IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7578070情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図8
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241029BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021095841
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187704
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 宏隆
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/067069(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/106340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムを構成する各装置のデータの通信を監視する通信部と、
前記通信部が監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、計測された前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する制御部と、
を備え
前記制御部は、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのパケット数を計測し、前記パケット数を用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記タグ付きデータの前記システムにおけるデータの種類を特定し、特定した前記種類に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理装置。
【請求項2】
システムを構成する各装置のデータの通信を監視する通信部と、
前記通信部が監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、計測された前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのデータサイズを計測し、前記データサイズを用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記タグ付きデータの前記システムにおけるデータの種類を特定し、特定した前記種類に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理装置。
【請求項3】
システムを構成する各装置のデータの通信を監視する通信部と、
前記通信部が監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、計測された前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのパケット数を計測し、前記パケット数を用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記システムの稼働時間に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理装置。
【請求項4】
システムを構成する各装置のデータの通信を監視する通信部と、
前記通信部が監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、計測された前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのデータサイズを計測し、前記データサイズを用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記システムの稼働時間に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理装置。
【請求項5】
前記タグ付きデータは、
前記ベンダが提供するプラントを構成する各装置から生成または出力され、
前記制御部は、
前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記プラントの運転制御を行う制御システムが生成する価値を評価する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記タグ付きデータは、
前記ベンダが前記システムの制御に利用するデータとしてデータベースに予め登録される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行し、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのパケット数を計測し、前記パケット数を用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記タグ付きデータの前記システムにおけるデータの種類を特定し、特定した前記種類に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータが、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行し、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのデータサイズを計測し、前記データサイズを用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記タグ付きデータの前記システムにおけるデータの種類を特定し、特定した前記種類に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータが、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行し、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのパケット数を計測し、前記パケット数を用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記システムの稼働時間に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータが、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行し、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのデータサイズを計測し、前記データサイズを用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記システムの稼働時間に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行させ
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのパケット数を計測し、前記パケット数を用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記タグ付きデータの前記システムにおけるデータの種類を特定し、特定した前記種類に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行させ、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのデータサイズを計測し、前記データサイズを用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記タグ付きデータの前記システムにおけるデータの種類を特定し、特定した前記種類に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理プログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行させ、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのパケット数を計測し、前記パケット数を用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記システムの稼働時間に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理プログラム。
【請求項14】
コンピュータに、
システムを構成する各装置のデータの通信を監視し、
監視する、前記システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、
計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
処理を実行させ、
前記各装置が生成する前記タグ付きデータおよび前記各装置が出力する前記タグ付きデータのデータサイズを計測し、前記データサイズを用いて、前記システムが生成する価値を評価し、
前記システムの稼働時間に応じて、前記タグ付きデータの重み付けを実行し、重み付けされた前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油、石油化学、化学、ガス等を扱うプラントの運転制御を行うシステム(適宜、「制御システム」)を提供するシステムベンダ(適宜、「ベンダ」)は、制御システムを利用するシステムユーザ(適宜、「ユーザ」)の要求に応じて、制御システムの設計、制御システム内に設置する機器等の調達、プラント建設地における制御システムの構築を経て、最終的に運用可能な制御システムを納入する。ベンダは、この制御システム納入時に、システム規模や作業量に応じた対価を受け取る。上記の制御システムは、システムの運用開始からシステムの廃棄までの稼働期間において、長期にわたって稼働されることが想定されており、また、プラント等の制御システムは規模も大きい。そのため、システムの価値を継続的に算定することは、ベンダ、ユーザ双方にとって重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-133596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、納入後に運用が開始された制御システムの価値を継続的に評価することは難しい。例えば、上記ベンダが納入した制御システムは、例えば当該システムの安全計装に関わるデータ等のやりとりをすることにより、運用開始後もユーザに価値を提供し続けている(例えば、特許文献1参照)。また、システムの稼働時間やデータの利用状況もユーザごとに異なるので、納入後のシステムの価値もユーザごとに変動する。
【0005】
このように、ベンダは、納入した制御システムが生成する価値を定量的、効率的かつ継続的に評価することが難しいことから、運用開始後に、評価結果に応じた対価を受け取ることも難しい。従って、運用が開始された制御システムの価値を継続的に評価する情報処理装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、システムを構成する各装置が送受信を行うデータであって、前記システムを提供するベンダを識別するタグを含むタグ付きデータの移動量を計測する計測部と、計測された前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する評価部と、を備える情報処理装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、コンピュータが、システムを構成する各装置が送受信を行うデータであって、前記システムを提供するベンダを識別するタグを含むタグ付きデータの移動量を計測し、計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、処理を実行する情報処理方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、コンピュータに、システムを構成する各装置が送受信を行うデータであって、前記システムを提供するベンダを識別するタグを含むタグ付きデータの移動量を計測し、計測した前記タグ付きデータの移動量に基づき、前記システムが生成する価値を評価する、処理を実行させる情報処理プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運用が開始された制御システムの価値を継続的に評価する情報処理装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図2】従来の制御システムのライフサイクルと価値の積算値との関係の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る制御システムのライフサイクルと価値の積算値との関係の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る重み付け処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態の変形例に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図8】実施形態の変形例に係る処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、本実施形態に係る情報処理システム100の構成、情報処理装置10等の構成、各処理の流れを順に説明し、最後に本実施形態の効果を説明する。
【0013】
[情報処理システム100の構成]
図1を用いて、本実施形態に係る情報処理システム(以下、適宜、本システムともいう)100の構成を詳細に説明する。図1は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。以下に、本システム100全体の構成例を示した上で、本システム100の処理について説明する。なお、本実施形態では、プラントの制御システムを一例にして説明するが、対象を限定するものではなく、様々なシステムの創出価値算出に適用できる。
【0014】
(システム全体の構成例)
本システム100は、情報処理装置10、ユーザが利用するプラント(以降、「ユーザプラント」ともいう。)に設置されるベンダ製品20(20A、20B)、他ベンダ製品30、ネットワーク装置であるルータ40、およびベンダが所有する課金アプリケーションを実行するアプリ実行装置50(以下、単に「課金アプリケーション50」と記載する。)を有する。ここで、情報処理装置10と、ベンダ製品20と、他ベンダ製品30と、課金アプリケーション50とは、ルータ40または図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、ルータ40は、ミラーポートを持ったネットワークスイッチでもよく、特に限定されない。また、課金アプリケーション50は、ベンダのオフィス等に設置される。また、図1に示した情報処理システム100には、複数台の情報処理装置10、複数台の他ベンダ製品30、複数台のルータ40、複数の課金アプリケーション50が含まれてもよい。
【0015】
(システム全体の処理)
このようなシステムにおいて、ベンダがユーザに提供するユーザプラントの制御システムの価値を算定する例を説明する。
【0016】
まず、ユーザのプラントにおいて、ベンダ製品20は、タグ付きデータを生成し、ルータ40に送信する(ステップS1)。このとき、ベンダ製品20が生成するタグ付きデータのタグは、例えば、パケットのペイロードに付与したベンダを識別する識別子であるが、特に限定されない。また、ベンダ製品20が生成するタグ付きデータのデータは、例えば、ベンダ製品20Aがプラント内のフィールド機器のセンサであった場合には、温度、圧力、流量等の測定データであり、ベンダ製品20Bがプラント内のDCS(Distributed Control System:分散型制御システム)であった場合には、ユーザプラント等を制御するデータであるが、特に限定されない。
【0017】
次に、ユーザのプラントにおいて、情報処理装置10は、パケットを監視し(ステップS2)、タグ付きデータのパケット数のカウントを集計する(ステップS3)。このとき、情報処理装置10は、タグ付きデータのパケット数を計測するとともに、パケットのデータサイズを計測してもよい。さらに、情報処理装置10は、タグ付きデータのパケットのヘッダ部からデータの属性等の情報を取得してもよい。また、情報処理装置10は、ルータ40等のネットワーク装置を監視し、通過したタグ付きデータをカウントしてもよいし、往復したタグ付きデータをカウントしてもよい。
【0018】
そして、ユーザのプラントにおいて、情報処理装置10は、集計したタグ付きデータのカウント数から、ベンダ製品20が関与したデータの価値、すなわちベンダが提供した制御システムの価値を算出し、課金アプリケーション50に送信する(ステップS4)。このとき、情報処理装置10は、タグ付きデータのサイズやデータの属性等から、ベンダが提供した制御システムの価値を算出してもよい。さらに、情報処理装置10は、制御システムの運用期間や稼働時間を考慮して、ベンダが提供した制御システムの価値を算出してもよい。
【0019】
最後に、課金アプリケーション50は、情報処理装置10から受信した制御システムの価値からユーザに対する制御システムの請求額を決定し、ユーザに請求する(ステップS5)。
【0020】
上述のステップS1~S5の処理を実行することにより、制御システムのベンダは、センサやDCSが生成するデータの流れから、制御システムが生み出す価値を正確かつ効率的に定量化し、課金することができる。すなわち、ベンダは、制御システムの価値に似合った利益を継続的に回収できるようになる。一方、制御システムのユーザは、制御システムの稼働率によって課金額が変化することから、ビジネス環境にあわせた運用ができるようになる。
【0021】
[情報処理装置10等の構成]
図2図4を用いて、図1に示したシステム100が有する各装置の機能構成について説明する。以下では、従来の制御システムの価値の評価を説明した上で、本実施形態に係る情報処理装置10等の構成、本実施形態に係る制御システムの価値の評価を詳細に説明する。
【0022】
(1.従来の制御システムの価値の評価)
図2を用いて、従来の制御システムの価値の評価を説明する。図2は、従来の制御システムのライフサイクルと価値の積算値との関係の一例を示す図である。図2で示したグラフの縦軸は、制御システムが生成する価値の積算値であり、グラフの横軸は、制御システムのライフサイクルを表わしている。
【0023】
まず、ベンダは、ユーザの要求に応じて、制御システムを設計し(図2「設計」参照)、制御システム内に設置する機器等を調達し(図2「調達」参照)、プラント建設地における制御システムを構築し(図2「構築」参照)、最終的に運用可能な制御システムを納入する(図2「運用開始」参照)。ベンダは、この制御システム納入時に、システム規模や作業量に応じた対価をユーザから受け取る(図2(1)参照)。
【0024】
また、ベンダが納入した制御システムは、制御に関するデータ等の送受信を行うことにより、運用開始後も制御システムが廃棄されるまでの期間(図2「運用開始」~「廃棄」参照)において、ユーザに価値を提供し続けている。一方、ベンダは、制御システムの保守や点検の対価を除き、納品後に制御システムが生成する価値の対価は受け取っていない(図2(2)参照)。
【0025】
このため、ベンダが制御システム納入時にユーザから受け取る対価(図2「初期投資費用」)は、運用開始後の制御システムの価値を含めて算出され、高い費用となる場合がある(図2(3)参照)。
【0026】
このように、従来、ベンダがユーザに提供するユーザプラントの制御システムは、納入後に生成する価値を算定することが難しく、ベンダにとっては、適切な対価を受け取ることが難しい。また、ユーザにとっても、初期投資費用が高くなる場合がある。したがって、プラントの安全運転を継続させるためにも、ベンダおよびユーザの双方にとって、有益となる評価指標の作成が要望されている。
【0027】
(2.各装置の構成)
次に、図3を用いて、図1に示した各装置の構成について説明する。図3は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示すブロック図である。以下に、情報処理装置10の構成、ベンダ製品20の構成、他ベンダ製品30の構成、課金アプリケーション50の構成の順に説明する。
【0028】
(情報処理装置10の構成)
情報処理装置10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。入力部11は、当該情報処理装置10への各種情報の入力を司る。例えば、入力部11は、マウスやキーボード等で実現され、当該情報処理装置10への設定情報等の入力を受け付ける。また、出力部12は、当該情報処理装置10からの各種情報の出力を司る。例えば、出力部12は、ディスプレイ等で実現され、当該情報処理装置10に記憶された設定情報等を出力する。
【0029】
通信部13は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部13は、ルータ40を介して、各通信装置との間でデータ通信を行う。また、通信部13は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0030】
通信部13は、システムを構成する各装置のデータの通信を監視する。例えば、通信部13は、プラントのシステムを構成する各装置が送受信する、プラントの制御に関わるデータを監視する。
【0031】
記憶部14は、制御部15が動作する際に参照する各種情報や、制御部15が動作した際に取得した各種情報を記憶する。ここで、記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、図2の例では、記憶部14は、情報処理装置10の内部に設置されているが、情報処理装置10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0032】
制御部15は、当該情報処理装置10全体の制御を司る。制御部15は、計測部15aおよび評価部15bを有する。ここで、制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0033】
計測部15aは、通信部13が監視する、プラントの制御システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測する。例えば、計測部15aは、プラントを構成する各装置のうち、ベンダが提供する各装置が出力するタグ付きデータの移動量を計測する。上記例を用いて説明すると、計測部15aは、プラントを構成するベンダ装置20および他ベンダ装置30のうち、ベンダ装置20が生成し、出力するタグ付きデータの移動量を計測する。
【0034】
ここで、計測部15aが計測する移動量の一例としては、パケット数やデータサイズが挙げられる。例えば、計測部15aは、1か月や1年間の一定期間において、プラント内のフィールド機器のセンサ20Aから送信された、温度、圧力、流量等のセンサ値のタグ付きデータや、プラント内のDCS20Bから送信された生産プラントの制御信号のタグ付きデータのパケット数を計測する。そして、計測部15aは、パケット数の総量を評価部15bに出力する。
【0035】
また、計測部15aは、タグ付きデータのデータサイズを計測することもできる。例えば、計測部15aは、プラント内のフィールド機器のセンサ20Aから送信された、温度、圧力、流量等のセンサ値のタグ付きデータや、プラント内のDCS20Bから送信された生産プラントの制御信号のタグ付きデータのデータサイズの総量を計測する。そして、計測部15aは、データサイズの総量を評価部15bに出力する。
【0036】
なお、計測部15aは、パケット数またはデータサイズのいずれか一方のみを計測してもよく、両方を計測してもよい。また、移動量としては、各装置が生成したタグ付きデータの数、プラント制御のうち予め特定した操作に対応するタグ付きデータの数などのように、任意に設定することができる。また、上記一定期間も任意に設定変更することができる。
【0037】
評価部15bは、計測されたタグ付きデータの移動量に基づき、制御システムが生成する価値を評価する。例えば、評価部15bは、計測部15aによって計測されたタグ付きデータのパケット数の総量や、タグ付きデータのデータサイズの総量を用いて、システムが生成する価値を評価する。
【0038】
例えば、評価部15bは、計測部15aによって計測されたタグ付きデータの一定期間のパケット数の総量「1000パケット数」を、システムが生成した価値として評価し、課金アプリケーション50に通知する。この結果、課金アプリケーション50は、パケット数と課金料金とを対応付けた課金テーブルなどを用いて、「1000パケット数」に対応する金額「100万円」を請求額と決定することができる。
【0039】
同様に、評価部15bは、計測部15aによって計測されたタグ付きデータの一定期間の総データサイズ「20GB」を、システムが生成した価値として評価し、課金アプリケーション50に通知することもできる。この結果、課金アプリケーション50は、データサイズと課金料金とを対応付けた課金テーブルなどを用いて、「20GB」に対応する金額「10万円」を請求額と決定することができる。
【0040】
なお、課金例は、あくまで一例である。例えば、1パケットを「10円」、データサイズ「1GB」を「100円」等のように、単位当たりの料金を定義することもでき、「0~100」パケット数を「1万円」等のように幅を持たせることもでき、任意に設定変更することができる。
【0041】
これら以外にも、評価部15bは、タグ付きデータのシステムにおけるデータの種類を特定し、データの種類に応じて重み付けし、システムが生成する価値を評価することもでき、システムの稼働時間に応じて重み付けし、システムが生成する価値を評価することもできる。
【0042】
例えば、評価部15bは、タグ付きデータのパケットのヘッダ部からデータの属性等の情報を取得し、センサの測定値やプラントを制御する信号等のデータの種類を特定し、特定したデータの種類に応じた重み付けを行い、システムが生成した価値として評価してもよい。また、評価部15bは、プラントを安全に稼働した時間が長ければ、流通するデータは価値が高いものとし、プラントの稼働時間に応じた重み付けを行い、システムが生成した価値として評価することもできる。なお、プラントの価値の評価処理の詳細な説明については、(重み付け処理の流れ)にて後述する。
【0043】
(ベンダ製品20の構成)
ベンダ製品20(20A、20B)は、他の装置との間での各種データの送受信を司る送受信部21(21A、21B)やタグ付きデータを出力する生成部22(22A、22B)等の機能部を有する。
【0044】
ベンダ製品20の送受信部21は、ベンダ製品20が生成したタグ付きデータを送信する。また、送受信部21は、他ベンダ製品30が生成したデータを受信する。例えば、送受信部21は、プラント内の温度、圧力、流量等の測定データにタグを付与したタグ付きデータを送信する。また、生産プラントを制御するデータにタグを付与したタグ付きデータを送信する。
【0045】
ベンダ製品20の生成部22は、タグ付きデータを生成し、出力する。例えば、生成部22は、プラント内の温度、圧力、流量等の測定データにタグを付与し、タグ付きデータを生成する。また、生産プラントを制御するデータにタグを付与し、タグ付きデータを生成する。なお、ベンダ製品20は、別のベンダ製品20が生成したデータにタグを付与し、タグ付きデータを生成し、出力することもできる。
【0046】
(他ベンダ製品30の構成)
他ベンダ製品30は、他の装置との間での各種データの送受信を司る送受信部31等の機能部を有する。例えば、他ベンダ製品30の送受信部31は、他ベンダ製品30が生成したデータを送信する。また、送受信部31は、ベンダ製品20が生成したタグ付きデータを受信する。
【0047】
(課金アプリケーション50の構成)
課金アプリケーション50は、他の装置との間での各種データの送受信を司る送受信部51等の機能部を有する。例えば、課金アプリケーション50の送受信部51は、情報処理装置10によって評価された制御システムの価値を、情報処理装置10の通信部13を介して受信する。また、送受信部51は、制御システムの価値からユーザに対する請求額を決定し、ユーザに請求額を送信する。
【0048】
(3.本実施形態に係る制御システムの価値の評価)
図4を用いて、本実施形態に係る制御システムの価値の評価を説明する。図4は、実施形態に係る制御システムのライフサイクルと価値の積算値との関係の一例を示す図である。図2と同様に、図4で示したグラフの縦軸は、制御システムが生成する価値の積算値であり、グラフの横軸は、制御システムのライフサイクルを表わしている。
【0049】
図2と同様に、まず、ベンダは、ユーザの要求に応じて、制御システムを設計し(図4「設計」参照)、制御システム内に設置する機器等を調達し(図4「調達」参照)、プラント建設地における制御システムを構築し(図4「構築」参照)、最終的に運用可能な制御システムを納入する(図4「運用開始」参照)。ベンダは、この制御システム納入時に、システム規模や作業量に応じた対価をユーザから受け取る。
【0050】
一方、情報処理装置10は、ベンダが納入した制御システムが運用開始後も制御システムが廃棄されるまでの期間(図4「運用開始」~「廃棄」参照)、提供し続けている価値を評価する。このため、ベンダは、効率的にシステムが稼働中に生み出す価値の対価をユーザから受け取ることができる(図4(1)参照)。また、ベンダが制御システム納入時にユーザから受け取る対価(図4「初期投資費用」)は、運用開始後の制御システムの価値を含めて算出されることがないため、削減することが可能となる(図4(2)参照)。
【0051】
さらに、システムが稼働中に生み出す価値は、システムの稼働率によって変動するため、ユーザは、プラント等の制御システムの拡張、縮小を容易にする、スケーラビリティの向上が可能となる(図4(3)参照)。
【0052】
このように、実施形態に係る情報処理装置10は、ベンダがユーザに提供するユーザプラントの制御システムが納入後に生成する価値を正確に、かつ効果的に算定することできる。このため、ベンダにとっては、適切な対価を受け取ることが可能となる。また、ユーザにとっては、初期投資費用の削減、制御システムのスケーラビリティの向上が期待でき、ビジネス環境に合わせた制御システムの運用が可能となる。
【0053】
[各処理の流れ]
図5および図6を用いて、本実施形態に係る各処理の流れを説明する。以下では、実施形態に係る処理全体の流れ、重み付け処理の流れの順に説明する。
【0054】
(処理全体の流れ)
図5を用いて、本実施形態に係る処理全体の流れを説明する。図5は、実施形態に係る処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。まず、ベンダ装置20の生成部21bは、タグ付きデータを生成する(ステップS101)。次に、情報処理装置10の計測部15aは、タグ付きデータを計測する(ステップS102)。続いて、情報処理装置10の評価部15bは、後述する重み付け処理を行い(ステップS103)、システムのデータの価値を評価する(ステップS104)。そして、課金アプリケーション50の送受信部51は、システムのデータの価値、すなわちシステムの価値から請求額を決定し、ユーザに対して請求額の情報を送信し(ステップS105)、処理を終了する。
【0055】
(重み付け処理の流れ)
図6を用いて、本実施形態に係る重み付け処理の流れを説明する。図6は、実施形態に係る重み付け処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、本実施形態に係る評価処理に関わる項目を説明した上で、本実施形態に係る重み付け処理の流れを詳細に説明する。
【0056】
まず、本実施形態に係る評価処理に関わる項目を説明する。第1に、情報処理装置10の評価部15bは、タグ付きデータの「パケット数」に応じて重み付けし、データの価値を評価する。なぜならば、システムの納品後に当該システムが生み出す価値は、一定期間にシステム内で流通したデータの数に比例すると考えられるからである。また、ベンダ装置20が生成したデータのみをカウントし、他ベンダ製品30が生成したデータをカウントしないことで、システム内でのベンダの貢献の度合いが定量的に判断できる。なお、評価部15bは、他ベンダ製品30が生成したデータであっても、ベンダ製品20が生成したデータと一体となって利用されるデータに関しては、ベンダ製品20が生成したデータとして評価することもできる。
【0057】
第2に、評価部15bは、タグ付きデータの「データサイズ」に応じて重み付けし、データの価値を評価する。なぜならば、システムの納品後に当該システムが生み出す価値は、一定期間にシステム内で流通したデータ量に比例すると考えられるからである。また、上記のパケット数に応じた重み付け処理と同様に、ベンダ装置20が生成したデータのみの総量を計測し、他ベンダ製品30が生成したデータを計測しないことで、システム内でのベンダの貢献の度合いが定量的に判断できる。
【0058】
第3に、評価部15bは、タグ付きデータの「種類」に応じて重み付けし、データの価値を評価する。なぜならば、プラント等で流通するデータには、フィールド機器のセンサ20A等が生成するシステムが安全状態のときの温度、圧力、流量等のデータもあれば、DCSが生成するシステムの制御に関するデータやSIS(Safety Instrumented System:安全計装システム)が生成するプラントを安全に停止するためのデータもあり、同等の価値とは判断できないからである。
【0059】
第4に、評価部15bは、「システムの稼働時間」に応じて重み付けし、データの価値を評価する。なぜならば、安全状態を保たれたプラント等において、長い期間流通するデータには、安全性を継続的に維持する価値を有していると考えられるからである。
【0060】
次に、本実施形態に係る重み付け処理の流れを説明する。第1に、情報処理装置10の評価部15bは、タグ付きデータのパケット数に応じて重み付けし、データの価値を評価する(ステップS201)。このとき、評価部15bは、例えば、ルータ40が受信したタグ付きデータをカウントしてもよいし、ルータ40が送信したタグ付きデータをカウントしてもよいし、ルータ40が送信した後に受信した同一のタグ付きデータのみをカウントしてもよく、評価部15bがカウントする方式は、特に限定されない。
【0061】
第2に、評価部15bは、タグ付きデータのデータサイズに応じて重み付けし、データの価値を評価する(ステップS202)。このとき、評価部15bは、上記のステップS201の処理と同様に、ルータ40が受信したタグ付きデータをカウントしてもよいし、ルータ40が送信したタグ付きデータをカウントしてもよいし、ルータ40が送信した後に受信した同一のタグ付きデータのみをカウントしてもよい。
【0062】
第3に、評価部15bは、タグ付きデータの種類に応じて重み付けし、データの価値を評価する(ステップS203)。例えば、評価部15bは、タグ付きデータのパケットのヘッダ部からデータの属性情報を取得し、記憶部14に記憶された属性情報と対応する係数をもとにデータの価値を評価する。具体的には、評価部15bは、プラントが安全状態のときの温度、圧力、流量等のセンサ値は価値が低く、プラントを安全に停止するためのデータは価値が高いと評価する。
【0063】
第4に、評価部15bは、システムの稼働時間に応じて重み付けし、データの価値を評価する(ステップS204)。例えば、評価部15bは、安全に稼働した期間が長いシステムで流通しているデータには、稼働期間に対応する一定の係数を乗じて価値を評価する。
【0064】
評価部15bは、ステップS201~S204の処理を行い、重み付け処理を終了する。なお、ステップS201~S204の処理の順序や実行のタイミングは、動的に、または静的に変更することができる。また、ステップS201~S204の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0065】
[実施形態の効果]
第1に、上述した本実施形態に係る処理では、通信部13が監視し、制御システムを提供するベンダを識別するタグを有するタグ付きデータの移動量を計測し、計測したタグ付きデータの移動量に基づき、制御システムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、運用が開始された制御システムの価値を継続的に評価することができる。
【0066】
第2に、上述した本実施形態に係る処理では、プラントを構成する各装置のうち、ベンダが提供する各装置が出力するタグ付きデータの移動量を計測し、タグ付きデータの移動量に基づき、プラントの運転制御を行う制御システムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、プラントにおいて運用が開始された制御システムの価値を継続的に評価することができる。
【0067】
第3に、上述した本実施形態に係る処理では、タグ付きデータのパケット数を計測し、計測したパケット数を用いて、制御システムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、プラントにおいて運用が開始された制御システムの価値を継続的に、かつパケット数に基づき定量的に評価することができる。
【0068】
第4に、上述した本実施形態に係る処理では、タグ付きデータのデータサイズを計測し、データサイズを用いて、制御システムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、プラントにおいて運用が開始された制御システムの価値を継続的に、かつデータサイズに基づき定量的に評価することができる。
【0069】
第5に、上述した本実施形態に係る処理では、タグ付きデータのシステムにおけるデータの種類を特定し、種類に応じて重み付けし、制御システムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、プラントにおいて運用が開始された制御システムの価値を継続的に、かつデータの種類に基づき効果的に評価することができる。
【0070】
第6に、上述した本実施形態に係る処理では、制御システムの稼働時間に応じて重み付けし、制御システムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、プラントにおいて運用が開始された制御システムの価値を継続的に、かつシステムの稼働時間に基づき効果的に評価することができる。
【0071】
〔実施形態の変形例〕
以下に、実施形態の変形例に係る情報処理システム100-1の構成、各処理の流れを順に説明し、最後に実施形態の変形例の効果を説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成や処理については、説明を省略する。
【0072】
[情報処理システム100-1の構成]
図7を用いて、実施形態に係る情報処理システム(以下、適宜、本システムともいう)100-1の構成を詳細に説明する。図7は、実施形態の変形例に係る情報処理システムの構成例を示す図である。以下に、本システム100-1全体の構成例を示した上で、本システム100-1の処理について説明する。
【0073】
(システム全体の構成例)
本システム100-1は、情報処理装置10-1、ユーザにサービス等を提供するサービス事業者が所有するベンダ製品20-1(20A-1、20B-1)、ネットワーク装置であるルータ40-1、ベンダが所有する課金アプリケーション50-1、およびデータ銀行データベース60を有する。ここで、情報処理装置10-1と、ベンダ製品20-1と、課金アプリケーション50-1と、データ銀行データベース60とは、ルータ40-1または図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、ルータ40-1は、ミラーポートを持ったネットワークスイッチでもよく、特に限定されない。また、図7に示した情報処理システム100-1には、複数台の情報処理装置10-1、複数台のルータ40-1、複数の課金アプリケーション50-1、複数のデータ銀行データベース60が含まれてもよい。
【0074】
ここで、情報処理装置10-1、ベンダ製品20-1、ルータ40-1および課金アプリケーション50-1は、それぞれ図1で示した情報処理装置10、ベンダ製品20、ルータ40および課金アプリケーション50と同様の機能構成であるので、説明を省略する。
【0075】
(システム全体の処理)
このようなシステムにおいて、データ銀行がユーザに提供するシステム(以降、「ユーザシステム」ともいう。)の価値を算定する例を説明する。ここで、データ銀行(情報銀行)とは、各種サービスを受けようとするユーザの個人情報等のパーソナルデータを、ユーザの委託に基づき管理や提供を行うシステムベンダである。また、データ銀行データベース60は、各種サービスを受けようとするユーザの個人情報等のパーソナルデータを記憶するデータベースである。
【0076】
まず、データ銀行データベース60は、ユーザのパーソナルデータにベンダを識別するタグを付与し、タグ付きデータを生成する。ベンダ製品20-1は、データ銀行データベース60からユーザごとのタグ付きデータをダウンロードする(ステップS11)。次に、ベンダ製品20-1は、ダウンロードしたタグ付きデータを使用する(ステップS12)。
【0077】
続いて、情報処理装置10-1は、パケットを監視し(ステップS13)、タグ付きデータのパケット数のカウントを集計する(ステップS14)。このとき、情報処理装置10-1の計測部(図示せず)は、データ銀行のシステムベンダがシステムの制御に利用するデータとしてデータベースに予め登録するタグ付きデータの移動量を計測する。上記例を用いて説明すると、情報処理装置10-1の計測部は、ユーザシステムの制御に利用するデータとしてデータ銀行データベース60に予め登録するタグが付与された各ユーザのパーソナルデータの移動量を計測する。
【0078】
そして、情報処理装置10-1は、集計したタグ付きデータのカウント数から、ベンダ製品20が関与したデータの価値、すなわちベンダが提供したユーザシステムの価値を算出し、課金アプリケーション50-1に送信する(ステップS15)。このとき、情報処理装置10-1は、タグ付きデータのサイズやデータの属性等から、ベンダが提供したシステムの価値を算出してもよい。
【0079】
最後に、課金アプリケーション50-1は、情報処理装置10-1から受信したユーザシステムの価値からユーザに対するユーザシステムの請求額を決定し、ユーザに請求する(ステップS16)。
【0080】
上述のステップS11~S16の処理を実行することにより、データ銀行のシステムベンダは、サービス事業者が使用するユーザのパーソナルデータの流れから、ユーザシステムが生み出す価値を正確かつ効率的に定量化し、課金することができる。すなわち、ベンダは、ユーザシステムの価値に似合った利益を継続的に回収できるようになる。
【0081】
また、図7ではデータ銀行のシステムについて説明したが、上記のようにベンダの保有するデータベースに記憶されたデータにタグを付与し、利用データの移動をカウントして課金するシステムは、データ利用に課金するシステム全般に利用することができる。例えば、プラントにおいて、プラント内のプロセスの改善のためのデータをダウンロードし、データの流通量に応じて課金することもできる。
【0082】
[各処理の流れ]
図8を用いて、本変形例に係る各処理の流れを説明する。図8は、実施形態の変形例に係る処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。まず、ベンダ装置20-1は、データ銀行データベース60から、各ユーザのタグ付きデータを取得する(ステップS301)。次に、情報処理装置10-1は、タグ付きデータを計測する(ステップS302)。続いて、情報処理装置10-1は、重み付け処理を行い(ステップS303)、ユーザシステムのデータの価値を評価する(ステップS304)。なお、情報処理装置10-1の実行する重み付け処理は、図6に示した情報処理装置10の重み付け処理と同様の処理であるので、説明を省略する。そして、課金アプリケーション50-1は、ユーザシステムのデータの価値、すなわちユーザシステムの価値から請求額を決定し、ユーザに対して請求額の情報を送信し(ステップS305)、処理を終了する。
【0083】
[実施形態の変形例の効果]
上述した本変形例に係る処理では、データ銀行のシステムベンダが保持するデータ銀行データベース60から取得されるタグ付きデータの移動量を計測し、計測したタグ付きデータの移動量に基づき、ユーザシステムが生成する価値を評価する。このため、本処理では、データを利用するユーザシステムにおいて、運用が開始されたユーザシステムの価値を継続的に評価することができる。
【0084】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0085】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0086】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0087】
〔ハードウェア〕
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。なお、他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。図9は、ハードウェア構成例を説明する図である。図9に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図9に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0088】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図3に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0089】
プロセッサ10dは、図3に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図3等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、計測部15a、評価部15b等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、計測部15a、評価部15b等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0090】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0091】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 情報処理装置
11 入力部
12 出力部
13 通信部
14 記憶部
15 制御部
15a 計測部
15b 評価部
20 ベンダ製品
30 他ベンダ製品
40 ルータ
50 課金アプリケーション
60 データ銀行データベース
100 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9