(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241029BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G03G15/08 390Z
G03G21/16 176
(21)【出願番号】P 2020213202
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 雅和
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-014537(JP,A)
【文献】特開2009-109848(JP,A)
【文献】特開2014-215479(JP,A)
【文献】特開平02-287471(JP,A)
【文献】特開平08-076668(JP,A)
【文献】米国特許第06026264(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 15/095
G03G 21/16 -21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体内部に設けられ、記録媒体上にトナー像を形成する像担持体と、
前記装置本体内部に着脱可能に設けられ、前記像担持体の外周面にトナーを供給する現像装置と、
前記装置本体の上方に開口する本体開口部と、
前記装置本体の内部に形成され、前記本体開口部から下方に向かって前記現像装置の装着位置まで延びるガイドレールと、
を備え、
前記現像装置は、トナーを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に接触または近接して配置され、前記現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像容器の外側に設けられ、前記ガイドレールに係合可能なガイド部と、を有し、前記ガイドレールに沿って前記本体開口部と前記装着位置の間を移動可能である画像形成装置において、
前記現像容器は、前記現像装置の前記装着位置に向かう移動方向に対して下流側に開口し、前記現像剤担持体の一部が露出する容器開口部と、前記装着位置に向かう移動方向に対して下流側の位置に、前記容器開口部の下端部から上方に向かって立ち上がる遮蔽部材を有し、
前記現像容器が前記ガイドレールの傾斜が最大の位置にあるとき、水平面に対する前記遮蔽部材の傾斜角は、80度以上、かつ130度以下であ
り、
前記遮蔽部材は、前記容器開口部の下面に固定される固定部と、前記装着位置に向かう移動方向に対して前記固定部の下流側端部から立ち上がる立壁部と、を有し、前記固定部と前記立壁部とは一体的に形成されており、
前記遮蔽部材の傾斜角は、前記ガイドレールの前記水平面に対する角度と、前記立壁部の前記ガイドレールに対する角度と、を足し合わせた角度であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記固定部は、前記現像装置の移動方向に対して平行である前記現像容器の下面に沿って延びており、
前記立壁部と前記固定部との間の角度は、25度以上、かつ65度以下であることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記装着位置へ向かう移動方向に対して前記固定部の上流側の端部は、前記現像剤担持体の中心軸よりも下方に接触していることを特徴とする請求項
1または
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置が前記装着位置にあるときに、前記遮蔽部材と前記水平面との間の角度は、25度以上、かつ65度以下であることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置は、像担持体の外周面に形成された静電潜像を現像、すなわち静電潜像を顕在化したトナー像(現像剤像)を形成するための現像装置を備えている。このような画像形成装置に用いられる現像装置として、画像形成装置の装置本体に対して着脱可能に装着されるものがある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の装置本体は、上方に開口する本体開口部を有する。装置本体の内部には、現像装置を、本体開口部から現像装置の装着位置までガイドするガイドレールが設けられている。ガイドレールは、本体開口部から装着位置まで、下方に向かって延びている。現像装置は、このガイドレールに沿って装置本体内を移動する。
【0004】
現像装置は、トナーを含む現像剤を収容する現像容器と、像担持体に接触または近接して配置され、現像剤を担持する現像剤担持体と、を備えている。現像容器は、現像装置の移動方向に対して現像装置の下流側に開口する容器開口部を有している。現像剤担持体は、容器開口部に重なるように配置されている。現像剤担持体の一部が、この容器開口部を通じて現像装置の外側に露出している。現像剤担持体は、外周面に現像容器内のトナーを担持可能である。この現像剤担持体の露出部分から、像担持体へと現像容器内のトナーの供給が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の通り、現像剤担持体の一部は、この容器開口部を通じて現像装置の外側に露出している。このため、特許文献1の容器開口部周辺には、現像剤担持体の外周面へのトナー供給や、現像剤担持体から像担持体へのトナー供給などの過程で飛散したトナーが、廃トナーとして堆積している場合がある。そして、上述の通り、ガイドレールは本体開口部から下方に向かって装着位置まで延びている。このため、特許文献1の画像形成装置は、現像装置を装置本体に装着するとき(現像装置がガイドレールに沿って移動するとき)に、現像装置の移動方向の下流側の部分、すなわち容器開口部が下方を向くことになる。すると、容器開口部の周辺に堆積した廃トナーが、装置本体内に落下するおそれがある。装置本体内に落下した廃トナーが像担持体や装置本体内の他のユニットに付着すると、シート(記録媒体)に対して廃トナーが転写されてしまうなどの画像不良の原因となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて、廃トナーが現像装置の容器開口部周辺から装置本体の内部に落下することを抑制し、画像不良が生じるのを抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の構成は、装置本体と、像担持体と、現像装置と、本体開口部と、ガイドレールと、を備える画像形成装置である。像担持体は、装置本体内部に設けられ、記録媒体上にトナー像を形成する。現像装置は、装置本体内部に着脱可能に設けられ、像担持体の外周面にトナーを供給する。本体開口部は、装置本体の上方に開口する。ガイドレールは、装置本体の内部に形成され、本体開口部から下方に向かって現像装置の装着位置まで延びている。現像装置は、トナーを含む現像剤を収容する現像容器と、像担持体に接触または近接して配置され、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像容器の外側に設けられ、ガイドレールに係合可能なガイド部と、を有し、ガイドレールに沿って本体開口部と装着位置の間を移動可能である。現像容器は、現像装置の装着位置に向かう移動方向に対して下流側に開口し、現像剤担持体の一部が露出する容器開口部と、装着位置に向かう移動方向に対して下流側の位置に、容器開口部の下端部から上方に向かって立ち上がる遮蔽部材を有する。現像容器がガイドレールの傾斜が最大の位置にあるとき、水平面に対する遮蔽部材の傾斜角は、80度以上、かつ130度以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成によれば、現像装置は、移動方向に対して現像装置の下流側の位置に、容器開口部の下端部から上方に向かって立ち上がる遮蔽部材を備えている。このため、現像装置が、装置本体への装着時に下方を向いたときに、容器開口部周辺の廃トナーが遮蔽部材によってせき止められ、装置本体内に廃トナーが落下するのを抑制することができる。また、現像装置が、ガイドレールの傾斜が最大の位置にあるときに、この遮蔽部材の水平面に対する傾斜角は、80度以上、かつ130度以下となっている。このようにすると、遮蔽部材の傾きが最も大きくなったときでも、容器開口部周辺の廃トナーは、遮蔽部材を乗り越えにくくなり、廃トナーの落下をより効果的に抑制することができる。
【0010】
従って、トナーが現像装置の容器開口部周辺から装置本体の内部に落下することを抑制し、画像不良が生じるのを抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図
【
図2】本体ハウジング10に形成されたガイドレール18と、装着位置P1において本体ハウジング10に装着された現像部33とを示す平面図
【
図3】本体ハウジング10から取り外されて、ガイドレール18上の最大傾斜部P2を移動している途中の現像部33を示す平面図
【
図5】現像部33を本体ハウジング10の後方側(移動方向の下流側)から平面視した平面図
【
図6】
図1に示された感光体ドラム31、および現像部33の周辺の部分を拡大した拡大断面図
【
図7】
図6に示された容器開口部60の周辺の部分を拡大した拡大断面図
【
図8】最大傾斜部P2に位置する現像部33について、遮蔽部材19周辺を拡大した拡大断面図
【
図9】最大傾斜部P2に位置する現像部33とガイドレール18との関係を表す、現像部33周辺の部分を拡大した部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図である。
図2は、本体ハウジング10に形成されたガイドレール18と、装着位置P1において本体ハウジング10に装着された現像部33とを示す平面図である。
図3は、本体ハウジング10から取り外されて、ガイドレール18上の最大傾斜部P2を移動している途中の現像部33を示す平面図である。なお、
図1、
図2、
図3において図示右側を画像形成装置1の前側、図示左側を画像形成装置1の後側とする。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1(ここではモノクロプリンター)は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10(装置本体)、本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30、現像部33(現像装置)、および定着部40を含む。本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12、が各々備えられている。本体ハウジング10の上方には本体開口部15が備えられ、本体開口部15を開閉可能なように、本体ハウジング10の上面に上カバー16が設けられている。上カバー16を開放することで、本体開口部15を通じて、本体ハウジング10の内部にアクセスできる。
【0014】
上カバー16の上面には、画像形成後のシート(記録媒体)が排出される排紙部13が備えられている。尚、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパーや画像形成処理を受ける他のシート材料を意味する。
【0015】
画像形成部30および定着部40の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10の後面側から出し入れ可能となる。現像部33は、上カバー16が開放されることで、本体開口部15から出し入れ可能となる。
【0016】
図1、
図2、
図3に示すように、本体ハウジング10内の、シートの幅方向(
図1の紙面方向)に対向する一対の側面17には、ガイドレール18が形成されている。ガイドレール18は、シートの幅方向に凹んだレール構造をなす。ガイドレール18は、本体開口部15から下方に向かって、後述する現像部33の本体ハウジング10への装着位置P1まで延びている。
【0017】
図2に示すように、ガイドレール18は、段階的に勾配が変わるように、本体開口部15から下方に向かって並ぶ複数の傾斜部(最大傾斜部P2、中間傾斜部P3、最小傾斜部P4)を備えている。各傾斜部(最大傾斜部P2、中間傾斜部P3、最小傾斜部P4)は、下方に近づくにつれて前方にも近づくように傾斜している。最大傾斜部P2、中間傾斜部P3、および最小傾斜部P4は、装着位置P1から本体開口部15に近づくにつれて急勾配となるように並んでいる。最大傾斜部P2は、本体開口部15に接続されており、中間傾斜部P3、最小傾斜部P4に比べて、急勾配となっている。最小傾斜部P4は、現像部33の装着位置P1に最も近くに位置している。最小傾斜部P4は、最大傾斜部P2、中間傾斜部P3に比べて、緩やかな勾配となっている。
【0018】
図2、
図3に示すように、ガイドレール18は、現像部33の幅方向(シートの幅方向)に隣接する第1レール部18aと、第2レール部18bと、を含んで構成されている。第1レール部18aは、第2レール部18bよりも、現像部33の幅方向の外側(
図2の紙面奥側)に位置している。第1レール部18a、および第2レール部18bは、ガイドレール18の本体開口部15から装着位置P1にかけての途中の位置に設けられた分岐部18cまで重なっており、分岐部18cから装着位置P1にかけては、上下方向に二股に分かれている。第1レール部18aは、分岐部18cから装着位置P1にかけて、第2レール部18bよりも上方に位置している。
【0019】
第1レール部18aの後方側(装着位置P1側)の端部には、下方に向かって窪んだ第1凹部50が形成されている(
図3参照)。第2レール部18bには、第1凹部50よりも下方側、かつ前方側の位置において、下方に向かって窪んだ第2凹部51が形成されている(
図3参照)。
【0020】
図1に戻って、給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面から更に前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、シートの束が収容される用紙収容空間、シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部には用紙繰出部21Aが設けられている。この用紙繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0021】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー像(現像剤像)を形成する画像形成動作を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電部32、露光部35、現像部33および転写ローラー34を含む。
【0022】
感光体ドラム31(像担持体)は、回転軸と、回転軸周りに回転する外周面と、を備える。感光体ドラム31の外周面には、例えば公知の有機(OPC)感光体で構成され、外周面に電荷発生層、電荷輸送層等で構成される感光層が形成される。感光層は、後述する帯電部32により均一に帯電された後、露光部35により光照射されて帯電を減衰させた静電潜像が形成され、現像部33により静電潜像を顕在化したトナー像が担持される。
【0023】
帯電部32(帯電装置)は、感光体ドラム31の外周面に対して所定の間隔を置いて配置され、感光体ドラム31の外周面を非接触の状態で均一に帯電させる。具体的には、帯電部32は、チャージワイヤー321およびグリッド電極322(いずれも
図6参照)を有する。チャージワイヤー321は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる線状の電極であり、感光体ドラム31との間でコロナ放電を発生させる。グリッド電極322は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる格子状の電極であり、チャージワイヤー321と感光体ドラム31との間に配設される。帯電部32は、チャージワイヤー321に所定の電流値の電流を流すことでコロナ放電を発生させ、且つ、グリッド電極322に所定電圧を印加することで、グリッド電極322に対向する感光体ドラム31の外周面を、所定の表面電位に一様に帯電させる。
【0024】
露光部35(露光装置)は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の外周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づき変調された光を照射する。これにより、露光部35は、感光体ドラム31の外周面に、画像データに基づく画像に対応する静電潜像を形成する。
【0025】
図1、
図2、
図3に示すように、現像部33は、ガイドレール18に係合可能なガイド部336を備えている。現像部33は、ガイドレール18にガイド部336を係合させて、ガイドレール18に沿って本体開口部15と装着位置P1との間を移動可能になっている。尚、この現像部33の移動の方向を、移動方向とする。また、装着位置P1側を、移動方向の下流側とし、本体開口部15側を、移動方向の上流側とする。
【0026】
ガイド部336は、現像部33の幅方向(シートの幅方向)に突出する第1係合部336a、および第2係合部336bからなる。第1係合部336aは、移動方向に対して第2係合部336bよりも、現像部33の下流側に設けられている。第1係合部336aは、第1レール部18aに係合可能になっており、第1レール部18a上を摺動可能である。第2係合部336bは、第2レール部18bに係合可能になっており、第2レール部18b上を摺動可能である。
【0027】
ここで、上述の通り、ガイドレール18は、分岐部18cにおいて二股に分かれている。このため、現像部33が本体開口部15から装着位置P1に向かうとき、分岐部18cにおいて、第1係合部336aは第1レール部18aに沿って上方側に進行し、第2係合部336bは第2レール部18bに沿って下方側に進行する。現像部33が装着位置P1に到達すると、第1係合部336aは第1レール部18aの第1凹部50に嵌め込まれ、第2係合部336bは第2レール部18bの第2凹部51に嵌め込まれる(
図3の破線部分参照)。第1凹部50と第1係合部336aとの嵌合、および第2凹部51と第2係合部336bとの嵌合により、現像部33は、本体ハウジング10に装着される。
【0028】
図1に戻って、装着位置P1において本体ハウジング10に装着された現像部33は、感光体ドラム31の外周面に非磁性一成分のトナー(現像剤)を供給する。これにより、感光体ドラム31の外周面に形成された静電潜像を現像する。静電潜像を現像するとは、静電潜像を顕在化したトナー像(現像剤像)を形成することを示す。現像部33の詳細な構成については後述する。
【0029】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。具体的には、転写ローラー34は、軸周りに回転し、感光体ドラム31の回転方向における現像ローラー331(現像剤担持体)よりも下流側の位置で、感光体ドラム31の外周面と対向する外周面を有する。転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面との間のニップ部を通過するシートに、感光体ドラム31の外周面に担持されているトナー像を転写する。当該転写の際、転写ローラー34にはトナーと逆極性の転写電圧が印加される。
【0030】
定着部40は、シートに転写されたトナー像を、シート上に定着させる定着処理を行う。定着部40は、定着ローラー41と加圧ローラー42とを有する。定着ローラー41は、加熱源を内部に備え、シートに転写されたトナーを所定温度に加熱する。加圧ローラー42は、定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する。トナー像が転写されたシートが定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱および加圧ローラー42による押圧によりシート上に定着される。
【0031】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するための主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20の用紙繰出部21Aから画像形成部30および定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0032】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31および転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで転写ニップ部に送り出される。主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されている。排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0033】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。尚、反転ユニット25の内側面には、転写ローラー34およびレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12および反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてジャム(紙詰まり)が発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像部33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0034】
図4は、現像部33の全体を示す斜視図である。
図5は、現像部33を本体ハウジング10の後方側(移動方向の下流側)から平面視した平面図である。
図6は、
図1に示された感光体ドラム31、および現像部33の周辺の部分を拡大した拡大断面図である。
【0035】
図4、
図5、
図6に示すように、現像部33は、上述のガイド部336と、現像ハウジング330(現像容器)と、現像ローラー331と、供給ローラー332と、攪拌パドル333とを備える。
【0036】
現像ハウジング330は、内部にトナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容すると共に、現像ローラー331、供給ローラー332等を収容する(
図6参照)。現像ハウジング330は、攪拌された状態の現像剤を収容する攪拌室335を備える。現像ハウジング330は、前後方向に対して攪拌室335よりも後方側(移動方向に対して現像部33の下流側)に位置する容器開口部60を備える。現像ローラー331は容器開口部60に重なるように設けられている。現像ローラー331の一部が、容器開口部60から現像部33の外側に露出している(
図4参照)。
【0037】
図7は、
図6に示された容器開口部60の周辺の部分を拡大した拡大断面図である。
図6、
図7に示すように、容器開口部60は、現像ハウジング330の外側から内側に貫通する開口穴61と、移動方向に対して開口穴61よりも下流側に位置する平坦部62と、平坦部62上に設けられた遮蔽部材19と、を含んで構成されている。開口穴61は、現像ハウジング330の後方側(移動方向の下流側)に開口している。開口穴61は、現像部33の幅方向に細長く形成されている(
図4、
図5参照)。
【0038】
平坦部62は、容器開口部60の下面である。平坦部62は、移動方向に対して、開口穴61から現像部33の下流側端部に向かって延びる平坦な面である。平坦部62は、現像部33の移動方向に対して略平行である。
図7に示すように、現像部33が装着位置P1にあるときに、平坦部62は移動方向の下流側に向かって僅かに上り勾配となる。
【0039】
図6、
図7に示すように、遮蔽部材19は、移動方向に対して現像ハウジング330の下流側の端部に位置している。遮蔽部材19は、現像部33の幅方向に細長く形成されている(
図4、
図5参照)。遮蔽部材19は、平坦部62に接着された固定部19aと、移動方向に対して固定部19aの下流側端部から上方に立ち上がる立壁部19bと、からなる。固定部19aと立壁部19bとは、同一材料を基にして一体に形成されており、固定部19aと立壁部19bとの間の角θ1を挟むようにして折り曲げられている。移動方向に対して固定部19aの上流側の端部は、現像ローラー331の外周面に接触している。
【0040】
固定部19aと立壁部19bとの間の角θ1は、25度以上、65度以下である。また、
図7に示すように、現像部33が装着位置P1にあるときに、立壁部19bと水平面L1(
図7に示す一点鎖線)とのなす角、すなわち立壁部19bの水平面L1に対する傾斜角θ2は、固定部19aと立壁部19bとの間の角θ1よりも小さい。
【0041】
図8は、最大傾斜部P2に位置する現像部33について、遮蔽部材19周辺を拡大した拡大断面図である。
図8に示すように、現像部33が最大傾斜部P2にあるときに、遮蔽部材19の水平面L1に対する傾斜角θ2は、80度以上、かつ130度以下(好ましくは80度以上、かつ95度以下)である。
【0042】
ここで、容器開口部60周辺(特に、固定部19a上)には、現像ローラー331の外周面へのトナー供給や、現像ローラー331から感光体ドラム31へのトナー供給などの過程で飛散したトナーが、廃トナーT1として堆積している場合がある(
図7参照)。現像部33が最大傾斜部P2にあるとき、固定部19a上の廃トナーT1は、自重によって移動方向の下流側に移動し、立壁部19bと固定部19aとの間に溜まる(
図8参照)。
【0043】
図9は、最大傾斜部P2に位置する現像部33とガイドレール18との関係を表す、現像部33周辺の部分を拡大した部分拡大図である。傾斜角θ2は、ガイドレール18の水平面L1に対する角θ3と、立壁部19bのガイドレール18に対する角θ4とを足し合わせた角度である。
【0044】
上述の通り、固定部19aは、現像部33の移動方向に対して略平行である。そして、ガイドレール18は、現像部33の移動方向に延びているため、固定部19aとガイドレール18とは略平行になっている。このため、固定部19aと立壁部19bとの間の角θ1と、立壁部19bのガイドレール18に対する角θ4(立壁部19bと水平面L1との間の角)とは、略同一の角度となっている。
【0045】
図6に戻って、攪拌室335は、攪拌された状態の非磁性一成分現像剤を収容する。攪拌室335には攪拌パドル333が配置される。攪拌パドル333は、トナー供給装置(図示せず)により攪拌室335に供給された現像剤を攪拌する。
【0046】
現像ローラー331は、回転軸331aと、ローラー部331bを備える。回転軸331aは、現像ハウジング330の軸受部(不図示)に回転可能に支持される。ローラー部331bは、回転軸331aの外周面に積層される円筒状の部材であり、基材ゴム(例えばシリコーンゴム)の表面にウレタン等の凹凸のあるコーティング材によってコート層を積層した構成である。ローラー部331bは、回転軸331aの回転に伴って回転軸331aと一体的に回転する。
【0047】
現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置において、感光体ドラム31の回転方向(
図7の時計回り方向)における上流側から下流側に向かう方向(
図7の反時計回り方向)に回転する。つまり、現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置では、感光体ドラム31と同方向に回転する。
【0048】
供給ローラー332は、現像ローラー331に対向して配置される。供給ローラー332は、攪拌室335に収容された現像剤を外周面に保持する。また、供給ローラー332は、外周面に保持した現像剤を現像ローラー331に供給する。
【0049】
供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置において、現像ローラー331の回転方向(
図2の反時計回り方向)における下流側から上流側に向かう方向(
図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置では、現像ローラー331と逆方向に回転する。
【0050】
現像ローラー331は、供給ローラー332から現像剤の供給を受けると共に、外周面にトナー層を保持する。そして、現像ローラー331は、感光体ドラム31に現像剤を供給する。現像ローラー331および供給ローラー332の軸方向(
図2の紙面と直交する方向)の長さは、感光体ドラム31の軸方向長さと略同一である。現像ローラー331から感光体ドラム31にトナーを効率的に移動させるために、現像ローラー331に所定の現像電圧を印加することが好ましい。
【0051】
上述した固定部19aと現像ローラー331との接触箇所は、現像ローラー331の回転方向(
図7の反時計回り方向)に対して、現像ローラー331と感光体ドラム31との対向箇所よりも下流側に位置している(
図6、
図7参照)。すなわち、固定部19aと現像ローラー331との接触箇所は、現像ローラー331の中心軸よりも下方に位置している。現像ローラー331から感光体ドラム31へトナーが供給された後、現像ローラー331の外周面上残留する残留トナーは、固定部19aに接触して掻き取られる。掻き取られた残留トナーは、廃トナーT1として固定部19a上に堆積する(
図7参照)。
【0052】
ところで、上述の通り、ガイドレール18は本体開口部15から下方に向かって装着位置P1まで延びている。このため、画像形成装置1は、現像部33を本体ハウジング10に装着するとき(現像部33がガイドレール18に沿って移動するとき)に、現像部33の移動方向の下流側の部分、すなわち容器開口部60が下方を向くことになる。また、上述の通り、容器開口部60周辺には、廃トナーT1が堆積している場合がある。このため、仮に、現像部33が遮蔽部材19を備えていなかった場合、容器開口部60の周辺に堆積した廃トナーT1が、本体ハウジング10の内部に落下するおそれがある。本体ハウジング10の内部に落下した廃トナーT1が感光体ドラム31や他のユニットに付着すると、シートに対して廃トナーT1が転写されてしまうなどの画像不良の原因となる。
【0053】
本発明に係る現像部33は、上述の通り、移動方向に対して現像ハウジング330の下流側の位置に、容器開口部60の下端部から上方に向かって立ち上がる遮蔽部材19を備えている。このため、現像部33が本体ハウジング10への装着時に下方を向いたときに、容器開口部60周辺の廃トナーT1が遮蔽部材19によってせき止められ、本体ハウジング10内に廃トナーT1が落下するのを抑制することができる。また、上述の通り、現像部33が、ガイドレール18の傾斜が最大の位置(最大傾斜部P2の位置)にあるときに、この遮蔽部材19の水平面に対する傾斜角θ2は、80度以上、かつ130度以下となっている。このようにすると、遮蔽部材19にせき止められた廃トナーT1が遮蔽部材19を乗り越えにくくなり、廃トナーT1の落下をより効果的に抑制することができる。
【0054】
従って、廃トナーT1が現像部33の容器開口部60周辺から本体ハウジング10の内部に落下することを抑制し、画像不良が生じるのを抑制可能な画像形成装置1を提供することができる。
【0055】
さらに、現像部33が最大傾斜部P2の位置にあるときの傾斜角θ2を80度以上、かつ95度以下とすることで、廃トナーT1が遮蔽部材19をより一層乗り越えにくくなり、廃トナーT1の落下をより効果的に抑制することができる。
【0056】
また、上述の通り、遮蔽部材19は、容器開口部60の下面(平坦部62)に接着される固定部19aと、移動方向に対して固定部19aの下流側の端部から立ち上がる立壁部19bとを備えている。また、立壁部19bと、固定部19aとは一体的に形成された同一体である。このようにすると、立壁部19bと固定部19aとに隙間がなくなるため、廃トナーT1の落下をより効果的に抑制することができる。
【0057】
また、上述の通り、固定部19aと立壁部19bとの間の角θ1を、25度以上、かつ65度以下となっている。上記角θ1の角度をこのように規定すると、ガイドレール18の勾配の大きさによらず、現像部33の容器開口部60側を下方に向けた時に、廃トナーT1が現像部33から落下しにくくなる。このため、現像部33を本体開口部15を通じて本体ハウジング10の内部に出し入れするタイミングで、容器開口部60周辺の廃トナーT1が落下しにくくなり、例えば、現像部33の交換の際に、本体ハウジング10内に廃トナーが落下するのを効果的に抑制することができる。
【0058】
また、上述の通り、移動方向に対して固定部19aの上流側の端部は、現像ローラー331の中心軸よりも下方に接触している。このようにすると、上述の通り、現像ローラー331の外周面上に残留するトナーを、固定部19aの上流側の端部によって、固定部19a上に掻き落とすことができる。これにより、現像ローラー331の外周面上の残留トナーをクリーニングし、画像不良を抑制することができる。さらに、固定部19aと現像ローラー331との接触によって、現像ローラー331と現像ハウジング330との隙間が塞がれることとなる(
図6参照)。このため、攪拌室335の現像剤が、現像ローラー331と、現像ハウジング330との隙間から流出することを抑制することができる。
【0059】
また、現像部33が装着位置P1にあるときに、遮蔽部材19と水平面との間の角度は、25度以上、かつ65度以下とすることができる。遮蔽部材19と水平面との間の角度がこのように規定されると、現像部33が最大傾斜部P2に到達したときに、廃トナーT1が遮蔽部材19にせき止められやすくなり、より効果的に廃トナーT1の落下を抑制することができる。
【0060】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、画像形成装置1の例として、モノクロプリンターについて説明したが、例えば、タンデム方式やロータリー式のカラープリンターにも適用できる。また、複写機、ファクシミリ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用できる。
【0061】
また、上記実施形態の現像剤は、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤としたが、トナーとキャリアとを使用した二成分現像剤でもよい。
【0062】
また、上記実施形態の複数の傾斜部は、最大傾斜部P2、中間傾斜部P3、最小傾斜部P4の3つとしたが、さらに多段階の傾斜部からなるものであってもよい。この場合においても、各傾斜部中で最も大きい勾配を有するものを、最大傾斜部P2とする。
【0063】
上記実施形態の固定部19aは、平坦部62に接着されているとしたが、接着以外の方法によって平坦部62への固定されるものであっても良い。接着以外の方法の具体例は、ねじ等の固定部材によって平坦部62との間で挟持する方法などがある。
【0064】
また、遮蔽部材19を、折れ曲がっていない平坦な立壁部19bのみからなるものとしてもよい。この場合、立壁部19bは平坦部62に直接固定されるものとすることができる。また、この立壁部19bを現像部33と一体に形成されたものとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、トナーを含んだ現像剤を用いて現像を行う現像部を備える画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、現像部を画像形成装置の装置本体に装着する際に、トナーが装置本体の内部に落下しにくくなり、画像不良が生じるのを抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
10 本体ハウジング(装置本体)
15 本体開口部
18 ガイドレール
19 遮蔽部材
19a 固定部
19b 立壁部
31 感光体ドラム(像担持体)
33 現像部(現像装置)
60 容器開口部
330 現像ハウジング
331 現像ローラー
336 ガイド部
L1 水平面
P1 装着位置
P2 最大傾斜部(ガイドレールの傾斜が最大の位置)
θ1 固定部と立壁部との間の角
θ2 水平面に対する遮蔽部材の傾斜角
θ3 ガイドレールの水平面に対する角
θ4 立壁部のガイドレールに対する角