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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 607
B41J2/14 305
B41J2/14 611
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021001309
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106380
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 本規
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-192686(JP,A)
【文献】特開2014-188782(JP,A)
【文献】特開2014-162085(JP,A)
【文献】特開2010-208345(JP,A)
【文献】特開2014-188717(JP,A)
【文献】特開2007-062036(JP,A)
【文献】特開2009-269315(JP,A)
【文献】特開2018-051903(JP,A)
【文献】特開2016-175274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室が形成された圧力室形成基板と、
前記圧力室上に配置された圧電アクチュエーターと、
前記圧力室から遠い方の第1面から前記圧力室に近い方の第2面に向かって開口された
開口部を有し、前記開口部の第1方向に位置する前記圧電アクチュエーターを覆う封止板
と、
前記開口部に挿入され、前記圧電アクチュエーターと電気的に接続されるフレキシブル
配線基板と、を備え、
前記第1面における前記開口部の前記第1方向に沿う第1開口幅は、前記第2面におけ
る前記開口部の前記第1方向に沿う第2開口幅より大き
前記封止板は、前記第2面において前記圧電アクチュエーターを収容する凹部を形成し

前記第1面における前記開口部は、前記封止板の板厚方向に見て前記凹部に重なる、
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記封止板の板厚方向に関して前記圧力室形成基板と前記圧電アクチュエーターとの間
に配置された振動板を更に備え、
前記フレキシブル配線基板は、前記開口部に配置された第1接着剤によって前記振動板
に接合されている、
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第1接着剤は、前記開口部に配置された第2接着剤によって封止されている、請求
項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1接着剤は、非導電性接着剤である、請求項2または3に記載の液体噴射ヘッド
【請求項5】
前記封止板の板厚方向に沿う断面において、前記封止板の板厚方向および前記第1方向
に直交する第2方向に見て、前記開口部を形成する前記封止板の壁面は、前記第1方向に
対して、鋭角の角度で傾斜する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記鋭角の角度は、54.7°である、請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記フレキシブル配線基板は、前記開口部の内部に配置され、前記圧電アクチュエータ
ーと電気的に接続される接続部を有し、
前記接続部下には、前記接続部に向かって突出する凸部が形成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記フレキシブル配線基板は、前記開口部の内部に配置され、前記圧電アクチュエータ
ーと電気的に接続される接続部を有し、
前記接続部は、前記フレキシブル配線基板上に配置された第2接着剤によって封止され
ている、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
圧力室が形成された圧力室形成基板と、
前記圧力室上に配置された圧電アクチュエーターと、
前記圧力室から遠い方の第1面から前記圧力室に近い方の第2面に向かって開口された
開口部を有し、前記開口部の第1方向に位置する前記圧電アクチュエーターを覆う封止板
と、
前記開口部に挿入され、前記圧電アクチュエーターと電気的に接続されるフレキシブル
配線基板と、を備え、
前記第1面における前記開口部の前記第1方向に沿う第1開口幅は、前記第2面におけ
る前記開口部の前記第1方向に沿う第2開口幅より大きく、
前記フレキシブル配線基板は、
前記開口部の内部に配置され、前記圧電アクチュエーターと電気的に接続される接続部
と、
前記第1方向において、前記接続部から一方に延びる第1部分と、
前記第1方向において、前記接続部から前記第1部分とは反対側に延びる第2部分と、
を含む
体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記第1部分に搭載された第1集積回路と、
前記第2部分に搭載された第2集積回路と、を備え、
前記第1部分および前記第2部分は、前記開口部に配置された第1接着剤によって、前
記封止板に接合され、
前記第1集積回路、前記第2集積回路、および前記第1接着剤は、前記開口部に配置さ
れた第2接着剤によって封止されている、請求項9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記封止板は、単結晶シリコン基板から形成されている、請求項1~10のいずれか一
項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記単結晶シリコン基板は、前記単結晶シリコン基板の板厚方向に対向する第1面およ
び第2面を含み、全ての結晶のうち50%以上の結晶が前記第1面に配向する優先配向基
板である、請求項11に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
前記フレキシブル配線基板は、
前記開口部の内部に配置され、前記圧電アクチュエーターと電気的に接続される接続部
と、
前記第1方向において、前記接続部から外側に延びる第1部分と、を含み、
前記封止板の板厚方向および前記第1方向に交差する第2方向に見て、前記接続部は、
前記第1方向に延び、前記第1部分は、前記接続部に対して、鈍角で傾斜する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記フレキシブル配線基板は、前記圧電アクチュエーターと電気的に接続される接続部
を含み、
前記封止板の板厚方向および前記第1方向に直交する第2方向に見て、前記接続部の全
体は、前記封止板の板厚方向に直交する前記第1方向に延在し、且つ、前記第2面におけ
る前記開口部の内部に配置される、
請求項1または9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
前記圧電アクチュエーター及び前記接続部に電気的に接続されたリード電極を更に備え
る、
請求項14に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項16】
前記封止板の板厚方向に関して前記圧力室形成基板と前記圧電アクチュエーターとの間
に配置された振動板を更に備え
前記接続部は、前記振動板上に配置される、
請求項14又は15に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項17】
前記接続部は、前記封止板の板厚方向に関して前記第1面と前記圧力室形成基板との間
に配置されている、
請求項14~16のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備える、
記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力室上に配置された振動板を圧電素子によって振動させることで、当該圧力室内の液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドがある。(例えば特許文献1~3参照)。液体噴射ヘッドは、圧電素子を封止する封止板を備える。封止板には、開口部が形成されている。圧電素子から引き出されたリード電極は、一方向に延在し、開口部内でフレキシブル基板に電気的に接続される。圧電素子を駆動するための駆動信号は、フレキシブル基板及びリード電極を介して、圧電素子に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188717号公報
【文献】特開2007-62036号公報
【文献】特開2009-269315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブル基板とリード電極とを接続する際に、封止板の開口部内に実装用のツールが挿入される。このツールは、開口部内の接着剤を加熱して硬化させる。これにより、フレキブル基板がリード電極に対して実装される。開口部内にツールを挿入する際に、ツールが開口部の壁面に当たると、フレキシブル基板を、リード電極に精度よく実装できないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る液体噴射ヘッドは、圧力室が形成された圧力室形成基板と、圧力室上に配置された圧電アクチュエーターと、圧力室から遠い方の第1面から圧力室に近い方の第2面に向かって開口された開口部を有し、開口部の第1方向に位置する圧電アクチュエーターを覆う封止板と、開口部に挿入され、圧電アクチュエーターと電気的に接続されるフレキシブル配線基板と、を備える。第1面における開口部の第1方向に沿う第1開口幅は、第2面における開口部の前記第1方向に沿う第2開口幅より大きい。
【0006】
本発明の一態様に係る記録装置は、上記の液体噴射ヘッドを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の構成を例示するブロック図である。
図2】液体噴射ヘッドのX-Z面に沿う断面図である。
図3】液体噴射ヘッドの封止板、圧電アクチュエーター、及び圧力室形成板を示す断面図である。
図4】液体噴射ヘッドの封止板を示す斜視図である。
図5】液体噴射ヘッドの要部を拡大して示す断面図である。
図6】封止板の開口部を拡大して示す断面図である。
図7】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの封止板の開口部を拡大して示す断面図である。
図8】第1変形例に係る液体噴射ヘッドの封止板を示す断面図である。
図9】第2変形例に係る液体噴射ヘッドの封止板を示す断面図である。
図10】第3変形例に係る液体噴射ヘッドの封止板を示す断面図である。
図11】第4変形例に係る液体噴射ヘッドの封止板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
以下の説明において、互いに交差する3方向をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。X軸方向は、互いに反対の方向であるX1方向及びX2方向を含む。X軸方向は、第1方向の一例である。Y軸方向は、互いに反対の方向であるY1方向及びY2方向を含む。Y軸方向は、第2方向の一例である。Z軸方向は、互いに反対の方向であるZ1方向及びZ2方向を含む。Z1方向は、下向きの方向であり、Z2方向は、上向きの方向である。また、本明細書において、「上」及び「下」を用いる。「上」及び「下」は、液体噴射装置1のノズルが下である通常の使用状態における「上」及び「下」に対応する。
【0010】
X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、直交する。Z軸方向は、通常上下方向に沿う方向であるが、Z軸方向は、上下方向に沿う方向でなくてもよい。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置1の構成例を示す概略図である。液体噴射装置1は、「液体」の一例であるインクを液滴として媒体Pに噴射するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体噴射装置1は、インクを噴射する複数のノズルが媒体Pの幅方向に往復する、ヘッドスキャン方式別名シリアル方式の印刷装置である。媒体Pは、典型的には普通紙やコート紙、光沢紙などの印刷用紙である。なお、媒体Pは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルム又は布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。液体噴射装置1は記録装置の一例である。
【0012】
図1に示すように、液体噴射装置1は、インクを貯留する液体容器2を備える。液体容器2の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器2に貯留されるインクの種類は任意である。液体容器2は、液体貯留部の一例である。
【0013】
液体容器2は1つでも良いが、図示しないが、通常第1液体容器と第2液体容器とを含む。第1液体容器には、第1インクが貯留される。第2液体容器には、第1インクと異なる種類の第2インクが貯留される。例えば、第1インクおよび第2インクは、互いに異なる色のインクである。なお、第1インクと第2インクとが同じ種類のインクであってもよい。
【0014】
液体噴射装置1は、制御ユニット3、媒体搬送機構4、キャリッジ5、キャリッジ搬送機構6、及び複数の液体噴射ヘッド10を有する。制御ユニット3は、液体噴射装置1の各要素の動作を制御する。制御ユニット3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と、半導体メモリー等の記憶回路とを含む。当該記憶回路には、各種プログラムおよび各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0015】
媒体搬送機構4は、制御ユニット3によって制御され、媒体Pを搬送方向DMに搬送する。搬送方向DMは、例えばY1方向である。搬送方向DMは、Y1方向に限定されず、Y2方向でもよく、その他の方向でもよい。媒体搬送機構4は、X軸方向に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、媒体搬送機構4は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体Pを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラム又は無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0016】
キャリッジ5は、複数の液体噴射ヘッド10を搭載する。キャリッジ搬送機構6は、制御ユニット3によって制御され、キャリッジ5をX軸方向に往復させる。キャリッジ搬送機構6は、例えば、X軸方向に離間する複数のローラーに掛け渡された無端ベルトを含む。
【0017】
インクは、液体容器2からインク流路内を流れて、液体噴射ヘッド10に供給される。液体噴射ヘッド10は、制御ユニット3によって制御され、複数のノズルのそれぞれから媒体Pにインクを噴射する。
【0018】
次に図2を参照して、液体噴射ヘッド10内におけるインクの流路11について説明する。図2は、液体噴射ヘッド10のX-Z面に沿う断面図である。X-Z面は、X軸方向及びZ軸方向に沿う面である。図2において、液体噴射ヘッド10内のインクの流れ方向が矢印で図示されている。液体噴射ヘッド10の内部には、インクが流れる流路11が形成されている。流路11は、供給口12からノズルNまで連通する。複数の流路11は、Z軸方向に延在する中心線Oを基準として線対称になっている。
【0019】
流路11は、供給口12、共通液室13,14、中継流路15,16、圧力室17、連通流路18、及びノズルNを含む。供給口12は、液体噴射ヘッド10において、X軸方向の両側に設けられる。供給口12、共通液室13,14は、Z軸方向に連通する。共通液室13,14は、それぞれ異なる部品に形成されている。共通液室13,14は、Y軸方向に延びている。共通液室13,14は、複数の圧力室17に連通する共通の空間である。圧力室17は、Y軸方向に複数並んでいる。
【0020】
共通液室14に対して、複数の中継流路15,16が接続されている。複数の中継流路15,16は、複数の圧力室17に対応してそれぞれ設けられている。複数の中継流路15は、Y軸方向に並んでいる。中継流路15は、X軸方向の外側から内側に向かって延びている。中継流路16は、中継流路15の下流に接続されている。中継流路16は、中継流路15からZ1方向に延び、圧力室17に連通する。
【0021】
複数の圧力室17は、X軸方向に沿って、内側に向かって延びている。連通流路18は、圧力室17の下流に接続され、Z2方向に延びている。複数の連通流路18は、複数の圧力室17に対してそれぞれ接続されている。複数の連通流路18は、複数のノズルNに対してそれぞれ接続されている。
【0022】
連通流路18は、圧力室17の下流に配置される。連通流路18は、X軸方向において、中継流路16よりも内側に配置される。連通流路18は、圧力室17及びノズルNを連通する。連通流路18は、Z軸方向に延びる。
【0023】
次に、液体噴射ヘッド10内のインクの流れについて説明する。インクは、供給口12を通じて、液体噴射ヘッド10の内部に流入する。供給口12を通過したインクは、共通液室13,14に流入する。共通液室14内のインクは、複数の中継流路15に分流される。中継流路15内のインクは、中継流路16を通り、圧力室17に流入する。圧力室17内のインクは、後述する圧電アクチュエーター31によって、昇圧される。これにより、圧力室17内のインクは、連通流路18を通り、ノズルNから噴射される。
【0024】
次に、液体噴射ヘッド10の構成について説明する。液体噴射ヘッド10は、ノズルプレート21、底板22、流路形成基板23、圧力室形成基板24、振動板25、及び圧電アクチュエーター31を備える。さらに、液体噴射ヘッド10は、圧電アクチュエーター31を封止する封止板40、圧電アクチュエーター31と電気的に接続されるCOF60、及び封止板40を覆うカバー70を備える。COFとは、Chip on Filmの略称である。
【0025】
カバー70には、供給口12及び共通液室13が形成されている。カバー70には、圧力室形成基板24、振動板25、圧電アクチュエーター31、及び封止板40を収容する凹部が形成されている。カバー70は、Z1方向から封止板40を覆う。X軸方向において、封止板40の両側に、共通液室13が配置されている。また、カバー70には、封止板40の開口部50に対応する位置に、開口部75が設けられている。
【0026】
ノズルプレート21には、複数のノズルNが開口されている。ノズルNは、板厚方向に貫通する孔である。ノズルプレート21の板厚方向は、Z軸方向に沿う。ノズルNは、Y軸方向に並ぶノズル列を構成する。ノズルプレート21には、X軸方向に離間する複数のノズル列が形成される。ノズルプレート21は、流路形成基板23の底面に接着され、連通流路18を下方から覆う。ノズルNは、連通流路18に対応する位置に配置される。
【0027】
底板22は、X軸方向において、ノズルプレート21の外側に配置される。底板22は、流路形成基板23の底面に接着され、共通液室14、中継流路15,16を下方から覆う。
【0028】
流路形成基板23には、共通液室14、中継流路15,16,及び連通流路18が形成されている。共通液室14、中継流路16、及び連通流路18は、流路形成基板23において板厚方向に貫通する開口である。流路形成基板23の板厚方向は、Z軸方向に沿う。中継流路15は、流路形成基板23の底面に形成された溝である。
【0029】
圧力室形成基板24には、圧力室17が形成されている。圧力室17は、圧力室形成基板24において、板厚方向に貫通する開口である。圧力室形成基板24のX軸方向における長さは、流路形成基板23のX軸方向における長さより短い。圧力室形成基板24は、流路形成基板23の上面に接着される。
【0030】
図3は、液体噴射ヘッド10の封止板40、圧電アクチュエーター31、及び圧力室形成基板24を示す断面図である。図3に示されるように、振動板25は、圧力室形成基板24の上面に配置される。振動板25の板厚方向は、Z軸方向に沿う。振動板25は、圧力室形成基板24の開口を覆う。振動板25のうち、圧力室形成基板24の開口を覆う部分は、圧力室17の上側の壁面を構成する。振動板25は、複数の絶縁層から形成される。振動板25は、二酸化シリコン(SiO)からなる第1絶縁層と、二酸化ジルコニウム(ZrO)からなる第2絶縁層と、を含む。第1絶縁層は、圧力室形成基板24上に成膜され、第2絶縁層は、第1絶縁層上に成膜される。振動板25は、圧電アクチュエーター31によって駆動され、Z軸方向に振動する。
【0031】
複数の圧電アクチュエーター31は、振動板25上に配置される。複数の圧電アクチュエーター31は、複数の圧力室17に対応してそれぞれ設けられている。圧電アクチュエーター31は、下部電極32、圧電体層33、及び上部電極34を含む。これらの下部電極32、圧電体層33、及び上部電極34は、振動板25上でこの順で積層されている。下部電極32は、個別電極であり、上部電極34は、共通電極である。なお、上部電極が共通電極として構成され、下部電極が個別電極として構成されてもよい。
【0032】
複数の下部電極32は、Y軸方向において、所定の間隔で配置される。複数の下部電極32は、Z軸方向に見て、複数の圧力室17に重なる位置にそれぞれ配置される。下部電極32は、X軸方向において、所定の長さを有し、圧力室17上の位置から、中心線Oに向かって、内側に引き出されている。
【0033】
下部電極32は、例えば、白金(Pt)又はイリジウム(Ir)等の低抵抗な導電材料を含む電極層と、チタン(Ti)を含む下地層とで形成される。当該電極層は、例えばルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、及びニッケル酸ランタン(LaNiO)等の酸化物で形成されてもよい。
【0034】
圧電体層33は、下部電極32上に積層されている。圧電体層33は、複数の下部電極32を覆うように配置されている。圧電体層33は、Y軸方向に延びる帯状の誘電膜である。圧電体層33は、複数の下部電極32を覆うように形成されている。
【0035】
上部電極34は、圧電体層33上に積層されている。上部電極34は、圧電体層33を挟んで、複数の下部電極32を覆うように、Y軸方向に延びている。上部電極34は、例えば、PtまたはIr等の低抵抗な導電材料を含む電極層と、Tiを含む下地層とで形成される。当該電極層は、例えばSrRuO、及びLaNiO等の酸化物で形成されてもよい。
【0036】
圧電体層33のうち、下部電極32と上部電極34とに挟まれた部分が、駆動領域となる。駆動領域は、Z軸方向に見て、圧力室17と重なるように形成されている。Z軸方向に見て、駆動領域の周囲には、非駆動領域が形成されている。非駆動領域では、下部電極32及び上部電極34は、重なるように配置されていない。
【0037】
液体噴射ヘッド10は、複数の下部電極32に電気的に接続された複数のリード電極35を備える。リード電極35は、下部電極32に対してそれぞれ接続されている。リード電極35は、X軸方向に延在し、封止板40の開口部50の内部まで引き出されている。リード電極35は、開口部50の内部でCOF60と電気的に接続されている。
【0038】
リード電極35は、下部電極32よりも低抵抗な導電材料で形成される。例えば、リード電極35は、ニクロム(NiCr)で形成された導電膜の表面に金(Au)の導電膜を積層した構造の導電パターンである。
【0039】
封止板40は、複数の圧電アクチュエーター31をZ1方向から覆うように配置されている。図4は、封止板40を示す斜視図である。図5は、封止板40を示す平面図である。封止板40はZ軸方向に見て矩形状を成している。封止板40は、複数の圧電アクチュエーター31を保護するとともに圧力室形成基板24及び振動板25の機械的な強度を補強する。
【0040】
封止板40は、Z軸方向に離間する第1面41及び第2面42を有する。第1面41は、Z2方向に向く面であり、第2面42は、Z1方向に向く面である。第2面42は、図3に示されるように、振動板25と接するように配置されている。第2面42は、例えば接着剤によって振動板25に対して固定される。
【0041】
封止板40には、圧電アクチュエーター31を収容する凹部43が形成されている。凹部43は、X軸方向において、開口部50の両側に位置する。凹部43は、第2面42側から凹む。凹部43は、Y軸方向に並ぶ複数の圧電アクチュエーター31を収容するように、Y軸方向に延びている。
【0042】
開口部50は、封止板40のZ軸方向に貫通する。開口部50は、第1面41から第2面まで連続する。開口部50は、内壁面51~54によって画定されている。内壁面51,52は、X軸方向に離間する。内壁面53,54は、Y軸方向に離間する。
【0043】
内壁面51,52は、Z軸方向に対して傾斜している。内壁面53,54は、Y軸方向に延びる。第1面41における開口部50の開口幅W1は、第2面42における開口部50の開口幅W2よりも大きい。開口幅W1,W2は、開口部50のX軸方向に沿う長さである。第1面41における開口部の長さLは、第2面42における開口部50の長さLと等しい。第1面41における開口部50の面積S1は、第2面42における面積S2よりも大きい。
【0044】
図6は、封止板40の開口部50を拡大して示す断面図である。図6に示すように、内壁面51のX軸方向に対する傾斜角θ1は、鋭角となっている。内壁面51の傾斜角θ1は例えば54.7°である。同様に、内壁面52のX軸方向に対する傾斜角θ2は、内壁面51のX軸方向に対する傾斜角θ1と同じである。内壁面51,52は、中心線Oを基準として線対称となっている。
【0045】
封止板40は、Z軸方向と垂直な面が100面優先配向の単結晶シリコン基板から形成されている。単結晶シリコン基板は、全ての結晶のうち50%以上の結晶が第1面41に配向する優先配向基板である。単結晶シリコン基板は、全ての結晶のうち80%以上の結晶が第1面41に配向する優先配向基板でもよく、90%以上の結晶が第1面41に配向する優先配向基板でもよい。単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)等の強塩基性水溶液でウエットエッチングすることで、54.7°の内壁面51,52が形成される。また、シリコン基板に対して、SiO膜を形成することにより、強塩基性水溶液によるエッチングを停止させることができる。封止板40が単結晶シリコン基板であると、ウエットエッチングによって傾斜面を容易に形成できる。
【0046】
COF60は、開口部50に挿入され、リード電極35を介して圧電アクチュエーター31と電気的に接続されている。COF60は、フレキシブル配線基板61、及び駆動IC62を備える。フレキシブル配線基板61は、可撓性を有する配線基板である。フレキシブル配線基板61は、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)である。フレキシブル配線基板61は、例えばFFC(Flexible Flat Cable)でもよい。
【0047】
フレキシブル配線基板61は複数の層を有する。フレキシブル配線基板61は、たとえば、ポリイミドによる基材、銅箔、金メッキ層、絶縁層、接着層、又はソルダレジストを含んでもよい。
【0048】
フレキシブル配線基板61は、接続部63、及び部分64,65を含む。接続部63は、開口部50の底部に配置され、リード電極35と電気的に接続される。開口部50の底部は、Z軸方向において、封止板40の第2面42に近い方である。接続部63の板厚方向は、Z軸方向に沿う。接続部63は、X軸方向に沿って所定の幅を有し、Y軸方向に延在する。接続部63は、複数のリード電極35をZ1方向から覆うように配置されている。
【0049】
フレキシブル配線基板61の部分64は、接続部63に対して屈曲され、Y1方向に見て接続部63から斜め上方に張り出す。部分64の接続部63に対する角度θ3は、鈍角である。部分64は、X2方向及びZ1方向に張り出す。部分64と内壁面52との間には所定の隙間が形成されている。部分64は、開口部50内に配置されている。
【0050】
フレキシブル配線基板61の部分65は、接続部63に対して屈曲され、Y1方向に見て接続部63から斜め上方に張り出す。部分65の接続部63に対する角度θ4は、鈍角である。部分65は、X軸方向において、部分64とは反対側に延びている。部分65は、X1方向及びZ1方向に延びている。部分65と内壁面51との間には所定の隙間が形成されている。部分65は、開口部50の外側まで延びている。部分65は、図示しない配線基板に電気的に接続されている。フレキシブル配線基板61は、配線基板、中継基板、及びコネクターと電気的に接続されている。
【0051】
駆動IC62は、フレキシブル配線基板61に対して実装されている。駆動IC62は、フレキシブル配線基板61の部分65の内壁面51側の面に設けられている。駆動IC62と内壁面51との間には所定の隙間が形成されている。
【0052】
駆動IC62は、フレキシブル配線基板61を介して制御ユニット3と電気的に接続されている。駆動IC62は、制御ユニット3から出力された指令信号を受信する。駆動IC62は、指令信号に応じ各圧電アクチュエーター31に対して、駆動電圧を供給し、振動板25を振動させる。
【0053】
COF60は、開口部50の内部に配置された接着剤81によって振動板25に接合されている。接着剤81は、第1接着剤の一例である。部分64は、接着剤81によって、内壁面52に接合されている。部分65及び駆動IC62は、内壁面51に接合されている。接続部63は、接着剤81によって、振動板25に接合されている。Y軸方向において隣接するリード電極35間の振動板25の領域上に接着剤81が配置され、この接着剤81を介して、接続部63は、振動板25に対して接合される。
【0054】
接着剤81は、例えば導電粒子等の導体を含まない非導電性接着剤である。接着剤81は、たとえば非導電性接着ペースト(NCP:Non-Conductive Paste)又は非導電性接着フィルム(NCF:Non-Conductive Film)である。また、接着剤81は、複数の導電粒子が分散された異方性導電接着剤でもよい。異方性導電接着剤は、たとえば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)である。接着剤81が非導電性接着剤であると、ACF又はACPよりも高密度実装が容易となる。
【0055】
接着剤81は、開口部50の内部に配置された接着剤82によって封止されている。接着剤82は、第2接着剤の一例である。Z軸方向において、COF60は、振動板25を介して、圧力室形成基板24に接合されている。接着剤81は、開口部50の内部に配置された接着剤82によって封止されている。開口部50の内部に配置された接続部63は、接着剤82によって封止されている。接着剤82はポッティング剤又は封止剤でもよい。
【0056】
次に、図6を参照して、液体噴射ヘッド10におけるCOF60の実装方法について説明する。COF60を実装する前に、圧力室形成基板24に対して、振動板25、下部電極32、圧電体層33、上部電極34、及びリード電極35が成膜されて、複数の圧電アクチュエーター31が形成されている。そのあとに、複数の圧電アクチュエーター31に対して封止板40が接着される。
【0057】
封止板40には、開口部50が形成されている。複数のリード電極35は、開口部50の内部に露出している。フレキシブル配線基板61の部分64,65は、接続部63に対して鈍角で折り曲げられている。また、COF60を実装する前に、フレキシブル配線基板61の部分65には、駆動IC62が実装されている。
【0058】
接着剤81は、開口部50の内部の振動板25及びリード電極35上に配置される。COF60は、開口部50に対してZ1方向から挿入される。接続部63は、開口部50の底部において、振動板25及びリード電極35上に配置される。
【0059】
接続部63が第2面42側に接近すると、接着剤81と接触し、接着剤81の一部はX軸方向の外側に押し出される。接着剤81の一部は、X2方向に移動し、フレキシブル配線基板61の部分64と内壁面52との間の隙間に移動する。接着剤81の一部は、X1方向に移動し、フレキシブル配線基板61の部分65と内壁面51との間の隙間、及び、駆動IC62と内壁面51との間の隙間に移動する。また、接着剤81の一部は、振動板25上に存在し、接続部63と振動板25との接合に寄与する。
【0060】
ツール91は、開口部50に対してZ1方向から挿入される。図6では、ツール91は、破線で示されている。ツール91は、実装ツールである。ツール91は、接続部63をZ2方向に押し付けると共に、加熱する。これにより、接着剤81が加熱され硬化し、接続部63が振動板25に対して接合され、COF60の配線とリード電極35とが電気的に接続される。
【0061】
次に、ツール91が開口部50から引き出され、接着剤82が開口部50内に充填されて、接続部63及びリード電極35が封止される。このようにして、COF60がリード電極35に対して実装される。
【0062】
このような液体噴射ヘッド10によれば、開口部50の内壁面51,52が傾斜し、第1面41における開口幅W1は、第2面42における開口幅W2よりも大きい。開口部50は、第2面42に近い方よりも第1面41に近い方が広い。そのため、ツール91を開口部50に挿入する際に、ツール91と内壁面51,52とが接触するおそれが低減される。同様に、COF60を開口部50に挿入する際に、フレキシブル配線基板61及び駆動IC62と内壁面51,52とが接触するおそれが低減される。液体噴射ヘッド10によれば、COF60の電気的接続が行いやすくなる。
【0063】
液体噴射ヘッド10によれば、開口部50の開口幅W1が、開口幅W2よりも大きいので、従前のように、接続部63と部分65とが直角となるように曲げる必要がない。COF60では、接続部63と部分65とが鈍角となるように曲げられている。これにより、従前と比較して、緩い角度でフレキシブル配線基板61が曲げられる。その結果、フレキシブル配線基板61の折り曲げ部における配線の断線、及びマイグレーションの発生のおそれが低減される。
【0064】
たとえば、フレキシブル配線基板61における折り曲げ部の角度が直角である場合、折り曲げ部の角度θ3が鈍角である場合と比較して、配線の断線、及びマイグレーションの発生の可能性が高くなる。しかしながら、液体噴射ヘッド10では、折り曲げ部における角度を緩くできるので、配線を被覆するAuメッキの割れを抑制して、配線のCuが露出するおそれが低減される。液体噴射ヘッド10では、フレキシブル配線基板61の折り曲げ部における配線の断線、及びマイグレーションの発生のおそれが低減され、液体噴射ヘッド10の信頼性の向上が図られる。
【0065】
また、液体噴射ヘッド10によれば、開口部50の内壁面51,52が傾斜しているとともに、接続部63の両側に部分64,65が形成されている。これにより、接続部63のZ2方向に配置された接着剤81がX軸方向の両側に移動しても、部分64,65が存在するので、接着剤81が接続部63のZ1方向に侵入することが防止される。液体噴射ヘッド10では、接着剤81の接続部63のZ1方向への這い上がりを抑制できる。そのため、ツール91を用いてCOF60を実装する際に、ツール91への接着剤81の付着が抑制される。
【0066】
また、液体噴射ヘッド10では、フレキシブル配線基板61の折り曲げ部が、接着剤81によって覆われている。接着剤81によって、折り曲げ部を保護できる。たとえば、フレキシブル配線基板61のうち、ソルダレジストによって覆われていない部分を、接着剤81によって、覆ってもよい。このように、開口部50内に存在する接着剤81によって、フレキシブル配線基板61を保護することができるので、液体噴射ヘッド10の電気接続の信頼性の向上を図ることができる。
【0067】
液体噴射ヘッド10では、開口部50の内壁面51,52が傾斜しているので、この内壁面51,52のZ1方向の端部近傍に接着剤81が配置されやすい。たとえば、開口部の内壁面がX軸方向に対して垂直に形成されている場合と比較して、接着剤81が隙間なく配置されやすい。液体噴射ヘッド10では、接着剤81が余分なく適切に配置される。
【0068】
液体噴射ヘッド10では、フレキシブル配線基板61と振動板25とが接着剤81によ
って接合されている。このように、接着剤81を用いて、フレキシブル配線基板61を電
気的に接合することで、電気的接続信頼性が向上される。
【0069】
液体噴射ヘッド10では、開口部50に配置された接着剤82によって、接着剤81、接続部63、及びリード電極35が封止され固定されている。接着剤82によって、接着剤81、接続部63、及びリード電極35を保護することができるので、液体噴射ヘッド10における電気的接続の信頼性の向上を図ることができる。また、接続部63及びリード電極35が、接着剤82によって水分等から保護されるので、これらの接続部63及びリード電極35の寿命が向上される。
【0070】
液体噴射ヘッド10では、接続部63のZ1方向に接着剤81が侵入することが防止できるので、接着剤81を従前と比較して粗く配置しても、信頼性を損なうことなく、COF60をリード電極35に対して実装できる。
【0071】
また、液体噴射ヘッド10では、開口部50の内壁面51,52を傾斜させて、第2面42における開口幅W2を従前と比較して狭くしてもよい。これにより、開口幅W2を狭くしつつ、COF60と内壁面51,52との接触を抑制できる。
【0072】
また、開口幅W2を狭くすることで、X軸方向において、圧力室17同士を接近させることができ、ノズルN同士を接近させてもよい。その結果、液体噴射装置1における高密度印刷が可能となる。
【0073】
次に図7を参照して、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド10Bについて説明する。図7は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド10Bの封止板40の開口部50を拡大して示す断面図である。第2実施形態に係る液体噴射ヘッド10Bが第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10と違う点は、接続部63下に複数の凸部85が形成されている点、及び開口部50内において、接続部63と複数の凸部85との間にリード電極35が形成されている点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0074】
複数の凸部85は、例えば、圧電体層によって形成される。複数の凸部85は、圧電アクチュエーター31の圧電体層33を成膜する際に、同時に成膜される。圧電体層に対してエッチングを行い、圧電体層を部分的に除去することにより複数の凹部が形成される。この凹部間の圧電体層が凸部85である。これらの凸部85及び凹部により、凹凸形状が形成される。リード電極35の一部は、凸部85上に成膜される。リード電極35の一部は、X軸方向において、複数の凸部85間に存在してもよい。
【0075】
凸部85は、下部電極32よりもZ1方向に突出している。複数の凸部85は、Y軸方向に延在している。Z軸方向に見て、複数の凸部85は、開口部50と重なる位置に配置されている。なお、複数の凸部85は、圧力室形成基板24から突出するように形成されていてもよい。圧力室形成基板24の配線下に凹凸形状が設けられていてもよい。
【0076】
複数の凸部85は、封止板40の第2面42よりもZ1方向に突出していてもよい。これにより、接続部63がZ1方向に第2面42からより離れた位置に配置される。そのため、COF60と、内壁面51,52との間隔を調整できる。例えば、COF60と、内壁面51,52との間隔を広くすることができる。
【0077】
このような第2実施形態に係る液体噴射ヘッド10Bにおいても、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10と同様の作用効果を奏する。また、液体噴射ヘッド10Bでは、複数の凸部85が設けられているので、接続部63とリード電極35とを好適に接合できる。凸部85を含む凹凸形状があると、接続部63とリード電極35とを接続する際に、好適に応力が集中するので、電気接続の信頼性が向上される。
【0078】
また、接続部63の配線下に凹部が形成されていると、凹部がない場合と比較して、接着剤81の使用量が増加する。液体噴射ヘッド10Bでは、開口部50の内壁面51,52が傾斜面となっているので、接着剤81の使用量が増加しても接着剤81の這い上がりを防止して、好適に接続部63を電気的に接続できる。接着剤81の使用量を増加させても、実装用のツール91への接着剤81の付着のおそれが低減される。
【0079】
また、液体噴射ヘッド10Bでは、COF60を実装する際に、複数の凸部85を含む凹凸形状によって接着剤81をガイドすることができ、接着剤81が適切に配置されやすくなる。そのため、振動板25に対して、接続部63を確実に接合できる。その結果、液体噴射ヘッド10Bの信頼性の向上を図ることができる。
【0080】
次に、図8を参照して、第1変形例に係る液体噴射ヘッド10Cについて説明する。図8は、第1変形例に係る液体噴射ヘッド10Cの封止板40を示す断面図である。第1変形例に係る液体噴射ヘッド10Cが、第1実施形態の液体噴射ヘッド10と違う点は、部分64に代えて、部分64よりも長い部分64Bを備える点、及び、部分64Bに駆動IC66が実装されている点である。なお、第1変形例の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0081】
液体噴射ヘッド10Bは、COF60Bを備える。COF60Bは、フレキシブル配線基板61B、及び駆動IC62,66を有する。フレキシブル配線基板61Bは、接続部63,及び部分64B,65を含む。液体噴射ヘッド10Bは、部分65に搭載された駆動IC62と、部分64Bに搭載された駆動IC66とを備える。部分65は、第1部分の一例であり、部分64Bは、第2部分の一例である。駆動IC62は、第1集積回路の一例であり、駆動IC66は、第2集積回路の一例である。
【0082】
駆動IC62は、部分64Bの内壁面52に近い方の面に配置されている。このような液体噴射ヘッド10Bにおいても、液体噴射ヘッド10と同様の作用効果を奏する。液体噴射ヘッド10Bでは、部分64Bが開口部50の外側まで延びているので、接着剤81が接続部63のZ1方向に侵入することが防止される。そのため、ツール91を用いてCOF60を実装する際に、ツール91への接着剤81の付着が防止される。
【0083】
次に、図9を参照して、第2変形例に係る液体噴射ヘッド10Dについて説明する。図9は、第2変形例に係る液体噴射ヘッド10Dの封止板40を示す断面図である。第2変形例に係る液体噴射ヘッド10Dが、第1変形例の液体噴射ヘッド10Cと違う点は、部分64B及び駆動IC66が、開口部50のより外側まで配置されている点である。
【0084】
このような第2変形例に係る液体噴射ヘッド10Dにおいても、上記の液体噴射ヘッド10,10Cと同様の作用効果を奏する。また、X軸方向において、接続部63の両側に駆動IC62,66が配置されていると、フレキシブル配線基板61Bを振動板25に対してバランスよく支持できる。
【0085】
次に、図10を参照して、第3変形例に係る液体噴射ヘッド10Eについて説明する。図10は、第3変形例に係る液体噴射ヘッド10Eの封止板40Bを示す断面図である。液体噴射ヘッド10Eが、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10と違う点は、開口部50Bの断面形状が、開口部50と異なる点である。第3変形例の説明において、第1実施形態と同様の説明については省略する。
【0086】
液体噴射ヘッド10Eは、開口部50Bが形成された封止板40Bを備える。開口部50Bでは、X軸方向に離間する内壁面51,55のうち、内壁面51は傾斜面であり、内壁面55はZ軸方向に沿う面である。部分65に近い方の内壁面51が傾斜面であり、部分65よりも短い部分64に近い方の内壁面55は、X軸方向に沿う面である。このような第3変形例に液体噴射ヘッド10Eにおいても、第1実施形態の液体噴射ヘッド10と同様の作用効果を奏する。
【0087】
次に、図11を参照して、第4変形例に係る液体噴射ヘッド10Fについて説明する。図11は、第4変形例に係る液体噴射ヘッド10Fの封止板40Cを示す断面図である。液体噴射ヘッド10Fが、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10と違う点は、開口部50Cの断面形状が、開口部50と異なる点である。
【0088】
液体噴射ヘッド10Fは、開口部50Cが形成された封止板40Cを備える。開口部50Cの内壁面は、X軸方向に対して傾斜する内壁面51B,52Bと、X軸方向に沿う内壁面56,58と、Z軸方向に沿う内壁面57,59と、を含む。内壁面51Bは、第1実施形態の内壁面51と同様に傾斜する。内壁面51Bは、Z軸方向において、封止板40Cの厚みの半分程度の位置まで延びる。内壁面56は、内壁面51BのZ1方向の端部からX1方向に延びる。内壁面57は、内壁面56のX1方向の端部からZ1方向に延びる。
【0089】
内壁面52Bは、第1実施形態の内壁面52と同様に傾斜する。内壁面52Bは、Z軸方向において、封止板40Cの厚みの半分程度の位置まで延びる。内壁面58は、内壁面52BのZ1方向の端部からX2方向に延びる。内壁面59は、内壁面58のX2方向の端部からZ1方向に延びる。
【0090】
開口部50Cを画定する内壁面のうち、内壁面56,58は段差面を成す。このように、封止板40Cに段差面が形成されていてもよい。このような第4変形例に係る液体噴射ヘッド10Fにおいても、第1実施形態の液体噴射ヘッド10と同様の作用効果を奏する。
【0091】
なお、前述した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【0092】
前述の実施形態では、液体噴射ヘッド10を搭載したキャリッジ5を往復させるシリアル方式の液体噴射装置1を例示したが、複数のノズルNが媒体Pの全幅にわたり分布するライン方式の液体噴射装置にも本発明を適用することが可能である。
【0093】
また、前述の実施形態では、カバー70に共通液室13が形成されているが、封止板40に、共通液室13などのインクの流路11の一部が形成されていてもよい。
【0094】
前述の実施形態で例示した液体噴射装置1は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示パネル等の表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、生体に関する有機物の溶液を噴射する液体噴射装置は、例えばバイオチップを製造する製造装置として利用される。
【0095】
各実施形態で例示した圧電アクチュエーター31は、それぞれ、例えば、超音波発信機、超音波モーター、圧電トランス、圧電スピーカー、圧電ポンプ、圧力電気変換器等の機器に採用され得る。
【符号の説明】
【0096】
1…液体噴射装置(記録装置)、10,10B、10C,10D,10E,10F…液体噴射ヘッド、17…圧力室、24…圧力室形成基板、31…圧電アクチュエーター、40,40B,40C…封止板、41…第1面、42…第2面、50,50B,50C…開口部、51,51B,52,52B…内壁面(開口部を形成する封止板の壁面)、60,60B…COF、61,61B…フレキシブル配線基板、63…接続部、65…部分(第1部分)、64B…部分(第2部分)、62…駆動IC(第1集積回路)、66…駆動IC(第2集積回路),81…接着剤(第1接着剤)、82…接着剤(第2接着剤)、85…凸部、W1…開口幅(第1開口幅)、W2…開口幅(第2開口幅)、X…X軸方向(第1方向)、Y…Y軸方向(第2方向)、Z…Z軸方向(板厚方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11