13が立設される。更に、ガイドリーダ13は、左右1対のバックステー14によって、鉛直に維持される。ガイドリーダ13には、鉛直方向に延在するガイドレールが設けられている。駆動機構15は、複数の離間したアームによってガイドレールに嵌合することにより、鉛直方向にスライド可能に、ガイドリーダ13に連結される。駆動機構15は、ガイドリーダ13の上端から繰り出された懸垂ケーブルで支持される。この懸垂ケーブルは、駆動機構15の上面の動滑車に巻き掛けられる。駆動機構15は、懸垂ケーブルの繰り出し量の変更によって昇降する。駆動機構15の下端部には、掘削具としての掘削ヘッド16が取り付けられている。掘削ヘッド16には、下部にはスクリューが設けられ、下端部にはオーガヘッドが設けられている。掘削ヘッド16は、駆動機構15によって回転しながら、駆動機構15の昇降に応じて昇降する。
更に、掘削システム10は、アースオーガ11の動作を管理する監視装置20を備える。
監視装置20は、作業用端末30に接続される。
【0013】
(ハードウェア構成例)
図3は、監視装置20、作業用端末30等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例を示す。
【0014】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0015】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0016】
入力装置H12は、ユーザ等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード、タッチパネル等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネルディスプレイ等である。
【0017】
記憶装置H14は、監視装置20、作業用端末30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置(例えば、後述する建築物情報記憶部22、位置関係記憶部23、掘削状況記憶部24)である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0018】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、監視装置20、作業用端末30における各処理(例えば、後述する制御部21における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、監視装置20、作業用端末30のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0019】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0020】
(監視装置の機能)
図1に示す監視装置20は、特定装置として機能するとともに、アースオーガ11の動作を管理する。
監視装置20は、各マーカ装置A1,A2から、各マーカ装置A1,A2の位置(経度緯度)を特定する情報を受送する。更に、監視装置20は、アースオーガ11による杭孔h1の掘削状況情報を取得する。この掘削状況情報は、掘削時に取得した状況情報であり、例えば、駆動機構15の駆動電流値や駆動機構15の位置に応じた掘削ヘッド16の先端の深度に関する情報等がある。
【0021】
監視装置20は、制御部21、杭情報記憶部としての建築物情報記憶部22、位置関係記憶部23及び掘削状況記憶部24を備えている。
制御部21は、後述する処理(位置特定段階、杭孔特定段階、掘削管理段階等を含む処理)を行なう。このための掘削プログラムを実行することにより、制御部21は、位置特定部211、杭孔特定部212、掘削管理部213等として機能する。
【0022】
位置特定部211は、杭孔h1を特定するために、マーカ装置A1,A2と掘削ヘッド16との位置関係を特定して記録する。
図2に示すように、マーカ装置A1,A2の絶対座標(経度緯度)と、マーカ装置A1,A2から掘削ヘッド16までの距離及び方向(向き)とを用いて、掘削ヘッド16の位置を特定する。ここで、方向としては、マーカ装置A1からマーカ装置A2に向かうベクトルV12に対する角度θ1,θ2を用いる。また、掘削ヘッド16の直下に杭孔h1が位置するため、掘削ヘッド16の位置と杭孔h1との位置は一致する。このため、マーカ装置A1の位置においてベクトルV12に対する角度θ1で、かつマーカ装置A1の位置から距離r1により、第1位置を特定する。更に、マーカ装置A2の位置においてベクトルV12に対する角度θ2で、かつマーカ装置A2の位置から距離r2により、第2位置を特定する。そして、第1位置と第2位置との中点を掘削ヘッド16の位置と特定する。なお、マーカ装置A1,A2の位置座標から掘削ヘッド16の位置を特定する方法は、上記に限らない。例えば、マーカ装置A1,A2の位置座標と、マーカ装置A1,A2から掘削ヘッド16までの距離とにより、幾何学的に計算する方法(マーカ装置A1を中心とした半径r1の第1円と、マーカ装置A2を中心とした半径r2の第2円との交点を求めるなど)でもよい。
【0023】
杭孔特定部212は、位置特定部211で特定した掘削ヘッド16の中心位置から予め定めた許容半径以内にある掘削予定の杭孔を特定する。
掘削管理部213は、杭孔特定部212が特定した杭を配置する杭孔h1の掘削状況を管理する処理を実行する。
【0024】
図4に示すように、建築物情報記憶部22には、建築物を構成する各部材を管理するための部材管理データ220が記録される。部材管理データ220は、建築物が設計された場合に記録される。部材管理データ220には、部材識別子、部材種別、部材の位置、部材の属性情報に関するデータが含まれる。
【0025】
部材識別子データ領域には、各部材を特定する識別子に関するデータが記録される。例えば、杭の場合には、部材識別子として杭番号を用いる。
部材種別データ領域には、この部材の種類を特定するデータが記録される。部材の種別としては、柱、梁及び杭等がある。
【0026】
部材の位置データ領域には、この部材を配置する位置に関するデータが記録される。杭孔の位置は、この杭孔に配置する杭の位置と一致するため、杭の部材の位置を杭孔の位置として用いる。
【0027】
部材の属性情報データ領域には、この部材の属性に関するデータが記録される。例えば、部材が杭の場合には、杭の形状、大きさ、支持層到達深度等に関するデータが含まれる。
位置関係記憶部23は、マーカ装置A1,A2の位置座標を用いて掘削ヘッド16の位置を特定する算出式を記憶する。
【0028】
掘削状況記憶部24には、杭孔h1についての掘削開始以降に取得した掘削状況情報に関するデータが記憶される。この掘削状況情報は、各計測機から掘削状況に関するデータが取得された場合に一時的に記憶される。
【0029】
作業用端末30は、現場の管理者が用いるコンピュータ端末である。本実施形態では、管理者は、アースオーガ11の運転席にいて、アースオーガ11を操作する。この作業用端末30は、マーカ装置A1,A2と掘削ヘッド16との位置の入力、杭孔の位置や杭識別子及び掘削状況情報等の表示等に用いられる。なお、この作業用端末30は、運転席以外にいる別の管理者が使用してもよい。
【0030】
(掘削管理処理)
次に、
図5を用いて、掘削管理処理について説明する。
ここでは、監視装置20は、位置関係の設定処理を実行する(ステップS11)。具体的には、マーカ装置A1,A2をアースオーガ11の本体部11bに設置する。そして、マーカ装置A1,A2の位置と掘削ヘッド16との位置との位置関係(距離r1,r2、角度θ1,θ2)を計測する。監視装置20の制御部21は、作業用端末30に入力された位置関係の情報を取得し、位置関係記憶部23に記録する。
【0031】
次に、監視装置20の制御部21は、掘削位置確認処理を実行する(ステップS12)。この処理の詳細は、後述する。
そして、監視装置20の制御部21は、掘削状況を確認しながら掘削処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の掘削管理部213は、アースオーガ11の駆動機構15や掘削ヘッド16の駆動を開始し、掘削ヘッド16で地中に杭孔h1を形成する。この場合、掘削位置確認処理(ステップS12)において作業用端末30の表示装置H13に表示された掘削状況画面の表示領域に、掘削時に取得した掘削状況情報を表示する。そして、アースオーガ11の管理者は、表示された掘削況情報を閲覧しながら、アースオーガ11の駆動機構15の昇降や駆動量等を調整しながら稼働して、支持層到達深度に到達するように杭孔h1を掘削する。
【0032】
(掘削位置確認処理)
次に、
図6~
図8を用いて、掘削位置確認処理(ステップS12)の詳細を説明する。
まず、監視装置20の制御部21は、各マーカ装置の位置の取得処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、各マーカ装置A1,A2から、各マーカ装置A1,A2の位置(経度緯度)情報を取得する。
【0033】
次に、監視装置20の制御部21は、マーカ装置の位置に基づいて杭孔位置の特定処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、取得した各マーカ装置A1,A2の位置と、位置関係記憶部23の位置関係とを用いて、掘削ヘッド16の位置(中心)を特定する。
【0034】
次に、監視装置20の制御部21は、対応する杭の検索処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、部材種別(杭)の部材管理データ220を取得する。次に、杭孔特定部212は、特定した部材管理データ220の中で、各マーカ装置A1,A2の位置を用いて特定した掘削ヘッド16の位置から許容半径以内の位置の部材(杭)を検索する。
【0035】
次に、監視装置20の制御部21は、該当する杭があるか否かの判定処理を実行する(ステップS24)。ここで、掘削ヘッド16の位置から許容半径以内に杭位置が記録された部材管理データ220を抽出した場合には、該当する杭があると判定する。
【0036】
例えば、
図7に示すように、アースオーガ11の本体部11bに対して、掘削ヘッド16の位置として算出された中心から許容半径以内の円領域C1を特定する。そして、この円領域C1内に、中心が位置する杭P3がある場合には、該当する杭があると判定する。
【0037】
許容半径以内に位置する杭の部材管理データ220を抽出できない場合(ステップS24において「NO」の場合)には、監視装置20の制御部21は、警告処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、該当する杭がない旨のエラーを作業用端末30の表示装置H13に表示する。例えば、
図7において杭P3がなく、杭P1,P2のみが存在していた場合には、警告処理を実行する。
【0038】
一方、該当する杭があると判定した場合(ステップS24において「YES」の場合)、監視装置20の制御部21は、杭番号の取得処理を実行する(ステップS26)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、抽出した部材管理データ220の部材識別子(杭番号)を取得する。
次に、監視装置20の制御部21は、掘削管理画面の表示処理を実行する(ステップS27)。具体的には、制御部21の掘削管理部213は、掘削状況画面510を生成して、作業用端末30に表示する。掘削管理部213は、この掘削状況画面510に、取得した杭番号511及び部材管理データ220の属性情報の支持層到達深度512を含める。更に、この掘削状況画面510には、この杭を配置する箇所の深度に対応して積分電流値、振動及び掘削時間等を表示する表示領域515を含める。
【0039】
(作用)
監視装置20は、アースオーガ11の本体部11bの上に離間して設けた2個のマーカ装置A1,A2と掘削ヘッド16との位置関係情報を記憶している。監視装置20の制御部21は、マーカ装置A1,A2から取得した各マーカ装置A1,A2の位置を用いて、掘削ヘッド16の位置を特定する。これにより、掘削ヘッド16の位置と一致する杭孔h1の位置を特定することができる。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、監視装置20の制御部21は、アースオーガ11の本体部11bに設置したマーカ装置A1,A2の位置を用いて掘削ヘッド16の位置を特定する。これにより、杭孔h1の位置を、効率的に特定することができる。また、マーカ装置A1,A2は、アースオーガ11の本体部11bに取り付けられるため、マーカ装置A1,A2のメンテナンスが容易である。
【0041】
(2)本実施形態では、監視装置20の制御部21は、特定した掘削ヘッド16の位置に一致する杭がある場合(ステップS24において「YES」の場合)には、掘削管理画面の表示処理を実行する(ステップS27)。これにより、掘削管理画面において、杭位置を特定した掘削状況情報を確認できる。
【0042】
(3)本実施形態では、監視装置20の制御部21は、特定した杭孔の位置に一致する杭がない場合(ステップS24において「NO」の場合)には、警告処理を実行する(ステップS25)。これにより、アースオーガ11の掘削ヘッド16の位置と、形成する予定の杭孔h1の位置とが対応しないときには、管理者に注意喚起できる。
【0043】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、アースオーガ11の本体部11bに、異なる位置の2個のマーカ装置A1,A2を配置し、マーカ装置A1,A2の位置を用いて杭孔h1の位置を特定する。重機の本体部に設ける位置情報取得装置は、異なる位置が測定できればよく、例えば、異なる位置が測定できる帯状のマーカ装置を1個用いてもよいし、異なる位置の3個以上のマーカを用いてもよい。3個以上の位置情報取得装置を用いる場合には、この3個以上の位置情報取得装置のうち2個(ペア)の位置情報取得装置を用いて、掘削ヘッド16の位置候補を算出し、算出した位置候補の統計値を用いて、掘削ヘッド16の位置を特定してもよい。ここで、統計値としては、平均値を用いてもよい。
そして、設置した3個以上の位置情報取得装置(マーカ装置等)のうち2個ずつ(ペア)を用いて、掘削ヘッド16の位置を特定する算出式を生成して、位置関係記憶部23に記憶しておく。
【0044】
そして、監視装置20の制御部21は、各マーカ装置の位置の取得処理(ステップS21)を実行した後、ステップS22として、
図9に示す杭孔位置特定処理を実行する。
この処理においては、まず、監視装置20の制御部21は、対象ペアの特定処理を実行する(ステップS31)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、設置した3個以上の位置情報取得装置(マーカ装置等)のうち2個ずつをペアとして抽出する。そして、各マーカ装置の位置の取得処理(ステップS21)において取得した位置情報取得装置の位置のうち、ペアとして特定した位置情報取得装置の位置を抽出する。
【0045】
次に、監視装置20の制御部21は、特定したペア毎に、対象ペアの位置に基づいて杭孔の候補位置の特定処理を実行する(ステップS32)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、抽出した位置情報取得装置の位置と、この対象ペアを用いて掘削ヘッド16の位置を特定する位置関係記憶部23に記憶した算出式とを用いて、掘削ヘッド16の位置を候補位置として特定する。
【0046】
そして、すべてのペアの組み合わせについて杭孔の候補位置を特定した後、監視装置20の制御部21は、候補位置の統計値を杭孔の位置として特定する処理を実行する(ステップS33)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、杭孔の候補位置の平均の位置を、杭孔の位置として特定する。これにより、位置情報取得装置の精度が悪い場合にも、杭孔の位置を的確に特定することができる。
【0047】
・上記実施形態では、掘削位置確認処理において、監視装置20の制御部21は、水平方向における位置を確認する。これに加えて、制御部21は、垂直方向の位置(高さ)も確認する高さ確認処理を実行してもよい。
【0048】
この場合、
図10に示すように、監視装置20の位置関係記憶部23に、深さの基準の位置における標高H1、地盤G1からマーカ装置A1が設置された設置高さH2、地盤G1から深さの基準までの基準高さH3を記憶しておく。ここで、深さの基準は、掘削を開始する高さである。そして、例えば、標高H1が6mで、設置高さH2が2m、基準高さH3が1mの場合を想定する。
【0049】
その後、
図11に示す高さ確認処理を実行する。
この処理において、監視装置20の制御部21は、まず、マーカ装置の標高の取得処理を実行する(ステップS41)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、マーカ装置A1から、マーカ装置A1の位置情報(標高M1)を取得する。ここでは、標高M1は7mとして取得される。
【0050】
次に、監視装置20の制御部21は、マーカ装置の標高を用いて地盤の標高の算出処理を実行する(ステップS42)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、取得したマーカ装置A1の標高M1から、位置関係記憶部23に記憶している設置高さH2を減算することにより、地盤G1の標高M2を算出する。ここでは、地盤G1の標高M2は5m(=7m-2m)と算出される。
【0051】
そして、監視装置20の制御部21は、深さの基準の標高と地盤の標高との差の算出処理を実行する(ステップS43)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、深さの基準の標高H1から、算出した地盤G1における標高M2を減算することにより、差D1を算出する。ここでは、差D1は1m(=6m-5m)と算出される。
【0052】
次に、監視装置20の制御部21は、差が設定した高さと一致しているか否かの判定処理を実行する(ステップS44)。具体的には、制御部21の杭孔特定部212は、ステップS43で算出した差D1が、地盤G1から深さの基準までの基準高さH3と同じであるか否かを判定する。
【0053】
ここで、監視装置20の制御部21は、差D1が基準高さH3に一致していない場合(ステップS44において「NO」の場合)には、ステップS25と同様に、警告処理を実行する(ステップS45)。また、監視装置20の制御部21は、差D1が基準高さH3と一致している場合には、確認ボタンを含む確認画面を表示する(ステップS46)。
【0054】
その後、地盤G1から深さの基準までの基準高さH3が1mであると計測により確認した管理者は、確認画面の確認ボタンを選択する。これにより、従来は、管理者による計測によってのみ深さの基準を確認していたが、マーカ装置A1を用いて深さの基準を確認することができるので、深さの基準をダブルチェックすることができる。そして、その後、監視装置20の制御部21は、対応する杭の検索処理(ステップS23)以降の処理を実行してもよい。また、確認画面の表示処理を省略して、人手により確認を省略してもよい。更に、算出した地盤G1の標高と、深さの基準の標高H1と、基準高さH3とを同時に表示させることにより、深さの基準の標高と地盤の標高との差と基準高さH3とを管理者に確認させて、ステップS43,S44の処理を省略してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、位置情報取得装置としてのマーカ装置A1,A2は、アースオーガ11の本体部11bの上面に設置した。位置情報取得装置を設置する重機の本体部の位置は、上面に限られない。例えば、本体部の側面に固定してもよい。
【0056】
更に、位置情報取得装置としてのマーカ装置A1,A2は、その位置の座標(緯度経度)情報を取得できる装置であればよく、GNSS受信機等、その位置情報取得装置から直接、位置情報を取得する場合に限られない。例えば、マーカ装置A1,A2における位置を光学的に検出して、三角測量等を用いて、他の装置から、マーカ装置A1,A2の位置(座標)を取得してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、重機として、杭孔を形成する掘削装置としてのアースオーガ11を用いて説明した。重機は、掘削装置としてのアースオーガに限定されない。例えば、掘削ヘッド16にスクリュー以外の掘削具を取り付けた掘削装置であってもよい。
【0058】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記特定装置は、
杭を識別する杭識別子に関連付けて、前記杭の設置位置を記憶した杭情報記憶部に接続されており、
前記掘削具の位置と、前記杭情報記憶部に記憶された前記杭の設置位置とを比較し、前記掘削具の位置に対応する設置位置の杭を特定することを特徴とする請求項1に記載の掘削システム。
(b)前記本体部には、異なる3カ所以上の前記位置情報取得装置を取り付け、
前記特定装置は、
前記位置情報取得装置のうち選択された2カ所の位置情報取得装置の位置と、前記2カ所の位置情報取得装置の位置と前記掘削具との位置関係を用いて、前記掘削具の掘削位置候補を特定し、
前記掘削位置候補を用いて、前記掘削具の位置を特定することを特徴とする請求項1又は(a)に記載の掘削システム。
(c)前記特定装置は、前記地盤から前記位置情報取得装置までの設置高さを記憶しており、前記位置情報取得装置の標高を取得し、取得した前記位置情報取得装置の標高と前記設置高さとを用いて、前記地盤の標高を算出することを特徴とする請求項1、(a)又は(b)に記載の掘削システム。
【符号の説明】
【0059】
θ1,θ2…角度、A1,A2…位置情報取得装置としてのマーカ装置、C1…円領域、D1…差、G1…地盤、h1…杭孔、H1,M1,M2…標高、H2…設置高さ、H3…基準高さ、P1,P2,P3…杭、r1,r2…距離、1,R2…マーカ装置、V12…ベクトル、10…掘削システム、11…重機としてのアースオーガ、11b…本体部、11c…クローラ、12…アウトリガー、13…ガイドリーダ、14…バックステー、15…駆動機構、16…掘削具としての掘削ヘッド、20…特定装置としての監視装置、21…制御部、22…建築物情報記憶部、23…位置関係記憶部、24…掘削状況記憶部、30…作業用端末、211…位置特定部、212…杭孔特定部、213…掘削管理部、220…部材管理データ、510…掘削状況画面、511…杭番号、512…支持層到達深度、515…表示領域。