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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241029BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020202754
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090384
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-08-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】桂 健志郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 寛生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳明
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219919(JP,A)
【文献】特開2020-068601(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008424(WO,A1)
【文献】特開2018-098891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源が提供する第1の電力の態様から負荷装置が要求する第2の電力の態様へ変換する電力変換部と、
前記電源に接続されると共に、前記電力変換部にも接続される一対のブスバー構造体と、を備え、
前記ブスバー構造体は、前記電源に接続される導電層と、接地電位に接続される接地層と、前記導電層と前記接地層との間に挟み込まれる絶縁層と、を有し、
前記一対のブスバー構造体は、前記電源の第1の出力に接続されると共に前記電力変換部に接続される第1のブスバー構造体と、前記電源の第2の出力に接続されると共に前記電力変換部に接続される第2のブスバー構造体と、を有し、
前記第1のブスバー構造体は、前記電源の前記第1の出力に接続される第1の導電層と、前記接地電位に接続される第1の接地層と、前記第1の導電層と前記第1の接地層との間に挟み込まれる第1の絶縁層と、を含み、
前記第2のブスバー構造体は、前記電源の前記第2の出力に接続される第2の導電層と、前記接地電位に接続される第2の接地層と、前記第2の導電層と前記第2の接地層との間に挟み込まれる第2の絶縁層と、を含み、
前記第1の導電層は、前記第1の接地層に重複する第1の導電容量部と、前記第1の接地層には重複しない第1の導電誘導部と、を含み、
前記第2の導電層は、前記第2の接地層に重複する第2の導電容量部と、前記第2の接地層には重複せず、前記第1の導電層にも重複しない第2の導電誘導部と、を含む、電力変換装置。
【請求項2】
電源が提供する第1の電力の態様から負荷装置が要求する第2の電力の態様へ変換する電力変換部と、
前記電源に接続されると共に、前記電力変換部にも接続される一対のブスバー構造体と、を備え、
前記ブスバー構造体は、前記電源に接続される導電層と、接地電位に接続される接地層と、前記導電層と前記接地層との間に挟み込まれる絶縁層と、を有し、
前記一対のブスバー構造体は、前記電源の第1の出力に接続されると共に前記電力変換部に接続される第1のブスバー構造体と、前記電源の第2の出力に接続されると共に前記電力変換部に接続される第2のブスバー構造体と、を有し、
前記第1のブスバー構造体は、前記電源の前記第1の出力に接続される第1の導電層と、前記接地電位に接続される第1の接地層と、前記第1の導電層と前記第1の接地層との間に挟み込まれる第1の絶縁層と、を含み、
前記第2のブスバー構造体は、前記電源の前記第2の出力に接続される第2の導電層と、前記接地電位に接続される第2の接地層と、前記第2の導電層と前記第2の接地層との間に挟み込まれる第2の絶縁層と、を含み、
前記第1の導電層は、前記第1の接地層に重複する第1の導電容量部と、前記第1の接地層には重複しない第3の導電誘導部と、を含み、
前記第2の導電層は、前記第2の絶縁層に重複する第2の導電容量部と、前記第2の接地層には重複せず、前記第3の導電誘導部には重複する第4の導電誘導部と、を含む、電力変換装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、エポキシ樹脂を含む材料によって形成されている、請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、電磁両立性に関する規格(EMC:Electromagnetic Compatibility)を満たす必要がある。例えば、特許文献1~5は、電力変換装置及び電力変換装置に関する実装構造に関する技術を開示する。これらの技術は、電磁両立性に関する規格を満たすためのノイズ対策に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6291599号
【文献】公開実用新案公報平4-76120号
【文献】特開2005-12908号公報
【文献】特開2016-92924号公報
【文献】特開2005-73342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置の適用先は、多岐にわたる。そのいずれの適用先でも、電力変換装置が所望の機能を発揮するために電磁両立性のさらなる向上が望まれている。電磁両立性の向上とは、すなわち、ノイズを低減する効果を高めることに通じる。そこで、本発明は、ノイズを低減する効果を高めることが可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態である電力変換装置は、電源が提供する第1の電力の態様から負荷装置が要求する第2の電力の態様へ変換する電力変換部と、電源に接続されると共に、電力変換部にも接続される一対のブスバー構造体と、を備える。ブスバー構造体は、電源に接続される導電層と、接地電位に接続される接地層と、導電層と接地層との間に挟み込まれる絶縁層と、を有する。
【0006】
一対のブスバー構造体は、導電層と接地層とによってコンデンサの機能を発揮することができる。さらに、このコンデンサの静電容量は、導電層と接地層との間に挟み込まれる絶縁層の厚さによって規定される。絶縁層の厚さは、所定の範囲に収まるように制御しやすい。従って、一方のブスバー構造体によって実現されるコンデンサの静電容量と、他方のブスバー構造体によって実現されるコンデンサの静電容量と、を一致させやすくなるので、ひいては、ノイズを低減する効果に寄与するそれぞれのインピーダンスの差異を小さくすることができる。その結果、ノイズを低減する効果を高めることができる。
【0007】
一形態において、一対のブスバー構造体は、電源の第1の出力に接続されると共に電力変換部に接続される第1のブスバー構造体と、電源の第2の出力に接続されると共に電力変換部に接続される第2のブスバー構造体と、を有してもよい。第1のブスバー構造体は、電源の第1の出力に接続される第1の導電層と、接地電位に接続される第1の接地層と、第1の導電層と第1の接地層との間に挟み込まれる第1の絶縁層と、を含んでもよい。第2のブスバー構造体は、電源の第2の出力に接続される第2の導電層と、接地電位に接続される第2の接地層と、第2の導電層と第2の接地層との間に挟み込まれる第2の絶縁層と、を含んでもよい。この構成によれば、第1のブスバー構造体及び第2のブスバー構造体が奏するフィルタ機能を高めることができる。
【0008】
一形態において、第1の導電層は、第1の接地層に重複する第1の導電容量部と、第1の接地層には重複しない第1の導電誘導部と、を含んでもよい。第2の導電層は、第2の接地層に重複する第2の導電容量部と、第2の接地層には重複せず、第1の導電層にも重複しない第2の導電誘導部と、を含んでもよい。この構成によれば、第1のブスバー構造体及び第2のブスバー構造体が奏するフィルタ機能を高めることができる。
【0009】
一形態において、第1の導電層は、第1の接地層に重複する第1の導電容量部と、第1の接地層には重複しない第3の導電誘導部と、を含んでもよい。第2の導電層は、第2の絶縁層に重複する第2の導電容量部と、第2の接地層には重複せず、第3の導電誘導部には重複する第4の導電誘導部と、を含んでもよい。この構成によれば、第1のブスバー構造体及び第2のブスバー構造体が奏するフィルタ機能を高めることができる。
【0010】
一形態において、絶縁層は、エポキシ樹脂を含む材料によって形成されていてもよい。この構成によれば、電力変換装置を容易に製造することができる。
【0011】
一形態において、一対のブスバー構造体は、電源の第1の出力に接続されると共に電力変換部に接続される第1のブスバー構造体と、電源の第2の出力に接続されると共に電力変換部に接続される第2のブスバー構造体と、を有し、第1のブスバー構造体は、電源の第1の出力に接続される第1の導電層と、接地電位に接続される共通接地層と、第1の導電層と共通接地層との間に挟み込まれる第1の絶縁層と、によって構成され、第2のブスバー構造体は、電源の第2の出力に接続される第2の導電層と、共通接地層と、第2の導電層と共通接地層との間に挟み込まれる第2の絶縁層と、によって構成されてもよい。この構成によっても、ノイズを低減する効果を高めることができる。
【0012】
本発明の別の形態は、電源が提供する第1の電力の態様から負荷装置が要求する第2の電力の態様へ変換する電力変換部と、電源の正極及び負極の一方と電力変換部とに接続した平板状の第1の導電層と、電源の正極及び負極の他方と電力変換部とに接続した平板状の第2の導電層と、接地電位に接続された共通接地層と、を備え、第1の導電層と第2の導電層とは、距離をもって互いに平行に配置され、共通接地層は、第1の導電層と第2の導電層との間に配置され、共通接地層から第1の導電層までの距離は、共通接地層から第2の導電層までの距離と等しい。この構成によっても、ノイズを低減する効果を高めることができる。
【0013】
本発明のさらに別の形態は、電源が提供する第1の電力の態様から負荷装置が要求する第2の電力の態様へ変換する電力変換部と、電源の正極及び負極の一方と電力変換部とに接続した平板状の第1の導電層と、電源の正極及び負極の他方と電力変換部とに接続した平板状の第2の導電層と、接地電位に接続された共通接地層と、を備え、第1の導電層と第2の導電層とは、距離をもって互いに平行に配置され、共通接地層は、第1の導電層に対向する部位と、第2の導電層とに対向する部位を備えており、第1の導電層と共通接地層との間の静電容量と、第2の導電層と共通接地層との間の静電容量とは、同等である。この構成によっても、ノイズを低減する効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ノイズを低減する効果を高めることが可能な電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態の電力変換装置の適用例を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の電力変換装置を示す回路図である。
図3図3は、図1に示す電力変換装置の分解斜視図である。
図4図4は、図1に示す電力変換装置の断面図である。
図5図5は、第2実施形態の電力変換装置を示す回路図である。
図6図6は、第2実施形態の第1のブスバー構造体及び第2のブスバー構造体を示す分解斜視図である。
図7図7は、第3実施形態の電力変換装置を示す回路図である。
図8図8は、第3実施形態の第1のブスバー構造体及び第2のブスバー構造体を示す分解斜視図である。
図9図9は、第4実施形態の電力変換装置を示す回路図である。
図10図10は、第4実施形態の第1のブスバー構造体及び第2のブスバー構造体を示す分解斜視図である。
図11図11(a)は変形例1の電力変換装置の積層構造を示す断面図である。図11(b)は変形例2の電力変換装置の積層構造を示す断面図である。図11(c)は変形例3の電力変換装置の積層構造を示す断面図である。図11(d)は変形例4の電力変換装置の積層構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示すように、電力変換装置1は、電源Bから受けた電力を負荷装置Mが要求する電力に変換する。電源Bは、直流電力を出力する。電源Bは、電源正極端子B1と、電源負極端子B2と、を有する。負荷装置Mは、例えば、三相交流モータである。三相交流モータは、例えば、インペラを回転させる動力源として用いてよい。従って、電力変換装置1は、電動コンプレッサや電動ブロアの電気部品として採用してもよい。また、電動コンプレッサは、例えば、車両などの移動体に搭載してもよい。
【0018】
実施形態の電力変換装置1は、直流電力を交流電力に変換する。つまり、本実施形態では、第1の電力の態様として直流電力を例示すると共に、第2の電力の態様として交流電力を例示する。従って、電力変換装置1は、狭義のインバータである。また、電力変換装置1は、交流電力を直流電力に変換してもよい。つまり、電力変換装置1は、コンバータであってもよい。さらに、電力変換装置1は、第1の態様の直流電力を第2の態様の直流電力に変換するものでもよい。
【0019】
電力変換装置1は、入力端子として、正極端子S1と、負極端子S2と、接地端子S3Aと、を有する。正極端子S1は、電源正極端子B1に接続されている。負極端子S2は、電源負極端子B2に接続されている。接地端子S3Aは、負荷装置Mの接地電位に接続されている。例えば、接地端子S3Aは、負荷装置Mのフレーム電極に接続されてもよい。さらに、電力変換装置1は、出力端子として、第1の出力端子E1と、第2の出力端子E2と、第3の出力端子E3と、を有する。これらの出力端子E1、E2、E3は、負荷装置Mに接続されている。例えば、出力端子E1、E2、E3は、三相交流モータのU相、V相、W相に対応する。
【0020】
電力変換装置1は、第1のブスバー構造体10と、第2のブスバー構造体20(図3参照)と、スイッチ回路T(電力変換部)と、を有する。
【0021】
第1のブスバー構造体10は、正極端子S1に接続されている。さらに、第1のブスバー構造体10は、スイッチ回路Tにも接続されている。第2のブスバー構造体20は、負極端子S2に接続されている。さらに、第2のブスバー構造体20は、スイッチ回路Tにも接続されている。第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20は、電源Bから受けた直流電力をスイッチ回路Tに渡す。また、第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20は、スイッチ回路Tに渡される直流電力に重畳するノイズを減らす。つまり、第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20は、フィルタとしての機能を奏する。
【0022】
スイッチ回路Tは、直流電力を疑似的な交流電力に変換する。スイッチ回路Tの具体的な構成は、特に限定されない。スイッチ回路Tは、例えば、MOSFETやIGBTといった複数の半導体スイッチによって構成されていてもよい。
【0023】
図2は、図1に示す電源Bと、電力変換装置1と、負荷装置Mと、の電気的な接続構成を示す回路図である。電力変換装置1は、電気的な構成要素として、直流コンデンサであるXコンデンサCxと、第1のYコンデンサCy1と、第2のYコンデンサCy2と、スイッチ回路Tと、を含む。これらのうち、XコンデンサCx及びスイッチ回路Tは、物理的に存在する電気部品である。一方、第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2は、電気部品として実装されるものではない。第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2は、第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20の構造によって現れる機能である。つまり、電力変換装置1は、電気回路として示した場合に第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2に相当する機能部品を有するが、物理的な電気部品として第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2を備えるものではない。
【0024】
正極端子S1は、接続点P1、P3に接続されている。接続点P1、P3は、物理的には、第1のブスバー構造体10の第1の導電層11である。負極端子S2は、接続点P2、P5に接続されている。接続点P2、P5は、物理的には、第2のブスバー構造体20の第2の導電層21である。接続点P4は、物理的には、第1のブスバー構造体10の第1の接地層12であると共に、第2のブスバー構造体20の第2の接地層22である。
【0025】
接続点P1と接続点P2との間には、XコンデンサCxが配置されている。接続点P1はXコンデンサCxの正極端子Cx1に接続されている。接続点P2はXコンデンサCxの負極端子Cx2に接続されている。なお、図1及び図2には、1個のXコンデンサCxを示しているが、XコンデンサCxの数は、1個に限定されない。XコンデンサCxは、1個以上であってもよく、例えば3個であってもよい。
【0026】
接続点P3、P5の間には、第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2が存在する。第1のYコンデンサCy1は、接続点P3、P4の間に存在する。第2のYコンデンサCy2は、接続点P5、P4の間に存在する。接続点P4は、接地端子S3Aに接続されている。従って、接続点P4における電位は、接地電位である。つまり、接続点P4は、物理的には、第1の接地層12及び第2の接地層22である。
【0027】
スイッチ回路Tは、図2において、スイッチG1~G6と、接続点P6~P14と、を含む。スイッチ回路Tの接続点P6は、第1のブスバー構造体10の接続点P3に接続されている。スイッチ回路Tの接続点P8は、第2のブスバー構造体20の接続点P5に接続されている。
【0028】
接続点P6、P7、P8及びスイッチG1、G2は、第1のレグを構成する。スイッチG1は、接続点P6、P7に接続されている。スイッチG2は、接続点P8、P7に接続されている。接続点P7は、第1の出力端子E1に接続されている。
【0029】
接続点P9、P10、P11及びスイッチG3、G4は、第2のレグを構成する。スイッチG3は、接続点P9、P10に接続されている。スイッチG4は、接続点P11、P10に接続されている。接続点P10は、第2の出力端子E2に接続されている。
【0030】
接続点P12、P13、P14及びスイッチG5、G6は、第3のレグを構成する。スイッチG5は、接続点P12、P13に接続されている。スイッチG6は、接続点P14、P13に接続されている。接続点P13は、第3の出力端子E3に接続されている。
【0031】
図3は、電力変換装置1を分解して示す斜視図である。電力変換装置1は、第1のブスバー構造体10と、第2のブスバー構造体20と、第3の絶縁層30と、を含む。第3の絶縁層30は、第1のブスバー構造体10を第2のブスバー構造体20から電気的に絶縁する。なお、図3では、第3の絶縁層30を簡略化して示す。
【0032】
第1のブスバー構造体10は、第1の導電層11と、第1の接地層12と、第1の絶縁層13と、を含む。なお、図3では、第1の絶縁層13を簡略化して示す。
【0033】
第1の導電層11は、導電性を有する金属材料からなる板状の部材である。第1の導電層11は、例えば、銅板である。第1の導電層11は、第1の入力端部11aと、第1の接続部11eと、第1の非接続部11sと、を有する。第1の入力端部11aは、正極端子S1に接続されている。第1の接続部11eは、図2の回路図における接続点P1に対応する。第1の接続部11eは、XコンデンサCxの正極端子Cx1へ電気的に接続される。第1の非接続部11sは、XコンデンサCxの負極端子Cx2へ電気的に接続されない。例えば、第1の非接続部11sは、貫通穴であり、その内径は、XコンデンサCxの負極端子Cx2の直径よりも大きい。
【0034】
第1の接地層12は、第1の導電層11から離間して配置される。第1の接地層12は、導電性を有する金属材料からなる板状又は膜状の部材である。第1の接地層12は、例えば、銅により形成される。第1の接地層12は、接地端子S3Aと、非接続部12sと、を有する。接地端子S3Aは、接地電位に接続されている。本実施形態では、接地端子S3Aは、負荷装置Mに接続される。接地端子S3Aは、後述する第1の接地辺部12bから突出した部位である。この構成によると、接地端子S3Aは、第1の導電層11と対面しないので、静電容量を構成する部位として機能しない。接地端子S3Aは、第1の絶縁層13、第2の絶縁層23及び第3の絶縁層30と重複する。一方、接地端子S3Aは、第1の導電層11、第2の導電層21及び第2の接地層22と重複していない。その結果、接地端子S3Aと重複する部位には、導電性を有する部位が存在しないので、接地端子S3Aに対してケーブルなどを接続する構造を容易に形成できる。
【0035】
第1の接地層12の上には、XコンデンサCxが配置される。従って、XコンデンサCxの正極端子Cx1及び負極端子Cx2は、第1の接地層12を貫通して、第1の導電層11又は第2の導電層21に至る。XコンデンサCxの正極端子Cx1及び負極端子Cx2は、第1の接地層12と電気的に接続されない。そこで、第1の接地層12の非接続部12sは、XコンデンサCxの正極端子Cx1及び負極端子Cx2を電気的に接続されないように挿通させる。非接続部12sは、貫通穴であり、その内径は、XコンデンサCxの正極端子Cx1及び負極端子Cx2の外径よりも大きい。
【0036】
第1の接地層12及び第1の導電層11は、並行平板型の第1のYコンデンサCy1として機能する。第1のYコンデンサCy1は、第1の接地層12と第1の導電層11とが互いに対面する面積と、第1の接地層12から第1の導電層11までの距離と、に応じた静電容量を有する。つまり、第1の接地層12は、第1の導電層11と重複する第1の接地容量部12cを含む。なお、第1の接地層12は、第1の導電層11と重複しない部分も含む。第1の接地層12の幅は、第1の導電層11の幅よりも大きい。第1の接地層12の第1の導電層11と重複しない部分には、後述するビア40が設けられてもよい。
【0037】
なお、第1の接地層12の第1の導電層11と重複しない部分には、ビア40を設けなくてもよい。ビア40を設けない場合には、後述する第2の導電層21の接地端子S3Bに対して負荷装置Mの接地電位が直接に接続される。ビア40を設けない場合であっても、インピーダンスの差異を小さくするという効果を得ることができる。
【0038】
第1の導電層11は、第1の接地層12と重複する第1の導電容量部11cを含む。なお、第1の導電層11は、第1の接地層12と重複しない部分も含む。第1の導電層11の幅は、第1の接地層12の幅よりも狭い。一方、第1の導電層11の長さは、第1の接地層12の長さよりも長い。
【0039】
なお、第1の導電層11の幅と第1の接地層12の幅との関係は、上述の関係に限定されない。第1の導電層11の幅は、第1の接地層12の幅と同じであってもよい。さらに、第1の導電層11の幅は、第1の接地層12の幅より小さくてもよい。
【0040】
第1の接地層12と第1の導電層11との間には、第1の絶縁層13が挟み込まれている(図4参照)。従って、第1の接地層12から第1の導電層11までの距離D1は、第1の絶縁層13によって規定される。第1の絶縁層13は、電気絶縁性を有する絶縁性材料によって構成されている。例えば、第1の絶縁層13は、エポキシ樹脂を含む樹脂材料によって構成されている。このような、エポキシ樹脂を含む材料により形成される絶縁層と、金属材料により形成される導電層が積層された構造を有する電力変換装置1は、いわゆる多層のプリント基板としての構造を有する。
【0041】
第2のブスバー構造体20は、第1のブスバー構造体10と同様の構成を有する。つまり、第2のブスバー構造体20は、第2の導電層21と、第2の接地層22と、第2の絶縁層23と、を含む。なお、図3では、第2の絶縁層23を簡略化して示す。
【0042】
第2の導電層21は、第2の入力端部21aと、第2の接続部21eと、第2の非接続部21sと、を有する。
【0043】
第2の入力端部21aは、負極端子S2に接続されている。第2の接続部21eは、図2の回路図における接続点P2に対応する。第2の接続部21eは、XコンデンサCxの負極端子Cx2へ電気的に接続される。第2の非接続部21sは、XコンデンサCxの正極端子Cx1へ電気的に接続されない。第2の接地層22及び第2の導電層21は、並行平板型の第2のYコンデンサCy2として機能する。第2のYコンデンサCy2は、第2の接地層22と第2の導電層21とが互いに対面する面積と、第2の接地層22から第2の導電層21までの距離D2(図4参照)と、に応じた静電容量を有する。つまり、第2の接地層22は、第2の導電層21と重複する第2の接地容量部22cを含む。第2の導電層21は、第2の接地層22と重複する第2の導電容量部21cを含む。
【0044】
ここで、第2の接地層22は、第1の接地層12に対して電気的に接続されている。つまり、第2の接地層22の電位は、第1の接地層12の電位と等しい。従って、第2の接地層22の電位も接地電位である。第2の接地層22は、複数のビア40によって第1の接地層12に接続されている。ビア40は、第1の接地層12における第1の接地辺部12bと、第2の接地層22における第2の接地辺部22bと、の間に配置されている。ビア40は、いわゆる貫通電極であり、第1の絶縁層13、第2の絶縁層23及び第3の絶縁層30を貫通する。
【0045】
なお、第2の接地層22は、接地端子S3Bを付加的に備えてもよい。接地端子S3Bは、接地端子S3Aのように負荷装置Mの接地電位に対して直接に接続されてもよい。また、接地端子S3Bには、負荷装置Mの接地電位に対して直接に接続されなくてもよい。直接に接続されない場合には、第2の接地層22は、第1の接地層12及びビア40を介して接地電位を受ける。第2の接地層22が接地端子S3Bを備える場合には、第2の接地層22の平面形状を第1の接地層12の平面形状に一致させることができる。その結果、第1の接地層12と負荷装置Mとの間のインピーダンスと、第2の接地層22と負荷装置Mとの間のインピーダンスとの差異を小さくすることができる。なお、インピーダンスの差異が許容できる範囲であれば、接地端子S3Bを省略してもよい。
【0046】
換言すると、接地端子S3Aは、第2の接地層22と重複してもよい。第1の接地層12が接地端子S3Aを含んでおり、第2の接地層22も接地端子S3Bを含んでもよい。この構成によれば負荷装置Mの接地から第1の接地層12までのインピーダンスと、負荷装置Mの接地から第2の接地層22までのインピーダンスと、を揃えることができる。
【0047】
第1の接地辺部12b及び第2の接地辺部22bは、平面視して、第1の導電層11及び第2の導電層21からはみ出た部分である。第1の導電層11及び第2の導電層21は、一方の辺部に設けられたビア40と他方の辺部に設けられたビア40との間に配置されている。そうすると、ビア40は、第1の導電層11及び第2の導電層21に対するシールド効果を発揮する。この構造によると、第1の導電層11における第1の導電容量部11c及び第2の導電層21における第2の導電容量部21cは、第1の接地層12と第2の接地層22の間に配置されると共に、ビア40の間にも配置される。その結果、第1の接地層12、第2の接地層22及び複数のビア40は、第1の導電容量部11c及び第2の導電容量部21cを外部から侵入しようとするノイズから保護するシールドとして機能する。
【0048】
さらに、第1の接地層12、第2の接地層22及び複数のビア40は、外部からの影響を抑制すると共に、外部への影響も抑制する。つまり、電力変換装置1が外部へ発するノイズを低減することができる。電力変換回路を含む電力変換装置1の場合は、後者の外部へのノイズの放射を抑制する効果が期待される。
【0049】
ところで、第1のYコンデンサCy1は、第1の導電容量部11cと第1の接地容量部12cとにより構成され、第2のYコンデンサCy2は、第2の導電容量部21cと第2の接地容量部22cとにより構成されることはすでに述べた。
【0050】
第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2の静電容量は、物理的な構成要素の寸法によって規定される。具体的には、第1のYコンデンサCy1の静電容量は、第1の導電容量部11cと第1の接地容量部12cとの重複面積と、第1の導電容量部11cから第1の接地容量部12cまでの距離D1(つまり、第1の絶縁層13の厚み)と、によって規定される。同様に、第2のYコンデンサCy2の静電容量は、第2の導電容量部21cと第2の接地容量部22cとの重複面積と、第2の導電容量部21cから第2の接地容量部22cまでの距離D2(つまり、第2の絶縁層23の厚み)と、によって規定される。
【0051】
これらの重複面積及び絶縁層の厚みは、プリント基板の製造技術を適用することよって、精度よくコントロールすることが可能である。つまり、第1のYコンデンサCy1の静電容量を所望の範囲に収めることが可能であり、第2のYコンデンサCy2の静電容量を所望の範囲に収めることが可能である。換言すると、第1のYコンデンサCy1の静電容量と第2のYコンデンサCy2の静電容量との差異を、小さくすることができる。換言すると、第1の導電層11及び第1の接地層12の間の第1のインピーダンスと、第2の導電層21及び第2の接地層22の間の第2のインピーダンスと、の差分を小さくすることができる。従って、インピーダンスの不平衡に起因するノイズの発生を低減することができる。
【0052】
さて、電力変換装置では、コモンモードノイズへの対策としてEMCフィルタ、Yコンデンサ及びコモンモードチョークコイルを採用していた。EMCフィルタやYコンデンサの採用は、電力変換装置の製造コストを増加させる要因であった。さらに、物理的な電気部品の実装は、電力変換装置の寸法の大型化や、重量の増加を招く。さらに、一対のYコンデンサにおいて、2個のコンデンサの静電容量を精度よく一致させることは難しい。この不一致は、正負電源と対地間のインピーダンスの不平衡の原因となり、結果的にノイズを放出してしまうという問題があった。
【0053】
上記の問題に鑑み、電力変換装置1は、ブスバーにおいて正極導体と接地導体とが互いに平行となるように近接して配置する。同様に、負極導体と接地導体とが互いに平行となるように近接して配置する。その結果、正極導体と接地導体とによってコンデンサの機能が発揮されると共に、負極導体と接地導体とによってもコンデンサの機能が発揮される。そうすると、フィルタ素子であるYコンデンサを電気部品として実装する必要がない。従って、フィルタ機能を有する電力変換装置1を小型化することが可能であるし、さらに、軽量化することも可能である。そのうえ、そもそも電気部品として準備する必要がないので、製造コストも低下することができる。そして、正極導体から接地導体までの距離が負極導体から接地導体までの距離と等しくなるように構成する。この構成によると、正負導体と対地間のインピーダンスが平衡するので、インピーダンスの不平衡によるノイズを低減することも可能となる。
【0054】
要するに、電力変換装置1は、第1の電力の態様から第2の電力の態様へ変換するスイッチ回路Tと、電源Bに接続されると共に、スイッチ回路Tに接続される第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20と、を備える。第1のブスバー構造体10は、電源Bに接続される第1の導電層11と、接地電位に接続される第1の接地層12と、第1の導電層11と第1の接地層12との間に挟み込まれる第1の絶縁層13と、を有する。第2のブスバー構造体20は、電源Bに接続される第2の導電層21と、接地電位に接続される第2の接地層22と、第2の導電層21と第2の接地層22との間に挟み込まれる第2の絶縁層23と、を有する。
【0055】
第1のブスバー構造体10は、第1の導電層11と第1の接地層12とによって第1のYコンデンサCy1の機能を発揮することができる。第2のブスバー構造体20も同様に、第2のYコンデンサCy2の機能を発揮することができる。さらに、第1のYコンデンサCy1の静電容量は、第1の導電層11と第1の接地層12との間に挟み込まれる第1の絶縁層13の厚さによって規定される。第1の絶縁層13の厚さは、所定の範囲に収まるように制御しやすい。従って、第1のブスバー構造体10によって実現される第1のYコンデンサCy1の静電容量と、第2のブスバー構造体20によって実現される第2のYコンデンサCy2の静電容量と、を一致させやすくなる。そして、ひいては、ノイズの低減効果に寄与する第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20におけるそれぞれのインピーダンスの差異を小さくすることができる。その結果、ノイズを低減する効果を高めることができる。
【0056】
例えば、第1のYコンデンサCy1と第2のYコンデンサCy2によれば、コモンモードノイズの放出を抑制する効果を得ることができる。
【0057】
<第2実施形態>
第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20は、フィルタとしての機能を奏することを既に述べた。そして、第1実施形態の電力変換装置1では、第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20が、いわゆる第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2として機能する構造を開示した。電磁両立性を高めるためのフィルタとして、いわゆるEMCフィルタが知られている。EMCフィルタは、第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2だけでなく、そのほかの電気部品を備えていてもよい。図5の回路図に示すように、第2実施形態の電力変換装置1Aは、EMCフィルタを構成するための機能的な電気部品要素として、第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2に加えて、さらに、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2を含む。図5では、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2を明示的に回路記号を用いて示している。しかし、第1のYコンデンサCy1と同様に、第1のブスバー構造体10A及び第2のブスバー構造体20Aの構造によって、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2の機能が発揮されるものである。従って、目視が可能なコイル部品として、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2が実装されているわけではない。
【0058】
第1のチョークコイルL1は、正極端子S1と接続点P1との間に存在する。つまり、第1のチョークコイルL1は、直列接続されたインダクタンス成分である。従って、第1のチョークコイルL1は、第1のブスバー構造体10Aによってその機能が発揮される。第2のチョークコイルL2は、負極端子S2と接続点P2との間に存在する。つまり、第2のチョークコイルL2も、直列接続されたインダクタンス成分である。従って、第2のチョークコイルL2は、第2のブスバー構造体20Aによってその機能が発揮される。その結果、第1のYコンデンサCy1、第2のYコンデンサCy2、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2によって、ノイズフィルタを構成することができる。
【0059】
図6は、第1の導電層11A、第1の接地層12、第2の導電層21A及び第2の接地層22を抽出して示す。第1のチョークコイルL1としての機能は、第1のブスバー構造体10Aによって発揮される。より詳細には、第1のブスバー構造体10Aを構成する第1の導電層11Aは、第1の導電容量部11cと、第1の導電誘導部11dと、を含む。
【0060】
第1の導電容量部11cは、前述したように、第1のYコンデンサCy1としての機能を発揮する部分である。第1の導電容量部11cは、第1の絶縁層13に重複すると共に第1の接地層12にも重複する。一方、第1の導電誘導部11dは、第1のチョークコイルL1としての機能を発揮する部分である。第1の導電誘導部11dは、第1の導電容量部11cの長辺に沿って突出した片部である。第1の導電誘導部11dの幅は、第1の導電容量部11cの幅よりも狭い。第1の導電誘導部11dは、第1の絶縁層13に重複する。同様に、第1の導電誘導部11dは、第2の絶縁層23及び第3の絶縁層30にも重複する。しかし、第1の導電誘導部11dは、第1の接地層12には重複しない。同様に、第1の導電誘導部11dは、第2の導電層21A及び第2の接地層22にも重複しない。
【0061】
第2のブスバー構造体20Aも同様の構成を有する。つまり、第2のチョークコイルL2としての機能は、第2のブスバー構造体20Aによって発揮される。より詳細には、第2のブスバー構造体20Aを構成する第2の導電層21Aは、第2の導電容量部21cと、第2の導電誘導部21dと、を含む。第2の導電誘導部21dは、第2のチョークコイルL2としての機能を発揮する部分である。第2の導電誘導部21dは、第2の導電容量部21cの長辺に沿って突出した片部である。ここでいう長辺は、第1の導電誘導部11dとは逆側である第2の導電誘導部21dは、第1の絶縁層13に重複する。同様に、第2の導電誘導部21dは、第2の絶縁層23及び第3の絶縁層30にも重複する。しかし、第2の導電誘導部21dは、第2の接地層22には重複しない。同様に、第2の導電誘導部21dは、第1の導電層11A及び第1の接地層12にも重複しない。
【0062】
第2実施形態の電力変換装置1Aは、EMCフィルタを構成するフィルタ素子として、第1のYコンデンサCy1と、第2のYコンデンサCy2と、第1のチョークコイルL1と、第2のチョークコイルL2と、を備えることができる。特に、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2は、ディファレンシャルモードインダクタンスを構成するので、第1のブスバー構造体10A及び第2のブスバー構造体20Aが発揮するフィルタ機能を高めることができる。
【0063】
<第3実施形態>
EMCフィルタは、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2とは別のフィルタ素子を含むこともある。図7の回路図に示すように、第3実施形態の電力変換装置1Bは、EMCフィルタを構成するための機能的な電気部品要素として、第1のYコンデンサCy1及び第2のYコンデンサCy2に加えて、さらに、第3のチョークコイルL3を含む。第3のチョークコイルL3は、XコンデンサCxに対して並列に接続されている。具体的には、第3のチョークコイルL3は、正極端子S1と接続点P1との間、及び、負極端子S2と接続点P2との間、に存在する。このように配置されるチョークコイルは、いわゆるコモンモードチョークコイルとして機能する。第3のチョークコイルL3は、第1のブスバー構造体10B及び第2のブスバー構造体20Bの協働によってその機能が発揮される。
【0064】
図8は、第1の導電層11B、第1の接地層12、第2の導電層21B及び第2の接地層22を抽出して示す。第3のチョークコイルL3としての機能は、第1のブスバー構造体10B及び第2のブスバー構造体20Bの協働によって発揮される。
【0065】
より詳細には、第1のブスバー構造体10Bを構成する第1の導電層11Bは、第1の導電容量部11cと、第3の導電誘導部11fと、を含む。そして、第2のブスバー構造体20Bを構成する第2の導電層21Bは、第2の導電容量部21cと、第4の導電誘導部21fと、を含む。第3の導電誘導部11fは、第1の導電容量部11cの長辺に沿って突出した片部である。第4の導電誘導部21fは、第2の導電容量部21cの長辺に沿って突出した片部である。第2実施形態では、それぞれの誘導部が突出する長辺は互いに異なっていた。第3実施形態では、それぞれの誘導部が突出する長辺の側は、同じである。第3の導電誘導部11fの幅は、第1の導電容量部11cの幅より小さくてもよい。なお、第3の導電誘導部11fの幅は、第1の導電容量部11cの幅と同じであってもよい。
【0066】
第3の導電誘導部11f及び第4の導電誘導部21fは、互いに重複する。また、第3の導電誘導部11f及び第4の導電誘導部21fは、第1の絶縁層13に重複する。同様に、第3の導電誘導部11f及び第4の導電誘導部21fは、第2の絶縁層23及び第3の絶縁層30にも重複する。つまり、第3の導電誘導部11f及び第4の導電誘導部21fは、第3の絶縁層30を挟んで対向する。一方、第3の導電誘導部11f及び第4の導電誘導部21fは、第1の接地層12には重複しない。同様に、第3の導電誘導部11f及び第4の導電誘導部21fは、第2の接地層22にも重複しない。
【0067】
第3実施形態の電力変換装置1Bは、EMCフィルタを構成するフィルタ素子として、第1のYコンデンサCy1と、第2のYコンデンサCy2と、第3のチョークコイルL3を備えることができる。特に、第3のチョークコイルL3は、コモンモードチョークコイルとして機能するので、第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20が発揮するフィルタ機能を高めることができる。
【0068】
<第4実施形態>
EMCフィルタは、第1実施形態にて例示した第1のYコンデンサCy1、第2のYコンデンサCy2と、第2実施形態で例示した第1のチョークコイルL1、第2のチョークコイルL2と、第3実施形態で例示した第3のチョークコイルL3と、を全て備えていてもよい。図9の回路図に示すように、第4実施形態の電力変換装置1Cは、EMCフィルタを構成するための機能的な電気部品要素として、第1のYコンデンサCy1、第2のYコンデンサCy2、第1のチョークコイルL1、第2のチョークコイルL2及び第3のチョークコイルL3を含む。
【0069】
第2実施形態において、第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2は、第1の導電層11A及び第2の導電層21Aが互いに重複しない部分によって構成した。第3実施形態において、第3のチョークコイルL3は、第1の導電層11B及び第2の導電層21Bが互いに重複する部分によって構成した。図10に示すように、第4実施形態の第1の導電層11C及び第2の導電層21Cは、上記の2つの構成を含む。
【0070】
第1の導電容量部11cから突出した部分は、第1の導電誘導部11dと、第3の導電誘導部11fと、を含む。第1の導電誘導部11dは第2の導電層21Cと重複しないが、第3の導電誘導部11fは第2の導電層21Cと重複する。第1の導電誘導部11dは、一方の長辺に沿って延びている。第3の導電誘導部11fは、他方の長辺に沿って延びている。そして、第1の導電誘導部11dは、第3の導電誘導部11fに対して幅方向に延びる導電接続部11hによって接続されている。
【0071】
第2の導電容量部21cから突出した部分は、第2の導電誘導部21dと、第4の導電誘導部21fと、を含む。第2の導電誘導部21dは第1の導電層11Cと重複しないが、第4の導電誘導部21fは第2の導電層21Cと重複する。第2の導電誘導部21d及び第4の導電誘導部21fは、いずれも一方の長辺に沿って延びている。つまり、導電誘導部の重複と非重複は、第1の導電層11Cの形状によって実現されている。なお、導電誘導部の重複と非重複は、第2の導電層21Cの形状によって実現されてもよいし、第1の導電層11C及び第2の導電層21Cの両方によって実現されてもよい。
【0072】
第4実施形態の電力変換装置1Cは、EMCフィルタを構成するフィルタ素子として、第1のYコンデンサCy1と、第2のYコンデンサCy2と、第1のチョークコイルL1と、第2のチョークコイルL2と、第3のチョークコイルL3と、を備えることができる。第1のチョークコイルL1及び第2のチョークコイルL2は、ディファレンシャルモードインダクタンスを構成する。第3のチョークコイルL3は、コモンモードチョークコイルとして機能する。その結果、第1のブスバー構造体10C及び第2のブスバー構造体20Cが発揮するフィルタ機能を高めることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明の電力変換装置は、上記の実施形態に限定されない。例えば、積層プリント基板として構成される電力変換装置の積層構造は、図4に示す構造に限定されない。変形例1~4に例示するように、積層の順を変更してもよいし、付加的な構成を追加してもよい。
【0074】
<変形例1>
図11(a)に示すように、変形例1の第1のブスバー構造体10Dは、第1実施形態の第1のブスバー構造体10に対して、第1の導電層11と第1の接地層12とが入れ替わっていてもよい。第2のブスバー構造体20Dも同様に、第2の導電層21と第2の接地層22とが入れ替わっていてもよい。このような構造によれば、第1の接地層12と第2の接地層22との間に、第3の絶縁層30が配置される。そして、第1の導電層11及び第2の導電層21が基板表面に設けられる。変形例1の電力変換装置1Dによっても、第1実施形態の電力変換装置1と同様の効果を得ることができる。
【0075】
<変形例2>
変形例1の電力変換装置1Dでは、第1のブスバー構造体10Dは、第1の接地層12を有しており、第2のブスバー構造体20Dは、第2の接地層22を有していた。図11(b)の電力変換装置1Eのように、第1の接地層12及び第2の接地層22を共通化した、共通接地層12Sを備えてもよい。例えば、変形例1の第2のブスバー構造体20Dから第2の接地層22と第3の絶縁層30とを省略する。そうすると、第2のブスバー構造体20Eは、第2の導電層21と、第2の絶縁層23と、共通接地層12Sによって構成される。このような構造であっても、第1の導電層11から共通接地層12Sまでの距離と、第2の導電層21から共通接地層12Sまでの距離と、を互いに近づけることができる。従って、変形例2の電力変換装置1Eによっても、第1実施形態の電力変換装置1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
換言すると、電力変換装置1Eは、電源Bが提供する第1の電力の態様から負荷装置Mが要求する第2の電力の態様へ変換するスイッチ回路Tと、電源Bの正極とスイッチ回路Tとに接続した平板状の第1の導電層11と、電源Bの負極とスイッチ回路Tとに接続した平板状の第2の導電層21と、接地電位に接続された共通接地層12Sと、を備える。第1の導電層11と第2の導電層21とは、距離をもって互いに平行に配置される。共通接地層12Sは、第1の導電層11と第2の導電層21との間に配置される。共通接地層12Sから第1の導電層11までの距離は、共通接地層12Sから第2の導電層21までの距離と等しい。
【0077】
上記の形態において、共通接地層12Sが第1の導電層11と第2の導電層21との間に配置され、共通接地層12Sから第1の導電層11までの距離が共通接地層12Sから第2の導電層21までの距離と等しいという構成は、以下のように言うこともできる。つまり、共通接地層12Sは、第1の導電層11と第2の導電層21と等距離となる平面に対し、面対称に配置されているということもできる。
【0078】
また、電力変換装置1Eは、電源Bが提供する第1の電力の態様から負荷装置が要求する第2の電力の態様へ変換するスイッチ回路Tと、電源Bの正極とスイッチ回路Tとに接続した平板状の第1の導電層11と、電源Bの負極とスイッチ回路Tとに接続した平板状の第2の導電層21と、接地電位に接続された共通接地層12Sと、を備える。第1の導電層11と第2の導電層21とは、距離をもって互いに平行に配置される。共通接地層12Sは、第1の導電層11に対向する部位と、第2の導電層21とに対向する部位を備えている。第1の導電層11と共通接地層12Sとの間の静電容量と、第2の導電層21と共通接地層12Sとの間の静電容量とは、同等である。
【0079】
なお、上述した「互いに平行に配置される。」との記載は、厳密に第1の導電層11と第2の導電層21とが平行であることを意味しない。また、「共通接地層12Sから第1の導電層11までの距離は、共通接地層12Sから第2の導電層21までの距離と等しい。」との記載も、厳密な距離の一致を意味しない。平行からのずれ及び距離の一致のずれは、わずかながらのインピーダンスのずれを生じさせる。しかし、当該インピーダンスのずれに起因するノイズが許容できる範囲である場合には、「第1の導電層11と第2の導電層21とが平行」であるとみなせるし、「共通接地層12Sから第1の導電層11までの距離は、共通接地層12Sから第2の導電層21までの距離と等しい」とみなしてよい。
【0080】
さらに、「第1の導電層11と共通接地層12Sとの間の静電容量と、第2の導電層21と共通接地層12Sとの間の静電容量とは、同等である」との記載が示すところも、同様である。つまり、当該インピーダンスのずれに起因するノイズが許容できる範囲である場合において、「第1の導電層11と共通接地層12Sとの間の静電容量と、第2の導電層21と共通接地層12Sとの間の静電容量とは、同等」とみなしてよい。
【0081】
<変形例3>
第1実施形態の電力変換装置1は、いわゆる4層の積層構造を有していた。積層数は、4層に限定されない。図11(c)に示す変形例4の電力変換装置1Fは、6層の積層構造を有する。この電力変換装置1Fは、第1のブスバー構造体10及び第2のブスバー構造体20を含む。さらに、電力変換装置1Fは、追加導電層として、第3の導電層11Fと、第4の導電層21Fと、を含む。第3の導電層11Fは、第1の導電層11と同様に正極端子S1に接続される。第4の導電層21Fは、第2の導電層21と同様に負極端子S2に接続される。第3の導電層11Fは、第4の絶縁層30F1を介して第2の導電層21の上に積層される。第4の導電層21Fは、第5の絶縁層30F2を介して第1の導電層11の下に積層される。そして、第3の導電層11Fと第4の導電層21Fとの間には、第6の絶縁層30F3が挟み込まれる。変形例3の積層構造によれば、正極端子S1に接続される導電層(第1の導電層11、第3の導電層11F)と、負極端子S2に接続される導電層(第2の導電層21、第4の導電層21F)と、が交互に重ねられる。なお、接地層に流れる電流は、通常は導電層に流れる電流より小さい。従って、接地層の厚さは導電層の厚さより薄くてもよい。例えば、接地層の厚さ35μmとしてよく、導電層厚さは70μmや105μmとしてもよい。変形例3の電力変換装置1Fによっても、第1実施形態の電力変換装置1と同様の効果を得ることができる。
【0082】
<変形例4>
6層の積層構造を採用する場合には、図11(c)に示す積層の順に限定されない。例えば、図11(d)に示す変形例4の電力変換装置1Gのように、正極端子S1に接続される導電層(第1の導電層11、第3の導電層11G)が互いに隣接して重ねられると共に、負極端子S2に接続される導電層(第2の導電層21、第4の導電層21G)が互いに隣接して重ねられていてもよい。このような積層構造は、第1実施形態の変形例として捉えることもできる。具体的には、第1実施形態の第1のブスバー構造体10が有する第1の導電層11を、第4の絶縁層30G1によって2つの層に分割したものと見てもよい。換言すると、変形例4の積層構造において、第4の絶縁層30G1を省略すると、第1実施形態の第1のブスバー構造体10と等価とみなせる積層構造になる。同様に、第1実施形態の第2のブスバー構造体20が有する第2の導電層21を、第5の絶縁層30G2によって2つの層に分割したものと見てもよい。そして、第3の導電層11G及び第4の導電層21Gは、第6の絶縁層30G3によって絶縁されている。変形例1の電力変換装置1Gによっても、第1実施形態の電力変換装置1と同様の効果を得ることができる。
【0083】
また、上記の実施形態及び変形例では、絶縁層は、エポキシ樹脂によって形成された樹脂層として説明した。絶縁層は、電気的な絶縁性が発揮されていればよいので、樹脂層に限定されない。例えば、絶縁層として、絶縁紙を採用してもよい。
【0084】
また、上記の実施形態及び変形例では、電力変換装置の基体は絶縁層であり、導電層は、絶縁層に埋め込まれる構成であった。例えば、この関係は逆でもよい。電力変換装置の基体を導電層とし、導電層の間にシート状の絶縁部材を挟み込んだ構造を採用することもできる。
【0085】
また、上述の実施形態において、例えば、第1の導電層11と第1の接地層12との間には第1の絶縁層13が設けられていた。この第1の絶縁層13は物理的に存在する部位である。つまり、第1の絶縁層13は、第1の導電層11から第1の接地層12までの距離を規定する機能と、第1の導電層11と第1の接地層12とを電気的に絶縁する機能と、を有する。電気的に絶縁する機能は、物理的な第1の絶縁層13とは別の構成によって実現されてもよい。例えば、電気的に絶縁する機能は、第1の導電層11と第1の接地層12との間に形成された空隙に存在する空気によって奏されてもよい。そして、第1の導電層11から第1の接地層12までの距離を規定する機能は、物理的な層によって実現されてもよい。つまり、第1の導電層11から第1の接地層12までの距離を規定する第1の構成要素と、第1の導電層11と第1の接地層12とを電気的に絶縁する第2の構成要素と、をそれぞれ備えてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 電力変換装置
10 第1のブスバー構造体
11 第1の導電層
11a 第1の入力端部
11c 第1の導電容量部
11d 第1の導電誘導部
11f 第3の導電誘導部
12 第1の接地層
12b 第1の接地辺部
12c 第1の接地容量部
12S 共通接地層
13 第1の絶縁層
20 第2のブスバー構造体
21 第2の導電層
21a 第2の入力端部
21c 第2の導電容量部
21d 第2の導電誘導部
21f 第4の導電誘導部
22 第2の接地層
22b 第2の接地辺部
22c 第2の接地容量部
23 第2の絶縁層
30 第3の絶縁層
40 ビア
B 電源
B1 電源正極端子(第1の出力)
B2 電源負極端子(第2の出力)
Cx Xコンデンサ
Cy1 第1のYコンデンサ
Cy2 第2のYコンデンサ
L1 第1のチョークコイル
L2 第2のチョークコイル
L3 第3のチョークコイル
M 負荷装置
T スイッチ回路(電力変換部)
図1
図2
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