(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電気機器の組み立て方法、電気機器及び組み立て治具
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241029BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2021019634
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】原 正二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆一
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0212122(US,A1)
【文献】特開2019-186264(JP,A)
【文献】特開2019-134649(JP,A)
【文献】特開2020-167877(JP,A)
【文献】特開2016-100097(JP,A)
【文献】特開2003-143868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/14
H01R 12/55
H05K 1/14
H01L 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器のケースに収容される二つの基板に主端子をねじ締結する過程で
、前記二つの基板のうちの一つの
基板とこの一つの基板に固定された台座部との間に組み立て治具を介在させて、前記台座部に立設された前記主端子の端子本体部を
、前記一つの基板に対して直立させる一方で、前記二つの基板のうちの他の基板の挿通孔に前記端子本体部を挿通させること
を特徴とする電気機器の組み立て方法。
【請求項2】
二つの基板と、
この二つの基板が収容されるケースと、
このケース内で前記二つの基板にねじ締結される主端子と、
を有し、
前記主端子は、
前記二つの基板のうちの一つの基板に固定される台座部と、
この台座部に立設される端子本体部と、
を備え、
前記端子本体部は、前記締結の過程で
、前記一つの基板と
この一つの基板に固定された前記台座部との間に
組み立て治具を介在させて、前記一つの基板に対して直立する一方で、前記二つの基板のうちの他の基板の挿通孔に挿通されることを特徴とする電気機器。
【請求項3】
電気機器のケースに収容される二つの基板に主端子をねじ締結する過程で
、前記二つの基板のうちの一つの基板と
この一つの基板に固定された台座部との間に介在
させて、
前記台座部に立設された前記主端子の端子本体部を
、前記一つの基板に対して直立させる一方で、前記二つの基板のうちの他の基板の挿通孔に
前記端子本体部を挿通させることを特徴とする組み立て治具。
【請求項4】
前記過程で前記ケースの外縁部から前記一つの基板の面に張り出されて前記台座部を支持する支持本体部と、
前記ケースの外周部に当接して前記支持本体部を前記面に沿って支持する補助支持部と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の組み立て治具。
【請求項5】
前記補助支持部は、前記過程で操作される摘み部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の組み立て治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の組み立て技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器としては例えば特許文献1の電動車両の制御装置がある。この電気機器の一対の主端子は、電源コントローラの外部のバッテリと接続され、このバッテリから入力電源が電源コントローラの基板に供給する。前記基板は、例えば、駆動基板及び制御基板の二つの基板からなり、制御電源電圧や制御信号を出力する。前記主端子は前記駆動基板及び前記制御基板にねじ締めされる。そして、このねじ締めにより、バッテリから駆動基板、制御基板に対して通電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気機器の主端子は、電気機器のケース内に並行に配置される駆動基板及び制御基板にねじ締めされることで、駆動基板及び制御基板に固定される。ここで、例えば、電気機器の組立過程で制御基板の挿通孔に主端子を貫通させる過程では、ねじ締結されないため、主端子が駆動基板に固定されない。このとき、主端子の脚と重心の位置関係がずれてバランスが悪くなる。例えば、
図4に示したように電気機器1の組み立て過程でケース2内に配置される二つの基板のうち最初に配置される基板3Aにおいて主端子4は、自力で直立できないので、傾くことになる。この主端子4の傾きに因り、ケース2内に基板3Aに並行に配置される
図3の基板3Bの挿通孔302に主端子4を通す作業が困難となる。
【0005】
本発明は、以上の事情を鑑み、電気機器の組み立て過程での電気機器のケース内の基板に対する主端子の傾きを抑制して電気機器の組立性の改善を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、電気機器のケースに収容される二つの基板に主端子をねじ締結する過程で、前記ケースの外縁部にて前記二つの基板のうちの一つの基板と前記主端子の台座部との間に組み立て治具を介在させて前記主端子の端子本体部を直立させる一方で、前記二つの基板のうちの他の基板の挿通孔に前記端子本体部を挿通させる電気機器の組み立て方法である。
【0007】
本発明の一態様は、二つの基板と、この二つの基板が収容されるケースと、このケース内で前記二つの基板にねじ締結される主端子と、を有し、前記主端子は、前記二つの基板のうちの一つの基板に固定される台座部と、この台座部に立設される端子本体部と、を備え、前記端子本体部は、前記締結の過程で、前記ケースの外縁部にて前記一つの基板と前記台座部との間に介在する組み立て治具により直立する一方で、前記二つの基板のうちの他の基板の挿通孔に挿通される電気機器である。
【0008】
本発明の一態様は、電気機器のケースに収容される二つの基板に主端子をねじ締結する過程で、前記ケースの外縁部にて前記二つの基板のうちの一つの基板と前記主端子の台座部との間に介在し、前記二つの基板のうちの他の基板の挿通孔に挿通される前記主端子の端子本体部を直立させる組み立て治具である。
【0009】
本発明の一態様は、前記組み立て治具において、前記過程で前記ケースの外縁部から前記一つの基板の面に張り出されて前記台座部を支持する支持本体部と、前記ケースの外周部に当接して前記支持本体部を前記面に沿って支持する補助支持部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様は、前記組み立て治具において、前記補助支持部は、前記過程で操作される摘み部を備える。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、電気機器の組み立て過程での電気機器のケース内の基板に対する主端子の傾きが抑制されるので、電気機器の組立性の改善が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の実施形態である電気機器の基板が配置されたケースとその組み立て治具の側面図,(b)当該ケース及び当該組み立て治具の平面図。
【
図4】前記電気機器の組み立て過程で組み立て治具を用いないで基板に端子が配置されたケースの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1~3に示された本発明の一実施形態である電気機器1は、例えば
図5に示された特許文献1の同期電動機10の電源コントローラ7の制御部70として適用される。
【0015】
電気機器1は、
図3に示したように、ケース2内に収容される二つの基板である基板3A,3Bと、ケース2内で基板3A,3Bに締結される一対の主端子4と、を有する。
【0016】
基板3Aは、例えば電源コントローラ7の外部のバッテリ71を入力電源として、インバータ回路72のスイッチング素子のオンオフ駆動信号を出力する駆動基板として機能する。一方、基板3Bは、バッテリ71を入力電源として、電流検出器73、位置検出器74等の制御電源電圧を生成して出力する制御基板として機能する。
【0017】
主端子4は、
図1~3に示したように、ケース2内で基板3Bに挿通されると共に基板3Aにおいて一対に立設され、基板3A,3Bと導通する。そして、この一対の主端子4のうち、一つの主端子4はバッテリ71の負極(-)側と導通可能であり、他の主端子4は接点75及びヒューズ76を介してバッテリ71の正極(+)側と導通可能である。
【0018】
主端子4は、導電性の材料からなり、台座部41、端子本体部42及び固定部43を一体的に備える。台座部41は、基板3A,3Bのうちの一つの基板3Aに固定される。端子本体部42は、円筒状を成し、台座部41に立設される。固定部43は、ねじ締めにより基板3Aに締結されて、台座部41を基板3Aに固定する。
【0019】
組み立て治具5は、前記締結の過程で、ケース2の外縁部21にて、基板3Aと主端子4の台座部41との間に介在し、基板3Bの挿通孔302に挿通される主端子4の端子本体部42を直立させる。組み立て治具5は
図1に示したように板状の支持本体部51、補助支持部52及び摘み部53を一体的に備える。支持本体部51は、前記締結の過程で、ケース2の外縁部21からケース2内の基板3Aの面に張り出され、主端子4の台座部41を支持する。補助支持部52は、ケース2の外周部22に当接して支持本体部51を基板3Aの面に沿って支持する。摘み部53は、前記締結の過程で作業者により摘まれて操作される。
【0020】
図1~3を参照して電気機器1の組み立て過程について説明する。
【0021】
先ず、基板3Aがケース2内に配置され、さらにねじ締結される。次いで、前記作業者による組み立て治具5の摘み部53の操作により、組み立て治具5の補助支持部52がケース2の外周部22に当接すると、基板3Aにおける主端子4の固定部位近傍において、組み立て治具5の支持本体部51が基板3Aの面に沿って配置される。
【0022】
次いで、基板3Aの締結孔301と主端子4の締結孔401とが会合するように、主端子4の台座部41が組み立て治具5の支持本体部51に載置される。このとき、
図1に示したように主端子4の端子本体部42は支持本体部51により基板3Aにおいて直立して支持される。
【0023】
次いで、
図2に示したように基板3Bの挿通孔302に端子本体部42が挿通され、さらに、
図1(b)の主端子4の締結孔401と
図2の基板3Bの締結孔303とが会合するように、基板3Bがケース2内に配置される。
【0024】
そして、基板3Bの締結孔303、主端子4の締結孔401及び基板3Aの締結孔301に対して、
図3に示したように、ねじ6が螺着されると、主端子4が基板3A及び基板3Bに締結される。その後、組み立て治具5の摘み部53の操作により基板3Aと基板3Bの間から組み立て治具5の支持本体部51が引き出されると、ケース2内への基板3A、基板3B及び主端子4の備え付けが完了する。
【0025】
以上の電気機器1の組み立て過程によれば、電気機器1のケース2にて主端子4が基板3A,3Bにねじ締結される過程で、主端子4の端子本体部42が基板3Aにおいて組み立て治具5の支持本体部51により直立して支持される。よって、前記組み立て過程で基板3Aにおける主端子4の端子本体部42の傾きが抑制されるので、電気機器1の組み立て性が改善する。
【0026】
特に、組み立て治具5の補助支持部52がケース2の外周部22に当接することで、組み立て治具5の支持本体部51が基板3Aにおける主端子4の固定部位の近傍にて基板3Aの面に沿って配置される。そして、この支持本体部51に主端子4の台座部41が配置されることで、主端子4の端子本体部42が基板3Aに対して直立可能となる。したがって、前記締結の過程で、端子本体部42の傾きが確実に回避され、基板3Aにおいて主端子4がより安定に自立する。
【0027】
また、組み立て治具5の補助支持部52に摘み部53が設けられたことで、ケース2への組み立て治具5の取り付け及び取り外しが容易となり、電気機器1の組み立て性がさらに向上する。
【0028】
尚、本発明は、本実施形態の電源コントローラに限定することなく、主端子と二つの基板を用いる電気機器の装置全般に有効に適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1…電気機器
2…ケース、21…外縁部、22…外周部
3A,3B…基板、301,303…締結孔、302…挿通孔
4…主端子、41…台座部、42…端子本体部、43…固定部、401…締結孔
5…組み立て治具、51…支持本体部、52…補助支持部、53…摘み部
7…電源コントローラ、70…制御部、71…バッテリ、72…インバータ回路、73…電流検出器、74…位置検出器、75…接点、76…ヒューズ
10…同期電動機