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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】運転者特定装置及び運転者特定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241029BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20241029BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241029BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
G16Y10/40
G16Y40/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021052400
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022150010
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 周平
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122653(JP,A)
【文献】特開2001-063400(JP,A)
【文献】特開2016-197308(JP,A)
【文献】特開2014-071621(JP,A)
【文献】特開2013-112324(JP,A)
【文献】特開2013-095291(JP,A)
【文献】特開2018-072924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0278685(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017107816(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0044605(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G07C 5/00
G16Y 10/40
G16Y 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得する取得部と、
取得された運転情報に基づいて、予め設定された運転評価項目ごとにスコアを算出するスコア算出部と、
算出された前記運転評価項目ごとのスコアについて、運転者ごとの最大スコア、最小スコア及び平均スコアを記憶領域に蓄積する運転情報蓄積部と、
取得された前記スコアと前記記憶領域に蓄積された前記スコアとを比較することによって運転者を特定する運転者特定部と、
を有し、
前記運転者特定部は、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、急加速、急ブレーキ、急操舵及び車間距離のそれぞれのスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定し、
運転者を特定できない場合には、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、速度超過及び後進回数の項目を含むスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定する、運転者特定装置。
【請求項2】
運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得し、
取得された運転情報に基づいて、予め設定された運転評価項目ごとにスコアを算出し、
算出された前記運転評価項目ごとのスコアについて、運転者ごとの最大スコア、最小スコア及び平均スコアを記憶領域に蓄積し、
取得された前記運転評価項目のスコアのうち、急加速、急ブレーキ、急操舵及び車間距離のそれぞれのスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定し、
運転者を特定できない場合には、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、速度超過及び後進回数の項目を含むスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定する、
処理をコンピュータが実行する、運転者特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者特定装置及び運転者特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転者による運転内容が安全運転及び低燃費運転の少なくとも一方から乖離した回数を違反回数として計測し、違反回数が閾値以上になった場合に管理端末へ送信する運転診断管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-071621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された運転診断管理システムのように運転者の運転診断を行う構成において、一台の車両を複数の運転者が利用する場合、運転者ごとに運転評価を行うために運転者を特定する必要がある。しかしながら、専用の認証装置を搭載すれば、コスト及び重量が増加する。
【0005】
本発明は、コスト及び重量の増加を抑制しつつ、運転者を特定可能な運転者特定装置及び運転者特定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る運転者特定装置は、運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得する取得部と、取得された運転情報に基づいて、予め設定された運転評価項目ごとにスコアを算出するスコア算出部と、算出された前記運転評価項目ごとのスコアについて、運転者ごとの最大スコア、最小スコア及び平均スコアを記憶領域に蓄積する運転情報蓄積部と、取得された前記スコアと前記記憶領域に蓄積された前記スコアとを比較することによって運転者を特定する運転者特定部と、を有し、前記運転者特定部は、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、急加速、急ブレーキ、急操舵及び車間距離のそれぞれのスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定し、運転者を特定できない場合には、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、速度超過及び後進回数の項目を含むスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定する、運転者特定装置。
【0007】
請求項1に係る運転者特定装置では、取得部は、運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得する。また、スコア算出部は、取得された運転情報に基づいて、予め設定された運転評価項目ごとにスコアを算出する。さらに、算出された前記運転評価項目ごとのスコアについて、運転者ごとの最大スコア、最小スコア及び平均スコアが運転情報蓄積部によって記憶領域に蓄積される。そして、運転者特定部は、取得されたスコアと記憶領域に蓄積されたスコアとを比較することによって運転者を特定する。これにより、運転者を撮像するカメラや生体センサなどの専用の認証装置を搭載することなく運転者を特定することができる。
【0009】
また、複数の運転評価項目のスコアが近い運転者を同一の運転者として特定する。これにより、蓄積スコアの蓄積量が多いほど精度良く運転者を特定することができる。また、蓄積スコアを運転者に通知すれば、運転者の運転技術の向上に繋げることができる。
【0011】
さらに、運転者を特定できない場合には、取得された運転評価項目のスコアのうち、速度超過及び後進回数の項目を含むスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定する。このように、一部の運転評価項目の取得スコアと蓄積スコアとを比較して運転者の特定を行うことで、迅速に運転者を特定することができる。また、運転者が特定できなかった場合に残りの運転評価項目を比較して運転者を特定するため、毎回全ての運転評価項目を比較する構成に対して、運転者の特定時の処理負荷を低減することができる。
【0014】
請求項5に係る運転者特定方法は、運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得し、取得された運転情報に基づいて、予め設定された運転評価項目ごとにスコアを算出し、算出された前記運転評価項目ごとのスコアについて、運転者ごとの最大スコア、最小スコア及び平均スコアを記憶領域に蓄積し、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、急加速、急ブレーキ、急操舵及び車間距離のそれぞれのスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定し、運転者を特定できない場合には、取得された前記運転評価項目のスコアのうち、速度超過及び後進回数の項目を含むスコアを前記記憶領域に蓄積された前記スコアと比較することで運転者を特定する、処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る運転者特定装置及び運転者特定方法によれば、コスト及び重量の増加を抑制しつつ、運転者を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る運転診断システムの全体構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る運転者特定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】実施形態におけるサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る運転者特定装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】実施形態における蓄積情報の一例を示す表である。
図6】実施形態における運転者特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態に係る運転者特定装置10を含む運転診断システムSについて、図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態の運転診断システムSは、運転者特定装置10、サーバ12及び車両Vを含んで構成されている。そして、運転者特定装置10、サーバ12及び車両Vは、ネットワークNによって接続されている。なお、ネットワークNには複数の車両Vが接続されているが、図1では説明の便宜上、一台の車両Vのみが図示されている。
【0019】
本実施形態の運転者特定装置10は一例として、車両Vに搭載された車載器とされているが、これに限定されない。例えば、運転者特定装置10は、車両Vの外部に設けられた制御装置などでもよい。
【0020】
サーバ12は、複数の車両Vの管理者が保有するサーバである。すなわち、複数の車両Vを管理する管理者がサーバ12を保有しており、本実施形態では一例として、車両Vは利用者を乗せて走行するタクシーとして用いられる車両である。また、サーバ12は、タクシー会社が保有している。
【0021】
ここで、本実施形態の運転者特定装置10は、各車両Vを運転する運転者を特定する。また、運転者特定装置10は、運転者に対して運転診断を行う。
【0022】
(運転者特定装置10のハードウェア構成)
図2は、運転者特定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。この図2に示されるように、運転者特定装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)20、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24、ストレージ26、通信I/F(通信インタフェース)28及び入出力I/F(入出力インタフェース)30を含んで構成されている。各構成は、バス32を介して相互に通信可能に接続されている。
【0023】
CPU20は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20は、ROM22又はストレージ26からプログラムを読み出し、RAM24を作業領域としてプログラムを実行する。CPU20は、ROM22又はストレージ26に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0024】
ROM22は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ26は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM22又はストレージ26には、運転者特定処理を行うためのプログラム及び各種データなどが格納されている。
【0025】
通信I/F28は、運転者特定装置10がサーバ12及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0026】
入出力I/F30は、前方カメラ42、加速度センサ44、舵角センサ46、センタディスプレイ48及びスピーカ50と電気的に接続されている。
【0027】
前方カメラ42は、車両の前部に設けられており、車両前方を撮像する。前方カメラ42で撮像された画像は、例えば、前方を走行する先行車両との車間距離、車線、及び信号機などを認識するために用いられる。
【0028】
加速度センサ44は、車両の加速度を検出する。舵角センサ46は、車両の操舵角を検出する。加速度センサ44で検知された加速度のデータは、例えば、車両Vの急加減速の有無を判定するために用いられる。また、舵角センサ46で検知された操舵角のデータは、例えば、急操舵やUターンの有無を判定するために用いられる。
【0029】
センタディスプレイ48は、例えば、車室の前部において運転者から見える位置に設けられており、種々の情報が表示される。また、センタディスプレイ48には、種々の情報が表示される。スピーカ50は、車室に設けられており、運転者に対して音声を出力する。
【0030】
(サーバ12のハードウェア構成)
図3は、サーバ12のハードウェア構成を示すブロック図である。この図3に示されるように、サーバ12は、CPU52、ROM54、RAM56、ストレージ58、通信I/F(通信インタフェース)60及び入出力I/F(入出力インタフェース)62を含んで構成されている。各構成は、バス64を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU52は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU52は、ROM54又はストレージ58からプログラムを読み出し、RAM56を作業領域としてプログラムを実行する。CPU52は、ROM54又はストレージ58に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0032】
ROM54は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM56は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ58は、HDD又はSSDにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM54又はストレージ58には、複数の車両Vを管理するためのプログラム、及び各種データなどが格納されている。
【0033】
通信I/F60は、サーバ12が運転者特定装置10などの機器と通信するためのインタフェースである。
【0034】
入出力I/F62には、表示装置66及び入力装置68が電気的に接続されている。表示装置66は、サーバ12が取得した各種の情報を表示するためのモニタである。入力装置68は、管理者が必要な情報を取得するためにサーバ12へ指示を入力するための装置であり、例えば、キーボード及びマウスなどである。
【0035】
(運転者特定装置10の機能構成)
運転者特定装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。運転者特定装置10が実現する機能構成について図4を参照して説明する。
【0036】
図4に示されるように、運転者特定装置10は、機能構成として、取得部70、スコア算出部72、運転情報蓄積部74及び運転者特定部76を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU20がROM22又はストレージ26に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0037】
取得部70は、運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得する。具体的には、取得部70は、加速度センサ44及び舵角センサ46によって検知された車両Vの加速度及び操舵角を取得する。また、取得部70は、前方カメラ42で撮像された画像に基づく先行車両との車間距離、車線に対する走行位置などを取得する。さらに、取得部70は、図示しないシフトレンジの情報を取得する。例えば、取得部70によって取得されたシフトレンジの情報によって、後進レンジ(Rレンジ)に切替えられたことが分かるようになっている。
【0038】
スコア算出部72は、取得された運転情報に基づいて、予め設定された運転評価項目ごとにスコアを算出する。本実施形態では一例として、スコア算出部72は、それぞれの運転評価項目の条件に該当した回数を計測し、計測された回数に基づいてスコアを算出する。
【0039】
ここで、図5を参照して運転評価項目の一例について説明する。図5には、運転評価項目の一部として、急加速、急ブレーキ、急操舵、車間距離、速度超過及びバックの項目が記載されている。また、各運転評価項目に対して、運転者ごとに最大スコア(max)、最小スコア(min)及び平均スコア(ave)が算出されており、これらのスコアがサーバ12のストレージ58に記憶されている。本実施形態では一例として、IDが1から5までの5人の運転者のスコアが記憶されている。
【0040】
ここで、各スコアは、運転評価項目に該当した回数が多いほど、低いスコアになるように算出される。また、スコアは0から100の数値で算出される。例えば、所定時間内に一度も急加速が検出されなかった場合、急加速のスコアは100となる。以下、各運転評価項目の概要について説明する。
【0041】
急加速及び急ブレーキは、加速度センサ44からの信号に基づいてカウントされる。例えば、スコア算出部72は、加速度センサ44によって所定値以上の加速度が検知された場合に急加速としてカウントする。また、スコア算出部72は、速度センサによって単位時間当たりの速度の変化量が所定値以上であった場合に急加速としてカウントしてもよい。急操舵は、舵角センサ46からの信号に基づいてカウントされる。例えば、スコア算出部72は、単位時間当たりの操舵角の変化量が所定値以上であった場合に急操舵としてカウントする。
【0042】
車間距離は、前方カメラ42又は図示しないセンサからの信号に基づいて、先行車両との車間距離が所定の距離以下になった場合にカウントされる。例えば、スコア算出部72は、先行車両との車間距離が狭くなっている状態が所定時間以上継続した場合に車間距離違反としてカウントする。
【0043】
速度超過は、制限速度を超過した場合にカウントされる。例えば、スコア算出部72は、ナビゲーションシステムの情報に基づいて走行している道路の制限速度よりも車速が大きい場合に速度超過としてカウントする。
【0044】
バックは、シフトレンジが後進レンジとなった場合にカウントされる。例えば、スコア算出部72は、シフトレンジが後進レンジとなった状態で所定の距離以上後進した場合にバックをカウントする。所定の距離を駐車時の距離以上に設定することで、駐車時以外の状況でバックした回数をカウントすることができる。
【0045】
なお、他の運転評価項目として、車線はみ出し、一時停止違反、脇見運転などの評価項目についてスコアを算出してもよい。
【0046】
図4に示されるように、運転情報蓄積部74は、取得された運転情報を記憶領域に蓄積する。具体的には、運転情報蓄積部74は、運転情報から算出された複数の運転評価項目のスコアをサーバ12のストレージ58に記憶する。また、本実施形態の運転情報蓄積部74は、スコア算出部72で算出されたスコアに基づいて所定時間ごとに蓄積情報を更新する。
【0047】
運転者特定部76は、取得部70で取得された運転情報と記憶領域に蓄積された蓄積情報とを比較することによって運転者を特定する。具体的には、運転者特定部76は、運転情報から算出された取得スコアと、サーバ12に蓄積された蓄積スコアとを比較することで運転者を特定する。
【0048】
運転者が特定された後、取得部70で取得された運転情報は、特定された運転者の蓄積情報として蓄積される。すなわち、取得部70で取得された運転情報に基づいてスコア算出部72でスコアが算出され、この算出されたスコアを反映して蓄積された蓄積スコアが更新される。
【0049】
サーバ12に蓄積された蓄積スコアは、所定のタイミングで運転者に通知される。例えば、所定の時間が経過したタイミングで運転者のスコアが通知されるようにしてもよい。この場合、センタディスプレイ48に蓄積スコを表示することで通知してもよい。また、スピーカ50から音声で通知してもよい。
【0050】
(運転診断処理の一例)
運転者を特定する運転者特定処理の一例について、図6に示されるフローチャートを用いて説明する。この運転診断処理は、CPU20がROM22又はストレージ26からプログラムを読み出して、RAM24に展開することによって実行される。
【0051】
図6に示されるように、CPU20は、ステップS102で運転情報を取得する。すなわち、CPU20は、取得部70の機能によって運転中に車両に搭載されたセンサ類で検知された運転情報を取得する。
【0052】
CPU20は、ステップS104で蓄積情報を取得する。具体的には、CPU20は、サーバ12のストレージ58から蓄積情報を取得する。蓄積情報は、図5に示される運転者ごとのスコアの情報である。
【0053】
CPU20は、ステップS106で取得部70により取得された運転情報に基づく取得スコアと、蓄積された蓄積スコアとを比較する。ここでは、一部の運転評価項目において取得スコアと蓄積スコアとを比較する。具体的には、急加速、急ブレーキ、急操舵及び車間距離の4つの運転評価項目について取得スコアと蓄積スコアとを比較する。
【0054】
CPU20は、ステップS108で取得スコアと近い蓄積スコアがあるか否かについて判定する。このとき、4つの運転評価項目のスコアが近い場合だけでなく、4つの運転評価項目のスコアの傾向が近い場合であっても、蓄積スコアと近いと判定する。例えば、図5においてIDが5の平均スコアを見ると、4つの運転評価項目の中で急加速の蓄積スコアが最も高く、急操舵の蓄積スコアが著しく低いことが分かる。このため、急加速の取得スコアが高く、急操舵の取得スコアが著しく低い場合、スコアの傾向が近いと判定する。
【0055】
CPU20は、ステップS108で取得スコアと近い蓄積スコアがあると判定された場合、ステップS110の処理へ移行する。また、CPU20は、ステップS108で取得スコアと近い蓄積スコアがないと判定された場合、ステップS112の処理へ移行する。
【0056】
CPU20は、ステップS110で運転者を特定する。具体的には、CPU20は、運転者特定部76の機能によって、取得スコアに近い蓄積スコアのIDを運転者として特定する。そして、CPU20は、運転者特定処理を終了する。
【0057】
一方、CPU20は、ステップS108で取得スコアと近い蓄積スコアがないと判定された場合、ステップS112の処理へ移行して残りの運転評価項目も含めて取得スコアと蓄積スコアとを比較する。ここで、残りの運転評価項目のうちの一部の運転評価項目を含めてスコアの比較をしてもよく、残りの運転評価項目の全てのスコアを比較してもよい。
【0058】
CPU20は、ステップS114で取得スコアと近い蓄積スコアがあるか否かについて判定する。そして、CPU20は、ステップS114で取得スコアと近い蓄積スコアがあると判定された場合、ステップS116の処理へ移行する。また、CPU20は、ステップS114で取得スコアと近い蓄積スコアがないと判定された場合、ステップS102の処理へ戻る。すなわち、CPU20は、取得スコアと近い蓄積スコアが見付からなかった場合、ステップS102の処理へ戻すことで、さらに多くの時間で取得された運転情報と蓄積情報とを比較することで運転者を特定する。
【0059】
CPU20は、ステップS116で運転者を特定する。具体的には、CPU20は、運転者特定部76の機能によって、取得スコアに近い蓄積スコアのIDを運転者として特定する。そして、CPU20は、運転者特定処理を終了する。
【0060】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
本実施形態では、取得された運転情報と記憶領域に蓄積された蓄積情報とを比較することによって運転者特定部76が運転者を特定する。これにより、運転者を撮像するカメラや生体センサなどの専用の認証装置を搭載することなく運転者を特定することができる。すなわち、コスト及び重量の増加を抑制しつつ、運転者を特定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、複数の運転評価項目のスコアが近い運転者を同一の運転者として特定する。これにより、蓄積スコアの蓄積量が多いほど精度良く運転者を特定することができる。また、蓄積スコアを運転者に通知すれば、運転者の運転技術の向上に繋げることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、一部の運転評価項目の取得スコアと蓄積スコアとを比較して運転者の特定を行うことで、迅速に運転者を特定することができる。また、運転者が特定できなかった場合に残りの運転評価項目を比較して運転者を特定するため、毎回全ての運転評価項目を比較する構成に対して、運転者の特定時の処理負荷を低減することができる。
【0064】
さらにまた、本実施形態では、所定時間内に取得された運転情報を用いて運転者を特定し、運転者を特定できなかった場合には、さらに多くの時間で取得された運転情報に基づいて運転者を特定する。これにより、必要最小限の情報量で運転者を特定することができ、運転者特定までの時間を短縮することができる。
【0065】
以上、実施形態に係る運転診断システムS及び運転者特定装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、運転情報蓄積部74は、蓄積情報としてスコア算出部72で算出された運転評価項目のスコアを蓄積する構成としたが、これに限定されない。すなわち、運転情報蓄積部74は、運転評価項目に該当した回数の情報を蓄積情報として蓄積してもよい。この場合、運転者特定部76は、それぞれの運転評価項目の条件に該当した回数と、サーバ12などに蓄積された回数の情報とを比較することで運転者を特定してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、初めに急加速、急ブレーキ、急操舵及び車間距離の4つの運転評価項目について取得スコアと蓄積スコアとを比較する構成としたが、これに限定されない。例えば、初めに急加速及び急ブレーキの2つの運転評価項目について取得スコアと蓄積スコアとを比較し、運転者が特定されなかった場合に、急操舵及び車間距離を含めた4つの運転評価項目について取得スコアと蓄積スコアとを比較してもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態でCPU20がプログラムを読み込んで実行した運転者特定処理を、CPU20以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、運転者特定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0068】
さらに、上記実施形態では、ストレージ26及びストレージ58に種々のデータを記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体を記憶部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラム及びデータなどが格納されることとなる。
【符号の説明】
【0069】
10 運転者特定装置
42 前方カメラ(センサ類)
44 加速度センサ(センサ類)
46 舵角センサ(センサ類)
70 取得部
74 運転情報蓄積部
76 運転者特定部
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6