(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】地図更新装置、地図更新方法、および地図更新用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20241029BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20241029BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
G01C21/26 A
(21)【出願番号】P 2021128538
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【審査官】三村 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-003253(JP,A)
【文献】特開平10-040379(JP,A)
【文献】特開平05-303638(JP,A)
【文献】特開2014-052341(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181974(WO,A1)
【文献】特開2008-249479(JP,A)
【文献】特開2005-165421(JP,A)
【文献】特開2011-017989(JP,A)
【文献】特開2008-002906(JP,A)
【文献】特開2019-016005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の地物が表された周辺データから、前記車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出する検出部と、
前記複数の参照点のそれぞれに関連づけられた、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布を、検出された前記参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する更新部と、
を備え、
前記地物は車線を区画する車線区画線であり、前記複数の参照点は所定の地点を基準として所定間隔で離散した前記車線区画線上の点であり、
前記更新部は、前記周辺データから、複数の車線のうち注目する車線を区画する一対の前記車線区画線のうち一方の車線区画線上の参照点の位置が検出され、かつ、当該車線を区画する他方の車線区画線上の参照点の位置が検出されない場合、前記他方の車線区画線上の参照点に関連づけられた確率分布
が、前記一方の車線区画線上に検出された参照点の位置から当該車線に関連づけられた幅員だけ離間した位置を平均とし、前記幅員の1/2以上を前記他方の車線区画線に直交する方向における分散とする正規分布となり、前記一方の車線区画線の位置から
前記幅員だけ離間した位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する、
地図更新装置。
【請求項2】
前記複数の参照点のうち、関連づけられた前記確率分布における分散が分散閾値より小さい参照点を含む配信用地図を生成する生成部と、
生成された前記配信用地図を車両に配信する配信部と、をさらに備える請求項
1に記載の地図更新装置。
【請求項3】
前記更新部は、複数の前記周辺データからそれぞれ検出された前記参照点の位置のうち、所定数以上の周辺データから検出された前記参照点の位置が、当該参照点に関連づけられた確率分布との間で有意差があると判定された場合、当該参照点に関連づけられた確率分布を更新する、請求項1
または2に記載の地図更新装置。
【請求項4】
車両の周辺の地物が表された周辺データから、前記車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出し、
前記複数の参照点のそれぞれに関連づけられた、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布を、検出された前記参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新することを含み、
前記地物は車線を区画する車線区画線であり、前記複数の参照点は所定の地点を基準として所定間隔で離散した前記車線区画線上の点であり、
前記更新において、前記周辺データから、複数の車線のうち注目する車線を区画する一対の前記車線区画線のうち一方の車線区画線上の参照点の位置が検出され、かつ、当該車線を区画する他方の車線区画線上の参照点の位置が検出されない場合、前記他方の車線区画線上の参照点に関連づけられた確率分布
が、前記一方の車線区画線上に検出された参照点の位置から当該車線に関連づけられた幅員だけ離間した位置を平均とし、前記幅員の1/2以上を前記他方の車線区画線に直交する方向における分散とする正規分布となり、前記一方の車線区画線の位置から
前記幅員だけ離間した位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する、
地図更新方法。
【請求項5】
車両の周辺の地物が表された周辺データから、前記車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出し、
前記複数の参照点のそれぞれに関連づけられた、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布を、検出された前記参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する、ことをコンピュータのプロセッサに実行させる地図更新用コンピュータプログラムであって、
前記地物は車線を区画する車線区画線であり、前記複数の参照点は所定の地点を基準として所定間隔で離散した前記車線区画線上の点であり、
前記更新において、前記周辺データから、複数の車線のうち注目する車線を区画する一対の前記車線区画線のうち一方の車線区画線上の参照点の位置が検出され、かつ、当該車線を区画する他方の車線区画線上の参照点の位置が検出されない場合、前記他方の車線区画線上の参照点に関連づけられた確率分布
が、前記一方の車線区画線上に検出された参照点の位置から当該車線に関連づけられた幅員だけ離間した位置を平均とし、前記幅員の1/2以上を前記他方の車線区画線に直交する方向における分散とする正規分布となり、前記一方の車線区画線の位置から
前記幅員だけ離間した位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する、
地図更新用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の周辺の地物が表された周辺データに基づいて地図を更新する地図更新装置、地図更新方法、および地図更新用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路または道路の周囲に設けられた、車線区画線などの車両の走行に関連する地物に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、実際に道路を走行する車両から、地物を表すデータを収集する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、地図情報に含まれる地物に関する値(評価対象値)の信頼性を評価する信頼性評価装置が記載されている。特許文献1に記載の信頼性評価装置は、評価対象値を測定するための測定値をセンサにより複数回取得する。そして、特許文献1に記載の信頼性評価装置は、測定値の分散に応じて信頼性評価法を選択し、選択された信頼性評価法によって評価対象値の信頼度を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載されたセンサは、車両の周辺のすべての地物を適切に検出できるとは限らない。すなわち、センサにより生成されたデータからは、車両の周辺の一部の地物しか検出できない場合がある。この場合に、検出された地物のみについて地図情報を更新すると、例えば車線区画線が不連続となるといった地図情報の不整合が生ずることがある。
【0006】
本開示は、地図に表される地物の位置の精度を向上させることが可能な地図更新装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる地図更新装置は、車両の周辺の地物が表された周辺データから、車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出する検出部と、複数の参照点のそれぞれに関連づけられた、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布を、検出された参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する更新部と、を備える。
【0008】
本開示にかかる地図更新装置は、複数の参照点のうち、関連づけられた確率分布における分散が分散閾値より小さい参照点を含む配信用地図を生成する生成部と、生成された配信用地図を車両に配信する配信部と、をさらに備えることが好ましい。
【0009】
本開示にかかる地図更新装置において、地物は車線を区画する車線区画線であり、複数の参照点は所定の地点を基準として所定間隔で離散した車線区画線上の点であることが好ましい。
【0010】
本開示にかかる地図更新装置において、更新部は、周辺データから、複数の車線のうち注目する車線を区画する一対の車線区画線のうち一方の車線区画線上の参照点の位置が検出され、かつ、当該車線を区画する他方の車線区画線上の参照点の位置が検出されない場合、一方の車線区画線の位置から当該車線に関連づけられた幅員だけ離間した位置に他方の車線区画線上の参照点が検出されたものとして、他方の車線区画線上の参照点に関連づけられた確率分布を更新することが好ましい。
【0011】
本開示にかかる地図更新装置において、更新部は、複数の前記周辺データからそれぞれ検出された参照点の位置のうち、所定数以上の周辺データから検出された参照点の位置が、当該参照点に関連づけられた確率分布との間で有意差があると判定された場合、当該参照点に関連づけられた確率分布を更新することが好ましい。
【0012】
本開示にかかる地図生成方法は、車両の周辺の地物が表された周辺データから、車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出し、複数の参照点のそれぞれに関連づけられた、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布を、検出された参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する、ことを含む。
【0013】
本開示にかかる地図更新用コンピュータプログラムは、車両の周辺の地物が表された周辺データから、車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出し、複数の参照点のそれぞれに関連づけられた、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布を、検出された参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する、ことをコンピュータのプロセッサに実行させる。
【0014】
本開示にかかる地図更新装置によれば、地図に表される地物の位置の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】地図更新装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図3】信頼度分布の更新の概要を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、地図に表される地物の位置の精度を向上させることができる地図更新装置について詳細に説明する。地図更新装置は、車両の周辺の地物が表された周辺データを用いて、ストレージ装置に記憶された地図を更新する。地図では、道路上の地物に対応する複数の参照点のそれぞれに、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布が関連づけられている。地図更新装置は、周辺データから参照点の位置を検出する。そして、地図更新装置は、当該参照点に関連づけられた確率分布を、検出された参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する。
【0017】
図1は、地図更新装置1のハードウェア構成図である。地図更新装置1は、通信インタフェース11と、ストレージ装置12と、メモリ13と、プロセッサ14とを有する。
【0018】
通信インタフェース11は、通信部の一例であり、地図更新装置1を通信ネットワークに接続するためのインタフェース回路を有する。通信インタフェース11は、通信ネットワークを介して他の機器と通信可能に構成される。すなわち、通信インタフェース11は、通信ネットワークを介して他の機器から受信したデータ等をプロセッサ14に渡す。また、通信インタフェース11は、プロセッサ14から受け取ったデータ等を、通信ネットワークを介して他の機器に送信する。
【0019】
ストレージ装置12は、記憶部の一例であり、例えばハードディスク装置または不揮発性の半導体メモリ装置などの記憶装置を有する。ストレージ装置12は、道路上の地物に対応する複数の参照点を含む地図を記憶する。
【0020】
参照点は、地物の位置を表すために地物に対応して設定される点である。例えば、地図において、車線区画線の位置を表すために、交差点などの所定の地点に参照点が設定される。また、地図において、こうした所定の地点を基準として所定間隔(例えば10m)で離散した車線区画線上の点が、複数の参照点として設定される。所定間隔は一定間隔に限られず、ある参照点の所定の地点からの間隔が予め定められていればよい。
【0021】
また、ストレージ装置12は、各参照点について、当該参照点の存在する確率を位置ごとに示す確率分布(以下、「信頼度分布」という)を記憶する。信頼度分布は、路面に沿った2次元平面上の位置に対応した正規分布とすることができる。また、信頼度分布は、3次元空間上の位置に対応した正規分布であってもよい。
【0022】
メモリ13は、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ13は、プロセッサ14による処理に用いられる各種データ、例えば通信インタフェース11を介して受信したデータ等を一時記憶する。また、メモリ13は、各種アプリケーションプログラム、例えばストレージ装置12に記憶された地図を更新する地図更新プログラム等を記憶する。
【0023】
プロセッサ14は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を有する。プロセッサ14は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0024】
図2は、地図更新装置1が有するプロセッサ14の機能ブロック図である。
【0025】
地図更新装置1のプロセッサ14は、機能ブロックとして、検出部141と、更新部142と、生成部143と、配信部144とを有する。プロセッサ14が有するこれらの各部は、プロセッサ14上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ14の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ14が有するこれらの各部、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして地図更新装置1に実装されてもよい。
【0026】
検出部141は、車両(不図示)の周辺の地物が表された周辺データから、車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出する。
【0027】
車両は、車両の周辺の状況を撮影し周辺データを出力する周辺カメラを搭載する。車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)は、周辺カメラから周辺データを取得し、無線基地局を含む通信ネットワークを介して周辺データを地図更新装置1に送信する。
【0028】
車両は、周辺データをコンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録してもよい。地図更新装置1は、通信インタフェース11に接続された媒体読取装置(不図示)により記録媒体を読み取ることで、周辺データを取得することができる。
【0029】
検出部141は、車線区画線といった道路上の地物を識別するように予め学習された識別器に周辺データを入力することにより、道路上の地物の位置を検出する。検出部141は、地図に表される地物ごとに、その地物について信頼度が最大となる位置、すなわち信頼度分布における平均値となる位置から、周辺データから検出された地物の位置までの距離を算出する。そして、検出部141は、地図に表される各地物のうち、算出された距離が最小となり、かつ、その距離が所定の距離閾値以下となるとともに、周辺データから検出された地物の種類と同じ種類の地物に、周辺データから検出された地物を対応づける。
【0030】
識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。予め検出対象となる道路上の地物を含む画像を教師データとして用いて、誤差逆伝播法といった所定の学習手法によってCNNの学習を行うことにより、CNNは道路上の地物を検出する識別器として動作する。
【0031】
また、検出部141は、車線区画線上の複数の参照点につき、周辺データに対応する車両の位置に基づいて、所定の地点で検出される車線区画線の位置、および、所定の地点から所定間隔で離散した地点で検出される車線区画線の位置を、参照点の位置として検出する。
【0032】
更新部142は、ストレージ装置12に記憶された地図において複数の参照点のそれぞれに関連づけられた信頼度分布を、検出された参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新する。
【0033】
更新部142は、最尤推定法により信頼度分布を更新する。更新部142は、地図に含まれる領域のうち参照点の存在する可能性がある範囲を複数の区画に区分し、参照点が検出された回数を区画ごとに累積する。そして、更新部142は、区画ごとに参照点が検出された回数を各区画で参照点が検出された回数の合計で除することで、区画ごとに参照点が存在する確率を表す信頼度分布を作成する。2次元平面上の位置に対応した信頼度分布を作成する場合、区画は格子状に設定される。新たに検出された参照点の位置に参照点の存在する確率は、更新前の信頼度分布よりも参照点の検出に応じて算出された信頼度分布の方が高くなる。
【0034】
また、更新部142は、ベイズ更新により信頼度分布を更新してもよい。すなわち、地図に含まれる領域のうち参照点周辺の所定範囲を複数の区画のそれぞれについて、当該区画に参照点が存在する信頼度が設定される。各区画における信頼度の初期値として、各区画に同じ値が設定されてもよく、その参照点の存在する可能性が高い区画ほど高い値が設定されてもよい。更新部142は、周辺データから参照点の位置が検出されると、検出された参照点の位置が含まれる区画の信頼度が高くなるように、各区画の信頼度を更新する。あるいは、更新部142は、周辺データに表される参照点の位置から所定範囲内にある各区画の信頼度が高くなるように、各区画の信頼度を更新してもよい。このとき、更新部142は、その参照点の位置に近い区画ほど、信頼度の上昇率を高くしてもよい。更新部142は、各区画の信頼度を正規分布で近似することで、その参照点の位置についての更新された信頼度分布を算出し、ストレージ装置12に記憶する。
【0035】
あるいは、更新部142は、参照点ごとに、その参照点の位置についての信頼度分布の複数の候補を設定してもよい。この場合、各候補は、位置の平均値および分散共分散行列で表される正規分布とすることができる。そして更新部142は、周辺データに表される参照点の位置に対する、各候補の事後確率を算出し、その事後確率を、次回の更新の際の各候補の事前確率とする。更新部142は、事前確率が最大となる候補に相当する正規分布を、その参照点の位置についての信頼度分布とする。
【0036】
図3は、信頼度分布の更新の概要を説明する模式図である。
【0037】
周辺データSDには、車線区画線LL1、LL2、LL3が表されている。検出部141は、周辺データSDから、車線区画線LL1において所定の地点から所定間隔で離散した地点を参照点DRP2として検出する。
【0038】
地
図Mに含まれる車線区画線LL1、LL2、LL3のうち、車線区画線LL1には、所定間隔で離散した参照点RP1、RP2が設定されている。参照点RP1、RP2には、それぞれ信頼度分布が対応づけられており、参照点RP2に対応する事前分布が信頼度分布PD21で表される。信頼度分布において、横軸は道路の左右方向の位置を表し、縦軸はその位置で参照点が検出される確率を表す。
【0039】
図3の例では、周辺データSDから検出された参照点DRP2は、地
図Mに設定された参照点RP2よりも右側に位置する。地図更新装置1は、RP2に関連づけられた信頼度分布PD21を、参照点DRP2の位置に参照点RP2の存在する確率が高くなるような信頼度分布PD22に更新する。
【0040】
更新部142は、複数の周辺データからそれぞれ検出された参照点の位置のうち、所定数以上の周辺データから検出された参照点の位置が、参照点に関連づけられた信頼度分布との間で有意差があるか否かを判定してもよい。このとき、更新部142は、検出された参照点の位置が、参照点に関連づけられた確率分布との間で有意差があると判定された場合に、当該参照点に関連づけられた信頼度分布を更新する。
【0041】
生成部143は、ストレージ装置12に記憶された地図に含まれる複数の参照点のうち、関連づけられた信頼度分布における分散が予めメモリ13に記憶された分散閾値より小さい参照点を含む配信用地図を生成する。2次元平面または3次元空間に対応する信頼度分布において、分散閾値は、分散の方向ごとに設定されてよい。生成部143は、生成された配信用地図をストレージ装置12に記憶してもよい。
【0042】
配信部144は、生成部143により生成された配信用地図を、通信インタフェース11および通信ネットワークを介して車両に配信する。車両の自動運転システムは、配信された配信用地図を用いて、車両を自動運転制御する。
【0043】
図4は、地図更新処理のフローチャートである。地図更新装置1のプロセッサ14は、処理の対象となる周辺データを受信するたびに、
図4に示す地図更新処理を実行する。また、地図更新装置1のプロセッサ14は、2以上の所定数の周辺データを受信するたびに、
図4に示す地図更新処理を実行してもよい。
【0044】
まず、プロセッサ14の検出部141は、車両の周辺の地物が表された周辺データから、車両が走行する道路上の地物に対応する複数の参照点の位置を検出する(ステップS1)。
【0045】
次に、プロセッサ14の更新部142は、複数の参照点のそれぞれに関連づけられた信頼度分布を、検出された参照点の位置に当該参照点の存在する確率が高くなるように更新し(ステップS2)、地図更新処理を終了する。
【0046】
このように地図更新処理を実行することにより、地図更新装置1は、地図に表される地物の位置の精度を向上させることができる。
【0047】
検出部141により、周辺データから複数の車線のうち注目する車線を区画する一対の車線区画線のうち一方の車線区画線上の参照点の位置が検出され、かつ、当該車線を区画する他方の車線区画線上の参照点の位置が検出されない場合がある。変形例によれば、更新部142は、一方の車線区画線の位置から当該車線に関連づけられた幅員だけ離間した位置に他方の車線区画線上の参照点が検出されたものとして、他方の車線区画線上の参照点に関連づけられた確率分布を更新する。幅員は、車線に関連づけてストレージ装置12に予め記憶されてよい。ベイズ更新により確率分布を更新する場合、更新部142は、他方の車線区画線上に検出されたとする参照点の尤度を、一方の車線区画線上に検出された参照点の位置から幅員だけ離間した位置を平均とし、幅員の1/2以上を他方の車線区画線に直交する方向における分散とする正規分布として表してよい。このように地図を更新することで、一方の車線区画線上の参照点の位置が検出されない場合であっても、検出された他方の車線区画線上の参照点の位置および幅員を用いて、地図に表される地物の位置の精度を向上させることができる。
【0048】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
1 地図更新装置
141 検出部
142 更新部
143 生成部
144 配信部