IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許7577981可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置
<>
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図1
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図2
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図3
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図4
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図5
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図6
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図7
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図8
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図9
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図10
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図11
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図12
  • 特許-可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20241029BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20241029BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241029BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20241029BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20241029BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241029BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241029BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/03
B29C64/106
B29C64/321
B29C64/314
B29C64/209
B33Y30/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020197295
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085553
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英伸
(72)【発明者】
【氏名】宮下 大地
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】小澤 健太
【審査官】大谷 謙仁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
B29C 45/03
B29C 64/106
B29C 64/321
B29C 64/314
B29C 64/209
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化装置であって、
駆動モーターと、
前記駆動モーターの駆動力によって回転軸を中心にして回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、
前記駆動モーターと前記スクリューとの間に配置され、前記駆動モーターの前記駆動力を前記スクリューに伝達する減速機と、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記可塑化材料が流入する貫通孔が設けられたバレルと、
前記スクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する第1ヒーターと、
前記駆動モーターを冷却する第1冷却部と、
前記第1冷却部と前記減速機との間に配置された断熱部と、
を備え、
前記断熱部の少なくとも一部は、前記スクリューの前記回転軸に沿って見たときに、前記第1冷却部に重なる、
可塑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記断熱部は、前記スクリューの前記回転軸に沿って見たときに、前記第1冷却部の形状に沿って設けられている、可塑化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の可塑化装置であって、
前記スクリューの外周に配置された第2冷却部を有する、可塑化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記スクリューと前記バレルとの間に前記材料を供給するための材料通路と、
前記材料通路から分岐した排気通路と、
を有する、可塑化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の可塑化装置であって、
前記排気通路を加熱する第2ヒーターを有する、可塑化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記スクリューを収容する収容部と、
前記収容部内に気体を供給する送風機と、
を備える、可塑化装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記スクリューを収容する収容部と、
前記収容部内の気体を吸引する吸引部と、
を備える、可塑化装置。
【請求項8】
請求項に記載の可塑化装置であって、
前記吸引部によって吸引され前記収容部内に再度供給される気体を乾燥させる乾燥部を備える、可塑化装置。
【請求項9】
請求項8に記載の可塑化装置であって、
前記乾燥部は、前記収容部内に供給される気体を冷却する第3冷却部と、前記第3冷却部によって冷却された気体を加熱する第3ヒーターとを有する、可塑化装置。
【請求項10】
請求項9に記載の可塑化装置であって、
前記第3ヒーターは、前記第1ヒーターである、可塑化装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記貫通孔から流出した前記可塑化材料を、成形型に射出するノズルと、
を備える射出成形装置。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記貫通孔から流出した前記可塑化材料を、ステージに向けて吐出するノズルと、
を備える三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可塑化装置、射出成形装置および三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリューとバレルとの間に供給された材料を、スクリューの回転とヒーターによる加熱とによって可塑化する可塑化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-015219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような可塑化装置では、部品間の隙間から大気中の水分が可塑化装置内に侵入したり、材料の加熱によって材料に含まれる水分が蒸発して可塑化装置内で水蒸気が発生する場合がある。これらの場合に、可塑化装置内の低温な箇所において結露が生じる可能性がある。可塑化装置内で結露が生じると、可塑化装置内で錆が生じる原因となったり、水滴によって材料が冷やされたり湿ったりして材料が十分に可塑化されなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターの駆動力によって回転軸を中心にして回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、前記駆動モーターと前記スクリューとの間に配置され、前記駆動モーターの前記駆動力を前記スクリューに伝達する減速機と、前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記可塑化材料が流入する貫通孔が設けられたバレルと、前記スクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する第1ヒーターと、前記駆動モーターを冷却する第1冷却部と、前記第1冷却部と前記減速機との間に配置された断熱部と、を備える。前記断熱部の少なくとも一部は、前記スクリューの前記回転軸に沿って見たときに、前記第1冷却部に重なる。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、射出成形装置が提供される。この射出成形装置は、上記形態の可塑化装置と、前記貫通孔から流出した前記可塑化材料を、成形型に射出するノズルと、を備える。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、上記形態の可塑化装置と、前記貫通孔から流出した前記可塑化材料を、ステージに向けて吐出するノズルと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の射出成形装置の概略構成を示す正面図。
図2】第1実施形態の射出成形装置の概略構成を示す断面図。
図3】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図。
図4】バレルの概略平面図。
図5】第1実施形態の可塑化装置の概略構成を示す断面図。
図6】減速機の一部を分解して示す断面図。
図7】減速機に備えられた第1ギアおよび第2ギアの構成を示す平面図。
図8】蓋部に備えられた第1冷却部および第1断熱部の構成を示す平面図。
図9】第2実施形態の可塑化装置の概略構成を示す断面図。
図10】第3実施形態の可塑化装置の概略構成を示す断面図。
図11】第4実施形態の可塑化装置の概略構成を示す断面図。
図12】乾燥部に備えられた第3冷却部の構成を示す斜視図。
図13】第5実施形態の三次元造形装置の概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における射出成形装置10の概略構成を示す正面図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。図2以降に示すX,Y,Z方向は、図1に示すX,Y,Z方向に対応している。以下の説明において、向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0010】
射出成形装置10は、射出装置11と、型締装置13と、制御装置15とを備えている。射出装置11、型締装置13、および、制御装置15は、基台20に固定されている。射出成形装置10は、型締装置13に装着された成形型12内に、射出装置11から可塑化材料を射出して成形品を成形する。本実施形態では、型締装置13には、金属製の成形型12が装着されている。型締装置13に装着される成形型12は、金属製に限られず、樹脂製あるいはセラミック製でもよい。金属製の成形型12のことを金型と呼ぶ。
【0011】
射出装置11には、成形品の材料が投入されるホッパー30が接続されている。成形品の材料として、例えば、ペレット状に形成された熱可塑性樹脂が用いられる。
【0012】
射出装置11は、ホッパー30から供給された材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成し、型締装置13に装着された成形型12にその可塑化材料を射出する。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0013】
制御装置15は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。プロセッサーが主記憶装置上にプログラムを読み込んで実行することにより、制御装置15は、射出装置11と型締装置13とを制御し、成形品を製造する。
【0014】
図2は、射出成形装置10の概略構成を示す断面図である。射出成形装置10は、上述したとおり、射出装置11と、成形型12が装着される型締装置13とを備えている。射出装置11は、可塑化装置100と、射出制御機構120と、ノズル114とを備えている。
【0015】
可塑化装置100は、駆動モーター118と、減速機300と、収容部400と、フラットスクリュー111と、バレル112と、第1ヒーター113とを備えている。なお、フラットスクリュー111のことをスクリューあるいはローターと呼ぶことがある。
【0016】
フラットスクリュー111は、フラットスクリュー111を収容する収容部400に収容されている。収容部400の具体的な構成については後述する。フラットスクリュー111は、駆動モーター118および減速機300によって構成されるスクリュー駆動部115によって、回転軸RXを中心にして収容部400内で回転駆動される。本実施形態において、X方向は、回転軸RXに沿った方向である。バレル112の中央部には、バレル112を貫通する連通孔116が設けられている。連通孔116は、回転軸RXの延長線上に設けられている。連通孔116には、後述する射出シリンダー121が接続されている。連通孔116には、射出シリンダー121よりも上流部に、逆止弁124が備えられている。スクリュー駆動部115によるフラットスクリュー111の回転と、第1ヒーター113による加熱とは、制御装置15によって制御される。
【0017】
図3は、フラットスクリュー111の概略構成を示す斜視図である。フラットスクリュー111は、その中心軸に沿った方向における高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー111の、バレル112に対向する溝形成面201には、中央部205を中心に、渦状の溝202が形成されている。溝202は、フラットスクリュー111の側面に形成された材料投入口203に連通している。ホッパー30から供給される材料は、材料投入口203を通じて溝202に供給される。溝202は、凸条部204によって隔てられることにより形成されている。図3には、溝202が3本形成されている例を示しているが、溝202の数は、1本でもよいし、2本以上であってもよい。なお、溝202は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0018】
図4は、バレル112の概略平面図である。バレル112は、フラットスクリュー111の溝形成面201に対向する対向面212を有している。対向面212の中央には、連通孔116が形成されている。対向面212には、連通孔116に接続され、連通孔116から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝211が形成されている。フラットスクリュー111の溝202に供給された材料は、フラットスクリュー111の回転と第1ヒーター113の加熱とによって、フラットスクリュー111とバレル112との間において可塑化されながら、フラットスクリュー111の回転によって溝202および案内溝211に沿って流動し、フラットスクリュー111の中央部205へと導かれる。フラットスクリュー111とバレル112との間において材料を搬送しやすくするためには、フラットスクリュー111の中央部205の温度よりも、中央部205を囲むフラットスクリュー111の外周部分の温度の方が低いことが好ましい。中央部205に流入した材料は、連通孔116から射出制御機構120へと導かれる。なお、バレル112に案内溝211が設けられていなくてもよい。
【0019】
図2に示すように、射出制御機構120は、射出シリンダー121と、プランジャー122と、プランジャー駆動部123とを備えている。射出制御機構120は、射出シリンダー121内の可塑化材料を、後述するキャビティー117に射出注入する機能を有している。射出制御機構120は、制御装置15の制御下で、ノズル114からの可塑化材料の射出量を制御する。射出シリンダー121は、バレル112の連通孔116に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー122を備えている。プランジャー122は、射出シリンダー121の内部を摺動し、射出シリンダー121内の可塑化材料を、可塑化装置100に接続されたノズル114に圧送する。プランジャー122は、モーターによって構成されるプランジャー駆動部123により駆動される。
【0020】
成形型12は、可動型12Mと固定型12Sとを備えている。可動型12Mと固定型12Sとは、互いに対面して配置され、その間に成形品の形状に応じた空間であるキャビティー117を有している。キャビティー117には、バレル112の連通孔116から流出した可塑化材料が、射出制御機構120によって圧送されてノズル114から充填される。
【0021】
型締装置13は、成形型駆動部131を備えており、可動型12Mと固定型12Sとの開閉を行う機能を有している。型締装置13は、制御装置15の制御下で、モーターによって構成される成形型駆動部131を駆動することによってボールネジ132を回転させ、ボールネジ132に結合された可動型12Mを固定型12Sに対して移動させて成形型12を開閉させる。つまり、固定型12Sは、射出成形装置10において静止しており、その静止した固定型12Sに対して、可動型12Mが、相対的に移動することにより、成形型12が開閉される。
【0022】
図5は、可塑化装置100の概略構成を示す断面図である。図6は、減速機300の一部を分解して示す断面図である。図7は、減速機300に備えられた第1ギア310および第2ギア320を+X方向に見た平面図である。図8は、収容部400の蓋部420を-X方向に見た平面図である。図5以降に示す断面図では、各断面におけるハッチングを適宜省略している。図5に示す断面は、図3に示した断面と異なる方向における断面を示している。可塑化装置100は、上述したとおり、駆動モーター118と、減速機300と、収容部400と、フラットスクリュー111と、バレル112と、第1ヒーター113とを備えている。
【0023】
減速機300は、駆動モーター118の回転駆動力をフラットスクリュー111に伝達する。本実施形態における減速機300は、入力軸と出力軸とが同一軸上にある同芯軸タイプの減速機である。減速機300は、駆動モーター118の出力軸119に固定された略円筒状の偏心体301と、遊星歯車として構成された第1ギア310と、太陽内歯車として構成された第2ギア320とを有している。
【0024】
偏心体301の駆動モーター118側の端部は、収容部400に固定された第1ボールベアリング341によって軸支されている。偏心体301のフラットスクリュー111側の端部は、第2ギア320の内周に圧入された第2ボールベアリング342によって軸支されている。偏心体301のうちの第1ボールベアリング341に固定されている部分の外周、および、第2ボールベアリング342に固定されている部分の外周は、駆動モーター118の出力軸を中心とした円形形状である。これに対して、偏心体301のうちの第1ボールベアリング341と第2ボールベアリング342との間に挟まれた部分は、駆動モーター118の出力軸に対して偏心した中心軸を有する円形形状となっている。以下の説明において、単に偏心体301という場合には、偏心体301のうちの第1ボールベアリング341と第2ボールベアリング342との間に挟まれた部分のことを指す。
【0025】
第1ギア310は、円環形状を有しており、その内周部にニードルベアリング344が圧入されて固定されている。図7に示すように、第1ギア310の外周には、波状の外歯311が形成されている。第1ギア310上には、+X方向に見て、周方向に等間隔に複数のピン312が配置されている。これらのピン312は、それぞれ、ピン受け凹部303内に配置される。ピン受け凹部303は、図6に示すように、偏心体301の周囲の収容部400に固定された円環状のピン受け部302に複数個、形成されている。図7に示すように、それぞれのピン受け凹部303は、+X方向側を向いて開口しており、ピン312の直径よりも大きな直径を有している。そのため、ピン312は、ピン受け凹部303内で、回転軸RXに垂直な方向であるY方向およびZ方向に移動することができる。
【0026】
図5に示すように、第2ギア320は、-X方向側の端面が開口する有底筒状の形状を有している。第2ギア320の-X方向側の端面には、第1凹部321が形成され、第1凹部321の底部には、更に第2凹部323が形成されている。第1凹部321には、第1ギア310が収容されている。第1凹部321の内周には、図7に示す第1ギア310の外歯311が接触する波状の内歯322が形成されている。第2凹部323には、偏心体301の+X方向側の端部を軸支する第2ボールベアリング342が圧入されて固定されている。
【0027】
フラットスクリュー111の-X方向側の端面には窪み206が形成されており、この窪み206に、第2ギア320の底部328が嵌まる。窪み206および底部328には、Dカット加工等の空回り防止加工が施されている。第2ギア320の底部328には、回転軸RXの方向において、固定部としてのボルト324によってフラットスクリュー111が固定されている。つまり、フラットスクリュー111は、第2ギア320と一体化されている。そのため、回転軸RXに沿って第2ギア320が移動すると、それに伴い、フラットスクリュー111も回転軸RXに沿って移動する。なお、第2ギア320とフラットスクリュー111とは、ボルト324に限らず、リベット等の他の固定部によって固定されてもよい。また、ボルト324は、一本に限らず、複数本用いられて、第2ギア320とフラットスクリュー111とが固定されてもよい。
【0028】
第2ギア320の外周には、鍔状の第1規制部325が形成されている。この第1規制部325の詳細については後述する。第2ギア320は、第1規制部325よりも-X方向側の部分が、ピン受け部302の外周側において収容部400に固定された第3ボールベアリング343によって軸支されている。本実施形態において、第3ボールベアリング343は、フラットスクリュー111から-X方向への荷重を受ける単列アンギュラベアリングとして構成されている。
【0029】
上述した減速機300の動作を説明する。駆動モーター118が回転すると、駆動モーター118の出力軸119に固定された偏心体301が回転する。偏心体301は、回転しながら、第1ギア310の内周に設けられたニードルベアリング344に部分的に接触する。ニードルベアリング344に偏心体301が接触すると、ニードルベアリング344に固定された第1ギア310が、偏心体301から駆動力を受けて、ピン312がピン受け凹部303に収容された状態で、回転軸RXに交差するX-Y方向(半径方向)に揺れ動く。この第1ギア310の動きによって、第1ギア310の外歯311が、第2ギア320の内歯322に部分的に順番に接触していき、第2ギア320が回転し、それに伴い、第2ギア320に固定されたフラットスクリュー111が収容部400内で回転する。図6には、このように動作する減速機300の構造を、収容部400に固定されている部分と、駆動モーター118の駆動力によって動く部分とを、上下に分離して示している。
【0030】
第2ギア320の外周には、上述したとおり、鍔状の第1規制部325が形成されている。第2ギア320にはフラットスクリュー111が固定されているため、第1規制部325はフラットスクリュー111に間接的に固定されていると言える。
【0031】
収容部400は、第1規制部325の+X方向側の面に対向する第2規制部403を有している。第1規制部325は、第2規制部403に接触可能である。「接触可能」とは、接触していない状態と接触している状態とのいずれの状態にもなり得るという意味である。フラットスクリュー111は、第1規制部325と第2規制部403とにより、回転軸RXに沿った移動、より詳しくは、+X方向への所定量以上の移動が規制される。
【0032】
フラットスクリュー111の溝形成面201は、第1規制部325と第2規制部403とが接触した状態において対向面212に対して予め定められた間隔を空けて離れている。この間隔は、例えば、0.1mmである。溝形成面201と対向面212との間の間隔とは、溝202や案内溝211の形成されていない位置における最短の間隔のことをいう。
【0033】
第1規制部325と第2規制部403との間には、これらの間の摺動抵抗を低減するためにグリスを塗布してもよく、また、これらの面にフッ素樹脂等による低摩擦コーティングを行ってもよい。その他、第1規制部325あるいは第2規制部403を低摩擦係数の部材によって形成してもよい。
【0034】
フラットスクリュー111が回転軸RXに沿ってバレル112側に移動した場合であっても、フラットスクリュー111がバレル112に接触する前に、フラットスクリュー111に固定された第1規制部325が第2規制部403に接触する。そのため、例えば、連続成形時等において一時的にホッパー30からの材料供給が途絶えた場合や材料通路32に材料が詰まった場合においても、フラットスクリュー111とバレル112とが接触することがない。そのため、フラットスクリュー111やバレル112が摩耗して耐久性が低下することを抑制できる。
【0035】
図5に示すように、収容部400は、本体部410と、蓋部420と、第1冷却部425と、第1断熱部430と、第2冷却部415と、第2断熱部450とを有している。
【0036】
本体部410は、筒状に構成されている。本体部410の内側に、フラットスクリュー111が配置されている。本体部410には、筒状の接続部材31を介して、ホッパー30が接続されている。本体部410には、ホッパー30に連通する材料導入口413が設けられている。材料導入口413は、Z方向に沿って本体部410を貫通するように設けられている。ホッパー30に貯蔵された材料は、接続部材31に設けられた材料通路32を介して、材料導入口413に供給される。本実施形態では、本体部410は、ステンレス鋼で形成されている。
【0037】
蓋部420は、本体部410の-X方向側の端部を塞ぐように配置されている。蓋部420は、有底筒状に構成されており、円盤状の底面部421と、底面部421の外周縁から+X方向に延びる円筒状の側面部422とを有している。底面部421の-X方向側の面には凹部が設けられており、底面部421には、この凹部を座面として駆動モーター118が固定されている。底面部421の中央には、駆動モーター118の出力軸119が貫通する貫通孔が設けられている。蓋部420は、側面部422をX方向に沿って貫通するボルトによって本体部410に固定されている。本実施形態では、蓋部420は、ステンレス鋼で形成されている。
【0038】
第1冷却部425は、駆動モーター118の外周に配置されている。本実施形態では、第1冷却部425は、蓋部420の底面部421に埋設された配管によって構成されている。第1冷却部425には、冷媒が流れる。本実施形態では、冷媒として、水が用いられる。冷媒として、水ではなく、例えば、クーラントや油が用いられてもよい。第1冷却部425を流れる冷媒によって、駆動モーター118を冷却できる。また、第1冷却部425を流れる冷媒によって、第1ヒーター113からの熱が駆動モーター118に伝わることを抑制できる。
【0039】
第1断熱部430は、X方向において、第1冷却部425と減速機300との間に配置されている。より具体的には、第1断熱部430は、第1冷却部425と第3ボールベアリング343との間に配置されている。第1断熱部430の熱伝導率は、蓋部420の熱伝導率よりも低い。本実施形態では、第1断熱部430は、板状のガラスエポキシ基板で形成されている。第1断熱部430は、ガラスエポキシ基板に限られず、例えば、セラミック材料で形成されてもよい。
【0040】
図8に示すように、蓋部420には、第1冷却部425に冷媒を導入するための冷媒導入口426と、第1冷却部425から冷媒を排出するための冷媒排出口427とが固定されている。本実施形態では、蓋部420のうちの-Z方向側の部分に冷媒導入口426と冷媒排出口427とが設けられている。冷媒導入口426と冷媒排出口427とは、Y方向において互いに位置を異ならせて設けられている。第1冷却部425は、駆動モーター118の外周を3/4周するように、U字状に設けられている。冷媒導入口426には、例えば、ポンプによって冷媒が供給される。第1冷却部425を流れて、冷媒排出口427から排出された冷媒は、例えば、熱交換器によって冷却された後、ポンプに循環する。
【0041】
第1断熱部430は、フラットスクリュー111の回転軸RXに沿って見て、第1冷却部425の少なくとも一部を覆うように配置されている。第1断熱部430によって第1冷却部425の半分以上の部分が覆われることが好ましい。本実施形態では、第1断熱部430は、U字状に設けられた第1冷却部425に沿った形状を有している。第1断熱部430によって第1冷却部425の90%以上の部分が覆われている。蓋部420の底面部421には第1断熱部430の形状に対応した溝状の凹部が設けられている。第1断熱部430の厚みは、この凹部の深さ以下である。図8には、第3ボールベアリング343が二点鎖線で表されている。底面部421には、第3ボールベアリング343の座面が確保されるように上述した凹部が設けられており、第1断熱部430は、この凹部に嵌め込まれた状態で、ボルトによって底面部421に固定されている。なお、第1断熱部430の形状は、第1冷却部425に沿った形状でなくてもよい。例えば、第1断熱部430の形状は、円環形状であってもよい。
【0042】
図5に示すように、第2冷却部415は、フラットスクリュー111の外周に配置されている。本実施形態では、第2冷却部415は、本体部410の+X方向側の端部に設けられた円環状の溝によって構成されている。本体部410の+X方向側の端部には、第2冷却部415を覆う円環状の板部材440が固定されている。本実施形態では、板部材440は、ステンレス鋼で形成されている。板部材440のうちの本体部410側の面には、2本の溝が同心円状に設けられており、それぞれ溝には、本体部410と板部材440との間のシール性を確保するためのOリング445が配置されている。第2冷却部415には、冷媒が流れる。本実施形態では、冷媒として、水が用いられる。冷媒として、水ではなく、例えば、クーラントや油が用いられてもよい。第2冷却部415には、例えば、ポンプによって冷媒が供給される。第2冷却部415を流れた冷媒は、例えば、熱交換器によって冷却された後、ポンプに循環する。第2冷却部415を流れる冷媒によって、フラットスクリュー111のうちの外周部分を冷却できる。
【0043】
第2断熱部450は、X方向において、第2冷却部415とバレル112との間に配置されている。第2断熱部450の熱伝導率は、本体部410の熱伝導率よりも低い。本実施形態では、第2断熱部450は、板状のガラスエポキシ基板で形成されている。第2断熱部450は、ガラスエポキシ基板に限られず、例えば、セラミック材料で形成されてもよい。第2冷却部415とバレル112との間が第2断熱部450によって断熱されることによって、バレル112の対向面212の温度が低くなりすぎて材料の可塑化が不十分になることを抑制できる。
【0044】
以上で説明した本実施形態における射出成形装置10によれば、可塑化装置100の収容部400は、第1冷却部425と減速機300との間に第1断熱部430を有しているので、第1ヒーター113と第1断熱部430との間の収容部400内の温度勾配を小さくすることができる。そのため、収容部400内で結露が生じることを抑制できる。特に、本実施形態では、第1冷却部425の形状に沿って第1断熱部430が設けられているので、上述した温度勾配を小さくしやすい。さらに、収容部400のうちの駆動モーター118と第1ヒーター113との間に第1断熱部430が配置されることによって、第1ヒーター113からの熱が駆動モーター118に伝わることを効果的に抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、収容部400は、フラットスクリュー111の外周に配置された第2冷却部415を有している。フラットスクリュー111の外周部分の温度をフラットスクリュー111の中央部分の温度よりも低く保つことができる。そのため、フラットスクリュー111とバレル112との間で材料が搬送されにくくなることを抑制できる。そのため、バレル112の連通孔116に流入する可塑化材料の量が変動することを抑制できる。
【0046】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態における可塑化装置100bの概略構成を示す断面図である。第2実施形態の可塑化装置100bでは、ホッパー30と収容部400とを接続する接続部材31bに排気通路33が設けられていることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0047】
本実施形態では、接続部材31bには、材料通路32から分岐した排気通路33が設けられている。排気通路33は、材料通路32から+Z方向に交差する方向であり、かつ、水平面よりも上方に向かう方向に延びている。そのため、ホッパー30から供給される材料が排気通路33に流入することを抑制できる。本実施形態では、接続部材31bには、1つの排気通路33が設けられている。他の実施形態では、接続部材31bに複数の排気通路33が設けられてもよい。例えば、接続部材31bには、複数の排気通路33がZ方向に沿って並んで配置されてもよいし、複数の排気通路33が材料通路32を中心にして放射状に配置されてもよいし、放射状の排気通路33がZ方向に沿って複数列で配置されてもよい。
【0048】
接続部材31bには、第2ヒーター35が設けられている。第2ヒーター35は、排気通路33を加熱する。第2ヒーター35の温度は、制御装置15によって制御される。
【0049】
以上で説明した本実施形態における可塑化装置100bによれば、排気通路33を介して、収容部400内の水蒸気を排出できるので、収容部400内の湿度を低下させることができる。そのため、収容部400内で結露が生じることを効果的に抑制できる。なお、本実施形態において、収容部400の材料導入口413の内壁面が本体部410に比べて熱伝導率の低い断熱部材で構成されてもよい。この場合、フラットスクリュー111とバレル112との間から排気通路33に流れる水蒸気が材料導入口413で冷えて結露が生じることを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、排気通路33を加熱する第2ヒーター35が設けられているので、排気通路33で水蒸気が冷えて結露が生じることを抑制できる。
【0051】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態における可塑化装置100cの概略構成を示す断面図である。第3実施形態では、可塑化装置100cに送風機510と吸引部520とが設けられていることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0052】
本実施形態では、収容部400cは、給気通路418と排気通路419とを有している。給気通路418および排気通路419は、それぞれ、収容部400cの外側と、収容部400cの内側のフラットスクリュー111が収容された空間とを連通させている。給気通路418および排気通路419は、蓋部420cと本体部410cとに設けられた貫通孔によって構成されている。収容部400cの外側に通じる給気通路418の開口部は、蓋部420cのうち、フラットスクリュー111の回転軸RXに対して-Z方向側の部分に設けられている。収容部400cの内側に通じる給気通路418の開口部は、本体部410cのうち、回転軸RXに対して-Z方向側の部分に設けられている。収容部400cの内側に通じる排気通路419の開口部は、本体部410cのうち、回転軸RXに対して+Z方向側の部分に設けられている。収容部400cの外側に通じる排気通路419の開口部は、蓋部420cのうち、回転軸RXに対して+Z方向側の部分に設けられている。
【0053】
給気通路418の外側の開口部には、配管を介して、上述した送風機510が接続されている。送風機510は、大気から取り込んだ空気を給気通路418に供給する。送風機510は、例えば、制御装置15の制御下で駆動される遠心送風機である。送風機510は、遠心送風機に限られず、軸流送風機でもよいし、斜流送風機でもよい。なお、送風機510は、空気ではなく、例えば、アルゴン等の不活性ガスを給気通路418に供給してもよい。
【0054】
排気通路419の外側の開口部には、配管を介して、上述した吸引部520が接続されている。吸引部520は、排気通路419から空気を吸引して大気に排出する。吸引部520は、例えば、制御装置15の制御下で駆動される真空ポンプである。
【0055】
以上で説明した本実施形態における可塑化装置100cによれば、材料を可塑化させる際に生じる水蒸気によって大気に比べて湿度が高くなりやすい収容部400c内に、送風機510によって大気中の空気を供給することができるので、収容部400c内の湿度を低下させることができる。そのため、収容部400c内で結露が生じることを効果的に抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、吸引部520によって収容部400c内の空気を吸引できるので、収容部400c内の水蒸気量を減少させることができる。そのため、収容部400c内で結露が生じることをさらに効果的に抑制できる。
【0057】
なお、第3実施形態の可塑化装置100cにおいて、第2実施形態と同様に、材料通路32から分岐した排気通路33が設けられてもよい。さらに、この排気通路33を加熱する第2ヒーター35が設けられてもよい。
【0058】
D.第4実施形態:
図11は、第4実施形態における可塑化装置100dの概略構成を示す断面図である。図12は、乾燥部530が備える第3冷却部531の構成を示す斜視図である。図11に示すように、第4実施形態の可塑化装置100dには、吸引部520と、乾燥部530とが設けられていることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0059】
本実施形態では、収容部400dは、給気通路418dと排気通路419dとを有している。給気通路418dおよび排気通路419dは、それぞれ、収容部400dの外側と、収容部400dの内側のフラットスクリュー111が収容された空間とを連通させている。収容部400dの内側に通じる給気通路418dの開口部は、本体部410dのうち、フラットスクリュー111の回転軸RXに対して+Z方向側に配置された材料導入口413の内壁面に設けられている。収容部400dの内側に通じる排気通路419dの開口部は、本体部410dのうち、回転軸RXに対して-Z方向側の部分に設けられている。収容部400dの外側に通じる排気通路419dの開口部は、蓋部420dのうち、回転軸RXに対して-Z方向側の部分に設けられている。
【0060】
排気通路419dの外側の開口部には、配管を介して、上述した吸引部520が接続されている。吸引部520は、排気通路419dから空気を吸引する。吸引部520は、例えば、制御装置15の制御下で駆動される真空ポンプである。
【0061】
吸引部520には、配管を介して、上述した乾燥部530が接続されている。本実施形態では、乾燥部530は、空気を冷却する第3冷却部531と、第3冷却部531によって冷却された空気を加熱する第3ヒーター532とによって構成されている。
【0062】
図12に示すように、第3冷却部531は、導入口534と、排出口535と、導入口534と排出口535との間を連通させる気体通路536とを有している。導入口534は、配管を介して吸引部520に接続されており、排出口535は、配管を介して第3ヒーター532に接続されている。第3冷却部531には、冷媒が流れる冷媒配管537が気体通路536に隣り合うように設けられている。気体通路536の底面538には、ドレン穴539が設けられている。ドレン穴539に水滴が集まるように、底面538は傾斜している。気体通路536を流れる空気に含まれる水蒸気は、冷媒配管537を流れる冷媒によって冷却されて水滴になり、ドレン穴539から排出される。
【0063】
図11に示すように、本実施形態では、第3冷却部531と給気通路418dとを接続する配管がバレル112の+X方向側の面に沿って設けられることによって、第3ヒーター532が構成されている。つまり、本実施形態では、第3ヒーター532は、第1ヒーター113である。なお、第3ヒーター532は、第1ヒーター113とは別個に設けられてもよい。吸引部520によって収容部400d内から吸引された空気は、乾燥部530を経由した後、給気通路418dから収容部400d内に循環する。乾燥部530では、第3冷却部531によって空気が冷却された後、第3ヒーター532,113によって空気の温度が高められる。
【0064】
以上で説明した本実施形態における可塑化装置100dによれば、乾燥部530によって乾燥された空気が収容部400d内に供給されるので、射出成形装置10の設置場所の湿度が比較的高い場合であっても、収容部400d内の湿度を低下させることができる。そのため、収容部400d内で結露が生じることを効果的に抑制できる。
【0065】
また、本実施形態では、乾燥部530は、空気を冷却する第3冷却部531と、空気を加熱する第3ヒーター532,113とによって構成されているので、第3冷却部による冷却によって空気中の水蒸気量を低減した後、第3ヒーター532,113による加熱によって空気の温度を高めることができる。そのため、収容部400d内に低温の空気が供給されることに起因して収容部400d内で結露が生じることを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、収容部400d内の空気を大気に排出せずに、乾燥部530で乾燥した後、収容部400d内に循環させるので、材料を可塑化する際に生じるガスの臭いが可塑化装置100d外に流出することを抑制できる。
【0067】
なお、第4実施形態の可塑化装置100dにおいて、第2実施形態と同様に、材料通路32から分岐した排気通路33が設けられてもよい。さらに、この排気通路33を加熱する第2ヒーター35が設けられてもよい。
【0068】
E.第5実施形態:
図13は、第5実施形態における三次元造形装置600の概略構成を示す断面図である。三次元造形装置600は、可塑化装置100eと、造形ステージ610と、移動機構620と、制御装置15eとを備えている。
【0069】
可塑化装置100eは、フラットスクリュー111と、バレル112と、第1ヒーター113とを備えている。可塑化装置100eには、ノズル114が接続されている。可塑化装置100eの構成は第1実施形態における可塑化装置100と同じである。ただし、本実施形態では、連通孔116とノズル114の間には、ノズル114からの可塑化材料の吐出量あるいは吐出の有無を切り替えるバルブ630が設けられている。バルブ630は、制御装置15eの制御下で駆動される。
【0070】
造形ステージ610の上面は、ノズル114に対向している。三次元造形物は、造形ステージ610上に造形される。本実施形態では、造形ステージ610は、水平方向に沿って配置されている。造形ステージ610は、移動機構620によって支持されている。
【0071】
移動機構620は、ノズル114と造形ステージ610との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構620は、造形ステージ610を移動させることによって、ノズル114と造形ステージ610との相対的な位置を変化させる。本実施形態における移動機構620は、3つのモーターが発生させる動力によって、造形ステージ610をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成されている。各モーターは、制御装置15eの制御下で駆動される。なお、移動機構620は、造形ステージ610を移動させずに、可塑化装置100eを移動させることによって、ノズル114と造形ステージ610との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。また、移動機構620は、造形ステージ610と可塑化装置100eとの両方を移動させることによって、ノズル114と造形ステージ610との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。
【0072】
三次元造形装置600は、制御装置15eの制御下で、ノズル114と造形ステージ610との相対的な位置を変化させつつノズル114から可塑化材料を吐出させることによって、造形ステージ610上に可塑化材料の層を積層して所望の形状の三次元造形物を造形する。
【0073】
以上で説明した第5実施形態における三次元造形装置600であれば、可塑化装置100eとして第1実施形態と同様の可塑化装置が設けられているので、可塑化装置100eの収容部400内で結露が生じることを抑制できる。なお、可塑化装置100eは、第1実施形態と同様の可塑化装置に限らず、第2実施形態や第3実施形態や第4実施形態と同様の可塑化装置であってもよい。
【0074】
F.他の実施形態:
(F1)上述した各実施形態の可塑化装置100~100eにおいて、収容部400~400dは、第2冷却部415と第2断熱部450とを有していなくてもよい。
【0075】
(F2)上述した第2実施形態の可塑化装置100bにおいて、排気通路33から水蒸気を吸引するポンプが設けられてもよい。この場合、排気通路33から水蒸気を効果的に排出できる。
【0076】
(F3)上述した第2実施形態の可塑化装置100bにおいて、第2ヒーター35が設けられていなくてもよい。この場合、材料通路32や排気通路33の内壁面が接続部材31の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する断熱部材で構成されてもよい。
【0077】
(F4)上述した第3実施形態の可塑化装置100cにおいて、送風機510が設けられなくてもよい。この場合であっても、吸引部520によって排気通路419から空気を吸引することによって、給気通路418から空気を導入できる。
【0078】
(F5)上述した第3実施形態の可塑化装置100cにおいて、吸引部520が設けられなくてもよい。この場合であっても、送風機510によって給気通路418から空気を供給することによって、排気通路419から水蒸気を含んだ空気を押し出すことができる。
【0079】
(F6)上述した各実施形態の可塑化装置100~100eにおいて、収容部400~400d内の温度を計測する温度センサー、あるいは、収容部400~400d内の湿度を計測する湿度センサーが設けられてもよい。温度センサーによって計測される温度が所定の温度よりも低い場合、あるいは、湿度センサーによって計測される湿度が所定の湿度よりも高い場合、つまり、結露が生じやすい状況である場合には、制御装置15,15eは、第1ヒーター113の温度を上昇させてもよい。この場合、収容部400~400d内の温度が上昇して飽和水蒸気量が増加するので、結露が生じにくくなる。また、結露が生じやすい状況である場合には、制御装置15,15eは、成形品の成型サイクルを長くしてもよい。この場合、収容部400~400d内で発生する単位時間当たりの水蒸気の発生量を、収容部400~400dから部材間の隙間等を介して排出される単位時間当たりの水蒸気の排出量よりも少なくすることができるので、収容部400~400d内の水蒸気量を低減できる。
【0080】
(F7)上述した第4実施形態の可塑化装置100dにおいて、乾燥部530は、第3冷却部531によって空気を冷却することによって空気の湿度を低下させている。これに対して、乾燥部530は、空気を圧縮することによって空気の湿度を低下させるように構成されてもよいし、水分を吸着しやすい固体に空気を接触させることによって空気の湿度を低下させるように構成されてもよいし、水分を吸収しやすい液体に空気を接触させることによって空気の湿度を低下させるように構成されてもよい。
【0081】
(F8)上述した各実施形態の可塑化装置100~100eにおいて、駆動モーター118を冷却する第1冷却部425は、収容部400~400dの蓋部420~420dに埋設された、冷媒が流れる配管によって構成されている。これに対して、第1冷却部425は、収容部400~400d外に設けられてもよい。例えば、第1冷却部425は、蓋部420~420dの-X方向側の面上に配置された、冷媒が流れる配管によって構成されてもよい。
【0082】
G.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0083】
(1)本開示の第1の形態によれば、材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターの駆動力によって回転軸を中心にして回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、前記駆動モーターと前記スクリューとの間に配置され、前記駆動モーターの前記駆動力を前記スクリューに伝達する減速機と、前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記可塑化材料が流入する貫通孔が設けられたバレルと、前記スクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する第1ヒーターと、前記駆動モーターを冷却する第1冷却部と、前記第1冷却部と前記減速機との間に配置された断熱部と、を備える。前記断熱部の少なくとも一部は、前記スクリューの前記回転軸に沿って見たときに、前記第1冷却部に重なる。
この形態の可塑化装置によれば、第1冷却部と減速機との間に断熱部が配置されているので、第1ヒーターと断熱部との間の温度勾配を小さくすることができる。そのため、可塑化装置内で結露が生じることを抑制できる。
【0084】
(2)上記形態の可塑化装置において、前記断熱部は、前記スクリューの前記回転軸に沿って見たときに、前記第1冷却部の形状に沿って設けられてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、第1冷却部を断熱部で覆うことができるので、第1ヒーターと断熱部との間の温度勾配を効果的に小さくすることができる。
【0085】
(3)上記形態の可塑化装置は、前記スクリューの外周に配置された第2冷却部を有してもよい。
この形態の可塑化装置によれば、第2冷却部によってスクリューの外周部分の温度をスクリューの中央部分の温度よりも低く保つことができるので、スクリューとバレルとの間で材料が搬送されにくくなることを抑制できる。そのため、貫通孔に流入する可塑化材料の量が変動することを抑制できる。
【0086】
(4)上記形態の可塑化装置は、前記スクリューと前記バレルとの間に前記材料を供給するための材料通路と、前記材料通路から分岐した排気通路と、を有してもよい。
この形態の可塑化装置によれば、収容部内の水蒸気を排気通路から排出できるので、収容部内で結露が生じることを効果的に抑制できる。
【0087】
(5)上記形態の可塑化装置は、前記排気通路を加熱する第2ヒーターを有してもよい。
この形態の可塑化装置によれば、第2ヒーターによって排気通路の温度を高めることができるので、排気通路で結露が生じることを抑制できる。
【0088】
(6)上記形態の可塑化装置は、前記スクリューを収容する収容部と、前記収容部内に気体を供給する送風機と、を備えてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、収容部内に気体を供給することによって、収容部内の気体の相対湿度を低下させることができる。そのため、収容部内で結露が生じることを効果的に抑制できる。
【0089】
(7)上記形態の可塑化装置は、前記スクリューを収容する収容部と、前記収容部内の気体を吸引する吸引部と、を備えてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、収容部内の水蒸気を含んだ気体を吸引部によって吸引できるので、収容部内の水蒸気量を減少させることができる。そのため、収容部内で結露が生じることを効果的に抑制できる。
【0090】
(8)上記形態の可塑化装置は、前記収容部内に供給される気体を乾燥させる乾燥部を備えてもよい。
この形態の可塑化装置によれば、乾燥部によって乾燥された気体を収容部内に供給することができるので、収容部内の気体の相対湿度を効果的に低下させることができる。
【0091】
(9)上記形態の可塑化装置において、前記乾燥部は、前記収容部内に供給される気体を冷却する第3冷却部と、前記第3冷却部によって冷却された気体を加熱する第3ヒーターとを有してもよい。
この形態の可塑化装置によれば、第3冷却部によって気体中の水分を凝集させて、気体の相対湿度を低下させることができる。さらに、第3冷却部による冷却によって低下した気体の温度を、第3ヒーターによって高めることができるので、低温な気体が収容部内に供給されて収容部内で結露が生じることを抑制できる。
【0092】
(10)上記形態の可塑化装置において、前記第3ヒーターは、前記第1ヒーターであってもよい。
この形態の可塑化装置によれば、材料を可塑化する第1ヒーターによって、第3冷却部で冷却された気体の温度を高めることができるので、消費電力を小さくできる。
【0093】
(11)本開示の第2の形態によれば、射出成形装置が提供される。この射出成形装置は、上記形態の可塑化装置と、前記貫通孔から流出した前記可塑化材料を、成形型に射出するノズルと、を備える。
この形態の射出成形装置によれば、可塑化装置内で結露が生じることを抑制できる。
【0094】
(12)本開示の第3の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、上記形態の可塑化装置と、前記貫通孔から流出した前記可塑化材料を、ステージに向けて吐出するノズルと、を備える。
この形態の三次元造形装置によれば、可塑化装置内で結露が生じることを抑制できる。
【0095】
本開示は、可塑化装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、射出成形装置、三次元造形装置等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0096】
10…射出成形装置、11…射出装置、12…成形型、13…型締装置、15…制御装置、30…ホッパー、32…材料通路、33…排気通路、35…第2ヒーター、100…可塑化装置、111…フラットスクリュー、112…バレル、113…第1ヒーター、114…ノズル、116…連通孔、118…駆動モーター、201…溝形成面、212…対向面、300…減速機、400…収容部、410…本体部、415…第2冷却部、418…給気通路、419…排気通路、420…蓋部、421…底面部、422…側面部、425…第1冷却部、426…冷媒導入口、427…冷媒排出口、430…第1断熱部、450…第2断熱部、510…送風機、520…吸引部、530…乾燥部、531…第3冷却部、532…第3ヒーター、600…三次元造形装置、610…造形ステージ、620…移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13