(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】バルブユニット、および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241029BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241029BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/175 101
B41J2/175 503
B41J2/01 401
F16K31/126 Z
(21)【出願番号】P 2021023170
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小阿瀬 崇
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/082310(WO,A1)
【文献】特開2009-143066(JP,A)
【文献】特開2020-157758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0257412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/01
F16K 31/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入部と、
前記流体が流出する流出部と、
前記流入部と通じる供給室と、
前記流出部と通じ、可撓性を備える可撓部を有する圧力室と、
前記供給室に設けられ、開閉方向に移動することで前記供給室と前記圧力室とを連通する連通流路を開閉可能なバルブと、
前記バルブを、前記連通流路を閉じる方向に付勢する付勢部材と、
前記圧力室に設けられ、前記可撓部の変位に応じて変位可能な変位体と、を備え、
前記変位体は、前記連通流路に挿入されて前記バルブを開閉する軸部と、前記軸部と異なる位置に設けられる係合部と、を有し、
前記圧力室は、前記連通流路と異なる位置に設けられる被係合部を有し、
前記係合部が
前記被係合部と係合することにより、前記開閉方向と交差する方向への前記変位体の移動が規制されることを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記変位体は、前記可撓部の変位を受ける円形の受圧部を有し、
前記係合部は、前記受圧部の中心に設けられることを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記供給室は、前記バルブの外周に接触することで前記開閉方向と交差する方向への前記バルブの移動を規制する外周規制部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記バルブは、複数の切欠き部を有することを特徴とする請求項3に記載のバルブユニット。
【請求項5】
前記変位体は前記圧力室を構成する基体に支持される回動軸を有し、前記回動軸を中心に回動可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載のバルブユニット。
【請求項6】
前記係合部は、前記軸部と前記回動軸との間に設けられることを特徴とする請求項5に記載のバルブユニット。
【請求項7】
前記被係合部は棒状に構成され、
前記係合部は、前記被係合部が挿入される開口を含む孔を有し、
挿入された前記被係合部の先端に対応する位置における前記孔の大きさは、前記開口の位置における前記孔の大きさよりも大きいことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のバルブユニット。
【請求項8】
前記連通流路は、前記供給室から前記圧力室に向かって広がっていることを特徴とする請求項1から請求項7のうち何れか一項に記載のバルブユニット。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体が液体供給源から前記液体吐出ヘッドに向かって流れる供給流路と、
前記供給流路の一部を構成し、前記液体供給源からの前記液体が流入する流入部と、
前記液体が前記液体吐出ヘッドに向かって流出する流出部と、を有するバルブユニットと、
を備え、
前記バルブユニットは、
前記流入部と通じる供給室と、
前記流出部と通じ、可撓性を備える可撓部を有する圧力室と、
前記供給室に設けられ、開閉方向に移動することで前記供給室と前記圧力室とを連通する連通流路を開閉可能なバルブと、
前記バルブを、前記連通流路を閉じる方向に付勢する付勢部材と、
前記圧力室に設けられ、前記可撓部の変位に応じて変位可能な変位体と、を備え、
前記変位体は、前記連通流路に挿入されて前記バルブを開閉する軸部と、前記軸部と異なる位置に設けられる係合部と、を有し、
前記圧力室は、前記連通流路と異なる位置に設けられる被係合部を有し、
前記係合部が
前記被係合部と係合することにより、前記開閉方向と交差する方向への前記変位体の移動が規制されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体を注入可能な注入部と、前記注入部から注入された前記液体を収容する収容室と、を有する前記液体供給源を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブユニット、および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷用紙に液体の一例であるインクを吐出することで印刷を行う液体吐出装置の一例であるインクジェット式のプリンターが開示されている。このプリンターは、インクをノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、バルブを有し、供給室と圧力室とを連通する連通流路をバルブが開閉することで、液体吐出ヘッドに供給されるインクの圧力を調整するバルブユニットと、を備える。また、バルブユニットのバルブは、バルブに設けられる軸部が連通流路に挿入されることで位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のバルブユニットでは、連通流路が位置決めに使用されるので、連通流路において液体が通過可能な通路を大きく確保することが難しく、連通流路を液体が流れるときの圧力損失が大きくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
バルブユニットは、流体が流入する流入部と、前記流体が流出する流出部と、前記流入部と通じる供給室と、前記流出部と通じ、可撓性を備える可撓部を有する圧力室と、前記供給室に設けられ、開閉方向に移動することで前記供給室と前記圧力室とを連通する連通流路を開閉可能なバルブと、前記バルブを、前記連通流路を閉じる方向に付勢する付勢部材と、前記圧力室に設けられ、前記可撓部の変位に応じて変位可能な変位体と、を備え、前記変位体は、前記連通流路に挿入されて前記バルブを開閉する軸部と、前記軸部と異なる位置に設けられる係合部と、を有し、前記係合部が前記圧力室内に設けられる被係合部と係合することにより、前記開閉方向と交差する方向への前記変位体の移動が規制される。
【0006】
液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体が液体供給源から前記液体吐出ヘッドに向かって流れる供給流路と、前記供給流路の一部を構成し、前記液体供給源からの前記液体が流入する流入部と、前記液体が前記液体吐出ヘッドに向かって流出する流出部と、を有するバルブユニットと、を備え、前記バルブユニットは、前記流入部と通じる供給室と、前記流出部と通じ、可撓性を備える可撓部を有する圧力室と、前記供給室に設けられ、開閉方向に移動することで前記供給室と前記圧力室とを連通する連通流路を開閉可能なバルブと、前記バルブを、前記連通流路を閉じる方向に付勢する付勢部材と、前記圧力室に設けられ、前記可撓部の変位に応じて変位可能な変位体と、を備え、前記変位体は、前記連通流路に挿入されて前記バルブを開閉する軸部と、前記軸部と異なる位置に設けられる係合部と、を有し、前記係合部が前記圧力室内に設けられる被係合部と係合することにより、前記開閉方向と交差する方向への前記変位体の移動が規制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態としての液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】供給室側から見たバルブユニットを示す斜視図。
【
図3】圧力室側から見たバルブユニットを示す斜視図。
【
図4】供給室側から見たバルブユニットを示す側面図。
【
図6】圧力室側から見たバルブユニットを示す側面図。
【
図7】
図6に示したバルブが閉状態のバルブユニットのVII-VII断面を示す断面図。
【
図8】バルブが閉状態のバルブユニットを示す要部断面図。
【
図9】バルブが開状態のバルブユニットを示す断面図。
【
図10】バルブが開状態のバルブユニットを示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向とする。向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用し、各図の矢印が向かう向きを+方向、矢印の反対方向を-方向として説明する。またZ軸方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。
【0010】
1.実施形態1
本実施形態において、液体吐出装置100は、インクジェット式プリンターとして構成され、印刷用紙Pにインクを吐出して画像を形成する。インクは流体の一例であり、液体の一例である。なお、印刷用紙Pに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド10と、インク供給部20と、搬送機構30と、移動機構40と、メンテナンス部50と、制御部90とを備える。
【0012】
液体吐出ヘッド10は、インクを吐出する複数のノズル列12が設けられるノズル面11を有する。ノズル列12は複数のノズルNがY軸方向に並ぶことで形成される。液体吐出ヘッド10は、ノズル列12を構成する複数のノズルNから+Z方向にインクを吐出して印刷用紙P上に画像を形成する。本実施形態では、複数のノズル列12は、ノズル列12a、ノズル列12b、ノズル列12c、およびノズル列12dを含む。
【0013】
吐出するインクとしては、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの合計4色のインクであり、それぞれのインクを、ノズル列12a、ノズル列12b、ノズル列12c、ノズル列12dから吐出してもよい。なお、上記4色に限らずライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイトなど、任意の色のインクを吐出してもよい。液体吐出ヘッド10は、移動機構40が有する後述のキャリッジ42に搭載され、キャリッジ42の移動と共に主走査方向に往復移動する。本実施形態において、主走査方向は、+X方向および-X方向である。
【0014】
インク供給部20は、液体吐出ヘッド10にインクを供給する。インク供給部20は、液体供給源21と、供給流路24と、を備える。本実施形態の液体供給源21は、インクを注入可能な注入部22と、注入部22から注入されたインクを収容する収容室23と、を備える継ぎ足しタイプのタンクであるが、交換可能なカートリッジタイプのタンクであってもよい。インク供給部20は、複数の液体供給源21を備える。本実施形態では、複数の液体供給源21は、ブラックインクを収容する液体供給源21a、シアンインクを収容する液体供給源21b、マゼンタインクを収容する液体供給源21c、およびイエローインクを収容する液体供給源21dを含む。
【0015】
供給流路24は、液体供給源21が収容するインクが液体吐出ヘッド10に向けて流れるように、液体供給源21と液体吐出ヘッド10とを接続する。本実施形態の供給流路24は、キャリッジ42に設けられ、液体吐出ヘッド10と接続されるバルブユニット60と、液体供給源21とバルブユニット60とを接続するチューブ25と、により構成される。
【0016】
バルブユニット60は、液体吐出ヘッド10に供給されるインクの圧力を、所定の負圧に調整する。このため、本実施形態では、液体供給源21のZ軸方向の位置に関する制約が少なくなる。例えば、液体供給源21を、液体供給源21内のインクの液面が液体吐出ヘッド10のノズル面11より-Z方向となる位置に配置することも可能になる。供給流路24には複数のバルブユニット60が設けられる。本実施形態では、複数のバルブユニット60は、液体供給源21aからのインクがノズル列12aに向かって流れるバルブユニット60a、液体供給源21bからのインクがノズル列12bに向かって流れるバルブユニット60b、液体供給源21cからのインクがノズル列12cに向かって流れるバルブユニット60c、および液体供給源21dからのインクがノズル列12dに向かって流れるバルブユニット60dを含む。
【0017】
搬送機構30は、印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向であるX軸方向と直交する方向であり、本実施形態では、+Y方向および-Y方向である。搬送機構30は、3つの搬送ローラー32が装着された搬送ロッド34と、搬送ロッド34を回転駆動する搬送用モーター36とを備える。搬送用モーター36が搬送ロッド34を回転駆動することにより、複数の搬送ローラー32が回転して印刷用紙Pが副走査方向における+Y方向に搬送される。なお、搬送ローラー32の数は3つに限らず任意の数であってもよい。また、搬送機構30を複数備える構成としてもよい。
【0018】
移動機構40は、上述のキャリッジ42に加えて、搬送ベルト44と、移動用モーター46と、プーリー47と、を備える。キャリッジ42は、インクを吐出可能な状態で液体吐出ヘッド10、およびバルブユニット60を搭載する。キャリッジ42は、搬送ベルト44に取り付けられている。搬送ベルト44は、移動用モーター46とプーリー47との間に架け渡されている。移動用モーター46が回転駆動することにより、搬送ベルト44は、主走査方向に往復移動する。これにより、搬送ベルト44に取り付けられているキャリッジ42も、主走査方向に往復移動する。
【0019】
メンテナンス部50は、液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行う。メンテナンス部50は、ワイパー51、ワイパー駆動部52、キャップ53、キャップ保持部54、キャップ駆動部55、廃液チューブ56、吸引ポンプ57、および廃液収集部58を有する。
【0020】
ワイパー51は液体吐出ヘッド10のノズル面11をワイピングすることで、液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行う。ワイパー51はワイパー駆動部52を駆動することで、ノズル面11に接触しない待機位置とノズル面11に接触可能なワイピング位置との間をZ軸方向に移動する。ワイパー51がワイピング位置にある状態で、キャリッジ42の移動と共に、液体吐出ヘッド10がワイパー51の-Z方向側を主走査方向に移動することで、ノズル面11のワイピングが行われる。
【0021】
キャップ53は液体吐出ヘッド10のノズルNからインクを排出させることで、液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行う。キャップ53は、液体吐出ヘッド10のノズル面11に接触することで、複数のノズルNが開口する吸引空間を形成する。キャップ53はキャップ保持部54に保持される。キャップ保持部54は、キャップ駆動部55を駆動することで、Z軸方向に移動する。キャップ53は、キャップ保持部54がZ軸方向に移動することで、ノズル面11に接触しない非キャッピング位置とノズル面11に接触する吸引可能位置との間をZ軸方向に移動する。キャップ53は、廃液チューブ56を介して、廃液を収集する廃液収集部58と通じている。廃液チューブ56には、キャップ53が形成する吸引空間を吸引するための吸引ポンプ57が設けられる。
【0022】
キャップ53による液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行う場合、キャップ53が非キャッピング位置にある状態で、キャリッジ42の移動により、ノズル列12a,12b,12c,12dがキャップ53と対向する位置に、液体吐出ヘッド10を移動させる。そして、キャップ53が吸引可能位置に移動することで、ノズル列12a,12b,12c,12dを構成する複数のノズルNが開口する吸引空間が形成される。吸引ポンプ57が、形成された吸引空間を吸引することで、ノズル列12a,12b,12c,12dを構成する複数のノズルNからインクが吸引空間に排出される。吸引空間に排出されるインクは、廃液チューブ56を介して、廃液収集部58に収集される。
【0023】
制御部90は、液体吐出装置100の全体を制御する。例えば、制御部90は、キャリッジ42の主走査方向に沿った往復動作や、印刷用紙Pの副走査方向に沿った搬送動作、液体吐出ヘッド10のインクの吐出動作、メンテナンス部50による液体吐出ヘッド10のメンテナンス動作を制御する。制御部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とにより構成されてもよい。
【0024】
次に、バルブユニット60の詳細構成について図を用いて説明する。なお、
図2、
図4では、バルブユニット60の内部構造の説明のため、第1薄膜75の外形のみを2点鎖線で示している。また、
図3、
図6では、バルブユニット60の内部構造の説明のため、第2薄膜76の外形のみを2点鎖線で示している。また、
図2では、フィルター室64の内部構造の説明のため、フィルター74の一部を削除して示している。また、
図4、
図5では、供給室66の内部構造の説明のため、ばね座71を削除して示している。
【0025】
図2から
図10に示すように、バルブユニット60は、基体61と、バルブ72と、圧縮コイルばね73と、変位体80と、を備える。基体61には、流入部62と、流入流路63と、フィルター室64と、中継流路65と、供給室66と、連通流路67と、圧力室PCと、流出流路68Dと、流出部69と、が設けられる。流入流路63、フィルター室64、および供給室66は、基体61の-X方向側側面を覆うように、第1薄膜75が基体61に固定されることで形成される。圧力室PCは、基体61の+X方向側側面を覆うように、第2薄膜76が基体61に固定されることで形成される。中継流路65は、基体61の-X方向側側面への第1薄膜75の固定、および+X方向側側面への第2薄膜76の固定により形成される。
【0026】
基体61を形成する材料はどのような材料でもよいが、本実施形態における基体61はオレフィン系樹脂で形成される。また、本実施形態における第1薄膜75、および第2薄膜76は、複層フィルムにより構成される。複層フィルムとしては、例えば、厚さ25μmのポリプロピレンを圧力室PC側層として用い、アルミナ蒸着またはシリカ蒸着が施された厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートを外部空間側層として用いた複層フィルムを使用することができる。これによれば、ガスバリア性を確保できる可撓部FPが得られる。本実施形態では、基体61を第1薄膜75、および第2薄膜76の圧力室PC側層と同じ材料となるポリプロピレンで形成し、第1薄膜75、および第2薄膜76を基体61に熱溶着することで固定している。
【0027】
図2、
図4に示すように、流入部62は、バルブユニット60の基体61の+Y方向側側面における中央より-Z方向となる位置に設けられる。流入部62は、基体61の+Y方向側側面から+Y方向に突き出た円筒状をしている。流入部62には、液体供給源21からのインクがチューブ25を介して流入する。
【0028】
図2、
図4、
図7に示すように、フィルター室64は、基体61の-X方向側側面に設けられる。フィルター室64は、インクをろ過可能なフィルター74と、フィルター74によって区画される上流室64Uおよび下流室64Dと、を有する。フィルター74は、インクが通過可能な多数の孔が設けられて異物を捕集する。フィルター室64の上流室64Uは、流入流路63を介して、流入部62と通じている。フィルター室64の下流室64Dは、中継流路65を介して、供給室66と通じている。
図2、
図3に破線の矢印で示すように、流入部62からのインクは、流入流路63、上流室64U、フィルター74、下流室64D、中継流路65の順に流れ、供給室66に流入する。換言すると、供給室66は流入部62と通じている。
【0029】
供給室66は、基体61の-X方向側側面において、フィルター室64に対して+Z方向となる位置に設けられる。供給室66は、流入部62から流入するインクを貯留する。
図7から
図10に示すように、供給室66は、連通流路67により、圧力室PCと連通している。供給室66は、弁座66Sと、外周規制部66Gと、を有する。弁座66Sには、連通流路67の供給室側開口が開口する。供給室66には、バルブ72と、圧縮コイルばね73と、ばね座71と、が設けられる。供給室66では、バルブ72は、X軸方向において、弁座66Sとばね座71との間に位置する。圧縮コイルばね73は、X軸方向において、バルブ72とばね座71との間に位置する。
【0030】
バルブ72は、バルブ体72Bと、シール部72Sと、により構成される。
図5に示すように、バルブ体72Bには、外周72Pと、切欠き部72Rと、が設けられる。切欠き部72Rは、
図5に2点鎖線で示す円板形状の外周面を複数切り欠くことで形成される複数の凹部である。外周72Pは、
図5に2点鎖線で示す円板形状の外周面のうち、切り欠かれなかった外周面の一部である。本実施形態では、切欠き部72Rが6か所設けられる。
【0031】
図8にしめすように、シール部72Sは、弁座66Sに接触することで、連通流路67の供給室側開口を閉じる。シール部72Sは、バルブ体72Bの+X方向側端部に対して、+X方向に円環状に突き出ている。シール部72Sは、ゴム、樹脂製エラストマー等の弾性部材により構成される。
【0032】
バルブ72は、供給室66と圧力室PCとを連通する開位置と、供給室66と圧力室PCとの連通を遮断する閉位置と、の間をX軸方向に移動可能に、供給室66に設けられる。バルブ72は、閉位置において、シール部72Sが弁座66Sに接触することで、連通流路67の供給室側開口を閉じ、供給室66と圧力室PCとの連通を遮断する。バルブ72は、シール部72Sが弁座66Sから-X方向に離れる開位置において、供給室66と圧力室PCとの連通を許容する。換言すると、バルブ72は、X軸方向に移動することで、連通流路67を開閉可能に、供給室66に設けられる。また、供給室66の外周規制部66Gは、バルブ72の外周72Pに接触することで、X軸方向と交差する方向へのバルブ72の移動を規制し、バルブ72のX軸方向への移動を円滑に行わせる。X軸方向は開閉方向の一例である。
【0033】
圧縮コイルばね73は、バルブ72を、開位置から+X方向となる閉位置に向けて付勢する。また、圧縮コイルばね73は、閉位置において、バルブ72を、弁座66Sに向けて押し付ける。換言すると、圧縮コイルばね73は、バルブ72を、連通流路67を閉じる方向に付勢する。圧縮コイルばね73は付勢部材の一例である。
【0034】
供給室66と圧力室PCとを連通する連通流路67は、
図8に示すように、供給室66側に開口する供給室側連通部67Sと、圧力室PC側に開口する圧力室側連通部67Tと、を有する。供給室側連通部67Sの内径は、供給室側開口径と同じである。圧力室側連通部67Tは供給室66側から圧力室PC側に向かって広がっている。このため、圧力室側連通部67Tの供給室側連通部67Sとつながる側の内径は、供給室側連通部67Sの内径と同じであるが、圧力室PC側に開口する圧力室側開口径は供給室側開口径より大きい。換言すると、連通流路67は、供給室66から圧力室PCに向かって広がっている。
【0035】
図3、
図6に示すように、圧力室PCは、基体61の+X方向側側面に形成される凹部68と、可撓部FPと、により構成される。凹部68は、+X方向から見た場合、部分的に外側に広がる箇所を有するが、実質円形をしている。可撓部FPは、基体61の+X方向側側面を覆う第2薄膜76のうち、凹部68を覆う部分である。よって、可撓部FPは、可撓性を備え、+X方向から見た場合、実質円形をしている。このため、可撓部FPの中央は変位しやすい。圧力室PCは、+X方向から見た場合、実質円形をしている。また、可撓部FPが変位すると、圧力室PCの容積が変化する。
【0036】
図3、
図6に示すように、流出部69は、基体61の+Z方向側側面における中央より+Y方向となる位置に設けられる。流出部69は、基体61の+Z方向側側面から+Z方向に突き出た円筒状をしている。圧力室PCは、圧力室PCの中央より+Z方向となる位置に開口する流出流路68Dを介して、流出部69と通じている。
図3に破線の矢印で示すように、圧力室PCのインクは、流出部69から流出し、流出部69と接続される液体吐出ヘッド10内に流入する。
【0037】
圧力室PCには、変位体80が設けられる。変位体80は、受圧部81と、係合部82と、回動軸83と、接続部84と、軸部85と、突起86と、を有する。
図3、
図6に示すように、受圧部81は、円板形状をしており、+X方向から見た場合、円形をしている。受圧部81の中心には係合部82が設けられる。係合部82は受圧部81を貫通する孔である。接続部84は、幅広の薄板形状をしており、受圧部81から延びている。接続部84が受圧部81から延びる方向の端部には、回動軸83が設けられる。変位体80を形成する材料はどのような材料でもよいが、基体61、および第2薄膜76の圧力室PC側層と異なる材料で形成してもよい。本実施形態では、変位体80をポリアセタールで形成している。これによれば、第2薄膜76を基体61に熱溶着する際に、変位体80が基体61、および第2薄膜76のいずれかに固定されることを抑制できる。
【0038】
回動軸83は、接続部84の幅方向に、接続部84から両側に突き出た円筒状をしている。また、接続部84が受圧部81から延びる方向の端部には、突起86が設けられる。
図7、
図8に示すように、軸部85は、受圧部81において、接続部84が受圧部81から延びる方向と反対方向となる位置に設けられる。換言すると、軸部85は、受圧部81において、係合部82と異なる位置に設けられる。軸部85は、受圧部81から突き出た棒状の突起である。回動軸83から軸部85までの距離は、回動軸83から係合部82までの距離より長い。
【0039】
図3、
図6に示すように、圧力室PCは、係合部82と係合する被係合部68Rと、回動軸83を支持する支持部68Hと、を有する。被係合部68Rは、凹部68の内底面の中央に設けられる。すなわち、被係合部68Rは、圧力室PCを+X方向から見た場合、円形の圧力室PCの中心に位置する。
図7、
図8に示すように、被係合部68Rは凹部68の内底面から+X方向に突き出た丸棒状の突起である。
図3、
図6、
図7に示すように、支持部68Hは、被係合部68Rに対して-Z方向となる位置に設けられる。支持部68Hは、凹部68の円形状部から-Z方向に広がる部分に設けられる窪みである。支持部68Hは、変位体80が回動軸83を中心に回動可能に、回動軸83を支持する。また、
図7、
図8に示すように、連通流路67の圧力室側開口は、圧力室PCにおいて、被係合部68Rに対して+Z方向となる位置に開口する。
【0040】
図3、
図6に示すように、変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、係合部82は、被係合部68Rが挿入されることで、+X方向から見た場合の圧力室PCの中央に位置する。変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、回動軸83は、係合部82に対して、-Z方向となる位置に位置する。また、変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、回動軸83は、変位体80が回動する回動軸83がY軸に沿うように、支持部68Hに支持される。
【0041】
図7、
図8に示すように、変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、軸部85は、+X方向から見た場合、係合部82に対して、+Z方向となる位置に位置する。換言すると、係合部82は、Z軸方向において、軸部85と回動軸83との間に設けられる。また、
図6、
図7に示すように、変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、係合部82と軸部85とは、Y軸方向において、回動軸83の両端部の間に位置する。変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、突起86は、可撓部FPと隙間を確保しつつ、接続部84から+X方向に突き出ている。突起86は、回動軸83に対応して、Y軸方向に間隔を置いて2カ所設けられる。これにより、突起86は、回動軸83が支持部68Hから+X方向に移動して外れることを抑制する。
【0042】
図3、
図6に示すように、変位体80は圧力室PCに設けられた状態において、係合部82が被係合部68Rに係合することで、被係合部68Rを回転中心として回転可能に、圧力室PCに対して位置決めされる。換言すると、係合部82が被係合部68Rに係合することで、X軸方向と交差する方向への変位体80の移動が規制される。そして、支持部68Hが回動軸83の両端部に接触することで、変位体80は被係合部68Rを回転中心とする回転が規制され、圧力室PCに対して位置決めされる。また、
図7に示すように、係合部82から軸部85までの距離は、係合部82から回動軸83までの距離と比較して短く設定されている。その結果、軸部85は、圧力室PCの連通流路67に対して精度高く位置決めされる。そして、
図8に示すように、変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、軸部85の先端側は連通流路67内に位置し、軸部85の先端はバルブ72におけるバルブ体72Bの+X方向側端部に接触している。
【0043】
バルブユニット60は、圧力室PC内の負圧の大きさが所定の負圧より大きくなると、
図7、
図8に示す閉位置にあるバルブ72が、
図9、
図10に示す開位置に移動し、連通流路67を開く。連通流路67が開き、
図9、
図10に破線の矢印で示すように、供給室66から圧力室PCにインクが流入することで、圧力室PC内の負圧の大きさが所定の負圧になると、開位置にあるバルブ72が閉位置に移動し、連通流路67を閉じる。これにより、バルブユニット60は、液体吐出ヘッド10に供給されるインクの圧力を、所定の負圧に調整する。
【0044】
なお、本実施形態において、所定の負圧を、例えば、Z軸方向におけるノズル面11の位置において、ゲージ圧で-0.5kPaとし、圧力室PCの中央の位置が、ノズル面11に対して-Z方向に30mm離れているとする。この場合、圧力室PC内の負圧の大きさがゲージ圧で-0.8kPaより大きくなると、バルブ72が連通流路67を開く。連通流路67が開き、供給室66から圧力室PCにインクが流入し、圧力室PC内の負圧の大きさがゲージ圧で-0.8kPaになると、バルブ72が連通流路67を閉じる。
【0045】
図7から
図10に示すように、変位体80が圧力室PCに設けられた状態において、受圧部81は可撓部FPにおける圧力室PC側の中央に接触している。圧縮コイルばね73が、バルブ72を弁座66Sに向けて押し付ける付勢力は、圧力室PCと通じる液体吐出ヘッド10内の負圧の大きさが所定の負圧より大きくなると、バルブ72が閉位置から開位置に移動し、連通流路67を開くように設定されている。このため、バルブ72と接触している軸部85の先端は、可撓部FPを変形させるために必要な力より大きい力で+X方向に押されている。その結果、
図7、
図8に示すように、バルブ72が閉位置に位置するとき、可撓部FPの中央の位置が、
図9、
図10に示す可撓部FPの中央の位置に対して+X方向に位置するように、受圧部81は可撓部FPを押している。
【0046】
係合部82が設けられる受圧部81の中心位置は、軸部85と比較して回動軸83に近い位置にある。また、軸部85から回動軸83までの距離は軸部85から受圧部81の中心位置までの距離より長い。このため、受圧部81と可撓部FPとが接触しているとき、回動軸83は支持部68Hの-X方向側の支持面に向けて付勢される。これにより、変位体80の回動中心の位置が安定し、変位体80が円滑に移動できる。
【0047】
液体吐出装置100における印刷動作において液体吐出ヘッド10のノズルNからインクが吐出されること、メンテナンス動作においてノズルNから排出されること等により、圧力室PC内の負圧が大きくなると、可撓部FPは圧力室PCの容積が小さくなる方向に変形する。圧力室PC内の負圧が所定の負圧より大きくなると、可撓部FPの中央の位置が
図7、
図8に示す位置から-X方向に移動する。これにより、受圧部81が-X方向に移動し、変位体80は回動軸83を中心にして、軸部85が-X方向に移動する方向に回動する。軸部85が閉位置にあるバルブ72を-X方向に移動させることで、バルブ72は、
図9、
図10に示す開位置に移動し、連通流路67を開く。
【0048】
連通流路67が開き、
図9、
図10に破線の矢印で示すように、供給室66から圧力室PCにインクが流入する。本実施形態において、連通流路67はバルブ72の位置決めに使用されない。また、本実施形態において、連通流路67は軸部85の位置決めに使用されない。よって、本実施形態によれば、例えば連通流路67をバルブ72の位置決めに使用する場合と比較して、軸部85と連通流路67との間に、インクが通過可能な通路を確保しやすい。また、本実施形態において、バルブ72のバルブ体72Bには切欠き部72Rが設けられる。よって、供給室66において、供給室66の外周規制部66Gとバルブ体72Bの切欠き部72Rとの間に、インクが通過可能な通路が形成される。
【0049】
また、
図8に示すように、係合部82は、被係合部68Rが挿入される側に開口する挿入側孔部82Sと、可撓部FP側に開口する可撓部側孔部82Lと、を有する。挿入側孔部82Sは、被係合部68Rと接触するように孔の大きさが設定される貫通孔である。挿入側孔部82Sが被係合部68Rに接触することで、X軸方向と交差する方向への変位体80の移動が規制される。可撓部側孔部82Lは、被係合部68Rと接触しないように孔の大きさが設定される貫通孔である。このため、可撓部側孔部82Lの孔の大きさは挿入側孔部82Sの孔の大きさより大きい。
【0050】
また、可撓部側孔部82Lは、変位体80の移動により係合部82内を相対移動する被係合部68Rの先端部の位置に対応するように、X軸方向の長さが設定される。このため、可撓部側孔部82LのX軸方向の寸法は挿入側孔部82SのX軸方向の寸法より大きい。換言すると、係合部82は、被係合部68Rが挿入される開口を含む挿入側孔部82Sを有し、挿入された被係合部68Rの先端に対応する位置に設けられる可撓部側孔部82Lの孔の大きさは、被係合部68Rが挿入される開口の位置における挿入側孔部82Sの孔の大きさより大きい。変位体80が回動軸83を中心にして回動する場合、
図8に示すように、係合部82が被係合部68Rに対して傾く場合がある。これに対して、本実施形態の係合部82は挿入側孔部82Sと可撓部側孔部82Lとを有するので、挿入側孔部82Sが被係合部68Rと接触する係合状態を維持しながら、変位体80が円滑に移動できる。
【0051】
例えば、バルブユニット60の連通流路67をバルブ72の位置決めに使用する場合、連通流路67においてインクが通過可能な通路を大きく確保することが難しく、連通流路67をインクが流れるときの圧力損失が大きくなる虞がある。これに対して、本実施形態のバルブユニット60は、圧力室PCに設けられ、可撓部FPの変位に応じて変位可能な変位体80を備え、変位体80は、連通流路67に挿入されてバルブ72を開閉する軸部85と、軸部85と異なる位置に設けられる係合部82と、を有し、係合部82が圧力室PC内に設けられる被係合部68Rと係合することにより、X軸方向と交差する方向への変位体80の移動が規制される。
【0052】
これによれば、連通流路67が位置決めに使用されないので、インクが通過可能な通路を連通流路67に大きく形成しやすく、連通流路67をインクが流れるときの圧力損失を低減しやすい。また、本実施形態の液体吐出装置100は、上述のバルブユニット60を備えるので、供給流路24をインクが流れるときの圧力損失を低減しやすい。
【0053】
以上述べたように、実施形態1に係るバルブユニット60、および液体吐出装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0054】
バルブユニット60は、インクが流入する流入部62と、インクが流出する流出部69と、流入部62と通じる供給室66と、流出部69と通じ、可撓性を備える可撓部FPを有する圧力室PCと、供給室66に設けられ、X軸方向に移動することで供給室66と圧力室PCとを連通する連通流路67を開閉可能なバルブ72と、バルブ72を、連通流路67を閉じる方向に付勢する圧縮コイルばね73と、圧力室PCに設けられ、可撓部FPの変位に応じて変位可能な変位体80と、を備え、変位体80は、連通流路67に挿入されてバルブ72を開閉する軸部85と、軸部85と異なる位置に設けられる係合部82と、を有し、係合部82が圧力室PC内に設けられる被係合部68Rと係合することにより、X軸方向と交差する方向への変位体80の移動が規制される。これによれば、連通流路67が位置決めに使用されないので、インクが通過可能な通路を連通流路67に大きく形成しやすく、連通流路67をインクが流れるときの圧力損失を低減しやすい。
【0055】
変位体80は、可撓部FPの変位を受ける円形の受圧部81を有し、係合部82は、受圧部81の中心に設けられる。これによれば、変位体80が円滑に移動可能となる。
【0056】
供給室66は、バルブ72の外周72Pに接触することでX軸方向と交差する方向へのバルブ72の移動を規制する外周規制部66Gを有する。これによれば、バルブ72の位置ばらつきを低減することができる。
【0057】
バルブ72は、複数の切欠き部72Rを有する。これによれば、インクが通過可能な通路を外周規制部66Gとバルブ72との間に複数形成することができるため、外周規制部66Gとバルブ72との間をインクが流れるときの圧力損失をより低減できる。
【0058】
変位体80は圧力室PCを構成する基体61に支持される回動軸83を有するとともに、回動軸83を中心に回動可能である。これによれば、変位体80の姿勢を安定させることができるため、バルブ72の開閉を円滑に行うことができる。
【0059】
係合部82は、軸部85と回動軸83との間に設けられる。これによれば、変位体80の姿勢をより安定させることができるため、バルブ72の開閉を円滑に行うことができる。
【0060】
被係合部68Rは棒状に構成され、係合部82は、被係合部68Rが挿入される開口を含む挿入側孔部82Sを有し、挿入された被係合部68Rの先端に対応する位置に設けられる可撓部側孔部82Lの孔の大きさは、被係合部68Rが挿入される開口の位置における挿入側孔部82Sの孔の大きさより大きい。これによれば、係合部82が被係合部68Rと係合した状態で、変位体80が円滑に移動できる。
【0061】
連通流路67は、供給室66から圧力室PCに向かって広がっている。これによれば、連通流路67をインクが流れるときの圧力損失をより低減できる。
【0062】
液体吐出装置100は、インクを吐出する液体吐出ヘッド10と、インクが液体供給源21から液体吐出ヘッド10に向かって流れる供給流路24と、供給流路24の一部を構成し、液体供給源21からのインクが流入する流入部62と、インクが液体吐出ヘッド10に向かって流出する流出部69と、を有するバルブユニット60と、を備え、バルブユニット60は、流入部62と通じる供給室66と、流出部69と通じ、可撓性を備える可撓部FPを有する圧力室PCと、供給室66に設けられ、X軸方向に移動することで供給室66と圧力室PCとを連通する連通流路67を開閉可能なバルブ72と、バルブ72を、連通流路67を閉じる方向に付勢する圧縮コイルばね73と、圧力室PCに設けられ、可撓部FPの変位に応じて変位可能な変位体80と、を備え、変位体80は、連通流路67に挿入されてバルブ72を開閉する軸部85と、軸部85と異なる位置に設けられる係合部82と、を有し、係合部82が圧力室PC内に設けられる被係合部68Rと係合することにより、X軸方向と交差する方向への変位体80の移動が規制される。これによれば、連通流路67が位置決めに使用されないので、連通流路67においてインクが通過可能な通路を大きくしやすく、連通流路67をインクが流れるときの圧力損失を低減しやすい。
【0063】
液体吐出装置100は、インクを注入可能な注入部22と、注入部22から注入されたインクを収容する収容室23と、を有する液体供給源21を更に備える。これによれば、インクを収容室23に注入する仕様のプリンターにも採用できる。
【0064】
本発明の上記実施形態に係るバルブユニット60、および液体吐出装置100は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。また、上記実施形態および以下に説明する他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。以下、他の実施形態について説明する。
【0065】
上記実施形態において、受圧部81の形状は円形でなくてもよい。この場合、例えば、受圧部81の形状は、楕円形でもよいし、多角形であってもよい。
【0066】
上記実施形態において、係合部82は円形の貫通孔でなくてもよい。この場合、係合部82の形状は、楕円形でもよいし、多角形であってもよい。
【0067】
上記実施形態において、係合部82は貫通孔でなくてもよい。この場合、係合部82が棒状の突起であり、被係合部68Rが孔形状であってもよい。
【0068】
上記実施形態において、係合部82は、受圧部81の中心に設けなくてもよい。この場合、例えば、係合部82を、Z軸方向において受圧部81の中心と軸部85との間となる位置に設けてもよいし、変位体80の接続部84に設けてもよい。そして、圧力室PCにおいて、係合部82と係合可能な位置に被係合部68Rを設けてもよい。
【0069】
上記実施形態において、バルブ72は、バルブ体72Bに切欠き部72Rを1か所備えてもよい。
【0070】
上記実施形態において、バルブ72は、バルブ体72Bに切欠き部72Rを備えなくてもよい。この場合、供給室66は、バルブ72の外周面に接触することで、X軸方向と交差する方向へのバルブ72の移動を規制する規制部として複数の突起を備えてもよい。
【0071】
上記実施形態において、圧力室PCの支持部68Hを、被係合部68Rに対して-Z方向となる位置に設けなくてもよい。この場合、例えば、支持部68Hを、被係合部68Rに対して+Y方向となる位置に設けてもよい。この場合、連通流路67の圧力室側開口を、被係合部68Rに対して-Y方向となる位置に設けてもよい。
【0072】
上記実施形態において、圧力室PCの支持部68Hを、被係合部68Rに対して-Z方向となる位置に設けなくてもよい。この場合、例えば、支持部68Hを、被係合部68Rに対して+Z方向となる位置に設けてもよい。そして、変位体80の回動軸83を、軸部85が係合部82と回動軸83との間に位置するように設けてもよい。このとき、変位体80は回動軸83を中心にして回動しなくてもよい。
【0073】
上記実施形態において、変位体80は回動軸83を備えなくてもよい。この場合、変位体80は、支持部68Hに支持されるように、半球状の突起をY軸方向に間隔を置いて一対備えてもよい。
【0074】
上記実施形態において、変位体80の受圧部81を圧力室PCの可撓部FPに固定してもよい。この場合、変位体80を、第2薄膜76の圧力室PC側層と同じ材料で形成してもよい。例えば、変位体80を第2薄膜76の圧力室PC側層と同じ材料となるポリプロピレンで形成し、変位体80の受圧部81と第2薄膜76とを熱溶着することで固定してもよい。
【0075】
上記実施形態において、第1薄膜75は、複層フィルムでなくてもよい。この場合、第1薄膜75は単層の樹脂フィルムでもよいし、ステンレス等の金属フィルムであってもよい。
【0076】
上記実施形態において、第2薄膜76は、複層フィルムでなくてもよい。この場合、第2薄膜76は単層の樹脂フィルムでもよいし、ステンレス等の金属フィルムであってもよい。また、第2薄膜76の可撓部PCを構成する部分に断面コルゲート状の可撓形状を設けてもよい。
【0077】
上記実施形態において、連通流路67は供給室側連通部67Sを有さなくてもよい。この場合、連通流路67は圧力室側連通部67Tが供給室66側に開口する構成でもよく、連通流路67が供給室66側から圧力室PC側に向かって連続して広がっていてもよい。
【0078】
上記実施形態において、連通流路67は圧力室側連通部67Tを有さなくてもよい。この場合、連通流路67は供給室側連通部67Sが圧力室PC側に開口する構成でもよく、連通流路67は供給室66側から圧力室PC側に向かって広がっていなくてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…液体吐出ヘッド、11…ノズル面、12,12a,12b,12c,12d…ノズル列、20…インク供給部、21,21a,21b,21c,21d…液体供給源、22…注入部、23…収容室、24…供給流路、25…チューブ、30…搬送機構、32…搬送ローラー、34…搬送ロッド、36…搬送用モーター、40…移動機構、42…キャリッジ、44…搬送ベルト、46…移動用モーター、47…プーリー、50…メンテナンス部、51…ワイパー、52…ワイパー駆動部、53…キャップ、54…キャップ保持部、55…キャップ駆動部、56…廃液チューブ、57…吸引ポンプ、58…廃液収集部、60,60a,60b,60c,60d…バルブユニット、61…基体、62…流入部、63…流入流路、64…フィルター室、64D…下流室、64U…上流室、65…中継流路、66…供給室、66G…外周規制部、66S…弁座、67…連通流路、67S…供給室側連通部、67T…圧力室側連通部、68…凹部、68D…流出流路、68H…支持部、68R…被係合部、69…流出部、71…ばね座、72…バルブ、72B…バルブ体、72P…外周、72R…切欠き部、72S…シール部、73…圧縮コイルばね、74…フィルター、75…第1薄膜、76…第2薄膜、80…変位体、81…受圧部、82…係合部、82L…可撓部側孔部、82S…挿入側孔部、83…回動軸、84…接続部、85…軸部、86…突起、90…制御部、100…液体吐出装置、PC…圧力室、FP…可撓部。