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  • 特許-動力線の接続構造 図1
  • 特許-動力線の接続構造 図2
  • 特許-動力線の接続構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】動力線の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241029BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021037057
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137531
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸川 直起
(72)【発明者】
【氏名】片山 正章
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-218189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路と、二つの回転電機とを接続する動力線の接続構造であって、
前記制御回路と第一の回転電機とを接続する第一の動力線、および、前記制御回路と第二の回転電機とを接続する第二の動力線のうち、相対的に長いほうの動力線の端部の剛性が、それ以外の部分の剛性よりも高
前記第一の動力線は、前記制御回路に設けられた端子台のバスバーと、前記第一の回転電機との間に配設されており、
前記第二の動力線は、前記バスバーと、前記第二の回転電機との間に配設されており、
前記第一の動力線および前記第二の動力線のうち、相対的に長いほうの動力線は、前記第一の回転電機または前記第二の回転電機から連続して所定長さにわたって設けられ、かつそれ以外の部分よりも剛性の高い高剛性部を有する、
動力線の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御回路と、二つの回転電機とを接続する動力線の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PCU(Power Control Unit)に設けられた端子台と、回転電機とを接続する接続構造において、端子台のバスバーにかかる応力を抑制するための中継部材を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-124029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば二つの回転電機を備えるハイブリッド車両等の接続構造において、エンジンや路面からの振動に対する耐久性と、組付性とを両立させることが求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、振動に対する耐久性と、組付性とを両立させることができる動力線の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る動力線の接続構造は、制御回路と、二つの回転電機とを接続する動力線の接続構造であって、前記制御回路と第一の回転電機とを接続する第一の動力線、および、前記制御回路と第二の回転電機とを接続する第二の動力線のうち、相対的に長いほうの動力線の端部の剛性が、それ以外の部分の剛性よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、制御回路と二つの回転電機とを接続する動力線のうち、相対的に長いほうの動力線の端部の剛性を、それ以外の部分の剛性よりも高くすることにより、エンジンや路面からの振動に対する耐久性と、組付性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る動力線の接続構造が適用されるトランスアクスルの構成を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る動力線の接続構造において、第二の動力線の第一の構成例を示す概略図である。
図3図3は、実施形態に係る動力線の接続構造において、第二の動力線の第二の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る動力線の接続構造について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
ここで、特許文献1で開示されているような、PCUと回転電機との間を接続する動力線の接続構造では、両者の接続経路、すなわち動力線が長い程、振動(例えばエンジン振動、路面振動等)による耐久性の低下や、接続公差の増大に伴う組付性の悪化等が発生しやすくなる。そのため、PCUと回転電機との間の動力線はなるべく短くすることが好ましいが、例えば二つの回転電機を備えるハイブリッド車両のトランスアクスルでは、二つの回転電機からPCUへと動力線をそれぞれ配線するため、構造上、動力線が長くならざるを得ない場合が生じる。そこで、実施形態に係る動力線の接続構造では、エンジンや路面からの振動に対する耐久性と、組付性とを両立させることができる構造を提案する。
【0011】
実施形態に係る動力線の接続構造は、二つの回転電機を備えるハイブリッド車両等のトランスアクスルに適用される。トランスアクスル1は、図1に示すように、第一の回転電機(MG1)10と、第二の回転電機(MG2)20と、PCU(制御回路)30と、端子台40と、複数の第一の動力線51と、複数の第二の動力線52と、を備えている。なお、同図において、紙面の上下がトランスアクスル1の上下を示しており、紙面の左右がトランアクスル1の前後を示している。また、同図では、トランスアクスル1の構成要素のうち、本実施形態の説明に必要なもののみを図示しており、その他の構成要素は図示を省略している。
【0012】
第一の回転電機10および第二の回転電機20は、例えば三相同期モータ等により構成されている。第一の回転電機10および第二の回転電機20は、それぞれ、ロータ、ステータおよびステータに巻回された三相のコイル(巻線)を備えている。図1に示した構成例において、第一の回転電機10は、トランスアクスル1の前側に配置され、第二の回転電機20は、トランスアクスル1の後側に配置されている。すなわち、第二の回転電機20は、PCU30に設けられた端子台40に対して、第一の回転電機10よりも遠い位置に配置されている。
【0013】
PCU30は、第一の回転電機10および第二の回転電機20を駆動するインバータや、電圧を制御する昇圧コンバータ等を備えている。図1に示した構成例において、PCU30は、トランスアクスル1の上側かつ前側に配置されている。
【0014】
端子台40は、PCU30の下部に連結されている。端子台40は、ハウジング41と、複数のバスバー42と、を備えている。バスバー42は、例えば金属製の薄い板材が積層された構造を有している。また、バスバー42は、ハウジング41を上下方向に貫通するように配置されている。
【0015】
バスバー42の一端部421は、PCU30の出力端子と電気的に接続されている。また、バスバー42の他端部422は、第一の動力線51および第二の動力線52を介して、第一の回転電機10および第二の回転電機20と、それぞれ電気的に接続されている。
【0016】
第一の動力線51は、例えば銅等の導体により構成されており、PCU30と第一の回転電機10とを電気的に接続している。また、第一の動力線51は、U相、V相、W相に対応して、バスバー42と第一の回転電機10との間に三本配設されている。また、第一の動力線51の一端部は、例えばボルト等の締結部材によってバスバー42の他端部422と接合されている。また、第一の動力線51の他端部は、例えば溶接によって第一の回転電機10のステータと接合されている。
【0017】
第二の動力線52は、例えば銅等の導体により構成されており、PCU30と第二の回転電機20とを電気的に接続している。また、第二の動力線52は、U相、V相、W相に対応して、バスバー42と第二の回転電機20との間に三本配設されている。また、第二の動力線52の一端部は、例えばボルト等の締結部材によってバスバー42の他端部422と接合されている。また第二の動力線52の他端部は、例えば溶接によって第二の回転電機20のステータと接合されている。
【0018】
ここで、実施形態に係る動力線の接続構造では、第一の動力線51および第二の動力線52のうち、相対的に長いほうの動力線の端部の剛性が、それ以外の部分(端部以外)の剛性よりも高くなるように構成されている。図1に示した構成例では、第一の動力線51および第二の動力線52のうち、第二の動力線52が相対的に長く構成されている。そのため、実施形態に係る動力線の接続構造では、第二の動力線52の端部の剛性が、それ以外の部分の剛性よりも高く構成されている。以下、第二の動力線52の具体的構成について説明する。
【0019】
第二の動力線52は、低剛性部521と、高剛性部522とを有している。低剛性部521は、例えば第一の動力線51と同じ素材(例えば銅線)で構成されており、第一の動力線51と同じ剛性を備えている。また、この低剛性部521は、第二の動力線52のうち、高剛性部522以外の部分のことを示している。
【0020】
高剛性部522は、第二の動力線52におけるバスバー42側の領域、すなわちバスバー42から連続して所定長さにわたって設けられている。この高剛性部522は、当該高剛性部522以外の部分、すなわち低剛性部521よりも高い剛性を備えている。
【0021】
このように、バスバー42から連続した所定部分の剛性を、それ以外の部分の剛性よりも高めることにより、剛性の高い固定部(バスバー42)を実質的に延長することができる。そのため、低剛性部521および高剛性部522の長さ(両者の比率)を調整することにより、動力線の接続公差および振動(例えばエンジン振動、路面振動等)の大きさに応じて、トランスアクスル1を自由に設計することが可能となる。
【0022】
なお、高剛性部522は、図1に示すように、第二の動力線52の一部に設けられてもよく、あるいは第二の動力線52の全てに設けられてもよい。第二の動力線52において、低剛性部521に対する高剛性部522の長さ、すなわち低剛性部521の長さと高剛性部522の長さとの比率は、求める剛性やコストを考慮して決めればよい。
【0023】
ここで、第二の動力線52は、例えば図2に示すように、銅線の一部に樹脂をコーティングした構造とすることができる。この場合、低剛性部521は、銅線521aにより構成される。また、高剛性部522は、低剛性部521から連続する銅線521aおよびその周囲を覆う樹脂部522aにより構成される。なお、樹脂部522aは、所望の剛性を得られるように、厚みや素材を適宜選択することが好ましい。
【0024】
また、実施形態に係る動力線の接続構造では、図2に示した第二の動力線52に代えて、例えば図3に示すように、二つの独立した部材から構成された第二の動力線52Aを用いてもよい。この第二の動力線52Aは、低剛性部521Aと高剛性部522Aとがそれぞれ独立した部材からなり、両者が連結された構造を有している。
【0025】
すなわち、低剛性部521Aは、先端に締結部521Abが設けられた銅線521Aaにより構成される。また、高剛性部522Aは、低剛性部521Aと同じ銅線522Aaおよびその周囲を覆う樹脂部522Abにより構成される。そして、低剛性部521Aおよび高剛性部522Aは、締結部521Abを介してボルト等で締結されている。なお、樹脂部522Abは、所望の剛性を得られるように、厚みや素材を適宜選択することが好ましい。
【0026】
また、図1に示した構成例では、高剛性部522が、第二の動力線52のバスバー42側の端部に設けられているが、高剛性部522が、第二の回転電機20側の端部に設けられていてもよい。この場合、第二の動力線52の高剛性部522は、第二の回転電機20のステータから連続して所定長さにわたって設けられる。
【0027】
このように、第二の回転電機20のステータから連続した所定部分の剛性を、それ以外の部分の剛性よりも高めることにより、剛性の高い固定部(ステータ)を実質的に延長することができる。そのため、低剛性部521および高剛性部522の長さ(両者の比率)を調整することにより、動力線の接続公差および振動(例えばエンジン振動、路面振動等)の大きさに応じて、トランスアクスル1を自由に設計することが可能となる。
【0028】
また、図1に示した構成例では、第一の回転電機10がトランスアクスル1の前側に配置され、第二の回転電機20がトランスアクスル1の後側に配置されているが、第一の回転電機10と第二の回転電機20の位置関係が反対でもよい。すなわち、第一の回転電機10がトランスアクスル1の後側に配置され、第二の回転電機20がトランスアクスル1の前側に配置されてもよい。この場合、第二の動力線を低剛性部と同じ銅線によって構成し、第一の動力線を低剛性部と高剛性部とによって構成すればよい。
【0029】
以上説明した実施形態に係る動力線の接続構造によれば、PCU30と第一の回転電機10および第二の回転電機20とを接続する動力線のうち、相対的に長い第二の動力線52,52Aの端部の剛性を、それ以外の部分の剛性よりも高くすることにより、端子台40の搭載位置にかかわらず、エンジンや路面からの振動に対する耐久性と、組付性とを両立させることができる。
【0030】
すなわち、実施形態に係る動力線の接続構造では、PCU30と第一の回転電機10および第二の回転電機20とを接続する動力線のうち、相対的に長い第二の動力線52,52Aに、異なる剛性を有する部分を設けることにより、低剛性部521,521Aでは、接続経路の長さに起因する接続公差に対応することができ、組付性の低下を抑制することができる。また、高剛性部522,522Aでは、振動に対する耐久性の低下を抑制することができる。
【0031】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 トランスアクスル
10 第一の回転電機
20 第二の回転電機
30 PCU
40 端子台
41 ハウジング
42 バスバー
421 一端部
422 他端部
51 第一の動力線
52,52A 第二の動力線
521,521A 低剛性部
521a,521Aa,522Aa 銅線
521Ab 締結部
522,522A 高剛性部
522a,522Ab 樹脂部
図1
図2
図3