(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】バッテリ昇温装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20241029BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20241029BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20241029BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/637 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/657 20140101ALI20241029BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L1/00 L
B60L50/64
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/637
H01M10/657
(21)【出願番号】P 2021072573
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕志
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-278292(JP,A)
【文献】特開2015-154521(JP,A)
【文献】特開2005-160284(JP,A)
【文献】特開2010-119282(JP,A)
【文献】特開2019-126246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/637
H01M 10/657
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用モータに供給される電力を蓄えるバッテリと、
前記車両走行用モータに供給される電力を制御するインバータと、
前記バッテリと前記インバータとの間に配置され、前記バッテリから前記インバータに供給される電圧を上昇させる昇圧コンバータと、
前記バッテリから供給される電力によって作動する補機部品と、前記バッテリとの間に配置されたDC/DCコンバータと、
を含む車両に適用されたバッテリ昇温装置であって、
前記DC/DCコンバータで生じた熱を前記バッテリに伝達させる伝熱部と、
前記DC/DCコンバータと、前記バッテリと前記昇圧コンバータとの間とを接続する第1電力線と、
前記DC/DCコンバータと、前記昇圧コンバータと前記インバータとの間とを接続する第2電力線と、
第1電力線を開閉する第1スイッチと、
第2電力線を開閉する第2スイッチと、
前記第1及び第2スイッチのそれぞれのオン/オフを制御する電子制御ユニットと、
を備え、
前記電子制御ユニットは、前記バッテリの温度が閾値より高い場合には前記第1スイッチをオン状態に、かつ前記第2スイッチをオフ状態にし、一方、前記バッテリの温度が前記閾値以下の場合には前記第1スイッチをオフ状態に、かつ第2スイッチをオン状態にする接続位置可変処理を実行する
ことを特徴とするバッテリ昇温装置。
【請求項2】
前記電子制御ユニットは、前記接続位置可変処理において前記第1スイッチをオフ状態に、かつ第2スイッチをオン状態にした後に前記バッテリの温度が前記閾値より高くなった場合、前記第1スイッチをオン状態に、かつ前記第2スイッチをオフ状態に切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ昇温装置。
【請求項3】
前記電子制御ユニットは、前記車両の車両システム起動時に前記接続位置可変処理を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリ昇温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のバッテリ昇温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両において発生させた熱を各種機器の暖機のために活用する熱マネージメントシステムが開示されている。具体的には、この熱マネージメントシステムは、パワー素子によって作動が調整されるインバータ及びDC/DCコンバータ等の電子部品と、パワー素子の動作を制御する制御装置とを備える。制御装置は、車両駆動用機器及び空調用機器の少なくとも一方からの暖機要求を受けると、通常の動作状態と比べて効率を低下させる発熱増大作動でパワー素子を動作させることにより電子部品を発熱させる。このように発生した熱は、暖機要求のある上記機器に対して供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、パワー素子のスイッチング周波数を変更することによって上述の発熱増大作動を実施する例が開示されている。このようにパワー素子を複数のスイッチング周波数で動作させることとすると、複数のスイッチング周波数に対応したEMC(Electromagnetic Compatibility)フィルタが必要となる。これは、スイッチング周波数によってEMCで対策すべき周波数が異なるためである。そして、このことは、コストの増加につながる。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、低コストでDC/DCコンバータの排熱を利用した効果的なバッテリの昇温を行えるようにしたバッテリ昇温装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るバッテリ昇温装置は、車両走行用モータに供給される電力を蓄えるバッテリと、車両走行用モータに供給される電力を制御するインバータと、バッテリとインバータとの間に配置され、バッテリからインバータに供給される電圧を上昇させる昇圧コンバータと、バッテリから供給される電力によって作動する補機部品とバッテリとの間に配置されたDC/DCコンバータと、を含む車両に適用される。
バッテリ昇温装置は、伝熱部と、第1電力線と、第2電力線と、第1スイッチと、第2スイッチと、電子制御ユニットと、を備える。伝熱部は、DC/DCコンバータで生じた熱をバッテリに伝達させるように構成されている。第1電力線は、DC/DCコンバータと、バッテリと昇圧コンバータとの間とを接続している。第2電力線は、DC/DCコンバータと、昇圧コンバータとインバータとの間とを接続している。第1スイッチは、第1電力線を開閉する。第2スイッチは、第2電力線を開閉する。電子制御ユニットは、第1及び第2スイッチのそれぞれのオン/オフを制御する。
電子制御ユニットは、バッテリの温度が閾値より高い場合には第1スイッチをオン状態に、かつ第2スイッチをオフ状態にし、一方、バッテリの温度が閾値以下の場合には第1スイッチをオフ状態に、かつ第2スイッチをオン状態にする接続位置可変処理を実行する。
【0007】
電子制御ユニットは、接続位置可変処理において第1スイッチをオフ状態に、かつ第2スイッチをオン状態にした後にバッテリの温度が閾値より高くなった場合、第1スイッチをオン状態に、かつ第2スイッチをオフ状態に切り替えてもよい。
【0008】
電子制御ユニットは、車両の車両システム起動時に接続位置可変処理を実行してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るバッテリ昇温装置によれば、バッテリの温度が閾値以下であるか否かに応じて、昇圧コンバータに対するDC/DCコンバータの接続位置が変更される。具体的には、バッテリの温度が閾値以下の場合には、DC/DCコンバータの入力電圧が高くなる接続位置が選択される。DC/DCコンバータの電力変換効率は、入力電圧が高いほど低下する。そして、DC/DCコンバータでの発熱量は、電力変換効率が低い場合にはそれが高い場合と比べて大きくなる。したがって、バッテリ昇温装置によれば、バッテリの温度が閾値以下の場合に、DC/DCコンバータの排熱をより積極的に利用して、バッテリの昇温を促進できる。そして、このような手法によれば、DC/DCコンバータのパワー素子のスイッチング周波数を変更することなく、つまり、DC/DCコンバータのEMCフィルタの設計変更を生じさせずに、DC/DCコンバータの発熱量を増加させられる。このため、低コストでDC/DCコンバータの排熱を利用した効果的なバッテリの昇温を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るバッテリ昇温装置を含む電動駆動システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る伝熱部Hの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図3】DC/DCコンバータにおける入力電圧と電力変換効率との関係を示すグラフである。
【
図4】実施の形態に係るバッテリ昇温制御に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る技術思想に必ずしも必須のものではない。
【0012】
1.電動駆動システムの構成
図1は、実施の形態に係るバッテリ昇温装置を含む電動駆動システム10の構成の一例を概略的に示す図である。電動駆動システム10は、車両を駆動するために車両に搭載される。電動駆動システム10は、モータジェネレータ(MG)12と、バッテリ14とを備えている。
【0013】
MG12は、例えば、三相交流同期電動発電機であり、本開示に係る「車両走行用モータ」の一例に相当する。バッテリ14は、MG12に供給される電力を蓄える高電圧バッテリであり、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素二次電池等の二次電池である。このように、電動駆動システム10が搭載された車両は、バッテリ電気自動車である。ただし、電動駆動システム10は、内燃機関とともに車両に搭載されていてもよい。すなわち、本開示に係る「バッテリ昇温装置」は、例えば、プラグインハイブリッド車両等のハイブリッド車両に適用されてもよい。
【0014】
電動駆動システム10は、さらに、インバータ16と、昇圧コンバータ18と、DC/DCコンバータ20とを備えている。
【0015】
インバータ16は、後述のECU34からの指令に従い、バッテリ14からMG12に供給される電力を制御する。インバータ16は、例えば、三相分のスイッチング素子を含む三相PWMインバータである。
【0016】
昇圧コンバータ(昇圧回路)18は、パワー素子(スイッチング素子)を含んで構成されている。昇圧コンバータ18は、バッテリ14とインバータ16との間に配置され、バッテリ14からインバータ16に供給される電圧を上昇させる。より詳細には、バッテリ14と昇圧コンバータ18との間には、システムメインリレー(SMR)24が配置されている。SMR24は、後述のECU34からの指令に従い、バッテリ14と昇圧コンバータ18との間の電気的な接続/遮断を切り替える。SMR24は、車両システムが起動するとオン状態(接続状態)となる。
【0017】
バッテリ14には、補機部品22が接続されている。補機部品22は、ヘッドランプ又はワイパ等の車載機器である。DC/DCコンバータ20は、バッテリ14から供給される電力によって作動する補機部品22とバッテリ14との間に配置されている。より詳細には、DC/DCコンバータ20は、パワー素子(スイッチング素子)を含んで構成され、入力電圧を所定の補機電圧に変換(降圧)して補機部品22に出力する。
【0018】
また、電動駆動システム10の電気回路は、それぞれ正負一対の電力線である第1電力線26及び第2電力線28と、それぞれ一対のスイッチである第1スイッチ30及び第2スイッチ32とを備えている。
【0019】
図1に示すように、第1電力線26は、DC/DCコンバータ20と、バッテリ14と昇圧コンバータ18との間とを接続している。第2電力線28は、DC/DCコンバータ20と、昇圧コンバータ18とインバータ16との間とを接続している。第1スイッチ30は、第1電力線26上に配置され、第1電力線26を開閉する。第2スイッチ32は、第2電力線28上に配置され、第2電力線28を開閉する。
【0020】
電動駆動システム10は、さらに、電子制御ユニット(ECU)34を備えている。ECU34は、電動駆動システム10に関する各種処理を実行するコンピュータである。具体的には、ECU34によって実行される処理は、MG12の制御のためのインバータ16及び昇圧コンバータ18の制御に関する処理、及びSMR24の制御に関する処理とともに、バッテリ14の状態の監視に関する処理を含む。
【0021】
ECU34は、プロセッサ34a及びメモリ34bを備えている。プロセッサ34aは、メモリ34bに格納されているプログラムを読み出して実行する。これにより、プロセッサ34aによる上述の各種処理が実現される。なお、ECU34は複数であってもよい。例えば、ECU34は、電動駆動システム10を統括的に制御するECUと、インバータ16及び昇圧コンバータ18を介してMG12を制御するECUと、バッテリ14の状態を監視するECUとを含むように構成されていてもよい。
【0022】
バッテリ14には、バッテリ14の温度Tbを検出するバッテリ温度センサ36が取り付けられている。バッテリ14の状態監視機能を有するECU34による処理は、バッテリ14の昇温に関する後述の処理(接続位置可変処理)を含む。また、ECU34は、パワースイッチ38からの入力信号に基づいて、車両システムの起動状態を把握することができる。
【0023】
(伝熱部H)
また、電動駆動システム10は、DC/DCコンバータ20で生じた熱をバッテリ14に伝達させる伝熱部Hを備えている。
図2は、実施の形態に係る伝熱部Hの構成の一例を概略的に示す図である。
【0024】
図2に示すように、電動駆動システム10は、バッテリ14の温度を制御するための冷媒循環回路40を備えている。冷媒循環回路40の内部を循環する冷媒液は、例えば、絶縁性能の高い(すなわち、高抵抗の)冷媒液である。冷媒循環回路40には、バッテリ14の熱交換部42、リザーブタンク44、熱交換器46、及びポンプ48が、一例としてこの順で配置されている。
【0025】
熱交換部42は、バッテリ14と冷媒液とを熱交換させるためにバッテリ14に設けられている。リザーブタンク44は、例えば完全密閉型であり、冷媒液を貯留している。熱交換器46は、例えば空冷のラジエータであり、冷媒液を冷却する。ポンプ48は、例えば電動式であり、冷媒循環回路40内において冷媒液を循環させる。具体的には、ポンプ48が作動すると、リザーブタンク44内の冷媒液が熱交換器46を介してバッテリ14の熱交換部42に供給される。熱交換部42を通過した冷媒液は、リザーブタンク44に戻る。なお、ポンプ48の制御は、ECU34によって行われる。
【0026】
そのうえで、冷媒循環回路40は、DC/DCコンバータ20と冷媒液との間で熱交換を行うための通路を含んで構成されている。DC/DCコンバータ20は、一例として、熱交換部42の入口とポンプ48の出口との間に配置されている。このような構成によれば、DC/DCコンバータ20で生じた熱を、冷媒液によって熱交換部42に伝達したうえで、熱交換部42を介してバッテリ14に供給できる。本開示に係る「伝熱部」は、例えば、このように構成された伝熱部Hによって実現できる。なお、
図2に示す例では、冷媒液は、常にDC/DCコンバータ20に流れることになる。このような例に代え、冷媒循環回路40は、バッテリ14の昇温時にのみ冷媒液がDC/DCコンバータ20に流れるように構成されてもよい。
【0027】
付け加えると、本開示に係る「伝熱部」の具体例は、DC/DCコンバータ20で生じた熱をバッテリ14に伝達させるものであれば、
図2に示す伝熱部Hに限られない。すなわち、「伝熱部」は、伝熱部Hに代え、例えば、次のような構成を用いて実現されてもよい。ここで説明されるような伝熱部の他の構成例は、特開2010-119282号公報において詳述されているため、ここでは、その概要のみが説明される。当該他の構成例では、暖房のために車室内に配置されたヒータコアと内燃機関との間で冷媒液(冷却水)が循環する冷却水回路を備える車両において、ヒータコアによって加熱された空気(温風)をバッテリに供給する送風部材が備えられている。そして、当該冷却水回路は、DC/DCコンバータで生じた熱が当該冷却水を介してヒータコアに供給可能となるように構成されている。このような構成を有する伝熱部の他の例によれば、DC/DCコンバータで生じた熱を、ヒータコアにおいて冷却水を介して温風に吸熱させた後に、温風を介してバッテリに伝達させることができる。
【0028】
2.バッテリ昇温装置によるバッテリ昇温制御
上述した構成を有する電動駆動システム10では、本開示に係る「バッテリ昇温装置」は、伝熱部H、第1及び第2電力線26、28、第1及び第2スイッチ30、32、及びECU34によって構成されている。ECU34は、バッテリ14の昇温(暖機)が必要な時にDC/DCコンバータ20の排熱を利用してバッテリ14の昇温を促進するために、次のような「接続位置可変処理」を実行する。
【0029】
ECU34は、第1及び第2スイッチ30、32のそれぞれのオン/オフの切り替えを行うように構成されている。バッテリ14の昇温が必要とされない時(すなわち、通常使用時)には、ECU34は、第1スイッチ30をオン状態に、かつ第2スイッチ32をオフ状態とする。その結果、DC/DCコンバータ20は、昇圧コンバータ18の入力側においてバッテリ14と接続される。
【0030】
一方、バッテリ14の温度Tbが所定の閾値TH以下であるためにバッテリ14の昇温が必要な時には、ECU34は、接続位置可変処理において、第1スイッチ30をオフ状態に、かつ第2スイッチ32をオン状態とする。その結果、DC/DCコンバータ20は、昇圧コンバータ18の出力側においてバッテリ14と接続される。このため、DC/DCコンバータ20の入力電圧は、通常使用時と比べて高くなる。
【0031】
図3は、DC/DCコンバータ20における入力電圧と電力変換効率との関係を示すグラフである。
図3に示すように、DC/DCコンバータ20の電力変換効率は、DC/DCコンバータ20の入力電圧が高いほど低下する。したがって、上述の接続位置可変処理によれば、バッテリ14の昇温が必要な時に、DC/DCコンバータ20は、通常使用時と比べて電力変換効率が低い状態で動作することになる。そして、DC/DCコンバータ20での発熱量は、電力変換効率が低い場合にはそれが高い場合と比べて大きくなる。このため、接続位置可変処理によれば、DC/DCコンバータ20の排熱をより積極的に利用できるようになるので、バッテリ14の昇温を促進できる。
【0032】
図4は、実施の形態に係るバッテリ昇温制御に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。ECU34は、車両のユーザによるパワースイッチ38の操作に基づき、車両システムが起動されたか否かを判定している。このフローチャートの処理は、車両システムの起動に伴い、車両が走行可能状態(Ready-On状態)となった時に開始される。
【0033】
図4に示すフローチャートでは、ECU34は、まずステップS100において、第1スイッチ30をオン状態とし、第2スイッチ32をオフ状態とする。その後、処理はステップS102に進む。
【0034】
ステップS102では、ECU34は、バッテリ温度Tbを取得する。バッテリ温度Tbは、例えば、バッテリ温度センサ36を用いて取得できる。次いで、ステップS104では、ECU34は、取得したバッテリ温度Tbが所定の閾値TH以下であるか否かを判定する。この閾値THは、バッテリ14の昇温が必要な時であるか否かを判断するための予め設定された値である。
【0035】
ステップS104においてバッテリ温度Tbが閾値よりも高い場合、つまり、バッテリ14の昇温要求がない場合には、ECU34は、今回の車両システム起動時の処理を終了する。一方、ステップS104においてバッテリ温度Tbが閾値以下である場合、つまり、バッテリ14の昇温要求がある場合には、処理はステップS106に進む。
【0036】
ステップS106では、ECU34は、第1スイッチ30をオフ状態に切り替える。そして、続くステップS108において、ECU34は、第2スイッチ32をオン状態に切り替える。これにより、DC/DCコンバータ20の入力電圧が高くなるので、DC/DCコンバータ20の発熱量が増加する。
【0037】
ステップS108に続くステップS110では、ECU34は、バッテリ温度Tbを再度取得する。次いで、ステップS112において、ECU34は、取得した最新のバッテリ温度Tbが閾値TH以下であるか否かを判定する。その結果、バッテリ温度Tbが閾値TH以下となる間(ステップS112;Yes)は、ECU34は、ステップS110及びS112の処理を繰り返し実行する。
【0038】
一方、ステップS112においてバッテリ温度Tbが閾値THより高くなった場合(ステップS112;No)には、処理はステップS114に進む。ステップS114では、ECU34は、第2スイッチ32をオフ状態に切り替える。そして、続くステップS116において、ECU34は、第1スイッチ30をオン状態に切り替える。その後、ECU34は、今回の車両システム起動時の処理を終了する。
【0039】
なお、
図4に示すフローチャートの例では、車両システムが起動されると、まず第1スイッチ30がオン状態とされた後に、バッテリ温度Tbが閾値TH以下であるか否かが判定される。そして、バッテリ温度Tbが閾値TH以下である場合には、第1スイッチ30がオフ状態とされ、かつ第2スイッチ32がオン状態とされることにより、DC/DCコンバータ20の接続位置が変更される。このような例とは異なり、車両システムが起動された後に、先にバッテリ温度Tbが閾値TH以下であるか否かが判定されてもよい。そして、バッテリ温度Tbが閾値THより高い場合には第1スイッチ30がオン状態とされ、バッテリ温度Tbが閾値TH以下の場合には第2スイッチ32がオン状態とされてもよい。
【0040】
3.効果
以上説明したように、本実施形態に係るバッテリ昇温装置によれば、バッテリ温度Tbが閾値TH以下であるか否かに応じて、昇圧コンバータ18に対するDC/DCコンバータ20の接続位置が変更される。具体的には、バッテリ温度Tbが閾値TH以下の場合には、DC/DCコンバータ20の入力電圧が高くなる接続位置が選択される。これにより、DC/DCコンバータ20の排熱をより積極的に利用できるのでバッテリ14の昇温を促進できる。そして、このような手法によれば、DC/DCコンバータ20のパワー素子のスイッチング周波数を変更することなく、つまり、DC/DCコンバータ20のEMCフィルタの設計変更を生じさせずに、DC/DCコンバータ20の発熱量を増加させられる。このため、低コストでDC/DCコンバータ20の排熱を利用した効果的なバッテリ14の昇温を行えるようになる。
【0041】
付け加えると、DC/DCコンバータ20の接続位置の変更を利用する本実施形態のバッテリ昇温装置によれば、バッテリ14のSOC(State Of Charge)の状態によらずに、DC/DCコンバータ20の入力電圧を高く保つことができる。このため、バッテリ14の昇温が必要とされる時のSOCによらずに、排熱量を高く確保することが可能となる。また、DC/DCコンバータ20の接続位置を変更するという手法によってDC/DCコンバータ20の排熱の利用によるバッテリ14の昇温効果を高めることが可能となる。これにより、バッテリ14を昇温するための専用のヒータ(例えば、電気ヒータ)を削減できる。
【0042】
また、
図4に示すフローチャートの処理によれば、ステップS108において第2スイッチ32をオン状態とした後にバッテリ温度Tbが閾値THより高くなった場合(ステップS112;No)、つまり、閾値THよりも高い温度にまでバッテリ14が暖機された場合には、第2スイッチ32がオフ状態とされ、第1スイッチ30がオン状態とされる。つまり、電力変換効率が高い動作状態となるように、昇圧コンバータ18に対するDC/DCコンバータ20の接続位置が変更される。これにより、バッテリ14の暖機(昇温)が完了した後に、電力変換効率が低い状態でDC/DCコンバータ20が作動することを回避できる。
【0043】
さらに、上述した実施の形態では、「接続位置可変処理」は車両システムの起動時に実行される。これにより、車両システムの起動時にバッテリ温度Tbが低い場合に、バッテリ14の暖機を速やかに行えるようになる。ただし、本開示に係る「接続位置可変処理」は、車両システム起動時に代え、或いはそれとともに、車両システム起動中に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 電動駆動システム
12 モータジェネレータ(車両走行用モータ)
14 バッテリ
16 インバータ
18 昇圧コンバータ
20 DC/DCコンバータ
22 補機部品
24 システムメインリレー(SMR)
26 第1電力線
28 第2電力線
30 第1スイッチ
32 第2スイッチ
34 電子制御ユニット(ECU)
36 バッテリ温度センサ
38 パワースイッチ
40 冷媒循環回路
42 バッテリの熱交換部
44 リザーブタンク
46 熱交換器
48 ポンプ
H 伝熱部