(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】サポートカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A61M25/00 622
A61M25/00 610
(21)【出願番号】P 2020568145
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001831
(87)【国際公開番号】W WO2020153321
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019009122
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 浩二
(72)【発明者】
【氏名】日下部 瑛美
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030075(WO,A1)
【文献】特表2016-517320(JP,A)
【文献】特表2012-510329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療部位を治療するための治療用カテーテルと、前記治療用カテーテルが挿入され且つ血管内において前記治療用カテーテルを案内するためのガイディングカテーテルと共に使用され、前記ガイディングカテーテルの基端側開口部から挿入されて前記ガイディングカテーテルの先端側開口部から突出する長さを有し、前記治療用カテーテルの先端部分を前記治療部位まで案内するサポートカテーテルであって、
前記治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層、補強層
および外層
からなるディスタルシャフトと、
先端側部分が前記ディスタルシャフトの前記外層よりも内側の部分に配置されたプロキシマルシャフトと、を備え、
前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は、残余部分よりも幅広状に形成され、且つ、造影マーカを含んで構成され
、且つ、前記ディスタルシャフトの前記内層と前記外層にのみ挟持されており、
前記ディスタルシャフトの前記外層は、当該ディスタルシャフトの軸線方向に沿って互いに隣り合って配された第1構成外層と第2構成外層とを含み、
前記第1構成外層の端面と前記第2構成外層の端面とは溶着され、
前記第1構成外層は前記プロキシマルシャフトの先端側部分を内包し又は内包せず、
前記第2構成外層は前記プロキシマルシャフトの先端側部分を内包し、且つ、前記第1構成外層よりも硬度が高い、サポートカテーテル。
【請求項2】
前記ディスタルシャフトの前記補強層は、複数の金属線が筒型メッシュ状に形成されたものからなり、
前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は前記複数の金属線のうち少なくとも一つの金属線に固定されている、請求項1に記載のサポートカテーテル。
【請求項3】
前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は、その軸線方向が当該プロキシマルシャフトの軸線方向に沿って配された環状に形成されている、請求項1又は2に記載のサポートカテーテル。
【請求項4】
前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は、その軸線方向が当該プロキシマルシャフトの軸線方向に沿って配され且つ環部の一部を切り欠いたCリング状に形成されている、請求項1又は2に記載のサポートカテーテル。
【請求項5】
前記金属線および前記プロキシマルシャフトは、ステンレス鋼により形成されている、請求項2乃至4の何れか1項に記載のサポートカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用カテーテルおよびガイディングカテーテルと共に使用され、治療用カテーテルを治療部位に案内するラピッドエクスチェンジタイプのサポートカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的冠動脈インターベーション(PCI)では、治療用カテーテルおよびガイディングカテーテルと共にサポートカテーテルが使用されることがあり、サポートカテーテルとしては、例えば特許文献1のようなカテーテルが知られている。
【0003】
特許文献1のサポートカテーテルは、ディスタルシャフト(同文献では管状体と記載)とプロキシマルシャフト(同文献ではワイヤと記載)とを有している。このディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとは、当該プロキシマルシャフトの先端側部分とディスタルシャフトの基端側部分とが長手方向に沿って一部重複した状態で接続されている。詳細には、両者の重複部分の外周を補強チューブで覆うことでディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のサポートカテーテルにおいては、ディスタルシャフトの外周面にプロキシマルシャフトの先端側部分を重複させているため、サポートカテーテル全体としての径が大きい。さらには、上記重複部分の外周を補強チューブで覆っていることで、サポートカテーテル全体としての径がさらに増大している。そのため、サポートカテーテルをガイディングカテーテル内で案内するための案内用ガイドワイヤと、バルーン膨張に起因した冠動脈分岐点の閉塞を防止するために用いられる保護用ガイドワイヤの2本のガイドワイヤを用いる手技を行う場合には、ガイディングカテーテルの内腔に、上記のように径が大きいサポートカテーテルと保護用ガイドワイヤとの両方を配置することが著しく困難となる。また、2本のガイドワイヤを用いる他の手技として、例えば蛇行した冠動脈の血管内において、サポートカテーテルの内腔に配置される案内用ガイドワイヤの他に、サポートカテーテルの外側面に沿って配置される別のガイドワイヤを用いて行う手技がある(バディワイヤテクニックと呼ばれることがある)。この手技によって、サポートカテーテルの血管内周面に対する接触が低減されて、当該サポートカテーテルの通過性が向上する。このような手技を行う場合にも、ガイディングカテーテルの内腔に2本のガイドワイヤを配置するため、サポートカテーテルの径が大きくなることは好ましくない。さらに、小径のガイディングカテーテルを用いて手技を開始した場合で、血管の蛇行の激しさや狭窄が大きい等の理由で上記のように2本のガイドワイヤを用いた手技に変更した場合には、従来のサポートカテーテルは径が大きいため、上記の径が小さめのガイディングカテーテルの内腔に2本のガイドワイヤを挿通させることができない。そのため、上記の小径のガイディングカテーテルに替えて、より大径のガイディングカテーテルを用いる必要があり、そのような場合には、シースの交換および設置からのやり直しを強いられることになる。
【0006】
そこで、本発明は、ディスタルシャフトの内径を小さくすることなく従来よりもサポートカテーテル全体としての径が小径に構成され、且つディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとの連結部分における強度をより向上することができるサポートカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係るサポートカテーテルは、治療部位を治療するための治療用カテーテルと、前記治療用カテーテルが挿入され且つ血管内において前記治療用カテーテルを案内するためのガイディングカテーテルと共に使用され、前記ガイディングカテーテルの基端側開口部から挿入されて前記ガイディングカテーテルの先端側開口部から突出する長さを有し、前記治療用カテーテルの先端部分を前記治療部位まで案内するサポートカテーテルであって、前記治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層、補強層、外層を含んで構成されるディスタルシャフトと、先端側部分が前記ディスタルシャフトの前記外層よりも内側の部分に配置されたプロキシマルシャフトと、を備え、前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は残余部分よりも幅広状に形成されているものである。
【0008】
本態様に従えば、プロキシマルシャフトの先端側部分がディスタルシャフトの外層よりも内側の部分に配置されるので、ディスタルシャフトの内径を小さくすることなくサポートカテーテルの最外径(軸線方向と直交する方向の長さ)を従来よりも小さくすることが可能となる。また、プロキシマルシャフトの先端側部分が幅広状に形成されていることで、当該先端側部分とディスタルシャフトとの接触面積を広くすることができる。これにより、その固定部分の強度が増し、プロキシマルシャフトの先端側部分がディスタルシャフトから外れ難くなる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記ディスタルシャフトの前記補強層は、複数の金属線が筒型メッシュ状に形成されたものからなり、前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は前記複数の金属線のうち少なくとも一つの金属線に固定されているものである。
【0010】
本態様に従えば、上述の通り、プロキシマルシャフトの先端側部分が幅広状に形成されていることで、金属線という細線状のものに対しても上記先端側部分を固定し易くなる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は、その軸線方向が当該プロキシマルシャフトの軸線方向に沿って配された環状に形成されているものである。
【0012】
本態様に従えば、プロキシマルシャフトの先端側部分が環状に形成されていることで、ディスタルシャフトとの接触面積をより広くすることができる。
【0013】
第4の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は、その軸線方向が当該プロキシマルシャフトの軸線方向に沿って配され且つ環部の一部を切り欠いたCリング状に形成されているものである。
【0014】
本態様に従えば、プロキシマルシャフトの先端側部分がCリング状に形成されていることで、ディスタルシャフトとの接触面積をより広くすることができる。
【0015】
第5の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は造影マーカを含んで構成されているものである。
【0016】
本態様に従えば、プロキシマルシャフトの先端側部分のガイディングカテーテル内における通過具合を容易に認識することができる。また、治療用カテーテルをディスタルシャフト内へ挿入する際にディスタルシャフトの基端側開口部の目印となる。
【0017】
第6の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記金属線および前記プロキシマルシャフトは、ステンレス鋼により形成されているものである。
【0018】
本態様に従えば、金属線とプロキシマルシャフト先端側部分とを例えば溶接により固定する際に固定し易くなる。
【0019】
第7の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記プロキシマルシャフトの前記先端側部分は、前記ディスタルシャフトの前記内層と前記外層とに挟持されているものである。
【0020】
本態様に従えば、プロキシマルシャフトの先端側部分をディスタルシャフトの内層と外層で挟持することで接続強度を向上することができる。
【0021】
第8の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記ディスタルシャフトの前記外層は、当該ディスタルシャフトの軸線方向に沿って互いに隣り合って配された第1構成外層と第2構成外層とを含み、前記第1構成外層は前記プロキシマルシャフトの先端側部分を内包し又は内包せず、前記第2構成外層は前記プロキシマルシャフトの先端側部分を内包するものである。
【0022】
本態様に従えば、外層が2つ以上の構成外層により構成されるため、各構成外層の原材料等を変えることで、ディスタルシャフトの柔軟性等の物理的性質を軸線方向へ段階的に変化させることができる。また、第2構成外層をまだ設けていない状態で金属線とプロキシマルシャフトの先端側部分とを配置し易くなる。さらに、金属線とプロキシマルシャフトの先端側部分との固定が終了した後、当該プロキシマルシャフトの先端側部分を第1構成外層に内包させることで金属線に対してプロキシマルシャフトの先端側部分が取り外れ難くなる。
【0023】
第9の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記第2構成外層は前記第1構成外層よりも硬度が高いものである。
【0024】
本態様に従えば、金属線とプロキシマルシャフトの先端側部分との接続をより強固なものにすることができると共に、ディスタルシャフトの先端側の柔軟性を確保することができるので、サポートカテーテルを円滑に押し進めることができる。また、ディスタルシャフトの基端側部分から先端側部分に向かって段階的に硬度変化させることができるため、急激な硬度変化によるキンクを回避することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ディスタルシャフトの内径を小さくすることなく従来よりもサポートカテーテル全体としての径が小径に構成され、且つディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとの連結部分における強度をより向上することが可能なサポートカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサポートカテーテルが治療用カテーテルおよびガイディングカテーテルと共に使用されている状態を示す図である。
【
図2】
図1のサポートカテーテルを示す側面図である。
【
図3】(a)および(b)は第1実施形態のサポートカテーテルの製造工程を示す図である。
【
図4】第1実施形態のサポートカテーテルのプロキシマルシャフトの先端側部分を示す平面図である。
【
図5】(a)および(b)は第2実施形態のサポートカテーテルの製造工程を示す図である。
【
図6】(a)および(b)は第3実施形態のサポートカテーテルの製造工程を示す図である。
【
図7】(a)、(b)および(c)は第4実施形態のサポートカテーテルの製造工程を示す図である。
【
図8】第4実施形態のサポートカテーテルの変形例を示す図である。
【
図9】(a)は第5実施形態のプロキシマルシャフトの先端側部分を形成するための金型の構成を示す側面図であり、(b)は(a)の金型により形成されるプロキシマルシャフトを示す側面図である。
【
図10】第6実施形態のプロキシマルシャフトの先端側部分における先端部分のレーザ照射点を示す平面図である。
【
図11】第7実施形態のプロキシマルシャフトの先端側部分の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るサポートカテーテルについて図面を参照しながら説明する。以下に説明するサポートカテーテルは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。また、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。
【0028】
(第1実施形態)
図1に示すような冠動脈2内に形成される狭窄部3を拡張するための手技として、例えば経皮的冠動脈インターベーション(PCI)が知られている。PCIでは、主にガイディングカテーテル4と、バルーンカテーテル5と、サポートカテーテル1と、ガイドワイヤ25とが用いられる。以下、PCIで用いられる各部材について説明する。
【0029】
<ガイディングカテーテル>
ガイディングカテーテル4は、血管内においてバルーンカテーテル5およびサポートカテーテル1を案内するためのカテーテルであり、後述するシース7を用いて例えば橈骨動脈8や大腿動脈(図略)に挿入される。ガイディングカテーテル4は、ガイディングカテーテル本体11およびY型コネクタ12を有している。ガイディングカテーテル本体11は、長尺のチューブ形状になっており、当該ガイディングカテーテル本体11の中にバルーンカテーテル5およびサポートカテーテル1を挿入できるように構成されている。また、ガイディングカテーテル本体11は、湾曲可能な円筒状の可撓性チューブから成り、湾曲する血管内を押し進めることができるようになっている。
【0030】
Y型コネクタ12は、ガイディングカテーテル本体11の基端部に設けられている。Y型コネクタ12は、本体部分12aおよびサイドアーム12bを有しており、サイドアーム12bから薬液や造影剤が注入できるようになっている。また、本体部分12aの先端部分は、ガイディングカテーテル本体11の基端部に取り付けられている。本体部分12aは基端側開口12cを有しており、この基端側開口12cからバルーンカテーテル5およびサポートカテーテル1を挿入できるようになっている。
【0031】
<バルーンカテーテル>
バルーンカテーテル5は治療用カテーテルである。バルーンカテーテル5は、冠動脈内の狭窄部3に挿入し、狭窄部3を押し拡げるためのカテーテルである。なお、バルーンカテーテル5は、従来公知のものが適宜採用可能である。例えば、バルーンカテーテル5は、ラピッドエクスチェンジ型(RX型)のカテーテルであり、
図1に示すように治療用カテーテル本体21およびコネクタ22を有している。治療用カテーテル本体21は、長尺のチューブ形状に形成されている。治療用カテーテル本体21は、その先端部分にステント24が外装されたバルーン23を有している。なお、ステント24は、従来公知のものが適宜採用可能である。バルーンカテーテル5は、ガイドワイヤ25、ガイディングカテーテル4およびサポートカテーテル1と共に使用される。
【0032】
<サポートカテーテル>
サポートカテーテル1は、冠動脈2の入口より更に狭窄部3に近い位置まで進められ、バルーンカテーテル5のバルーン23を狭窄部3まで案内するためのカテーテルである。また、サポートカテーテル1は、狭窄部3にバルーン23を挿入する際にバルーン23をサポートするためのカテーテルでもある。サポートカテーテル1は、ガイディングカテーテル4の基端側開口部4bから挿入されて、当該ガイディングカテーテル4の先端側開口部4aから突出する長さを有している。
【0033】
以下、本実施形態のサポートカテーテル1の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、サポートカテーテル1は、保護部材32と、ディスタルシャフト33と、プロキシマルシャフト34とを備えている。
【0034】
ディスタルシャフト33は、大略円筒状に形成されており、バルーンカテーテル5を挿入可能に構成されている。ディスタルシャフト33は、サポートカテーテル1の先端側部分1aを構成している。ディスタルシャフト33は、内側から順に内層35と補強層36と第1構成外層37および第2構成外層38を含んで構成される外層とにより構成された三層構造の大略円筒部材である。
【0035】
ディスタルシャフト33の内層35は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等により形成されている。内層35の製造方法としては、例えば銀メッキした銅線の外表面にPTFEを塗布して内層35を形成する。この場合、内層35の基端側部分が補強層36の基端側部分から若干突出(露出)するように当該内層35の長さを調整する。
【0036】
ディスタルシャフト33の補強層36は、例えばステンレス鋼から成る複数の金属線(素線)36aが筒型メッシュ状に形成されたものであって、内層35と、第1構成外層37および第2構成外層38との間に配されている。
【0037】
本実施形態では、補強層36を形成するのに例えば16本の金属線36aを用いる。16本の金属線36aのうち8本を内層35の外周面において一方向にらせん状に捲回し、残りの8本を内層35の外周面において他方向にらせん状に捲回することで、上記の補強層36を形成することができる。この場合、補強層36の基端側部分が第1構成外層37の基端側部分から突出(露出)するように当該補強層36を形成するようにする。なお、捲回する金属線36aの本数は各方向8本ずつに限られるものではない。また、金属線36aの捲き方もらせん状に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。
【0038】
本実施態様では、第1構成外層37および第2構成外層38がディスタルシャフト33の外層に相当する(後述の各実施形態においても同様)。すなわち、ディスタルシャフト33の外層は第1構成外層37と第2構成外層38とにより構成されている。第2構成外層38の基端側部分を斜めにカットされた形状や円弧状、半月状に形成してもよい。この場合、内層35の基端側部分も同様の形状に形成される。これにより、バルーンカテーテル5をディスタルシャフト33に挿入し易くなる。また、内層35と第2構成外層38だけで構成される基端側部分ができ、ディスタルシャフト33の基端側部分の肉厚が薄くなることから、バルーンカテーテル5をディスタルシャフト33により挿入し易くなると共に、外径を小さくすることができる。なお、構成外層の数を2つとしているが、これに限定されるものではなく、3つ以上でもよい。
【0039】
ディスタルシャフト33の第1構成外層37は、例えばナイロン系エラストマー樹脂により形成される。第1構成外層37の硬度は、後述する第2構成外層38の硬度よりも低くなっている。
【0040】
ディスタルシャフト33の第2構成外層38は、当該ディスタルシャフト33の軸線方向に沿って第1構成外層37と互いに接触した状態で配され、大略円筒状に形成されている。第2構成外層38は、後述する方法によりプロキシマルシャフト34の先端側部分をディスタルシャフト33の第1構成外層37よりも内側の部分に固定した後に、当該固定部分を覆うものである。第2構成外層38は、例えばポリブチレンテレフタレート等により形成される。第2構成外層38の硬度は、第1構成外層37の硬度よりも高くなっている。
【0041】
なお、内層35と第1構成外層37とは、互いに同じ材料を用いて構成されてもよく、上述のような材料に限定されない。また、内層35と第2構成外層38とは、互いに同じ材料を用いて構成されてもよく、上述のような材料に限定されない。なお、第1構成外層37,第2構成外層38の外周面に、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン(PVP)等を含有する親水性ポリマをコーティングしてもよい。
【0042】
ディスタルシャフト33の先端には、先端チップ39が一体的に設けられている。この先端チップ39は、例えば造影剤である酸化ビスマス等が配合されたポリアミドエラストマーから成り、大略円筒状に形成されている。先端チップ39は、放射線不透過性を有しており、放射線透視下において陰影が現れるようになっている。
【0043】
次に、プロキシマルシャフト34について説明する。プロキシマルシャフト34は、例えばステンレス鋼から成る長尺状の線材である。プロキシマルシャフト34の表面には、例えばPTFEがコーティングされている。
【0044】
プロキシマルシャフト34の基端部には保護部材32が設けられている。保護部材32は、ポリアミドエラストマー等から成る円柱状部材である。プロキシマルシャフト34は、サポートカテーテル1の基端側部分1bを構成している。また、
図4に示すように、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aは残余部分よりも幅広状に形成されている。先端側部分34aは、線材であるプロキシマルシャフト34の先端の部分をプレスして潰したり、削り出し加工することにより平板状に形成されている。プロキシマルシャフト34の先端側部分34aの幅(軸方向と直交する方向の長さ)はディスタルシャフト33の円周長さの例えば8%以上であることが望ましい。これにより、ディスタルシャフト33に対する先端側部分34aの接触面積が大きくなるので、溶接が行い易くなると共にプロキシマルシャフト34とディスタルシャフト33との固定が強固になる。なお、先端側部分34aの厚みは、プロキシマルシャフト33の線材の直径以下であることが望ましい。
【0045】
本実施形態において、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aは、ディスタルシャフト33の第1構成外層37よりも内側の部分に固定される。以下、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aのディスタルシャフト33に対する固定方法について詳細に説明する。
【0046】
図3(a)に示すように、ディスタルシャフト33においては、上述の通り、補強層36の基端側部分が第1構成外層37の基端側部分から突出し、内層35の基端側部分が補強層36の基端側部分から突出した状態となっている。つまり、内層35の基端側部分は第1構成外層37の基端側部分から突出している。上記のように第1構成外層37の基端側部分から突出した少なくとも1本の金属線36aに対して、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aが溶接により固定される。なお、溶接部分をw1で示している。これによって、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aが、軸線方向視においてディスタルシャフト33の内層35と第1構成外層37との間に配置される。つまり、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33の第1構成外層37よりも内側の部分に固定されることとなる。この場合、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aの幅方向がディスタルシャフト33の周方向と一致するように配置される。なお、
図3(a)では、補強層36を構成する1本の金属線36aの一端とプロキシマルシャフト34の先端側部分34aとが溶接により連結された状態が示されているが、補強層36を構成する複数の金属線36aの各端部とプロキシマルシャフト34の先端側部分34aとを溶接してもよい。
【0047】
続いて、
図3(b)に示すように、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aと補強層36の金属線36aとの溶接部分w1とが覆われるように第2構成外層38が設けられる。詳細には、プロキシマルシャフト34における溶接部分w1を含む先端側部分34aが第2構成外層38の内腔に配置された状態で、第2構成外層38の内周面と内層35の外周面とが溶着されると共に第1構成外層37の端面と第2構成外層38の端面とが溶着される。このような方法によって、サポートカテーテル1が完成される。ここで、同図に示すように、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aとディスタルシャフト33とが径方向でオーバーラップするようにしているが、この場合、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aは、ディスタルシャフト33の全長の5~25%の距離(オーバーラップ距離)でオーバーラップさせることが望ましい。オーバーラップ距離が上記範囲よりも短いとディスタルシャフト33に対する先端側部分34aの十分な接続強度の向上が見込まれないし、当該オーバーラップ距離が上記範囲よりも長いとオーバーラップ部分が硬くなり、通過性の低下が生じ得る。また、オーバーラップ距離が上記範囲よりも長いと、径断面が略楕円状となるオーバーラップ部分が軸線方向においてより増すため、ガイディングカテーテル4内におけるディスタルシャフト33の内腔占有率がより増してしまう。そのため、より細いガイディングカテーテル4を用いた手技を行う際にディスタルシャフト33の通過抵抗が増す恐れがある。さらに、2本のガイドワイヤを用いる手技を行う際にガイドワイヤの挿入抵抗が増す恐れがある。よって、オーバーラップ距離は上記範囲内にあることが望ましい。
【0048】
<サポートカテーテルの使用方法>
以下では、PCIにおいて橈骨動脈からアプローチする方法について
図1を参照しながら説明する。
【0049】
この方法では、サポートカテーテル1、ガイディングカテーテル4、バルーンカテーテル5およびガイドワイヤ25が用いられる。PCIでは、まず施術者が橈骨動脈8を図略の針で穿刺し、穿刺箇所にシース7を挿入する。その後、シース7を通じてガイディングカテーテル4が橈骨動脈8に挿入されると、ガイディングカテーテル4は、その先端側開口部4aが大動脈弓9を通って冠動脈2の入口2aに達するまで推し進められ、先端側開口部4aが入口2aに達するとガイドワイヤ25を挿入して、サポートカテーテル1がガイディングカテーテル4の基端側開口部4bから挿入される。サポートカテーテル1は、施術者によって押し引きされながら、その先端側部分1aが先端側開口部4aから突出するまで、ガイドワイヤ25に案内されながらガイディングカテーテル4内を押し進められる。これにより、サポートカテーテル1の先端側部分1aが冠動脈2内に挿入され、更に狭窄部3に達する。
【0050】
このようにしてサポートカテーテル1の先端側部分1aを狭窄部3まで押し込んだ後は、続いて、バルーンカテーテル5がガイディングカテーテル4の基端側開口部4bから挿入される。バルーンカテーテル5は、その先端がディスタルシャフト33内に挿入され、その後ディスタルシャフト33の先端から突出するまで押し進められる。このように押し進めることによって、バルーンカテーテル5の先端部分が狭窄部3に挿入され、バルーン23およびステント24が狭窄部3に位置する。そうすると、バルーンカテーテル5の押込みが止められる。
【0051】
このようにバルーンカテーテル5を押し進めることによって、バルーンカテーテル5の先端部分がガイディングカテーテル4によって冠動脈2の入口2aまで案内され、更に入口2aの先ではサポートカテーテル1によって狭窄部3まで案内される。また、サポートカテーテル1のディスタルシャフト33は、狭窄部3又はその近くまで延びているので、バルーンカテーテル5の先端部分を狭窄部3に押し込む際にディスタルシャフト33の先端部分によってバルーンカテーテル5の先端部分がサポートされる。その後、圧力流体によってバルーン23が膨らむ。それと共に、ステント24が展開拡張されて狭窄部3が拡張される。これにより、狭窄部3の血流を回復させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のサポートカテーテル1によれば、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aが補強層36の金属線36aに溶接される。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33の内層35と第1構成外層37との間に固定される。つまり、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33の第1構成外層37よりも内側の部分に固定される。このような構成によって、ディスタルシャフト33の内径を小さくすることなくサポートカテーテル1の最外径(軸線方向と直交する方向の長さ)を従来よりも小さくすることが可能となる。また、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aが幅広状に形成されていることで、当該先端側部分34aを補強層36の金属線36aに広い接触面積で溶接することができる。これにより、その溶接部分w1の接続強度が増し、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aが金属線36aから外れ難くなる。すなわち、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33から外れ難くなる。
【0053】
また、本実施形態では、ステンレス鋼からなるプロキシマルシャフト34の先端側部分34aは、同じくステンレス鋼からなる金属線36aに溶接固定される。これにより、先端側部分34aと金属線36aとが溶接し易くなると共に溶接強度も向上する。
【0054】
また、本実施形態では、第2構成外層38はプロキシマルシャフト34の溶接部分w1を含む先端側部分34aを内包すると共に第1構成外層37の硬度よりも高くなっている。これにより、溶接部分w1を含むプロキシマルシャフト34の先端側部分34aと金属線36aとの接続を強固なものにすることができると共に、ディスタルシャフト33の先端側の柔軟性を担保することができ、サポートカテーテル1をガイディングカテーテル4内や血管内を円滑に押し進めることができる。また、ディスタルシャフト33の基端側部分から先端側部分に向かって段階的に硬度変化させることができるため、急激な硬度変化によるキンクを回避することができる。
【0055】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33から露出しないので、従来からあるようなディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとの接続部分が被覆されずに露出しているような態様と比べて、接液部材(接液部位)を少なくすることができる。これによって、プロキシマルシャフト34(先端側部分34a)の使用材料の幅が広がり、また先端側部分34aの接続方法の幅が広がる。例えば先端側部分34aを接着剤により接続することが可能となり、また溶着により接続した場合でその溶着により材料が仮に変性した場合であっても、安全性の低下を抑制することができる。さらに、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33から露出しないことの更なる効果として、溶接部分w1や先端側部分34a周辺で生じ得る凹凸を、内層35と第2構成外層38とで覆うことで抑制し、サポートカテーテル1の表面を滑らかにすることができる。これにより、バリなどを防止または抑制でき、それ故人体への影響を減らすことができると共に、治療用カテーテルであるバルーンカテーテル5のディスタルシャフト33内への挿通も円滑に行うことができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第1構成外層37と第2構成外層38とが同種材料で形成されることで当該第1構成外層37と第2構成外層38との溶着が行い易くなる。
【0057】
(第2実施形態)
次いで、プロキシマルシャフト34のディスタルシャフト33に対する固定方法についての第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態においては、上述の第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0058】
図5(a)に示すように、第2実施形態のディスタルシャフト33においては、第1構成外層37の基端側部分から突出した少なくとも1本の金属線36aと、当該金属線36aの捲回方向とは異なる他方向に捲回されて第1構成外層37の基端側部分から突出した少なくとも1本の金属線36aとに、例えば環状(Oリング状)に形成された造影マーカ40が溶接される。造影マーカ40は、その軸線方向がディスタルシャフト33およびプロキシマルシャフト34の軸線方向と平行となるように内層35の基端側端部に配置されている。一方向に捲回された金属線36aと造影マーカ40(造影マーカ40の一端面)との溶接部分をw1とし、他方向に捲回された金属線36aと造影マーカ40(造影マーカ40の一端面)との溶接部分をw2として図示している。造影マーカ40は例えばステンレス鋼や白金等の金属からなる。
【0059】
本実施形態において、プロキシマルシャフト34の先端部34cは、上述の第1実施形態のプロキシマルシャフト34の先端側部分34aと同じように、幅広状に形成されている。このようなプロキシマルシャフト34の先端部34cと造影マーカ40とを合わせたものが、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bになる。
【0060】
次に、プロキシマルシャフト34の先端部34cが、複数の金属線36aに溶接された造影マーカ40の他端面側から当該造影マーカ40の内部に挿通された状態で造影マーカ40に溶接される。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bが形成される。造影マーカ40とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接部分をw3として図示している。なお、図面の簡略化のため、造影マーカ40とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接部分w3を1箇所のみ図示しているが、本実施形態では造影マーカ40と先端部34cとの溶接部分は複数箇所存在する。また、プロキシマルシャフト34の先端部34cが造影マーカ40に溶接されることで、プロキシマルシャフト34の幅広状の先端側部分34bが形成されるため、第2実施形態において上記の先端部34cは必ずしも平板状である必要はない。さらに、プロキシマルシャフト34の先端部34cを金属線36aに溶接された造影マーカ40の内部に挿通して溶接したが、これに限定されるものではなく、例えば先端部34cを造影マーカ40の外周面に配置して溶接したり、造影マーカ40の環状部に軸線方向に貫通する孔部を設けて、当該孔部にプロキシマルシャフト34の先端部34cを挿通して溶接したりしてもよく、プロキシマルシャフト34の先端部34cと造影マーカ40とを溶接してプロキシマルシャフト34の先端側部分34bを形成した後に、当該先端側部分34bと金属線36aとを溶接することも可能である。
【0061】
続いて、
図5(b)に示すように、金属線36aと造影マーカ40との溶接部分w1,w2、および造影マーカ40とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接部分w3、先端部34cを覆うように第2構成外層38が設けられる。詳細には、プロキシマルシャフト34における溶接部分w3を含む先端側部分34bが第2構成外層38の内腔に配置された状態(溶接部分w1,w2が共に第2構成外層38の内腔に配置された状態)で、第2構成外層38の内周面と内層35の外周面とが溶着されると共に第1構成外層37の端面と第2構成外層38の端面とが溶着される。このような方法によって、サポートカテーテル1Aが完成される。なお、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bの、ディスタルシャフト33に対するオーバーラップ距離およびその効果については、上述の第1実施形態と同様である。
【0062】
以上のように、第2実施形態のサポートカテーテル1Aによれば、第1実施形態と同様に、ディスタルシャフト33の内径を小さくすることなくサポートカテーテル1Aの最外径を従来よりも小さくすることが可能となる。また、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bの溶接部分が第1実施形態よりも増加するため、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bの接続強度を向上させることができる。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bがディスタルシャフト33からより外れ難くなる。
【0063】
また、本実施形態では、溶接可能な面積が大きい環状の造影マーカ41に複数の(多くの)金属線36aを溶接することができるため、ディスタルシャフト33と造影マーカ40との接続強度を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、造影マーカ40を設けることで、放射線透視下においてプロキシマルシャフト34の先端側部分34bの陰影を現すことができる。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bのガイディングカテーテル4内における通過具合を容易に認識することができたり、治療用カテーテルをディスタルシャフト33内へ挿入する際にディスタルシャフト33の基端側開口部の目印となる。
【0065】
また、本実施形態において、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bがディスタルシャフト33から露出しないことによる効果は第1実施形態と同様である。
【0066】
(第3実施形態)
次いで、プロキシマルシャフト34のディスタルシャフト33に対する固定方法についての第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態においては、上述の第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0067】
図6(a)に示すように、第3実施形態のディスタルシャフト33においては、第1構成外層37の基端側部分から突出した少なくとも1本の金属線36aと、当該金属線36aの捲回方向とは異なる他方向に捲回されて第1構成外層37の基端側部分から突出した少なくとも1本の金属線36aとに、例えば環部の一部を切り欠いたCリング状に形成された造影マーカ41が溶接される。造影マーカ41は、その軸線方向がディスタルシャフト33およびプロキシマルシャフト34の軸線方向と平行となるように内層35の基端側端面に配置されている。一方向に捲回された金属線36aと造影マーカ41(造影マーカ41の一端面)との溶接部分をw1とし、他方向に捲回された金属線36aと造影マーカ41(造影マーカ41の一端面)との溶接部分をw2として図示している。造影マーカ41は、造影マーカ40と同様に例えばステンレス鋼や白金等の金属からなる。
【0068】
本実施形態において、プロキシマルシャフト34の先端部34cは、上述の第1実施形態のプロキシマルシャフト34の先端側部分34aと同じように、幅広状に形成されている。このようなプロキシマルシャフト34の先端部34cと造影マーカ41とを合わせたものが、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bになる。
【0069】
次に、プロキシマルシャフト34の先端部34cが、金属線36aに溶接された造影マーカ41の他端面側から当該造影マーカ41の切り欠き部分に挿通(或いは嵌合)された状態で造影マーカ41に溶接される。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bが形成される。造影マーカ41とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接部分をw4として図示している。なお、図面の簡略化のため、造影マーカ41とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接部分w4を2箇所のみ図示しているが、本実施形態では造影マーカ41と先端部34cとの溶接部分は2箇所以上存在する。なお、プロキシマルシャフト34の先端部34cが造影マーカ41に溶接されることで、プロキシマルシャフト34の幅広状の先端側部分34bが形成されるため、第3実施形態において上記の先端部34cは必ずしも平板状である必要はない。また、プロキシマルシャフト34の先端部34cを金属線36aに溶接された造影マーカ41の切り欠き部分に挿通(或いは嵌合)して溶接したが、これに限定されるものではなく、プロキシマルシャフト34の先端部34cと造影マーカ41とを溶接してプロキシマルシャフト34の先端側部分34bを形成した後に、当該先端側部分34bと金属線36aとを溶接することも可能である。
【0070】
続いて、
図6(b)に示すように、金属線36aと造影マーカ41との溶接部分w1,w2、および造影マーカ41とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接部分w4、先端部34cを覆うように第2構成外層38が設けられる。詳細には、プロキシマルシャフト34における溶接部分w4を含む先端側部分34bが第2構成外層38の内腔に配置された状態(溶接部分w1,w2が共に第2構成外層38の内腔に配置された状態)で、第2構成外層38の内周面と内層35の外周面とが溶着されると共に第1構成外層37の端面と第2構成外層38の端面とが溶着される。このような方法によって、サポートカテーテル1Bが完成される。なお、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bの、ディスタルシャフト33に対するオーバーラップ距離およびその効果については、上述の第1実施形態と同様である。
【0071】
以上のように、第3実施形態のサポートカテーテル1Bによれば、第1実施形態と同様に、ディスタルシャフト33の内径を小さくすることなくサポートカテーテル1Bの最外径を従来よりも小さくすることが可能となる。また、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bの溶接部分が第1実施形態よりも増加するため、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bの接続強度を向上させることができる。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bがディスタルシャフト33からより外れ難くなる。
【0072】
特に、プロキシマルシャフト34の先端部34cが造影マーカ41の切り欠き部分に挿通(或いは嵌合)された状態で溶接されるので、造影マーカ41とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの溶接長を長くし、造影マーカ41の切り欠き部分における対向する2つの面を介して溶接することが可能となり、造影マーカ41とプロキシマルシャフト34の先端部34cとの接続強度が向上する。また、造影マーカ41の切り欠き部分に合わせてプロキシマルシャフト34の先端部34cを配置して溶接すれば良いため、プロキシマルシャフト34の位置決めが容易になる。
【0073】
また、本実施形態では、造影マーカ41を設けることで、放射線透視下においてプロキシマルシャフト34の先端側部分34bの陰影を現すことができる。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bのガイディングカテーテル4内における通過具合を容易に認識することができたり、治療用カテーテルをディスタルシャフト33内へ挿入する際にディスタルシャフト33の基端側開口部の目印となる。
【0074】
また、本実施形態において、プロキシマルシャフト34の先端側部分34bがディスタルシャフト33から露出しないことによる効果は第1実施形態と同様である。
【0075】
(第4実施形態)
次いで、プロキシマルシャフト34のディスタルシャフト33に対する固定方法についての第4実施形態を説明する。なお、第4実施形態においては、上述の第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0076】
図7(a)に示すように、第4実施形態のディスタルシャフト33において、内層35は、例えば銀メッキした銅線50の外表面に例えばPTFEを塗布して形成される。この場合、内層35の基端側部分および先端側部分が補強層36の基端側部分および先端側部分からそれぞれ突出(露出)するように当該内層35が形成される。そして、内層36の軸線方向の所定領域に上述の第1実施形態と同様の方法で補強層36が設けられる。
【0077】
続いて、
図7(b)に示すように、内層35の先端側部分に円筒状の先端チップ39が被せられて且つ補強層36が設けられた領域が第1構成外層37で被覆されると共に、第2構成外層38の内周面と内層35の外周面とにプロキシマルシャフト34の先端側部分34aが挟持された状態で、第2構成外層38の先端側部分と第1構成外層37の基端側部分との溶着(端面合わせの溶着)および当該第2構成外層38の内周面と内層35の外周面との溶着が行われる。このことによって、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33の内層35と第2構成外層38との間に固定される。つまり、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33の第2構成外層38よりも内側の部分に固定されることとなる。なお、
図7(b)ではプロキシマルシャフト34の先端側部分34aを第2構成外層38内に留めているが、これに限定されるものではなく、当該先端側部分34aを第1構成外層37内にまで延在させてもよいし、或いは、このように延在させた先端側部分34aを補強層36に折り込ませてもよい。この場合、第2構成外層38内で当該第2構成外層38の軸線方向の全部の領域に先端側部分34aを存在させることができるため、第2構成外層38の軸線方向の全部の領域において強度を向上することが可能となる。また、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aに接着剤を付けてから当該先端側部分34aを第2構成外層38の内周面と内層35の外周面とに挟持させてもよい。
【0078】
次いで、
図7(c)に示すように、銅線50を延伸し引き抜く。このような方法により、サポートカテーテル1Cが完成される。なお、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aの、ディスタルシャフト33に対するオーバーラップ距離およびその効果については、上述の第1実施形態と同様である。
【0079】
以上のように、第4実施形態のサポートカテーテル1Cによれば、第1実施形態と同様に、ディスタルシャフト33の内径を小さくすることなくサポートカテーテル1Cの最外径を従来よりも小さくすることが可能となる。しかも、第2構成外層38の先端側部分の端面と第1構成外層37の基端側部分の端面とか合わされて溶着されるので、溶着時の外径増大が起きない。
【0080】
また、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aが幅広状に形成されていることで、当該先端側部分34aを広い面積で内層35および第2構成外層38に接触させた状態で溶着を行うことができる。これにより、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33から外れ難くなる。
【0081】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33の内層35と第2構成外層38との間に挟持されるので、ディスタルシャフト33に対するプロキシマルシャフト34の先端側部分34aの接続強度が向上する。
【0082】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33から露出しないので、従来からあるようなディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとの接続部分が被覆されずに露出しているような態様と比べて、接液部材(接液部位)を少なくすることができる。これによって、プロキシマルシャフト34(先端側部分34a)の使用材料の幅が広がり、また先端側部分34aの接続方法の幅が広がる。例えば先端側部分34aを接着剤により接続することが可能となり、また溶着により接続した場合でその溶着により材料が仮に変性した場合であっても、安全性の低下を抑制することができる。さらに、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aがディスタルシャフト33から露出しないことの更なる効果として、先端側部分34a周辺の第2構成外層38の凹凸を抑制して滑らかな表面にすることができる。これにより、バリなどを防止または抑制でき、それ故人体への影響を減らすことができると共に、治療用カテーテルであるバルーンカテーテル5のディスタルシャフト33内への挿通も円滑に行うことができる。
【0083】
さらに、本実施形態では、後述の
図8の態様と異なり、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aと補強層36とが径方向でオーバーラップしない状態で第2構成外層38の内周面と内層35の外周面との溶着が行われる。この場合、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aと補強層36とを径方向でオーバーラップさせた態様と比較して、ディスタルシャフト33の径断面外形が楕円状でなく真円に近い形状となるので、2本のガイドワイヤを用いる手技を行う場合に2本目のガイドワイヤを通し易くなる。また、先端側部分34aと補強層36とが径方向でオーバーラップしていないため、軸線方向に亘ってディスタルシャフトの肉厚を一定にすることが可能になり、一定外径に対して最大内径を確保することができる。さらに、ディスタルシャフト33の第1構成外層37および第2構成外層38からのプロキシマルシャフト34の先端側部分34aの飛び出しを抑制することができる。
【0084】
(第5実施形態)
プロキシマルシャフト34の先端側部分を以下のように形成してもよい。
図9(a)に示すように、上下方向に往復動可能に構成された上金型110および下金型112を用意する。上金型110の内側面の一方側(同図左側)には傾斜部111が固定されており、下金型112の内側面の一方側(同図左側)には傾斜部113が固定されている。同図において、傾斜部111は右肩上がりに傾斜しており、傾斜部113は右肩下がりに傾斜している。このような上金型110と下金型112との間に、平ワイヤであるプロキシマルシャフト34の一端部を配置し、上金型110および下金型112をそれぞれ互いに近付く方向に移動させてプロキシマルシャフト34をプレスする。これにより、
図9(b)に示すように、側面視で三角形状(テーパ状)の先端部分34A1を有する先端側部分34A2を備えるプロキシマルシャフト34Aを得ることができる。このようなプロキシマルシャフト34Aの先端部分34A1を金属線36aに溶接により固定することによって、先端部分34A1における外形の角をなくすことができる。これにより、先端部分34A1を外層で覆った際に当該外層に対する先端部分34A1の引っ掛かりを抑制又は防止することができる。なお、
図9(b)に示した先端部分34A1の上側の傾斜部分をなくして水平に形成してもよい。この場合、
図9(a)において上金型110の傾斜部111を取り除き、当該上金型110を固定型にする。
【0085】
(第6実施形態)
プロキシマルシャフトの先端部分の外形の角をなくす方法の他の例として以下のものが挙げられる。
図10に示すように、平ワイヤであるプロキシマルシャフト34の先端側部分34aにおける先端部分34a1に対してレーザを照射(レーザ照射点w10は例えば3点)することにより先端部分34a1の角をなくすことができる。これにより、先端部分34a1を外層で覆った際に当該外層に対する先端部分34A1の引っ掛かりを抑制又は防止することができる。なお、レーザ照射点w10は3点に限られるものではなく、3点未満又は4点以上としてもよい。
【0086】
(第7実施形態)
プロキシマルシャフトの先端側部分を以下のように形成してもよい。
図11に示すように、プロキシマルシャフト34Bの先端側部分34B1を、軸方向から見た場合に円弧状となる円弧片とすることができる。これにより、ディスタルシャフト33の内層35の曲面に沿わせて先端側部分34B1を接触させ易くなるので、先端側部分34B1の溶接を行い易くなると共にプロキシマルシャフト34とディスタルシャフト33との固定が強固になる。
【0087】
(他の実施形態)
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0088】
上記各実施形態では、プロキシマルシャフト34の先端側部分34a,34bは、平板状やOリング状、Cリング状に形成されているがこれに限定されるものではなく、プロキシマルシャフト34の先端側部分34a,34bは残余部分よりも幅広状に形成され、内層35と外層との間に配置できる形状であればよい。
【0089】
また、上記各実施形態では、金属線36aに対してプロキシマルシャフト34の先端側部分34aや造影マーカ40,41を溶接により固定したり、造影マーカ40,41に対してプロキシマルシャフト34の先端部34cを溶接により固定することとしたが、これに限らず、例えば接着剤等により固定してもよい。
【0090】
また、上記各実施形態では、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aをディスタルシャフト33の内層35と第1構成外層37との間に固定するように構成したが、これに限定されるものではなく、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aの固定箇所はディスタルシャフト33の第1構成外層37よりも内側の部分であればよい。
【0091】
また、上記各実施形態では、第2構成外層38と第1構成外層37とを同一の組成からなる材料で形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、第2構成外層38と第1構成外層37とを異なる組成からなる材料で形成してもよい。これにより、ディスタルシャフト33の柔軟性等の物理的性質を軸線方向へ段階的に変化させることが可能となる。
【0092】
また、上記第4実施形態では、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aを第2構成外層38の内周面の領域に留めて配置するように構成したが、これに限定されるものではなく、
図8に示すように、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aを第1構成外層37の内周面の領域にまで延在させてもよい。この場合、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aは、第2構成外層38の内周面と内層35の外周面とに挟持されるだけでなく、第1構成外層37の内周面と内層35の外周面とにも挟持されるので、プロキシマルシャフト34の先端側部分34aの接続強度がより向上する。さらに、上記構成によれば、内層35と外層のみで構成される柔軟な部分を無くすことができるため、当該部分でのキンクを防止することができる。なお、補強層36をディスタルシャフト33の基端側部分まで延在させて、補強層36の基端側部分とプロキシマルシャフト34の先端側部分34aとを第2構成外層38で覆う構成としてもよい。この場合でも、急激な硬度変化によるキンクを回避することができると共に、延在させる補強層36の長さによって、ディスタルシャフト33の硬度を調整することができる。
【0093】
さらに、上記各実施形態において、第1構成外層37は第2構成外層38の溶着よりも前に溶着しておいてもよいが、第1構成外層37のうち基端側部分を除く部分を先に溶着した後に、当該基端側部分を第2構成外層38と共に溶着することも可能である。第1構成外層37と第2構成外層38との接続箇所が重複して肉厚になったり、これらの両者が離間して隙間が生じたりするのを防止するためである。
【符号の説明】
【0094】
1,1A,1B,1C サポートカテーテル
4 ガイディングカテーテル
4a ガイディングカテーテルの先端側開口部
4b ガイディングカテーテルの基端側開口部
5 バルーンカテーテル
33 ディスタルシャフト
34,34A,34B プロキシマルシャフト
34a,34b,34A2,34B1 プロキシマルシャフトの先端側部分
35 内層
36 補強層
36a 金属線
37 第1構成外層(外層)
38 第2構成外層(外層)
40,41 造影マーカ