(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】機能制御装置、及び機能制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241029BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241029BHJP
B60W 50/12 20120101ALI20241029BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241029BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60W40/08
B60W50/12
B60W50/14
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021064912
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】小島 一輝
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017216(WO,A1)
【文献】特開2020-164077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、前記ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する制御を行う機能制御装置であって、
前記自動運転機能によって前記自車両が走行する制御走行期間であって、前記自律走行制御から前記運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされた前記ドライバの特定行動を継続的に把握するドライバ行動把握部(72,86)と、
前記制御走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記自律走行制御から前記運転支援制御への前記切り替え条件の成立後となる次回の前記自動運転機能の使用
において、前記ドライバの移行操作に基づく前記自律走行制御への移行を制限する制御制限部(78,82)と、
を備える機能制御装置。
【請求項2】
前記制御制限部は、前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間にて、前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記次回の前記自動運転機能の使用において前記自律走行制御による走行を禁止する請求項1に記載の機能制御装置。
【請求項3】
前記制御制限部は、前記自動走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合でも、
前記次回の前記自動運転機能の使用において、前記運転支援制御による走行を許可する請求項2に記載の機能制御装置。
【請求項4】
前記自律走行制御による走行が制限されていることを前記ドライバに報知する報知制御部(73,88)、をさらに備える請求項2又は3に記載の機能制御装置。
【請求項5】
前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記次回の前記自動運転機能の使用に際して、前記運転支援制御による走行を前記ドライバに提案する報知制御部(73,88)、をさらに備える請求項1に記載の機能制御装置。
【請求項6】
前記報知制御部は、前記自律走行制御による走行が制限されていることを前記ドライバに報知する請求項
5に記載の機能制御装置。
【請求項7】
前記制御制限部は、前記自動走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合でも、
前記次回の前記自動運転機能の使用に際して前記自車両が渋滞中を走行する渋滞走行シーンでは、前記自律走行制御による走行を許可する請求項
2~
6のいずれか一項に記載の機能制御装置。
【請求項8】
前記自動運転機能には、前記自律走行制御として、特定エリアに限定して実施されるエリア限定制御と、渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御とが設定され、
前記制御制限部は、前記渋滞走行シーンにて前記渋滞限定制御による走行を許可した場合でも、前記エリア限定制御による走行を制限する請求項
7に記載の機能制御装置。
【請求項9】
前記制御制限部は、前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記次回の
前記自動運転機能の使用における前記自律走行制御での前記自動走行期間
にて、前記ドライバに許可する運転以外の行為を制限する請求項
7に記載の機能制御装置。
【請求項10】
ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、前記ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する制御を行う機能制御装置であって、
前記自動運転機能によって前記自車両が走行する制御走行期間であって、前記自律走行制御から前記運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされた前記ドライバの特定行動を継続的に把握するドライバ行動把握部(72,86)と、
前記制御走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記自律走行制御から前記運転支援制御への前記切り替え条件の成立後となる次回の前記自動運転機能の使用
における前記自律走行制御での自動走行期間にて、前記ドライバに許可する運転以外の行為を制限する制御制限部(78,82)と、
を備える機能制御装置。
【請求項11】
前記制御走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、前記ドライバに対して行動の改善を提案する改善提案部、をさらに備える請求項1~10のいずれか一項に記載の機能制御装置。
【請求項12】
前記ドライバ行動把握部は、前記制御走行期間にて前記ドライバによる行動の改善の有無を把握し、
前記自動運転機能の使用が制限された前記制御走行期間にて、前記ドライバの行動の改善が把握された場合、
前記次回の前記自動運転機能の使用において制限を緩和する請求項11に記載の機能制御装置。
【請求項13】
ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、前記ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する制御を行う機能制御プログラムであって、
前記自動運転機能によって前記自車両が走行する制御走行期間であって、前記自律走行制御から前記運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされた前記ドライバの特定行動を継続的に把握し(S10
1)、
前記制御走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記自律走行制御から前記運転支援制御への前記切り替え条件の成立後となる次回の前記自動運転機能の使用
において、前記ドライバの移行操作に基づく前記自律走行制御での走行を制限する(S10
7)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11,51)に実行させる機能制御プログラム。
【請求項14】
ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、前記ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する制御を行う機能制御プログラムであって、
前記自動運転機能によって前記自車両が走行する制御走行期間であって、前記自律走行制御から前記運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされた前記ドライバの特定行動を継続的に把握し
(S301)、
前記制御走行期間にて前記ドライバによる前記特定行動が把握された場合、
前記自律走行制御から前記運転支援制御への前記切り替え条件の成立後となる次回の前記自動運転機能の使用
における前記自律走行制御での自動走行期間にて、前記ドライバに許可する運転以外の行為を制限する
(S307)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11,51)に実行させる機能制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、機能制御装置及び機能制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の自動運転制御装置は、車両の自動運転走行を実行する運転実行部を備えている。この自動運転制御装置は、自動運転走行を開始する前にドライバに運転能力があるか否かを判断し、ドライバに運転能力がないと判断した場合には、自動運転走行を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転機能によって車両が走行する場合、例えばシートベルトを外す、又は寝てしまうといった不適切な行動をドライバが行ってしまう懸念がある。こうした不適切な行動をドライバに認識させ、改善を図ることは、特許文献1に開示の自動運転制御装置では実施されていない。
【0005】
本開示は、自動運転機能によって走行する期間でのドライバの不適切な行動を改善可能な機能制御装置、及び機能制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する制御を行う機能制御装置であって、自動運転機能によって自車両が走行する制御走行期間であって、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされたドライバの特定行動を継続的に把握するドライバ行動把握部(72,86)と、制御走行期間にてドライバによる特定行動が把握された場合、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件の成立後となる次回の自動運転機能の使用において、ドライバの移行操作に基づく自律走行制御への移行を制限する制御制限部(78,82)と、を備える機能制御装置とされる。
また開示された一つの態様は、ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する制御を行う機能制御装置であって、自動運転機能によって自車両が走行する制御走行期間であって、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされたドライバの特定行動を継続的に把握するドライバ行動把握部(72,86)と、制御走行期間にてドライバによる特定行動が把握された場合、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件の成立後となる次回の自動運転機能の使用における自律走行制御での自動走行期間にて、ドライバに許可する運転以外の行為を制限する制御制限部(78,82)と、を備える機能制御装置とされる。
【0007】
また開示された一つの態様は、ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する制御を行う機能制御プログラムであって、自動運転機能によって自車両が走行する制御走行期間であって、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされたドライバの特定行動を継続的に把握し(S101)、制御走行期間にてドライバによる特定行動が把握された場合、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件の成立後となる次回の自動運転機能の使用において、ドライバの移行操作に基づく自律走行制御での走行を制限する(S107)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11,51)に実行させる機能制御プログラムとされる。
また開示された一つの態様は、ライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能な自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する制御を行う機能制御プログラムであって、自動運転機能によって自車両が走行する制御走行期間であって、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件が成立する以前の期間を少なくとも含む制御走行期間にて、当該制御走行期間での実施が不適切とされたドライバの特定行動を継続的に把握し(S301)、制御走行期間にてドライバによる特定行動が把握された場合、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件の成立後となる次回の自動運転機能の使用における自律走行制御での自動走行期間にて、ドライバに許可する運転以外の行為を制限する(S307)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11,51)に実行させる機能制御プログラムとされる。
【0008】
これらの態様では、自車両が自動運転機能によって走行する制御走行期間にて、ドライバの不適切な特定行動が把握された場合、次回の自動運転機能の使用が制限される。このように自動運転機能の使用が制限されれば、ドライバは、以前の制御走行期間で不適切な行動があったことを認識できる。その結果、制御走行期間でのドライバの不適切な行動を改善せることが可能になる。
【0009】
尚、上記及び特許請求の範囲における括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第一実施形態による自動運転システム及びHMIシステムを含む車載ネットワークの全体像を示す図である。
【
図2】自動運転ECUの詳細を示すブロック図である。
【
図4】自動運転ECU又はHCUにて実施される制限設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】自動運転ECUにて実施される運転制御切替処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】自動運転ECU又はHCUにて実施される提案実行処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】使用制限報知及び行動改善提案の表示例を示す図である。
【
図8】自動運転ECU又はHCUにて実施される制限設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による機能制御装置の機能は、
図1及び
図2に示す自動運転ECU(Electronic Control Unit)50bによって実現されている。自動運転ECU50bは、運転支援ECU50a及びHCU(Human Machine Interface Control Unit)100と共に車両(以下、自車両Am)に搭載されている。自動運転ECU50bは、運転支援ECU50a等と共に自車両Amの自動運転システム50を構成している。自動運転システム50の搭載により、自車両Amは、自動運転機能を備えた自動運転車両となる。
【0013】
自動運転システム50において、運転支援ECU50aは、ドライバの運転操作を支援する運転支援機能を実現させる車載ECUである。運転支援ECU50aは、米国自動車技術会の規定する自動運転レベルにおいて、レベル2程度の高度運転支援又は部分的な自動運転制御を可能にする。運転支援ECU50aによって実施される自動運転は、ドライバの目視による自車周辺の監視が必要な周辺監視義務のある自動運転となる。
【0014】
自動運転ECU50bは、ドライバの運転操作を代行可能な自動運転機能を実現させる車載ECUである。自動運転ECU50bは、システムが制御主体となるレベル3以上の自律走行を実施可能である。自動運転ECU50bによって実施される自動運転は、自車周囲の監視が不要となる、即ち、周辺監視義務のないアイズオフの自動運転となる。
【0015】
自動運転ECU50bによるレベル3以上の自動運転機能によって自車両Amが自動走行する自動走行期間では、予め規定された運転以外の特定の行為(以下、セカンドタスク)がドライバに許可され得る。セカンドタスクは、自動運転ECU50b及びHCU100の連携による運転操作の実施要求、即ち、運転交代の要請が発生するまで、ドライバに法規的に許可される。例えば、動画コンテンツ等のエンターテイメント系のコンテンツの視聴、スマートフォン等のデバイス操作及び食事等の行為が、セカンドタスクとして想定される。
【0016】
尚、自動運転ECU50bは、レベル4以上の自動運転制御を実施可能であってもよい。また以下の説明では、運転支援ECU50aによるレベル2以下の自動運転制御を「運転支援制御」と記載し、自動運転ECU50bによるレベル3以上の自動運転制御を「自律走行制御」と記載する場合がある。
【0017】
運転支援ECU50a、自動運転ECU50b及びHCU100は、自車両Amに搭載された車載ネットワーク1の通信バス99に、通信可能に接続されている。通信バス99には、ドライバモニタ29、周辺監視センサ30、ロケータ35、車載通信機39、及び走行制御ECU40等が接続されている。通信バス99に接続されたこれらのノードは、相互に通信可能である。これら装置及びECUのうちの特定のノード同士は、相互に直接的に電気接続され、通信バス99を介することなく通信可能であってもよい。
【0018】
ドライバモニタ29は、近赤外光源及び近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニットとを含む構成である。ドライバモニタ29は、運転席のヘッドレスト部分に近赤外カメラを向けた姿勢にて、例えばステアリングコラム部の上面又はインスツルメントパネルの上面等に設置されている。近赤外カメラは、後述するメータディスプレイ21又はセンターインフォメーションディスプレイ(以下、CID)22と一体的に構成され、いずれかの画面に設けられていてもよい。
【0019】
ドライバモニタ29は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮像画像は、制御ユニットによって画像解析される。制御ユニットは、ドライバのアイポイントの位置及び視線方向等の情報を撮像画像から抽出する。ドライバモニタ29は、制御ユニットによって抽出されたドライバステータス情報をHCU100及び自動運転ECU50b等に提供する。
【0020】
周辺監視センサ30は、自車両Amの周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ30は、自車周囲の検出範囲から移動物体及び静止物体を検出可能である。周辺監視センサ30は、自車両Amの周囲を走行する前方車両、後方車両及び側方車両等を少なくとも検出可能である。周辺監視センサ30は、自車周囲の物体の検出情報を運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等に提供する。
【0021】
周辺監視センサ30には、例えばカメラユニット31、ミリ波レーダ32、ライダ33及びソナー34のうちの1つ又は複数が含まれている。カメラユニット31は、単眼カメラを含む構成であってもよく、又は複眼カメラを含む構成であってもよい。カメラユニット31は、自車両Amの前方範囲を撮影可能なように自車両Amに搭載されている。自車両Amの側方範囲及び後方範囲を撮影可能なカメラユニット31が、自車両Amに搭載されていてもよい。カメラユニット31は、自車周囲を撮影した撮像データ及び撮像データの解析結果の少なくとも一方を、検出情報として出力する。
【0022】
ミリ波レーダ32は、ミリ波又は準ミリ波を自車周囲へ向けて照射する。ミリ波レーダ32は、移動物体及び静止物体等で反射された反射波を受信する処理によって生成した検出情報を出力する。ライダ33は、自車周囲へ向けてレーザ光を照射する。ライダ33は、照射範囲に存在する移動物体及び静止物体等で反射されたレーザ光を受信する処理によって生成した検出情報を出力する。ソナー34は、自車周囲へ向けて超音波を発射する。ソナー34は、自車近傍に存在する移動物体及び静止物体等で反射された超音波を受信する処理によって生成した検出情報を出力する。
【0023】
ロケータ35は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサ等を含む構成である。ロケータ35は、GNSS受信機で受信する測位信号、慣性センサの計測結果、及び通信バス99に出力された車速情報等を組み合わせ、自車両Amの自車位置及び進行方向等を逐次測位する。ロケータ35は、測位結果に基づく自車両Amの位置情報及び方角情報を、ロケータ情報として通信バス99に逐次出力する。
【0024】
ロケータ35は、地図データを格納した地図データベース(以下、地
図DB)36をさらに有している。地
図DB36は、多数の3次元地図データ及び2次元地図データを格納した大容量の記憶媒体を主体とする構成である。3次元地図データは、道路の3次元形状情報及び各レーンの詳細情報等、高度運転支援及び自動運転に必要な情報を含んでいる。ロケータ35は、現在位置周辺の地図データを地
図DB36から読み出し、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等にロケータ情報と共に提供する。
【0025】
車載通信機39は、自車両Amに搭載された車外通信ユニットであり、V2X(Vehicle to Everything)通信機として機能する。車載通信機39は、道路脇に設置された路側機との間で無線通信によって情報を送受信する。一例として、車載通信機39は、自車両Amの現在位置周辺及び進行方向の渋滞情報を路側機から受信する。渋滞情報は、VICS(登録商標)情報等である。車載通信機39は、受信した渋滞情報を自動運転ECU50b等に提供する。
【0026】
走行制御ECU40は、マイクロコントローラを主体として含む電子制御装置である。走行制御ECU40は、ブレーキ制御ECU、駆動制御ECU及び操舵制御ECUの機能を少なくとも有している。走行制御ECU40は、ドライバの運転操作に基づく操作指令、運転支援ECU50aの制御指令及び自動運転ECU50bの制御指令のいずれか一つに基づき、各輪のブレーキ力制御、車載動力源の出力制御及び操舵角制御を継続的に実施する。加えて走行制御ECU40は、各輪のハブ部分に設けられた車輪速センサの検出信号に基づき、自車両Amの現在の走行速度を示す車速情報を生成し、生成した車速情報を通信バス99に逐次出力する。
【0027】
次に、HCU100、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bの各詳細を、
図1~
図3に基づき順に説明する。
【0028】
HCU100は、HMI(Human Machine Interface)システム10を、複数の表示デバイス、オーディオ装置24及び操作デバイス26等と共に構成している。HMIシステム10は、自車両Amのドライバ等の乗員による操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ドライバへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを備えている。
【0029】
表示デバイスは、画像表示等により、ドライバの視覚を通じて情報を提示する。表示デバイスには、メータディスプレイ21、CID22及びヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)23等が含まれている。CID22は、タッチパネルの機能を有しており、ドライバ等による表示画面へのタッチ操作を検出する。オーディオ装置24は、運転席を囲む配置にて車室内に設置された複数のスピーカを有しており、報知音又は音声メッセージ等をスピーカによって車室内に再生させる。
【0030】
操作デバイス26は、ドライバ等によるユーザ操作を受け付ける入力部である。操作デバイス26には、例えば自動運転機能の作動及び停止に関連するユーザ操作等が入力される。一例として、運転支援制御から自律走行制御への移行を指示するドライバ入力(以下、レベル3移行操作)が操作デバイス26には入力される。ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアスイッチ、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、及びドライバの発話内容を認識する音声入力装置等が、操作デバイス26に含まれる。
【0031】
HCU100は、自動運転に関連する情報等のドライバへ向けた提示を統合的に管理する提示制御装置として機能する。HCU100は、自動運転ECU50bによる運転操作の実施要求に基づき、ドライバに運転交代を要請する。加えてHCU100は、上述したように、自動運転ECU50bと連携し、ドライバによるセカンドタスクの実施を許容し、運転交代要請を妨げないかたちでセカンドタスクに関連した動画コンテンツ等を再生可能である。
【0032】
HCU100は、処理部11、RAM12、記憶部13、入出力インターフェース14及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含む構成である。処理部11は、RAM12と結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部11は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部11は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural network Processing Unit)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。RAM12は、映像データ生成のためのビデオRAMを含む構成であってよい。処理部11は、RAM12へのアクセスにより、提示制御処理のための種々の処理を実行する。記憶部13は、不揮発性の記憶媒体を含む構成である。記憶部13には、処理部11によって実行される種々のプログラム(提示制御プログラム等)が格納されている。
【0033】
HCU100は、記憶部13に記憶された提示制御プログラムを処理部11によって実行することで、ドライバへの情報提示を統合制御する複数の機能部を有する。具体的に、HCU100には、情報取得部81、情報連携部82、ドライバ行動把握部86及び提示制御部88(
図3参照)等の機能部が構築される。
【0034】
情報取得部81は、自車両Amの状態を示す車両情報を通信バス99から取得する。車両情報には、例えば走行制御ECU40によって通信バス99に提供される車速情報等が含まれる。加えて情報取得部81は、ユーザ操作の内容を示す操作情報をCID22及び操作デバイス26等から取得する。
【0035】
情報連携部82は、自動運転ECU50bの情報連携部61(後述する)と連携し、自動運転システム50及びHCU100間での情報の共有を可能にする。情報連携部82は、情報取得部81にて把握される操作情報、及びドライバ行動把握部86にて把握されるドライバ行動情報(後述する)等を、自動運転ECU50bに提供する。
【0036】
情報連携部82は、自動運転機能の状態を示す制御ステータス情報の取得により、自動運転システム50による自動運転の動作状態を把握する。情報連携部82は、制御ステータス情報に基づき、自動運転機能によって実施される走行制御にドライバによる周辺監視義務があるか否か、言い替えれば、実施中の走行制御が運転支援制御及び自律走行制御のいずれであるかを把握する。
【0037】
情報連携部82は、自動運転ECU50bの報知要求部73(後述する)によって出力される報知の実施要求を取得する。情報連携部82は、ドライバへの運転交代要請の実施要求、運転支援制御から自律走行制御への移行に関連した制御移行報知の実施要求等を、自動運転ECU50bから取得する。情報連携部82は、報知の実施要求に基づき、提示制御部88と連携して、各報知の内容及び実施タイミングを制御する。
【0038】
ドライバ行動把握部86は、ドライバモニタ29から取得するドライバステータス情報に基づき、ドライバの状態及び行動を把握する。一例として、ドライバ行動把握部86は、ドライバが実施中のセカンドタスクの内容を示すタスク情報等を把握する。例えばタスク情報は、スマートフォンを操作している、CID22の画面を注視している、CID22のタッチパネルを操作している等の情報である。ドライバ行動把握部86は、ドライバが自車両Amの周囲を監視しているか否かを示す監視情報、及びドライバの運転姿勢の適否を示す姿勢情報等をさらに把握してもよい。加えて、ドライバ行動把握部86は、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作及びブレーキ操作等の操作を示す運転操作情報、並びにシートベルトの着脱情報等をさらに取得可能であってよい。
【0039】
ドライバ行動把握部86は、自動運転機能による走行制御によって自車両Amが走行する制御走行期間にて、ドライバによる実施が不適切とされた特定行動(以下、不適切行動)を、ドライバステータス情報、運転操作情報及び着脱情報等を用いて検知する。不適切行動は、自動運転機能によって実施される走行制御の自動運転レベルに応じて、予め定義されている。即ち、運転支援制御によって自車両Amが走行する制御走行期間(以下、運転支援期間)における不適切行動、及び自律走行制御によって自車両Amが走行する制御走行期間(以下、自動運転期間)のそれぞれに対し、一つ又は複数の不適切行動が設定されている。不適切行動となるドライバ行動は、適宜変更されてよい。ドライバ行動把握部86は、自動運転期間における不適切行動として、シートベルトを外す、姿勢を崩す、居眠りをする、及びオーバーライドにはならない程度のステアリング操作を行う等の行動を検知する。ドライバ行動把握部86は、タスク情報及び監視情報等に加えて、ドライバの不適切行動を示す不適切行動情報を、ドライバ行動情報として情報連携部82及び提示制御部88に提供する。ドライバ行動情報は、情報連携部82を通じて、自動運転ECU50bに提供される。
【0040】
提示制御部88は、各表示デバイス及びオーディオ装置24を用いたドライバへの情報の提供を統合制御する。提示制御部88は、自動運転の動作状態に合わせたコンテンツ提供及び情報提示を実施する。提示制御部88は、情報連携部82にて周辺監視義務のないアイズオフでの自律走行制御の実施が把握されると、動画コンテンツ等の再生を可能にする。加えて、提示制御部88は、情報連携部82にて取得される実施要求に基づき、運転交代要請及び制御移行報知等を実施する。
【0041】
運転支援ECU50aは、処理部、RAM、記憶部、入出力インターフェース及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。運転支援ECU50aは、処理部でのプログラムの実行により、ACC(Adaptive Cruise Control)LTC(Lane Trace Control)及びLCA(Lane Change Assist)等の運転支援機能を実現する。一例として、運転支援ECU50aは、ACC及びLTCの各機能の連携により、自車両Amを走行中の自車レーンに沿って走行させる運転支援制御を実施する。
【0042】
自動運転ECU50bは、運転支援ECU50aよりも高い演算能力を備えており、ACC、LTA及びLCAに相当する走行制御を少なくとも実施できる。自動運転ECU50bは、HCU100と同様に、処理部51、RAM52、記憶部53、入出力インターフェース54及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。処理部11は、RAM12へのアクセスにより、本開示の自動運転制御方法及び機能制御方法を実現するための種々の処理を実行する。記憶部13には、処理部11によって実行される種々のプログラム(自動運転制御プログラム及び機能制御プログラム等)が格納されている。処理部51によるプログラムの実行により、自動運転ECU50bには、自動運転機能等を実現するための複数の機能部として、情報連携部61、環境認識部62、行動判断部63及び制御実行部64等が構築される。
【0043】
情報連携部61は、HCU100の情報連携部82への情報提供と、情報連携部82からの情報取得とを行う。これら情報連携部61,82の連携により、自動運転ECU50b及びHCU100は、それぞれが取得した情報を共有する。情報連携部61は、自動運転機能の動作状態を示す制御ステータス情報を生成し、生成した制御ステータス情報を情報連携部82に提供する。情報連携部61は、情報連携のためのサブ機能部として、入力把握部71、ドライバ把握部72及び報知要求部73を有する。
【0044】
入力把握部71は、情報連携部82からドライバの操作情報を取得する。入力把握部71は、操作情報に基づき、CID22及び操作デバイス26等へ入力されるユーザ操作を把握する。一例として、入力把握部71は、運転支援制御から自律走行制御への移行を指示するレベル3移行操作を把握する。
【0045】
ドライバ把握部72は、情報連携部82からドライバ行動情報を取得する。ドライバ把握部72は、ドライバ行動情報に基づき、運転支援期間及び自動走行期間におけるドライバの行動を把握する。ドライバ把握部72は、ドライバによる周囲監視の実施の有無、及びドライバによって実施されるセカンドタスクの内容等を把握する。加えてドライバ把握部72は、運転支援期間及び自動走行期間のそれぞれにおいて、予め規定された不適切行動をドライバが実施したか否かを把握する。尚、ドライバ把握部72は、HCU100のドライバ行動把握部86の機能を備えていてもよい。詳記すると、ドライバ把握部72は、ドライバステータス情報をドライバモニタ29から取得し、ドライバ行動把握部86と同様に、ドライバによる不適切行動の実施を検知可能であってよい。
【0046】
報知要求部73は、情報連携部82へ向けた報知の実施要求の出力により、自動運転機能の動作状態に同期したHCU100による報知を可能にする。上述したように、報知要求部73は、自動運転に関連した報知の実施要求として、運転交代要請の実施要求、及び制御移行報知の実施要求等を、情報連携部82へ向けて送信する。
【0047】
加えて報知要求部73は、使用制限報知、運転支援使用提案、及び行動改善提案等の実施要求を、情報連携部82へ向けて送信する。使用制限報知は、ドライバによる不適切行動の実施に起因して、自律走行制御による走行が制限されていることをドライバに示す報知である。運転支援使用提案は、自律走行制御による走行が禁止されている場合に、自動運転機能の使用に際して、運転支援制御による走行をドライバに提案する情報提示である。行動改善提案は、制御走行期間(自動走行期間)にてドライバによる不適切行動が把握された場合に、ドライバに対して行動の改善を提案する情報提示である。
【0048】
環境認識部62は、ロケータ35より取得するロケータ情報及び地図データと、周辺監視センサ30より取得する検出情報とを組み合わせ、自車両Amの走行環境を認識する。環境認識部62は、走行環境認識のためのサブ機能部として、他車両把握部74、エリア把握部75、及び渋滞把握部76を有する。
【0049】
他車両把握部74は、例えば他車両等、自車周囲の動的な物標の相対位置及び相対速度等を把握する。他車両把握部74は、自車両Amと同一レーン(以下、自車レーン)を走行する前方車両及び後方車両、並びに自車レーンに隣接する隣接レーンを走行する側方車両等を少なくとも把握する。
【0050】
エリア把握部75は、自車両Amが走行する道路に関する情報を把握する。具体的に、エリア把握部75は、自車両Amの走行する道路又は走行予定の道路が予め設定された許可エリア又は制限付き許可エリア内か否かを把握する。許可エリア及び制限付き許可エリアか否かを示す情報は、地
図DB36に格納された地図データに記録されていてもよく、車載通信機39によって受信する受信情報に含まれていてもよい。
【0051】
ここで、許可エリア及び制限付き許可エリアは、ドライバによる周辺監視義務のない自動運転が法規的に許可される運行設計領域(Operational Design Domain)に相当し得る。詳記すると、周辺監視義務のない自動運転には、複数の実施モードとして、渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御(以下、渋滞時レベル3)と、特定のエリア内に限定して実施されるエリア限定制御(以下、エリアレベル3)とが含まれている。許可エリア内の道路では、渋滞時レベル3及びエリアレベル3の両方が実施を許可され、制限付きエリア内の道路では、渋滞時レベル3のみが実施を許可される。許可エリア及び制限付き許可エリアのいずれにも含まれない道路(以下、不許可エリア)では、周辺監視義務のない自動運転での走行は、禁止される。
【0052】
渋滞把握部76は、他車両把握部74にて把握される他車両の情報と、走行制御ECU40によって提供される車速情報等を組み合わせて、自車両Amの周囲の渋滞を把握する。渋滞把握部76は、渋滞状態になったか否かの判定と、渋滞の解消予測と、渋滞が解消されたか否かの判定とを実施する。尚、渋滞把握部76は、渋滞に関連する判定に、車載通信機39によって受信される渋滞情報を用いてもよい。
【0053】
渋滞把握部76は、現在の自車両Amの車速が渋滞速度(例えば、10km/h程度)以下であり、かつ、自車レーンを走行する前方車両が存在する場合、自車周囲が渋滞状態にあると判定する。渋滞把握部76は、自車周囲が渋滞状態にあると判定した後、自車両Amの車速が渋滞速度を超えた場合に、自車周囲の渋滞解消を予測する。渋滞把握部76は、渋滞解消を予測した後、自車両Amの車速が再び渋滞速度以下となると、渋滞の解消予測を取り消す。一方で、渋滞把握部76は、自車周囲の渋滞解消を予測した後、自車両Am又は前方車両の車速が渋滞解消速度(例えば、60km/h程度)を超えた場合、渋滞が解消したと判定する。
【0054】
行動判断部63は、HCU100と連携し、自動運転システム50及びドライバ間での運転交代を制御する。行動判断部63は、自動運転システム50に運転操作の制御権がある場合、環境認識部62による走行環境の認識結果に基づき、自車両Amを走行させる予定走行ラインを生成し、生成した予定走行ラインを制御実行部64に出力する。行動判断部63は、自動運転機能の動作状態を制御するためのサブ機能部として、制御切替部78を有する。
【0055】
制御切替部78は、後述する運転制御切替処理(
図5参照)の実施により、運転支援ECU50aと連携して、ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを切り替える。加えて制御切替部78は、自律走行制御によって自車両Amを走行させる場合、エリアレベル3及び渋滞時レベル3を含む複数のうちで走行制御状態を切り替える。例えば制御切替部78は、ドライバによるレベル3移行操作の入力が入力把握部71によって把握された場合、運転支援制御から自律走行制御へと走行制御状態を切り替える。また制御切替部78は、許可エリア又は制限付き許可エリアにおいて、自車両Amの渋滞への突入が渋滞把握部76にてよって把握された場合、運転支援制御から渋滞時レベル3の自律走行制御へと走行制御状態を切り替える。
【0056】
加えて制御切替部78は、制御走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合、ドライバによる次回の自動運転機能の使用を制限する。具体的に、制御切替部78は、今回の自動運転期間にてドライバによる不適切行動が把握されると、次回、ドライバが自動運転機能を使用するタイミングにおいて、エリアレベル3での自律走行制御による走行を禁止する。一方で、ドライバによる不適切行動が把握された場合でも、渋滞走行シーンにおける渋滞時レベル3による走行、及び運転支援制御による走行は、共に許可される。
【0057】
制御実行部64は、自動運転ECU50bに運転操作の制御権がある場合、走行制御ECU40との連携により、行動判断部63にて生成された予定走行ラインに従って、自車両Amの加減速制御及び操舵制御等を実行する。具体的に、制御実行部64は、予定走行ラインに基づく制御指令を生成し、生成した制御指令を走行制御ECU40へ向けて逐次出力する。
【0058】
ここまで説明したように、ドライバが不適切行動を実施した場合、自動運転ECU50bは、自動運転機能の使用を制限する。以下、自動運転機能の使用制限を実現する制限設定処理、使用制限の有無に応じて走行制御状態を切り替える運転制御切替処理、及びドライバに行動改善を提案する提案実行処理の各詳細を、
図4~
図6に基づき、
図1~
図3及び
図7を参照しつつ順に説明する。
【0059】
図4に示す制限設定処理は、自動運転機能の使用制限の設定及び解除を行う処理である。制限設定処理は、レベル3の自律走行制御を開始した自動運転ECU50bによって開始される。
【0060】
制限設定処理のS101では、ドライバ把握部72が、ドライバ行動情報に基づき、ドライバの行動を把握する。S101では、特にドライバの不適切行動が把握される。S102では、制御切替部78が、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件が成立したか否かを把握する。S102にて、切替条件が成立していないと判定した場合、S101に戻り、ドライバの行動把握が継続される。S101及びS102の繰り返しにより、制御走行期間(自動運転期間)におけるドライバの不適切行動の有無が継続的に把握される。
【0061】
S102にて、切替条件が成立していると判定した場合、制御切替部78は、S103にて、レベル3の自律走行制御の使用に制限が設定されているか否かを判定する。S103にて、自律走行制御に使用制限が設定されていると判定した場合、制御切替部78は、S104にて、ドライバ行動把握部86によりドライバの不適切行動が把握されたか否かを判定する。S104では、直前の自動運転期間において、ドライバ行動が改善されたか否かが判定される。直前の自動運転期間にて、ドライバの不適切行動が把握されていた場合、制御切替部78は、ドライバの行動が改善されていないと判定し、今回の制限設定処理を終了する。以上により、自律走行制御の使用を制限した状態が維持される。一方、直前の自動運転期間にて、ドライバの不適切行動が把握されなかった場合、制御切替部78は、ドライバの行動が改善されたと判定する。この場合、制御切替部78は、S105にて、自律走行制御の使用制限を緩和又は解除し、今回の制限設定処理を終了する。
【0062】
S103にて、自律走行制御の使用制限が設定されていないと判定した場合、制御切替部78は、S106にて、ドライバ行動把握部86によりドライバの不適切行動が把握されたか否かを判定する。直前の自動運転期間にて、ドライバの不適切行動がされなかった場合、制御切替部78は、今回の制限設定処理を終了する。一方、直前の自動運転期間にて、ドライバの不適切行動が把握されていた場合、制御切替部78は、S107にて、自律走行制御への移行条件を厳格化する設定変更を行い、今回の制限設定処理を終了する。以上により、次回の自動運転機能の使用において、エリアレベル3の自律走行制御による走行が禁止される。
【0063】
図5に示す運転制御切替処理は、上述した運転支援制御と、渋滞時レベル3及びエリアレベル3を含む自律走行制御とのうちで、自動運転機能の走行制御状態を切り替える処理である。運転制御切替処理は、自動運転機能の起動後、主に制御切替部78によって開始され、自動運転機能が停止されるまで、繰り返し実施される。
【0064】
運転制御切替処理のS121にて、制御切替部78は、エリア把握部75にて把握される現在の自車両Amの走行エリアが不許可エリアか否かを判定する。自車両Amが不許可エリアを走行している場合、制御切替部78は、S127にて、運転支援制御の実施又は継続を決定する。一方、自車両Amが許可エリア又は制限付き許可エリアを走行している場合、制御切替部78は、S122にて、入力把握部71によるレベル3移行操作の把握の有無を判定する。
【0065】
レベル3移行操作が把握されない場合、制御切替部78は、S127にて、運転支援制御の実施又は継続を決定する。対して、レベル3移行操作が把握された場合、制御切替部78は、S123にて、渋滞把握部76による渋滞把握の有無を判定する。自車周囲の渋滞が把握されている場合、制御切替部78は、S129にて、渋滞時レベル3の自律走行制御の実施又は継続を決定する。このように、ドライバの不適切行動に起因して自律走行制御の使用制限が設定されている場合でも、自車両Amが渋滞中を走行する渋滞走行シーンでは、渋滞時レベル3による自律走行が許可される。
【0066】
自車周囲の渋滞が把握されない場合、制御切替部78は、S124にて、現在の自車両Amの走行エリアが許可エリアか否かを判定する。自車両Amが制限付き許可エリアを走行している場合、制御切替部78は、S127にて、運転支援制御の実施又は継続を決定する。一方、自車両Amが許可エリアを走行している場合、制御切替部78は、S125にて、自律走行制御の使用に制限が設定されているか否かを判定する。自律走行制御の使用に制限が設定されていない場合、制御切替部78は、S128にて、エリアレベル3の自律走行制御の実施又は継続を決定する。
【0067】
自律走行制御の使用に制限が設定されている場合、制御切替部78は、S126にて、運転支援制御の使用を提案する運転支援使用提案の実施要求の出力を報知要求部73に行わせ、さらにS127にて、運転支援制御の実施又は継続を決定する。
【0068】
以上の運転制御切替処理によれば、許可エリア内での渋滞解消に基づき渋滞時レベル3からエリアレベル3への移行が可能な渋滞解消シーンであっても、使用制限の設定に基づき、渋滞時レベル3からレベル2以下の運転支援制御への移行が実施される。加えて、運転支援制御への強制的な移行に合わせて、運転支援制御の使用を提案する運転支援使用提案が、実施要求を取得したHCU100によって実施される。尚、ドライバは、運転支援使用提案を受けて運転支援制御を使用しない判断をした場合、アクセル操作等によるオーバーライドの実施によって運転支援制御を終了させ、手動運転による走行を開始することが可能である。
【0069】
図6に示す提案実行処理は、ドライバ把握部72によるレベル3移行操作の把握に基づき、報知要求部73を主体として実施される。提案実行処理のS141にて、報知要求部73は、自律走行制御の使用に制限が設定されているか否かを判定する。自律走行制御の使用に制限が設定されていない場合、報知要求部73は、今回の提案実行処理を終了する。この場合、HCU100は、ドライバへ向けた行動改善提案を実施しない。
【0070】
一方、自律走行制御の使用に制限が設定されている場合、報知要求部73は、S142にて、使用制限報知の実施要求を情報連携部82へ向けて出力する。提示制御部88は、情報連携部82による使用制限報知の実施要求の取得に基づき、自律走行制御の使用が制限されていることをドライバに通知する。具体的に、提示制御部88は、「自動運転機能の使用が制限されています」等の音声メッセージを、オーディオ装置24を用いて車室内に再生させる。加えて提示制御部88は、「自動運転機能の使用が制限されています」等の文字メッセージを含んだメッセージウインドMW1(
図7参照)を、HUD23の画角VA内に虚像表示させる。尚、メッセージウインドMW1を表示する表示デバイスは、メータディスプレイ21及びCID22等であってもよい。
【0071】
さらに、報知要求部73は、S143にて、行動改善提案の実施要求を情報連携部82へ向けて出力する。提示制御部88は、情報連携部82による行動改善提案の実施要求の取得に基づき、前回の自動運転期間にて把握された不適切行動に紐づく情報提示をドライバに対して実施する。一例として、運転姿勢を崩す不適切行動が把握されていた場合、提示制御部88は、自動運転期間中の運転姿勢を適正に保つように、ドライバへの通知を行う。具体的に、提示制御部88は、「自動運転中も運転姿勢を維持してください」等の音声メッセージを、オーディオ装置24を用いて車室内に再生させる。
【0072】
加えて提示制御部88は、メッセージウインドMW2及びスコアバーSDを、メータディスプレイ21等の表示デバイスを用いて表示させる(
図7参照)。メッセージウインドMW2には、「自動運転中も運転姿勢を維持してください」等の文字メッセージが表示される。スコアバーSDは、ドライバのどのような行動が不適切行動であったのかを、可視化して示す表示物である。スコアバーSDには、不適切行動として定義された各行動を示す項目名と、各行動のスコアとが表示される。詳記すると、シートベルトを外す行動、姿勢の崩れ、居眠り、及びオーバーライドにならない程度のステアリング操作が不適切行動として規定されている場合、「シートベルト」、「運転姿勢」、「居眠り」及び「運転操作」等が項目名として表示される。さらに、不適切行動となる基準に対して各行動がどの程度行われたかを示すバー状の画像部が、項目名と隣接する位置に表示される。上述したように、運転姿勢の崩れが不適切行動であった場合、スコアバーSDの「運転姿勢」の項目名及びバー状の画像部が、強調表示される。さらに、不適切行動に該当する項目名及びバー状の画像部は、特定スコアバーSDsとして、HUD23の画角VA内に表示されてよい。
【0073】
例えば、シートベルトを外す行動が不適切行動として検出された場合、「自動運転中もシートベルトを締めてください」等のメッセージが、音声及び画像によってドライバに提示される。また、自動走行期間の居眠りが不適切行動として検出された場合、「自動運転中の居眠りは禁止されています」等のメッセージが、音声及び画像によってドライバに提示される。さらに、オーバーライドにならない程度のステアリング操作が不適切行動として検出された場合、「自動運転中のハンドル操作に注意してください」等のメッセージが、音声及び画像によってドライバに提示される。
【0074】
尚、提示制御部88は、使用制限報知及び行動改善提案を順に実施してもよく、使用制限報知及び行動改善提案を併行実施してもよい。さらに、提示制御部88は、提案実行処理に基づく使用制限報知及び行動改善提案と、運転制御切替処理に基づく運転支援使用提案とを併行実施してもよい。
【0075】
ここまで説明した第一実施形態では、自動運転機能によって走行する制御走行期間にて、ドライバの不適切行動が把握された場合、次回の自動運転機能の使用が制限される。こうして自動運転機能の使用が制限されれば、ドライバは、以前の制御走行期間で不適切行動があったことを認識できる。その結果、自動運転機能によって走行する期間でのドライバの不適切行動を改善せることが可能になる。
【0076】
加えて第一実施形態の自動運転機能は、ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを実施可能である。そして、制御切替部78は、自動走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合、次回の自動運転機能の使用において、自律走行制御による走行を禁止する。以上のように、不適切行動によって自律走行制御の使用が禁止されれば、自動運転機能を利用するドライバに対し、自身の行動を改めるように誘導することが可能になる。
【0077】
また第一実施形態では、自動走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合でも、次回の自動運転機能の使用において、運転支援制御による走行が許可される。言い替えれば、自律走行制御が実施可能な条件下でも、運転支援制御の実施しか許可されない。以上によれば、自動運転機能の利便性を確保しつつ、ドライバへのペナルティを設定して、不適切行動を改めるようにドライバを誘導することが可能になる。
【0078】
さらに第一実施形態では、自律走行制御の使用に制限が設定されている場合、制限設定の存在を示す報知がドライバに対して実施される。具体的には、自律走行制御による走行が禁止されている場合、レベル3移行操作をドライバが入力すると、提示制御部88は、使用制限報知を実施し、自律走行制御に移行しないことをドライバに通知する。以上によれば、ドライバは、自動運転機能の制限が設定された現在の状態を確実に把握し得る。その結果、好ましくない不適切行動をとったことをドライバに自覚させ、行動を改めるように誘導する効果が、いっそう発揮され易くなる。
【0079】
加えて第一実施形態では、自動走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合、次回の自動運転機能の使用に際して、運転支援制御による走行をドライバに提案する運転支援使用提案が実施される。具体的には、レベル3移行操作をドライバが入力しても、提示制御部88は、運転支援制御による走行の継続をドライバに通知する。こうした報知によっても、ドライバは、以前の自動運転期間での不適切行動の実施を自覚し得る。その結果、自発的に行動改善を促す効果が、いっそう発揮され易くなる。
【0080】
また第一実施形態では、自動走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合でも、自車両Amが渋滞中を走行する渋滞走行シーンでは、渋滞時レベル3の自律走行制御による走行が許可される。このような渋滞時レベル3の自律走行制御の機能は、ドライバにとって最も利便性が高い機能となる。故に、渋滞時レベル3の使用までは禁止しないことで、ドライバの利便性が顕著に損なわれる事態は回避される。
【0081】
さらに第一実施形態では、渋滞走行シーンにて渋滞時レベル3による走行が許可された場合でも、エリアレベル3による走行は、制限される。その結果、使用制限が設定されていなければエリアレベル3への移行が可能な渋滞解消シーンであっても、制御切替部78は、使用制限の設定に基づき、渋滞時レベル3から運転支援制御へと強制的に移行させる。以上によれば、自動運転機能の利便性を確保しつつ、ドライバへのペナルティにより、不適切行動の改善を促すことが可能になる。
【0082】
加えて第一実施形態では、制御走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合、ドライバに対して行動改善提案が実施される。以上によれば、ドライバは、どの行動が不適切であったかを把握して、適切に改善を図ることが可能になる。したがって、自動運転機能の使用を制限しても、ドライバの利便性が損なわれ難くなる。
【0083】
加えて第一実施形態では、自動転機能の使用が制限された制御走行期間にて、ドライバの行動の改善が把握された場合、次回の自動運転機能の使用における制限が緩和される。以上によれば、ドライバは、使用制限の緩和というメリット獲得のため、積極的に不適切行動を改めるようになる。その結果、自動運転機能の利便性を確保しつつ、自動運転機能の適切な使い方をドライバに把握させることが可能になる。
【0084】
尚、上記第一実施形態において、ドライバの不適切行動が「特定行動」に相当し、許可エリアが「特定エリア」に相当する。また、自動運転ECU50bが「機能制御装置」に相当し、ドライバ把握部72が「ドライバ行動把握部」に相当し、報知要求部73が「報知制御部」及び「改善提案部」に相当し、制御切替部78が「制御制限部」に相当する。
【0085】
(第二実施形態)
本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、第一実施形態にて自動運転ECU50bに実施されていた機能制御装置の機能が、
図1~
図3に示すHCU100に実装されている。HCU100の記憶部53には、提示制御プログラムに加えて、機能制御プログラムが格納されている。HCU100の各機能部は、機能制御プログラムに基づき、制限設定処理(
図4参照)及び提案実行処理(
図6参照)を実施可能である。
【0086】
制限設定処理は、HCU100の情報連携部82が主体となって実施される。情報連携部82は、ドライバ行動把握部86と連携し、ドライバの行動、特に不適切行動を把握する(S101)。情報連携部82は、自動運転ECU50bから取得する制御ステータス情報を参照し、自律走行制御から運転支援制御への切り替え条件が成立するまで(S102:YES)、ドライバの行動把握を継続する。
【0087】
情報連携部82は、制御切替部78にて自律走行制御の使用に制限が設定されているか否かを判定し(S103)、使用制限が設定されている場合(S103:YES)には、ドライバ行動の改善の有無をさらに判定する(S104)。ドライバ行動把握部86にてドライバ行動の改善が把握されていた場合(S104:YES)、情報連携部82は、情報連携部61へ向けて解除要求を出力する(S105)。以上の解除要求に基づき、制御切替部78にて使用制限の設定解除処理が実施される。
【0088】
一方、自律走行制御の使用制限が設定されていない場合、情報連携部82は、直前の自動運転期間における不適切行動の有無を判定する(S106)。ドライバ行動把握部86による不適切行動の把握がない場合(S106:NO)、情報連携部82は、今回の制限設定処理を終了する。対して、ドライバ行動把握部86により不適切行動が把握されていた場合(S106:YES)、情報連携部82は、情報連携部61へ向けて、自律走行制御への移行条件の厳格化を要求する制限設定要求を出力する(S107)。以上の制限設定要求に基づき、制御切替部78にてエリアレベル3の使用を禁止する設定が行われる。尚、第二実施形態でも、レベル2以下の運転支援制御の使用及び渋滞時レベル3の自律走行制御の使用は、制限が設定された状態下でも許可される。
【0089】
提案実行処理は、提示制御部88が主体となって実施される。提示制御部88は、情報取得部81にて取得される操作情報に基づき、レベル3移行操作が入力された場合に、提案実行処理を開始する。提示制御部88は、情報連携部82にて取得される制御ステータス情報に基づき、自律走行制御に使用制限が設定されているか否かを判定する(S141)。使用制限の設定がない場合(S141:NO)、提示制御部88は、今回の提案実行処理を終了する。
【0090】
一方、使用制限の設定がある場合(S141:YES)、提示制御部88は、表示デバイス及びオーディオ装置24を用いて、使用制限報知(S142)及び行動改善提案(S143)を順次実施する(
図7参照)。尚、第二実施形態では、行動改善提案に合わせて、運転支援使用提案も実施される。
【0091】
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、以前の制御走行期間で不適切行動があったことをドライバに認識させることで、制御走行期間におけるドライバの不適切行動を改善せることが可能になる。尚、第二実施形態では、HCU100が「機能制御装置」に相当し、情報連携部82が「制御制限部」に相当し、提示制御部88が「報知制御部」及び「改善提案部」に相当する。
【0092】
(第三実施形態)
本開示の第三実施形態は、第一実施形態の別の変形例である。第三実施形態では、ドライバの不適切行動が把握された場合に、自動運転機能の使用制限として、セカンドタスクの許可範囲を狭める設定変更が実施される。以下、セカンドタスクの許可範囲を変更する第三実施形態の制限設定処理(
図8参照)の詳細を、
図1~
図3を参照しつつ説明する。
【0093】
制限設定処理は、第一実施形態と同様に、自動運転ECU50bの制御切替部78が主体となって実施される。制御切替部78は、ドライバ把握部72と連携し、HCU100から提供されるドライバ行動情報に基づき、ドライバの行動、特に不適切行動を把握する(S301)。制御切替部78は、実施中の自律走行制御を終了させるまで、ドライバの行動把握を継続する(S301及びS302)。
【0094】
制御切替部78は、セカンドタスクの許可範囲に制限が設定されているか否かを判定し(S303)、許可範囲が既に制限されている場合(S303:YES)には、ドライバ行動の改善の有無をさらに判定する(S304)。ドライバ把握部72にてドライバ行動の改善が把握されていた場合(S304:YES)、制御切替部78は、許可範囲の制限を緩和又は解除する(S305)。一方、ドライバ行動が改善されていない場合、制御切替部78は、許可範囲の制限を維持し、今回の制限設定処理を終了する。
【0095】
対して、セカンドタスクの許可範囲が制限されていない場合(S303:NO)、制御切替部78は、直前の自動運転期間における不適切行動の有無を判定する(S306)。ドライバ把握部72による不適切行動の把握がない場合(S306:NO)、制御切替部78は、許可範囲に制限を設けることなく、今回の制限設定処理を終了する。一方、ドライバ把握部72にて不適切行動が把握されていた場合(S306:YES)、制御切替部78は、セカンドタスクの許可範囲を縮小し、今回の制限設定処理を終了する。以上により、次回の自動走行期間においてドライバに許可されるセカンドタスが制限される。
【0096】
制御切替部78は、今回の自動走行期間にてドライバの不適切行動が把握された場合、次回の自動走行期間にて、自車両Amに付属しないデバイスの操作を不許可とする。この場合でも、制御切替部78は、自車両Amに付属するデバイスの操作を許可する。例えば制御切替部78は、CID22によって再生される動画コンテンツの視聴を許可する一方で、ドライバの手が塞がるようなスマートフォン等の操作を許可しない。
【0097】
ここで、第三実施形態の運転制御切替処理(
図5参照)では、S125及びS126の処理が省略される。また、第三実施形態の提案実行処理(
図6参照)では、使用制限報知に相当する報知として、セカンドタスクの許可範囲が制限されていることを示すタスク制限報知が実施される(S142)。
【0098】
ここまで説明した第三実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、以前の制御走行期間で不適切行動があったことをドライバに認識させることで、制御走行期間におけるドライバの不適切行動を改善せることが可能になる。
【0099】
加えて第三実施形態では、自動走行期間にてドライバによる不適切行動が把握された場合、次回の自動運転機能の使用において、ドライバに許可されるセカンドタスクが制限される。以上のように、自動走行期間の利便性を低下させるようなペナルティが設定されれば、不適切行動を改めるようにドライバを誘導することが可能になる。
【0100】
(第四実施形態)
本開示の第四実施形態は、第三実施形態の変形例である。第四実施形態では、第三実施形態にて自動運転ECU50bに実施されていた機能制御装置の機能が、HCU100に実装されている。第四実施形態でも、HCU100にて実行される機能制御プログラムに基づき、情報連携部82が主体となって制限設定処理(
図8参照)を実施する。
【0101】
情報連携部82は、ドライバ行動把握部86により不適切行動が把握されていた場合(S306:YES)、セカンドタスクの許可範囲を縮小する設定変更を実施する(S307)。情報連携部82は、複数のセカンドタスクを段階的に不許可としてもよく、複数のセカンドタスクを纏めて不許可としてもよい。以上の結果、不許可となったセカンドタスクの実施がドライバ行動把握部86にて把握された場合、情報連携部82は、自律走行制御の終了を自動運転ECU50bに要求する。
【0102】
情報連携部82は、セカンドタスクの許可範囲を縮小する制限が設定された状態下、ドライバ行動把握部86にてドライバ行動の改善が把握された場合(S304:YES)、設定されていた許可範囲の制限を緩和する(S305)。許可範囲の制限緩和は、不許可とされた複数のセカンドタスクの一部を段階的に許可する処理であってもよく、又は不許可とされた複数のセカンドタスクを全て許可する処理であってもよい。
【0103】
ここまで説明した第四実施形態でも、第三実施形態と同様の効果を奏し、以前の制御走行期間で不適切行動があったことをドライバに認識させることで、制御走行期間におけるドライバの不適切行動を改善せることが可能になる。
【0104】
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0105】
上記第一,第二実施形態では、自動走行期間においてドライバが好ましくない不適切行動を行った場合に、次回のエリアレベル3への移行が禁止されていた。言い替えれば、レベル3への移行条件に、渋滞中という条件を追加する移行条件の厳格化が実施されていた。対して、上記実施形態の変形例1では、ドライバが不適切行動を行った場合に、次回の自動走行制御への移行が完全に禁止される。即ち、変形例1における自動運転機能の使用制限は、エリアレベル3への移行だけでなく、渋滞時レベル3への移行も禁止する内容となる。こうした変形例1では、例えば運転支援(レベル2)期間におけるドライバ行動の改善、レベル3実施可能条件下における運転支援制御の複数回の使用、移行禁止後の所定時間の経過等に基づき、レベル3への移行制限が解除又は緩和されてよい。
【0106】
また上記実施形態の変形例2では、自動走行期間においてドライバが不適切行動を行った場合に、次回の自律走行制御の使用だけでなく、次回の運転支援制御の使用も禁止される。
【0107】
上記第一,第二実施形態では、エリアレベル3への移行が禁止された場合に、運転支援使用提案の実施後、ドライバのリアクションに関わらず、運転支援制御への移行が行われていた。対して、上記実施形態の変形例3では、運転支援使用提案の実施後、ドライバがエリアレベル3への移行を指示するレベル3移行操作を再度入力した場合には、エリアレベル3への移行が許可される。即ち、変形例3では、ドライバ操作が必要になるという移行条件の厳格化が、使用制限として実施される。
【0108】
上記実施形態の変形例4では、レベル2以下の運転支援期間においても、不適切行動が把握される。運転支援期間における不適切行動の種類は、自動運転期間における不適切行動の種類よりも多くされる。運転支援期間においてドライバの不適切行動が把握された場合、次回の運転支援制御の使用が禁止される。
【0109】
上記実施形態の変形例5では、自動運転ECU50bがレベル4の自律走行制御を実施する。自動運転ECU50bは、レベル4の自動運転期間にて不適切行動を把握した場合、次回のレベル4の使用を禁止する。尚、レベル4の不適切行動は、システムからコールがあった場合でも睡眠状態を継続した(起きなかった)、シートベルトを外した、ドライバモニタ29の検出範囲外となるような姿勢の崩れ等とされる。
【0110】
上記第一,第二実施形態では、ドライバの不適切行動があった場合に、次回の機能使用時に、行動改善提案が実施されていた。一方、上記実施形態の変形例6では、ドライバの不適切行動が把握されたタイミングで、行動改善提案が実施される。この場合も、行動改善の有無に応じて、次回の機能使用が制限される。
【0111】
上記実施形態の変形例7では、自律走行制御の使用が制限されている場合、レベル3移行操作があっても、使用制限報知は、実施されない。こうした変形例7のように、ドライバへ向けた各報知は、適宜省略されてよい。また、各報知の内容も、適宜変更されてよい。
【0112】
上記実施形態の変形例8では、自動運転期間において把握された不適切行動の項目及び程度に応じて、自動運転機能の使用制限の程度が変更される。例えば、ドライバが眠ってしまった場合、レベル3の使用が完全に禁止され、姿勢が悪かった場合には、エリアレベル3の使用のみが禁止される。
【0113】
上記実施形態の変形例9では、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bの各機能は、一つの自動運転ECUによって提供されている。即ち、変形例9の自動運転ECU50bには、運転支援ECU50aの機能が実装されている。この自動運転ECU50bには、環境認識部62、行動判断部63、制御実行部64、情報取得部81、ドライバ行動把握部86及び提示制御部88等の機能部が、機能制御プログラムに基づき構築される。即ち、変形例9では、情報連携部61,82に相当する機能部が省略される。
【0114】
また、上記実施形態の変形例10では、運転支援ECU50a、自動運転ECU50b及びHCU100の各機能が、一つの統合ECUによって提供されている。こうした変形例10では、統合ECUが「機能制御装置」に相当する。
【0115】
上記実施形態にて、自動運転ECU及びHCUによって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0116】
上記実施形態の各処理部は、プリント基板に個別に実装された構成であってもよく、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA等に実装された構成であってもよい。また、各種プログラム等を記憶する記憶媒体(持続的有形コンピュータ読み取り媒体,non-transitory tangible storage medium)の形態も、適宜変更されてよい。さらに、記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、自動運転ECU又はHCUの制御回路に電気的に接続される構成であってよい。また、記憶媒体は、自動運転ECU又はHCUへのプログラムのコピー基となる光学ディスク及びのハードディスクドライブ等であってもよい。
【0117】
上記の自動運転システム及びHMIシステムを搭載する車両は、一般的な自家用の乗用車に限定されず、レンタカー用の車両、有人タクシー用の車両、ライドシェア用の車両、貨物車両及びバス等であってもよい。また、自動運転システム及びHMIシステムを搭載する車両は、右ハンドル車両であってもよく、又は左ハンドル車両であってもよい。さらに、車両が走行する交通環境は、左側通行を前提とした交通環境であってもよく、右側通行を前提とした交通環境であってもよい。本開示による自動運転制御、情報提示制御及び機能制御の各内容は、それぞれの国及び地域の道路交通法、さらに車両のハンドル位置等に応じて適宜最適化されてよい。
【0118】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0119】
Am 自車両、11,51 処理部、50b 自動運転ECU(機能制御装置)、72 ドライバ把握部(ドライバ行動把握部)、73 報知要求部(報知制御部,改善提案部)、78 制御切替部(制御制限部)、82 情報連携部(制御制限部)、86 ドライバ行動把握部、88 提示制御部(報知制御部,改善提案部)、100 HCU(提示制御装置)