(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】燃料製造プラント
(51)【国際特許分類】
C12M 1/107 20060101AFI20241029BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20241029BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20241029BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20241029BHJP
C12P 7/06 20060101ALI20241029BHJP
C10L 3/08 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C12M1/107
C07C1/12
C07C9/04
C10G2/00
C12P7/06
C10L3/08
(21)【出願番号】P 2021124130
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】海田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】平沢 崇彦
(72)【発明者】
【氏名】保谷 典子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 央志
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0024002(US,A1)
【文献】特開2009-136202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して水素と酸素を生成する電気分解装置と、
糖類を分解してエタノールと二酸化炭素を生成するエタノール生成装置と、
二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する炭化水素生成装置と、
前記電気分解装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された水素を前記炭化水素生成装置に供給する水素供給部と、
前記電気分解装置と前記エタノール生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された酸素を前記エタノール生成装置に供給する酸素供給部と、
前記エタノール生成装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を前記炭化水素生成装置に供給する二酸化炭素供給部と、
を備え、
前記エタノール生成装置は、
酵母菌を製造する酵母菌製造部と、
糖化酵素を製造する糖化酵素製造部と、
ボイラと、
のうち少なくとも1つを含み、
前記酸素供給部によって前記エタノール生成装置に供給された酸素は、前記酵母菌製造部及び前記糖化酵素製造部、前記ボイラのうち少なくとも何れか1つで消費される、
燃料製造プラント。
【請求項2】
水を電気分解して水素と酸素を生成する電気分解装置と、
糖類を分解してエタノールと二酸化炭素を生成するエタノール生成装置と、
二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する炭化水素生成装置と、
前記電気分解装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された水素を前記炭化水素生成装置に供給する水素供給部と、
前記電気分解装置と前記エタノール生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された酸素を前記エタノール生成装置に供給する酸素供給部と、
前記エタノール生成装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を前記炭化水素生成装置に供給する二酸化炭素供給部と、
を備え、
前記エタノール生成装置は、酵母菌を用いて単糖類又は少糖類を分解する発酵部を含み、
前記二酸化炭素供給部は、
前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過し、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値以上となったら、前記発酵部からの排気ガスを前記炭化水素生成装置に供給する、
燃料製造プラント。
【請求項3】
前記二酸化炭素供給部は、
前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過するまで、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値未満であるうちは、前記発酵部からの排気ガスを大気放出する、
請求項2に記載の燃料製造プラント。
【請求項4】
前記二酸化炭素供給部は、
前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過するまで、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値未満であるうちは、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が上昇するように当該排気ガスを濃縮し、濃縮後の排気ガスを前記炭化水素生成装置に供給する、
請求項2に記載の燃料製造プラント。
【請求項5】
藻類を生育する藻類生育装置、又は、二酸化炭素を還元して有機酸を合成する有機酸合成装置を更に備え、
前記二酸化炭素供給部は、
前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過するまで、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値未満であるうちは、前記発酵部からの排気ガスを、前記藻類生育装置又は前記有機酸合成装置に供給する、
請求項2に記載の燃料製造プラント。
【請求項6】
水を電気分解して水素と酸素を生成する電気分解装置と、
糖類を分解してエタノールと二酸化炭素を生成するエタノール生成装置と、
二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する炭化水素生成装置と、
前記電気分解装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された水素を前記炭化水素生成装置に供給する水素供給部と、
前記電気分解装置と前記エタノール生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された酸素を前記エタノール生成装置に供給する酸素供給部と、
前記エタノール生成装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を前記炭化水素生成装置に供給する二酸化炭素供給部と、
を備え、
前記二酸化炭素供給部は、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を貯留する二酸化炭素貯留部を含み、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を前記二酸化炭素貯留部に貯留すると共に、前記二酸化炭素貯留部に貯留した二酸化炭素を前記炭化水素生成装置に供給し、
大気から二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を前記二酸化炭素貯留部に供給する二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素貯留部に貯留されている二酸化炭素の貯留量が所定値を下回ったとき、前記貯留量が増えるように前記二酸化炭素回収装置を稼働させるコントローラと、
を更に備えた、
燃料製造プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バイオエタノール由来の水素と二酸化炭素を用いてメタンを生成する技術を開示している。
【0003】
特許文献2は、水を電気分解する際に副生される酸素を有効活用すべく、当該副生酸素を、アンモニア誘導体を合成する際に使用される二酸化炭素を生成するのに消費することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-202044号公報
【文献】特開2021-102532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成するコストに関して改善の余地が残されている。
【0006】
本発明の目的は、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成するコストを低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の観点によれば、水を電気分解して水素と酸素を生成する電気分解装置と、糖類を分解してエタノールと二酸化炭素を生成するエタノール生成装置と、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する炭化水素生成装置と、前記電気分解装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された水素を前記炭化水素生成装置に供給する水素供給部と、前記電気分解装置と前記エタノール生成装置を連結することで、前記電気分解装置で生成された酸素を前記エタノール生成装置に供給する酸素供給部と、前記エタノール生成装置と前記炭化水素生成装置を連結することで、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を前記炭化水素生成装置に供給する二酸化炭素供給部と、を備えた、燃料製造プラントが提供される。
前記エタノール生成装置は、酵母菌を製造する酵母菌製造部と、糖化酵素を製造する糖化酵素製造部と、ボイラと、のうち少なくとも1つを含み、前記酸素供給部によって前記エタノール生成装置に供給された酸素は、前記酵母菌製造部及び前記糖化酵素製造部、前記ボイラのうち少なくとも何れか1つで消費されてもよい。
前記エタノール生成装置は、酵母菌を用いて単糖類又は少糖類を分解する発酵部を含み、前記二酸化炭素供給部は、前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過し、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値以上となったら、前記発酵部からの排気ガスを前記炭化水素生成装置に供給してもよい。
前記二酸化炭素供給部は、前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過するまで、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値未満であるうちは、前記発酵部からの排気ガスを大気放出してもよい。
前記二酸化炭素供給部は、前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過するまで、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値未満であるうちは、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が上昇するように当該排気ガスを濃縮し、濃縮後の排気ガスを前記炭化水素生成装置に供給してもよい。
藻類を生育する藻類生育装置、又は、二酸化炭素を還元して有機酸を合成する有機酸合成装置を更に備え、前記二酸化炭素供給部は、前記エタノール生成装置を稼働させてから所定時間が経過するまで、又は、前記発酵部からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が第1の閾値未満であるうちは、前記発酵部からの排気ガスを、前記藻類生育装置又は前記有機酸合成装置に供給してもよい。
前記二酸化炭素供給部は、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を貯留する二酸化炭素貯留部を含み、前記エタノール生成装置で生成された二酸化炭素を前記二酸化炭素貯留部に貯留すると共に、前記二酸化炭素貯留部に貯留した二酸化炭素を前記炭化水素生成装置に供給してもよい。
大気から二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を前記二酸化炭素貯留部に供給する二酸化炭素回収装置と、前記二酸化炭素貯留部に貯留されている二酸化炭素の貯留量が所定値を下回ったとき、前記貯留量が増えるように前記二酸化炭素回収装置を稼働させるコントローラと、を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成するコストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1から
図5を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
図1には、本実施形態の燃料製造プラント1を示している。
【0011】
燃料製造プラント1は、少なくとも、電気分解装置2、エタノール生成装置3、炭化水素生成装置4、水素供給部5、酸素供給部6、二酸化炭素供給部7を含む。
【0012】
電気分解装置2は、水を電気分解して水素と酸素を生成する。
【0013】
エタノール生成装置3は、糖類を分解してエタノールと二酸化炭素を生成する。
【0014】
炭化水素生成装置4は、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する。
【0015】
水素供給部5は、電気分解装置2と炭化水素生成装置4を典型的にはパイプで連結することで、電気分解装置2で生成された水素を炭化水素生成装置4に供給する。
【0016】
酸素供給部6は、電気分解装置2とエタノール生成装置3を典型的にはパイプで連結することで、電気分解装置2で生成された酸素をエタノール生成装置3に供給する。
【0017】
二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3と炭化水素生成装置4を典型的にはパイプで連結することで、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素を炭化水素生成装置4に供給する。
【0018】
以上の構成によれば、電気分解装置2において副生物として生成された酸素、及び、エタノール生成装置3において副生物として生成された二酸化炭素を有効活用することができるので、炭化水素生成装置4で炭化水素を低コストで生成することができる。
【0019】
図1に示すように、燃料製造プラント1は、更に、藻類生育装置8、有機酸合成装置9、肥料生成装置10を備えている。
【0020】
藻類生育装置8には、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素が二酸化炭素供給部7を経由して供給されるように構成されている。藻類生育装置8には、エタノール生成装置3で生成されたエタノールが供給されるように構成されている。更に、藻類生育装置8には、電気分解装置2で生成された酸素が酸素供給部6を経由して供給されるように構成されている。
【0021】
有機酸合成装置9には、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素が二酸化炭素供給部7を経由して供給されるように構成されている。有機酸合成装置9には、炭化水素生成装置4で生成された副生物としての水が供給されるように構成されている。
【0022】
肥料生成装置10には、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素が二酸化炭素供給部7を経由して供給されるように構成されている。
【0023】
藻類生育装置8は、例えばカゲキノリやユーグレナなどの藻類を生育する装置である。カゲキノリは、牛のゲップを抑制する効果が期待されている。ユーグレナは、ジェット燃料やディーゼル燃料の原料となり得る。藻類生育装置8は、エタノール生成装置3から供給された二酸化炭素を用いて藻類の生育を促進する。また、藻類生育装置8は、エタノール生成装置3から供給されたエタノールを藻類培養の栄養源として用い得る。また、藻類生育装置8は、電気分解装置2から供給された酸素を用いて魚類の生育を促進してもよい。魚類は、魚類の排泄物が藻類に栄養源となり、生育時の養分となるので、藻類の生育に寄与すると考えられる。また、藻類生育装置8は、製鉄所から排出された鉄鋼スラグを藻類生育に活用することも考えられる。鉄鋼スラグは、鉄やリン、マグネシウム、カルシウム、マンガンを多く含むため藻類の増殖に寄与することが期待される。
【0024】
有機酸合成装置9は、二酸化炭素を還元して有機酸を合成する。有機酸は、典型的には、酢酸やギ酸である。有機酸は、サイレージ(silage)に混合させることでサイレージに含まれる微生物の活性が低下し、サイレージの食味低下となる過発酵を抑制する効果を期待し得る。また、有機酸は、エタノール生成装置3における酵母菌の活性を一時的に抑制することで、酵母菌のそれ以降の活性を増大させる効果を期待し得る。従って、有機酸合成装置9で生成された有機酸がエタノール生成装置3に供給される構成も考えられる。
【0025】
肥料生成装置10は、エタノール生成装置3から供給された二酸化炭素と、大気中から分離した窒素と、を反応させてアンモニアや尿素を生成する。アンモニアや尿素は、肥料として利用し得る。
【0026】
図2には、電気分解装置2の構成図を示している。
図2に示すように、電気分解装置2は、例えば太陽光パネルなどの外部電源から供給された電力を用いて水を電気分解して水素と酸素を生成する電気分解部2aを有する。
【0027】
図3には、電気分解装置2の変形例を示している。
図3に示すように、本変形例において、電気分解装置2は、電気分解部2b及び水素分離部2cを有する。電気分解部2bは、有機ハイドライド電解合成法を用いてメチルシクロヘキサン(MCH)と酸素を生成する。水素分離部2cは、電気分解部2bが生成したメチルシクロヘキサンから水素を分離する。なお、メチルシクロヘキサンは常温で液体であるので貯蔵及び輸送に適していると共に容易に水素を分離することができるので、電気分解装置2で生成したメチルシクロヘキサンを貯蔵したり、燃料製造プラント1から搬出することが考えられる。
【0028】
図1に戻り、炭化水素生成装置4は、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する。具体的には、炭化水素生成装置4は、以下の反応式に従って炭化水素を生成する。
【0029】
炭化水素は典型的にはメタンであり、精留を経て液化メタンとされて合成液体燃料として多方面に利用され得る。また、最終生成物を炭素数5~13程度のイソパラフィンとすることで、更に輸送に適した燃料とすることができる。
【0030】
炭化水素生成装置4での副生物である水は、電気分解装置2で利用されてもよく、藻類生育装置8で魚類を生育するのに利用されてもよく、エタノール生成装置3の発酵部22で利用されてもよい。
【0031】
図4には、エタノール生成装置3の構成図を示している。エタノール生成装置3は、前処理部20、糖化部21、発酵部22、精留部23、ボイラ24、糖化酵素製造部25、酵母菌製造部26、残渣発酵部27を含む。
【0032】
前処理部20は、外部から供給されたバイオマス原料から多糖類であるセルロースを分離する。
【0033】
糖化部21は、前処理部20又は外部から供給された多糖類を糖化酵素を用いて単糖類又は少糖類に分解する。外部から供給される多糖類とは、典型的には、トウモロコシである。
【0034】
発酵部22は、糖化部21又は外部から供給された単糖類又は少糖類を酵母菌を用いて分解してエタノールと二酸化炭素を生成する。外部から供給される少糖類とは、典型的には、サトウキビである。発酵部22は、上記の分解プロセスを連続的に行う連続式、又は、上記の分解プロセスを間欠的に行うバッチ式に構成し得る。発酵部22は、生成した二酸化炭素を二酸化炭素供給部7に排出する。発酵部22は、生成したエタノールを精留部23に供給する。
【0035】
精留部23は、発酵部22から供給されたエタノールを精留する。精留部23によって精留されたエタノールは、典型的には、所謂バイオエタノールとして多方面で活用される。
【0036】
ボイラ24は、外部から供給された燃料や残渣発酵部27から供給された燃料(メタンガス)を燃焼し、燃焼時に得られる燃焼熱で水蒸気を生成する。ボイラ24で生成された水蒸気は前処理部20に供給され、前処理部20においてバイオマス原料の分離プロセスにおける熱源として利用される。また、ボイラ24で生成された水蒸気は精留部23に供給され、ボイラ24における精留プロセスの熱源として利用される。ボイラ24には酸素供給部6を経由して酸素が供給され、当該酸素は燃料の燃焼に利用される。この酸素供給により、空気をボイラ24に圧送するブロワの消費電力を抑制することができる。ボイラ24は、燃焼式に代えて電熱式であってもよい。ボイラ24に蒸気タービンが接続され、ボイラ24で生成された水蒸気を用いて発電することも考えられる。
【0037】
糖化酵素製造部25は、糖化酵素を製造する。糖化酵素製造部25は、製造した糖化酵素を糖化部21に供給する。糖化酵素製造部25には酸素供給部6を経由して酸素が供給され、当該酸素は糖化酵素の製造に利用される。この酸素供給により、空気を糖化酵素製造部25に圧送するブロワの消費電力を抑制することができる。
【0038】
酵母菌製造部26は、酵母菌を製造する。酵母菌製造部26は、製造した酵母菌を発酵部22に供給する。酵母菌製造部26には酸素供給部6を経由して酸素が供給され、当該酸素は酵母菌の製造に利用される。この酸素供給により、空気を酵母菌製造部26に圧送するブロワの消費電力を抑制することができる。
【0039】
残渣発酵部27は、糖化部21や発酵部22から排出された残渣をメタン発酵させてメタンガス及び二酸化炭素を生成する。残渣発酵部27は、生成したメタンガスをボイラ24に供給する。また、残渣発酵部27は、生成した二酸化炭素を二酸化炭素供給部7に排出する。
【0040】
図5には、二酸化炭素供給部7の構成図を示している。前述したように、二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3と炭化水素生成装置4を連結することで、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素を炭化水素生成装置4に供給する。しかし、エタノール生成装置3から排出される排気ガスにおける二酸化炭素の濃度は一定ではない。例えば、エタノール生成装置3の稼働を開始した直後では排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が低い。また、エタノール生成装置3を稼働してから所定時間経過した後であっても排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が一時的に低下する場合もあり得る。従って、
図5に示すように、二酸化炭素供給部7は、炭化水素生成装置4に二酸化炭素を安定的に供給するために、様々な構成を具備している。
【0041】
即ち、二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素を貯留する二酸化炭素貯留部としてのタンク30を含む。二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素をタンク30に貯留すると共に、タンク30に貯留した二酸化炭素を炭化水素生成装置4に供給する。これにより、エタノール生成装置3から排出される排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が一時的に低下しても、安定して二酸化炭素を炭化水素生成装置4に供給できる。
【0042】
具体的には、二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3とタンク30を連結する第1パイプ31と、タンク30と炭化水素生成装置4を連結する第2パイプ32を備える。第1パイプ31は、エタノール生成装置3の発酵部22に接続されている。従って、第1パイプ31には、主として、二酸化炭素の濃度が高い排気ガスが流れる。第1パイプ31には、第1濃度計31aと第1切替弁31bが排気ガスの流れの向きに沿ってこの記載順に設けられている。
【0043】
二酸化炭素供給部7は、濃縮装置33を備える。二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3と濃縮装置33を連結する第3パイプ34と、濃縮装置33とタンク30を連結する第4パイプ35と、を備える。第3パイプ34は、エタノール生成装置3の前処理部20、糖化部21、精留部23、糖化酵素製造部25、酵母菌製造部26、残渣発酵部27に接続されている。従って、第3パイプ34には、主として、二酸化炭素の濃度が中程度である排気ガスが流れる。第3パイプ34には、第2濃度計34a、第2切替弁34b、第3濃度計34c、第3切替弁34dが、排気ガスの流れの向きに沿ってこの記載順に設けられている。
【0044】
二酸化炭素供給部7は、装置内DAC40(Direct Air Capture)と装置外DAC41を備えている。装置内DAC40は、閉鎖空間を構成するエタノール生成装置3内の空気から二酸化炭素を例えばアミン吸収法を用いて捕集する。装置外DAC41は、エタノール生成装置3外の空気から二酸化炭素を捕集する。二酸化炭素供給部7は、装置内DAC40と第3パイプ34を連結する第5パイプ42と、装置外DAC41と第3パイプ34を連結する第6パイプ43と、を備える。
【0045】
第5パイプ42は、第3パイプ34の第2切替弁34bと第3濃度計34cの間の合流点34Pに接続されている。同様に、第6パイプ43は、合流点34Pに接続されている。
【0046】
第5パイプ42には、第4濃度計42a、第4切替弁42bが、排気ガスの流れの向きに沿ってこの記載順に設けられている。同様に、第6パイプ43には、第5濃度計43a、第5切替弁43bが、排気ガスの流れの向きに沿ってこの記載順に設けられている。
【0047】
また、二酸化炭素供給部7は、第1切替弁31bと第3パイプ34を連結する第7パイプ44を備えている。第7パイプ44は、合流点34Pに接続されている。
【0048】
また、二酸化炭素供給部7は、第3切替弁34dと、藻類生育装置8及び有機酸合成装置9、肥料生成装置10を連結する第8パイプ45を備えている。
【0049】
また、二酸化炭素供給部7は、タンク30に貯留されている二酸化炭素の貯留量を測定する貯留量センサ46と、コントローラ47と、を備えている。
【0050】
貯留量センサ46は、典型的には、タンク30の内圧値を測定する。
【0051】
コントローラ47は、第1濃度計31a、第2濃度計34a、第3濃度計34c、第4濃度計42a、第5濃度計43a、及び、貯留量センサ46からの出力信号を受信する。コントローラ47は、この受信結果に基づいて、第1切替弁31b、第2切替弁34b、第3切替弁34d、第4切替弁42b、第5切替弁43b、装置内DAC40、装置外DAC41、濃縮装置33の動作を制御する。コントローラ47は、典型的には、CPUとRAM、ROMを備えたコンピュータであって、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み込んで実行することで、上記の制御を実行する。
【0052】
次に、二酸化炭素供給部7の動作を詳細に説明する。
【0053】
まず、エタノール生成装置3の稼働を開始すると、エタノール生成装置3から二酸化炭素を含む排気ガスが排出される。エタノール生成装置3からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度は、稼働開始直後は外気のものとほぼ同程度であり、時間の経過と共に徐々に上昇する。
【0054】
コントローラ47は、第1濃度計31aの出力信号に基づいて、エタノール生成装置3から第1パイプ31に排出される排気ガスの二酸化炭素濃度を取得する。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値未満であるとき、第1切替弁31bを制御して、当該排気ガスをエタノール生成装置3の装置内に放出する。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値未満であるとき、第1切替弁31bを制御して、当該排気ガスをエタノール生成装置3の装置外の大気に放出する構成も考えられる。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値以上であって高濃度側閾値未満であるとき、第1切替弁31bを制御して、当該排気ガスが第7パイプ44に流れるようにする。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が高濃度側閾値以上であるとき、第1切替弁31bを制御して、当該排気ガスがタンク30に向かって流れるようにする。この制御によれば、タンク30に二酸化炭素濃度が低い排気ガスが供給されることを防止できる。なお、低濃度側閾値は、例えば0.3~0.5vol%であり、高濃度側閾値は、例えば95~98vol%であるが、これらに限定されない。
【0055】
コントローラ47は、第2濃度計34aの出力信号に基づいて、エタノール生成装置3から第3パイプ34に排出される排気ガスの二酸化炭素濃度を取得する。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値未満であるとき、第2切替弁34bを制御して、当該排気ガスをエタノール生成装置3の装置内に放出する。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値未満であるとき、第2切替弁34bを制御して、当該排気ガスをエタノール生成装置3の装置外の大気に放出する構成も考えられる。コントローラ47は、当該排気ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値以上であるとき、第2切替弁34bを制御して、当該排気ガスが合流点34Pに向かって流れるようにする。
【0056】
コントローラ47は、第4濃度計42aの出力信号に基づいて、装置内DAC40から第5パイプ42に供給されるガスの二酸化炭素濃度を取得する。コントローラ47は、当該ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値未満であるとき、第4切替弁42bを制御して、当該ガスをエタノール生成装置3の装置外の大気に放出する。コントローラ47は、当該ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値以上であるとき、第4切替弁42bを制御して、当該ガスが合流点34Pに向かって流れるようにする。
【0057】
コントローラ47は、第5濃度計43aの出力信号に基づいて、装置外DAC41から第6パイプ43に供給されるガスの二酸化炭素濃度を取得する。コントローラ47は、当該ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値未満であるとき、第5切替弁43bを制御して、当該ガスをエタノール生成装置3の装置外の大気に放出する。コントローラ47は、当該ガスの二酸化炭素濃度が低濃度側閾値以上であるとき、第5切替弁43bを制御して、当該ガスが合流点34Pに向かって流れるようにする。
【0058】
コントローラ47は、第3濃度計34cの出力信号に基づいて、合流点34Pから下流に流れるガスの二酸化炭素濃度を取得する。コントローラ47は、当該ガスの二酸化炭素濃度が中濃度側閾値未満であるとき、第3切替弁34dを制御して、当該ガスを藻類生育装置8、有機酸合成装置9、又は、肥料生成装置10の何れか1つ又は複数に供給する。コントローラ47は、当該ガスの二酸化炭素濃度が中濃度側閾値以上であるとき、第3切替弁34dを制御して、当該ガスが濃縮装置33に向かって流れるようにする。なお、中濃度側閾値は、例えば10vol%であるが、これに限定されない。
【0059】
濃縮装置33は、第3パイプ34から供給されたガスにおける二酸化炭素の濃度が上昇するように当該ガスを濃縮する。典型的には、濃縮装置33は、第3パイプ34から供給されたガスにおける二酸化炭素の濃度が高濃度側閾値以上となるように当該ガスを濃縮する。濃縮方法としては、典型的には、天然ゼオライト(フェリエライト型)を利用した圧力スイング(PSA)型吸着法である。濃縮装置33は、濃縮後のガスをタンク30に排出する。
【0060】
タンク30に供給されたガスは、図示しないガス圧縮機を経由して炭化水素生成装置4へと供給される。
【0061】
コントローラ47は、貯留量センサ46の出力信号に基づいて、タンク30の内圧値を取得する。コントローラ47は、当該内圧値が所定値未満であるとき、装置内DAC40及び装置外DAC41を稼働させる。これにより、タンク30における二酸化炭素の貯留量(=タンク30の内圧値)を回復させることができる。コントローラ47は、当該内圧値が所定値以上であるとき、装置内DAC40及び装置外DAC41の稼働を停止させる。これにより、二酸化炭素供給部7の消費電力を抑制することができる。
【0062】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は以下の特徴を有する。
【0063】
図1に示すように、燃料製造プラント1は、水を電気分解して水素と酸素を生成する電気分解装置2と、糖類を分解してエタノールと二酸化炭素を生成するエタノール生成装置3と、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を生成する炭化水素生成装置4と、を備える。燃料製造プラント1は、更に、電気分解装置2と炭化水素生成装置4を連結することで、電気分解装置2で生成された水素を炭化水素生成装置4に供給する水素供給部5と、電気分解装置2とエタノール生成装置3を連結することで、電気分解装置2で生成された酸素をエタノール生成装置3に供給する酸素供給部6と、エタノール生成装置3と炭化水素生成装置4を連結することで、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素を炭化水素生成装置4に供給する二酸化炭素供給部7と、を備える。以上の構成によれば、電気分解装置2において副生物として生成された酸素、及び、エタノール生成装置3において副生物として生成された二酸化炭素を有効活用することができるので、炭化水素生成装置4で炭化水素を低コストで生成することができる。
【0064】
また、
図4に示すように、エタノール生成装置3は、酵母菌を製造する酵母菌製造部26と、糖化酵素を製造する糖化酵素製造部25と、ボイラ24と、を備える。酸素供給部6によってエタノール生成装置3に供給された酸素は、酵母菌製造部26及び糖化酵素製造部25、ボイラ24で消費される。以上の構成によれば、酸素供給部6によってエタノール生成装置3に供給された酸素を有効活用することができる。なお、酵母菌製造部26と糖化酵素製造部25、ボイラ24のうち何れか1つ又は複数を省略することができる。酸素供給部6によってエタノール生成装置3に供給された酸素は、酵母菌製造部26及び糖化酵素製造部25、ボイラ24のうち少なくとも何れか1つ又は複数で利用され得る。
【0065】
図4に示すように、エタノール生成装置3は、酵母菌を用いて単糖類又は少糖類を分解する発酵部22を含む。二酸化炭素供給部7は、発酵部22からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が高濃度側閾値(第1の閾値)以上となったら、発酵部22からの排気ガスを炭化水素生成装置4に供給する。以上の構成によれば、二酸化炭素の濃度が低いガスが炭化水素生成装置4に供給されるのを防止できる。なお、二酸化炭素供給部7は、発酵部22からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度をモニタリングし、モニタリング結果に基づいて発酵部22からの排気ガスを炭化水素生成装置4に供給するか決定することに代えて、エタノール生成装置3の稼働開始からの経過時間に基づいて上記決定をしてもよい。例えば、エタノール生成装置3の稼働開始からの経過時間が8時間に達したら、発酵部22からの排気ガスを炭化水素生成装置4に供給するようにしてもよい。この場合、エタノール生成装置3からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度を測定するための濃度計を省略することができる。
【0066】
また、二酸化炭素供給部7は、発酵部22からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が高濃度側閾値未満であるうちは、発酵部22からの排気ガスを大気放出するようにしてもよい。以上の構成によれば、二酸化炭素の濃度が低いガスが炭化水素生成装置4に供給されるのを防止できる。
【0067】
また、二酸化炭素供給部7は、発酵部22からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が高濃度側閾値未満であるうちは、発酵部22からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が上昇するように当該排気ガスを濃縮し、濃縮後の排気ガスを炭化水素生成装置4に供給するようにしてもよい。以上の構成によれば、二酸化炭素の濃度が低いガスが炭化水素生成装置4に供給されるのを防止できる。
【0068】
また、燃料製造プラント1は、藻類を生育する藻類生育装置8、及び、二酸化炭素を還元して有機酸を合成する有機酸合成装置9を更に備える。二酸化炭素供給部7は、発酵部22からの排気ガスにおける二酸化炭素の濃度が高濃度側閾値未満であるうちは、発酵部22からの排気ガスを、藻類生育装置8及び有機酸合成装置9に供給するようにしてもよい。以上の構成によれば、二酸化炭素濃度が低い排気ガスを有効活用することができる。
【0069】
また、二酸化炭素供給部7は、エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素を貯留するタンク30(二酸化炭素貯留部)を含む。エタノール生成装置3で生成された二酸化炭素をタンク30に貯留すると共に、タンク30に貯留した二酸化炭素を炭化水素生成装置4に供給する。以上の構成によれば、炭化水素生成装置4に安定的に二酸化炭素を供給できる。
【0070】
また、燃料製造プラント1は、大気から二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素をタンク30に供給する二酸化炭素回収装置として、装置内DAC40及び装置外DAC41を備える。燃料製造プラント1は、タンク30に貯留されている二酸化炭素の貯留量が所定値を下回ったとき、貯留量が増えるように装置内DAC40及び装置外DAC41を稼働させるコントローラ47を更に備える。以上の構成によれば、炭化水素生成装置4に更に安定的に二酸化炭素を供給できるようになる。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料製造プラント
2 電気分解装置
2a 電気分解部
2b 電気分解部
2c 水素分離部
3 エタノール生成装置
4 炭化水素生成装置
5 水素供給部
6 酸素供給部
7 二酸化炭素供給部
8 藻類生育装置
9 有機酸合成装置
10 肥料生成装置
20 前処理部
21 糖化部
22 発酵部
23 精留部
24 ボイラ
25 糖化酵素製造部
26 酵母菌製造部
27 残渣発酵部
30 タンク
31 第1パイプ
31a 第1濃度計
31b 第1切替弁
32 第2パイプ
33 濃縮装置
34 第3パイプ
34a 第2濃度計
34b 第2切替弁
34c 第3濃度計
34d 第3切替弁
34P 合流点
35 第4パイプ
40 装置内DAC
41 装置外DAC
42 第5パイプ
42a 第4濃度計
42b 第4切替弁
43 第6パイプ
43a 第5濃度計
43b 第5切替弁
44 第7パイプ
45 第8パイプ
46 貯留量センサ
47 コントローラ