(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20241029BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20241029BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241029BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
F16H57/023
F16H1/06
H02K7/116
H02K9/19 Z
(21)【出願番号】P 2021040269
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祥平
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202963(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/208642(WO,A1)
【文献】特開2019-094933(JP,A)
【文献】米国特許第5295413(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
F16H 1/06
H02K 7/116
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる第1回転軸を中心として回転可能なモータシャフトを有するロータと、前記ロータよりも径方向外方に配置されるステータと、を有するモータ部と、
前記モータ部の軸方向一方端部に位置するギヤ部と、
前記モータ部及び前記ギヤ部を収容するハウジングと、
を備え、
前記ギヤ部は、
前記モータシャフトに接続される第1シャフトと、
前記第1シャフトの径方向外側面に位置する第1ギヤと、
軸方向に延びる第2回転軸に沿って延びる第2シャフトと、
前記第
2シャフトの径方向外側面に位置し、
前記第2回転軸を中心にして回転可能な第2ギヤ及び第3ギヤと、
軸方向に延びる第3回転軸を中心にして回転可能な第4ギヤと、
を有し、
前記第2ギヤは、前記第3ギヤよりも軸方向他方側に配置されて、前記第1ギヤと噛み合い、
前記第3ギヤは、前記第4ギヤと噛み合い、
前記第2ギヤのピッチ円直径は、
前記第3ギヤのピッチ円直径よりも大きく、
前記第3回転軸は、前記第1回転軸よりも
軸方向と垂直な第1方向の一方側に配置され、
前記ハウジングは、
軸方向に延びる筒状であって前記モータ部を収容するモータハウジングと、
軸方向に延びる筒状であって前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、
前記モータハウジングと前記ギヤハウジングとを区画する隔壁と、
前記ステータと電気的に接続されるインバータユニットを収容するインバータハウジングと、
を有し、
前記第4ギヤは、前記インバータハウジングよりも軸方向一方側に配置され、
前記第1回転軸は、前記インバータハウジングよりも前記第1方向の他方側に配置され、
前記第3回転軸は、前記インバータハウジングよりも軸方向及び前記第1方向と垂直な第2方向の一方側に配置され、
前記隔壁は、
軸方向と交差する方向に広がって前記モータハウジングの軸方向一方端部を覆う第1隔壁と、
軸方向と交差する方向に広がって前記第1隔壁よりも前記第1方向の一方側に配置され、前記第1隔壁とともに前記ギヤハウジングの軸方向他方端部を覆う第2隔壁と、
を有し、
前記第2隔壁は、前記第1隔壁よりも軸方向一方側に配置される、駆動装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記モータハウジング、前記ギヤハウジング、及び前記インバータハウジング
を含むハウジング本体と、
前記ハウジング本体の軸方向一方側に位置する第1蓋部と、
前記ハウジング本体の軸方向他方側に位置する第2蓋部と、
前記ハウジング本体の前記第2方向の他方側に位置する第3蓋部と、
を有し、
前記モータハウジング、前記ギヤハウジング、及び、前記インバータハウジングはそれぞれ、一体である、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第2回転軸は、前記第1回転軸よりも前記第2方向の一方側に配置される、請求項1又は請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第2方向において、前記第3回転軸は、前記第1回転軸及び前記第2回転軸間に配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記インバータハウジングは、
前記モータハウジングの外側面から前記第1方向の一方に延びる底板と、
前記底板の前記第2方向から見た外縁部から前記第2方向の他方に突出して、前記第2方向から見て前記底板を囲む周壁と、
を有し、
前記周壁の軸方向一方側の部分は、前記第2隔壁の前記第2方向の他方端部を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記底板は、前記第2シャフトよりも前記第2方向の他方側に配置される、請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第2隔壁の少なくとも一部は、前記第2ギヤよりも軸方向一方側に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第4ギヤのピッチ円直径は、前記第2ギヤのピッチ円直径よりも大きい、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ギヤ部は、ドライブシャフトと、差動装置と、を有し、
前記ドライブシャフトは、前記差動装置から軸方向に延び、
前記第4ギヤは、前記差動装置のリングギヤであり、
前記差動装置は、前記第4ギヤのトルクを前記ドライブシャフトに伝達し、
前記ドライブシャフトは、前記インバータハウジングよりも前記第2方向の一方側に位置する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第4ギヤは、前記第4ギヤの径方向外端部に配置されて周方向に並ぶ複数の歯を有し、
軸方向において、前記第4ギヤの前記歯の軸方向他方端部と前記差動装置の軸方向他方端部との間隔は、前記歯の軸方向一方端部と前記差動装置の軸方向一方端部との間隔よりも広い、請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第2隔壁は、軸方向他方に凹んで前記差動装置の一部を収容する差動装置収容部を有する、請求項9又は請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記差動装置収容部の少なくとも一部は、前記インバータハウジングよりも前記第2方向の一方側に位置する、請求項11に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記第1方向から見て、前記第2ギヤの少なくとも一部は、前記差動装置と重なる、請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのトルクを所定の減速比で減速してドライブシャフトに伝達する駆動装置が知られている。たとえば、駆動装置は、モータと、モータと連動するトランスミッションと、コントローラとが一体的に構成される。(たとえば国際公開公報2019/154155号参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、駆動装置をよりコンパクトに配置することが求められている。たとえば、駆動装置を電動車両のより後方に配置する場合、駆動装置の鉛直方向におけるサイズをより小さくすることが求められる。このような需要に対して、上述の駆動装置では、コントローラがトランスミッションの上部に配置されるので、駆動装置の鉛直方向におけるサイズを小さくし難い。
【0005】
本発明は、駆動装置をよりコンパクトに配置できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な駆動装置は、モータ部と、ギヤ部と、ハウジングと、を備える。前記モータ部は、ロータと、ステータと、を有する。前記ロータは、モータシャフトを有する。前記モータシャフトは、軸方向に延びる第1回転軸を中心として回転可能である。前記ステータは、前記ロータよりも径方向外方に配置される。前記ギヤ部は、前記モータ部の軸方向一方端部に位置する。前記ハウジングは、前記モータ部及び前記ギヤ部を収容する。前記ギヤ部は、第1シャフトと、第1ギヤと、第2シャフトと、第2ギヤと、第3ギヤと、第4ギヤと、を有する。前記第1シャフトは、前記モータシャフトに接続される。前記第1ギヤは、前記第1シャフトの径方向外側面に位置する。第2シャフトは、軸方向に延びる第2回転軸に沿って延びる。前記第2ギヤ及び前記第3ギヤは、前記第2シャフトの径方向外側面に位置し、前記第2回転軸を中心にして回転可能である。前記第4ギヤは、軸方向に延びる第3回転軸を中心にして回転可能である。前記第2ギヤは、前記第3ギヤよりも軸方向他方側に配置されて、前記第1ギヤと噛み合う。前記第3ギヤは、前記第4ギヤと噛み合う。、前記第2ギヤのピッチ円直径は、、前記第3ギヤのピッチ円直径よりも大きい。前記第3回転軸は、前記第1回転軸よりも軸方向と垂直な第1方向の一方側に配置される。前記ハウジングは、モータハウジングと、ギヤハウジングと、隔壁と、インバータハウジングと、を有する。前記モータハウジングは、軸方向に延びる筒状であって前記モータ部を収容する。前記ギヤハウジングは、軸方向に延びる筒状であって前記ギヤ部を収容する。前記隔壁は、前記モータハウジングと前記ギヤハウジングとを区画する。前記インバータハウジングは、前記ステータと電気的に接続されるインバータユニットを収容する。前記第4ギヤは、前記インバータハウジングよりも軸方向一方側に配置される。前記第1回転軸は、前記インバータハウジングよりも前記第1方向の他方側に配置される。前記第3回転軸は、前記インバータハウジングよりも軸方向及び前記第1方向と垂直な第2方向の一方側に配置される。前記隔壁は、第1隔壁と、第2隔壁と、を有する。前記第1隔壁は、軸方向と交差する方向に広がって前記モータハウジングの軸方向一方端部を覆う。前記第2隔壁は、軸方向と交差する方向に広がって、前記第1隔壁よりも前記第1方向の一方側に配置され、前記第1隔壁とともに前記ギヤハウジングの軸方向他方端部を覆う。前記第2隔壁は、前記第1隔壁よりも軸方向一方側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的な駆動装置によれば、駆動装置をよりコンパクトに配置できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、駆動装置をZ軸方向から見た概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、駆動装置をX軸方向から見た概略的な構成図である。
【
図3】
図3は、駆動装置を有する車両の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0010】
以下の説明では、駆動装置100が水平な路面上に位置する車両200に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示す。+Z方向が上方(重力方向とは向きが反対の鉛直上方)であり、-Z方向が下方(重力方向と同じ向きの鉛直下方)である。なお、以下の説明における「Z軸方向」は、本発明の「第2方向」の一例である。また、「-Z方向」は本発明の「第2方向の一方」の一例であり、「+Z方向」は本発明の「第2方向の他方」の一例である。
【0011】
また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置100が搭載される車両200の前後方向を示す。+X方向が車両200の前方であり、-X方向が車両200の後方である。ただし、+X方向が車両200の後方であり、-X方向が車両200の前方となることもありうる。なお、以下の説明における「X軸方向」は、本発明の「第1方向」の一例である。また、「+X方向」は本発明の「第1方向の一方」の一例であり、「-X方向」は本発明の「第1方向の他方」の一例である。
【0012】
Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両200の幅方向(左右方向)を示す。-Y方向が車両200の左方であり、+Y方向が車両200の右方である。但し、+X方向が車両200の後方となる場合には、+Y方向が車両200の左方となり、-Y方向が車両200の右方となることもありうる。すなわち、X軸方向に関わらず、単に+Y方向が車両200の左右方向の一方側となり、-Y方向が車両200の左右方向の他方側となる。また、駆動装置100の車両200への搭載方法によっては、X軸方向が車両200の幅方向(左右方向)で、Y軸方向が車両200の前後方向になることもありうる。下記の実施形態では、Y軸方向は、たとえばモータ部1の回転軸J1などと平行である。なお、以下の説明における「Y軸方向」は、本発明の「軸方向」の一例である。また、「+Y方向」は本発明の「軸方向一方」の一例であり、「-Y方向」は本発明の「軸方向他方」の一例である。
【0013】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ部1の回転軸J1などの所定の軸に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶことがある。また、所定の軸と直交する方向を単に「径方向」と呼び、所定の軸を中心とする周方向を「周方向」と呼ぶ。径方向のうち、軸へと近づく向きを「径方向内方」と呼び、軸から離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。各々の構成要素において、径方向内方における端部を「径方向内端部」と呼ぶ。さらに、外方における端部を「径方向外端部」と呼ぶ。また、各々の構成要素の側面において、径方向内方を向く側面を「径方向内側面」と呼び、径方向外方を向く側面を「径方向外側面」と呼ぶ。
【0014】
なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。
【0015】
また、以下の説明では、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0016】
<1.駆動装置100>
図1は、駆動装置100をZ軸方向から見た概略的な構成図である。
図2は、駆動装置100をX軸方向から見た概略的な構成図である。
図3は、駆動装置100を有する車両200の一例を示す概略図である。なお、
図1及び
図2は、あくまで概念図であり、各部の配置及び寸法は、実際の駆動装置100と同じであるとは限らない。
【0017】
駆動装置100は、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、少なくともモータを動力源とする車両200に搭載される(
図3参照)。駆動装置100は、上記の車両200の動力源として使用される。車両200は、駆動装置100と、バッテリー150と、を有する。バッテリー150は、駆動装置100に供給するための電力を蓄積する。駆動装置100は、車両200の例であれば、左右の前輪を駆動する。なお、駆動装置100は、少なくともいずれかの車輪を駆動すればよい。
【0018】
駆動装置100は、出力シャフト10を備える。出力シャフト10は、Y軸方向に延びる回転軸J1に沿って延びて、回転軸J1を中心として回転可能である。出力シャフト10は、モータシャフト111と、第1シャフト214と、で構成される。また、駆動装置100は、モータ部1と、ギヤ部2と、ハウジング3と、を備える。モータ部1は、ロータ11と、ステータ12と、を有する。ロータ11は、モータシャフト111を有する。モータシャフト111は、Y軸方向に延びる回転軸J1を中心として回転可能である。なお、回転軸J1は本発明の「第1回転軸」の一例である。ステータ12は、ロータ11よりも径方向外方に配置される。ギヤ部2は、モータ部1の+Y方向側の端部に位置する。ハウジング3は、モータ部1及びギヤ部2を収容する。
【0019】
また、駆動装置100は、インバータユニット6と、ポンプ7と、オイルクーラー8と、をさらに備える。インバータユニット6は、モータ部1に駆動電力を供給する。ポンプ7は、ハウジング3内に収容されるオイルCLをモータ部1に供給する。オイルクーラー8は、オイルCLを冷却する。オイルクーラー8は、オイルCLを冷却する。
【0020】
また、ハウジング3の内部には、モータ部1、ギヤ部2、ポンプ7、及びインバータユニット6を収容する収容空間が設けられる。この収容空間は、モータ収容部301と、ギヤ収容部302と、インバータ収容部303と、に区画される。言い換えると、ハウジング3は、モータ収容部301と、ギヤ収容部302と、インバータ収容部303と、を有する。モータ収容部301は、モータ部1を収容する。ギヤ収容部302は、ギヤ部2を収容する。ギヤ収容部302の鉛直方向下部には、オイルCLが溜まるオイル溜りPがある。モータ収容部301及びギヤ収容部302は、後述する隔壁313により区画される。インバータ収容部303は、インバータユニット6を収容する。
【0021】
<1-1.モータ部1>
次に、
図1から
図2を参照して、モータ部1を説明する。
【0022】
<1-1-1.ロータ11>
ロータ11は、バッテリー(図示省略)からステータ12に電力が供給されることで、水平方向に延びる回転軸J1を中心として回転する。本実施形態では、回転軸J1は、インバータハウジング314よりも-X方向側に配置される。
【0023】
前述の如く、ロータ11は、モータシャフト111を有する。モータシャフト111は、回転軸J1に沿って延びる。モータシャフト111の+Y方向側の端部には、後述する中空の第1シャフト214が挿通されて接続される。本実施形態では、両者は、スプライン嵌合される。但し、本実施形態の例示に限定されず、両者は、雄ねじ及び雌ねじを用いたねじカップリングにより接続されてもよいし、溶接などの固定方法にて接合されてもよい。
【0024】
モータシャフト111は、筒状の中空シャフトである。モータシャフト111は、シャフト筒部1111と、中空部1112と、シャフト孔部1113と、を有する。シャフト筒部1111は、Y軸方向に延びる筒状である。中空部1112は、シャフト筒部1111の+Y方向側の端部にて第1シャフト214の後述する中空部2142と連通し、中空部2142を介して後述するギヤ側油路325に繋がる。シャフト孔部1113は、シャフト筒部1111を径方向に貫通する。
【0025】
ロータ11は、ロータコア112と、マグネット113と、をさらに有する。ロータコア112は、Y軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア112は、モータシャフト111の径方向外側面に固定される。ロータコア112の径方向外端部には、複数のマグネット113が固定される。複数のマグネット113は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0026】
ロータコア112は、ロータ貫通孔1121と、ロータ連通部1122と、を有する。ロータ貫通孔1121は、ロータコア112をY軸方向に貫通し、シャフト孔部1113と接続される。ロータ貫通孔1121は、中空部1112及び中空部2142を介してギヤ側油路325に接続される。ロータ連通部1122は、ロータコア112の径方向内側面からロータ貫通孔1121に貫通する空間であり、ロータ貫通孔1121とシャフト孔部1113とを接続する。ロータ貫通孔1121は、ロータ11を内部から冷却するオイルCLの流路として利用される。モータシャフト111の中空部1112を流通するオイルCLは、後述するように、シャフト孔部1113及びロータ連通部1122を経由してロータ貫通孔1121に流入できる。こうすれば、ロータ11が回転する際、オイルCLが、ロータ貫通孔1121のY軸方向における両側の端部から流出する。このオイルCLは、ロータ11の回転による遠心力によってステータ12のY軸方向における端部に供給され、特にステータ12のY軸方向における端部に配置される後述のコイルエンド1221に供給される。このオイルCLにより、ステータ12のY軸方向における端部を冷却することができ、特にステータ12のコイルエンド1221を冷却できる。
【0027】
<1-1-2.ステータ12>
ステータ12は、ロータ11を径方向外方から囲み、ロータ11を回転駆動する。ステータ12は、ハウジング3に保持される。前述の如く、ステータ12は、ロータ11よりも径方向外方に配置される。すなわち、モータ部1は、ステータ12の内側にロータ11が回転可能に配置されたインナーロータ型モータである。
【0028】
ステータ12は、ステータコア121と、コイル122と、ステータコア121及びコイル122間に配置されるインシュレータ(図示省略)と、を有する。ステータコア121は、径方向内方側に複数の磁極歯(図示省略)を有する。磁極歯の間には、コイル線が掛けまわされる。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル122を構成する。コイル線は、バスバー(図示省略)を介してインバータユニット6に接続される。コイル122は、ステータコア121のY軸方向における端面から突出するコイルエンド1221を有する。コイルエンド1221は、Y軸方向において、ロータ11のロータコア112の端部よりも外側に突出する。
【0029】
<1-2.ギヤ部2>
次に、
図1から
図2を参照して、ギヤ部2を説明する。ギヤ部2は、モータ部1の駆動力を車両200の車輪を駆動するドライブシャフトDsに伝達する。ギヤ部2は、減速装置21と、差動装置22と、を有する。
【0030】
<1-2-1.減速装置21>
減速装置21は、モータシャフト111の+Y方向側の端部に接続される。減速装置21は、モータ部1の回転速度を減じ、モータ部1から出力されるトルクを減速比に応じて増大させ、そのトルクを差動装置22へ伝達する。
【0031】
減速装置21は、第1ギヤ(中間ドライブギヤ)211と、第2ギヤ(中間ギヤ)212と、第3ギヤ(ファイルナルドライブギヤ)213と、第1シャフト214と、第2シャフト215と、を有する。言い換えると、ギヤ部2は、第1シャフト214と、第1ギヤ211と、第2シャフト215と、第2ギヤ212と、第3ギヤ213と、を有する。第1シャフト214は、モータシャフト111に接続される。第1ギヤ211は、第1シャフト214の径方向外側面に位置する。第2シャフト215は、中間軸J2に沿って延びる。なお、中間軸J2は、本発明の「第2回転軸」の一例であり、Y軸方向に延びる。第2ギヤ212及び第3ギヤ213は、第2シャフト215の径方向外側面に位置し、中間軸J2を中心にして回転可能である。
【0032】
モータ部1から出力されるトルクは、モータシャフト111、第1シャフト214、第1ギヤ211、第2ギヤ212、第2シャフト215、及び第3ギヤ213を介して差動装置22の後述する第4ギヤ221へ伝達される。このようにして、減速装置21は、モータ部1から出力されたトルクを、差動装置22に伝達する。各ギヤのギヤ比及びギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置21は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0033】
第1シャフト214は、回転軸J1を中心としてY軸方向に延び、モータシャフト111とともに回転軸J1を中心として回転する。第1シャフト214は、筒状の中空シャフトである。第1シャフト214は、シャフト筒部2141と、中空部2142と、を有する。シャフト筒部2141は、Y軸方向に延びる筒状である。中空部2142は、シャフト筒部2141の内側面に囲まれて、シャフト筒部2141の+Y方向側の端部にて後述するギヤ側油路325と繋がる。シャフト筒部2141の-Y方向側の端部は、モータシャフト111の+Y方向側の端部に接続される。
【0034】
なお、本実施形態の例示に限定されず、第1シャフト214は、モータシャフト111と同じ部材であってもよく、つまり一体であってもよい。言い換えると、出力シャフト10は、単一の中空シャフトであって、モータ収容部301とギヤ収容部302とを跨いで延びてもよい。この場合、出力シャフト10の+Y方向側の端部は、ギヤ収容部302側に突出し、第2ギヤベアリング3211を介して第2ギヤベアリング保持部321により回転可能に支持される。また、出力シャフト10の内部は、第2モータベアリング保持部331と第2ギヤベアリング保持部321とに連通する。
【0035】
第1ギヤ211は、第1シャフト214の径方向外側面に配置される。第1ギヤ211は、第1シャフト214とともに、回転軸J1を中心に回転可能である。第1ギヤ211は、第1シャフト214と一体の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。第1ギヤ211が第1シャフト214とは別の部材である場合には、第1ギヤ211及び第1シャフト214は、焼き嵌めなどにて強固に固定される。
【0036】
第2ギヤ212及び第3ギヤ213は、第2シャフト215を介して接続される。第2ギヤ212及び第3ギヤ213は、中間軸J2を中心として回転可能である。第2ギヤ212は、第3ギヤ213よりも-Y方向側に配置されて、第1ギヤ211と噛み合う。第3ギヤ213は、後述する第4ギヤ221と噛み合う。第2ギヤ212のピッチ円直径は、第3ギヤ213のピッチ円直径よりも大きい。第2ギヤ212及び第3ギヤ213はそれぞれ、第2シャフト215と一体の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。第2ギヤ212及び第3ギヤ213の少なくともどちらかと第2シャフト215が別の部材である場合には、両者は、焼き嵌めなどにて強固に固定される。
【0037】
第2シャフト215は、中間軸J2に沿って延びる。中間軸J2は、回転軸J1と平行であり、Y軸方向に延びる。第2シャフト215の-Y方向側の端部は、ハウジング3の隔壁313にて回転可能に支持される。第2シャフト215の+Y方向側の端部は、第1蓋部32にて回転可能に支持される。
【0038】
中間軸J2は、回転軸J1よりも-Z方向側に配置される。さらに、中間軸J2は、後述する差動軸J3よりも-Z方向側に配置される。こうすれば、中間軸J2を中心にして回転可能な第2ギヤ212をより-Z方向側に配置できるので、Z軸方向において第2ギヤ212がインバータハウジング314の配置の妨げとなることを防止できる。従って、インバータハウジング314をより-Z方向側に配置できる。よって、Z軸方向における駆動装置100のサイズをより小さくして、駆動装置100をよりコンパクトにできる。
【0039】
さらに、中間軸J2を上述のように配置することにより、X軸方向において差動軸J3をより回転軸J1に近づけることができる。従って、駆動装置100のX軸方向におけるサイズを低減できる。
【0040】
また、中間軸J2は、インバータハウジング314よりもY軸方向及びX軸方向と垂直な-Z方向側に配置される。なお、-Z方向は、Z軸方向の一方であり、Y軸方向及びX軸方向と垂直である。第2シャフト215の中間軸J2が、出力シャフト10の回転軸J1及び第4ギヤ221の差動軸J3の両方よりも-Z方向側に配置されるので、X軸方向において、出力シャフト10及び第4ギヤ221間の間隔をより短くすることができる。従って、ギヤ部2を収容するギヤ収容部302をX軸方向においてよりコンパクトにすることができる。従って、駆動装置100を小型化することができる。
【0041】
<1-2-2.差動装置22>
差動装置22は、ドライブシャフトDsに取り付けられる。ギヤ部2は、ドライブシャフトDsと、差動装置22と、を有する。ドライブシャフトDsは、差動装置22からY軸方向に延びる。差動装置22は、モータ部1のトルクをドライブシャフトDsに伝達する。ドライブシャフトDsは、差動装置22の+Y方向側と-Y方向側のそれぞれに配置される。各々のドライブシャフトDsには、車両200の左右の車輪が取り付けられる。差動装置22は、たとえば、車両200の旋回時に、左右の車輪(ドライブシャフトDs)の回転速度差を吸収しつつ、左右のドライブシャフトDsにトルクを伝達する。
【0042】
ドライブシャフトDsは、インバータハウジング314よりも-Z方向側に位置する。こうすれば、Z軸方向において、ドライブシャフトDsがインバータハウジング314の配置を妨げないようにできる。
【0043】
差動装置22は、第4ギヤ221と、差動装置ケース222と、一対のピニオンギヤ(図示省略)と、ピニオンシャフト(図示省略)と、一対のサイドギヤ(図示省略)と、を有する。
【0044】
第4ギヤ221は、差動装置22のリングギヤである。第4ギヤ221は、複数の歯2211を有する。複数の歯2211は、第4ギヤ221の径方向外端部に配置されて、周方向に並ぶ。歯2211は、第3ギヤ213の歯と噛み合う。歯2211は、差動装置22の+Y方向側の端部よりも-Y方向に位置するとともに、差動装置22の-Y方向側の端部よりも+Y方向に位置する。Y軸方向において、第4ギヤ221の歯2211の-Y方向側の端部と差動装置22の-Y方向側の端部との間隔は、歯2211の+Y方向側の端部と差動装置22の+Y方向側の端部との間隔よりも広い。こうすれば、第4ギヤ221に対して差動装置22を-Y方向側(つまりY軸方向における第1蓋部32とは反対側)に寄せて配置することができる。従って、第4ギヤ221よりも+Y方向側において差動装置22が占めるスペースをより小さくできる。よって、駆動装置100のY軸方向におけるサイズをより小さくすることができる。
【0045】
好ましくは、X軸方向から見て、第2ギヤ212の少なくとも一部は、差動装置22と重なる。こうすれば、差動装置22の-Y方向側を第2ギヤ212の下部に配置できるので、差動装置22をさらに-Y方向に寄せて配置できる。従って、駆動装置100のY軸方向におけるサイズをより小さくできる。
【0046】
第4ギヤ221は、インバータハウジング314よりも+Y方向側に配置される。ギヤ部2は、第4ギヤ221を有する。第4ギヤ221は、Y軸方向に延びる差動軸J3を中心にして回転可能である。なお、差動軸J3は、本発明の「第3回転軸」の一例である。差動軸J3は、回転軸J1よりもY軸方向と垂直なX軸方向の一方(本実施形態では+X方向)側に配置される。第4ギヤ221には、モータ部1から出力されるトルクが減速装置21を介して伝えられる。差動装置22は、第4ギヤ221のトルクをドライブシャフトDsに伝達する。
【0047】
また、第4ギヤ221の下部(つまり-Z方向側の部分)は、ギヤ収容部302内の下部のオイル溜りPに浸かる。たとえば、オイルCLは、差動装置22の第4ギヤ221が回転するときに、第4ギヤ221の歯面によって掻きあげられる。そのオイルの一部は、ギヤ収容部302の内部に供給され、ギヤ収容部302内の減速装置21及び差動装置22の各々のギヤ、ベアリングの潤滑に利用される。また、掻き揚げられたオイルCLの他の一部は、後述する受け皿部324に溜められた後、後述するギヤ側油路325及び第1シャフト214の中空部2142を通じてモータシャフト111の中空部1112に供給され、ステータ12の冷却に利用される。
【0048】
第4ギヤ221のピッチ円直径は、第2ギヤ212のピッチ円直径よりも大きい。こうすれば、第4ギヤ221のピッチ円直径をより大きくすることができるので、モータ部1から第1ギヤ211、第2ギヤ212、及び第3ギヤ213を介して第4ギヤ221に伝達されるトルクの減速比をより大きくすることができる。また、ギヤ収容部302の下部にオイルCLが溜まる場合、第4ギヤ221の下部がオイルCLに浸かるように第4ギヤ221を配置し易い。この配置により、第4ギヤ221の回転によって第4ギヤ221の歯面でオイルCLを掻き揚げ易くなる。
【0049】
Z軸方向において、差動軸J3は、回転軸J1及び中間軸J2間に配置される。差動軸J3を回転軸J1よりも-Z方向側且つ中間軸J2よりも+Z方向側に配置することにより、差動軸J3が回転軸J1よりも+Z方向側又は中間軸J2よりも-Z方向側に配置される構成と比べて、駆動装置100のZ軸方向におけるサイズをより小さくできる。特に、差動軸J3を中心に回転可能な第4ギヤ221からトルクが伝達されるドライブシャフトDsがZ軸方向においてインバータハウジング314の配置の妨げとなることを防止できる。従って、インバータハウジング314をより-Z方向側に配置でき、駆動装置100のZ軸方向におけるサイズをより小さくできる。よって、さらに駆動装置100をコンパクトにできる。
【0050】
差動装置22の+Y方向側のサイドギヤには、+Y方向側のドライブシャフトDsが取り付けられる。差動装置22の-Y方向側のサイドギヤには、-Y方向側のドライブシャフトDsが取り付けられる。これらのドライブシャフトDsはそれぞれ、異なるベアリング(図示省略)により回転可能に支持される。これらのベアリングは、差動装置ケース222に保持される。第4ギヤ221は、差動装置ケース222、ピニオンギヤ、およびサイドギヤを介して上述のベアリングに支持される。
【0051】
<1-3.ハウジング3>
次に、
図1から
図2及び
図4から
図5を参照して、ハウジング3の構成を説明する。
図4は、ハウジング3の斜視図である。
図5は、ハウジング3の分解斜視図である。
【0052】
ハウジング3は、ハウジング本体31と、第1蓋部32と、第2蓋部33と、第3蓋部34と、を有する。ハウジング本体31は、後述するモータハウジング311、ギヤハウジング312、及びインバータハウジング314を含む。第1蓋部32は、ハウジング本体31の+Y方向側に位置する。第2蓋部33は、ハウジング本体31の-Y方向側に位置する。第3蓋部34は、ハウジング本体31の+Z方向側に位置する。
【0053】
<1-3-1.ハウジング本体31>
ハウジング本体31は、モータハウジング311と、ギヤハウジング312と、隔壁313と、インバータハウジング314と、を有する。言い換えると、ハウジング3は、モータハウジング311と、ギヤハウジング312と、を有する。モータハウジング311は、Y軸方向に延びる筒状であって、モータ部1を収容する。ギヤハウジング312は、Y軸方向に延びる筒状であって、ギヤ部2を収容する。ギヤハウジング312は、モータハウジング311よりも+Y方向側に配置される。さらに、ハウジング3は、隔壁313と、インバータハウジング314と、を有する。隔壁313は、モータハウジング311とギヤハウジング312とを区画する。インバータハウジング314は、ステータ12と電気的に接続されるインバータユニット6を収容する。
【0054】
本実施形態では、モータハウジング311、ギヤハウジング312、及び隔壁313は、一体である。さらに、インバータハウジング314も、これらと一体である。これらを同一の部材のそれぞれ異なる一部とすることにより、ハウジング3の構成要素の数を低減できる。従って、駆動装置100の生産性を向上できる。但し、この例示に限定されず、モータハウジング311、隔壁313、ギヤハウジング312、及びインバータハウジング314のうちの一部は、他の一部とは別の部材であってもよい。
【0055】
<1-3-1-1.隔壁313>
隔壁313は、モータハウジング311の+Y方向側の端部を覆うとともに、モータハウジング311の-Y方向側の端部を覆う。隔壁313は、第1隔壁4と、第2隔壁5と、を有する。第1隔壁4は、Y軸方向と交差する方向に広がって、モータハウジング311の+Y軸方向側の端部を覆う。第2隔壁5は、Y軸方向と交差する方向に広がって、第1隔壁4よりも+X方向側に配置され、第1隔壁4とともにギヤハウジング312の-Y方向側の端部を覆う。第2隔壁5は、第1隔壁4よりも+Y方向側に配置される。
【0056】
第2隔壁5を第1隔壁4よりも+Y方向側に配置することにより、第2隔壁5よりも-Y方向側にインバータハウジング314を配置する空間を容易に確保できる。従って、X軸方向においてインバータハウジング314をより差動軸J3に近づけて配置することができる。よって、駆動装置100のX軸方向におけるサイズをより小さくすることができるので、駆動装置100をよりコンパクトに配置することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、前述の如く、ピッチ円半径が第3ギヤ213よりも大きい第2ギヤ212は、第3ギヤ213よりも-Y方向側に配置される。そのため、第3ギヤ213と噛み合う第4ギヤ221をより+Y方向側に配置できる。そのため、後述する第2隔壁5をさらに+Y方向側に配置できる。従って、Z方向においてインバータハウジング314をより差動軸J3にさらに近づけて配置できる。よって、駆動装置100のX軸方向におけるサイズをより小さくして、駆動装置100をさらにコンパクトに配置できる。
【0058】
好ましくは、第2隔壁5の少なくとも一部は、第2ギヤ212よりも+Y方向側に配置される。こうすれば、第2隔壁5よりも-Y方向側にインバータハウジング314を配置するためのより広い空間を確保できる。但し、この例示は、第2隔壁5が、第2ギヤ212よりも+Y方向側に配置されない構成を排除しない。
【0059】
第1隔壁4は、挿通孔41と、第1モータベアリング保持部42と、第1ギヤベアリング保持部43と、第1中間ベアリング保持部44と、隔壁開口45と、を有する。
【0060】
挿通孔41は、第1隔壁4をY軸方向に貫通する。挿通孔41の中心は、回転軸J1と一致する。挿通孔41の-Y方向側には、第1モータベアリング保持部42が配置される。挿通孔41の+Y方向側には、第1ギヤベアリング保持部43が配置される。第1モータベアリング保持部42及び第1ギヤベアリング保持部43は、挿通孔41を通じて繋がる。
【0061】
第1モータベアリング保持部42は、Y軸方向から見た挿通孔41の-Y方向側の外縁部から-Y方向に延びる。第1モータベアリング保持部42の中心軸は、回転軸J1と一致する。第1モータベアリング保持部42は、第1モータベアリング421を保持し、第1モータベアリング421を介してモータシャフト111の+Y方向側の端部を回転可能に支持する。第1モータベアリング421は、本実施形態では、ボールベアリングである。第1モータベアリング保持部42には、第1モータベアリング421外輪が固定される。第1モータベアリング421の内輪は、モータシャフト111の+Y方向側の端部の径方向外側面に固定される。
【0062】
第1ギヤベアリング保持部43は、Y軸方向から見た挿通孔41の+Y方向側の外縁部から+Y方向に延びる。第1ギヤベアリング保持部43の中心軸は、回転軸J1と一致する。第1ギヤベアリング保持部43は、第1ギヤベアリング431を保持し、第1ギヤベアリング431を介して第1シャフト214の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。第1ギヤベアリング431は、本実施形態では、ボールベアリングである。第1ギヤベアリング保持部43には、第1ギヤベアリング431の外輪が固定される。第1ギヤベアリング431の内輪は、第1シャフト214の-Y方向側の端部の径方向外側面に固定される。
【0063】
第1中間ベアリング保持部44は、第1隔壁4の+Y方向側に配置される。第1中間ベアリング保持部44の中心軸は、中間軸J2と一致する。第1中間ベアリング保持部44は、回転軸J1及び差動軸J3よりも-Z方向側に配置される。第1中間ベアリング保持部44は、第1中間ベアリング441を保持し、第1中間ベアリング441を介して第2シャフト215の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。第1中間ベアリング441は、本実施形態では、ボールベアリングである。第1中間ベアリング保持部44には、第1中間ベアリング441の外輪が固定される。また、第1中間ベアリング441の内輪は、第2シャフト215の-Y方向側の端部の径方向外側面に固定される。
【0064】
隔壁開口45は、第1隔壁4の鉛直方向下部(つまり-Z方向側)に配置される。隔壁開口45は、第1隔壁4をY軸方向に貫通し、モータ収容部301とギヤ収容部302とを接続し、特にこれらの鉛直方向下部同士を連通させる。隔壁開口45は、モータ収容部301内の下部に溜ったオイルCLをギヤ収容部302に移動可能にする。ギヤ収容部302に移動したオイルCLは、オイル溜りPに流入できる。
【0065】
次に、第2隔壁5は、第1ドライブシャフト通過孔51を有する。第1ドライブシャフト通過孔51は、第2隔壁5をY軸方向に貫通する。第1ドライブシャフト通過孔51には、差動装置22の-Y方向側に取り付けられたドライブシャフトDsが回転可能な状態で貫通する。このドライブシャフトDsと第1ドライブシャフト通過孔51との間には、オイルCLの漏れを抑制するため、オイルシール(図示省略)が設けられる。
【0066】
第2隔壁5は、差動装置収容部52をさらに有する。差動装置収容部52は、-Y方向に凹んで、差動装置22の一部を収容する。差動装置収容部52が差動装置22の一部を収容することにより、Y軸方向における第4ギヤ221と第2隔壁5との間隔をより狭くできる。従って、駆動装置100のY軸方向におけるサイズをより小さくできる。
【0067】
差動装置収容部52の少なくとも一部は、インバータハウジング314よりも-Z方向側に位置する。こうすれば、Z軸方向において、差動装置収容部52がインバータハウジング314の配置を妨げないようにできる。
【0068】
<1-3-1-2.インバータハウジング314>
インバータハウジング314は、底板3141と、周壁3142と、を有する。底板3141は、モータハウジング311の外側面から+X方向に延びる。周壁3142は、底板3141のZ軸方向から見た外縁部から+Z方向に突出して、Z軸方向から見て底板3141を囲む。インバータハウジング314は、第3蓋部34とともに、インバータ収容部303を構成する。
【0069】
底板3141は、第2シャフト215よりも+X方向側に配置される。こうすれば、X軸方向において、たとえば第2シャフト215がインバータハウジング314の配置の妨げとなり難い。
【0070】
周壁3142の+Y方向側の部分は、第2隔壁5の+Z方向側の端部を含む。こうすれば、第2隔壁5よりも-Z方向側にインバータハウジング314の少なくとも一部が配置される空間を確保できる。
【0071】
<1-3-2.第1蓋部32>
次に、第1蓋部32は、ギヤハウジング312の+Y方向側の端部に取り付けられ、ギヤハウジング312の+Y方向側の端部を閉じて塞ぐ。第1蓋部32の形状は、―Y方向に開口する凹形状である。第1蓋部32は、ギヤハウジング312及び隔壁313とともに、ギヤ収容部302を構成する。第1蓋部32は、第2ギヤベアリング保持部321と、第2中間ベアリング保持部322と、第2ドライブシャフト通過孔323と、受け皿部324と、ギヤ側油路325と、ギヤ側制限部材326と、を有する。
【0072】
第2ギヤベアリング保持部321は、第1蓋部32の-Y方向側に配置される。第2ギヤベアリング保持部321の中心軸は、回転軸J1と一致する。第2ギヤベアリング保持部321は、第2ギヤベアリング3211を保持し、第2ギヤベアリング3211を介して第1シャフト214の+Y方向側の端部を回転可能に支持する。第2ギヤベアリング3211は、本実施形態では、ボールベアリングである。第2ギヤベアリング保持部321には、第2ギヤベアリング3211の外輪が固定される。第2ギヤベアリング3211の内輪は、第1シャフト214の+Y方向側の端部の径方向外側面に固定される。
【0073】
第2中間ベアリング保持部322は、第1蓋部32の-Y方向側に配置される。第2中間ベアリング保持部322の中心軸は、中間軸J2と一致する。第2中間ベアリング保持部322は、回転軸J1及び差動軸J3よりも-Z方向側に配置される。第2中間ベアリング保持部322は、第2中間ベアリング3221を保持し、第2中間ベアリング3221介して第2シャフト215の+Y方向側の端部を回転可能に支持する。第2中間ベアリング3221は、本実施形態では、ボールベアリングである。第2中間ベアリング保持部322には、第2中間ベアリング3221の外輪が固定される。また、第2中間ベアリング3221の内輪は、第2シャフト215の+Y方向側の端部の径方向外側面に固定される。
【0074】
第2ドライブシャフト通過孔323は、第1蓋部32を軸方向に貫通する。第2ドライブシャフト通過孔323は、Y軸方向から見て第1ドライブシャフト通過孔51と重なる。第2ドライブシャフト通過孔323には、差動装置22の+Y方向側に取り付けられたドライブシャフトDsが回転可能な状態で貫通する。このドライブシャフトDsと第2ドライブシャフト通過孔323との間には、オイルCLの漏れを抑制するため、オイルシール(図示省略)が設けられる。
【0075】
受け皿部324は、第4ギヤ221よりも差動軸J3を基準とする径方向外方に配置され、+Z方向(つまり鉛直上方)に開口する。受け皿部324には、第4ギヤ221によって掻き上げられたオイルCLが貯められる。受け皿部324は、隔壁313から+Y方向に延びる。受け皿部324の+Y方向側の端部は、第1蓋部32の-Y方向を向く内面に連結される。受け皿部324は、供給孔3241を有する。受け皿部324に溜まったオイルCLの一部は、第1ギヤベアリング431、第2ギヤベアリング3211、第1中間ベアリング441、及び第2中間ベアリング3221に供給されてこれらを潤滑及び冷却するとともに、第1ギヤ211、第2ギヤ212、及び第3ギヤ213に供給されてこれらの歯面を潤滑する。上述のようにギヤ部2の各ギヤ及びベアリングを潤滑・冷却に使用されたオイルCLは、オイル溜りPに戻る。
【0076】
ギヤ側油路325は、第1蓋部32の内部に形成される。ギヤ側油路325は、受け皿部324の+Y方向側の端部と第2ギヤベアリング保持部321とを繋ぐオイルCLの流路である。また、ギヤ側油路325の一端は、受け皿部324の+Y方向側の端部と接続されて、受け皿部324と繋がる。ギヤ側油路325の他端は、第2ギヤベアリング保持部321と繋がる。受け皿部324に貯まったオイルCLは、ギヤ側油路325に供給される。
図2に示すように、ギヤ側油路325に供給されたオイルCLの一部は、第2ギヤベアリング3211に供給される。また、ギヤ側油路325に供給されたオイルCLの他の一部は、第1シャフト214の+Y方向側の端部から中空部2142に流入して-Y方向に流れて、モータシャフト111の中空部1112に流入する。
【0077】
ギヤ側制限部材326は、ギヤ側油路325から第2ギヤベアリング3211に供給されるオイルCLの量を制限する。この制限により、ギヤ側油路325から第1シャフト214の中空部2142を通じてモータシャフト111の中空部1112に供給されるオイルCLを確保できる。ギヤ側制限部材326は、第2ギヤベアリング3211とY軸方向に対向する環状部(符号省略)と、環状部の径方向内端部から-Y方向に延びて第1シャフト214の内部に挿通される筒部(符号省略)と、を有する。環状部は、環状部をY軸方向に貫通する貫通孔(符号省略)を有する。オイルCLは、貫通孔を通じて第2ギヤベアリング3211に供給されるとともに、筒部を通じて第1シャフト214の内部に供給される。
【0078】
<1-3-3.第2蓋部33>
第2蓋部33は、モータハウジング311の-Y方向側の端部に取り付けられ、モータハウジング311の-Y方向側の端部を閉じて塞ぐ。第2蓋部33は、モータハウジング311及び隔壁313とともに、モータ収容部301を構成する。
【0079】
第2蓋部33は、第2モータベアリング保持部331を有する。第2モータベアリング保持部331は、第2蓋部33の+Y方向側に配置される。第2モータベアリング保持部331の中心軸は、回転軸J1と一致する。第2モータベアリング保持部331は、第2モータベアリング3311を保持し、第2モータベアリング3311を介してモータシャフト111の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。第2モータベアリング3311は、本実施形態では、ボールベアリングである。第2モータベアリング保持部331には、第2モータベアリング3311の外輪が固定される。また、第2モータベアリング3311の内輪は、モータシャフト111の-Y方向側の端部の径方向外側面に固定される。
【0080】
<1-3-4.第3蓋部34>
また、ハウジング3は、第3蓋部34をさらに有する。第3蓋部34は、モータハウジング311よりも+Z方向側に配置される。第3蓋部34は、ハウジング本体31の上部に取り付けられる。第3蓋部34は、インバータハウジング314とともに、インバータ収容部303を構成する。
【0081】
<1-4.ポンプ7及びオイルクーラー8>
次に、
図1及び
図2を参照して、ポンプ7及びオイルクーラー8について説明する。
【0082】
ポンプ7は、電気により駆動する電動ポンプであり、ハーネスケーブル(図示省略)を介してインバータユニット6と接続される。すなわち、ポンプ7は、インバータユニット6により駆動される。ポンプ7には、トロコイダルポンプ、遠心ポンプなどを採用できる。ポンプ7は、オイル溜りPからオイルCLを吸い上げ、オイルクーラー8を経由して後述するオイル供給部72に供給する。
【0083】
オイルクーラー8は、ポンプ7から送出されるオイルCLと、後述のモータ側油路71とは別系統で供給される冷媒REとの熱交換を行う。これにより、オイルクーラー8は、ポンプ7から送出されたオイルCLを冷却する。ポンプ7及びオイルクーラー8は、図示しないボルトでハウジング本体31に固定される。
【0084】
オイルCLは、ハウジング3に設けられたモータ側油路71内を循環する。モータ側油路71は、オイル溜りPからオイルCLをモータ部1に供給するオイルCLの流路である。モータ側油路71は、オイルCLを循環させ、モータ部1を冷却する。オイルCLは、ギヤ部2を潤滑する潤滑液として使用される。また、オイルCLは、モータ部1及びギヤ部2を冷却する冷媒としても使用される。オイルCLは、ギヤハウジング312下部のオイル溜りPに溜る。オイルCLは、潤滑液および冷媒の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0085】
モータ側油路71は、オイルCLをオイル溜りPからオイル供給部72に至るオイルCLの流路である。オイル供給部72は、ステータ12にオイルCLを供給する。駆動装置100は、オイル供給部72を備える。本実施形態では、オイル供給部72は、軸方向に延びる筒状であり、モータ収容部301に収容され、ステータ12よりも径方向外方に配置される。オイル供給部72は、供給孔721を有する。供給孔721は、オイル供給部72を径方向に貫通する。オイル供給部72の内部を流れるオイルCLの一部は、供給孔721を通じて、ステータ12のY軸方向における端部及び径方向外側面に供給される。このオイルCLの他の一部は、供給孔721を通じて、第1モータベアリング421及び第2モータベアリング3311に供給され、これらを潤滑及び冷却する。なお、ステータ12、第1モータベアリング421、及び第2モータベアリング3311を潤滑・冷却に使用されたオイルCLは、モータ収容部301の下部に溜まった後、隔壁開口45を通じて、ギヤ収容部302の下部のオイル溜りPに戻る。
【0086】
<2.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、たとえば、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)及び電気自動車(EV)などの車両の駆動用モータに有用である。
【符号の説明】
【0088】
100・・・駆動装置、1・・・モータ部、10・・・出力シャフト、11・・・ロータ、111・・・モータシャフト、1111・・・シャフト筒部、1112・・・中空部、1113・・・シャフト孔部、112・・・ロータコア、1121・・・ロータ貫通孔、1122・・ロータ連通部、113・・・マグネット、12・・・ステータ、121・・・ステータコア、122・・・コイル、1221・・・コイルエンド、2・・・ギヤ部、21・・・減速装置、211・・・第1ギヤ、212・・・第2ギヤ、213・・・第3ギヤ、214・・・第1シャフト、2141・・・シャフト筒部、2142・・・中空部、215・・・第2シャフト、22・・・差動装置、221・・・第4ギヤ、2211・・・歯、222・・・差動装置ケース、3・・・ハウジング、301・・・モータ収容部、302・・・ギヤ収容部、303・・・インバータ収容部、31・・・ハウジング本体、311・・・モータハウジング、312・・・ギヤハウジング、313・・・隔壁、314・・・インバータハウジング、3141・・・底板、3142・・・周壁、32・・・第1蓋部、321・・・第2ギヤベアリング保持部、3211・・・第2ギヤベアリング、322・・・第2中間ベアリング保持部、3221・・・第2中間ベアリング、323・・・第2ドライブシャフト通過孔、324・・・受け皿部、3241・・・供給孔、325・・・ギヤ側油路、326・・・ギヤ側制限部材、33・・・第2蓋部、331・・・第2モータベアリング保持部、3311・・・第2モータベアリング、34・・・第3蓋部、4・・・第1隔壁、41・・・挿通孔、42・・・第1モータベアリング保持部、421・・・第1モータベアリング、43・・・第1ギヤベアリング保持部、431・・・第1ギヤベアリング、44・・・第1中間ベアリング保持部、441・・・第1中間ベアリング、45・・・隔壁開口、5・・・第2隔壁、51・・・第1ドライブシャフト通過孔、52・・・差動装置収容部、6・・・インバータユニット、7・・・ポンプ、71・・・モータ側油路、72・・・オイル供給部、721・・・供給孔、8・・・オイルクーラー、CL・・・オイル、Ds・・・ドライブシャフト、J1・・・回転軸、J2・・・中間軸、J3・・・差動軸、P・・・オイル溜り、RE・・・冷媒、200・・・車両、150・・・バッテリー