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  • 特許-蒸発燃料処理装置 図1
  • 特許-蒸発燃料処理装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
F02M25/08 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021039122
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138945
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-016622(JP,A)
【文献】特開2011-236797(JP,A)
【文献】特開2004-044536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
前記キャニスタとエンジンの吸気通路とを連通するパージ通路と、
前記パージ通路に設けられたパージバルブと、を備えた蒸発燃料処理装置であって、
前記吸気通路内の圧力を吸気通路圧力として検出する吸気通路圧力検出部と、
前記パージ通路内の圧力をパージ通路圧力として検出するパージ通路圧力検出部と、
前記キャニスタと大気とを連通する大気通路と、
前記大気通路に設けられた大気バルブと、
前記エンジンの燃料カット中であって前記パージ通路圧力が前記吸気通路圧力よりも大きい場合、前記大気バルブを閉弁して前記パージバルブを開弁する制御部と、を備えることを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記燃料カット中であって前記パージ通路圧力が前記吸気通路圧力以下である場合、前記パージバルブを閉弁して前記大気バルブを閉弁することを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記燃料タンクと前記キャニスタとを連通するタンク通路と、
前記タンク通路に設けられたタンクバルブと、を備え、
前記制御部は、前記燃料カット中であって前記パージ通路圧力が前記吸気通路圧力よりも大きい場合、前記タンクバルブを閉弁して前記パージバルブを開弁することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料カット又は点火カットの信号を受信した場合にパージ制御弁の開閉を制御する制御手段を備えるエバポガス処理装置が記載されており、このエバポガス処理装置において、制御手段は、タンク圧力が吸気圧力を超えると判断した場合にはパージ制御弁を閉とすることによって、キャニスタから吸気通路へのエバポガスの流入を遮断するとともに、タンク内に吸気通路の負圧を蓄圧し、タンク圧力が吸気圧力以下と判断した場合にはパージ制御弁を開とすることによって、キャニスタ内のエバポガスをタンク内に蓄圧された負圧を利用してタンク内へパージしている。
【0003】
特許文献1に記載のエバポガス処理装置によれば、エンジン燃焼室内で燃焼していない場合におけるエンジン内へのエバポガスのパージを低減するとともに、エバポガスの処理が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-16622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、蒸発燃料(エバポガス)をキャニスタだけでなくタンク内にも貯留することで吸気通路へ放出される蒸発燃料の流量は増加し得るが、キャニスタ内の吸着剤からの蒸発燃料の離脱量は必ずしも増加するとは限らないという問題があった。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の技術にあっては、キャニスタから吸気通路に蒸発燃料が流出する際に、吸気通路の負圧によって燃料タンクからキャニスタに蒸発燃料が流入した場合、キャニスタからの蒸発燃料の離脱量は増加せず、キャニスタが新たに蒸発燃料を吸着できなくなってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、キャニスタ内の吸着剤からの蒸発燃料の離脱量を増やすことができる蒸発燃料処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、前記キャニスタとエンジンの吸気通路とを連通するパージ通路と、前記パージ通路に設けられたパージバルブと、を備えた蒸発燃料処理装置であって、前記吸気通路内の圧力を吸気通路圧力として検出する吸気通路圧力検出部と、前記パージ通路内の圧力をパージ通路圧力として検出するパージ通路圧力検出部と、前記キャニスタと大気とを連通する大気通路と、前記大気通路に設けられた大気バルブと、前記エンジンの燃料カット中であって前記パージ通路圧力が前記吸気通路圧力よりも大きい場合、前記大気バルブを閉弁して前記パージバルブを開弁する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、キャニスタ内の吸着剤からの蒸発燃料の離脱量を増やすことができる蒸発燃料処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る蒸発燃料処理装置を備える車両の構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る蒸発燃料処理装置のタンクバルブの開閉制動動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る蒸発燃料処理装置のパージバルブおよび大気バルブの開閉制動動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る蒸発燃料処理装置は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、キャニスタとエンジンの吸気通路とを連通するパージ通路と、パージ通路に設けられたパージバルブと、を備えた蒸発燃料処理装置であって、吸気通路内の圧力を吸気通路圧力として検出する吸気通路圧力検出部と、パージ通路内の圧力をパージ通路圧力として検出するパージ通路圧力検出部と、エンジンの燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、パージバルブを開弁する制御部と、を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る蒸発燃料処理装置は、キャニスタ内の吸着剤からの蒸発燃料の離脱量を増やすことができる。
【実施例
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る蒸発燃料処理装置について図面を用いて説明する。図1から図3は、本発明の一実施例に係る蒸発燃料処理装置を説明する図である。
【0013】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、燃料タンク5と、蒸発燃料処理装置20とを含んで構成される。
【0014】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び排気行程からなる一連の4行程を行う内燃機関型の多気筒エンジンから構成されている。
【0015】
エンジン2は、空気を燃焼室に取り入れる吸気通路3と、排気ガスを燃焼室から排出する排気通路4とを備えている。吸気通路3は、エンジン2の各燃焼室に空気を導入するインテークマニホールドからなる。排気通路4は、エンジン2の各燃焼室から排気ガスを排出するエキゾーストマニホールドからなる。
【0016】
燃料タンク5は、エンジン2の燃料を貯留する中空の容器で構成されており、車両1の図示しない車体に固定されている。
【0017】
蒸発燃料処理装置20は、燃料タンク5内で発生した蒸発燃料(エバポガスとも呼ばれる)を吸着するキャニスタ6と、キャニスタ6とエンジン2の吸気通路3とを連通するパージ通路21と、パージ通路21に設けられたパージバルブ10と、を備えている。
【0018】
パージ通路21におけるパージバルブ10よりもキャニスタ6側の部位は、上流側パージ通路21Aを構成している。また、パージ通路21におけるパージバルブ10よりも吸気通路3側の部位は下流側パージ通路21Bを構成している。
【0019】
キャニスタ6の内部には、活性炭等からなる図示しない吸着剤が設けられており、キャニスタ6は、吸着剤に蒸発燃料を吸着させることにより、蒸発燃料を一時的に貯留する。
【0020】
蒸発燃料処理装置20は、吸気通路圧力検出部9を備えている。吸気通路圧力検出部9は、吸気通路3内の圧力を検出する圧力センサからなり、検出信号を吸気通路圧力としてECU7に送信する。
【0021】
蒸発燃料処理装置20は、パージ通路圧力検出部8を備えている。パージ通路圧力検出部8は、パージ通路21内の圧力を検出する圧力センサからなり、検出信号をパージ通路圧力としてECU7に送信する。
【0022】
パージ通路圧力検出部8は、パージ通路21内の上流側パージ通路21Aの圧力を検出する。パージ通路圧力である、パージ通路21内の上流側パージ通路21Aの圧力は、キャニスタ6の圧力と等しい。
【0023】
蒸発燃料処理装置20は、キャニスタ6と大気とを連通する大気通路23と、大気通路23に設けられた大気バルブ13と、を備えている。
【0024】
蒸発燃料処理装置20は、燃料タンク5とキャニスタ6とを連通するタンク通路22と、タンク通路22に設けられたタンクバルブ11と、を備えている。蒸発燃料処理装置20は、タンクバルブ11と燃料タンク5との間のタンク通路22にチェックバルブ12を備えている。チェックバルブ12は、ワンウェイバルブからなり、タンク通路22の圧力差が設定圧力を超えた場合に、燃料タンク5からキャニスタ6の方向にのみ蒸発燃料を流す。
【0025】
蒸発燃料処理装置20は、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)7を備えている。ECU7は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用データなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0026】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU7として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することによりこれらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECU7として機能する。
【0027】
ECU7の入力ポートには、前述の吸気通路圧力検出部9およびパージ通路圧力検出部8を含む各種センサ類が接続されている。
【0028】
ECU7の出力ポートは、パージバルブ10、大気バルブ13およびタンクバルブ11を含む各種制御対象類が接続されている。ECU7は、各種センサ類から得られる情報に基づいて各種制御対象類を制御する。なお、ECU7は、エンジン2も制御する。ECU7は、所定の燃料カット条件の成立時に、エンジン2への燃料噴射を中断する燃料カットを実施する。
【0029】
ECU7は、エンジン2の燃焼中にパージバルブ10を開弁する。これにより、キャニスタ6内の蒸発燃料が大気により置換され、キャニスタ6の蒸発燃料は吸気通路3に流出(パージ)され、エンジン2で燃焼される。このため、燃料タンク5で発生した蒸発燃料の大気への放出が防止される。一方、ECU7は、エンジン2の燃料カット中は、蒸発燃料をエンジン2によって燃料させることができないため、吸気通路3に蒸発燃料を流出させず、キャニスタ6に蒸発燃料を貯留させる。
【0030】
ここで、蒸発燃料は、圧力が低いほど多く吸着剤から離脱するという特性を有する。また、キャニスタ6が多くの蒸発燃料を吸着している状態では、キャニスタ6から吸気通路3へ蒸発燃料を流出させる制御(パージ制御)を行う前に、予めキャニスタ6内で蒸発燃料を吸着剤から離脱させておくことが好ましい。このようにすることで、パージ制御の実行時に、より多くの蒸発燃料をキャニスタ6から吸気通路3へ流出させることができ、パージ制御の終了後は、より多くの蒸発燃料をキャニスタ6に吸着させることができる。
【0031】
そこで、本実施例では、ECU7は、エンジン2の燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、パージバルブ10を開弁する。このように、パージ通路圧力(キャニスタ6の圧力と等しい)が吸気通路圧力よりも大きい場合、パージバルブ10が開弁されることにより、パージ通路圧力が吸気通路圧力と等しい圧力まで低下する。このため、キャニスタ6の圧力が低下し、キャニスタ6の吸着剤からの蒸発燃料の離脱が促される。
【0032】
ECU7は、燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力以下である場合、パージバルブ10を閉弁して大気バルブ13を閉弁する。このように、パージ通路圧力が吸気通路圧力以下である場合は、キャニスタ6の圧力の方が吸気通路圧力よりも小さいまたは同じであるため、パージバルブ10および大気バルブ13の双方を閉弁に維持することにより、キャニスタ6内の圧力を低い状態に維持することができる。
【0033】
ECU7は、燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、大気バルブ13を閉弁してパージバルブ10を開弁する。このように、大気バルブ13が閉弁された状態でパージバルブ10が開弁されることにより、キャニスタ6内の圧力が低下した状態に維持されるので、蒸発燃料の離脱を促すことができる。また、キャニスタ6内の蒸発燃料は大気によって置換されないため、キャニスタ6から吸気通路3に蒸発燃料が流出することを防止できる。
【0034】
ECU7は、燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、タンクバルブ11を閉弁してパージバルブ10を開弁する。このように、パージバルブ10を開弁時にタンクバルブ11を閉弁しておくことにより、燃料タンク5からキャニスタ6内に新たに蒸発燃料が流入することを防止でき、キャニスタ6の蒸発燃料の吸着量が増加することを防止できる。
【0035】
次に、図2および図3のフローチャートを参照して、本実施例に係る蒸発燃料処理装置において、ECU7により実行されるタンクバルブ11の開閉制動動作と、パージバルブ10および大気バルブ13の開閉制動動作とについて説明する。なお、前述の吸気通路圧力およびパージ通路圧力は、真空を基準とする絶対圧であるが、図2および図3では、パージ通路圧力のことをパージライン負圧と呼び、大気圧を基準とする負圧(相対圧)で表している。また、吸気通路圧力のことを、吸気通路負圧と呼び、大気圧を基準とする負圧(相対圧)で表している。
【0036】
図2を参照して、本実施例に係る蒸発燃料処理装置において、ECU7により実行されるタンクバルブ11の開閉制動動作について説明する。このタンクバルブ11の開閉制動動作は、エンジン2の燃料カット中に実施される。
【0037】
図2において、ECU7は、ステップS1で各種データの取り込みを行う。このステップS1では、ECU7は、パージ通路圧力および吸気通路圧力を含む各種データを取得する。
【0038】
次いで、ECU7は、ステップS2でパージライン負圧(パージ通路圧力を負圧で表した値)が第1設定値よりも小さいか否かを判別する。
【0039】
ECU7は、パージライン負圧が第1設定値よりも小さくない場合、ステップS3でタンクバルブ11を閉弁し、パージライン負圧が第1設定値よりも小さい場合、ステップS4でタンクバルブ11を開弁し、今回の動作を終了する。なお、パージライン負圧が第1設定値よりも小さくない場合とは、パージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合である。この場合、後述の図3において、ステップS15の判別がYESとなり、ステップS16によってパージバルブ10は開弁される。
【0040】
上記のステップS2において、第1設定値は、チェックバルブ12が開弁するときのチェックバルブ12の圧力差(開弁圧力)に基づいて設定されている。パージライン負圧が第1設定値よりも小さい場合は、タンクバルブ11が開弁されてもチェックバルブ12は閉弁を維持し、燃料タンク5からキャニスタ6に蒸発燃料が導入されることはない。パージライン負圧が第1設定値よりも小さくない場合は、パージライン負圧によってチェックバルブ12が開弁するため、燃料タンク5からキャニスタ6に蒸発燃料が導入されないようにするためにタンクバルブ11が閉弁される。
【0041】
図3を参照して、本実施例に係る蒸発燃料処理装置において、ECU7により実行されるパージバルブ10および大気バルブ13の開閉制動動作について説明する。
【0042】
図3において、ECU7は、ステップS11で各種データの取り込みを行う。このステップS11では、ECU7は、パージ通路圧力および吸気通路圧力を含む各種データを取得する。
【0043】
次いで、ECU7は、ステップS12でパージ実行条件成立経験フラグがtrueであるか否かを判別し、この判別がNOの場合は今回の動作を終了する。パージ実行条件成立経験フラグがtrueである場合とは、一度は通常のパージ制御が問題なく実行されたことを表す。通常のパージ制御とは、エンジン2の燃焼中にキャニスタ6の蒸発燃料を吸気通路3に流出させる制御をいう。
【0044】
ECU7は、パージ実行条件成立経験フラグがtrueである場合、ステップS13でパージ濃度が第4設定値より大きいか否かを判別し、この判別がNOである場合は今回の動作を終了する。パージ濃度とはキャニスタ6内の蒸発燃料の濃度の推定値または計測値である。第4設定値はパージ濃度の閾値である。パージ濃度が第4設定値以下の場合とは、キャニスタ6からの蒸発燃料の離脱が不要なほど、キャニスタ6内に吸着されている蒸発燃料の濃度が小さいことを意味する。
【0045】
ECU7は、パージ濃度が第4設定値より大きい場合、ステップS14で燃料カット実行フラグがtrueであるか否かを判別する。燃料カット実行フラグは、エンジン2の燃料カットが実行されているときにtrueに設定される。
【0046】
ECU7は、ステップS14の判別がYESの場合はステップS15でパージライン負圧(パージ通路圧力を負圧で表した値)が第2設定値より小さいか否かを判別する。第2設定値は、パージバルブ10の圧力損失等を考慮した上で、吸気通路負圧と概ね等しい値に設定されている。負圧(相対圧)の大小関係と絶対圧の大小関係とは不等号が反対となることから、パージライン負圧が第2設定値よりも小さい場合とは、パージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合である。
【0047】
ECU7は、パージライン負圧が第2設定値よりも小さい場合、ステップS16で大気バルブ13を閉弁し、パージバルブ10を開弁し、ステップS14に戻る。
【0048】
ECU7は、パージライン負圧が第1設定値よりも小さくない場合、ステップS17でパージバルブ10を閉弁し、ステップS14に戻る。なお、このステップS17では、大気バルブは閉弁に維持される。
【0049】
ECU7は、ステップS14の判別がNOの場合はステップS18でパージ実行条件のフラグがtrueであるか否かを判別する。パージ実行条件とは、環境温度、エンジン水温、エンジン負荷、車速の全てが所定の条件を満たしており、触媒暖気中ではなく、かつ、フィードバック制御が大きく外れていないことを条件にtrueに設定される。つまり、キャニスタ6から吸気通路3への蒸発燃料の放出に適した条件が成立した場合に、パージ実行条件がtrueに設定される。
【0050】
ECU7は、ステップS18の判別がYESの場合、ステップS19で大気バルブ13を開弁する。
【0051】
次いで、ECU7は、ステップS21でパージライン負圧が吸気通路負圧より小さいか否かの判別を繰り返し行う。
【0052】
ECU7は、パージライン負圧が吸気通路負圧より小さい場合、ステップS22でパージバルブ10を開弁し、今回の動作を終了する。
【0053】
ECU7は、ステップS18の判別がNOの場合、ステップS20でパージライン負圧が第3設定値以下であるか否かを判別する。第3設定値は、キャニスタ6において蒸発燃料の所定の遊離率を得ることができるようなパージライン負圧に設定されている。ECU7は、ステップS20の判別がYESの場合はステップS14に戻り、ステップS20の判別がNOの場合はステップS18に戻る。
【0054】
以上のように、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、吸気通路3内の圧力を吸気通路圧力として検出する吸気通路圧力検出部9と、パージ通路21内の圧力をパージ通路圧力として検出するパージ通路圧力検出部8と、を備えている。
【0055】
そして、ECU7は、エンジン2の燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、パージバルブ10を開弁する。
【0056】
これにより、エンジン2の燃料カットであってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、パージバルブ10が開弁されることにより、吸気通路圧力がキャニスタ6に作用し、キャニスタ6の内部の圧力が低下する。このため、キャニスタ6内の吸着剤からの蒸発燃料の離脱量を増やすことができる。
【0057】
また、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、キャニスタ6と大気とを連通する大気通路23と、大気通路23に設けられた大気バルブ13と、を備えている。そして、ECU7は、燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、大気バルブ13を閉弁してパージバルブ10を開弁する。
【0058】
これにより、エンジン2の燃料カットであってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、大気バルブ13が閉弁され、パージバルブ10が開弁されることにより、蒸発燃料がキャニスタ6からエンジン2に流出しないようにすることができる。
【0059】
また、本実施例の蒸発燃料処理装置20において、ECU7は、燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力以下である場合、パージバルブ10を閉弁して大気バルブ13を閉弁する。
【0060】
これにより、キャニスタ6内の圧力を低い状態に維持することができる。
【0061】
また、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、燃料タンク5とキャニスタ6とを連通するタンク通路22と、タンク通路22に設けられたタンクバルブ11と、を備えている。そして、ECU7は、燃料カット中であってパージ通路圧力が吸気通路圧力よりも大きい場合、タンクバルブ11を閉弁してパージバルブ10を開弁する。
【0062】
これにより、蒸発燃料が燃料タンク5からキャニスタ6に新たに流入することを防止できる。このため、キャニスタ6の蒸発燃料の吸着量が増加することを防止できる。
【0063】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0064】
2 エンジン
3 吸気通路
5 燃料タンク
6 キャニスタ
7 ECU(制御部)
8 パージ通路圧力検出部
9 吸気通路圧力検出部
10 パージバルブ
11 タンクバルブ
13 大気バルブ
20 蒸発燃料処理装置
21 パージ通路
22 タンク通路
23 大気通路
図1
図2
図3