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特許7577996設計支援装置、および設計支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】設計支援装置、および設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20241029BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20241029BHJP
   G06F 30/367 20200101ALI20241029BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/20
G06F30/367
H02J1/00 309A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020213974
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099906
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲良▼羽
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌志
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-167139(JP,A)
【文献】特開2008-040591(JP,A)
【文献】特開2018-137949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
H02J 1/00 - 1/04
H02M 3/00 - 3/44
H02M 7/00 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続された電源とコンデンサからの電力が、複数の電力ケーブルを組み合わせた電力供給路により複数の負荷装置へ分配供給される給電システムの設計を支援する設計支援装置であって、
前記電力供給路の全体構成を示す構成情報を取得する第1取得手段と、
前記複数の負荷装置のそれぞれについて、その負荷装置の運転パターンを表す運転パターン情報を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段により取得された前記構成情報と前記第2取得手段により取得された前記複数の負荷装置についての前記運転パターン情報とに基づき前記コンデンサに流れる電流の時系列データを算出して、前記電流の時系列データに基づき前記コンデンサの容量として推奨する容量である推奨容量を算出する算出手段と、
前記コンデンサの推奨容量の情報を少なくとも出力する出力手段と、
を備える設計支援装置。
【請求項2】
前記給電システムが、前記電源として、直流電源を備え、前記複数の負荷装置のそれぞれとして、負荷機械と前記負荷機械を駆動する電動機と前記電動機を制御するインバータとを備えたシステムであり、
前記第2取得手段は、各負荷装置の実際の運用時に各負荷装置の前記インバータに時系列的に入力される指令値群を各負荷装置についての前記運転パターン情報として取得し、
前記算出手段は、各負荷装置についての前記運転パターン情報に基づき各負荷装置に流入する電流の時系列データを生成し、生成した各負荷装置についての前記時系列データと前記構成情報とに基づき前記コンデンサに流れる電流の時系列データを算出する、
請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記算出手段は、
各負荷装置についての前記時系列データと前記構成情報とに基づき、前記コンデンサから流れ出る電流の最大値、または/および、前記コンデンサに流れ込む電流の最大値を前記コンデンサの最大電流値として算出し、
前記コンデンサに流れる電流の時系列データと前記最大電流値とに基づき前記コンデンサの推奨容量を算出する、
請求項2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記算出手段は、
前記コンデンサに流れる電流の時系列データに基づき、所定期間における電流の積算値を前記コンデンサに推奨する電荷量として算出し、
前記電荷量を、前記複数の負荷装置それぞれの運転パターンを維持するために前記コンデンサが変化することを許容された範囲の電圧である電圧許容値と前記コンデンサの初期電圧との差分で除算することにより、前記コンデンサの推奨容量を算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記所定期間における、前記コンデンサに流れ込む電流の積算値と前記コンデンサから流れ出る電流の積算値のいずれかを前記電荷量として算出する、
請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最低値と最高値とのいずれかと前記コンデンサの初期電圧との差分で前記電荷量を除算することにより、前記推奨容量を算出する、
請求項4または5に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記算出手段は、
前記電荷量が正である場合には、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最低値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記電荷量を除算することにより、前記推奨容量を算出し、
前記電荷量が負である場合には、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最高値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記電荷量を除算することにより、前記推奨容量を算出する、
請求項6に記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記算出手段は、
前記所定期間における、前記コンデンサに流れ込む電流の積算値と前記コンデンサから流れ出る電流の積算値を算出し、
前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最高値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記コンデンサに流れ込む電流の積算値を除算した値と、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最低値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記コンデンサから流れ出る電流の積算値を除算した値と、のうち大きい方を前記コンデンサの推奨容量として算出する、
請求項6に記載の設計支援装置。
【請求項9】
前記複数の負荷装置の全体は、周期的に運転しており、
前記所定期間は、前記複数の負荷装置の全体の運転の1周期の期間または当該1周期の一部の期間である、
請求項4から8のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項10】
前記算出手段は、前記複数の負荷装置を共通に前記コンデンサと接続する第1の電力ケーブルを前記複数の電力ケーブルが含む場合には、当該第1の電力ケーブルの内部抵抗により発生する電圧に基づき前記電圧許容値を算出する、
請求項4から9のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項11】
前記算出手段は、前記複数の電力ケーブルそれぞれの内部抵抗により発生する電圧に基づき前記電圧許容値を算出する、
請求項4から10のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項12】
前記出力手段は、前記コンデンサを内蔵するような分岐コネクタによって、前記電源および前記コンデンサからの電力を前記複数の負荷装置それぞれに分配して供給することをユーザに提案する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から12のいずれか1項に記載の設計支援装置として動作させる設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、および設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの電源から複数の負荷装置に電力が供給されるシステムとして、以下のシステムが知られている。
・複数の負荷装置間を電力ケーブルにてデイジーチェーン接続すると共に、当該複数の負荷装置の中の1つの負荷装置と電源とを電力ケーブルにて接続したシステム(デイジーチェーン接続システム)。
・電源側から枝分かれするように複数の電力ケーブルを組み合わせた電力供給路にて電源と複数の負荷装置とを接続したシステム(ツリー接続システム)。
【0003】
特許文献1では、これらのシステムにおいて、複数の負荷装置を流れる電流の時系列データに基づき、各電力ケーブルに流れる電流の最大値や、推奨ケーブル(使用が推奨される電力ケーブル)のケーブル径を表示する技術が開示されている。これにより、ユーザは、当該システムにおいて適切な電力ケーブルを選択することが可能になる。
【0004】
また、1つの電源から複数の負荷装置に電力が供給されるシステムにおいて、1つの直流電源とコンデンサとを並列に接続することによって、負荷装置のコンデンサの容量不足によって生じるような、複数の負荷装置における瞬間的な電圧上昇および電圧低下を抑制する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-95573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、コンデンサの容量を小さくすれば、コンデンサのサイズを小さくすることができる。このため、このようなシステムにおいて、適切なコンデンサの容量を選択することができれば、コンデンサおよびシステム全体の小型化が可能になる。しかし、特許文献1の技術には、各電力ケーブルを流れる最大電流値や推奨されるケーブル径などを表示することが開示されているにすぎない。このため、1つの直流電源とコンデンサとが並列に接続された上記のシステムに、特許文献1の技術を適用させても、適切なコンデンサの容量を選択することはできない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、互いに並列に接続された電源とコンデンサからの電力が複数の負荷装置へ分配供給される給電システムであって、コンデンサとして適切な仕様のものが使用された給電システムの設計を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点に係る設計支援装置は、互いに並列に接続された電源とコンデンサからの電力が、複数の電力ケーブルを組み合わせた電力供給路により複数の負荷装置へ分配供給される給電システムの設計を支援する設計支援装置であって、前記電力供給路の全体構成を示す構成情報を取得する第1取得手段と、前記複数の負荷装置のそれぞれについて、その負荷装置の運転パターンを表す運転パターン情報を取得する第2取得手段と、前記第
1取得手段により取得された前記構成情報と前記第2取得手段により取得された前記複数の負荷装置についての前記運転パターン情報とに基づき前記コンデンサに流れる電流の時系列データを算出して、前記電流の時系列データに基づき前記コンデンサの容量として推奨する容量である推奨容量を算出する算出手段と、前記コンデンサの推奨容量の情報を少なくとも出力する出力手段と、を備える設計支援装置である。
【0009】
これによれば、コンデンサを流れる電流を考慮した適切な推奨容量が算出でき、また、推奨容量の情報が出力されることでユーザは当該推奨容量を把握することができる。このため、ユーザは、コンデンサとして適切な仕様のものが使用された給電システムの設計が可能になる。ひいては、給電システムおよびコンデンサの小型化や低コスト化が可能になる。なお、構成情報とは、給電システムが有する全ての電力ケーブルの情報であり、具体的には、電力ケーブルの数、各電力ケーブル間の接続、および各電力ケーブルの個別の情報(長さ、内部抵抗)などを示す情報である。
【0010】
上記の設計支援装置において、前記給電システムが、前記電源として、直流電源を備え、前記複数の負荷装置のそれぞれとして、負荷機械と前記負荷機械を駆動する電動機と前記電動機を制御するインバータとを備えたシステムであり、前記第2取得手段は、各負荷装置の実際の運用時に各負荷装置の前記インバータに時系列的に入力される指令値群を各負荷装置についての前記運転パターン情報として取得し、前記算出手段は、各負荷装置についての前記運転パターン情報に基づき、各負荷装置に流入する電流の時系列データを生成し、生成した各負荷装置についての前記時系列データと前記構成情報とに基づき、前記コンデンサに流れる電流の時系列データを算出してもよい。これによれば、運転パターンや構成情報に基づき、各負荷装置を流れる電流の時系列データおよびコンデンサに流れる電流の時系列データを取得できるので、直接的に負荷装置やコンデンサの電流を計測することができない場合にも、適切にコンデンサの電流を算出できる。
【0011】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、各負荷装置についての前記時系列データと前記構成情報とに基づき、前記コンデンサから流れ出る電流の最大値、または/および、前記コンデンサに流れ込む電流の最大値を前記コンデンサの最大電流値として算出し、前記コンデンサに流れる電流の時系列データと前記最大電流値とに基づき前記コンデンサの推奨容量を算出してもよい。これによれば、最大電流量に起因する複数の負荷装置での電圧降下の影響を考慮して(コンデンサ以外での電力の消費を考慮して)、推奨容量を適切に算出できる。
【0012】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記コンデンサに流れる電流の時系列データに基づき、所定期間における電流の積算値を前記コンデンサに推奨する電荷量として算出し、前記電荷量を、前記複数の負荷装置それぞれの運転パターンを維持するために前記コンデンサが変化することを許容された範囲の電圧である電圧許容値と前記コンデンサの初期電圧との差分で除算することにより、前記コンデンサの推奨容量を算出してもよい。これによれば、コンデンサに流れる電流から、コンデンサにとって必要だと考えられる電荷量を算出できるので、より適切な推奨容量を算出できる。
【0013】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記所定期間における、前記コンデンサに流れ込む電流の積算値と前記コンデンサから流れ出る電流の積算値のいずれかを前記電荷量として算出してもよい。これによれば、コンデンサから流れ出る電流(力行電流)の量とコンデンサに流れ込む電流(回生電流)の量のいずれかを推奨する電荷量にすることにより、コンデンサと電源のいずれか一方によって複数の負荷装置が要するほとんど電力を提供可能な場合に、適切な推奨容量を算出できる。
【0014】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記コンデンサの電圧許容値の範囲の
うちの最低値と最高値とのいずれかと前記コンデンサの初期電圧との差分で前記電荷量を除算することにより、前記推奨容量を算出してもよい。
【0015】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記電荷量が正である場合には、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最低値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記電荷量を除算することにより、前記推奨容量を算出し、前記電荷量が負である場合には、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最高値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記電荷量を除算することにより、前記推奨容量を算出してもよい。これによれば、コンデンサから流れ出る電流(力行電流)の量が、コンデンサに流れ込む電流(回生電流)の量よりも大きい場合であっても、小さい場合であっても、適切な推奨容量を算出できる。
【0016】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記所定期間における、前記コンデンサに流れ込む電流の積算値と前記コンデンサから流れ出る電流の積算値を算出し、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最高値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記コンデンサに流れ込む電流の積算値を除算した値と、前記コンデンサの電圧許容値の範囲のうちの最低値と前記コンデンサの初期電圧との差分で前記コンデンサから流れ出る電流の積算値を除算した値と、のうち大きい方を前記コンデンサの推奨容量として算出してもよい。これによれば、コンデンサから流れ出る電流(力行電流)の量と、コンデンサに流れ込む電流(回生電流)の量との大小関係に応じて、より適切な推奨容量を算出できる。
【0017】
上記の設計支援装置において、前記複数の負荷装置の全体は、周期的に運転しており、前記所定期間は、前記複数の負荷装置の全体の運転の1周期の期間または当該1周期の一部の期間であってもよい。これによれば、周期的に変化する電流に応じて、1周期の中でコンデンサにとって必要だと考えられる電荷量を算出できるので、より適切な推奨容量を算出できる。また、1周期の一部の期間における電流の積算値を推奨する電荷量とすることによれば、例えば、複数の負荷装置が瞬間的に電力を要する場合にのみコンデンサからの電力供給がされるように設計できるので、コンデンサの容量の削減、ひいては、コンデンサの小型化ができる。
【0018】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記複数の負荷装置を共通に前記コンデンサと接続する第1の電力ケーブルを前記複数の電力ケーブルが含む場合には、当該第1の電力ケーブルの内部抵抗により発生する電圧に基づき前記電圧許容値を算出してもよい。これによれば、複数の負荷装置を共通にコンデンサと接続する電力ケーブルでの電力消費が大きい場合にも、それを考慮した上で過電圧・低電圧にならないようなコンデンサの推奨容量を算出することができる。
【0019】
上記の設計支援装置において、前記算出手段は、前記複数の電力ケーブルそれぞれの内部抵抗により発生する電圧に基づき前記電圧許容値を算出してもよい。これによれば、給電システムが分散システムである場合において、各電力ケーブルでの電力消費を考慮した上で、過電圧・低電圧にならないようなコンデンサの推奨容量を算出することができる。
【0020】
上記の設計支援装置において、前記出力手段は、前記コンデンサを内蔵するような分岐コネクタによって、前記電源および前記コンデンサからの電力を前記複数の負荷装置それぞれに分配して供給することをユーザに提案してもよい。これによれば、コンデンサとしての役割と電流の分配とを分岐コネクタが行うことが可能になるので、給電システムの小型化が可能になる。
【0021】
また、本発明の一観点に係る設計支援プログラムは、コンピュータを、上記の設計支援装置として動作させることができる。従って、設計支援プログラムによれば、コンデンサ
として適切な仕様のものが使用された給電システムの設計が可能となる。
【0022】
さらに、本発明は、上記の設計支援装置の手段の少なくとも一部を有する装置として捉えてもよいし、設計支援システム、電子機器として捉えてもよい。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む設計支援装置の制御方法、設計支援方法として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、互いに並列に接続された電源とコンデンサからの電力が複数の負荷装置へ分配供給される給電システムであって、コンデンサとして適切な仕様のものが使用された給電システムの設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る設計支援装置のブロック図である。
図2図2は、設計支援装置を用いて設計される給電システムの構成例の説明図である。
図3A図3Aは、給電システム内の電力供給路の構成例の説明図である。
図3B図3Bは、給電システム内の電力供給路の構成例の説明図である。
図3C図3Cは、給電システム内の電力供給路の構成例の説明図である。
図3D図3Dは、給電システム内の電力供給路の構成例の説明図である。
図4図4は、設計支援処理のフローチャートである。
図5図5は、時系列電流データの生成手順の説明図である。
図6図6は、図2の給電システムの各負荷装置およびコンデンサに流れる電流を説明するためのタイミングチャートである。
図7図7は、時系列電流データからコンデンサの電荷量を算出する方法を説明するためのタイミングチャートである。
図8図8は、設計支援処理の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
[設計支援装置の構成について]
図1に、本発明の一実施形態に係る設計支援装置10のブロック図を示す。設計支援装置10は、図2に示すような構成の給電システム1(サーボシステム)の設計を支援するために開発した装置である。なお、図2では、給電システム1の各構成の接続を1本のケーブル(電力ケーブル)により接続しているように簡易的に図示しているが、実際にはそれぞれのケーブルは2本の回線を有する。そして、2本の回線によって、各構成間の電流(電力)の入出力が実現される。
【0027】
設計支援装置10は、例えば、PC(コンピュータ)やサーバなどの任意の情報処理装置である。設計支援装置10は、キーボードやマウスなどの入力装置11と、ディスプレイ12と、本体部13とを備える。ユーザは、入力装置11に対する操作を行うことによって、給電システム1の構成についての情報などを設定(入力)することができる。また、ディスプレイ12は、画像が表示できれば、液晶ディスプレイやプロジェクタなどの任意の表示装置であってよい。
【0028】
本体部13は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性記憶装置(ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなど)17などで構成されたユニットである。この本体部13の不揮発性記憶装置17には、設計支援プログラム16がインストールされてい
る。CPUが設計支援プログラム16をRAM上に読み出して実行することで、本体部13は、UI処理部14および設計支援処理部15として動作する。
【0029】
(給電システムの構成について)
UI処理部14および設計支援処理部15の機能を説明する前に、図2を参照して、設計支援装置10を用いて設計されるシステムである給電システム1について説明する。
【0030】
給電システム1では、互いに並列に接続された電源20とコンデンサ25とからの電力が、複数のリンクケーブルLCを組み合わせた電力供給路30により複数(図2では、3つ)の負荷装置40へ分配供給される。また、給電システム1は、電源20として、系統18からの電力を直流化するコンバータ22(換言すれば、直流電源)を備える。給電システム1は、各負荷装置40(X=1、2、3)として、負荷機械43、電動機42(モータ)およびインバータ41を備える。インバータ41は、入力された電力から電動機42が用いる周波数の交流の電力を生成することにより、電動機42を制御する。電動機42は、電力(電気エネルギー)を力学的エネルギーに変換する(トルクを得る)ことにより、負荷機械43を駆動する。
【0031】
コンデンサ25は、給電システム1に対して脱着が可能な外付けコンデンサである。コンデンサ25は、電源20と並列に接続されており、電源20と組み合わさって複数の負荷装置40に電力を供給する。これにより、複数の負荷装置40に供給される電圧がほぼ一定に保たれるため、複数の負荷装置40に供給される電圧の急激な(一時的な)変化(過電圧/低電圧)を抑制できる。コンデンサ25は、負荷装置40に電流(力行電流)の
供給をすること、および負荷装置40からの電流(回生電流)を取得することが可能である。また、以下では、コンデンサ25を流れる電流をIcとして説明する。
【0032】
電力供給路30は、リンクケーブルLC1と、リンクケーブルLC2と、リンクケーブルLC3と、リンクケーブルLC4と、リンクケーブルLC5との5つのリンクケーブル(電力ケーブル)で構成されている。リンクケーブルLC1は、コンデンサ25とコネクタCN1とを接続する。つまり、リングケーブルLC1は、全ての負荷装置40~40を共通にコンデンサ25と接続する。リンクケーブルLC2は、コネクタCN1とコネクタCN2とを接続する。リンクケーブルLC3は、コネクタCN1と負荷装置40とを接続する。リンクケーブルLC4は、コネクタCN2と負荷装置40とを接続する。リンクケーブルLC5は、コネクタCN2と負荷装置40とを接続する。
【0033】
このため、電力供給路30では、リンクケーブルLC1に流れる電流I1が、負荷装置40~40への電流I3~I5の総和である。リンクケーブルLC2に流れる電流I2が、負荷装置40および40への電流I4およびI5の総和である。なお、給電システム1の電力供給路30は、図2に示す電力供給路30に限らず、電源20およびコンデンサ25から、電流が各負荷装置40に分配される任意の経路であってよい。
【0034】
従って、電力供給路30は、図3Aに示すように、電源20と負荷装置40と接続するリンクケーブルLC1と、負荷装置40~40間をデイジーチェーン接続するリンクケーブルLC2およびLC3とにより構成されていてもよい。また、電力供給路30は、図3Bに示すように、電源20とコネクタCN1と接続するリンクケーブルLC1と、それぞれ、コネクタCN1と負荷装置40、40、40とを接続するリンクケーブルLC2、LC3、LC4とにより構成されていてもよい。
【0035】
さらに、電力供給路30は、図3Cに示すように、電源20とコネクタCN1と接続するリンクケーブルLC1と、それぞれ、コネクタCN1と負荷装置40、40とを接続するリンクケーブルLC2、LC4と、負荷装置40と負荷装置40とを接続する
リンクケーブルLC3とにより構成されていてもよい。また、設計支援装置10を用いて設計される給電システム1は、複数の電源20のそれぞれから複数の負荷装置40に電力が分配供給されるシステム(図8参照)内の1電源分の給電システム1であってもよい。
【0036】
また、電源20およびコンデンサ25からの電力を、3つの負荷装置40~40に電力供給路30自身が分配しなくでもよい。例えば、給電システム1は、図3Dに示すように、コンデンサ25とリンクケーブルLC1とコネクタCN1との役割が一体的となった分岐コネクタ27を有していてもよい。この場合、給電システム1においてコンデンサ25を分岐コネクタ27が内蔵し、電源20およびコンデンサ25からの電力を分岐コネクタ27が、3つの負荷装置のそれぞれに分配する。つまり、図3Dに示すように、分岐コネクタ27(コンデンサ25)に対して、負荷装置40~40がそれぞれ個別に接続されてもよい。具体的には、図3Dでは、分岐コネクタ27の複数の端子のうち1つの端子に対して、リンクケーブルを介して1つの負荷装置40が1対1に接続されている。
【0037】
図3Dに示す構成によれば、コンデンサ25と分岐コネクタ27が一体化されるので、給電システム1をより小型化することが可能になる。なお、分岐コネクタ27の端子数や分岐コネクタ27に接続可能な負荷装置40の数は、任意の数であってよい。また、分岐コネクタ27の種類も、任意のものであってよい。つまり、これらの情報は、ユーザによって任意に設定可能である。
【0038】
また、設計支援装置10(設計支援処理部15)が、給電システム1の小型化のために、給電システム1において分岐コネクタ27を用いて、電源20およびコンデンサ25からの電力を負荷装置40~40に分配するようにユーザに提案(推奨;通知)をしてもよい。例えば、設計支援装置10は、分岐コネクタ27を用いることを推奨する旨をディスプレイ12に表示するようにしてもよい。なお、分岐コネクタ27が内蔵できるようなコンデンサ25の大きさである必要があるので、後述する推奨容量C(コンデンサ25の容量として推奨される容量)の大きさが所定量以下である場合にのみ、設計支援装置10は、上記提案をしてもよい。
【0039】
以上のことを前提に、図1を参照して、本実施形態に係る設計支援装置10(UI処理部14および設計支援処理部15)の機能を説明する。なお、以下の説明では、設計対象となっている給電システム1のことを、設計対象システムと表記する。また、設計対象システム内の負荷装置40の総数を、N(≧2)と表記する。
【0040】
UI処理部14は、入力装置11に対するユーザ操作に応じて、構成情報と、負荷装置40(1≦X≦N)ごとの運転パターン情報および仕様情報とを取得するユニットである。このとき、UI処理部14は、ディスプレイ12の画面上に各種画像情報を表示させる。
【0041】
UI処理部14がユーザから取得する構成情報は、設計対象システムの電力供給路30(図2図3A図3D参照)の全体構成を示す情報である。具体的には、構成情報は、設計対象システムにおけるリンクケーブルの数、各リンクケーブル間の接続、および各リンクケーブルの個別の情報(長さ、内部抵抗)などを示す。
【0042】
負荷装置40(1≦X≦N)の運転パターン情報は、設計対象システムの実際の運用時に、負荷装置40のインバータ41に時系列的に入力される指令値群(位置指令、速度指令など)である。負荷装置40の仕様情報は、負荷装置40の運転パターン情報と組み合わせることにより、負荷装置40に流入する電流の時間変化パターンを表すデータ(以下、時系列電流データと表記する)を生成できる情報である。なお、本実施形態に係る設計支援装置10のUI処理部14は、負荷装置40の仕様情報として、電動
機42のイナーシャおよびトルク定数、負荷機械43のイナーシャなどをユーザから取得するように構成(プログラミング)されている。また、UI処理部14は、上記情報の取得完了後に、ユーザから設計支援処理の実行指示が入力された場合には、設計支援処理部15に設計支援処理の実行を指示する。
【0043】
[設計支援処理について]
図4を参照して、設計支援処理部15が実行する設計支援処理について説明する。図4は、設計支援処理のフローチャートを示す。ここで、本実施形態では、設計支援処理とは、給電システム1におけるコンデンサ25の設計を支援する処理である。
【0044】
ステップS101において、設計支援処理部15は、各負荷装置40(1≦X≦N)に関する運転パターン情報および仕様情報から、各負荷装置40の時系列電流データを生成する。図5を参照してステップS101における処理の例を説明すると、設計支援処理部15は、負荷装置40の運転パターン情報が示している速度の時間変化パターン201と負荷装置40の仕様情報とから、電動機42のトルクの時間変化パターン202を求める。そして、設計支援処理部15は、求めたトルクの時間変化パターン202を、設定されている電動機42のトルク定数で除算することで負荷装置40の時系列電流データ203を生成する。
【0045】
ステップS102において、設計支援処理部15は、電力供給路30の全体構成を示す構成情報を取得する。設計支援処理部15は、ユーザ入力によって構成情報を取得してもよいし、不揮発性記憶装置17に予め記憶された構成情報を取得してもよい。
【0046】
ステップS103において、設計支援処理部15は、各負荷装置40の時系列電流データ群と構成情報とに基づき、コンデンサ25を流れる電流Icを算出する。
【0047】
以下では、設計支援処理のステップS103の処理について、図2に示す給電システム1を例にとって具体的に説明する。ここで、図6では、負荷装置40~40に関する速度情報および、負荷装置40~40内を流れる電流の時間変化が示されている。
【0048】
まず、ステップS103では、設計支援処理部15は、ステップS101にて生成した負荷装置40~40の時系列電流データを加算することによって、リンクケーブルLC1を流れる電流I1の時系列データを生成する。この場合、リンクケーブルLC1についての最大電流値(電流I1の最大値)は、負荷装置40~40の時系列電流データの最大値の総和である3×Iaよりも小さい値となる。なお、リンクケーブルLC1を流れる電流量は、電力供給路30の構成によって変わるため、構成情報と負荷装置40~40の時系列電流データに基づき算出される必要がある。
【0049】
そして、設計支援処理部15は、リンクケーブルLC1についての電流(電流I1)の時系列データと、給電システム1の情報(電源20の供給能力、インバータ41が要する電圧など)とに基づき、コンデンサ25を流れる電流Icの時系列データを生成する。ここで、電源20における電力の供給と受領(吸収)とがない場合(0である場合)であって、コンデンサ25からのみの電力によって負荷装置40~40が動作している場合には、コンデンサ25による電力供給が最も求められるような場合と考えられる。このような場合には、リンクケーブルLC1についての電流(電流I1)の時系列データを、コンデンサ25を流れる電流Icの時系列データとして扱ってもよい。
【0050】
そして、設計支援処理部15は、算出した電流Icの時系列データにおける負荷方向(負荷装置40に向かう方向)に流れる電流の最大値を力行最大電流値として算出(取得)する。また、設計支援処理部15は、コンデンサ25に流れ込む電流の最大値を回生最大
電流として算出(取得)する。なお、力行最大電流値と回生最大電流のいずれかのみが算出されてもよい。
【0051】
ステップS104において、設計支援処理部15は、リンクケーブルLC1を流れる電流I1の力行最大電流値または回生最大電流値に基づき、リンクケーブルLC1(複数の負荷装置40を共通にコンデンサ25と接続する配線)の両端の電圧△V(最大電圧)を算出する。なお、「力行最大電流値または回生最大電流値」とは、力行最大電流値と回生最大電流値とのうち電流値が大きい方であってよい。ここで、リンクケーブルLC1の内部抵抗値をRとすると、式1のように、リンクケーブルLC1を流れる電流I1(力行最大電流値または回生最大電流値)と内部抵抗値Rとの積が電圧ΔVになる。なお、電流I1の代わりに、ステップS103にて算出した力行最大電流値または回生最大電流値を用いてもよい。
△V=I1×R ・・・式1
【0052】
なお、内部抵抗値Rの値は、ユーザにより予め入力されており、構成情報として記憶されているものとする。また、ユーザにより内部抵抗値Rが予め入力されない場合には、構成情報としてリンクケーブルLC1の長さとケーブル径と抵抗率が予め入力されていれば、当該長さとケーブル径と抵抗率から設計支援処理部15が内部抵抗Rを算出してもよい。また、図3Dに示すように、給電システム1にリンクケーブルLC1が存在しない場合(構成情報がリングケーブルLC1を有しないことを示している場合)には、ステップS104の処理は実行されなくてよい。
【0053】
ステップS105において、設計支援処理部15は、S103で算出したコンデンサ25に流れる電流Icの時系列データから電流積算値を求めて、電流積算量を推奨電荷量Q(コンデンサ25の電荷量として推奨される電荷量)とする。その後、設計支援処理部15は、推奨電荷量Qに基づき、コンデンサ25の推奨容量C(コンデンサ25の容量として推奨される容量)を算出する。
【0054】
以下では、コンデンサ25の推奨電荷量Qおよび推奨容量Cの算出方法を説明する。まず、推奨電荷量Qを算出した後に、推奨電荷量Qから、コンデンサ25の推奨容量Cを算出する方法を説明する。設計支援処理部15は、推奨電荷量Q、コンデンサ25の初期電圧V0、コンデンサ25の電圧の許容値V1(電圧許容値)に基づき、推奨容量Cを算出する。具体的には、設計支援処理部15は、式2に示すように、推奨電荷量Qを、初期電圧V0から許容値V1を引いた値(V0とV1の差分)で除算した値の絶対値を推奨容量Cとして算出する。なお、初期電圧V0および許容値V1は、予めユーザにより入力されている。ここで、初期電圧V0とは、負荷装置40~40全体の運転パターンの初期(開始時点)における電圧である。許容値V1とは、負荷装置40~40全体および負荷装置40~40それぞれの運転パターンを維持するために、コンデンサ25が変化することが許容された電圧の範囲の値である。なお、許容値V1は、推奨電荷量Qの算出方法によって、コンデンサ25が許容する最低電圧(最低許容電圧V1x;最低値)とコンデンサ25が許容する最高電圧(最高許容電圧V1y;最高値)とのいずれを用いるかが変わる。このため、以下の推奨電荷量Qの説明では、許容値V1として、最低許容電圧V1xと最高許容電圧V1yとのいずれを用いるかも併せて説明する。
C=|Q/(V0-V1)| ・・・式2
【0055】
次に、図7を参照して、推奨電荷量Qの算出方法を説明する。図7は、時刻tの変化に伴う、コンデンサ25を流れる電流Icの時間変化を示すタイミングチャートである。図7は、電流Icが周期的に変化する電流Icの1周期の時間変化を示す。ここで、複数の負荷装置40~40が運転パターンに従い全体として周期的に運転しているため、当該周期に従うように電流Icは周期的に変化する。図7では、時刻t~tX+1(X=
1~6)における電流をIcとして示している。また、時刻t~tX+1間の間隔を、Δt×Nとして示している。
【0056】
(推奨電荷量の算出例1)
推奨電荷量Qの算出例の1つ目として、設計支援処理部15は、例えば、電流Icの1周期(複数の負荷装置40の運転の1周期)の期間(時刻t~tの期間)の電流の積算値を推奨電荷量Qとして算出する。つまり、推奨電荷量Qは、式3のように算出されてもよい。これによれば、電流Icの1周期のいずれの期間においても、十分にコンデンサ25が電流の供給・受電をすることができる。なお、この場合、設計支援処理部15は、算出した推奨電荷量Qが0よりも小さければ(つまり、回生時の電荷量の方が力行時の電荷量よりも大きければ)、許容値V1として最高許容電圧V1yを用いて推奨容量Cを算出する。設計支援処理部15は、算出した推奨電荷量Qが0よりも大きければ(つまり、力行時の電荷量の方が回生時の電荷量よりも大きければ)、許容値V1として最低許容電圧V1xを用いて推奨容量Cを算出する。
【数1】
【0057】
(推奨電荷量の算出例2)
推奨電荷量Qの算出例の2つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間における、負荷装置40~40からコンデンサ25への電流(回生電流)の積算値(時刻t~tの期間の積算値)を推奨電荷量Qと算出してもよい。つまり、推奨電荷量Qは、式4のように算出されてもよい。これによれば、電源20によって負荷装置40~40への電力のほぼ全てを提供可能である場合に、コンデンサ25から提供される電流を考慮する必要性が低いため、適切な推奨電荷量Qを算出できる。また、電流Icの1周期の期間の積算値を推奨電荷量Qとする場合よりも、推奨電荷量Qを小さくできるので、推奨容量Cを小さくすることができ、結果的にコンデンサ25をより小型化することが可能になる。なお、この場合、設計支援処理部15は、許容値V1として最高許容電圧V1yを用いて推奨容量Cを算出する。
【数2】
【0058】
(推奨電荷量の算出例3)
推奨電荷量Qの算出例の3つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間における、コンデンサ25から負荷装置40~40への電流(力行電流)の積算値(時刻t~tの期間の積算値)を推奨電荷量Qと算出してもよい。つまり、推奨電荷量Qは、式5のように算出されてもよい。これによれば、負荷装置40~40の力行動作時の大部分の電力がコンデンサ25から供給されており、かつ回生電力をほぼ全て回生抵抗が消費可能な場合に、コンデンサ25に吸収される電流を考慮する必要性が低いた
め、適切な推奨電荷量Qを算出できる。なお、この場合、設計支援処理部15は、許容値V1として最低許容電圧V1xを用いて推奨容量Cを算出する。
【数3】
【0059】
(推奨電荷量の算出例4)
推奨電荷量Qの算出例の4つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間のうち一部期間(例えば、時刻t~tの期間)の積算値を推奨電荷量Qと算出してもよい。つまり、例えば、推奨電荷量Qは、式6のように算出されてもよい。これによれば、例えば、上記の一部期間が負荷装置40~40の瞬間的な電力需要の変化(増加または減少)が想定される期間であれば、当該電力需要の変化に対してコンデンサ25が適切に電力を制御できる。従って、瞬間的な電力需要の変化に対応できる限度で、コンデンサ25の推奨容量Cを設定できるようになるので、コンデンサ25をより小型化することができる。なお、この場合、設計支援処理部15は、算出した推奨電荷量Qが0よりも小さければ(つまり、回生時の電荷量の方が力行時の電荷量よりも大きければ)、許容値V1として最高許容電圧V1yを用いて推奨容量Cを算出する。設計支援処理部15は、算出した推奨電荷量Qが0よりも大きければ、許容値V1として最低許容電圧V1xを用いて推奨容量Cを算出する。
【数4】
【0060】
(推奨電荷量の算出例5,6)
推奨電荷量Qの算出例の5つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間(時刻t~tの期間)における、コンデンサ25から負荷装置40~40への電流(力行電流)の積算値Q1(式5参照)と、負荷装置40~40からコンデンサ25への電流(回生電流)の積算値Q2(式4参照)との両方を算出してもよい。そして、設計支援処理部15は、式4のように求めた推奨容量Cと式5のように求めた推奨容量Cとのうち大きい方を、この場合の推奨容量Cとしても算出してもよい。つまり、推奨容量Cは、式7のように算出されてもよい。なお、設計支援処理部15は、式4のように求めた推奨容量Cと式5のように求めた推奨容量Cとのうち大きい方に対応する電流の積算値(力行電流の積算値または回生電流の積算値)を推奨電荷量Qとするとよい。ここで、関数Maxは、複数の引数の中から最大の値を有する引数を出力する関数である。また、推奨電荷量Qの算出例の6つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間のうち一部期間(例えば、時刻t~tの期間)における、力行電流の積算値をQ1して、回生電流の積算値Q2として算出してもよい。つまり、推奨容量Cは、式8のように算出されてもよい。これは、後述する式9のように求めた推奨容量Cと式10のように求めた推奨容量Cとのうち大きい方を、この場合の推奨容量Cとしている。これらによれば、負荷装置40~40への電力の大部分を、コンデンサ25が供給するような場合に
、好適に推奨電荷量Qを算出できる。
【数5】
【0061】
(推奨電荷量の算出例7,8)
推奨電荷量Qの算出例の7つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間のうち一部期間(例えば、時刻t~tの期間)の力行電流の積算値を推奨電荷量Qとして算出してもよい。つまり、例えば、推奨電荷量Qは、式9のように算出されてもよい。なお、この場合、設計支援処理部15は、許容値V1として最低許容電圧V1xを用いて推奨容量Cを算出する。さらに、推奨電荷量Qの算出例の8つ目として、設計支援処理部15は、電流Icの1周期の期間のうち一部期間の回生電流の積算値を推奨電荷量Qとして算出してもよい。つまり、例えば、推奨電荷量Qは、式10のように算出されてもよい。なお、この場合、設計支援処理部15は、許容値V1として最高許容電圧V1yを用いて推奨容量Cを算出する。
【数6】
【0062】
なお、設計支援処理部15は、ステップS104にて算出したリンクケーブルLC1(コンデンサ25と負荷装置40とを結ぶ配線)の両端の電圧△Vによって、許容値V1の補正(算出)を行ってもよい。具体的には、設計支援処理部15は、上記の許容値V1(ユーザが入力した許容値)に対して電圧ΔVを加えた値を、新たな許容値V1としてもよい。これによれば、リンクケーブルLC1における電力消費を考慮した推奨容量Cを算出できるので、リンクケーブルLC1の内部抵抗が大きい場合でも適切な推奨容量Cを算出できる。
【0063】
ステップS106において、設計支援処理部15は、コンデンサ25を流れる電流Ic、およびコンデンサ25に推奨容量Cの情報を、ディスプレイ12に表示(出力)する処理である処理結果表示処理を行う。ここで、表示する電流Icの情報は、電流Icの時系列電流データを示すグラフであってもよいし、ステップS104にて算出された力行最大電流値および/または回生最大電流値であってもよい。また、設計支援処理部15は、さらに推奨電荷量Qの情報をディスプレイ12に表示(出力)するようにしてもよい。
【0064】
このように、ステップS106では、コンデンサ25を流れる電流Ic、およびコンデンサ25に推奨容量Cが表示される。ここで、コンデンサ25に流れる電流Icの積算値から、コンデンサ25に推奨容量Cが算出されるので、コンデンサ25が不要な容量を有する可能性を低減できる。従って、ユーザは、ディスプレイ12の画面上に表示される情報に基づき、適切な仕様のコンデンサ25を用いて給電システム1を設計することができる。
【0065】
なお、ステップS106では、コンデンサ25に推奨される容量をユーザに認識させればよいため、設計支援処理部15は、電流Icの情報を表示せずに、推奨容量Cの情報のみをディスプレイ12に表示してもよい。また、設計支援処理部15は、電流Icや推奨容量Cの情報をディスプレイ12に表示するのではなく、音声としてユーザに通知(出力)してもよい。さらには、設計支援処理部15は、例えば、ネットワークを介して外部の装置(例えば、プリンタやスマートフォンなど)に、電流Icや推奨容量Cの情報を出力するようにしてもよい。
【0066】
なお、上述では、1つの給電システム1についてコンデンサ25の推奨容量Cを算出して、表示する例を説明した。しかし、例えば、図3A図3Dに示す4つの給電システム1について、ユーザがそれぞれコンデンサ25の推奨容量Cを把握したい場合がある。この場合には、4つの給電システム1のそれぞれについて(4つの構成情報それぞれについて)、設計支援処理部15は、設計支援処理を実行してもよい。この場合、ユーザは、3つの給電システム1のそれぞれについて、設計支援装置10に構成情報を入力する。
【0067】
このように、本実施形態に係る設計支援装置10(UI処理部14および設計支援処理部15)は、上記機能を有している。従って、設計支援装置10によれば、システム給電システム1を、適切な仕様のコンデンサ25により構成することが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態では、設計支援処理部15がフローチャートの全ての処理を実行しているが、複数の構成要素が分担して実行してもよい。例えば、算出部(不図示)がステップS101~ステップS105の処理を実行し、ステップS106にて出力部(不図示)がディスプレイ12に表示すべき情報を出力するようにしてもよい。
【0069】
<変形形態>
上述の実施形態に係る設計支援装置10は、各種の変形が可能なものである。例えば、設計支援装置10を、各負荷装置40が、インバータ41の代わりにサーボドライバを備えた装置であり、電源20が直流電源である給電システム1の設計を支援するための装置に変形してもよい。給電システム1の電源20は、複数の電源(例えば、AC/DCコンバータとバッテリ)の出力を並列接続したものであってもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、ステップS105において、コンデンサ25の推奨容量Cを算出する際に、リンクケーブルLC1の両端間の電圧ΔVを考慮する例を説明した。これに加えて、給電システム1が分散システムである場合には、設計支援処理部15は、リンクケーブルLC2~LC5それぞれの内部抵抗によって発生する電圧をさらに考慮して
、コンデンサ25の推奨容量Cを算出してもよい。ここで、給電システム1が分散システムである場合とは、リンクケーブルLC2~LC5に、所定の長さ以上(例えば、1m以上)のケーブルが含まれている場合である。このような場合には、リンクケーブルLC2~LC5の内部抵抗によって発生する電圧を給電システム1全体で無視することができない。
【0071】
このため、このような場合には上述のステップS104における場合と同様に、設計支援処理部15は、リンクケーブルLC2~LC5それぞれにおける電流の最大値(力行電力または回生電力の最大値)と内部抵抗の値から、それぞれの内部抵抗によって発生する最大電圧を算出する。そして、ステップS105において、設計支援処理部15は、電圧ΔVと、リンクケーブルLC2~LC5それぞれにおける内部抵抗によって発生する最大電圧とに基づき許容値V1を補正(算出)する。例えば、図2の例では、設計支援処理部15は、リンクケーブルLC2~LC5における内部抵抗によって発生する電圧をそれぞれ算出する。そして、設計支援処理部15は、図3A図3Dそれぞれの構造において、リンクケーブルを接続するコネクタCN1から各負荷装置までで発生する最大電圧値を許容値V1に加える。これによって、分散システムにおいても、コンデンサ25の適切な推奨容量Cを算出することができる。なお、各リンクケーブルの内部抵抗値および長さの値は、ユーザにより予め入力されており、構成情報として記憶されている。また、給電システム1が分散システムでない場合には、設計支援処理部15の処理量の増加を防ぐために、設計支援処理部15は、リンクケーブルLC2~LC5それぞれの内部抵抗によって発生する電圧を考慮しなくてもよい。
【0072】
設計支援装置10を、図8に示した構成の給電システム1、すなわち、複数のコンデンサ25(図8では、25a、25b)のそれぞれから、複数の負荷装置40に電力が分配供給される給電システム1の設計を支援できる装置に変形してもよい。設計支援装置10を、そのような装置に変形する場合、電力供給路30の構成を示す構成情報の解析により複数のコンデンサ25が含まれることが判明した場合には、構成情報および運転パターン情報をコンデンサ25別の情報に分割し、分割した情報ごとに上述の設計支援処理が行われるようにしておけばよい。なお、コンデンサ25別の情報とは、給電システム1が図8に示した構成のものである場合には、コンデンサ25aについての、電力供給路30aの構成を示す構成情報および負荷装置40~40についての運転パターン情報と、コンデンサ25bについての、電力供給路30bの構成を示す構成情報および負荷装置40~40についての運転パターン情報とのことである。
【0073】
上述の設計支援装置10から幾つかの機能を取り除いておいてもよいことや、設計支援装置10を、ネットワークを介して情報を入出力する装置(換言すれば、入力装置11、ディスプレイ12を備えない装置)に変形してもよいことは、当然のことである。
【0074】
<付記1>
互いに並列に接続された電源(20)とコンデンサ(25)からの電力が、複数の電力ケーブルを組み合わせた電力供給路(30)により複数の負荷装置(40)へ分配供給される給電システム(1)の設計を支援する設計支援装置(10)であって、
前記電力供給路(30)の全体構成を示す構成情報を取得する第1取得手段(14)と、
前記複数の負荷装置(40)のそれぞれについて、その負荷装置(40)の運転パターンを表す運転パターン情報を取得する第2取得手段(15)と、
前記第1取得手段により取得された前記構成情報と前記第2取得手段(25)により取得された前記複数の負荷装置(40)についての前記運転パターン情報とに基づき前記コンデンサ(25)に流れる電流の時系列データを算出して、前記電流の時系列データに基づき前記コンデンサ(25)の容量として推奨する容量である推奨容量を算出する算出手
段(15)と、
前記コンデンサの推奨容量の情報を少なくとも出力する出力手段(15)と、
を備える設計支援装置(10)。
【符号の説明】
【0075】
1:給電システム、10:設計支援装置、11:入力装置、12:ディスプレイ、
13:本体部、14:UI処理部、15:設計支援処理部、16:設計支援プログラム、17:不揮発性記憶部、18:系統、20:電源、22:コンバータ、
25:コンデンサ、30:電力供給路、40:負荷装置、41:インバータ、
42:電動機、43:負荷機械
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8